◎ TOMIOKA KOGAKU (富岡光学) AUTO TOMINON 55mm/f1.2《初期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回オーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、国産は
富岡光学製標準レンズ・・・・、
AUTO TOMINON 55mm/f1.2《初期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で当時の富岡光学製標準レンズ「55mm/f1.2」の括りで捉えると累計で6本目にあたりますが、今回扱った純正「TOMINONブランド」だけでカウントすると初めての扱いです。

他に今までに扱ったこの当時の富岡光学製OEMモデルはAUTO REVUENON 55mm/f1.2《初期型》(M42)」2本、及びヤシカブランドのAUTO YASHINON 55mm/f1.2《初期型》(M42)」3本になります。

今回の扱いに際しいろいろ調査しましたが、とにかくいまだに光学系の状態が素晴らしく、各部位の操作もキッチリ正常を維持する個体をこのモデルで探すのが至難の業です。光学系については近年富岡光学製のオールドレンズはカビの発生が他社光学メーカー品よりも多く感じられ、合わせて特異な光学設計から特に後玉の当てキズが気になります。

さらに厄介なのがこの当時の他社光学メーカー製オールドレンズと比較しても、比類無き「A/M切り替えの設計」の特異さから起因する「絞り羽根開閉異常」の問題であり、ひとたびトラブルが発生するとその改善は相当難しいです(泣)

このような難しさを兼ね備えるモデルながら巷では「銘玉中の銘玉」と受け取られ、いまだに高額で市場流通しており、当方が調達できる価格帯を優に超越している為に今まで手に入れる事が叶いませんでした・・(涙)

・・今回このような機会を与えて頂いたご依頼者様に心から感謝しています!!!(涙)

ありがとう御座います! 何しろ当方がオーバーホールを始めてからの12年間で初の整備作業ですから、それはそれは鼻息が荒くなります・・!(笑)

  ●               

富岡正重氏・・1913年 (大正2年) 東京物理学校 (現東京理科大学) 卒業後、大日本帝国陸軍に入隊し、陸軍砲兵工廠精器製造所光学工場に勤務、1917年に陸軍退役後に日本光学工業 (現ニコン) 勤務、さらに1924年 (大正13年) 退社後1932年 (昭和7年) に「富岡光学機械製作所 (後の京セラオプテック)」を東京市大森区雪が谷 (明治初年には東京府荏原郡雪ヶ村で現東京都大田区の大森地域) に開設したのが始まりです (wikiより)。

富岡光学に関する簡単な沿革は、京セラ株式会社の傘下に属していたことから「京セラオプテック株式会社の沿革」を観るのが一番分かり易いです。

しかし2018年にはついに事業再編から吸収合併に伴う解散に至り、1932年から捉えれば86年と言う長きに渡る輝かしい軌跡を閉じてしまいました(涙) 時代の潮流とは言え、単なる一事業部にまとめられてしまったのは、昭和生まれとしてなかなか寂しい想いが込み上げてくるところであります(涙)

戦後に於いて富岡光学製オールドレンズの多くは国内外のOEMモデルとして流通している事が多く、今回扱った「TOMINONブランド」を冠した純正モデルは数えるほどしか顕在していません。また創業当初の自社ブランドが「Lauser (ローザー)」銘だったこともあり、さらに「TOMINONブランド」は希少な立場に至っています。

するとではこの「TOMINONブランドをレンズ銘板に冠していた時期はいつなの?」との疑問が自然に湧いてきます。この点についてネット上を探索すると、せいぜい1970年代としか解説されておらず、ちゃんと調べてくれているサイトがありません(泣)

しかし細かくそのルーツを探っていけばちゃんと明確な根拠-エビデンス-に到達できます。

←戦後富岡光学が経営難に陥り、当時の筆頭顧客たるヤシカの軍門に下った (ヤシカによる資本参加) 1968年辺りにそのヒントが隠れていました。
左写真は1970年にヤシカから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「YASHICA TL ELECTRO ITS」の取扱説明書表紙で、ご覧のとおりセットレンズをAUTO YASHINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)」としています。

このモデルと今回扱った純正「TOMINON銘」モデルとの相違点はたったの一つ「レンズ銘板の刻印が違うだけ」である事を今回のオーバーホール整備作業から「ファクト (事実)」として確認できました。

要は内部構造が100%同一であり、各部位の構成パーツの設計に至るまで同じなのを確認できた次第です (だからレンズ銘板をすげ替えただけとの言い回しに至る)。

しかし実はここには焦点距離「55mm/f1.2」に固執するがあまり、偏重した探索が起きてしまいがちな要素を含んでいます。純粋に「TOMINON銘の登場時期」に拘るなら・・それはさらに遡り彼の日本初一眼レフ (フィルム) カメラ「ASAHIFLEX I型」を発売した旭光学工業製「Auto-Takumar 55mm/f1.8(M42)」などについて、そのルーツを過去にこのブログでも
探っておりYASHICA AUTO-YASHINON 5cm/f2 (M42) vs Asahi Opt. Co., Auto-Takumar 55mm/f1.8 zebra (M42)」のオーバーホール工程解説で明確になっています。

この解説ページで示したのは「AUTO-YASHINON 5cm/f2 (M42) と内部構造が近似している点」ですが、これにより「今度はAUTO-YASHINON 5cm/f2 (M42) とTominon C. 5cm/f2 (M42) の内部構造が同一」である点へと結びつきます。

・・「Tominon C. 5cm/f2 (M42)」のページで全てが明らかになる(涙)

つまり「一番最初にTominon銘を冠したオールドレンズは半自動絞り方式を採用したモデルだった」ことが、まさにファクトとして、或いはその内部構造の近似性からもエビデンスに至ると当方は認知しています。

するとAuto-Takumar 55mm/f1.8 zebra (他のAuto-Takumar 55mm/f2なども同一)・・AUTO-YASHINON 5cm/f2・・Tominon C. 5cm/f2の繋がりから見えてくるのは、日本初の一眼レフ (フィルム) カメラ「ASAHIFLEX I型」が登場した1957年を挟む、前後の「1956年〜1958年辺りの登場」と捉えるのが理に適っています。

これらの考察の根拠は「全ての始まりは1957年時点での半自動絞り方式を現実に開発し製品化できていなかった旭光学工業の焦り」と受け取っており、日本初の一眼レフ (フィルム) カメラ「ASAHIFLEX I型」の発売に漕ぎ着けるその場凌ぎ、或いは一時凌ぎとして富岡光学が活用された事が伺えます・・何故なら、翌年1958年には「内製によるTAKUMARシリーズの登場」と共に富岡光学によるOEM供給は断たれてしまっているからです (実際は半自動絞り方式のモデルの製品供給はその後も続いていた)。

従ってYASHINON銘が先に登場したのか、Auto-Takumarだったのか、或いはTominon銘が先なのかは判定が下せませんが、少なくとも前述のヤシカ製一眼レフ (フィルム) カメラ「YASHICA TL ELECTRO ITS」発売時来たる1970年よりもさらに数年遡って「TOMINON銘が顕在していた」ことは明らかではないでしょうか?

