◎ Rodenstock München (ローデンストック) Rodenstock-Eurygon 30mm/f2.8 (zebra)(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、旧西ドイツは
Rodenstock製広角レンズ・・・・、
Rodenstock-Eurygon 30mm/f2.8 (zebra) (M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時の旧西ドイツはRodenstock製広角レンズ「30mm/f2.8」のオールドレンズは今回の扱いが初めてです。

まずは、このような大変希少価値の高いオールドレンズのオーバーホール/修理を賜り、ご依頼者様に感謝を申し上げます・・ありがとう御座います!(涙)

・・ただただありがたい想いで心が熱くなります(涙) ありがとう御座います!

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Rodenstock (ローデンストック) はドイツの老舗光学メーカーの一つで、四世代にわたる家族経営光学メーカーです。創始者たる「Josef Rodenstock (ヨーゼフ・ローデンシュトック)」が1877年にドイツのバイエルン州ヴュルツブルク市で創業したのがスタートになります。

1953年には三代目「Rolf Rodenstock (ロルフ・ローデンストック)」氏に会社経営が引き継がれ、世界的に活躍する光学製品企業の一員としてその名を広めています (右写真は1982年撮影)。なお旧西ドイツ時代を経て1970年代後半〜1980年代の商工会議所会長職歴任など、戦後ドイツの著名人リストに名を連ねています。

1954年以降積極的に35mm判の製品を開発し発売していきますが、その中で当時世界規模で一時的に流行った「ゼブラ柄モデル」は1955年から順次追加発売していきます。

今回扱ったRodenstock-Eurygon 30mm/f2.8 (zebra) (M42)』は1956年に登場したと推定できます。合わせて戦前〜戦中から当時の主流だったレンジファインダーカメラ向けモデルも製産を続けており、例えば「RETINA REFLEXシリーズ」向けのモデルも数多く追加しています (右写真はKodak RETINA REFLEX S)。

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
ネット上の実写がとても少ないですが、左端から円形ボケや収差ボケの状況をチェックする為に実写をビクしています。円形ボケのエッジ表現がキツイので、収差ボケで崩れていく際もエッジの誇張感が残ったままになり、背景ボケの質としては少々煩めの印象です(泣)

右側2枚では発色性をチェックしていますが、意外にもナチュラルな色付きでピント面の誇張感もなく違和感を感じない自然な印象です。

二段目
ここでは陰影部分のグラデーションをチェックするつもりでピックアップしています。左側2枚の写真を観ると、暗部への会長がとても自然でストンと墜ちていく傾向は感じられず、とても素直で観やすい印象です。また暗部との協会の会長もギリギリまで粘っている感じがちゃんと写真に残っていて好感が持てる写りです。右側2枚の実写では被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さをチェックしています。それほど高い印象はありませんが、決してノッペリした印象には墜ちず、相応に質感表現能力の高さを感じます。

三段目
ここではコントラストをチェックする意味合いでピックアップしましたが、カメラボディ側のフィルター処理が多少かかっているようにも見えます。しかしそれでもやはり暗部への階調がとても緩やかで安心して観ていられます。

光学系は6群7枚と言う大変贅沢な光学硝子レンズの枚数を実装してきているレトロフォーカス型構成です。基本成分は右構成図の 色着色した3群3枚トリプレット型なので、実写を観た時のピント面の鋭さ感に誇張感が纏わり付かず自然な印象を受けるのも納得できます。

逆に言えばその意味では極端にピント面の鋭さ感を期待すると今一つ消化不良に陥るかも知れませんが、この当時のモデルとして焦点距離:30mmを勘案すれば当方の気持ちとしては充分な鋭さ感を表現できていると感じます。

それよりも、やはりナチュラルで人の瞳で観たがままの印象に写真を残せている部分に絶大な魅力を感じますね(笑)

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。後でちゃんと解説しますが(笑)、ご覧のように絞りユニットは光学系後群の後玉直前に配置されている少々珍しい設計です。

確かに基本成分が3枚玉トリプレットなので後玉の光学硝子レンズが1枚しかないのは納得できますが、その分前群側の贅沢な光学硝子レンズの配置枚数が気になります(笑) 第2群に貼り合わせレンズまで配置しているので色消し効果を狙っているとしても、相当気合いが入った光学設計です。

ちなみに光学系各群の放射線量は総じて0.07μ㏜/h以下ですが (第1群第6群)、各光学硝子面に蒸着されているコーティング層は、最後の光学系第6群後玉だけが「パープルアンバー」で、第1群〜第5群までは「ブル〜系」ですから何某かの意図を感じます。

なお、このモデル銘「Eurygon」はドイツ語発音すると何回聞いても「アイリゴン」に聞こえます (Google翻訳)。一方ラテン語/英語発音させると「ユリジェン」に聞こえます。和訳表示させても「エイリゴン」なのですが、本来ドイツ語発音講座などで調べていくと「Eu」の発音が「オイ」になると解説しているので、結果「オイリゴン」になるのかも知れません・・ウ〜ン、よく分かりません(泣)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。先ず一番最初に今このブログをご覧頂いている皆様向けに解説しておきますが、今回扱ったRodenstock製モデルもやはり「懸垂式ヘリコイド駆動方式」を採っており、鏡筒の直進動は「ヘリコイドのオスメスと直進キーの2つだけで繰り出し/収納を行う方式」です・・当方では、このような鏡筒の駆動方式を以て「懸垂式ヘリコイド駆動方式」と呼称して、一般的なヘリコイドのオスメスを確実に保持した状況の中で鏡筒の繰り出し/収納を執る方式と区別しています。

それには理由があり、今まで扱ってきた旧西ドイツのSchneider-Kreuznach製オールドレンズを筆頭に、A.Schacht Ulm製やSteinheil München製、或いは先日のISCO-GÖTTINGEN製、そして今回のRodenstock München製など、これら5つの光学メーカー製オールドレンズのヘリコイド駆動方式が「懸垂式ヘリコイド駆動方式」を積極的に採った設計が多用されています。

