◆ Revue (レビュー) AUTO REVUENON 55mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Quelle社が発売していた標準レンズ・・・・、
AUTO REVUENON 55mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時の同じく富岡光学製OEMモデルとしてアメリカ向けに輸出されていたargus製標準レンズAuto-Cintar 55mm/f1.7 (M42)」まで含めた括りで捉えると39本目にあたりますが、今回扱ったモデル「REVUENONシリーズ」に限定すると11本目です。

特に「REVUENONシリーズ」は2016年来なので意外に時間が空いてしまいました(泣)

現在ヤフオク! にて「ジャンク扱い」出品しているISCO-GÖTTINGEN製標準レンズがありますが、そのモデルの当時の背景を調べていく過程で、戦前〜戦中に当時のナチス政権との関わりで「歴史の闇部」を知るにつけ、今回もその辺を中心的に調べてしまいました(汗)・・基本、歴史が好きなので気になり始めると止まりません(笑)

確かにオールドレンズに罪は在りませんが、そのブランドの背景や経緯を知ると、人情としてもまた別の面が見えてきて、愛でる想いが増長し単なる撮影道具に留めてしまうにはもったいないかなぁ〜と言う気持ちになったりします(笑)

・・基本、オールドレンズ沼に首まで浸かって窒息寸前の人間は、全方位に興味津々です(笑)

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今回扱ったこのモデルも当方の認識/判定では『富岡光学製』とみていますが、このようにこのブログで述べると「何でもかんでも富岡光学製に仕立て上げて煽って高く売ろうとしている」とネット上で批判されているようですが(笑)、高く売るも何も即決価格でヤフオク! 出品しているので落札価格は最初から決まっています(笑) すると今度はその即決価格がバカ高いと言う話になるようですが、如何せん「単に右から左に捌いているだけの低俗な転売屋/転売ヤーではない」ワケで(笑)、同じ穴の狢たる『転売屋/転売ヤー』としても、ヤッてる事は「納得できるレベルで仕上げたオーバーホール品の出品」であり・・全く以て別次元の話/内容です(笑)

・・ちゃんと自分で納得できていない時は言い繕わずにジャンク出品してますから!(笑)

話が反れましたが(笑)『富岡光学製の根拠』などは、例えばAUTO REVUENON 55mm/
f1.4《富岡光学製:後期型−I》
(M42)』
のページなどでも解説しているので、興味関心がある方は参考にされると良いかも知れません・・当方では基本的に「内部構造や構成パーツが近似している場合は同一製造メーカーである」との受け取り方/認識で捉えています (過去の取材で金属加工会社の社長さんからいろいろご教授頂いたので)。

・・逆に言うなら別の製造メーカー品の中に同じパーツは100%存在しないのです。

例えば別のメーカーに供給している場合は同一パーツが顕在しますが、その時の前提条件は「構造設計まで近似している」なので、詰まるところ理論は元に戻ります(笑) するとそこまでわざわざコストを掛けてまでこだわる理由が在るのか???・・と言う話に尽きるので、先ず以てあり得ない話と伺いました (但しオールドレンズの世界での話)。

詰まる処、同じ構成パーツや構造設計を採るが為に最低でも数百万円もする機械設備を増設したり工程数を増やす必要はないワケで、それにこだわるよりも自社工場に都合の良い、或いは稼動させている機械設備に適合させた設計で製産するほうが理に適っているとのお話しです (至極納得できる)(笑)

・・結局その時の取材から社長さんに導き出して頂けたのはOEM製産の概念でした(笑)

そこから捉えた結論が『富岡光学製』の根拠なので、どうにもこうにも構造設計面でちゃんと証拠をご掲示頂かない限りは・・この理論は決して覆せませんね(笑)「何でもかんでも富岡光学製」との言説は全く以て理に反しているワケです(笑)

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1972年にCHINONが発売した一眼レフ (フィルム) カメラ「CHINON M-1」がありますが、この取扱説明書が左写真です。

