◎ Revue (レビュ) AUTO REVUENON MULTI-COATED 55mm/f1.4《富岡光学製:後期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Revue製標準レンズ・・・・、
AUTO REVUENON MULTI-COATED 55mm/f1.4《富岡光学製:後期型》(M42)』です。


富岡光学製OEMモデルの標準レンズ「55mm/f1.4」は今まで数多く扱ってきましたが、意外にも今回のモデルが抜けていて初めての扱いになります。

・・と言うか、今まで10年間で初めて見かけたRevueブランドのマルチコーティングモデルです。逆に言うなら日本のCHINON製マルチコーティングモデルのほうが数多く市場に出回っているので、その中で埋もれていた (気が付かなかった) 可能性は捨てきれません。

従って当時ヨーロッパ向け輸出モデルとしてもOEMである以上原型モデルが存在し、おそらく日本のCHINON製モデルではないかと推測しています。すると純粋に考えればCHINON銘の レンズ銘板を単にRevueブランドにすげ替えただけのように捉えられがちなのですが、それは違います。

モデル銘たる「AUTO REVUENON」の次に来ている「MULTI-COATED」のカラーリングが当時のCHINON製モデルと違うのです。逆に言うなら、当時のマルチコーティング化されたCHINON製モデルには2種類のカラーリングでレンズ銘板が存在し、マルチコーティングの光彩が薄い (弱い)「MULTI-COATED」の次に、完全にグリーン化してしまった「MULTI-COATED」モデルが顕在して、実際の光学系に蒸着されているマルチコーティング層との兼ね合いでレンズ銘板のマルチコーティング化部分の色合いが違っているのです。

ちゃんとこの点に着目してモデルの変遷を辿っている人は、さすがネット上でも1人しか見かけたことがありません (日本国内)。また当時在籍していた人のコメントでは、単に指向先メーカーの指示でレンズ銘板のカラーリング (色合いの相違) を決めていただけとの事ですが、然しながらマルチコーティングの蒸着はその放つ光彩自体が異なるので、当然ながら厳密に計測した時に光学系内に入ってきた入射光の制御に必然的な相違が表れていたとみています (つまり単なるレンズ銘板のカラーリングだけの話ではない)。

それはこのようなマルチコーティングなどの光学硝子面への蒸着が「光反射防止」の役目であり、光学系内への入射光が透過時に減衰する色成分を確保/維持させるのが目的なので、蒸着されるコーティング層が放つ光彩が異なるとなれば、必然的に入射光の色成分もその透過率が変化するワケで、単純に放っている光彩の違いだけと受け取ってしまうのは少々乱暴すぎます。
(蒸着するコーティング層の本来の目的/役目を考慮すれば当たり前の道理)

【CHINON製のモデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型1972年発売 コーティング表記無し
レンズ銘板:TOMIOKA銘刻印あり/無も有り
距離環ローレット:エンボス加工/幅広
銀枠飾り環:有
コーティング:モノコーティング
コーティング層光彩:アンバーパープル

中期型1976年発売 コーティング表記あり
レンズ銘板:TOMIOKA銘刻印なし
距離環ローレット:幾何学模様ラバー製/幅広
銀枠飾り環:有
コーティング:マルチコーティング
コーティング層光彩:グリーン含む3色

後期型1977年発売 コーティング表記あり
レンズ銘板:TOMIOKA銘刻印なし
距離環ローレット:幾何学模様/薄型ラバー製
銀枠飾り環:有
コーティング:マルチコーティング
コーティング層光彩:グリーン含む3色

上記に例として日本のCHINON製標準レンズ「55mm/f1.4」富岡光学製モデルのモデルバリ エーション別に蒸着コーティング層が放つ光彩を列記しました。

するとこの当時の総天然色をフィルム印画紙に記録する概念として、光学系に透過する入射光が光学硝子の (表裏の) 片面で必ず4%分が反射してしまい、1枚の光学硝子を透過する際最低でも8%分が減光してしまいます (表裏2面あるので)。仮に光学硝子レンズが全部で6枚構成だった場合、48%もの減光に至る原理になります。

