♦ CHINON (チノン) AUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わりヤフオク!出品するモデルは、国産は
CHINON製標準レンズ・・・・、
AUTO CHINON MULTI-COATED
55mm/f1.7《後期型:富岡光学製》
(M42)』
です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のCHINON製標準レンズ「55mm/f1.7」の括りで捉えると18本目にあたりますが、今回扱った個体「後期型:CHINON MULTI-COATED」だけでカウントすると僅か8本目・・前回の扱いが2019年なので、凡そ5年ぶりです。

当方の記録データベースをチェックすると、調達しているタイミングはほぼ2年に1本レベルに留まり、特に近年はせっかく市場に出回っても「光学系の状態が悪く手に入れられない
問題が多くなってきている傾向です。

これは今回のモデルに限らず、実は市場流通する数多くの富岡光学製OEMモデルに共通して指摘できる傾向で、おそらく実装している光学系の耐性面から、そろそろ限界に来ているのではないかとみています(涙)・・特にカビの発生状況が酷く、或いは蒸着コーティング層の経年劣化進行も激しい印象が残ります(汗)

その意味で当方がこのブログで何度も何度も執拗に述べて続けている『オールドレンズは絶滅危惧種である』との認識は、あながち間違いでもないと警鐘を鳴らしている次第です・・少なくとも50年後には現在の半数以下まで市場流通数は減じられてしまうことでしょう(涙)

  ●               

当方が富岡光学製と述べると、SNSや某有名処で「何でもかんでも全部富岡光学製にしてしまう」と非難の嵐のようです(笑) 仕方ないので、今回はその根拠について解説していきたいと思います。





↑上に並べたオールドレンズのうち富岡光学製ではなくCOSINA製なのはの3本だけ」です(笑)・・逆に言うなら、それ以外は全て富岡光学製です(笑)

当方が富岡光学製を語る時、本来その根拠は「内部構造の同一性から」と明言できますが、そうは言っても上に並べたモデル全てを完全解体してオーバーホールした経験がある話
でもありません(笑)・・上の一覧で言うならの3本はまだ扱っていません(汗)

その「同一性」の中から、ある特定の要素だけをピックアップして富岡光学製の判定材料に据えているだけの話なので、それを解説したいと思います。

ちなみにがまさにその解説用として敢えて一覧に写真を載せています (いちいち都度証拠を載せないと信じてもらえないから)(笑)

AUTO REFLECTA 55mm/f1.7 (M42)
argus Auto-Cintar 55mm/f1.7 (M42)
AUTO REVUENON 55mm/f1.7 (M42)
AUTO CHINON 55mm/f1.7 (M42)
AUTO GAF 55mm/f1.7 (M42)
AUTO CHINON 55mm/f1.7 (M42)
AUTO REVUENON 55mm/f1.7 (M42)
AUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.7 (M42)
AUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.7 (M42)
AUTO CHINON MCM 55mm/f1.7 MULTI COATED LENS MACRO (M42)
PORST COLOR REFLEX MCM 55mm/f1.7 MULTI COATED LENS MACRO (M42)
PORST COLOR REFLEX AUTO 50mm/f1.7 (M42)
AUTO SEARS 50mm/f1.7 (M42)
ARGUS CINTAR MC AUTO 50mm/f1.7 (M42)
PORST COLOR REFLEX MC 50mm/f1.7 F (M42)
CHINON 50mm/f1.7 MACRO multi coated (M42)
AUTO-ALPA 50mm/f1.7 for ALPA SWISS MULTI-COATED (M42)
PORST COLOR REFLEX MC 50mm/f1.7 Macro F (M42)
AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)
AUTO TOMINON 55mm/f1.2 TOMIOKA KOGAKU (M42)

↑上の列記はモノコーティングを表し、一方マルチコーティングを意味します。発売時期も合わせて時系列で捉えようとするなら、必然的に
モノコーティングのほうが先に登場し、後にマルチコーティングへと進みます。

また発売時期に大きく影響を与える要素として、筐体外装の変遷も大きく関わります・・初期に登場したモデルは「総金属製」であるものの、途中から「銀枠飾り環を装備」し、後に次第に「ラバー製ローレット (滑り止め) へと遷移」していきます。

但し、特に「銀枠飾り環」については、例えば海外輸出仕様の場合「特にヨーロッパ人には
シルバーの飾り環が好評を得ていた
」とも指摘でき、必ずしも中期の傾向に留まりません(笑)

ここまで挙げてきた傾向は特に富岡光学製だけに限定した話ではなく、当時のオールド
レンズ全般に当てはまる内容なので、こんな時系列的な捉え方も知っていると掴み易いかも
知れませんね(笑)

なお上の一覧に写真掲載していないOEMモデルは、まだ他にもあります (AUTO WEISTARAUTO HANIMARなど)。

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今回扱ったモデルAUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(M42)』の発売時期を探ってみると、明確な情報をネット上で入手できず、仕方ないので当時CHINONが発売した一眼 (レフ) フィルムカメラの取扱説明書から探索してみます。