例えばヘリコイドメス側のネジ山数に対してヘリコイドオス側のネジ山数が極端に少ない場合は、必然的にヘリコイドメス側のネジ山は深さが長くなり、その中を薄い/少ないネジ山数のヘリコイドオス側が直進動する設計。

或いは今回のモデルのようにヘリコイドメス側が薄く短いネジ山数に対して、ヘリコイドオス側が長大でネジ山数が多く「ヘリコイドメス側の少ないネジ山を貫通して長く深さがあるオス側が直進動する逆の立場の設計」と、いずれもネジ山と直進キーと言うパーツ1つだけで鏡筒が支えられている状況に至り・・これを以てして「懸垂式ヘリコイド駆動方式」と呼称して分けています。

その一方で当時の日本製オールドレンズや旧東ドイツ側、或いは同じ旧西側でも他の光学メーカー製モデルに限ってヘリコイドオスメスのネジ山の長さがほぼ互角になり、鏡筒の保持は直進動に対してシッカリと確実な設計です。

どうして前述のこれら5つの光学メーカーの製品だけが近似した設計概念を好んで採っていたのかは不明ですが、整備する上でこれらの特徴を加味して仕上げていかなければ「適切なトルク制御が難しい」と指摘でき、整備面での技術スキルとして「高難度モデル」に入ります(泣)

その点も踏まえ今回のオーバーホール工程解説を試みたいと思います。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
無限遠合焦が完璧にアンダーインフ状態で、おそらく全く合わせていない仕上がり状態。
距離環を回した時にスカスカ感を感じる箇所がありトルクムラが多い印象。
 絞り環のクリック感が少々硬めの印象。
マウント部がガチャガチャしている (微細なガタつきがある)。

《バラした後に新たに確認できた内容》
白色系グリースが塗布されている。
おそらく各部位の組み立てが適切ではなくデタラメに仕上げてある。
マウント部の締付固定を緩いまま組み上げていて、それでトルクを軽めに抑えている。

その他、まだ細かく見ていくと何点か問題点がありますが大きな問題点は上記になります。

そもそも当初バラす前の実写チェック時点で無限遠合焦が全く合わず、ギリギリでアンダーインフ状態なのではなく完璧にズレまくっていて「まるで玉ボケ状態の描写」で、過去メンテナンス時にとても無限遠位置を合わせた痕跡を感じ取れません(笑)・・さすがにここまでズレまくりなのは酷すぎます(笑)

・・海外オークションebayだと何でもアリで背筋が凍りますね(怖)

こんなオールドレンズをまともに無限遠位置合わせでゼロから調べていったら何日必要になるのか分からないので(泣)、今回のオーバーホール工程では「原理原則」から大凡の無限遠位置のアタリ付けを行い、そこから組み上げていき最後に光学系をセットして実際の無限遠合焦を突き詰めていく「逆手法」で仕上げていきます。

今までに扱いがない初めてのモデルなので、本来なら「急がば回れ」なのでしょうが(笑)、如何せん「懸垂式ヘリコイド駆動方式」となれば「内部構造よりも組み立て手順のほうが最重要」なのは分かっているので、最短距離で詰めていきます(笑)

逆に指摘するなら、そのように組み立て手順を優先せずに「バラした時の逆の流れで組み上げてしまったごまかし整備の個体」など、数多く見てきているので同じ轍は踏みません(笑)・・世の中、そういう整備者が多いので、はたしてそれでも整備会社に在籍していられると言うのはたいしたものだと感心している次第です(笑)

・・ウソだと思うならこのモデルのオーバーホール工程を納得づくで理解できるか否かです。

↑上の写真は絞りユニットや光学系前後群が格納される「鏡筒」を、前玉側方向から覗き込んで撮影していますが、赤色矢印の解説のとおりこのモデルは「光学系第6群の後玉がくっついている!」(驚)・・と言うオドロキの設計です(怖)

このモデルは6群7枚のレトロフォーカス型構成ですが、光学系第6群は「後玉」にあたるのに、それがアルミ合金材を切削して仕上げられた鏡筒に「モールド一体成形」で実装してあるのです!(驚)

上の写真では、前玉側方向から覗き込んで撮影していますが、ピントを鏡筒内壁の一番奥に合わせているので、その関係で後玉の光学硝子レンズはぼやけて写っています。

↑光学系第6群の後玉はこんな感じで鏡筒最深部に「モールド一体成形」で組み込まれており取り外す事ができません (上の写真は前出の鏡筒をひっくり返して後玉を撮影しています)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑8枚実装されている絞り羽根の一部に、上の写真赤色矢印で指し示したような「赤サビ」がキーの根元にまで到達しており、このような状況がさらに悪化して酸化/腐食/錆びが進行すると「キーの脱落」に至り「製品寿命」になります (上の写真の状況ではまだ心配するレベルではない)(怖)

↑そもそも今回の個体は当初バラす前のチェック時点で「絞り羽根には油じみが一切無かった」にもかかわらず、絞り羽根の一部のキーには「赤サビ」が生じていたワケですが、その因果関係をこれから解説していきます。

上の写真は鏡筒最深部に組み込まれる「絞りユニット」の構成パーツで「位置決め環 (左) と開閉環 (右)」です (赤色文字)。位置決め環の丸穴に絞り羽根の位置決めキーが刺さり、そこが軸となって開閉環が回った時に開閉キーが溝に入っているので「角度を変える事が適い次第に閉じたり開いたりする原理」です。

もしも開閉環側まで丸穴になっていて、そこに開閉キーが刺さってていたら「絞り羽根の表裏面でキーが丸穴に刺さっているので絞り羽根は角度を変えられずに固まってしまう」つまり絞り環操作できない/絞り環が一切微動だにしない状況に至りますね(笑)

・・そういう事柄がこれら解説を読んですぐに理解できているのか整備者には問われます(笑)

