◎ Kuribayashi (栗林写真工業) C.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、栗林写真工業製
標準レンズ『C.C. Petri Orikkor 50mm/f2《前期型》(M42)』です。


今回の扱いが累計で30本目になりますが、このモデルを調達する際に注意する点があります。

【このモデルを調達する際にチェックする項目】
光学系前後玉の状態 (特にカビの発生状況)。
距離環を回すトルクが重くなっていないかどうか。

の光学系の状態は、特に前後玉の表面側に「カビが発生しているかどうか」が問題になります。逆に言うと、光学系内のその他の群にカビが発生している事が非常に少ないので、透明度が高い状態を維持している個体が多いです。せっかく光学系内がクリアでも、前後玉にカビが生じているだけで清掃しても薄いクモリが残ったりしますから (カビ除去痕だけ/カビ除去痕に附随する広範囲なクモリなど) 必ずチェックが必要です。

次のに関してはオークションなどに出品されている場合にはなかなか確認する方法がありませんし、出品者の主観的な表現で「スムーズに動く」と書かれてしまうと判断のしようがありません。しかし、このモデルの設計上の問題からもしも重いトルクに至っている個体の場合は例えヘリコイドグリースを入れ替えても改善するのは非常に難しいのが現実です。

今回出品する個体は、光学系の前後玉にやはりカビが発生しておりカビ除去痕が数箇所残っています (特に後玉側表面に数箇所あり/クモリは無し)。しかしヘリコイドの状態が非常に良くてとても滑らかに駆動するよう仕上がりました (このモデルにしては珍しいくらいのレベル)

当方が今までオーバーホール済でヤフオク! に出品してきた価格帯は以下のような状況です。

【当方に於けるこのモデルのヤフオク! 出品/落札価格帯】
(A) 即決価格帯29,500円36,500円
光学系内の透明度が高く、カビ除去痕がほとんど残っていない。
距離環を回すトルクが「重め/軽め」に仕上がっている (トルクムラ無し)。
(B) 即決価格帯22,500円30,500円
光学系内の透明度は高いが、カビ除去痕が前後玉に僅かに残っている。
距離環を回すトルクが「重め/軽め」に仕上がっている (トルクムラ無し)。
(C) 即決価格帯14,500円20,500円
 光学系内の透明度は高いが、カビ除去痕が前後玉に経年並みに残っている。
距離環を回すトルクが「重め」に仕上がっている (トルクムラがある)。

・・ほぼ上記3つに集約され、さらに状態が悪い個体はジャンク扱いで出品して処分しています (過去2本あり)。この中でカビ除去痕ではなくてコーティング層のハガレの場合は、コーティング層に経年劣化に伴う「薄いクモリ」が伴っていなければあまり問題視していません。
何故ならコーティング層が剥がれていても入射光を遮るレベルでなければ写真への影響度が低いからです (但し剥がれている領域が広い場合はハレの出現率が上がったりする)。

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このモデルの光学系は4群7枚の変形ダブルガウス型構成ですが、特筆に値するのが第2群と第3群の貼り合わせレンズの状態がとても良い事です。今まで30本を扱ってきてこの貼り合わせレンズにコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリが生じていた個体はゼロです。さらにカビが発生していた個体も僅か2本しかありません。特に第3群の3枚貼り合わせレンズは、それらコーティング層の経年劣化もカビの発生も一つもありませんでした。

一方、冒頭のとおり光学系の前後玉 (第1群と第4群) については、特に表面側に関してカビの発生率が意外と高く感じます。

と言うのも、当時製産されていた他社光学メーカーのオールドレンズの中には、既にコーティング層の経年劣化が限界値に到達して、極薄いクモリやカビの発生率が高くなっているモデルがあったりするからです。それは例えば光学硝子材の成分に「バリウム質」の含有が多くなると、必然的にカビの発生率も高くなると考えます (栄養源になる有機質だから)