するとこの取扱説明書の表紙に写っている装着した標準レンズはAUTO CHINON 55mm/f1.7《前期型》(M42)」であるのが分かります。

左写真は前述の取扱説明書の中から該当のオールドレンズである事実が分かるページを引用しました。

写っているオールドレンズの「絞り環に刻印されている開放f値がf1.7になっている」のが分かります。また別ページにはレンズ銘板の一部も写っているので「焦点距離55mm」なのも判明します。

するとモデルバリエーションとして以下のような展開が見えてきます。光学系は同じままで (つまりモノコーティングのまま) 5群6枚の拡張ダブルガウス型構成です。

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子 レンズを計測したトレース図です。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型:1972年発売 (?)
光学系:5群6枚拡張ダブルガウス型構成
実装絞り羽根枚数:6枚
最短撮影距離:50cm
A/Mスイッチ:装備、銀枠飾り環:有
ローレット (滑り止め):グッタペルカ製 (合皮革)

後期型:1976年発売 (?)
光学系:5群6枚拡張ダブルガウス型構成
実装絞り羽根枚数:6枚
最短撮影距離:50cm
A/Mスイッチ:装備、銀枠飾り環:
ローレット (滑り止め):ラバー製 (丸形エンボス加工)

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当時ドイツ最大の小売商社だったQuelle (クヴェル) 社が1957年に「写真機材事業部」を開設し、季刊誌として100ページ以上に及ぶカタログ「FOTO-QUELLE」を発行していました (法人登記した子会社名ではない)。「REVUE (レビュー) ブランド」はそのカタログ誌の中で扱っていた自社ブラ
ンド銘で、すべての製品をOEM製産/輸入に頼っていました。

そもそもQuelle社は、ドイツのフュルト出身「Gustav Abraham Schickedanz (グスタフ・
アブラハム・シッケダンツ)」氏が家業にしていた小間物店から独立して、米国のカタログ誌による通信販売業に倣い、ドイツ初の通信販売専門会社として1927年に創業しています。

↑上の左写真は当初Quelle社が入居していた建物で「ケーニヒスヴァルター通りの10番地」になります (1958年当時)。写真に附した赤色文字の番号は建物の住所番地で、隣接する
8番地の建物と合わせて解体し1977年に3,000㎡にも及ぶ商業施設 (日本で言う処の
デパート
) に建て替えています。右写真はその商業施設に「Quelleのロゴマーク」看板が掛けられている写真で、左写真からは2007年時点でもその佇まいなのが分かります。ロゴマークの意味は「貴方に品質の源をお届けしますの意味」との事です。

ちなみにこれら建物群と街路のさらに手前には市電の線路がありますが、街路前広場を市場にしたりワザワザ海岸の砂を敷きつめて遊興広場に変えたりの施策が時を経て伺えます。

Queeleは既に戦前の1932年時点で、当時の世界恐慌の荒波をもものともせずに戦前ドイツのバイエルン州フュルト市に約8,000㎡もの工場用地を取得し、隣国や欧州に輸出可能な集積拠点を開設しています。1936年時点でQuelleの顧客は100万人規模に膨れあがっており、当初創業時僅か5人だった従業員は500人以上に達していました・・1939年時点のQuelle年間売上を現在の円に換算すると71億4千万円に匹敵するので、その規模の凄さが理解できると思います (1942年〜1948年のドイツ通貨ライヒスマルク換算)。

そもそも戦前の1932年に創始者シッケダンツ氏は後にヒトラーが率いる事になる「国家社会主義ドイツ労働者党 (NSDAP)」に入党し、反ユダヤ主義を励行する事でフュルト市議会議員に任命され、合わせてユダヤ人企業のアーリア化政策にも自ら加担し低コストでガイスマンフュルト醸造所などを手に入れています。

実はここに策略が隠れていて、当時のナチス政府は通信販売業を低価格で販路を拡大するユダヤ式商習慣の一つとみなしており、シッケダンツ氏の通信販売会社は好ましくない企業のリストに入っていました。しかし自分は純粋なアーリア人であり、早い時期からナチズムに傾倒している事を周囲に周知させる意味合いもあって市議会議員任命を画策し、合わせてユダヤ人企業のアーリア化政策を励行したようです。