さらに今回のモデルでは、上の写真で赤色文字で指し示した箇所だけが「製産時点にメッキ加工」されておりパープル色です。ところがその一方でグリーンの矢印で指し示している箇所は「アルミ合金材の平滑仕上げ処理」が施されており、合わせてブルーの矢印の箇所も「接触面の処理」が必須です (見た目ではグレー色のアルミ合金材アルマイト仕上げ)。

しかし当初バラした直後はこの絞りユニット内には過去メンテナンス時にグリースが塗られていたのが残っていました・・つまり「絞り羽根が錆びてしまったのは経年劣化だけに限らず不必要なグリースをこの絞りユニット内に塗ってしまったのがイケナイ」のです。

通常、一般的に、絞り羽根の油染みは前述のとおり「経年の酸化/腐食/錆びによりキー脱落の危険性を高める」事からちゃんと清掃して油成分を完全除去し「製品寿命の延命処置」こそが整備目的だったりします。

・・それを敢えてグリースを塗ってしまう神経が全く以て信じられません!(怒)

どうして「平滑処理」や「接触面処理」が必要なのかと言えば「アルミ合金材同士なのでグリースを塗らずに平滑駆動を維持させる目的でそう言う設計を採っている」からこその事実なのです。

・・それを無視して簡単に安直にグリースを塗って済ませる考え方が許せません!(怒)

技術スキルが高い整備者なら、こんな解説をダラダラと長く書き連ねずとも写真を観ただけでパッとすぐに理解している事でしょう(笑)

↑さらにプラスで指摘すれば、上の写真は「絞りユニットを締付固定する締付環」を撮影していますが、ひっくり返して絞りユニットの開閉環と接触する方向から撮っています。すると同じように赤色文字で指し示した箇所だけが製産時点からのメッキ加工で、一方「グリーンの矢印で指し示した場所だけが接触する目的の平滑処理」と言う設計です。

つまりグリースなど塗らずともクルクルと開閉環が滑らかに、何一つ抵抗/負荷/摩擦を生ずる事なく回転できる設計を採っているのです・・どうしてそのような設計の箇所にグリースを塗るのでしょうか???(怒)

↑鏡筒最深部の光学系第6群後玉直前に絞りユニットを組み込んだところです。絞りユニットの開閉環が入っていて (絞り羽根を押さえ込んでいて) 且つ締付環で締め付け固定されています (赤色矢印)・・当然ながら今回のオーバーホール工程では一切グリースなど塗っていません (当たり前の話です/絞りユニットにグリースなど塗りません)(笑)

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。上の写真では写真の上方向が前玉側方向になります。すると鏡筒の外周には長大でネジ山数の多い「ヘリコイドオス側」のネジ山が切られています。

また鏡筒側面にはスリット/切り欠きがあり、そこに「制御ガイド」なる溝があるパーツがネジ止めされています (赤色矢印)。このガイドはブルーの矢印のように左右に動くので、絞りユニット内の「開閉環と連結していて絞り羽根を閉じたり開いたりする原理」ですね(笑)

さてここでのポイントはグリーンの矢印で指し示している「ヘリコイドオス側のネジ山の長さ/深さ」と「制御ガイドの溝の長さが同一」である点です。これをシッカリ理解していなければこのモデルのトルク管理/適切な制御は不可能です(泣)

↑上の写真はこの鏡筒 (左) のさらに前玉側方向に追加でセットされる「光学系前群格納筒 (中央)」と「フィルター枠 (右)」を並べて撮影しています (赤色文字)。

要は6群7枚のレトロフォーカス型光学構成なので、鏡筒の深さだけでは (言い替えれば繰り出し/収納の長さだけでは) 全く以て足りないので、追加で光学硝子レンズ群を組み込む為の「格納筒が必要」だと言うお話です(笑)

つまり、とても多くの方々が思い込みで勘違いしますが、オールドレンズの焦点距離と光学系構成の「実態の長さ」は同一ではないと言うお話です。同じレトロフォーカス型光学系の設計でも、コンパクトにまとめてしまった光学設計もあれば、今回のモデルのように贅沢三昧な光学設計を採って製品化している場合もあるので、同じ焦点距離30mm前後としても、これら鏡筒と光学系格納筒との長さの実態は同一にはならないのです。

だからこそ「いったいこのモデルはどんな光学系の構成なの???」と言う情報が必要なのであり、合わせてそこから内部構造の察しが付くと言う話なのです。

↑フィルター枠に光学系前群格納筒をネジ込んで「固定用イモネジ」1本を使って締め付け固定したところです (グリーンの矢印)。するとそのフィルター枠の直前までネジ山が備わるので、そのネジ山が鏡筒内にネジ込まれ光学系前群が鏡筒 (右) にセットされる設計なのが分かります。

↑光学系の最後たる第6群後玉は、前の工程で鏡筒のお尻にモールド一体成形されていたのがもう分かっているので、他の第1群 (前玉) 〜第5群を並べて撮影しました (赤色文字)。

↑同様に第1群 (前玉) 〜第5群を今度はひっくり返して裏面を撮影しています (赤色文字)。第2群だけが貼り合わせレンズです。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

↑すると先ほどのフィルター枠まで装着してある光学系前群格納筒 (左) のお尻部分 (最後) には上の写真のように「光学系第5群 (右)」がネジ込まれます (グリーンの矢印)。

↑こんな感じで光学系第5群がキッチリとネジ込まれて、このフィルター枠からの格納筒に「第1群 (前玉) 〜第5群まで」が組み込まれます (赤色文字)。従ってこの部位が丸ごとソックリそのまま鏡筒にネジ込まれるので「絞りユニットの直前は光学系第5群」であり「絞りユニットの背後は後玉1個だけ」で6群7枚のレトロフォーカス型構成と言うお話しです。

・・これで当方がウソを拡散しているワケではない事が理解されたでしょうか???(笑)

さて、それはともかく (それを説明したくて長々と解説してきたのではない) (笑)、ここで一番重要なのは「フィルター枠のネジ込み停止位置がイモネジで決められている」点です!

