◎ 解説:M42マウント規格用マウントアダプタのピン押し底面について

M42マウント規格」のオールドレンズを今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着して使いたい時、必ず必要になるのが『マウントアダプタ』です。

マウントアダプタ
オールドレンズ側マウント規格とカメラボディ側マウント規格を変換するアダプタリング

↑そして合わせて「M42マウント規格」のオールドレンズにはマウント面に「絞り連動ピン」と言う突出があるモデルが数多く存在します。フィルムカメラ全盛時代フィルムカメラボディに装着後、シャッターボタン押し込みと同じタイミングで「絞り連動ピン」が押し込まれて
設定絞り値まで瞬時に絞り羽根を閉じる」仕組みです。

ところがこの「絞り連動ピン」押し込み動作に関する世界共通の規格取り決めが存在せず、
その挙動や仕様など設計は各メーカーに一任でした。従って上の写真のような「金属製の棒状ピン」の仕様を採ったモデルもあれば「車輪」を突出させる方式のメーカーもあり、さらに「絞り連動ピンの突出位置も太さも長ささえもバラバラ」と言う状況だったのです。

つまりこの「絞り連動ピン」が存在する目的として「シャッターボタン押し込み時」或いは「絞り込み測光時」など、必要が生じて押し込まれるタイミングの時だけ「絞り連動ピンが 押し込まれれば良い」ワケで、フィルムカメラに「M42マウント規格」のオールドレンズを 装着した時必ずしも絞り連動ピンが押し込まれている必要がない仕様が多かったのです。

↑上の写真 (2枚) は、国産の旭光学工業製一眼レフ (フィルム) カメラ「SPOTMATIC」を使い解説していますが、1枚目の写真はシャッターボタン押し込み前の「マウント部の状況」を 撮っています。

M42マウント規格」なのでM42ネジ部が備わりますが、その下部ギリギリの位置に「ピン 押し板」という金属製の板が備わります。そしてシャッターボタンを押すと (ブルーの矢印①) 同時に瞬時にマウント部内部にある「ピン押し板」が勢い良く外側方向に動きます (ブルーの矢印②)。

2枚目の写真ではシャッターボタンを押し込んだ時にこの「ピン押し板」がどのような動きをするのか示して撮影しています。するとシャッターボタン押し込みと同時に「ピン押し板が 手前方向/外側方向に勢い良く動き絞り連動ピンを押し込む挙動をする」のが見て分かります。

この動き方が前述の「必要が生じた時だけ絞り連動ピンが押し込まれる」と言う概念の解説を示しています。

従って今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼に「M42マウント規格」のオールドレンズ、且つ「自動絞り方式」のタイプを装着して使いたい時「必要になるのはピン押し底面を装備したマウントアダプタ」と言う前提条件が生じます。

ところがここがポイントで「M42マウント規格には絞り連動ピンの仕様まで含まれている」と頑なに信じてやまない方が一部いらっしゃり、この「絞り連動ピン」に求められていた当時の状況と今現在が異なる点を全く考慮しない方々/勢力が居ます。

要は絞り連動ピンが押し込まれれば設定絞り値になるのだから押し込む方法は関係ない」と言う理論で追求してくる方々です(笑)

ハッキリ言ってそのような方々/勢力は当方にとってできるだけ相手にしたくない人達です(笑)

今ドキの「M42マウント規格のマウントアダプタ」のM42ネジ部、そのさらに内側に備わる「ピン押し底面」という棚のような出っ張り部分が「絞り連動ピンを押し込む目的」で備わるので、確かにそれらの方々が仰る言い分は正しいと言えば正しいのです。

ところがここにフィルムカメラ全盛時代とは大きく異なる環境の変化が介在している問題を、非常に多くの方々が注視せず当方にクレームしてきます(笑)

フィルムカメラ全盛時代は「撮影時に瞬時に絞り連動ピンが押し込まれる」だったのが今ドキのマウントアダプタでは「オールドレンズをネジ込んでいく時点で押し込まれる」ワケであり「絞り連動ピンの押し込み方が異なる」使い方に変化しました。

すると前述のように「絞り連動ピンが押し込まれたら設定絞り値になるのは至極当然な話」として当方の言い分を全く受け付けないワケです(笑)

この時追求してくる方々の視点は「設定絞り値まで絞り羽根を閉じる役目=絞り連動ピン」と言う認識で凝り固まっていますが(笑)、当方の視点は全く別で「その絞り連動ピンが常時押し込みに耐えられる設計なのか否かが問題」であり絞り羽根が設定絞り値まで閉じる挙動はその次の段階の話なのです (常時押し込みに対応できなければ絞り羽根は正しく開閉しないから)。