結局、戦後1949年まで自身の労働が禁じられ、且つほとんどの財産が没収されるなど憂き目を見ますが、ここでも当初の米国式通信販売網の構築と販路拡大に邁進していた実績により米国占領軍の印象を良くし、合わせて旧東ドイツとの経済格差も手伝い全ての戦犯訴訟、及び関連訴訟が取り下げられました。

これによって戦後Quelleの売上実籍は鰻登りに増大し、1957年時点で世界初のリアルタイム受発注システムプログラム導入に成功するなどしましたが、1977年に82歳で亡くなっています。

ここでも先日のISCO-GÖTTINGEN製標準レンズの時と同様に「強制労働」が介在しており、特に1942年〜1945年で東部労働者 (ポーランド人/ロシア人他) 及びユダヤ人囚人など強制労働が戦後に問題視されています。

このようにみていくと、Quelleのシッケダンツ氏の振る舞いは、どちらかと言うと能動的な防衛策の一つにも見え、自身の会社や立場を憶することなく有利に働かせるか、悪くても維持させたいとの思惑が戦前〜戦中で一貫して感じられます。なお、戦後は様々な批判や訴訟にも真摯に向き合い、悪ぶることも無く真実を語り続けていたようです。シッケダンツ氏は没後1977年にドイツ連邦功績十字章を受賞しています。

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はAUTO CHINON 55mm/f1.7《前期型》(M42)」のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。ネット上の一部解説ではレンズ銘板部分が奥に引っ込んでいる別のモデルバリエーションが顕在すると述べられているサイトがありますが、それは思い込みです(笑)・・単にレンズ銘板の組み込み手順をミスったが為に前玉遮光環の奥に入ってしまった場合にそのような外見に至りますが、正しくは「前玉遮光環に接触して内部への砂/塵の進入を防ぐ」役目も兼ねているので、必然的に上の写真のような外見に至る必要がありますね (正しい組み立て手順を踏めば必ず上の写真のようになる)(笑)

・・これも「観察と考察」で導き出される為オーバーホール工程の話だけで終わりません(笑)

要は何の為にそのカタチで構成パーツが用意されているのか/製造されたのか、そこまで追求して初めて組み立てていく際の工程が見え、且つその時の微調整機能の有無さえも判定を下す事が適うので、単にバラして組み立てるだけが能ではない事の表れでもありますね(笑)・・その
ような事柄にまでちゃんと注意を怠らないのか否かに拠り、結果的に「低俗な整備者」なのかどうかも決まってしまいます(笑)

・・従って当方では様々な与件からオールドレンズの「本来在るべき姿」と呼んでいます(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無で、各群共にスカッとクリアです。光学系内各群の光学硝子レンズは「カビ除去汚れ除去光学清掃仕上げ清掃」という専用薬剤を使う4つの工程を経て光学系を組み込んでいます (専用薬剤は5種類ある)。

例えばよくネット上の解説やオークションなどで目にする「コーティングムラ」と言うコトバがありますが、これは間違った用語です(笑) 基本的によほど古い時代のクラシックレンズか、或いは当時としてもせいぜいロシアンレンズでない限り「よほどの環境下でない限り蒸着コーティング層にムラは現れない」と指摘でき、もっと言えば「経年劣化でコーティング層にムラが生ずる事もあり得ない」とも言い替えられます。

多くの場合で経年劣化に伴い蒸着コーティング層が化学的に変質してしまったり、或いは蒸着コーティング層自体の剥離/クラック現象だったり、カビ菌糸の侵食に伴う劣化だったりしますから、真空釜で成分配合した資料 (ここで言う資料とは鉱物を指す) を蒸着する際の考えられる瑕疵は「不純物の混入」なので、その時の仕上がりには確かに具体的なムラが現れているように見える事があります (特にロシアンレンズの場合)・・実際新入社員の教育用に予め用意してある見本を、以前取材させて頂いた工業用光学硝子レンズ精製会社のご担当者様解説の中で拝見しています。