これをちゃんと読み取ったのか否かが「整備者の技術スキルとして問われている」次第です。イモネジは1本しかフィルター枠には刺さらないので、合わせて製産時点の下穴も1個だけですから、イモネジの締め付け痕が2つも3つもあったら過去メンテナンス時にデタラメな組み立てをしていた事が判明してしまいます(笑)

今回の個体はイモネジの締め付け痕が全部で3箇所ネジ山部分に残っており、そのうちの「1つだけがちゃんとドリルで穴開けした製産時点の下穴」であって、今回のオーバーホール工程ではちゃんとそこにイモネジで締め付け固定しました。

・・何を言いたいのか???

つまり光学系前群格納筒をどのネジ山のところまでネジ込んで良いのかを確定しているのが「フィルター枠固定用のイモネジの役目」なので、そこをテキト〜に締付固定したら「適正な光路長がその時点で狂ってしまう」事を執拗に述べているのです!

それを単にフィルター枠を固定する場所だからとテキト〜に整備するから、イモネジの締め付け痕が幾つも過去メンテナンス時に残ってしまうのです。

・・違います!光学系前群第1群〜第5群までの光路長確保が目的です!(泣)

如何ですか???・・こう言うのが「原理原則」であって「どうしてそこにイモネジが必要なの???」の根拠と理由そのモノなのです!(泣)

それを理解せずに単にバラした時の逆手順で組み立てていくから、仕上がるとピントが甘い印象の写りになったりしてしまい、それを「レトロフォーカス型だからねぇ〜」と言って済ませてしまいます(涙)

・・とんでもない話です!!!(怒)

↑工程を進めます。上の写真は「距離環やマウント部を組み付ける為の基台に全てのパーツが集約する」事をグリーンの矢印で指し示して解説しています。このモデルでは光路長が長大なので(泣)、それを補う目的で「ヘリコイド筒」を別設計にしてちゃんと用意しています。

一方で「絞り値キー環」や「連係環」などが介在して、結果的に「絞り環操作の機構部として機能させるパーツ群」がまとまって基台の中に組み込まれる事を表しています。

↑左側の「基台」の外壁には一部に「アルミ合金材の平滑処理面」が用意されていて、合わせて右隣に並べた「連係環」の外周も同様「平滑処理面」です。

ところが基台の内側 (その連係環が入る場所) は製産時点の単なるパープル色のメッキ加工です (赤色矢印)。ここにも当初バラした直後は「白色系グリース」が塗られていましたが、経年劣化で酸化/腐食/錆びに至っていました (つまり平滑どころかグレー色にキズだらけだった)(泣)

上の写真ではピッカピカに光り輝いていますが(笑)、それはあくまでも当方が「磨き研磨」にプラスして、ちゃんと「平滑処理」を施したからピッカピカに光彩を放っているワケで、溶剤で洗浄したらすぐにこうなる話ではありません (そんな簡単な話ではない)。

それをちゃんと「平滑処理」せずにグリースでごまかすから、整備のたびに擦れ痕が増えていってどんどん「製品寿命」へと向かっていってしまうのです(涙)

何故なら、このような「アルミ合金材の平滑処理面」の接触面が互いに擦れ合って、経年でどんどん摩耗が進むとどうなるのか???・・そう言う事柄にまで考えを巡らせていないから「グリースに頼ったごまかしの整備」が横行します(涙)

逆に指摘するなら「バラした時の逆手順で組み立てれば良い」との考え方をしている限り、その整備者のスキルは一向に向上しませんね(笑)

このような「アルミ合金材の平滑処理面」の経年摩耗が進んでいくと、次第にその擦れ痕の摩耗から「互いのパーツとの間隔/距離が広がり始めて、内部でスタック現象 (抵抗/負荷/摩擦に拠り金属質表層面自体が互いに融解を始めて固まる現象) が始まる」ために、最終的に本当にグリースを塗らない限り駆動しない状況へと変質していきます。するとその時、まさにグリースのチカラに頼り切るしか対応できなくなりますが、本来グリースを塗布するつもりで設計していないので「グリースを塗布してもすぐに短い期間で再びスタック現象が始まり製品寿命を迎えていく」状況に至ります(涙)

だからこそ、このように「単なるメッキ加工 (パープル色の箇所)」なのか「アルミ合金材の平滑面」なのか、或いはアルマイト仕上げなのか黄鋼材を介在させているのか・・などなど、凡そ金属材の相違点をシッカリ「観察と考察」する必要があるのです。その結果、初めて「本来在るべき姿」としてオールドレンズが仕上がっていくべきなのです。

・・いったいこの理論の何処が間違っていると言うのでしょうか???(笑)

↑「絞り値キー環」はご覧のように絞り環の設定絞り値に準じた位置で丸穴が空いていて、そこにベアリングがカチカチとハマるからクリック感を実現する原理です。

↑こちらはヘリコイド群でアルミ合金材のヘリコイドメス側を左側に立てかけています。「直進キーガイド」と言うスリット/切り欠きが両サイドに備わります (グリーンの矢印)。

↑実はこのヘリコイド群のベース環も「内外がマットで微細な凹凸を伴う梨地メッキ加工仕上げ」で製産時点に加工されているのを赤色矢印で指し示して解説しています。ここにはヘリコイドのオスメスがネジ込まれる部位なのに (当然ながらヘリコイドオスメスのネジ山にはヘリコイドグリースが塗られる) フツ〜のパープル色メッキ加工ではなく、わざわざ「マットで微細な凹凸を伴う梨地メッキ加工仕上げ」に仕上げているのです。

・・このような設計にしたその意図とは???