・・ここに「認識の相違」が生まれ、当方の言い分はアッと言う間に「自分の整備が悪いのをごまかす為の言い逃れ」と受け取られてしまいます(笑)

そうなると不具合を抱えた整備のままご請求するにも当然ながらご納得頂けず『無償扱い』と言う結末に至る次第です(笑)

このような「オールドレンズに対する認識の相違」が実はオーバーホール/修理などで毎回必ず泣かされるハメに陥る要素であり、どんなに一生懸命仕上げようとも「不具合があると認識 されたらそれだけでアウト!」なのが現実だったりします(笑)

最近は削除されたようで検索してもヒットしませんが以前はSNSでも「本当に酷い整備だ!」などと批判の嵐で、複数の方々が集って当方を特定する動きまで出ていたくらいでした(笑)

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このような「M42マウント規格」に係る認識の問題点が現実として顕在する事をご理解頂いた上で、本題たる「マウントアダプタのピン押し底面について」解説していきたいと思います。

↑今回解説するのは上の写真に並べた「M42マウントSONY Eマウントアダプタ」です。SONY製ミラーレス一眼などで「自動絞り方式のM42マウント規格のオールドレンズ」を装着して使えるようにする変換アダプタです。

K&F CONCEPT製旧型モデル (中国製)
K&F CONCEPT製新型モデル(中国製)
K&F CONCEPT製プロバージョンモデル(中国製)
Rayqual製M42−SαEモデル (日本製)

ひいきが無いようちゃんと日本製も混ぜました・・(笑)

までいずれのマウントアダプタもすべて内側に「ピン押し底面」が備わります (赤色矢印)。この棚のような出っ張り部分 (ピン押し底面) が備わるのでオールドレンズをネジ込んで いくと次第にマウント面の絞り連動ピンがグイグイと押し込まれていくワケです。

↑まずは K&F CONCEPT製旧型モデルで最近はおそらくもう市場流通していないタイプと思われます。新旧型判別は「グリーンの矢印で指し示したオールドレンズ側マウント面に突出が無く平坦なマウントアダプタが旧型」です。

マウントアダプタの外回り3箇所均等配置で「ヘックスネジ0.9㍉」が締め付けられているので、それを緩めます (完全に外さないほうが良い/5周くらい回す程度で良い)。

↑すると上の写真 (2枚) のように「M42マウントネジ部 (左側)」と「ピン押し底面 (右側)」
さらに本体マウントアダプタと分離します。

1枚目の写真では右側の「ピン押し底面に窪みがある」として「凹面」と明記しています。
この落ち込み/窪みは「約0.49㍉」分になります。

一方2枚目写真右側は「ピン押し底面は平面状」なのがグリーンの矢印を見ると分かります。

↑「M42マウントネジ部」と本体とに跨がるようにマーキングでキズを入れてあります。こうする事でM42マウント規格のオールドレンズをネジ込んだ時に「指標値が真上に来る目安」として使え、何度分離させて「ピン押し底面の深さを変更しても真上の位置がピタリと合う」ワケで、意外と便利です(笑)

↑今度は K&F CONCEPT製新型モデルです。前述のとおりオールドレンズ側マウント面に「約1㍉弱の突出がある」のをグリーンの矢印で指し示しています。同様「ヘックス1.3㍉」を使い外回りの3箇所均等配置を緩ます (3周ほど緩めればOK)。

↑やはり「M42マウント規格ネジ部」と「ピン押し底面」及び本体の3つに分離します。さらに「ピン押し底面は両面使い」なのがグリーンの矢印で指し示され「0.49㍉」の窪みも同じです。

↑同様ネジ部と本体に跨がるようにマーキングすると便利です。オールドレンズ側マウント面に突出があるのが分かりますが、この突出のおかげで例えば「富士フイルム (FUJICA) 製オールドレンズの開放測光用の突出」が避けられたままちゃんと最後までネジ込めるのでとてもありがたい機能です (EBC FUJINONなど)。同じようにマウント面に突出があるマミヤ光機製オールドレンズも干渉せずに最後までネジ込めます。

↑最後は K&F CONCEPT製プロバージョンモデルで同様オールドレンズ側マウント面には「約1㍉弱」の突出が備わります (グリーンの矢印)。外回りに4箇所均等配置で締付ネジが 備わり「ヘックス1.3㍉」を使い緩めます (3周ほど緩めればOK)。