【CHINON製一眼レフカメラ】
※ 但しM42マウントモデルに限定して発売年度別時系列表記

 CHINON M-11972年発売 (海外輸出機:GAF L-17)
CHINON CM1974年発売 (海外輸出機:GAF L-CM/aurgus CR-1)
CHINON CE MEMOTRON1974年発売 (海外輸出機:GAF L-ES/SEARS 2000)
CHINON CX1974年発売 (海外輸出機:GAF L-CX/argus CR-2)
CHINON CXII1976年発売
CHINON CS1976年発売 (?)
CHINON CEII MEMOTRON1976年発売 (海外輸出機:GAF L-ESII/argus CR-3)
CHINON CE-3 MEMOTRON1977年発売
CHINON CM-11978年発売 (?)
CHINON CM-31979年発売
CHINON CS-41980年発売

上記時系列の一眼 (レフ) フィルムカメラ取扱説明書を片っ端に調べていくと、例えば「 CE-II MEMOTRON (1976年発売)」の取扱
説明書のオプション交換レンズ群のベージを確認すると、銀枠飾り環を備えるモノコーティング製品ばかりが載っていました。
(右写真はCE-II MEMOTRONの取扱説明書/表紙です)

すると表紙に印刷されている装着標準レンズがマルチコーティング化されたAUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.4 (M42)」なのが明白です。前述で
列記した一覧で指摘するなら「 AUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.7 (M42)」のシリーズにあたります。

一方翌年発売された「 CE-3 MEMOTRON (1977年発売)」取扱説明書には、オプション交換レンズ群のページに、ちゃんとモノコーティング製品と一緒にマルチコーティング化された製品も合わせて
紹介していました。

←左のページが取扱説明書からの一部抜粋です。モノコーティングモデルの他マルチコーティング化された「MC」表記に、合わせて「Macro」の文字まで確認できます。

すると該当するモデルは「 AUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.7 (M42)」及び「 AUTO CHINON MCM 55mm/f1.7 MULTI COATED LENS MACRO (M42)」と言う
話になり、これらモデルの発売年度が確定しました。

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ここからが当方が「何でもかんでも全て富岡光学製にしてしまう」と述べるところの富岡
光学製
たる根拠の解説です(笑)

マウント規格「M42マウント (プラクチカ・スクリューマウント)」のオールドレンズ達の中で、当方が富岡光学製との結論づけをする際の根拠は以下の3点があり、いずれか1点或いは複数合致した場合に否応なく判定を下しています。

M42マウントの場合に特異なマウント面の設計をしている (外観だけで判断できる)。
内部構造の設計として特異な絞り環のクリック方式を採っている (外観だけでは不明)。
内部構造の設計として特異な絞り羽根開閉幅調整方式を採っている (外観だけでは不明)。

上記3点は当方が今まで13年間で3,000本以上のオールドレンズを扱ってきた中で、或いは以前取材した金属加工会社の社長さんとの会話の中で、富岡光学以外の光学メーカーで採っていない特異な設計である点を以て「判定の基準」と結論づけして捉えています。

それはそもそもオールドレンズを設計する際、他社設計をそっくりそのまま真似て (模倣して) 設計図面を起こす必要性がないからです。以前取材した金属加工会社の社長さんからのご教授でも、たいていの光学メーカーは自社工場の機械設備などを勘案し、その組立工程まで含めた最も自社に都合の良い設計で図面を起こすハズだと考えられるからです (ワザワザ費用と時間を掛けてまで同じ設計で構成パーツを用意する必要性がない)。

ましてや光学ガラスの精製まで含めて製品化する一連の流れまで汲みするなら、費用対効果よりも最も重要なのは需給バランスの正確性をどのように担保できるのかが、今も昔も開発/製産する側の大前提とのお話でした (そこに営業サイドとの折衝が背中合わせになる)。

これら取材時のお話から、前述3点の要素こそが他社光学メーカーで採用すべき内容に合致しない事から富岡光学製たる最大の根拠に成らざるを得ないと判断するしかありません。

 特異なマウント面の設計

先ずは『富岡光学製』と明言できる根拠となるモデルが必要です。
それはレンズ銘板に「TOMIOKA」銘がモデル発売会社名とは別に
刻印されている、いわゆる「ダブルネーム」モデルです。

右写真は過去にオーバーホールしたチノン製標準レンズAUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」からの転載写真です (列記 AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42))。

当方が富岡光学製と述べると「何でもかんでも全て富岡光学製にしてしまう」と批判の嵐ですが(笑)、そこまで言うなら左写真で示したTOMIOKA KOGAKU (富岡光学) AUTO TOMINON 55mm/f1.2《初期型》(M42)』の当方ブログ掲載ページでオーバーホール工程を
確認すれば、同じ内容である点を否応なく理解せざるを得ませんからご参照下さいませ (構成パーツと工程の近似性を述べています)(笑)
( AUTO TOMINON 55mm/f1.2 TOMIOKA KOGAKU (M42))