これでは適切な描写性能のままフィルム印画紙に記録できないので、戦時中時点でドイツのCarl Zeiss Jenaによりシングルコーティング (単層膜蒸着技術) の特許が登録され、主にブル〜の光彩を放つコーティング層が蒸着されました。

これは光学系内に入射する自然光が大きく「」の3色にまとめて制御できると言う考え方であり、この3色を指して「色の3原色」と呼ばれています (総天然色を表すのにこの3色の組み合わせと配分で制御できる)。例えば現代ではデジタルなので「RGB ()」になり、4K/8Kなどでは輝度を明るくする目的で「RGBY ()」の4原色を管理しています。

さらにこれら自然光は波長/波動なので、波長/波動の長いサイクル (大きなうねり) の赤外線側から、波長/波動が短い (小さなうねり) の紫外線域まで連続スペクトルとして表せますね。

従って1935年時点で戦前ドイツで特許登録されたシングルコーティング技術 (単層膜蒸着技術) では、光学系内で一番先に減衰してしまう波長/波動が短い紫外線側の領域を維持させる目的でブル〜の光彩を放つコーティング層を蒸着する考え方です。

しかしこの時点ではまだ光学硝子レンズ精製技術が伴っていない為、どうしても光学系内を 透過する入射光がフィルム印画紙に到達する時点で減衰してしまい、暗いf値でしか管理できませんでした。そこで1939年になると戦前ドイツで今度はモノコーティング技術 (複層幕蒸着 技術) の特許が登録され、ここで紫外線領域にプラスして波長/波動が長い赤外線領域まで含め入射光減衰を可能な限り防ぐ考え方が用意されました。

このモノコーティング技術 (複層幕蒸着技術) では従来のブル〜の光彩から前進して、光学系内の一部の光学硝子面にブル〜シングルコーティング (単層膜蒸着) を蒸着するものの、他の群にはパープルアンバーモノコーティング (複層幕蒸着) を蒸着します。

この複層膜の「パープル」は赤色青色の2つの波長に対応し、単層膜のブル〜領域もカバーしています (それをさらに補う必要があれば光学系内で一部にシングルコーティングでブル〜 のみを蒸着する考え方)。また暗いf値でしか対応できなかった光学硝子精製技術をさらに補う目的で輝度確保として「アンバー」も蒸着することで、f値が暗くなるのを改善させています。

従ってこのモノコーティング (複層膜蒸着技術) により「」の自然光の「色の3原色」に対応でき、ここでようやく光学系内の入射光透過率が確保できた次第です。

1972年になるとさらに発展し、戦後旧東ドイツCarl Zeiss Jenaでは「MC」或いは旧西ドイツOberkochen (オーバーコッヘン) Carl Zeissの「T*」と、それぞれマルチコーティング
(多層膜蒸着技術) に成功し特許登録しています。但し光学系内への入射光の「色の3原色」に変わりがないので「パープルアンバー」も変化せず、然し放つ光彩の強さは自在に制御でき、それだけ入射光の透過率もアップできると言う話になります。

この時に日本も含めて一斉に流行ったのが「グリーン色の光彩を放つコーティング層蒸着」であり、これによって自然 (草花や植物/森林) の発色性アップの他、実は人肌の表現性もより リアルになり、且つ空の青さやグラデーションの階調を滑らかにする効果などが向上して
います。従って「グリーンの光彩」が無いよりはあったほうが、よりリアルな描写性能の追求が期待できると言う話になります。

なお、当時の日本ではマルチコーティング化の一歩手前で世界初の「薄層膜蒸着技術」として、1958年にMINOLTAにより世界特許登録が成された「アクロマチックコーティング (AC) 」技術があります。これはその名のとおり「薄膜」によるシングルコーティング層やモノ コーティング層の上にプラスして被せられる「薄膜蒸着技術」であり、下に位置する既存蒸着膜を一切影響せずに被せると言う特異な技術です。その意味で当時MINOLTA製オールドレンズの多くが「緑のロッコール」と呼ばれていたくらいに大変美しくグリーン色の光彩を放つワケで、それは決してハンパな技術ではなく、世界のどこの光学メーカーも決して真似できなかった素晴らしい技術だったのです。