↑すべて同じですが、「ピン押し底面が両面使い」であり窪みの深さは「約0.49㍉」です。もちろんオールドレンズ側マウント面の「約1㍉弱」の突出も同じです。マーキングすれば 利便性が良いですね。

ここまでの解説で要は市場流通している「M42マウント規格」のマウントアダプタではこのK&F CONCEPT製のみが「ピン押し底面の両面使い」が叶い、オールドレンズのモデルにより絞り連動ピンの挙動に伴い「絞り羽根開閉異常」或いは「A/M切替スイッチ異常」など起きた際にひっくり返して付け替えるだけでたいていの不具合は解消できます。

例としては絞り羽根を閉じていく時「f8で停止してそれ以降f16まで閉じない」などと言う 症状がまさにこの「ピン押し底面の深さ問題」で解消できます。

たかが「0.49㍉」くらい深さが違うだけで「絞り羽根開閉異常が正されるワケがない」と 認識される方々も確かに居ますが、当方の言い分を信じて試してみたら「本当にまるでウソのように改善された!」と大喜びで感謝メールを送ってこられた方も多く(笑)、もちろん不具合の要因が別の問題で絞り連動ピン押し込みの強さ (ピン押し底面の深さ) で改善できない症状もあったりするので、必ず改善するとは言いきれません。

もっと言うなら当方が今まで10年間で扱ってきた3,000本を超えるオールドレンズの個体数の中で、当方データベースの記録を集計すると約8割以上の個体で「過去メンテナンスが施されている」ワケで、その過去メンテナンス時の整備者により「ごまかしの整備」が施されて いる事も多く、必ずしもピン押し底面の深さだけで改善できない与件がそもそも顕在する状況だったりしますから、そのようなオールドレンズを下手にバラすと「結局不具合が残ったのはアンタの整備が悪いからだ!」に繋がっていく背景になる事もありました(笑)

↑ちなみに最後の4番目は日本製Rayqual製マウントアダプタで「 M42−SαEモデル」ですが、前述のとおり内側のピン押し底面を装備しているものの「深さ調節はできない」ワケで、装着するオールドレンズによっては「絞り羽根の開閉異常」が起きる懸念があります。

特にピン押し底面の深さが「約5.92㍉」とほぼ6㍉に近いのでオールドレンズ側マウント面の絞り連動ピンの出っ張り具合が短いと最後まで押し込まれない為に「途中で絞り羽根が閉じるのをやめてしまう絞り羽根開閉異常」に至ります。

当方がこのように指摘するとまた批判され「中国製よりも工作精度が高い日本製を貶しているK&F CONCEPT社と関係がある人」或いはK&F CONCEPT社製品を売りたい人などなど・・ 言う人が居るから笑ってしまいます(笑) 何がなんでも当方を貶めたいのでしょう(笑)

確かにネット上を見ていると中国のK&F CONCEPT社と関わりがあると自ら明言している日本人も居ますが(笑)、残念ながら当方は一切関係がありませんね(笑)

またさらに「日本製マウントアダプタ信者」が圧倒的多数なのも間違いないワケで、このように問題点を指摘しただけで「当方の整備レベルのほうが問題だ!」と論点をズラしてくる人も過去に居たりしました(笑) まさしくあ〜言えばこ〜言うみたいな話です(笑)

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以上当方のオーバーホール/修理作業中にチェックしている「M42マウント規格」のマウントアダプタを集めて解説してみました。

但しそうは言っても「絞り羽根開閉異常はアンタの整備が悪いからだ!」と頑なにクレームをつける方々/勢力もいらっしゃるので重々ご承知おき下さいませ。当方の技術スキルはその方々に言わせると相当低いレベルとの話ですから信用/信頼は仇となるかも知れませんね(笑)

ちなみに自動絞り方式を採っている「M42マウント規格」のオールドレンズでも、その自動 絞り方式の挙動を支える内部構造や構成パーツなどは同一メーカーでさえもモデルの変遷と 共に変わっていく場合がありますし、もっと言うなら前述のとおり「常時押し込みを全く想定していない設計」も間違いなく顕在するので、単に「絞り連動ピンが押し込まれれば絞り羽根が設定絞り値まで閉じる」との認識に凝り固まると、そういう人は「該当するオールドレンズの真の不具合を認識できない人」とも言えます(笑)

そのような方々はプロのカメラ店様や修理専門会社様に修理依頼されるのが間違いなく安全 だと思います(笑)