M42マウント規格 (内径:42mm x ピッチ:1mm)」の場合に、
マウント面に薄枠の「スイッチ環/飾り環/絞り環用固定環 (など呼称は様々)」を有し、その環/リング/輪っかをイモネジ3本を使い、横方向から均等配置で締め付け固定している点を指して『富岡光学製』との判定が可能な外観上の特異点と捉えています。
(外見から富岡光学製を判定できる要素はこのだけしかない)

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイス切り込みが入るネジ種で、
ネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する。

大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定するだけの場合がある。

これは、例えば他社光学メーカーでも (海外モデルでも) マウント面に薄枠環が存在している事がありますが、その薄枠環固定をイモネジ (3本) による締め付けでワザワザ設計している会社が存在しません。たいていは薄枠環自体がネジ込み式か、或いはマウント面方向から具体的な皿頭ネジなどを使って締め付け固定していることが多いです (横方向からイモネジで締め付け固定していない)。

ではどうして「横方向からイモネジ3本で締め付け固定する設計が必要なのか?」なのですが
実はこのような仕様で設計する必要性が顕在し「このスイッチ環/飾り環/絞り環用固定環の
締め付け固定位置の微調整により、A/M切替スイッチと絞り環のクリック感の適合性を合致
させている
」からです。

つまりイモネジ3本による締め付け固定をミスると「A/M切替スイッチのクリック感がズレて違和感に至る」或いは「絞り環刻印絞り値とクリック感とが一致せずに、隣接する絞り値の
どちらでクリックしているのかが不明確になる
」現象に至ります。

・・だからイモネジ3本を使い横方向から締め付け固定して微調整を執る工程が必須になる。

単に外観上の近似点だけを指して『富岡光学製』と判定しているワケではなく (そんな単純な話ではない)(笑)、あくまでも設計上の意図/工程手順として微調整が必要だから「イモネジ固定なのだ」と納得しているのです (逆に言えばイモネジを使った理由が理解できる事になる)。

ではその一方で、他社光学メーカーのオールドレンズはどのような設計なのかと言えば「こんな面倒な微調整を執らず、サクッとクリック位置を確定してしまったり、マウント面から皿頭ネジで締め付け固定させて終わっている」ワケで・・要は『富岡光学の意味不明な難しい工程を経る設計』がおかしいのだと、このブログでも何回も述べています(笑)

するとここに次の特異点たる『富岡光学製根拠の』に繋がる要素が隠れています(笑)

設計上の絞り環クリック方式の特異点

これは外観からは一切判定できる要素ではありません (バラさなければ分からない)。同様前述モデルのオーバーホール工程から転載した写真 (右) ですが、絞り環を回した時にカチカチとクリック感を伴う設計です。

この時、そのクリック感を実現するには「鋼球ボール」が必要になりますが、その鋼球ボールを組み込んでいる箇所が問題になります。
絞り環には「絞り値キー」と言う「」が用意され、そこに鋼球ボールがカチカチと填ることでクリック感を実現しています。

その「鋼球ボール」は絞り環の次に上から被さるで解説した「スイッチ環/飾り環/絞り環用固定環」の内部にスプリングと共に組み込まれます。従っての「スイッチ環/飾り環/絞り環用固定環」の固定位置をミスるとチグハグに至り、違和感どころか下手すれば「設定絞り値が絞り環で隣接する絞り値のどちらなのかが不明瞭に至る」から大騒ぎなのだと言っています。

だから「イモネジ (3本)」による締め付け固定位置微調整機能が設計上必要になります(汗)

従ってこのような面倒な微調整を伴う設計にしたのは『富岡光学製』オールドレンズだけだと判定しているワケで、前述のとおり『富岡光学の意味不明な難しい工程を経る設計』がおかしいのです(笑)

ちなみにこれらの結果から導き出されるオーバーホール上の工程は、さらにこれら絞り環の設定絞り値との整合性を確実にするべく「指標値環の基準マーカー位置との合致も担保される必要が起きる」ので、自動的に指標値環まで「イモネジ3本による締め付け固定で微調整機能を有する」設計と言う意味不明な結末なのです(笑)

設計上の絞り羽根開閉幅微調整機能の特異点

こちらも外観からは一切判定できません (バラす必要あり)。鏡筒には「絞り羽根開閉幅微調整キー」が用意されており (左写真でここと示している箇所のネジ)、鏡筒の位置調整で絞り羽根が閉じる際の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) を微調整する概念/設計です。

これは例えば他社光学メーカーなら組み立て工程の途中で鏡筒に光学系前後群をセットし終わった時点で、専用治具で検査して絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) をチェックすれば良いだけで、たいていは「絞りユニットそのものの位置調整だけで微調整」を済ませています。何故なら、絞り羽根を包括する絞りユニットは光学系の前後でサンドイッチ状態だからです。