ちなみにこれらルーツたる1970年以前のモデルは「半自動絞り方式」なので、シャッターボタン押し下げの撮影前にいちいち「チャージレバー」をグルッと回し、絞り羽根を完全開放させない限りシャッターボタン押し込みと同時にカシャッと勢い良く絞り羽根が設定絞り値まで閉じません(笑)

なお、話を元に戻してYASHICA製一眼レフ (フィルム) カメラに於ける最後のM42マウント規格製品は、1973年発売の「YASHICA FFT」ですから、その取扱説明書を探ってもちゃんとエビデンスが残っていました(笑)

右の一覧は「YASHICA FFT」取扱説明書の30ページに印刷されているオプション交換レンズ群一覧で、そこにちゃんと「55mm/f1.2」が載っています。然しこの当時のヤシカ製オールドレンズの主力モデルは「AUTO YASHINON-DXシリーズ」や「AUTO YASHINON-DSシリーズ」或いは他にも「DS-M」を附随するマルチコーティング化モデルが顕在しています。

従ってここまでの解説からも薄々見えてきていますが(泣)、吸収したヤシカでさえも富岡光学の製品よりも (同じOEM製品ながら)「YASHINON銘」が主力モデルだったワケで、富岡光学はひたすらにOEMモデルの製造に邁進するしかなかった事が伺えます(涙)

意を決して自らの存命にOEM製産/供給に活路を見出したのか、或いは時代の潮流に飲まれまいと必死にあがいて (仕方なく) OEM製産を続けたのかは今となっては分かりませんが・・・なかなか時代のロマンを感じずにはいられませんね(涙)

当方は特に「富岡光学信者」ではありませんし、自分がどんだけ偉い先生だか知りませんが、何処ぞのサイトで酷い貶し方をしている「富岡狂」でもありません (こう言う物言いってとても失礼だと思います)(怒) しかしせっかくのオールドレンズなのだから、そこに感じ入るロマンに浸るくらいは認められても/許されても良いのではないかとの想いが強いので、敢えて富岡光学に纏わるロマンにいっときでも浸りたいだけです。

・・はたしてそれの何処がそんなに卑下される理由なのでしょうか???

それほどOEM製産と言う土壌や環境は、おそらく今考えても相当に辛い立場だったのではないかと容易に推察できるからです。いったい誰が好きこのんで自らのブランド銘を捨て去ってまでOEM供給にこだわるでしょうか? 何の価値観の意思表示すら見せずに当時の旭光学工業にはたったの1年でスパッとOEM契約を切られ、頼みの綱のヤシカにまで自身の経営難 (当時のヤシカ自体も経営難で苦しい状況だった) の材料に使い廻され、挙げ句の果てに倒産の憂き目に遭い京セラに残余の光を期待したその波瀾万丈な紆余曲折を鑑みるに・・昭和世代として貶められるのは甚だ存外です。

《富岡光学製55mm/f1.2としてのモデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

YASHICA:AUTO YASHINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

CHINON:AUTO CHINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

COSINA:AUTO COSINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

Revue:AUTO REVUENON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

YASHICA:AUTO YASHINON DS-M 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚 マルチコーティング
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm


・・これら5つの富岡光学製OEMモデルは、すべてのモデルで光学系後群側はマウント面に配置されている「絞り連動ピン」を避ける必要から独特なカタチに切削されている光学硝子レンズで、第4群〜第6群全てのコバ端が一部切削されています。
(右写真は光学系後群が鏡筒にセットされている状態)

逆に言えば、使えるスペースを最大限に使い切って設計された拘りの光学系とも言えます。

TOMIOKA:AUTO TOMINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

そして何と言っても本家本元の富岡光学製オリジナルモデルとなれば、今回扱う「AUTO TOMINON 55mm/f1.2 (M42)」です。もちろん光学系の設計から仕様諸元値、或いは内部構造と各構成パーツに至るまで全てが同一です。

この後に登場したモデル (おそらく1970年代) が、レンズ銘板から「TOMIOKA」銘が省かれてしまったが為に、ネット上であ〜だこ〜だと騒がれる一因になっています(笑)

前期型PORST COLOR REFLEX MC AUTO 55mm/f1.2 F (PK)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f22
フィルター径:⌀ 55mm

後期型PORST COLOR REFLEX MC AUTO 55mm/f1.2 F (PK)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f22
フィルター径:⌀ 55mm

YASHICA:YASHICA LENS ML 55mm/f1.2 (C/Y)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

・・こんな感じですが、これら後に登場したOEMモデルは光学系後群の仕様が初期のモデルとは変わっており、従前の切削をやめています (当然ながら光学系は都度再設計されています)。


最後に、騒がれているもう一つのモデル、コシナ製「COSINA 55mm/f1.2 MC (PK)」についてご案内しますが、当方はまだこのモデルをオーバーホールした経験が無いので、何とも判定できていません。しかし、最も関心を引く相違点は、これらのモデルの中で唯一フィルター枠径が「⌀58mm」であり、当方ではコシナ製ではないかと踏んでいます・・どうでしょうか。
ネット上では、最短撮影距離が60cm (最小絞り値:f16) がコシナ製であるとの解説が多い
ようですね。

COSINA:COSINA 55mm/f1.2 MC (PK)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.6m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 58mm

  ●               



↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
そもそもこのモデルの実写登録がほとんどありません(泣) 円形ボケは収差の影響を受けて真円を維持できないようです。開放f値が「f1.2」ながら意外にも被写界深度はそれほど狭く薄くなくなかなかの鋭さを魅せるピント面です。

二段目
石材やレンガなどのグラデーションも素材かんゃ材質感を写し込む質感表現能力に優れている分、シッカリした快調を残す傾向にありますが、フィルムカメラによる撮影ばかりの実写でなかなかリアル感が伝わってきません。それでも3枚目の写真だけは「現場の空気感まで感じられる写り」にさすがだと褒めたくなります(笑)

 三段目
たまにネット上のサイトで「富岡の」と語られますが、当方はその赤色がどのような色合いを指すのか知りません(笑)

光学系は6群7枚の拡張ダブルガウス型構成です。拡張と言うのは、本来2枚の光学硝子レンズを接着した貼り合わせレンズであるべき
処の第2群と第3群が分離した設計を撮っている点を指して述べて
います。

以前までは「拡張ウルトロン型」などと述べていましたがそんな光学設計は存在しないとボロクソに貶されたので、考えを改め、その方が仰る御言葉「ダブルガウス型」に変更しました(怖)

ここで一つ疑問が湧いてしまい「他の同じ諸元値のOEMモデルと光学設計は同じなのか?」を知りたくなってしまいました(笑) そこで今回は試しに当時供給していた海外向け製品で旧西ドイツの写真機材商社「FOTO-Quelle」向けOEMモデルたるAUTO REVUENON 55mm
/f1.2《前期型》
(M42)」
の光学系と今回の扱い品光学系を逐一各群の光学硝子レンズで比較しデジタルノギスを使って計測してみました。