経年でグリースが流れ着くのを嫌っている証です。つまりヘリコイドがネジ込まれるのに「そのネジ山だけにグリースが塗布されてそれ以外には流れ出さないでほしい」との明確な設計者の意図がここに示されています!(驚)

なかなかこう言う神経質な設計は見ませんが、然し現実にリアルにそう言う加工が施されている以上、グリースが附着するのが嫌なのです(笑)・・その根拠/理由は後の工程で判明します。

↑上の写真はこのモデルで使っている「シリンダーネジ」ですが、一般的なシリンダーネジとは設計が違い、赤色ラインの部分がネジ部からさらに突出しています (赤色矢印)。

シリンダーネジ シリンダーネジ
円柱の反対側にネジ部が備わり、ネジ部が締め付け固定される事で円柱部分が他のパーツと連携させる能力を持ち、互いにチカラの伝達が実現できる役目として使う特殊ネジ

一般的なシリンダーネジは左写真のような特殊ネジで、ネジ部の先には突出など用意されません。

↑こんな感じで基台に対して前の工程でグリーンの矢印で指し示したように幾つかのパーツが組み込まれて、最後に「連係キー」として前述のシリンダーネジが刺さります・・このシリンダーネジ/連係キーはブルーの矢印のように回ります。

↑この完成した基台の内側を覗くとこんな感じで「連係キーの突出部分がちゃんと飛び出てくる」次第です・・ここがこのモデルの最大のポイントです!(驚)

↑基台 (左) の外壁部分の「平滑処理面」には前述の連係キーが飛び出ていますが、その上から右横の「絞り環」が被さります。この時グリーンの矢印で指し示したように絞り環内側の「連係キーの孔/溝」に連係キーが刺さります (赤色矢印)。

ご覧のように「平滑処理面」に対してパープル色のメッキ加工がそのまま接触して回転する部位なのが分かります。つまりグリースだけに頼っていてはダメだと言う「設計者の意図」これらの仕上げ方に明確に示されているのがこのモデルの設計です。

だからこそ「ちゃんと平滑処理を施す」ワケです。それが「製品寿命を延命できる一つの要素」なのです。ちゃんと平滑処理を施してからグリースを塗るので、経年による酸化/腐食/錆びの程度もより少なく見積もる事が適いますね(笑)

↑仮組みするとこんな感じに組み上がります(笑)・・たかが絞り環の機構部の話だけですが(笑)

↑さて、ここから華僑に入っていきます。当方が呼称している「懸垂式ヘリコイド駆動方式」たる所以です。このモデルは旧西ドイツ側で数多く採用している中でも逆パターンの設計を採っていて、ヘリコイドのオスメスで懸垂している側が反対です (多いのはメス側が長大なネジ山で深い)。

・・左右で高さ/深さの違いをイメージできるよう左側を高くして撮影しています。

するとグリーンの矢印グリーンの文字で指し示していますが「ヘリコイドオス側の長大な数が多いネジ山の深さ/長さ」と、合わせて絞りユニットと連結している「制御ガイドの溝の長さ」プラスして「直進キーガイドの長さ」のこれら3つが全て同一の長さなのです。

その一方で赤色矢印で指し示している肝心なヘリコイドメス側のネジ山数とその長さはとても短いです。

従って「短いメス側に長大で長いオス側のネジ山がブラ下がったままになる」からこそ「懸垂式ヘリコイド駆動方式」と呼称しています。このオス側 (鏡筒の事ですが) を支えているのは「直進キー」と言うパーツが「直進キーガイド」に刺さっているだけで「何処も保持していない」のです(泣)

・・だからこそこのモデルのトルク制御がとても難しいと言っている。

ちょうどイメージ的に表現するなら「ヘリコイド用ベース環」にネジ込まれて保持されている「ヘリコイドメス側」を「鏡筒たるヘリコイドオス側が落ち込んでいる最下部領域から最上部まで貫通していく動き方」とでも言えば分かりやすいでしょうか???(笑)

もっと言うなら、仕上がったこのモデルを見ながら距離環を回せば、グリグリとフィルター枠部分が迫り出して繰り出したり/収納したりする「その出てくる深さヘリコイドオス側の繰り出し量/連携ガイドの長さ/直進キーガイドの長さ」と言う関係式に至ります(笑)

・・これこそがこのモデルでの「原理原則」です(笑)

今回初めて扱いましたが、完全解体してみれば内部構造は歴然とした事実/現実でしかありません(笑) 残るのはどのように組み立て手順を再構築すれば最も適切な微調整が適うのか???
・・であり、バラした時の逆手順で何でもかんでも組み上げるなど、ド素人作業の最たるモノです (このモデルはバラした時とは組み上げ手順が激変するから)(笑) だからこその「観察と考察」であり「原理原則」です。

↑基台側に絞り環などの組み込みが終わるとこんな感じに仕上がります。ベース環 (赤色矢印) で絞り環が浮き上がるのを防ぎますが、当初バラす前の時点ではこのベース環が浮いていたので、結果的に絞り環がガチャガチャした印象になっていて、結果的にマウント部までガタついている錯覚に陥っていました (実際はここのベース環の固定位置が拙かった)。

なお「制限キー」は距離環が回る範囲を決めている役目で「無限遠位置でカツンと音が聞こえて突き当て停止」或いは「最短撮影距離位置でカツンと音が聞こえて突き当て停止」しているのはこの「制限キー」が刺さっているからです(笑)

↑ちゃんと絞り環をベース環が押さえ込んで浮かないようにして (従って絞り環はここで初めて確実にセットされる) 合わせて指標値環までセットが終わります (赤色矢印)。

↑基台の下部にマウント部が組み込まれます。

↑ようやく距離環がセットされました(泣)

↑上の解説写真が表しているのは「懸垂式ヘリコイド駆動方式」たる所以です。ネジ山の数が少なくて深さが浅めの/短めの「ヘリコイドメス側」に対してネジ山が長大で長く/深さのあるヘリコイドオス側たる「鏡筒」が、ヘリコイドメス側の下半分の位置までストンと落ち込んでいます。この状態がこのモデルでの無限遠位置になるので「ヘリコイドメス側の短いネジ山のさらに半分下の位置で鏡筒がブラ下がる」のが無限遠位置なので「懸垂式ヘリコイド駆動方式」と呼んでいる次第です。