ところが富岡光学製オールドレンズの場合は、光学系前後群をセットし終わってから、さらにヘリコイド (オス側) の内側にストンと落とし込んで鏡筒を固定しない限り検査できません。

何故なら「ここ」で示したネジとキー (円板) は「円板の中心に締付ネジが入っていない」設計なので、この円板を回した時に「鏡筒全体が大きく左右にブレる」結果、絞り羽根開閉度合いが変化する (閉じる方向に変化したり開く方向に変わったりする) と言う「鏡筒自体の固定位置微調整により絞り羽根の開閉幅が変化する設計概念」なので、全て組み込んでからでなければ検査する意味がないのです(笑)

これもの絞り環のクリック感を実現している方式/設計同様、当時の富岡光学製オールドレンズだけが採っていた設計概念と指摘できます。

詰まる処、これらの必ず微調整を伴う設計概念は (今となっては製産時点の治具が存在しないので) 全ての組立工程が終わらない限り何一つ検査できず、逆に指摘するなら「富岡光学製オールドレンズは必ず組み上げては検査して適合しているか否かチェックする必要が起き、面倒極まりない厄介なモデルばかり」と言う事ができ・・まさに整備者泣かせのオールドレンズなのです(笑)

  ●               

ちなみに、上の列記をみていくとの4本は「50mm/f1.7」と焦点距離が変わっているものの富岡光学製です。ところがの3本はCOSINA製とご案内しました。
(富岡光学製の根拠はのマウント面のイモネジ3本の存在です)(笑)

CHINON 50mm/f1.7 MACRO multi coated (M42)
AUTO-ALPA 50mm/f1.7 for ALPA SWISS MULTI-COATED (M42)
PORST COLOR REFLEX MC 50mm/f1.7 Macro F (M42)

これら3本の当方ブログページをリンクしましたが、それらオーバーホール工程をご確認頂ければ、内部構造が100%同一であるのが分かると思います (筐体外装の意匠の違いだけで
あ~だこ~だ判定していても意味がないと申し上げているのです
)。

合わせて、それらブログベージで明示したとおり、実装している光学系のカタチは似ていても
細かい計測値データは異なっている点まで指摘しており、そこに指向先メーカーとのやり取りが窺えるのではないでしょうか???(笑)・・逆に言うなら、当時ワザワザALPA SWISS自らが「ALPA-SWISS Control」を謳っていた意図が見え隠れしているようにも考えます。

ネット上でも解説しているサイトが複数ありますが、オールドレンズの光学系に蒸着されているコーティング層が放つ光彩の色合いを以て「その違いを指摘してモデルの相違根拠の解説」としているサイトが多いです。

この点についてのとても良い例を挙げるなら、先日このブログに掲載したA.Schacht Ulm製の広角レンズS-Travegon 35mm/f2.8 R《後期型》(zebra) (M42)』に於いて、まさに光学系の考案者/設計者たるLudwig Jakob Bertele (ルートヴィッヒ・ヤコブ・ベルテレ)」氏の
光学設計から捉えた上で、必ずしも蒸着コーティング層が放つ光彩の相違を以て「実装光学系の違い」とは至らず (ブログ解説のとおり第1群と第3群が同一の計測値なるも放射線量の
計測値は異なる結果だった
)、必ずその都度バラして光学系を調査しない限り「真のモデル変遷は語れない」と考察しています・・何故なら、オールドレンズとは写真を撮るための道具だからです(笑)

もっと言うなら特許出願申請書に記載している構成図は、あくまでも考案時の基本設計を指し
必ずしも「量産型製品に実装している光学設計に一致しない」点にまで、ちゃんと配慮が必要なのではないかと考えますね(笑)

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はAUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが完了し、まさに本来在るべき姿に立ち返った個体としての佇まいが眩しい限りです(涙)・・そのように言い切ってしまう仕上がりだと言っているのです

上の写真のとおり、本当に眩い限りにエメラルドグリーンな光彩を放つマルチコーティングが美しいですが、これを「単にキレイな輝きのマルチコーティングモデルと受け取ってしまうから残念ながらこのモデルの評価はいまだに真の立ち位置としてポジショニングを確保できていません (評価されずに低価格のまま市場流通が続いている)(涙)

当方の評価では、上位格の神経質なピント合わせを強いる「55mm/f1.4」よりも、サクッと使える今回の扱いモデルのほうが利便性が良く、しかも富岡光学製の味を意外にも堪能できると、むしろ評価を与えているくらいです(涙)

確かに今回扱ったモデルは、発売当時は上位格モデルのAUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.4《後期型:富岡光学製》(M42)」廉価版モデルとして登場した背景があるのでしょうが、そのような経緯があるとしても、だからと言っていまだに「不遇な扱いを受け続ける」そのような仕打ちこそが、当方はおかしいのではないかと、言っているのです。