↑上記の文章はご指摘を受けた為に消しています。

【ご指摘の内容】
有機物と無機物の定義をご存知ないようですね。ガラスに添加される各種のバリウムは無機化合物です。勘違い・思い違いでした、というレベルではありません。金属、油脂、修理法など、多岐にわたって勉強せず、経験だけ、理論も根拠も無い思い込みだけ、で修理屋を続けていると、今回の様に「トンチンカンな論理」を今後も展開して、結果、恥ずかしい思いをすることになります。修理のセオリーは何故存在するのか?真剣に考えた方がいいです。

このようなご指摘なのですが、まさしく当方のスキルそのものをご説明頂いているようで申し訳御座いません。以前光学ガラスの腐食に関する論文のような記事を読んで勉強したつもりなのですが、そもそも専門用語自体が理解できていないので消化不良のままの認識です。確か「バリウム」については「無機質」として記載されていた事は記憶していますが、それがどのような経緯で腐食に繋がった解説だったのかを理解できていません。結局そのようないい加減な心構えなのが当方なので、皆様も重々ご承知置き下さいませ。

当方の技術スキルや心構えなど、いろいろに対して非常に適確なご指摘でした。
ありがとう御座いました。

貼り合わせレンズ
2枚〜3枚など複数の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群

さらに冒頭の調達時チェック項目のとおり、距離環を回すトルクに大きく影響しているのがこのモデル (強いて言えば栗林写真工業製のオールドレンズ全て) のヘリコイド (オスメス) の設計です。「非常に薄い肉厚のアルミ合金材ヘリコイド」をメス側に採用してしまった為に、製産時点に塗布されている純正の「黄褐色系グリース」経年劣化に伴い「ヘリコイド (メス側) が撓ってしまいトルクムラが発生する」問題があります。

真鍮 (黄鋼) 製のヘリコイド (オス側) に対して、アルミ合金材のヘリコイド (メス側) がご覧のように肉厚が薄い為に、塗布されているヘリコイドグリースの経年劣化に伴う粘性の低下と共に、ヘリコイドの回転時に肉厚が薄いヘリコイド (メス側) が堪えられずに撓ってしまう現象です。

一度でもこの薄いアルミ合金材のヘリコイド (メス側) が撓ってしまえば、その変形は自然に解消しませんから「重篤なトルクムラ」に至ります。これは例えバラしてヘリコイドグリースを入れ替えてもまず改善させる事ができません (一度撓ってしまったアルミ合金材は真円状態に戻す事ができない)。

これらのことから栗林写真工業という会社は、その成り立ちからして確かに光学メーカーではなかったワケですが、残念ながらフィルムカメラの設計が主体であり、オールドレンズの内部構造を見てもグリースに頼った (メンテナンス性や耐用性まで考慮していない) 設計だったと言わざるを得ません。それはフィルムカメラという機械仕掛けの設計概念 (操作性) とオールドレンズの「トルク感 (軽すぎず重すぎず)」を伴う設計概念とは決してイコールにならないからです。そこにはフィルムカメラ側での機構部の操作性の良し悪しとは別次元の「ピントを合わせる操作性の問題」が顕在するのがオールドレンズ側だからです。

返す返すもアルミ合金材のヘリコイド (メス側) の肉厚がもう少しあれば、まだまだ耐用年数を上げられただろうと惜しい気持ちでいっぱいになりますね。

ちなみに今まで扱ってきた30本中、過去メンテナンスされていた個体は僅か3本だけですから、それほど人気が無いモデルだったのでしょうか(笑) 逆に言えば27本は全て製産時点の純正グリースである「黄褐色系グリース」が経年劣化により相当粘性を帯びてドロドロ状態ですから、自ずとアルミ合金材のヘリコイド (メス側) のトルクムラ発生は、ある意味「このモデルの宿命」なのかも知れません。