すると意外にも5群6枚の全ての光学硝子レンズに於いてビミョ〜に外径サイズや厚みに曲率などが違っている事実を掴みました。

右の構成図は前述AUTO REVUENON 55mm/f1.2《前期型》(M42)」の光学系をオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

↑上の写真はAUTO REVUENON 55mm/f1.2《前期型》(M42)」の光学系の中から取り出した光学系第4群貼り合わせレンズ (写真左) と、今回扱い品たるAUTO TOMINON 55mm/f1.2《初期型》(M42)』からの第4群 (写真右) を並べて撮影しています。貼り合わせレンズなので現実には構成上の4枚目と5枚目が接着されています。

↑さらに拡大撮影しました。このように当方が現状のネット上で解説されている内容と違う話を述べたり、或いはネット上に存在しない解説を試みると「公然と平気にウソを拡散し続けている」との誹謗中傷を浴びるので(涙)、いちいちそれら解説に臨む際「証拠写真」を撮って掲載する必要が生じます。

前述同様上の写真左側がREVUENONモデルで、右側が今回扱い品たるTOMINONです。もぉ〜一目瞭然ですが左右で厚みの相違が明確に写っているのが分かります。

実際全ての群で外径サイズから厚みに曲率に至るまで一つとして同一の計測値をとらず、TOMINONとREVUENONは別モノの光学設計を採っていた事が判明しました(驚)

従って当然ながら「光学系が吐き出す描写性も基本的に違うハズ」との結論に到達せざるを得ませんが、実際にはその相違は厳密に計測したり比較検証しない限りパッと見だけで判定を下せるレベルの相違には至らないと思います。然し歴然と「決して同一の光学設計ではない」事は事実であります。

ちなみに前出の光学系構成図の中で第5群と第6群を で着色していますが「光学硝子材に酸化トリウムを含有した俗に言うアトムレンズ (放射線レンズ)」です。経年の劣化進行に伴いガラス質が変質してブラウニング現象から「赤褐色化」しています。

例えば今回扱い品のTOMINONでは「第5群9.54μ㏜/h」及び「第6群7.53μ㏜/h」と言う高い放射線数を示しました。一方REVUENONのほうも「第5群9.27μ㏜/h」及び「第6群7.59μ㏜/h」なので互いの「酸化トリウム」含有率はほぼ同格レベルと判定を下せます (μ㏜/hは時間当たりのマイクロ・シーベルト値を表す)。

合わせてオーバーホール後の組み上がり後ではTOMINONが「前玉1.0μ㏜/h」及び「後玉9.23μ㏜/h」との実測値に対し、REVUENONも「前玉0.82μ㏜/h」及び「後玉9.33μ㏜/h」なので、やはり光学系後群側からの放射線量が注目に値します。

すると「1000000μ㏜1000m㏜1㏜」なので、人の年間被曝量目安として勘案すれば、例えば空気中を浮遊するラドンを吸入したことからの内部被曝量「1.26m㏜」とすれば (2008年世界平均国連科学委員会報告書より) 1μ㏜は1/1000m㏜にあたるため、1μ㏜/hは年間で「8.76m㏜の被曝量」にあたるらしいです。

その意味からも外部被曝として捉えるなら日常的に24時間肌身に付けているワケではないので、これらアトムレンズ (放射線レンズ) に脅威を抱く必要性は相当低いようにも思います (煽る人達は多いですが)(笑)

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

 アトムレンズ (放射線レンズ)
光学硝子材に酸化トリウムを含有 (10%〜30%代) させて屈折率の向上 (20%代/1.22) を狙った光学硝子レンズ

ブラウニング現象
物質の経年変化に拠り褐色に着色し褐変 (かっぺん) する現象を指す (食品や光学硝子レンズ等)

黄変化 (おうへんか)
光学で言う処の黄変化とは光学硝子レンズの経年変化に拠る変質で褐色に色付く現象を指す

コーティング焼け
光学硝子面に蒸着したコーティング層が経年に拠り変質し黄ばんでくる事を俗に言う表現

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

当方が「このモデルは富岡光学製です」と述べると「何でもかんでも富岡光学製にしてしまう」とSNSなどで批判対象になっているようです(笑)

いちいち解説するのが面倒ですが、その根拠の基になるモデル「AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)を以前オーバーホールした際にちゃんと検証しているので、そのページをご覧頂ければ逐一確認できますが、そこから判明した『富岡光学製たるその根拠を示す共通事項』を以下にちゃんと示します(笑)

以下の3項目だけが「M42マウント規格」の当時流通していたオールドレンズの中で、他社に同一の設計をみないまさに『』そのものです。

具体的には『富岡光学製』の構造的な要素 (特徴) として大きく3点あり、いずれか1点、或いは複数合致した時に判定しています。

M42マウントの場合に特異なマウント面の設計をしている (外観だけで判断できる)
内部構造の設計として特異な絞り環のクリック方式を採っている (外観だけでは不明)
内部構造の設計として特異な絞り羽根開閉幅調整方式を採っている (外観だけでは不明)

上記3点は今までに3,000本以上のオールドレンズを扱ってきて富岡光学以外の光学メーカーで採っていない設計なので『富岡光学製』判定の基準としています。

なお、今回の扱い品をオーバーホールしていく中でその解説写真撮影は、以前扱ったAUTO REVUENON 55mm/f1.2《初期型》(M42)」のオーバーホール工程の手順に倣い、その時の掲載写真に近い撮影を敢えて行いました。できるだけご覧頂く皆様に「同一であること」をご理解頂く為の配慮の一つです。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する役目の鏡筒です。光学系第1群前玉の外径サイズが「⌀ 47.48mm」と大きいので、そもそも鏡筒のサイズが大型です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑鏡筒最深部に絞りユニットをセットして鏡筒を完成させたところです。

↑完成した鏡筒をひっくり返して後玉側の方向から撮影しました。すると鏡筒から絞りユニット内にセットされている「開閉環から伸びている開閉アーム」が飛び出ています (赤色矢印)。さらに鏡筒側面の縁部分に円形状の位置をネジ止めしている「開閉幅微調整キー」と言うパーツが備わります (赤色矢印)。

そして上の写真を見ると分かりますが引張式スプリングが1本だけ附随し開閉環を引っぱっている為「絞り羽根を常に完全開放するチカラが及んでいる」ことも分かります (既に絞りユニットを組み込んであるので絞り羽根が入っているから)。

するとこの当時のたいていのオールドレンズでその内部構造として絞り羽根制御の概念があります。それは「スプリングや棒ばね、或いは板バネなどのバネ材を活用し、常に絞り羽根を開くチカラと常時絞り羽根を閉じるチカラの相反するチカラバランスの中で絞り羽根の開閉制御を執る設計が主流だった」点です。この概念をちゃんと認識しないままに整備作業を執り行うと、絞り羽根開閉異常を来した時に適切な絞り羽根の開閉動作に微調整して仕上げられない事に至ります。