当時さっそくライカが技術提携に及び、実際に薄膜蒸着層を自社製品に施してきたのは有名な話しですね。

ちなみに、現下のコロナ禍でもこの日本の写真技術は遺憾なく最先端レベルを発揮しており、例えば富士フイルムのフィルム印画紙への多層膜技術がそのまま医療領域にまで発展し、新型コロナウイルス用のアビガンなど開発に至っていますから決してバカにできません。

その意味で、今後の日本は末端製品の開発/製造に特化せず、むしろ基幹材料の最先端技術に 特化して世界シェアを握っていく戦略のほうが安定して利益を追求できるようにも考えます。良い例が先の韓国に対する輸出制限であり、基幹素材品目3品目はいまだに同レベルの品質まで開発が進んでいません。ある意味このような基幹材料を押さえることで経済面での優位性を確保でき、それはそのまま安全保障面にも直結する時代に入ったとも考えられますね。

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【チノン製一眼レフカメラ】
M42マウントモデルのみ/発売年度別時系列
※( ) 内は海外向け輸出OEMモデル

CHINON M-11972年発売 (GAF L-17)
CHINON CM1974年発売 (GAF L-CM/aurgus CR-1)
CHINON CE MEMOTRON1974年発売 (GAF L-ES/SEARS 2000)
CHINON CX1974年発売 (GAF L-CX/argus CR-2)
CHINON CXII1976年発売
CHINON CS1976年発売 (Revue REVUEFLEX 2000CL)
CHINON CEII MEMOTRON1976年発売 (GAF L-ESII/argus CR-3)
CHINON CE-3 MEMOTRON1977年発売
CHINON CM-11978年発売 (?)
CHINON CM-31979年発売
CHINON CS-41980年発売 ※最後のM42マウントモデル


↑上記は前述のモデルバリエーションから発売順にネット上の写真をピックアップしました。

するとセットレンズとして設定されていた当時のCHINON製標準レンズの、特にローレット 部分 (滑り止め) をチェックすることで「前期型後期型」の変遷がたどれるという話しです。もっと言うならそれら製品に附属する取扱説明書に写っている標準レンズがセットレンズと して設定されていたことが自明の理です。

要は1975年時点ではセットされていた標準レンズはまだモノコーティングのみであり、1976年からマルチコーティング化が進み最初のレンズ銘板たる「MULTI-COATED」が登場していますが、併せて「MULTI-COATED」まで用意されていたことになり、なかなか興味深いところです。

また左のとおり当時の取扱説明書をチェックすると、マルチコーティング化に伴い製品が特定されたのではなく、同時にモノコーティングモデルも併売していたことがこれで明白です。

従って顧客やニーズによってモノコーティングマルチコーティングの標準レンズをセット して販売していたとも考えられます。逆に指摘するなら、コーティング層の光彩をチェックしても発売時期は確定できませんが「ローレット (滑り止め) だけは製産時期の変遷を辿る要素になる」とも言い替えられますから、このようにある特定の要素に絞ることで時系列を確定できる部分に着目する必要がありますね。



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、口径食や収差の影響を受けて真円で繊細なエッジを維持したキレイなシャボン玉ボケの表出が苦手です。しかし一旦アウトフォーカス部が滲み始めると最終的にトロットロに溶けていくのがまさに富岡光学製オールドレンズの特徴なので、背景の円形ボケ自体が煩くならず滑らかです。時にこのようなグルグルボケっぽい写真も撮れ、なかなか楽しい使い方が期待できます。

二段目
さらに背景が乱れて滲んでいく様をピックアップしています。場合によっては多少二線ボケ傾向になりますが、決して紛らわしく違和感に至らない素直な乱れ肩とでも言いましょうか。そしてやはりどんどん進むとトロットロの溶け具合に至ります。

三段目
左端はまさに被写体の素材感や材質感をキッチリ写し込む質感表現能力の高さを物語ります。特に今回の出品モデルはグリーンの光彩を放つマルチコーティングモデルなので、ご覧のとおり人肌の美しさという表現性は折紙付きです。