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如何にも日本製みたいな昭和臭さを感じる筐体意匠ですが、実装している特異な光学系が写し出す描写には、どこかナチュラルでリアリティを感じながらもインパクトのある写りにとても惹かれます。描写性のポテンシャルは相当なものではないかと評価しています

「栗林写真工業」は1907年に創業の写真用品メーカー「栗林製作所」から始まり「栗林写真機械製作所→栗林写真工業」そして最後の社名であった「ペトリカメラ」と変遷しています。

今回扱うモデルは1959年に栗林製作所から発売された自社初の一眼レフカメラ「Petri PENTA」セットレンズとして用意された標準レンズでした (左写真は1959年当時の栗林写真工業梅島工場の様子)。

発売した翌年の1960年にはフィルムカメラのマウントをスピゴット式のバヨネットマウント (Petriマウント) にいきなり変更したため、僅か1年足らずで消えていったM42マウントの標準レンズになります。
ちなみに、後に発売されるフィルムカメラ「MF-1」の頃に再び登場するM42マウントモデルには、総金属製 (焦点距離:55mm/f1.7や55mm/f1.8) とプラスティック製 (50mm/f1.7) の2種類が存在していたようです。

市場ではまるで底値のような安売りでPetriのオールドレンズが流通していますが、その背景は独自マウント (スピゴット式) であることや、当時からPetriの格付自体が低かったことなどから現在のデジカメ一眼/ミラーレス一眼のためのマウントアダプタがいまだに用意されていないことが一因とも考えられます・・つまりPetriのフィルムカメラでしかPetriマウントのオールドレンズは使えません。

国内でも販売されていたようなのですが、どう言うワケか距離環の 指標値はメートル表記ではなく「feet」表記になっています。輸出品のほうではモデル銘を「A.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (M42)」としていたようですが (もちろん距離環はfeet表記)、どうして国内モデルだけでもメートル表記にしなかったのか分かりません。

当時アメリカでアナウンスされていた広告では「amber-magenta coated (アンバー・マジェンタ・コーテッド)」と案内されているのでコーティング層光彩も日本国内流通品と同じアンバーマジェンタ色だったようです。

国内流通品のレンズ銘板に使われている「C.C.」は「color-corrected coating (色補正コーティング)」を意味する「Combination Coating (複層膜コーティング)」を掛け合わせた略であることが当時のカタログに明記されていました。
輸出向け商品のカタログには「amber-megenta coated」との案内だったので、輸出仕様のモデル銘は頭文字を採って「A.C.」だったことになります。

当時の栗林写真工業での呼称「Combination Coating (複層膜コーティング)」は、単層膜コーティングに対する複層膜コーティングを意味し、通常のモノコーティングに当てはまります。 (マルチコーティングはその後の発展系であり多層膜コーティングとも言います)

ちなみに当時の取扱説明書を見ると、他の交換レンズ群は全てゼブラ柄モデルばかりなので (もちろんM42) 1つ前の世代しか用意されていなかったことになります (つまり発売のタイミング時にセット用標準レンズしか開発していなかったことになる)。

だとすると、この時点で栗林写真工業内では「様子見」だったのかも知れませんね。その結果が翌年のマウント仕様変更へと繋がったのかも知れませんし、或いはカメラ本体のほうが中心的な位置付けでPetriマウントへの繋ぎ役として登場させただけだったのかも知れません。
ロマンが広がります・・。





上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様を集めました。これらの写真からも分かるとおりMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズのような「真円で繊細なエッジを伴うシャボン玉ボケ表出」は少々苦手です。

二段目
ここがダブルガウス型光学系の特徴を現します。Meyer-Optik Görlitzのように真円のシャボン玉ボケの背景に包まれる写真ではなく、口径食や収差の影響を受けた歪んだ円形ボケが重なり合って (溶け合いながら) ザワザワと背景に出てきます。