一般的なオールドレンズではヘリコイドオスメスの深さ長さは互いにとても近似した長さだったりしますから、こんなカタチでブラ下がる設計にはなっていません。

しかも、これらヘリコイドのネジ山オスメス以外に鏡筒を支えているのは「両サイドの直進キーがガイドのスリットに刺さっているだけで、決してネジ止めされていない」ワケで、それはそうですね(笑) もしも直進キーが固定されてしまったら「鏡筒の繰り出し/収納はできなくなる (固定されてしまうから)」のは道理です。

従って刺さっているだけの「直進キー」に鏡筒を垂直状に保持させる役目まで与えて設計してしまうと「それだけで距離環を回すトルクが硬く変わる」ので「直進キーはあくまでも保持されずに距離環の回転と共に即座に直進動する」原理なワケです。

・・これらの話がトルクを軽く仕上げるコツと言うか「原理原則」そのモノですね(笑)

それこそ今現在でもとても多くの整備者が (整備会社に在籍している整備者まで含めて) それら「直進キーガイド」の溝部分にヘリコイドグリースを塗ったくりますが(笑)、よ〜く考えて下さい。もしもグリースのチカラで平滑性を担保させる設計なら「距離環を回したときのトルクに直進キーの抵抗/負荷/摩擦が加味されるので重いトルクに変わっていく」事に至りますが、現実の物理的な説明は「距離環を回したときの回転するチカラは即座に直進キーを経由して鏡筒の直進動に変換されて伝達されてしまう」からこそ、距離環を回すときのトルク管理が楽なのです(笑)・・伝わってきたチカラが直進キーの機構部に一切残っていないのです

もしも「回転するチカラを直進動するチカラに変換する部位たる直進キーガイドに伝達能力が介在しなければ」自ずと直進キーも直進キーガイドも「その接触面の平滑性が設計時点で問われる (それは互いの金属材の相違も大きく影響を与える)」のに、現実のリアルは「平滑仕上げなど施されていない」・・もッと端的に言うなら「直進キーガイドの溝や底面部分をよ〜く観察すればバタバタに切削されているまま」なのが視認でき一目瞭然です(笑)

・・いったいどうして平滑仕上げに設計しないのですか???

チカラが留まらずに瞬時に直進動に伝わってしまうからです(笑) だからこそ距離環を回すトルクを管理できるワケで、重くしたり軽く仕上げたり自在に制御できるのは「伝わってくるチカラは伝達されてしまう/留まらない」からです(笑)

この点を以前取材した金属会社の社長さんとちょうど昼食時に話していたら (特上の鰻重美味しかったです!)、それに気づいているとはさすがだねと褒められてしまい(汗)、スッカリ舞い上がってしまい、せっかくの特上の味わいが口に残っていませんでした (そんなエピソードを
思い出しました
)(笑)

ちなみに無限遠位置のアタリを付けた場所までストンと落とし込んだ状態で鏡筒をセットし終えたので、この後は光学系を組み込んで無限遠位置を実写確認しつつ「距離環の内側にある無限遠位置微調整孔の締付ネジを緩めて位置調整する」作業が終われば、いよいよ完成です(泣)

なお、途中で解説していた「ヘリコイド群のベース環が内外でマットで微細な凹凸を伴う梨地メッキ加工仕上げに製産されていた事実」は、詰まるところ、このブラ下がっている状態の鏡筒に対して、絞り環側からも (連係キーの話) 距離環からも、ひいてはヘリコイドオスメスからも経年でのグリース附着を嫌っている設計であり、その最たる理由は「絞りユニット内の平滑面に経年に拠る酸化/腐食/錆びを促したくない」からと指摘できます。

逆に言うなら、それこそが「絞りユニット内を平滑仕上げに設計した理由」でもあるので、今回の個体が過去メンテナンス時に絞りユニット内部にグリースを塗っていたなど、以ての外だったワケです(涙)

↑しかし今回のモデルはそれだけではありませんでした(泣)・・最後にちょっとしたトラップが仕掛けられていました(汗)

上の写真はひっくり返してマウント部 (赤色矢印) を上にした写真ですが、このブルーの矢印で指し示しているネジ山に「M42マウント規格のネジ部」がネジ込まれて、最後にイモネジでグリーンの矢印で指し示したギザギザの場所に食い込んで締付固定されます。

つまりこのモデルは「M42マウントをネジ込んでいった時にちゃんと指標値が真上に来るよう位置調整できる機能を有する」ワケですが、実はその位置調整に際し「M42マウントのネジ部はネジ込まれていく」為に、無限遠位置を実写確認しつつも指標値がちゃんと真上に来るように位置調整すると「何と何と光路長が変化してしまう!」と言うリアルな現実に突き当たります!(驚)

当然ながら距離環の固定位置を微調整しますが (もちろんヘリコイドのネジ込み位置も変更してから) 何とも面倒くさいったらありゃしません!(涙)

正直、何回も無限遠位置の微調整機能でアッチを外してコッチをネジ込んで、そっちをズラしてと・・あ〜だこ〜だヤラされるハメに陥り、誠に面倒くさい設計です(涙)

せめてM42マウントのネジ部を被せ式で設計して、それこそ皿頭ネジか何かで締付固定するようにすれば良かったものを、ネジ込み方式に設計してしまったので「光学系第1群〜第6群後玉までの位置が無限遠位置を変更するそのたびにズレる」話に至り、大変極まりない設計です(笑)

↑この後は光学系を組み込んで無限遠位置を微調整するだけですが、上の写真はちゃんと光学系内に入るスリーブ環と後玉の締付環を証拠写真として撮影しました(笑)・・ちゃんとこれらのサイズで以て冒頭の光学系構成図をトレースしているからです (決してウソ偽りを公然と拡散させているワケではない)(笑)