また2枚目の写真で一目瞭然ですが「トミオカの紅色」と言うご覧のような「決して色飽和しないビビッドな赤色表現」と相当なレベルで溜息が出ます。またグリーンの光彩を放つマルチコーティング化のおかげで、青空の碧さと夕日を浴びた石材の壁との対比/コントラストが相当なレベルです。このような特徴がまさに富岡光学製オールドレンズの素晴らしさなのでしょうか。

光学系は5群7枚のビオター/クセノン型構成で、後群側が拡張されている設計です。右図は以前「前期型」モデルをオーバーホールした際に光学系をバラして各群を逐一当方の手でデジタルノギスで計測したトレース図です。

つまりはモノコーティング時代の構成図とも言い替えられます。

さらに「中期型」になるとマルチコーティング化が進み各群の曲率や厚み/カタチがビミョ〜に変化しています。

同様以前オーバーホールした際にデジタルノギスで逐一計測した時のトレース図です。

そして右図が今回の個体「後期型」を完全解体して光学系を清掃した際に、やはり当方の手でデジタルノギスで逐一計測したトレース図 です。

特に後群側の第3群貼り合わせレンズのカタチと曲率/厚みなどがガラッと変わっているのが分かりますが、この構成図はネット上何処を 探しても掲載されていません。

するとまたSNSなどで当方が公然とウソを載せていると批判されるので(笑)、やはり証拠の写真を撮影しておきました。

左写真は今回出品する個体の光学系第3群にあたる貼り合わせレンズを、上下ひっくり返しながら撮っています。

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今回扱うモデルも『富岡光学製』と当方は捉えているのですが、そのように案内すると
何でもかんでも富岡光学製にしてしまう」とSNSなどで批判されるようです(笑)

その根拠の基になるモデルがあり、レンズ銘板に刻印されている発売メーカー刻印以外に「TOMIOKA」銘を刻んでいるいわゆる「ダブルネーム」のオールドレンズが存在します。

AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」の特異的な構造要素から判定しています (右写真は過去オーバーホールした際の写真)。

具体的には『富岡光学製』の構造的な要素 (特徴) として大きく3点あり、いずれか1点、或いは複数合致した時に判定しています。

M42マウントの場合に特異なマウント面の設計をしている (外観だけで判断できる)。
内部構造の設計として特異な絞り環のクリック方式を採っている (外観だけでは不明)。
内部構造の設計として特異な絞り羽根開閉幅調整方式を採っている (外観だけでは不明)。

上記3点は今までに2,000本以上のオールドレンズを扱ってきて、富岡光学以外の光学メーカーで採っていない設計なので『富岡光学製』判定の基準としています。

今回の個体『AUTO REVUENON MULTI-COATED 55mm/f1.4《後期型》(M42)』は、上記判定ののみ適合しており、当時のM42マウント規格の他社製オールドレンズの中で同一設計の仕様品は存在しません (外観だけではなくバラした上での内部構造面から判定)。


↑まるで宝石箱を開けたかの如く美しい光彩をそれぞれが放っていますが(笑)、今までに当方が扱った「富岡光学製OEMモデル」の写真を転載して並べました。全てM42マウント規格品で あり、内部構造面と使われている構成パーツから確認して『富岡光学製』と判定しています。上段左端から・・・・、

AUTO RIKENON 55mm/f1.4 (RICOH)
AUTO SEARS 55mm/f1.4 (SEARS)
AUTO REVUENON 55mm/f1.4《中期型》(Revue)
AUTO REVUENON 55mm/f1.4《後期型》(Revue)
COSINON AUTO 55mm/f1.4 (COSINA)
AUTO COSINON MC 55mm/f1.4《後期型》(COSINA)
PORST COLOR REFLEX MC AUTO 55mm/f1.4 G (PORST)
PORST COLOR REFLEX MC AUTO 55mm/f1.4 G
(PORST)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。当方が何でもかんでも『富岡光学製』にしてしまうとSNSで批判されまくっているので(笑)、ここからのオーバーホール工程では冒頭で案内した「TOMIOKA銘ダブルネーム」たる「AUTO CHINON 55mm
/f1.4 TOMIOKA
(M42)
」で掲載した順番で内部構成パーツの解説をしていきます。また実際に使われている構成パーツが全く同一なモデルは『AUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.4《中期型》(M42)』になります。