三段目
さらに溶けた背景ボケは、まるで二線ボケのような印象を残しつつ (決して二線ボケではない) 独特な背景を構成していきます。ワザと故意に背景を調整するとオモシロイ写真が撮れるのが楽しいですね。しかも右側2枚のような「まるで油絵」のような背景ボケ効果 (ピント面のエッジが際立つので) もMeyer-Optik Görlitzでは出しにくいと考えます。

四段目
左端のこのブル〜を出すことがMeyer-Optik Görlitzでは難しいです。発色性の幅が広いからこそ中庸的な色表現の時に偏らずに出てきます。それが2枚目の植物の色で分かりますが、あくまでも記憶色に近いナチュラル的な色の出方をしています。赤色表現も決して誇張感無く違和感がありません。その結果右端のとおりビミョ〜な陰影の表現もキレイなグラデーションとして出し切っています。

五段目
何を置いても左端のこの質感表現能力の高さがモノを言います。被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力は、決して解像感だけに留まらず画全体的な要素の中で上手く見事に表現できるのが当モデルの個性です。金属質・植物・人物・木質感などなどキッチリ表現してくれるのは栗林写真工業製オールドレンズの多くのモデルの特徴です。

光学系は4群7枚の変形ダブルガウス型構成です。第3群の貼り合わせレンズ (通常は2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) は他社光学メーカーも含めこの当時では大変珍しい「3枚の硝子レンズ貼り合わせ」です (後群側の3枚貼り合わせは珍しい)。

なお、Petri製オールドレンズの中でも標準レンズ域で「3枚貼り合わせレンズ」を実装しているのは唯一このモデルだけですから大変貴重です (後に登場する55mm系はすべて4群6枚のダブルガウス型光学系)。そしてピックアップ写真を見ればその拘りが描写性にも如実に表れていると当方は感じます。右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型:1959年発売
光学系:4群7枚変形ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:10枚
A/Mスイッチ:無
フィルター枠径:⌀ 49mm
マウント種別:M42

後期型:1960年発売
光学系:4群6枚ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:5枚
A/Mスイッチ:
フィルター枠径:⌀ 52mm
マウント種別:Petri

ちなみに上記モデルバリエーションの「後期型」はPetriマウントのスピゴット式ではありますが、その後に登場するPetriマウントとはビミョ〜に爪の仕様などが違うので (絞り連動レバー機構部の設計も全く別モノ) 互換性があるものの、フィルムカメラボディが「Petri PENTA V」以外の場合は少々装着しづらい懸念があります。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造には連係させる箇所がほとんど存在しない大変シンプルな設計ですが、筐体サイズを自社製フィルムカメラ「Petri PENTA」に適合させる目的があったのか、或いはコスト管理面から利益確保の為だったのか、必要最低限に考え尽くされた設計なのがバラしてみると判ります。

【注 意】
ここから先のオーバーホール工程で使っている掲載写真は全て過去の別の個体を組み立てた際の写真になります (今回出品する個体の写真ではありません)。当ブログ契約サーバーの容量の問題から毎回写真掲載するのをやめています。
(上の全景写真のみ今回出品個体の構成パーツを撮影した写真になります)

左写真 (2枚) は、当初バラして洗浄しただけのヘリコイド (オス側) と連係パーツ (左側) で、さらに当方による「磨き研磨」を施した後に撮影したのが右側です。

一般的な整備では当方が実施している「磨き研磨」など処置しないので、左側写真の状態で組み上げていくことになります。ところがご覧のように真鍮製のパーツはまず100%間違いなく「焦茶色」に変質しています。あたかも磨いてピッカピカにしているだけに見えますが(笑)、実はこの「磨き研磨」の目的はパーツ表層面が経年により酸化/腐食してしまい変質しているので、その結果生じてしまった抵抗/負荷/摩擦を取り除くのが最大の目的です。