第1群前玉と第2群貼り合わせレンズとの間に挟まるスリーブ環
第2群貼り合わせレンズと第3群の間に挟まるスリーブ環
右端 第4群を締付固定する締付環で第5群の格納筒の中に入る

この後は無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑今回初めての扱いでしたが完璧なオーバーホール/修理が終わりました。当初バラす前時点での様々な問題点 (冒頭で前述) は全て完璧に改善できていますし(笑)、素晴らしい距離環を回すトルク感に仕上がっています(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。カビ除去痕もほぼ残っていませんし、ヘアラインキズもありません。第2群の貼り合わせレンズもバルサム切れの兆候も一切無く、まだまだ数十年現役状態です(笑)

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。まさかこの後玉だけしか後群側に配置されていないとは分からなかったですが、メーカーのカタログに絞りユニットの位置が記載されていないのでしょうか???(笑)

↑8枚の絞り羽根はフッ素加工が施されている相当厚みがあるシッカリした造りですが、前述のとおり一部絞り羽根のプレッシングされているキーに「赤サビ」が出ています (問題にならないレベル)。当初バラす前のチェック時点では相当閉じすぎている状況でしたが、簡易検査具で絞り環絞り値との整合性を合わせています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

基本的に旧西ドイツ側の筐体外装のメッキ加工は最後の仕上げ剤の成分が日本とは違うので、多くの場合で磨き入れするのはその工程数が限定されます。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」で、且つこのモデルのピントのピーク/山がまだかまだかと緩く上がっていき、合わせてピント位置でもなかなか分かりにくいので「距離環を回すトルクは軽め」に仕上げています。もちろんいつものとおり、当方の特徴たる「ヌメヌメッとしたシットリ感漂うトルク」なので、特に今回のモデルはピントのピーク/山が掴み辛いので、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えただけでピント位置の前後動が叶います・・素晴らしいトルクに仕上がっています!(笑)

無限遠位置もキッチリ合わせてありますし、絞り環のクリック感も軽めにセットしてあります (当初はガチガチだった)。マウント部のガタつき感も解消できています (ッて言うかガタついていたのは本当は絞り環でしたが)。絞り環操作はクリック感を伴いますがこのモデルは「手動絞り (実絞り)」だけです。

もちろん指標値の位置も真上に来るよう合わせてあり、当然なからその状態で (何回か組み直して)(泣) 無限遠位置をキッチリ合わせています。M42マウントのネジ部のネジ込みは1/4周程度の変更で無限遠合焦したので、ちゃんとヘリコイドのオスメスを適切な位置でネジ込んであげれば、いくら「懸垂式ヘリコイド駆動方式」でも微調整程度で無限遠位置を合わせられます。

逆に言うと「原理原則」を理解している整備者でないと三つ巴 (ヘリコイド群直進キーガイド連携ガイド) で直進動/スライドの長さが同一なので、ピタリと合致しませんョねぇ〜?!

↑完璧な仕上がりです(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置から適正に変更/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

オーバーホール/修理ご依頼者様向けにご依頼者様と当方の立場が「50 vs 50」になるよう配慮しての事ですが、とても多くの方々が良心的に受け取って頂ける中、今までの12年間で数人ですが日本語が口語として普通に語れない、おそらく某国人に限ってここぞとばかりに「無償扱い」される方もいらっしゃいます (漢字三文字、或いは漢字とカタカナ表記を合わせて含むお名前様だけで確定判断はできませんが)(笑)

↑このモデルはマウント部の「M42マウント規格のネジ山の先に突出がある」ので、ご覧のようにマウントアダプタにネジ込んでいくと最後までネジ込めずに停止してしまいます(泣) マウントアダプタの真上位置 (グリーンの矢印) に対して、赤色矢印の位置でネジ込みが停止してしまい、指標値がズレてしまいます(汗)

↑前述中国製のK&F CONCEPT製マウントアダプタに限らず、日本製たるRayqual製マウントアダプタでも、同様に最後までネジ込めずに停止してしまいます。グリーンの矢印のマウントアダプタ側真上位置に対して、オールドレンズ側の指標値「」マーカー位置は赤色矢印の場所です(泣)

↑マウント面の突出量をデジタルノギスで計測して示しました (グリーンの矢印)。

↑当方で用意した「ピン押し底面を外す事ができるマウントアダプタ」にネジ込むと、ご覧のようにピタリとマウントアダプタの真上位置 (グリーンの矢印) にオールドレンズ側指標値「」がちゃんと来てネジ込みが停止します (赤色矢印)。取り外した「ピン押し底面」は右横に並べて撮影しています (ブルーの文字)。この「ピン押し底面」はK&F CONCEPT製ですから写真の「凹面 (0.4㎜窪んでいる)」と裏面の「平面 (凹みがない平な状態)」の両面使いで、特に「自動絞り方式のオールドレンズ」で対応が可能です。

↑この用意したマウントアダプタにネジ込むと、こんな感じでオールドレンズ側マウント面とマウントアダプタ側面との間に「約1㎜弱の隙間が空く」ワケですが、これはオールドレンズ側マウント面の突出で、問えば「開放測光用の爪」などを避ける目的でマウントアダプタ側の仕様として設計されていますから、このような隙間が存在していてもフランジバックは正常です (日本製のほうも同じ)・・但し日本製のほうは最後までネジ込めないので、このモデルでは使えません(涙)

  ●               

【 事 後 談 】
ご依頼者様に「マウントアダプタの非ピン押し底面化 (要は製品からピン押し底面を取り出して使えるようにする処置)」をお伺いした処、処置のご指示を頂いたので早々にK&F CONCEPT製マウントアダプタを発注しましたが、その後で気づいて「もしかしてM42 → LMマウントアダプタのほうが良い???」と再び伺ったところ、それがベストとのご返事を頂き、再発注・・あたたッ! 「M42 → SONY Eマウントアダプタ」を発注してしまったので手元に余ってしまいました!(笑)