オールドレンズを大事に思う気持ちが少しでも在るなら、ちゃんと「グリーン色の光彩を放つマルチコーティング化」との戦略や、ひいては設計意図を汲み取って今一度考察を進めてあげるのが (それらモデルがオールドレンズ史に残るのか否かを別にして) モデル開発に携わってきた先達ニッポン人に対する、せめてもの礼儀ではないかと強く感じるのです(涙) 単に「コーティング層の輝きが美しい」で済ませてしまう考え方って、あまりにも可哀想過ぎると思うのです(涙)

話は違いますが、確か栗林写真工業製の標準レンズC.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (M42)」も、当方が初めて扱った2017年以前までは、それこそヤフオク!の流通価格は二束三文で、下手すれば千円以下だったりしました (積極的に扱い始めたのは2020年から)(涙)・・今でこそ1万円を優に超えた価格帯でも流通しているほどに評価されつつあります (とっても
嬉しいです!
)(涙) 当方のこのブログに載せるようになってから、少しずつ見直されるようになり始めました(涙)

・・いったいどうして一時期これほどまでグリーン色の光彩が流行ったのか???(涙)

との冷静な思考回路でちゃんとネット上で解説してくれるプロの写真家物理学者数学者、ひいてはオールドレンズ愛好家が居ないから不遇な扱いを受け続けています(涙)

話が少々反れますが「グリーン色の光彩が流行った時期が顕在した根拠」について当方の考えを解説していきます。

時は1811年1817年まで遡ります(汗) 後のドイツ人物理学者/光学レンズ製造技術者たる「Joseph Ritter von Fraunhofer
(ヨーゼフ・リッター・フォン=フラウンホーファー)
」氏が、スイス人のピエール=ルイス・ギナンに師事して光学ガラスレンズ製造を学び、1811年に「フリントガラス製造術」を発見しました。

後に英国製クラウンガラスの不規則な屈折を抑えたより優れたクラウンガラスの製造に至り、1814年までに世界で初めて「分光器を発明」し太陽光スペクトルの分光に570を超える暗線の存在を確認した「フラウンホーファー線」発見者でもあります (右図はその記念切手)。現在では数万のフラウンホーファー線 (暗線) が確認できています。

後の1817年に、このスペクトル内の暗線を活用する事で、光学ガラスレンズの屈折率を
調べる術
を世界で初めて発案した
功績は、光学ガラスレンズ史上特記すべき功績とも考えられています。

さらに天体望遠鏡に使う対物レンズに於いて、凸凹による色消し効果も含めたアクロマートなダブレット (daublet/貼り合わせる事) 開発もエディンバラ市天文台のトランジット望遠鏡用に供給されたものとも考えられており、当時の天体望遠鏡の主流を成す対物レンズの一つだったとも受け取られています。自ら精製して均質性の高い屈折率を追求したクラウンガラスとフリントガラスを使った「フラウンホーファー型光学系」もこれに含まれます。
(下の図の入射光線は波長の相違を示す為にワザと故意にズラして描いています)

逆に言えば、光学硝子材に対する屈折率の追求以前に硝子材の均質性の担保が光学系の設計面で最重要課題だった時代」とも言い替えられます・・これをクリアして初めて「光学硝子材の成分と配合に対する波長の相違を基にした屈折率追求が適う」ワケです。

従ってフラウンホーファーの光学史に於ける功績が讃えられるべきとの解説が現代のネット上にはあまりにも少なすぎると嘆かわしく感じ、このような考察は「自分自身のオールドレンズに対する臨み方とも相容れる話」とも言え、そもそも観る/捉えるべき角度からして『違う』事の表れでもあり、とても共感を覚えている次第です(涙)

するとここにヒントが隠されており、上の切手は「フラウンホーファー線」を示していますが
そもそも太陽光の光は白色に見えるワケで、それは「光の三原色」原理に従います。

例を挙げるなら今ドキのデジタルな光の世界では「 ()」を「光の三原色」と捉え、総天然色を表現しています。そしてそれら3つの基本色を混ぜ合わせて得られる混色は、右のとおり「ホワイト (白色)」に必ず到達します (中心部分)。

この時、光は「波長」なので、前述のスペクトルに於いて「長い波長の赤色の領域」に対して、その対極に位置する「短い波長の青色領域」に必ず分光します (可視光領域での話)。

するとその中間層に位置するのが「緑色の領域」で両側に「水色黄色の領域に囲まれる」のが原理です。

つまり「グリーン色の光彩を放つコーティング層を蒸着させる事で中間層たる光の領域自然な発色性の追求」を狙えるとした概念が、一時期流行ったのではないかとみています (植物のグリーン指す話ではありません/スペクトルの分光に於けるグリーン領域を指します)。

逆に言うなら「赤色の領域青色の領域も互いに対極に位置する波長」なので、それらを追求すると「解像度の向上を狙えるものの発色性の忠実な再現性にはむしろ遠のく」事から「敢えてこだわりを以てグリーン色のコーティング層を蒸着して補強する狙い」とみています(涙)