従って前述の概念に則るなら「このモデルで常に閉じようとするチカラが他の何処かの部位で働いているハズ」とすぐに察知できなければ、そもそもここまでバラして整備作業を行う資格がありませんね(笑)

・・このような事柄が「原理原則」の一つの要素だったりします(笑)

←左写真は鏡筒側面に備わる「開閉幅微調整キー」ですが (赤色矢印)、このパーツをよ〜く観ると「黄鋼材の薄い円盤状の外周部分に締付ネジが入り固定されている」のが分かります。

すると締付ネジを緩めてこの円板を左右のいずれかの方向に回した時「円板は大きく左右にブレるのでブルーの矢印の範囲内で固定位置がズレる」のが一目瞭然です。

実はこれが「絞り羽根の開閉幅微調整機能」として機能している設計なのです。他の光学メーカーでもとても近似した設計をしている場合もありましたが、この当時の多くの「富岡光学製モデル」に積極的に採用していた微調整機能の一つです。

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

従って必然的に「絞り環に刻印されている絞り値と実際の開閉幅 (入射光量) の整合性が前提条件」なのは自明の理ですね(笑) 当然ながら当方のオーバーホール工程の中でも必ず検査していますが、法人格ではない個人なので、電子検査機械設備など買い揃えられないため使っているのは簡易検査具だったりします(笑)

↑「絞り羽根開閉幅微調整キー」がご覧のようにヘリコイド (オス側) の一箇所に予め切削により用意してある切り欠き/スリットに入ることで (グリーンの矢印) 鏡筒の格納が完了する設計です。

すると前述のブルーの矢印の範囲で絞り羽根開閉幅を制御できると解説したのは「そもそもこの鏡筒の固定位置を左右方向にズラす事でアナログ的にダイレクトに絞り羽根が閉じる角度をリアルに変更してしまう考え方」の設計とも言い替えられます(笑)

ところがここでちゃんと「原理原則」を熟知している整備者なら或る一つの大きな問題点を明確に指摘します(笑)・・それは「閉じる方向の絞り羽根の角度は微調整できるが完全開放側の微調整は一切できない」話しに至ります。

つまり「いったい絞り羽根がどの角度になったら閉じ始めていると判定できるのか?」と言う次なる課題にブチ当たります(笑) もしもここまで読んでいて自身が整備者なのにこの点に気づけなかったのなら「残念ながら絞り羽根開閉異常を適切に改善できる技術スキルを持つ整備者ではない」と言わざるを得ません(笑)

・・オールドレンズのオーバーホール/修理をするとは、そういう世界の中の話なのです(笑)

従ってネット上でも数多く分解しての整備作業を解説しているサイトが氾濫していますが、それらの中で「いったいどれだけの整備者がちゃんと完全解体した上で整備作業に臨んでいるのか?」との判定基準となれば、残念ながら相当少数の人しか居ないことが分かります(笑)

中にはヤフオク! で整備しながら出品している出品者も何人か居ますが「完全解体する必要はない/完全解体が総てではない」と明確に述べている人が居たりします。ところがそれら解説の中で経年で不具合が起きるので整備が必要ですと自分で述べており・・全く以て辻褄が合いません(笑)

経年劣化で不具合に至る」と言う現象に部位の相違は一切ありません。例えば「完全封入している部位 (密閉状態)」なら確かに経年に伴う酸化/腐食/錆びやそれに起因する抵抗/負荷/摩擦の増大を抑えられますが、それでもその部位が駆動箇所なら「経年の摩耗」と言う別の角度からの視点で考える必要性に迫られます。自分にとって都合の良い部位だけ解体して「整備したつもりになっている」のはマニア思考でありシロウト整備の類であり、それによってヤフオク! 出品して「整備済を謳って金銭授受」しているのだとすれば、それこそ詐欺に抵触しそうな話で当方はコワイと思ったりしますね (何故なら解体していない/整備できていない箇所が現実にあるから)(笑)

例えばマウント部内部など、一部に未整備箇所がある事をちゃんと明示すべきですね (解体した集合写真に写っていたりするのでウケる)・・あたかもキッチリ全ての整備が終わったように謳う、或いは経年劣化を防ぐ処置を施したとする所為は、整備済物品売買に於いて「錯誤を誘発しかねない」ので詐欺に抵触すると言っているのです。

・・だからこそ当方では「完全解体するのが大前提」なのです(笑)

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。基台の両サイドには内側に「直進キーガイド」なる切削が備わります (グリーンの矢印)。また基台の縁には「制限壁」と言う距離環駆動時の「駆動範囲を限定する役目の突出/壁」が予め用意されていて (赤色矢印)、そこを微調整できないことがここの工程でのポイントです。

↑無限遠位置のアタリを付けた場所まで黄鋼材のヘリコイド (メス側) をネジ込みます (赤色矢印)。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑さらにアルミ合金材のヘリコイド (オス側) を (赤色矢印)、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

ところが上の写真をよ〜く観察するとハッキリと判りますが、黄鋼材のヘリコイド (メス側) に「イモネジ用の下穴」がポツンと切削されています。この下穴は全周に均等配置で3箇所切削されています。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種でネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する

さらにこのイモネジは大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定する
 だけの場合があります。

するとここのオーバーホール工程ではいったいどちらの役目としてこれら3つの下穴が存在するのでしょうか? 或いはこれらヘリコイド (オスメス) でいったい何に配慮する必要があるのか (その配慮すべき内容が上の写真を見ただけで) 判明するとも指摘できます。

・・これらの指摘事項も全て「原理原則」を熟知していれば簡単な話ばかりです(笑)

だからこそ当方では今までに扱いが一度もない「初めて完全解体するモデル」でも、躊躇なく完全解体に挑むことが叶います(笑) そしてその「完全解体する理由」は過去メンテナンス時の微調整位置を把握する事と (必ずしも過去メンテナンス時の整備者の所為がワルイとは限らないから)、合わせて不具合や問題点の根源を突き止め改善する手段を講じる手立てとすることです。

・・完全解体せずして原因究明が100%完了したとは決して報告できませんョねぇ〜(笑)

何故ならオールドレンズの内部構造には大前提があって各部位からのチカラの伝達が総てだからです。オールドレンズの内部構造で「必要がないのに用意されている」箇所などは間違いなく100%存在せず、或いは使わない構成パーツも一つも残らないワケで、全てにその存在理由と根拠があります (但し他のモデルとの共用パーツ化した設計のモデルは顕在する/その場合その箇所は使わない場合がある)。

↑上の写真はマウント部内部ですが、既に当方により各構成パーツを取り外して「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。

↑これらこの当時の富岡光学製オールドレンズで、例えばヤシカ製「AUTO YASHINON-DXシリーズ」なども含め、上の写真のような「棒ばねの反発力 (ブルーの矢印) を利用した切り替え動作」の設計を採っているモデルが存在します。