従って根気のある方は(笑)、両方チェックして頂ければ全く同一なのだと (つまり富岡光学製製と) ご納得頂けると思います。逆に言うなら内部構造と使っている構成パーツが同一なのに、敢えて否定される場合はその根拠を示すべきではないでしょうかね(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オスメス) が独立しており別に存在します。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部にセットします。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上部が前玉側方向になります。すると絞りユニットを締め付け固定する「締付ネジ」が鏡筒外壁に3箇所均等配置でそなわり「絞りユニットの固定位置の微調整ができない」設計に変えてしまったのが分かります。

また同様に鏡筒自体の格納も「位置決めキー」と言うネジが微調整できないまま用意されているので、絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) も微調整が効きません。

つまりこの構造から「観察と考察」でハッキリすることは「絞りユニットの固定位置微調整機能」「絞り羽根の開閉幅微調整機能」の2つの工程を省いてきたのが明らかであり、2工程分の時間短縮と人件費削減が適っています。

ちなみに「開閉環」にマウント部内部から飛び出てきた棒状アームが刺さることで、マウント面から外側に飛び出ている「絞り連動ピン」の押し込み動作に連動して絞り羽根が開閉する原理です。

そして絞り羽根が閉じる時の開口部の大きさだけ微調整ができよう右横に「閉じる位置の微調整機能」だけが備わっているのが分かりますね (ブルーの矢印)。つまり微調整板を左側に突き出せば「絞り羽根は小さく閉じない」ワケで、逆に引っ込めて固定すると「絞り羽根が遺作閉じる」仕組みなので、ここの微調整により「最小絞り値までの各絞り値との整合性を執れる」話になりますが、肝心な「完全開放状態の微調整機能が存在しない」ことも同時に明白になります。

このように「観察と考察」することで微調整の範囲とその内容が掴め、同時にどのような問題が顕在するのか、或いは組み立て工程の手順などがハッキリしてくる次第です (つまりサービスマニュアルなど無くても組み立て工程手順が明確になる)。

よく当方のこのオーバーホール工程で「サービスマニュアルが無いのにいい加減な解説をしている」と批判している人が居ますが(笑)、それは自分で整備した経験がない人の言い分です(笑) 組み立て手順を誤れば、自ずと適切な駆動やチカラの伝達が成されないので、最後に組み上がった時、各部位が正しい動き方をしません。

そんなことは整備している人なら既に承知の話しです・・(笑)

↑こちらは距離環やマウント部を組み付ける為の基台です (アルミ合金製)。

↑真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しい場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑さらにヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

すると注意深い人なら既に気が付いていますが、どうしてアルミ合金材の基台とヘリコイド
(オス側) の間に真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (メス側) が入るのでしょうか?

つまり何故真鍮 (黄銅) 製のヘリコイドをアルミ合金材でサンドイッチしているのですか?

材質が異なる金属でサンドイッチする点に着目して注意力が働いている人なら、この工程での注意点まで理解できています。要はヘリコイド (オスメス) の話しですから、塗布するグリースの話になります。

もちろん当方で使っているのはオールドレンズが製産された時点で「工場で使っていたであろう黄褐色系グリース」を使っているので、今ドキの整備会社などで多用される「白色系グリース」は基本的に当方では使いません。

その理由は「製産時点には白色系グリースは存在せず、黄褐色系グリースの塗布を前提とした設計だから」と断言できます。但しグリースの色合いは「どうにでも変更できる」ので例えば乳白色の色合いでも成分と添加物は「黄褐色系グリース」と同一だったりします (例:NikonやCanon/MINOLTA/Leicaなどのオールドレンズ)。

逆に言うなら「黄褐色系グリース」の成分と添加物なら後に「潤滑油」を注入されたとしてもヘリコイド固着化には至りませんが、仮にもしも「白色系グリース」が使われていると「潤滑油」の注入で早ければ1年、遅くても数年でヘリコイド (オスメス) の固着に至ります。