結果、表層面の平滑性が担保されるので不必要なグリース塗布を排除でき、且つ適正なチカラの伝達が期待できるワケで、それは最終的に将来的なさらなる光学系コーティング層劣化を防ぐ意味合いにも繋がります。何故なら、チカラが可能な限り損失せず伝達されるならグリースの塗布量は最低限に抑えられるので、今後数十年の使用に於いてオールドレンズ内部で揮発していくであろう揮発油成分の量も減じられ、最終的に「製品寿命が長くなる」と言う考え方に他なりません。

つまり当方のオーバーホールは「グリースに頼らない整備」であり、それを確実に実現させる為に「磨き研磨」工程を経て作業を進めています。もとを正せば、そもそも製産時点にこれら構成パーツの類はネジに至るまで経年の酸化/腐食など生じていなかったハズであり、可能な限り製産時点の状況に近づけてあげれば、自ずと適切な調整が可能になり素晴らしい仕上がりに至ると言う方針です。

ところが実際にバラしてみると、過去メンテナンス時に施されてしまった不適切な「常套手段 (ごまかしの類)」により組み上げられていることがありますから、当方のオーバーホール作業ではそれらの尻ぬぐいまでさせられるハメに陥ります(笑) その時に必要になるのが「原理原則」であり、バラした個体の「観察と考察」であり、それぞれ千差万別な経年状況の個体別に「最適な調整」を施すことが可能になります。その大前提は「構成パーツが製産時点の状態に限りなく近い」ことに他なりません。

当方の「DOH」は、まさにそれら要素が互いに関連し合って成し得た結果の仕上がりとも言えるワケですね。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

同じ焦点距離50mm/f2クラスで比較した時、例えばRICOHのXR RIKENON 50mm/f2などがすぐに思い浮かびますが、意外にも光学系の大きさはこちらのほうが一回り以上大玉です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
(左写真は今回の個体から取り外した絞り羽根/表裏)

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑10枚のシッカリした造りの絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。絞りユニットは絞り羽根を組み込んだ上から「開閉環」を被せて「C型環」と言う固定環で外れないようにセットします。

実はこのモデルの絞り羽根開閉は「手動絞り (実絞り)」ですから、設計がシンプルであるが故に却って経年の酸化/腐食などが影響してこの絞りユニットの操作性が悪くなります。その調整には相応に神経質な気配りをしないと納得できる仕上がりに至りません。

このモデルはクリック感を伴うプリセット絞り機構を装備しているものの「絞り環操作」は無段階式 (実絞り) ですから、組み上がった時にスカスカの操作感だと絞り環操作が緩すぎますし (すぐに絞り羽根が動いてしまう) 逆に重すぎると使い辛い位置に絞り環が配置されているので操作性が非常に悪くなります。

それら絞り環の操作感を左右するのがこの絞りユニットの組み付け次第で決まりますが、意外と処置するべき方策が思い付かずにそのまま組み上げられてしまう部位だったりします。もちろん絞りユニットである以上、光学系前後群に挟まれているポジショニングですから、ここにグリースを塗るなど以ての外です。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。焦点距離50mmの標準レンズとして考えると、或いはダブルガウス型光学系として捉えると、少々平べったい (薄い) 鏡筒の深さ (長さ) です。それは特に光学系後群側の「珍しい3枚の貼り合わせ」レンズである点の効果が現れています。

つまりこれらのことから当時の栗林写真工業は当モデルを「コンパクトな大きさに作りたかった」ことが伺えます。それは自ずとセットレンズとしての装着先たるフィルムカメラ「Petri PENTA」がコンパクトであることからも自明の理です (バランス的に小さめの標準レンズである必要があった)。

↑絞り環と連動して回転する「制御環」が鏡筒下部に組み付けられることで、絞り羽根が開閉する仕組みです。上の写真「制御環」の高さ (長さ) 分がちょうど鏡筒の繰り出し量に一致します。つまりマウント部直前に配置されている絞り環と連係する為には、鏡筒が繰り出された最短撮影距離位置でも連係動作する必要があるので、その分の長さがあるワケです。