当然ながらこれら「55mm/f1.2のM42マウントモデル」もほぼそのすべてに上の写真のパーツが実装されていますが、このパーツの「特に棒ばねの曲がり具合」が相当に神経質で、少しでもこのカタチが変化すると「A/M切替スイッチ操作時の絞り羽根駆動に大きく影響か現れる」ために、実は当方自身はこの当時のヤシカ製モデルも含めて敬遠していたりします(笑)

環/リング/輪っかの右側に2つあるネジ穴には「A/M切替スイッチのツマミが締め付け固定される」次第です。

過去にオーバーホール/修理した個体でA/M切替スイッチの動作に連係した絞り羽根の開閉異常が起きていたことがありましたが、まさにこの棒ばねのカタチが変形しており、過去メンテナンス時にさんざんイジられてしまった個体でした。その改善を試みたものの、結局丸3日がかりの作業となってしまい辟易だったのを覚えています(泣)

実は富岡光学製オールドレンズの設計には、部位別にこのような「意味不明な設計」が幾つか顕在しており、どうしてもっと単純で合理化した設計を採らなかったのかマジッで不思議です(笑) こんな棒ばね1本の反発力だけでA/M切り替え動作のチカラを絞りユニットに伝達するなど、誰が考えても「酸化/腐食/錆び対策はどうなのか?」或いは「どうして締付ネジで固定するのか?」など経年劣化への配慮があまりにも無さ過ぎると思うのですが・・(泣)

↑実際に前出の「A/M切替スイッチ環」をマウント部内部に組み込んだ状態を撮影しました (赤色矢印)。右横に飛び出ている「A/M切替ツマミ」を操作すると (ブルーの矢印❶) それに連動して棒ばねの位置が変化し (ブルーの矢印❷)「棒ばねの反発力が変わる (ブルーの矢印❸)」原理です。

従ってご覧のとおり棒ばねの近くに一つネジが存在しますが、そのネジとの関係性で棒ばねが反ったり収納したりを繰り返す原理です。これにより実は「絞り羽根の開閉を制御している」ために、正しくその反発力たるチカラが絞りユニットまで伝達されないと「絞り羽根開閉異常」に陥ります。

その症状としては「開放f値に絞り環をセットしたのに完全開放せず絞り羽根が顔出ししている」或いは「絞り環を回してもf8〜f16まで一切閉じず絞り羽根が微動だにしない」などが最も多い現象でしょうか(泣)

↑さらに絞り環と連結する「制御環」まで組み込んで (赤色矢印) マウント部内部の組み上げを完成させたところです。

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印❶) その押し込まれたチカラがそのまま伝達されて (ブルーの矢印❷) 最終的に反対側に位置する「操作爪 (操作アーム先端部)」が移動します (ブルーの矢印❸)。従ってマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」の押し込みで結果的に絞り連動ピン内の絞り羽根が開閉動作する原理です。

しかし絞り連動ピンが押し込まれた時、ではいったいどのような仕組みで設定絞り値を決めているのでしょうか? それが上の写真解説のグリーンの矢印になります。「制御環 (赤色矢印)」の途中にはなだらかなカーブが用意されていて、その坂の勾配の任意箇所に「カム」が突き当たると「その勾配により絞り羽根の開閉角度が決まる」仕組みです (赤色矢印)。

上の写真ではなだらかなカーブの坂を登りつめた頂上部分にかむが突き当たっているので「開放側」であり (グリーンの矢印)、この時絞り羽根は完全開放状態に居ます。

↑同じように「制御環」の途中に位置するなだらかなカーブの麓部分に「カム (赤色矢印)」が突き当たると、今度は最小絞り値側 (グリーンの矢印) にあたるので、絞り羽根は最後まで閉じてしまいます (つまりこのモデルではf16)。

これが絞り羽根が閉じる角度を決めている原理であり、勾配を利用して水平方向での移動量を決めて絞り羽根の開閉をダイレクトに決定づける多くのオールドレンズで採用している設計概念の一つです。但し、この勾配のいったいどの位置がどの絞り値を意味するのかはモデル個別に異なるので一概に決まっていませんし、もっと言えば勾配の頂上と麓部分で「開放側と最小絞り値側が反転してしまっている設計もある」のでモデル個別に「観察と考察」或いは「原理原則」に則った考察が必要です。

ちなみに上の写真では「制御環」が移動しているので「開放側の坂の頂上はカムから離れた位置に移動している」のが分かりますね(笑)

↑完成したマウント部を基台にセットしました。この時当然ながら絞りユニット内の開閉環から飛び出ている「開閉アーム」をガッチリと前述したマウント部内部の「操作爪 (操作アーム先端部分)」が掴んで離しません(笑)

↑この状態でひっくり返して絞り環をセットしたところです。上の写真では写真上側がマウント側方向になります。すると絞り環には「絞り値キー」と言う刻み/凹みが切削されていて、それは絞り環に刻印されている絞り値の位置に一致しているのが分かります (赤色矢印)。

実はこの「絞り環に刻印してある絞り値と絞り値キーの位置が一致している」のが大きなポイントになります。この意味をすぐにピ〜ンと来なければ、このモデルを整備する資格はありませんね (要はM42マウントの富岡光学製モデルをキッチリ整備できない)(笑)

↑こちらはマウント部に被さる「スイッチ環」です (赤色矢印)。スイッチ環にはA/M切替時のクリック感を実現する「板バネ (赤色矢印)」と (上の写真右上)、別に絞り環操作時のクリック感を実現する「ベアリングスプリング」も組み込まれています (赤色矢印上の写真右下)。

↑マウント部に対して右横に並べて撮影した「スイッチ環」にセットされたベアリング (赤色矢印) が、グリーンの矢印のように絞り環の「絞り値キー」に合致するので(赤色矢印)、ちゃんと絞り環操作時に設定絞り値の位置でクリック感が指に伝わります。

↑実際に「スイッチ環」をマウント部に組み込んだ後で撮影しました(赤色矢印)。するとそのスイッチ環を横方向から水平位置で「イモネジ」で締め付け固定しているのが分かります (グリーンの矢印)。

ところがこのイモネジで締め付け固定する際にスイッチ環の固定位置がズレていると「絞り環操作して設定絞り値に回した時のクリック感の感触までズレて指に伝わってしまい、希望する設定絞り値左右前後の絞り値キーのどちらでクリックしているのかが不明瞭」に陥ります。

つまりちゃんとクリック感と絞り環の刻印絞り値との位置がピタリとド真ん中で合致していないと撮影時に使い辛くて仕方ないのです。

現実にはボケ具合だけで判断しているから気にしない人は居るでしょうが、そのボケ具合がどの絞り値での撮影だったのかはクリック感がズレていると「えッ?!」となります(笑)

従って冒頭で解説した「富岡光学製の根拠の❶」全てが合致している話になりますが、特異なマウント面の設計とは、まさにこの「スイッチ環を横方向からイモネジで締め付け固定する (3箇所)」方式の固定方法を採っているのが一つ目の特徴です。