当時例えばMINOLTAの「アクロマチックコーティング (AC)」で言う処の「緑のロッコール」も、まさに当時のカタログに「より自然な色再現性の追求」と明記していますし、他にも光学メーカー各社で一時期まるで伝染病の如く流行りました(笑)

・・今回扱うモデルのグリーンの光彩の真意は、そんな処ではないでしょうか???(涙)

もっと言うなら、例えばオールドレンズでも「既に色ズレが起きている個体」だったりした時(汗)、撮影した写真のピント面は「エッジに青色紫色の影が纏わりつく色ズレが起きる」のを指して「ブルーフリンジ/パープルフリンジ」等と呼称します・・この時、どうしてグリーンフリンジが現れないのでしょうか??? 波長の相違なので、任意の箇所にパープルブルーも同時に表出するフリンジ現象は原理的に有り得ないので、どちらか一方が表出するものの、グリーンの帯域は視認てきていないだけです(笑)

そしてさらに一歩進み、近年の4K/8KなどHD画像には「 ()」とイエローの帯域を追加しています・・これは画の明るさ「輝度の向上」が狙いですが、パッと思いつくのは「ホワイトを使う」と考えるでしょう(笑) 然し前述のとおりホワイトは「光の三原色」で言う処の混色領域にあたり「光の彩度」が最も低い状況を指します・・逆に彩度が上がると各色の濃さがどんどん濃くなっていき上の右図に至ります。

この時「色の三原色」と捉えると、これは「光の側から捉えずに物体の色から捉える手法」とした時、使う色合いは「そして (シアン/マゼンタ/イエローそしてブラック)」になり
3つの色の混色たる中心部分は「黒色」です (光ではないのでホワイトにならない)。

だからこそ物体の色合いを明示する「印刷業界やプリンタのインク」で使う色合いの呼称が、
まさに前述「」なのです(笑)・・どうしても検証したければ、絵の具を混ぜてグリ
グリすれば良いです (最後は黒色になる)(笑)

ここで「観察と考察」が得意な人は既にパッと閃いているハズです(笑)・・そうですね「コントラストの低下で白っぽい写りに至る」のは光を相手にしているからで、且つ「各色の透過が適わずに彩度が低下しすぎている状況だから」と、まさに光学系内を透過していく時の光の状況をその原理で説明してしまっています(笑)・・凄いです (皆さんを褒めているのです)!

するとここでこの話の最後になりますが「何故、グリーン色の光彩は流行らずに過ぎ去ったのか???」は、そうなんです。皆さんが自然な発色性を普段当然の如く自分の瞳で見ているので「写真の発色性の忠実さよりも、むしろ解像度の向上のほうに反応してしまったから」とも指摘でき(汗)、光学設計者の企図とは裏腹に、市場の反応は「パープルアンバーブルーのマルチ
コーティング層蒸着
」に靡いてしまったからなのです (結果グリーンは廃れていった)(涙)

当時は、如何にもニッポン人らしい市場反応が現れた結果だったのでしょうが(笑)、詰まる処「解像度の追求こそが正義」として受け取られてしまったのだと考えています(涙)

・・では、なにゆえに今このタイミングでグリーンの光彩を囃し立てるのか???(笑)

答えはこうです・・写真や画の解像度向上を本当に欲するなら「今ドキなデジタルなレンズのままに落ち着いていたハズ」なのに、どう間違えたのか「オールドレンズ沼にドップリ浸かってしまい、もうすぐ口まで塞がりそう!」(怖) と言う状況なのは、その想いの真意は「決して解像度に非ず、それこそ喜び勇んでザイデルの5収差に一喜一憂している様」なのでは・・
ありませんかねぇ〜???(笑)

だからこそ、中間域に位置するグリーン色の帯域を確保するのは、むしろ発色性に於ける収差の影響までも、より明確に認知できるからであり、今ここで
当方が好んで扱う理由こそが・・そこに在るのです!!!(涙)

・・忘却の彼方に葬られたオールドレンズを、今ここに! 本当に楽しいですねぇ〜!(涙)

↑話を戻しましょう(笑) 上の写真は、当初バラし始めた時に、まだ溶剤で洗浄する前の状態を撮影しています。赤色矢印で指し示している箇所にまだ新し目の「白色系グリース」が残っていますが、ヘリコイドのネジ山部分は既に「濃いグレー状」に変質しています。

合わせて、グリーン色の矢印の箇所には黄銅材が経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びしてしまった「緑青」まで生じています。

また一方でブルー色の矢印の箇所には至る所に「10年以上前に流行っていた赤色の固着剤」が塗ったくられています(汗) さらに光学系内のみならず、オレンジ色の矢印の箇所にまで
反射防止黒色塗料」を塗る始末で、本当にどうしようもありません(涙)