すると実際にリアルに視認できるそれらオークションの出品物はどのように説明できるのかと言えば、多くの場合で「光学硝子レンズ清掃時の拭き残しや拭きムラ」にすぎません(笑)・・
当然ながら当方の光学系清掃工程も、単独の光学硝子レンズ表裏面の清掃のみならず、さらに組み込んだ後の光学系の見え方など、必ず光に反射させてチェックを怠りませんから「光学系の清掃くらいはとても簡単だ!」などと語っているサイトを見ると、時間を掛けて工程を進めている当方は焦ってしまいますね (おぉ〜みんなスゲェ!)(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無で、合わせてスカッとクリアです(笑) 後玉が極僅かに突出しているので、特に中心付近に経年の拭きキズのような円弧を描いた非常に薄い/微細なヘアラインキズを視認できます・・但し、以下掲載写真のとおり拡大撮影しても視認できないレベルですから、言われなければ気づけないかも知れません(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:13点、目立つ点キズ:9点
後群内:17点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大11mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。

↑6枚の絞り羽根もキレイになりA/M切替スイッチや絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきますから、例えば円形ボケなども角張ったりする頻度が相当低減できます (但し光学系の収差からの影響はまた別の話です)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。特にピント合わせ時は距離環を掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで微妙な前後動が適い正確にピント合わせできる素晴らしい操作性を実現しています。
・距離環のラバー製ローレット(滑り止め)はベタつきもなくシッカリしたホールド感を感じられる操作性を与えてくれます(但し微細な塵/埃などはラバー部分に附着しますので普通に軽く水拭きなど清掃すればキレイになります)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『AUTO REVUENON 55mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
 汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

このモデルのピントのピーク/山は、まだかまだかと徐々に鋭くなっていくものの合焦時はスパッといきなりピントが合い、すぐにそのピーク/山を越してしまいます(汗) 従って距離環を回すトルクはそのようなこのモデルのピント合焦のクセを考慮して「軽めながらも敢えてシッカリしたトルクを与えてある」仕上がりに至っています。

いわゆる「白色系グリース」の♯30番や♯10番などを塗布した「ツルツルしたトルク感の印象」とは全く次元が異なり、当方が仕上げる距離環の操作性は、ヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)

今回の個体も当初バラす前の時点で距離環を回すトルクはとても軽くツルツルの印象でした。バラしてみると確かに「白色系グリース」が塗られており、内部のあらゆる箇所に使われている固着剤の色から数年内の過去メンテナンスだったと推測できます。しかし、例えば距離環を回してピント合わせした後「指を離しただけでピント位置が極僅かにズレてしまうトルク」を軽くて操作性が良いとは捉えられません。それはピントのピーク/山がアッと言う間のオールドレンズだったりすると、却って使い辛さになってしまう事にもなるからです(泣)

その意味では単にトルクの軽さだけにこだわらず、そのオールドレンズのピントの合い方にまで配慮して、むしろ逆にトルクを与えてシッカリした操作性に仕上げたりもしています・・
それらトルクの基準は「ライカ製オールドレンズ」でもありますが、如何せん同じヘリコイドグリースを手に入れる事は不可能なので(笑)、如何に近似させるのかがトルク管理面のポイントでもありますね(汗)

今回のモデルは確かに『富岡光学製』OEMモデルだとしても、他の「f1.4モデル」や「f1.2モデル」に比べて相応の被写界深度に抑えられている為「サクッと富岡光学製オールドレンズの良さを堪能できる」扱い安いモデルと指摘できます。

・・富岡光学製オールドレンズに興味関心がある方、是非ご検討下さいませ。

特に他のOEMモデル含め、この当時の富岡光学製オールドレンズは光学系の劣化がだいぶ進行している個体が多くなりつつあるので、お勧めとも言えます。

↑いつもどおり当方所有のマウントアダプタではありますが、ちゃんと事前に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 上の写真は中国製のK&F CONCEPT製「M42 → SONY Eマウントアダプタ」に装着し、合わせてマウントアダプタ内側のピン押し底面を「凹面」にセットした状態で全く問題がない正常動作である事を確認しています。

赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合にそれが干渉しないようやく1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後までネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。

↑同様今度は日本製のRayqual製「M42 → SαE マウントアダプタ」に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合に、それが干渉しないようやく1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後までネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値は「f8」に上がりました。

↑f値「f11」です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況ですが、まだまだ「回折現象」の影響を視認できません・・素晴らしいモデルです。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。