実際最近のヤフオク! などでもヘリコイドが固着化してしまった個体が流れていたりします(笑)

話しが反れましたが、材質が異なる金属材が接触している場合の注意点があるワケで、それを勘案してここの工程を進める必要があるワケです。そして後の時代になると基台もヘリコイド (オスメス) も全てアルミ合金材だけ (つまり真鍮 (黄銅) 材をサンドイッチしない) 設計に変わってきますが、要はアルミ合金材の切削時に精度が担保できていなかった時代が「真鍮 (黄銅) 材をサンドイッチしていた」とも言い替えられますね。

↑完成したヘリコイド (オスメス) と既大部分をひっくり返して後玉側方向から撮影しました。するとヘリコイド (オス側) の両サイドに用意されている「直進キーガイド」な溝部分に「直進キー」が刺さって、ヘリコイド (オス側) が直進動する事を説明しています (ブルーの矢印)。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

実は今回の個体はヘリコイド (オスメス) に「白色系グリース」が塗られており、おそらく前回整備からまだ数年レベルの話しです。特に「潤滑油」が注入されていないので良いのですが、問題だったのは上の写真の「直進キー」が故意にワザと曲げられていた点です。

おそらく「白色系グリース」を塗ってもそもそもヘリコイドのネジ山が深いのが富岡光学製オールドレンズの設計なので、トルクが重く仕上がってしまいそれをごまかす為に「直進キー」を硬く締め付けたくなかったのだと考えます (実際すぐに緩んだくらい軽めにネジが締め付けてあった)。

そしてガタつきが発生してしまうのを防ぐ目的で故意にワザと変形させていた次第です。この「直進キー」を故意にワザと少し曲げたりして変形させる手法は、過去の整備者の常套手段でよく見かけます(笑)

真鍮 (黄銅) 製のパーツなので簡単に曲がるのですが、それを正そうとすると大騒ぎでなかなか本来のカタチに戻りません。

本当に余計なことをやってくれます・・!(怒)

↑ご覧のとおり、ヘリコイド (オス側) の内側にストンと鏡筒が落とし込まれ (グリーンの矢印)、最後に「締付環」で鏡筒を締め付け固定する方式です (赤色矢印)。

一応上の写真でもブルーの矢印で指し示していますが、当方のオーバーホールでは「直進キーガイド」という溝部分に一切グリースを塗りません(笑)

ヘリコイド (オスメス) のネジ山まで含め「磨き研磨」がちゃんと終わっているので、限りなく製産時点の各構成パーツの状態に近くなっているので、本当に必要箇所にだけしかグリースは塗布しません。

従って「直進キーガイド」にグリースなど塗らずとも大変滑らかに上下動して、一切抵抗/負荷/摩擦などの影響も受けずにとても軽いトルク感で仕上げられます。

逆に言うと、今回の個体も同じですが、たいていの場合で「直進キーガイド」にグリースが塗られています。しかし意味を成さないので塗られたグリースはそのままだったりします (ガイド部分は平滑性を担保した設計ではないから)(笑)

何故なら、もしもこの溝部分で抵抗/負荷/摩擦が増大してしまうと「距離環を回したチカラが減衰してトルクが非常に重くなる」からです。別の表現をするなら「距離環を回す為に加えたチカラはそのまま直進キーで回転するチカラが直進動のチカラに変換されて留まらずに伝わってしまう」からです。

もしも仮にこの「直進キー」の箇所で距離環を回す為に加えたチカラが留まってしまったら (蓄えられてしまったら) とても重いトルクになってしまいピント合わせできる話ではなくなります。

その「原理原則」をちゃんと理解できていないから過去メンテナンス時の整備者はグリースを塗ったくるのです(笑)

もしもウソだと思うなら解体してみれば「直進キーガイド」にグリースが塗られていないのが確認できます(笑) しかしそれでも軽い操作性がキープできているワケで、そこには「原理原則」の概念がちゃんと働いているワケですね(笑)