↑こちらは距離環が組み付けられる基台 (指標値環) ですが、マウント部が一体で削り出されています。

このカタチから判ることがあります。マウント部まで含めて一体型でアルミ材削り出し加工を施すことで、結果的に絞り環やプリセット絞り機構部までも包括させてしまい (だからマウント部直前にプリセット絞り環と絞り環が配置されている)、工程数を大幅に省く (利益の確保) と同時に簡素化させてしまい筐体サイズまでコンパクトに仕上げてしまいました・・相当考え尽くされた設計だったのが理解できます。

上の写真を見ると「丸穴」が6箇所空いています。この中で3箇所がベアリングにクッション性を与える「板バネ」の固定用ネジ穴 (コンパクトに造るためにスプリングを使わずに板バネでクッション性を実現している) で、残りの3箇所がベアリングそのモノが入る穴 (赤色矢印) になっています (つまりプリセット絞り環用のベアリングは全部で3個使っています)

プリセット絞り環の操作はクリック感を伴いますが、それを実現するためのベアリングは1個あれば用が足ります。では、残りの2個はいったい何のために備わっているのでしょうか?

答えは「プリセット絞り環の固定用」なのです。つまりプリセット絞り環はベアリング3個で中空で支えられている (別の言い方をすれば浮いている状態) だけと言う珍しい固定方法を採っています。
従って、仮にプリセット絞り環がちゃんと「」マーカー位置にピタリと来るようストッパーを付けなかったとすると、プリセット絞り環を組み込んだ時、ベアリングが3箇所に均等配置されているので、プリセット絞り環は360度どの位置でもクリック感を実現できてしまうと言う設計です・・プリセット絞り環の固定用にベアリングを使うと同時にクリック感を伴う操作性まで可能にした非常に賢い設計です。

そこでスプリングではなく「板バネ」を使っている理由も明確になってきます・・筐体サイズを大柄にしていればスプリングを使っても良いのですが、コンパクト化に拘るためワザと肉厚が必要ない「板バネ」の構造で設計してきたワケです。逆に言うと「板バネ」を使った設計だったがために筐体サイズに拘っていたことまで明確になったと言ったほうが分かり易いかも知れません。

オールドレンズ・・内部の構成パーツをシッカリと観察していくと、その目的や設計者の考えが明らかになりオモシロイですね(笑)

↑アルミ材削り出しによるヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

非常に肉厚の薄いアルミ材削り出し」でヘリコイド (メス側) を切削してしまったので (栗林写真工業製オールドレンズのほとんどが同じ設計概念)、塗布するヘリコイドグリースが経年劣化で粘性を帯びてくると、途端にその抵抗/負荷/摩擦から「ヘリコイド自体の撓り (しなり)」が発生してしまいます。さらに悪い事に、一度撓ってしまったらこの薄いヘリコイド (メス側) を元の真円に戻す方策がありません

つまりこのモデルで「ヘリコイドグリースの経年劣化を放置し続ける」事は将来的な操作性を (例え整備したとしても) 失う事に直結します。逆に言えば製産時点から純正グリースの性質だけに頼った「グリースに頼った設計」だったと言わざるを得ません。

しかし、この当時の日本の他社光学メーカー製オールドレンズをバラしていると、既にそのようなグリースに頼った設計概念は改められ始めている時代に入っており、大手光学メーカーのオールドレンズは設計の見直しや切削精度の向上に努め、工場設備の更新に設備投資していた事が分かります (切削精度のレベルを見れば一目瞭然)。ハッキリ言って栗林写真工業製オールドレンズの (特にヘリコイドネジ山部分の) 切削レベルはそれほど高くありません。

またグリーンの矢印のとおり、距離環を固定する締付ネジ用の穴がこの非常に肉厚が薄いヘリコイド (メス側) に用意されてしまったので、必然的に塗布したヘリコイドグリースの経年劣化が進行したまま距離環を強いチカラで回し続けると「そのチカラの伝達に伴いヘリコイドネジ山が削れていく (アルミ合金材のほう)」現象に至り、まさに悪循環に陥ります。