さらにのように「スイッチ環の固定位置がズレるとクリック位置までズレてしまう」ワケで、合わせてオーバーホール工程の途中で解説した「絞り羽根の開閉幅微調整キーの存在」が最後のを意味します。

どうしてワザワザ敢えてクリック感を実現する仕組みに「絞り環とスイッチ環の2つを介在させたのか?」或いは「どうしてクリック感の実現に2つのパーツを用意したのか?」と言う全く以て「意味不明な設計」を好んでこの当時の多くの富岡光学製M42マウントモデルに採用し続けていたのです(泣)

・・全く以て面倒くさいったらありゃしません!(泣)

他社光学メーカーではこのような絞り環操作時のクリック感など非常に簡素化して合理的な設計に当たり前に仕上げていた (この1970年代で既に) のに、富岡光学ではまるでバカのひとつ覚えの如く無駄な微調整機能を有する設計を続けていたのです。

このように「意味不明な設計」は他のモデルでも随所に隠れているので、おそらく当時の富岡光学内部では「部署別に/部位別に設計担当が分かれていた」のではないかとみていますが、実際はどうだったのでしょうか。そのように考えなければ、どうしてこのような無駄な微調整機能を敢えて装備する必要があったのか当方にはいまだに「???」状態です(笑)

↑指標値環 (赤色矢印) をやはりイモネジ (グリーンの矢印) を使い均等配置されている3箇所で締め付け固定します。するとやはりここでも締め付け固定の位置をミスると「絞り環のクリック感と指し示している指標の位置がズレたまま」だったりします(笑)

むしろ他社光学メーカーのようにこの指標値環を「皿頭ネジ」などを使って締め付け固定してしまえば「クリック感との位置ズレが未然に防げる」のはどれが考えてもすぐ分かるのに・・それをしないのですョ富岡光学は!(笑)

・・このようにハッキリ言って当方は決して構造面から見て富岡光学の信者には成り得ませんね(笑)

ましてや「富岡狂」など以ての外です(笑) 何でもかんでも富岡光学製に祭り上げてしまうと貶されますが、実際に完全解体してみて具体的な事実としての根拠が在るからこそ富岡光学製と述べているだけなのに・・貶められてしまいます(笑)

↑冒頭に掲載した写真と同じですが、後群側はこのようにそもそも格納筒そのモノが「切削したカタチで成形」されています。そこに切削された状態の光学系第4群〜第6群が格納されますが、後玉の第6群だけが格納筒に一体モールド成形になっています。

さらに「こんな設計で良いのか?」と不思議に感じたのは、実はこの後群格納筒は鏡筒に「締付ネジで締め付け固定」なのです!(驚)

このような設計で良いのかとの疑問が湧く理由は、多くのオールドレンズで光学系格納筒がネジ込み式で鏡筒にセットされるか、或いはそもそも後群側格納筒自体が鏡筒に削り出して備わっていることが多いのです。

締付ネジによる固定となると、どうしてもそま締め付け度合いが問題になりますし、もっと厳密に言えば締め付けるネジ穴が備わる箇所の板状部分が本当に水平を維持しているのかと言う心配まで起きます。

と言うのも、これら3本の締付ネジを締め付ける板状部分は1mmにも満たない厚みしかないアルミ合金材だからです。そのような薄いアルミ合金材を3方向から締付ネジで締め付け固定するにしても、肝心なその格納筒の中に格納される光学硝子レンズの塊とその重量まで勘案すると、少々心許ない固定方法ではないかと心配になったのです(泣)

実際、今回のオーバーホールで冒頭の完全解体した後のパーツ集合写真をご覧頂ければ分かりますが (もっと言えば冒頭の光学系第4群比較写真)、第4群の貼り合わせレンズはコバ端の反射防止黒色塗料着色の厚みがありすぎて最後まで格納されていなかったように思います。

と言うのも、この第4群の貼り合わせレンズを格納した後にさごに「締付環」をネジ込んで光学系後群格納筒へのガラスレンズ格納が完了するのですが、その締付環が最後まで入っていませんでした。

当初バラしている最中に何だか後群格納筒を持った時にカタコト音が聞こえたようにも思ったのですが、確認を忘れてしまいました。

もしかしたら当初バラす前にピント面が甘く感じたのは、前述の第3群の締付環が緩んでいたのが原因ではなく、この第4群貼り合わせレンズが最後までシッカリ格納できていなかったのが原因かも知れません。

そこで一旦溶剤で反射防止黒色塗料を溶かして除去し、再び当方にて着色し格納した次第です (溶剤で除去できたので過去メンテナンス時に着色していたのは間違いない)。当然ながら後で写真掲載しますが、光学系内のコバ端の白写りは低減できています。

↑光学系前後群を鏡筒にセットしてから最後に距離環を組み込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当初バラす前時点でも全く以て正常状態で何の問題点もありませんでしたが (バラす前時点での実写確認もちゃんと実施済)、さらにピント面ず鋭く改善し、且つ距離環を回すトルク感も当方特異なヌメヌメッとしたいつものトルク感に仕上げています(笑)

当初バラした直後の確認ではヘリコイド (オスメス) にちゃんと「黄褐色系グリース」を塗布していたので、相応に昔の過去整備だったのではないかと推察しています (何よりも固着剤が赤色だったから)。

但し当初バラす際には各部位のイモネジ締め付けが相当硬く、処置を講じてもなかなか回り始めず大変な思いをしました(涙) 正直、手の甲を痛めてしまい本来なら1日で終わるハズのオーバーホールが2日〜3日がかりになってしまいました(涙)

・・湿布を貼って治療中です(涙)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。もちろんカビ除去痕も目立たずおそらくその存在すら掴めないでしょう(笑)

ご覧のように光学系後群の第4群〜第6群の一部に光学ガラスの切削が顕在するので、光学系内を前玉側方向から覗き込むと欠けているカタチが露わになります。しかもこのカタチは例えば「玉ボケ」などを写し込むと確実に現れるので厄介極まりないのですが、実はこのモデルの描写性はトッロトロボケになりますし、そもそも真円をキープした円形ボケの表出シ〜ンが少なかったりするので、おそらく誰も気づかないままでしょう(笑)

↑後群側はまさに脅威ですが(笑)、こんな感じで予め製産時点から切削されています。これは「絞り連動ピンを避ける必要性から切削せざるを得なかった」次第ですが、それほどまでに光学性能と言うか「描写性にこだわった」が所以とも言い替えられます。しかも第4群から第6群まで段階的に、段々畑状に切削を入れているところなど「当時のフィルムカメラでのミラー干渉に目一杯配慮している」のも分かりますね(涙)

・・そのワリにはこのモデルの存続は意外にも短命だったような気がしますが(涙)

設計者の意地なのかこだわりなのか覇気なのか分かりませんが、世の中違う方向を眺めていたのでしょうか・・ロマンを感じずに居られません(涙)