↑こんな感じでヘリコイド (オス側) の内側に鏡筒がストンと入って、その上から「締付環」で前玉側方向からガッチリと本締めして固定します。

なお、今回の個体はどういうワケか絞りユニットの表面に一部メッキ塗膜が内箇所があり、ギラギラとシルバーに光っていたので「迷光」を気にする人が居るので、上の写真のとおり「艶消しブラック」に塗装してあります。

↑こちらはマウント部内部を撮影していますが、過去メンテナンス時にこの内部にまで「白色系グリース」が塗られていて一部がカビていたので (キモイ) 完全除去して、もちろん「磨き研磨」を施しました。

↑取り外していた各構成パーツも全て「磨き研磨」を施し、当方ではこのマウント部内部に一切グリースを塗らずに組み上げています。もちろんそれでも大変滑らかに各構成パーツが駆動して抵抗/負荷/摩擦などの影響を一切受けません。

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) そのチカラが伝達されて「操作アーム」が動いて絞り環の内壁に接触して絞り羽根を閉じる角度が決まります (ブルーの矢印②)。そしてその角度に従い「開閉アーム」がダイレクトに鏡筒内の絞りユニットにある「開閉環の穴」に刺さって絞り羽根の開閉を行う原理ですね (ブルーの矢印③)(笑)

従ってこのマウント部内部の駆動箇所の動きが緩慢だったりすると「絞り羽根の開閉異常」が起きてしまい、或いは「A/Mスイッチとの連動異常」だったりと、適切な動き方をしてくれません。

いわゆるシャコンシャコンと「A/Mスイッチ切替動作」で小気味良く/勢い良く絞り羽根が瞬時に開閉動作するのが当たり前の話であり、その仕上がりに至るのがこのマウント部内部の各構成パーツの仕上げ方と言う話です (要はちゃんと仕上げていればグリースなど必要ない)(笑)

↑こんな感じで基台にネジ止めされてマウント部がセットされます。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) それに連動して勢い良く「制御キー」が飛び出てきて、絞り環の内壁に突き当たり「設定絞り値の開閉角度が決まる」仕組みです。

従って「A/Mスイッチ切替」動作時にシャコンシャコンと音がしているのは実はこの「制御キーが絞り環内壁に突き当たっている音」と併せて絞りユニットの内部から聞こえてくる音だったりします(笑)

結構気持ち良い音と言うか動き方なので楽しくなって「A/M切替スイッチ」動作を何度も切り替えて遊んだりしてしまいます(笑)

要はそういう駆動部/制御部の動き方にストレスが一切ないので「撮影で使っていて愉しい」 のは、残念ながらこのような細かい部分のこだわり (平滑性を担保したりチカラの伝達にこだわったり) と言う要素は、一切使用者の頭ン中にはありませんね(笑)

整備するとは意外にそんなモンで(笑)、ありがたく思われることがまずありません(笑) 逆に 言えば、滑らかに正しく動くのが当たり前だからです!(笑)

その意味で撮影者が「撮影に没頭できていたら本望 (整備者の存在が忘れ去られている)」くらいに受け取らなければ、とてもやっていられません(笑)

↑基準「」マーカーが刻印されている指標値環をイモネジで締め付け固定します。この位置がズレていると絞り環操作時のクリック感と実際の絞り値との整合性が執れなくなり違和感に至ります。

↑鋼球ボールを組み込んでから絞り環をセットします。もちろんこの時に絞り環を回すとちゃんと基準「」マーカー位置で絞り値がピタリと合致するのが、当然ながら当たり前の話しです(笑)

↑「A/M切替スイッチ環」に鋼球ボールを組み込んでからセットします。スイッチを左右に動かすと鋼球ボールのチカラで確実に切り替わります (ブルーの矢印)。

↑最後「スイッチ環」と言う化粧環に均等に備わる穴に「イモネジ」を3箇所締め付けて固定します (グリーンの矢印)。

イモネジ」とは左写真のようにネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種の事を指します。

たいていの場合、この「イモネジ」が使われている箇所は「締め付け位置の微調整が必須の箇所」とも言い替えられますが、時には単に固定するだけの役目だったりしますから「微調整が必要な箇所なのか固定だけなのかの判定」が必ず必要になると言えます。