少なくとも真鍮製ヘリコイド (オス側) に距離環を固定するよう設計していてくれれば、まだこのモデルの耐用年数を延命させる手立てもあったと言うもので残念ですね。その意味でこのモデルの距離環を回すトルクが「重い」個体は意外にも多く市場に流れていますから、ヤフオク! などの出品ページでも「スムーズ/問題無し」などと記載されていても当てになりません (少なくとも当方が入手した個体で適切な出品ページの案内だった個体はゼロ)(笑) 要は売りたいが為に適切な (正直な) 状態を一切明示せずに「ノークレームノーリターン」にしているワケで、そう言う輩がまさに当方と同様の「転売屋/転売ヤー」なのだと言えますね(笑) それを以てして低俗と言わずして同業者の中で何が低俗にあたるでしょうか・・。

↑真鍮製のヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションで ネジ込みます。このモデルでは全部で16箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

上の写真で前述のヘリコイド (メス側) が、どれほど薄い肉厚なのかお分かり頂けるのではないでしょうか。グリーンのライン (縦線) で挟んでいるので、ヘリコイド (オスメス) で肉厚の違いが分かると思います。

すると塗布されたヘリコイドグリースの経年劣化に伴う粘性の発生で距離環にムリなチカラを加えて回した時、その必要以上に加えられたチカラの分だけ「アルミ合金材のヘリコイドメス側のほうだけが膨らむ/撓る」原理をご理解頂けるのではないかと思います。

もっと言えば、最近当たり前になってしまった「白色系グリース」のせいで、整備後僅か数年で粘性を帯びてきますから (早ければ1〜2年) とても数十年後まで適切なトルクを維持させる事は叶いません。

つまりこのモデルは「絶滅危惧種の一つ」と当方では認識しています。

↑プリセット絞り機構の構成パーツを組み込んでから「プリセット絞り環/絞り環」をセットします。「プリセット絞り環」が梨地シルバーな絞り値が刻印されている環 (リング/輪っか) のほうで「絞り環」は円形ツマミを備えた環 (リング/輪っか) のほうです。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて、無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑最近なかなか状態の良い個体を入手できなくなってしまった栗林写真工業製の標準レンズ『C.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (M42)』です。

当方が拘っている描写性の特徴3点を全て体現できます。

【当方が拘る描写性の三大要素】
被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力
距離感や空気感を感じる立体的な表現能力
現場の雰囲気や臨場感を留めるリアル感の表現性

今回出品する個体は、累計30本中でトップに入る「距離環を回すトルク感の軽さ」に仕上げられており、且つ透明度の高いクリアな光学系を維持した個体です。

↑光学系内は非常に透明度が高く、LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です (但し僅かに微細な点キズの集まりが一部あります)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリすら皆無で「驚異的な光学系の透明度を維持」した個体です。第3群の貼り合わせレンズにのみ経年の極微異な点キズが集中している箇所がありますが、パッと見で「/」のように見えてしまいます。3回清掃しても除去できなかった「極微細な点キズ」です。

ちなみに製造番号から後玉のコーティング層光彩が「ブル〜」に輝く「極初期の段階で製産され出荷していた個体」ではないかと考察しています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:11点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(前玉外周寄りに1箇所点状の当てキズがあります/写真には影響なし)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・前後玉表面側に経年相応なカビ除去痕が数点残っておりLED光照射で浮かび上がります。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑10枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環/絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正十角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。クロームメッキ部分や梨地仕上げのプリセット絞り環なども「光沢研磨」したので、当時のような艶めかしい眩い光彩を放っています。いずれも「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・ヘリコイド (メス側) 設計上の仕様から距離環を急いで回そうとしたり強く保持するとトルクがさらに重くなります(クレーム対象としません)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・フィルター枠外周にサビが1箇所あります。