↑上の写真はこのモデルのマウント部内部で使う構成パーツで「絞り連動ピンの押し込み動作に連動して、勢いよく絞り羽根を開閉させる開閉アームのパーツ」です。このアームが勢い
よく左右に動くので「シャコン!シャコン!」と絞り羽根が小気味良く設定絞り値まで瞬時に閉じてくれます(涙)

ところがグリーン色の矢印で指し示しているとおり「パーツの一部箇所を削っている (シルバーに削れている箇所)」のがモロバレです(涙)

↑同じパーツをヒックリ返して、今度は反対側を撮影しました。開閉アームの反対側には「絞り値決定キー」と言う、絞り環の「なだらかなカーブ」に突き当たって、設定絞り値を決めているキー (円柱パーツ) が備わります (グリーン色の矢印)。

ところが、そこにまで「赤色の固着剤」を執拗に厚塗し、さらに何と今度は今現在市場流通している「緑の固着剤」まで塗り足しています (ブルー色の矢印)!(驚)

↑上の写真も当初バラしている最中に撮影した絞り環です。内側1箇所に「なだらかなカーブ」が備わり、その勾配に前述の決定キーがカツンと突き当たる事で「その勾配に見合う角度まで絞り羽根が移動して閉じる」ので、設定絞り値まで瞬時に閉じます (グリーン色の矢印)。

勾配を登りきった頂上部分が「開放側」になり、一方その麓部分が「最小絞り値側」です。

ところが、前述の決定キーの根元を「赤色の固着剤緑色の固着剤で執拗に厚塗された」が為に、その盛り上がりが影響して「適切な勾配の角度で絞り羽根が移動できなくなった」と言う因果関係が掴め「絞り羽根開閉異常が起きていた」のが明白です。

そこで何をしたのかと言えば、前述のとおり決定キーの反対側を「削ってしまった」ワケで (シルバーに削れている箇所)、本当にロクなことをしません!(怒)

実際に今回のオーバーホール工程の中で、その実証確認を行い、リアルな現実に「削った箇所が当たって擦れるギリギリの状況」なのが判明し、削ってしまった理由が分かりました。

要は「製産時点に塗布されていなかった不必要な固着剤を厚塗したせいで、決定キーの根元が膨らんでしまい絞り羽根の移動量が不適切に至ったつまり絞り羽根開閉異常が起きた」との因果が示され、その「ごまかしの整備」として削ってしまったのが白日のもとに晒されました(笑)

↑上の写真もバラしている途中での撮影ですが、基台にネジ込んだヘリコイドオスメスを貫く「直進キー」が両サイドに締め付けられているものの「赤色の固着剤」で固めているのをブルー色の矢印で指し示しています。

←左の一覧表は、現在市場流通している「緑の固着剤」を生産しているメーカーのホームページから転載した仕様諸元表です。

すると中腹下辺りにある項目の「破壊トルク※」を確認するとよ〜く理解できますが、ネジ種の大きさに従い塗布した固着剤の破壊状況を数値で示しています。

見るとM6クラスのネジでようやく破壊強度が3.5に到達しますが、それ以下のネジ種では小数点以下の破壊強度です。

・・何を言いたいのか???

オールドレンズ内部に使う小ねじのレベルでは「これら固着剤を塗ったところでたかが知れている」と指摘でき、もっと言うなら「どうしてネジ部に固着剤を入れないのか???」と指摘したいです(汗)

一つ前の「直進キー」のように「小ねじの周りに赤色の固着剤を塗ったところで意味を成していない」のに、平気で所為を施しています(笑)

じっさいにこの塗布した「赤色の固着剤」が剥がれると、どうなるのかと言えば「そのままのカタチでネジ頭と一緒に浮き上がり、やがて固着剤だけが外れる」ので、その剥がれ落ちた「赤色の固着剤」が、オールドレンズ内部で今度は何処に行くのかが大問題になります!(怖)
(当時の赤色固着剤の仕様諸元は当方は知りません)

しかも今回の個体を完全解体していくと「赤色の固着剤緑の固着剤」と言う2種類の固着剤を使っているのが分かり、10年以上前に流通していた「赤色の固着剤」に対し、今現在流通する「緑の固着剤」なので、複数回で過去メンテナンスが施され「おそらくは父子の二世代で整備している整備会社」の仕業ではないかとみています(汗)

プロの職人なのか何なのか知りませんが、父親から教わったがままに、な〜んの疑いも抱かずに今度は息子が同じ所為を続けてオールドレンズを整備しています(汗)・・飛んでもない整備
会社です!(怒)

↑何で当方がこんな説明をしなければならないのか、本当にマジッで頭にきますが(怒)、上の
写真はオールドレンズ内部でよく使われているネジ種を4種類並べて撮影しています。

左端から「イモネジ」に「鍋頭小ネジ」さらに「平頭小ネジ」そして最後右端「皿頭小ネジ」です。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイス切り込みが入るネジ種でネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する。