ちなみに冒頭解説のとおり、唯一今回のモデルが『富岡光学製』たる証がこのスイッチ環をイモネジで締め付け固定する方式です (冒頭判定基準の)。

↑距離感を仮止めしてから光学系前後群をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ご覧のように何とも魅惑的な「まるで地中海の如くエメラルドグリーンな光彩」と言いますか、或いは石垣島ですかね(笑)

レンズ銘板の刻印上は「MULTI-COATED」とブル〜ですが、放つ光彩は全面に渡る大変美しいグリーン色です。そして不思議なことにこのような全面に渡るグリーン色の光彩を放つ原型モデルは、CHINON製「後期型」にあたり、CHINON製品ではレンズ銘板の刻印は「MULTI-COATED」と併せてグリーン色になっています。

どうして刻印の色合いが違うのか不明ですね・・(笑)

然しながら、このモデル「REVUENON銘」でこのエメラルドグリーンの光彩を放つ「MULTI-COATED」が出回るのは、ハッキリ言って年間で1本あるか否かと言うレベルですから『富岡光学製』ながらみ大変キチョ〜な数少ないマルチコーティング化モデルの一つです。

ちなみに海外オークションebayでもこのモデルの流通価格は3万8千円〜5万2千円と少々幅が広めでしょうか。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。いわゆるスカッとクリア的な状態ですが(笑)、多少後群側に微細な点キズが多めです (パッと見で微細な塵/埃に見えてしまう)。

もちろん当方でもちゃんとチェックしているので3回清掃しても除去できなかった微細な点キズなので「/」の類ではありません。そうは言っても納得できない人はどうぞキャンセルして下さいませ(笑) ちゃんと送料や振込手数料など含めてご落札者様が一切損しないよう配慮して全額ご指定お口座宛返金します (当方の返金時振込手数料も当方負担)。

たま〜に、ホントに希に嫌がらせでそれをヤル方が居ますが(笑)、ちゃんと全額返金しています (もちろん当方は大赤字/報復的な悪い評価も付けません)(笑)

まッ!そういう心の器が狭い人が居るのが世の中ですから仕方ありませんね(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑この写真が今回の出品個体での最大のポイントになりますが、ご覧のとおり「後玉にキズや汚れ/コーティング層の経年劣化が無い」のが最大のチェック項目です。

同じように後玉表面側の傷や汚れ/コーティング層経年劣化のチェックが必須なモデルが、例えば東京光学の標準レンズ「RE, Auto-Topcorシリーズ」や「RE GNシリーズ」などだったりしますし、もちろん今回の数多く存在する『富岡光学製OEMモデル』も同様後玉表面のチェックは必須項目です!

何故なら後玉表面側の傷や汚れ/コーティング層経年劣化はまず清掃で除去できません。逆に言うなら全て写真に影響が現れますから、後玉表面はキレイなのが必須条件になります

なので、どんなに筐体外装がキレイでも後玉の写真がチェックできないなら当方では絶対に調達しません!(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:10点、目立つ点キズ:5点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(中玉中央に極微細な薄い7mm長1本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・フィルター枠が打痕修復の痕がありますがキレイに直っています。附属品の中古UVフィルターは経年並み傷が残っています(一応清掃済)。

↑取り敢えずフィルター枠に打痕修復箇所があるので中古のフィルターを附属品にしていますが、一応清掃済ながらも経年並みにキズなどが残っています (中古品のフィルターの話)。またフィルター枠の打痕修復箇所はキレイに直っています

一応その確認の意味もあって (フィルターの着脱が普通にできる確認) 附属品としています。前キャップは金属製ですが社外品の被せ式です。

仕上がり状態としては『富岡光学製』モデルなのでヘリコイド (オスメス) のネジ山が深い分、決して軽めのトルク感には仕上がりませんが、それでも十分に軽い操作性には至っています。ピント併せも違和感なく軽く微動できるので扱い易さはちゃんと維持されています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「f11」です。もうほとんど絞り羽根が閉じていますが「回折現象」の影響がまだ現れていないように見えますから相当なポテンシャルですね(笑)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。