↑距離環を回すトルク感は「これでもか」と言わんばかりに大変軽い印象のトルク感に仕上がっており、且つ距離環の「全域に渡り完璧に均一」なトルクを実現できています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑ここからはこのモデルの「プリセット絞り機構の使い方」を解説していきます。

上の写真で絞り値が刻印されている「梨地仕上げシルバーの環 (リング/輪っか)が「プリセット絞り環」であり、その直下の黒色の環 (リング/輪っか) が「絞り環 (円形ツマミ付)」です。

上下の環が共に薄枠なので、2つを掴んだまま操作すればクリック感を伴う操作性で回すことができます。ただしその際注意が必要なのは「」の上下を一致させたまま操作することです。これをズレた位置のまま回すと内部パーツが変形するので (下手すれば弱い真鍮板なので簡単に折れる) イキナシ「製品寿命」に堕ちます。

まず鏡胴指標値環の「」マーカーの位置に「プリセット絞り環」の開放f値「f2」が来ていることを確認します (赤色矢印)。この時、直下の「絞り環」側もマーカー「」が「f2」位置になっていればOKです (ブルー矢印)。その時、「」は互いに上下が合致しています (グリーンの矢印)。

前述のとおり内部のパーツが折れる懸念があるので2つの環を一緒に操作する時は「必ずが合致している状態で回す」ことを心掛けて下さい。万一内部パーツが折れてしまった場合は修復不可能です (ジャンクになるしか無い)。

今回は例として設定絞り値を「f4」とします。梨地仕上げシルバー環の「プリセット絞り環」側をカチカチとクリック感を伴いつつ回して (ブルーの矢印①)「f4」にセットします。ところがこの操作をしても直下の黒枠環である「絞り環」側は回していないので、絞り羽根は「完全開放を維持」しています。その証拠が「」の位置 (ズレ:下半分) で確認できる仕組みです (分かりにくい仕組みですがグリーンの矢印)。

↑現状絞り羽根はまだ「開放状態」を維持したままなので、ここで距離環を回してピント合わせを行います。カメラボデイのシャッターボタン押し下げ前に「絞り環」側を回して () 絞り羽根を設定絞り値「f4」まで閉じます。するとグリーンの矢印のとおり「」が上下で合致しているので絞り羽根が設定絞り値まで閉じた事が分かります。

↑撮影が終わったら一旦開放位置までプリセット絞り機構を動かして「絞り羽根開放状態」に戻すので、先ずは「絞り環」側を回して () 絞り羽根を「開放状態」にします。グリーンの矢印のとおり「」がまた端に移動して「」が基準「」マーカーに合致します。

↑最初の逆の操作ですが「プリセット絞り環」側をカチカチとクリック感を伴いつつ回して「f2」を基準「」マーカー位置に合致させます ()。この時「」も上下で合致したのでプリセット絞り機構自体が「開放状態」にセットされた事を意味します。

面倒なので、できるなら「プリセット絞り環/絞り環」の両方を指で掴んだまま (を合致させたまま) 操作して頂ければ絞り羽根開閉が簡単です。

↑最初の状態に戻っただけですが、赤色矢印のとおり設定したプリセット絞り値は「開放f2」になり、グリーンの矢印も上下が合致しているので絞り羽根が「開放状態」を表しています。

面倒であればプリセット絞り環と絞り環の2つを指で掴んだまま回しても構いません。

↑ご覧のように距離環が「無限遠位置 (∞)」の時、後玉が最も収納されている状態になりますから最大で「3.65mm」の突出になります。このまま後玉を下向きにして置いたりすると「当てキズ/擦りキズ」を付けかねませんからご注意下さいませ。もちろんカメラボディ側ミラー干渉などもチェックが必要です。

今回の個体は経年使用で「後玉の当てキズが無い」状況ですが、逆に前玉側には「外周附近に当てキズが1点」あります

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」になりました。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。「回折現象」の影響が出始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。