↑・・と言う事で(笑)、上の写真のような附属品を追加して明日梱包し発送申し上げます。

《追加した附属品》
本体『Rodenstock-Eurygon 30mm/f2.8 (zebra) (M42)』
 K&F CONCEPT製『M42 → LMマウントアダプタ』 (新品)
ピン押し底面 (の附属品で当然ながら新品です)
汎用金属製ヘックスレンチ (新品)

のヘックスレンチ棒は小さくて使い辛いと思いますが (スミマセン!) 無いよりはマシではないかとの勝手な思い込みで入手し附属させました (レンチ棒はお代金頂きません/勝手にヤッてるので)。

↑実際に装着するとこんな感じになり、当然の事ですがちゃんと最後までネジ込めます(笑)

右隣に一緒に並べて撮影しているのが「附属品のピン押し底面」です・・附属品と言うよりか本当はこのマウントアダプタの内側にハマッていたパーツですが(汗)

しかしですョ、この「ピン押し底面」は凹面 (0.4㎜ほど窪みがある) と平面 (要は真っ平ら) との両面使いができるので、そんなM42マウントアダプタはこのK&F CONCEPT製しか流通していない為、当方自身はメチャクチャ重宝しており、今までに数多くの自動絞り方式のM42
マウント規格オールドレンズで絞り羽根開閉異常の改善に役立ってくれています!(涙)

たかが中国製のマウントアダプタをベタ褒めして、K&F CONCEPT社からお金でも貰っているのか?・・といつも誹謗中傷メールしてくる人から着信しましたが (2年前)(笑)、いえいえ
純粋に便利で現実に何回も助けられているから」ベタ褒めしているだけです(笑)

実際にマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」の押し込み量、或いはその押し込みの適量についてトラブルが起きている場合、この「ピン押し底面を取り出してひっくり返す」だけで絞り羽根開閉異常が改善するのだから・・溜まんないんです!(涙) それは「凹面が良い場合もあれば平面が良い時もある」ので、両面使いは涙が出るくらい助かっています・・(涙)

ちなみに上の写真赤色矢印で指し示しているのは、既に前述した「開放測光用の爪などを避ける目的の製品仕様上の1㎜弱の突出」であり、K&F CONCEPT製マウントアダプタには多くのモデルに備わっています (但しM42マウント規格の話)。

↑こうやってこのブログで解説すると「ウソを拡散している」と言われるので、またまた証拠写真です(笑) 赤色矢印で指し示しているとおり、内側に本来あるべき「ピン押し底面」がありません (写真ド下手なので分かりにくくてスミマセン!)(笑)

↑一応、今回のマウントアダプタにも「目安としてネジ込んだ時にオールドレンズ側指標値が真上に来る箇所」にケガキで縦線を入れてあります (赤色矢印)。オールドレンズのモデルによっては「M42ネジ部のスタート位置が違う」ので、この縦線を目安に位置を微調整して頂ければ、毎回分かり易い (とあくまでも当方がそう感じているだけですが) つもりで刻み込んだので、以前も1人いらっしゃいましたが「いや、自分で刻みたいから新しいのと取り換えて」と言う場合はその旨ご指示下さいませ。再度発注してお届けします (もちろん無償取り替えします)・・いろいろスミマセン!(涙)

然しですョ、このマーキングがあればいくらでも位置をズラせるので当方自身はありがたく感じています(笑) しかも最終的に「凹面平面とピン押し底面無し」の三つ巴で使える事になるので、これはもぉ〜溜まりません (このマウントアダプタに限っては3通りに使い分けられる為その時の位置目安としてマーキングしていると言う意味合い)!(笑)・・例えばオールドレンズ側に「A/M切替スイッチ」を装備しているモデルなど、下手にピン押し底面でマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」を圧迫するよりか「いっそのことピン押し底面を外してしまいMの手動で使うほうが実は製品寿命の延命には喜ばしい」現実もリアルにあったりするので(笑)、本来はちゃんと内部構造を理解しつつマウント面から飛び出ている絞り連動ピンの押し込み動作を機能させるほうが安心なのですが、そんなのフツ〜は分かりませんからねぇ〜。

ちなみに「M42マウント規格 (プラクチカスクリューマウント規格)」は「内径42㎜ピッチ1㎜フランジバック45.46㎜」が決まっているだけの話なので、それ以外の要素は当時の各光学メーカー独自規格に準じます (初期の頃は45.74㎜/但しwikiでは45.7㎜と表記している)。

しかし、例えば当時のコシナ製一眼レフ (フィルム) カメラの取扱説明書を確認すると「フランジバック45.45㎜」と印刷されていたりするので、いったい何処までが規格なのか頭が悪い当方にはよく理解できていません(汗)

さらに現在の市場流通品「M42マウント規格マウントアダプタ」の多くは「フランジバック45.5㎜」が多く、特に日本製マウントアダプタがその仕様で設計し製造販売していることからその模倣が広まっています (K&F CONCEPT製品も現在は45.5㎜である事を中国本社の技術部署に確認済)。

するとですョ・・ここで大きな疑問が湧き上がったまま悶々としているのが当方だったりします(笑) それは「光学系の設計時には当時の多くの光学メーカーで±0.02〜±0.01㎜を許容誤差範囲としていた」ので、例えばそれはロシアンレンズでさえも±0.02㎜ですから、マウントアダプタ側で「45.46㎜を45.5㎜に小数点以下1桁分丸めてしまった0.04㎜分の誤差」は・・どうなの (許容値±0.01㎜の日本製モデルはどうしよう) ???(怖)

・・そんな消化不良にしか至らない話を考えてしまい、胃が痛いです(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離40cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値「f16」です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっていますが、まだまだ「回折現象」の影響を感じ取れません・・素晴らしい描写性能です!(涙)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。このたびのオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。明日2本をまとめて梱包し発送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。