↑もちろん前述のとおり絞り環刻印絞り値との「整合性」もキッチリ簡易検査具を使い検査済です。8枚の絞り羽根が閉じる際は「完璧に正八角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースはいつものとおり「黄褐色系グリース」ですが、仕上がりには当方独特なヌメヌメッとしたシットリ感のある感触を伴うトルク環に仕上げてあり、ピント合わせ時のピントのピークでは「掴んでいる指の腹に僅かにチカラを伝えるだけでビミョ〜に微動する」あの感触に仕上がっています (ご依頼者様は既に何本もオーバーホールを仕上げているので当方の特異なトルク感をご存知です)(笑)

この点がまさに十数年前の整備で塗布された「黄褐色系グリース」の相変わらず経年劣化する率が低い、経年劣化の耐性があるトルク感とは異なる印象です。もちろん過去メンテナンス時に「白色系グリース」が一切塗られていなかったので、相応に有名処の整備会社でプロの整備者に手により施されているのまでちゃんと掴めています。

・・各部位の微調整の仕上がりもさすがプロの仕業なのが一目瞭然でした!(涙)

こういう個体を扱うと本当に心が洗われると言うか、昔にはこういう整備者がゴロゴロ居たんだろうなぁ〜と感じ入るところでありますが、如何せん何でもかんでも固着するのは昔からの伝統なのか分かりませんが・・甚だサービスフレンドリーとは言い難いと、手の甲の痛みを堪えつつ思ったりもしますね(涙)

↑完全解体してしまったので、オーバーホール工程の途中で出てきた「例の制御環の棒ばね」に恐れおののいていましたが、何とか最後まで仕上げることができました (ホッ)。

ご報告しなければならない問題点や不具合、違和感など一つも御座いません。完璧に仕上がっています。もちろんご指示がありました「UV光の照射」も光学系構成6枚目と7枚目 (後玉) に実施していますが、最終的に「当初と比較して半減程度」までの改善に留まり、無色透明化は達成できていません (これ以上は不可能です)。

よく夏日の天日に当てる方が居ますが、ハッキリ言ってお勧めしません!(怖) 当方などがコワイのは「光学系内の気圧変化を促す (締付環の緩みをを誘発する一因)」点と、一番は何はともあれ「ヘリコイドグリースの融解に近づく」点に於いてとてもお勧めできる所為ではありません(泣)

確かにヘリコイドグリースの融点に到達するにはまだまだ余裕がありますが、そうは言っても経年劣化が進んでいる中での天日当て、或いは例え整備済としても「仮に白色系グリースが塗布されていれば」その年の冬には内部の湿気分を留保する最大の因果関係に至るので、当方はとてもできませんね(怖)

そういう話はネット上でも数多く見かけますが「ちゃんといろいろ考えて語っていない」点に於いて、オールドレンズサイドに立ったモノの考え方ではない人達/勢力なのかと残念だったりします(涙)

もしもどうしても盛夏の天日干しをしたいのであれば(笑)、ちゃんと光学系を解体して光学硝子レンズ単独で行って頂ければ問題が少ないですが、その一方でちゃんと光路長確保して格納できるのか (戻せるのか) と言えば・・「???」だったりもします(笑)

ちなみに今回の個体は当初バラした時に「光学系第3群の締付環が緩んでいた」ので、執拗に固着剤を塗布していたにもかかわらずそのような始末ですから、当初バラす前の実写チェック時点から極僅かですがピント面の鋭さが増し「あぁ〜コレコレ、これが富岡光学製モデルの写りだョなぁ〜」と個人的に至極納得できた次第です(笑)

またさらに例えば光学系第4群貼り合わせレンズのコバ端なども、一旦剥がしてから再着色したので光学系内のテカリは可能な限り低減できています。そういうのは特に言われずとも必ずオーバーホール工程の中で逐一チェックしているので(笑)、当方独特なDOHを実施すれば、自ずとその仕上がりは異なる次元に到達し「本来在るべき姿 (製産時点)」へと近づきます(笑)

・・とっても高額なモデルですから、今後も是非ともご活用下さいませ!(涙)

せめて「富岡光学の意地が込められている」のを、この操作性と共にご堪能頂きながら、写真撮影をお愉しみ頂ければ・・まさに当方自身もきっと設計者も本望というものです(涙)

・・本当に素晴らしいオールドレンズですねぇ〜。溜息が出ます(涙)

↑ちなみにマウント面はご覧のように突出していますから、マウントアダプタに装着する際には特に配慮が必要です。もちろんフィルムカメラでのご使用に際してもミラー干渉など事前チェックが必須ですョね (当方は何しろカメラ音痴なので)?(笑)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑何でいちいち使うマウントアダプタとの相性問題までチェックして、このブログで告知しないと叱られる/クレームもどきが着信する/下手すれば誹謗中傷の嵐・・なのか「まるで???」ですが(涙)、今回も当方所有マウントアダプタに装着しての確認検証作業を実施しました(涙)

《検証したマウントアダプタの種類》
Rayqual製「M42 − SαE」マウントアダプタ (日本製)
K&F CONCEPT製「M42 − E」マウントアダプタ (中国製)
FOTGA製「M42 − NEX」マウントアダプタ (中国製)
K&F CONCEPT製「M42 – NEX」マウントアダプタ (中国製)

さらにこれら4種類の中で「前列はピン押し底面装備」タイプのマウントアダプタですし「後列は非ピン押し底面タイプ」のマウントアダプタです。

この中でのK&F CONCEPT製マウントアダプタは現在市場に登場してきた第5世代の新型から1世代前のタイプになります。この一つ前の世代と現在の第4世代の2つのモデルに「オレンジ色の帯が掛かる」意匠デザインを採っています。しかしこれらのタイプは下手すると一部のカメラボディで本体に干渉するので使えない場合がありますし、或いは三脚やアクセサリによっても装着できない場合がありますから要注意です・・本体の外周ローレット (滑り止め) 部分の突出がありすぎるので干渉してしまうから (実際当方の三脚でも干渉して使えません)。

またのK&F CONCEPT製マウントアダプタは後列なので「非ピン押し底面タイプ」として並べていますが、市場にもK&F CONCEPTにもそのような製品は一切流通していません・・当方の手による加工品ですが、いつでもオリジナルに戻せるよう配慮してあるので市場流通品たる製品状態にも戻せます (つまり3通りの使い方ができる優れモノ)(笑)・・オリジナルな製品の詳細は「◎ 解説:M42マウント規格用マウントアダプタのピン押し底面について」或いは「◎ 解説:K&F CONCEPT製M42 → SONY Eマウントアダプタ《最新モデル》」などで検証しつつ解説しているので興味がある方はご参照下さいませ。

ちなみにK&F CONCEPT社 (中国) と当方とは一切関係も繋がりも御座いません(笑) このような解説を試みているとどういう繋がりなのか問い正してくる人が居ますが、甚だ迷惑千万な話です。基本的にパクリ大国たる中国と韓国とは特に繋がりを持ちたいとは当方は一切考えていません!(笑)