大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定するだけの場合がある。

他の3種類の小ネジは頭部分のカタチが違うだけに見えますが、実は「それぞれの小ネジに
ちゃんと目的とそのカタチの理由が在る
」のに、今回の個体を整備した過去メンテナンス時の整備者は「二世代に渡って全くネジ種の使い方を理解していない!」と明言できます!(怒)

・・本当に頭にくる!!!(怒)

しかも前述のように、ネジ山に固着剤を塗るのではなく「ネジ頭の周りに塗布している」始末で、おそらくは製産後、一番最初の整備時点からず〜ッとこのように「同じ手法」で整備されてきたのだと推測しています(笑)

・・いったいこれの何処にプロたる伝承技術が隠されているのか誰か説明しろ!(怒)

本当にロクな整備者が居ません(涙)・・マジッで毎回毎回のことで、イヤになってきます(涙)

結局、今回のオーバーホール工程で前述の「決定キー根元の固着剤を完全に剥がし」たところ、問題なく適切な絞り羽根開閉角度を示すようになり、いったい削る必要が何処にあった
のか???・・説明させたいくらいです!(怒)

まるでバカの一つ覚えで(笑)、ネジと言うネジ全ての箇所を執拗に固着剤で固める始末で、高校しか卒業していない当方が「原理原則」を理解できているのに、どうして大学卒のプロの整備者達がこのような為体な整備をヤリ続けるのか、本当に説明責任を果たしてもらいたいです。

以前取材した金属加工会社の社長さんとの会話の中でも「知った顔をするオールドレンズの
整備者が多いのに、アンタはよく理解していて珍しいねぇ〜
」などとお褒め頂き、本当に嬉しかったのを今思い出しました!(涙)・・固着剤を有効に使うなら、先ずはネジ部に塗布するの
です (例え小ネジでも嫌気性の固着剤なら容易く回りません)(笑)

そしてもっと言うなら、まさに今回扱った富岡光学製オールドレンズの多くは、その製産時点に於いて「光学系内に注入していた固着剤には粘度が残されている特殊固着剤だった」のを確認しています。これにもちゃんと理由があり、光学硝子レンズの破壊を招く最大の脅威は「気圧差」だからです(怖) 光学系内をどんなに締付環で硬締めしようとも「決して密閉状態にはできない」のが原理であり、だからこそ空気中を無数に漂うカビ菌の胞子は自由自在に
侵入できています (だからカビが菌糸を伸ばして光学系内に繁殖する)(汗)

すると「粘度を有する固着剤」を敢えて使っていた理由がそこにあり、外気温の変化に応じて光学硝子レンズ格納筒の金属材が極僅かに熱膨張/熱収縮する時、その金属材の応力に反応して「粘性を以てそれら金属材の熱膨張/熱収縮による気圧差に耐えさせる目的」があるからです。

このような光学メーカー自らの長年の研究と絶え間ない努力と情熱から編み出された技術こそが「製産時点」であり、それを何でもかんでも固着剤で固めてしまう今ドキの整備会社の整備が、はたして本当に適切な所為なのか否か???・・当方はいつも問い正すべく警鐘を鳴らし続けている次第です (誰一人指摘しませんが/だから異端児扱いされ問題視される)(涙)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化進行に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群もスカッとクリア極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:11点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(光学系内に極微細な薄い2mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり、A/M切替スイッチや絞り環共々、確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し製品寿命の短命化を促す結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない磨き研磨により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる完全解体を前提とした製品寿命の延命化が最終目的です(笑)

もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)

実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)

その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施すDOHそのものなのです(笑)

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。特にピント合わせ時は距離環を掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで微妙な前後動が適い正確にピント合わせできる素晴らしい操作性を実現しています。
距離環を回すとヘリコイドネジ山が擦れる感触が指に伝わります(神経質な人には擦れ感強め)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-1Bフィルター (新品)
本体『AUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

↑いつもどおり当方所有のマウントアダプタではありますが、ちゃんと事前に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 上の写真は中国製のK&F CONCEPT製「M42 → SONY Eマウントアダプタ」に装着し、合わせてマウントアダプタ内側のピン押し
底面を「凹面」にセットした状態で全く問題がない正常動作である事を確認しています。

赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合にそれが干渉しないよう、約1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後までネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。

この「K&F CONCEPT製M42マウントアダプタ」に関する解説は、ちゃんと補足解説として『◎ 解説:M42マウント規格用マウントアダプタピン押し底面について』で詳しく説明して
いるので、気になる方はご参照下さいませ (別に中国のK&F CONCEPT社からお金を貰って
いるワケではありませんが/皆様の利便性追求を以て解説すると、今度はそのような意味不明
な批判を言ってくる人が居るからウケます
)(笑)。

↑同様今度は日本製のRayqual製「M42 → SαE マウントアダプタ」に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合に、それが干渉しないよう約1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後まで
ネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる
)。

・・当然ながらA/M切替スイッチの設定に限らず絞り羽根開閉は正常です

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最近接撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮っています。

↑f値は「f4」に上がりました。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。もう絞り羽根がほとんど閉じきっているので「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。