話が反れますが、例えば有名なフランスの社会人類学者、民俗学者、或いは現代思想としての構造主義を担った中心人物と評される「Claude Lévi-Strauss (クロード・レヴィ=ストロース)」博士に拠れば「世界の国の中で日本に比類する国はない」と明確に述べていらっしゃいます。

それは世界中の国や民族が「自分/」を全ての中心的な主体として捉え、そこから周囲〜社会〜国へと関与を示すのに対し、日本とニッポン人だけが世界で唯一「社会周囲自分/」との繋がりの中で自身の主体性と社会生活を問うていく民族だと述べて居られます (つまり方向性が真逆なのです)。

単なる協調性や合同的な話ではなく、そのような繋がりの中でも自身の人生をどれだけ豊かに平和に価値あるモノに高められるのか、ひたすらに追求をやめない民族とも述べているようです。

また博士による別の話、例えば縄文土器に関しても1万6千年前からその技術や風習、或いは伝統が継承され現代にまで脈々と細く続くのに、一方世界で名の知れた土器はせいぜいエジプト文明やインカ時代など6千年前前後辺りからの話でしかなく、しかもそれらの文化は形態を変えずに潰えてしまっていると述べています。

いったい「どうすればそれらにプラス1万年に到達するのか?」とまで話されていたようです。このように古い文化や風習、社会を徹底破壊せずに、少なからず継承しながら残しつつ、新しいものに果敢に挑んでいく様は、その吸収と活用形態に於いても日本とニッポン人だけに現れる特異な様相であり、そもそもそれを比較できる民族も社会も国も存在しないと言うお話です(笑)

するとそういう部分に、例えば明治維新の時、列強各国の占領統治、或いは植民地化が成されなかった背景が隠れているのかも知れないとも考えられ、もっと穿った言い方をすれば、先の大戦で敗戦してもなお米国の占領統治から相当に早い時期に独立し主権回復したのは、何が影響していたのか?・・なかなか知りたい事柄が多く、もう一回り一巡して自分の人生を謳歌したい気持ちで一杯です(笑)

↑話が反れました(汗) Rayqual製マウントアダプタです。M42マウントネジ部の内側に「ピン押し底面」が棚のように迫り出しています (赤色矢印)。そしてそのピン押し底面の深さはオールドレンズ側マウント面の1mmある突出からの深さとして「6.0mm」あり (グリーンの文字)、その深さを微調整する昨日は備わっていません。

K&F CONCEPT製マウントアダプタです。同様M42マウントのネジ部内側に「ピン押し底面」を有し (赤色矢印)「深さ6.0mm」ですが (グリーンの文字)、実はこのピン押し底面は「2面使いができる」仕様になっていて、裏面に入れ替えると「プラス0.4mm深くなる」為に2通りの使い方ができる優れモノのマウントアダプタです (唯一無二で他に類似製品が顕在しない)。

つまり「深さ6.4mm」にもセットできるので、当方はこのおかげで数多くのマウント面から飛び出ている「絞り連動ピンに起因する絞り羽根開閉異常」を助けられています!(涙)

↑さらに冒頭写真後列に移りますが、M42マウントネジ部の内側に「ピン押し底面が備わらない非ピン押し底面タイプ」であり (赤色矢印)、現状市場で流通して手に入れられる唯一の製品です。

だとすればこのマウントアダプタを使えば良いワケで、何も大袈裟な話ではないのですが(笑)、実は残念ながらこのマウントアダプタの「製品全高」が適切ではなく、M42マウント規格のフランジバックから計算すると「アンダーインフ状態」を招きかねません (したがって使用を推奨していません)(怖)

・・つまり無限遠位置附近で甘いピント面にしか到達しない!(涙)

↑最後にですが、同じK&F CONCEPT製マウントアダプタの1世代前のタイプです。そのマウントアダプタをチッとばかし加工して「ピン押し底面を外してしまった」ので「非ピン押し底面化が完了」しています(笑) もちろんオリジナルの「ピン押し底面」もあるので、いつでもオリジナル状態に戻せますから「全部で3通りの使い方が実現」と言う話に到達しています(笑)

↑実際に今回扱った個体をRayqual製マウントアダプタに装着してみました。するとオールドレンズ側基準「」マーカーの位置 (グリーンの矢印) に対してマウントアダプタが最後までネジ込みきっていないので (詰まってしまい最後までネジ込めない)、本来真上に位置に来るハズの型番刻印白色文字が反対側に行ってしまってます・・(泣) 必然的にネジ部には「僅かな隙間」が生じてしまい (赤色矢印)、当然ながらこのまま撮影しても無限遠位置からはほど遠い状況でとても使いモノになりません(涙)

↑今度はK&F CONCEPT製1世代前のマウントアダプタに装着しました。既に前述した「ピン押し底面を凹面にセットしたので都合0.4mm分深くなっている」が為に、マウントアダプタ側の刻印白文字はオールドレンズ側の基準「」マーカーに対してすぐ近くまで到達していますが (グリーンの矢印)、如何せんマウント面に隙間が生じ (赤色矢印) やはりアンダーインフ状態です(泣)

FOTGA製マウントアダプタです。ちゃんと最後までネジ込めて (内側にピン押し底面が存在しないから詰まったりせずに最後までネジ込める)、且つマウント面に隙間もありません (赤色矢印)。しかし残念ながらこの状態で実写しても無限遠位置はアンダーインフ状態で甘いピント面のままです(泣)

↑最後に当方にて用意しているK&F CONCEPT製対策済マウントアダプタです。やはり最後までちゃんとネジ込めて隙間は空かず (赤色矢印)、もちろんオールドレンズが基準「」マーカーに対しても真上位置に合致していて「まるで正常」です (グリーンの矢印)(笑) 当然ながらこの状態で無限遠位置の合焦チェックも実施していて鋭いピント面に改善済です (オーバーホール工程の途中で解説した話)。

従ってこののマウントアダプタを使えばちゃんと問題なく末長く「A/M切替スイッチをM手動にセットして使える」ワケで、特に将来に渡る心配事も消えて「心の健康が保てる話」ですョねぇ〜(笑)

以上、本来当方が責任を帯びるべき話ではないのですが、一応ご覧頂く方の環境下の一部には参考になるかも知れず解説を試みました・・決して当方のオーバーホール結果や仕上がりがワルイから説明しているワケではありません (誹謗中傷メールやめてください)(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f1.4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2」で撮りました。

↑f値は「f2.8」に上がっています。

↑f値「f4」になりました。

↑f値「f5.6」です。

↑f値「f8」ですが、さすがまだまだ背景がボケています(笑)

↑余裕のf値「f11」です。まだまだ「回折現象」の影響は感じられません。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。ほぼ絞り羽根が閉じきり状態なのでご覧のようにピント面は解像度の低下が確認できますが、それでもコントラスト低下にまで至らず全く以て使える描写性能のままですから・・素晴らしい限りです!(驚)

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。先日のSWITAR含め梱包し明日発送申し上げます。