◎ SEARS (シアーズ) AUTO SEARS 55mm/f1.4《前期型:富岡光学製》(M42)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、アメリカのSEARS製標準レンズ『AUTO SEARS 55mm/f1.4《富岡光学製:前期型》(M42)』です。

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今回オーバーホール済で出品するモデルはSEARS (シアーズ) と言う会社の製品になりますが、このシアーズはアメリカの百貨店で有名で (現在はホールディング格)、彼のKマートも傘下に収めています。

そのシアーズが1896年〜1993年まで実施していたカタログ通販によるPB (プライベート・ブランド) 商品の一つになります。

話が反れますが、当方が小売業界に足を踏み入れた若かりし頃は、研修などでこのシアーズの会長リチャード・ウォーレン・シアーズ氏の名言集を暗記させられたほどの方です (今となっては何ひとつ覚えていない)(笑)

原型モデルは、当時1967年に発売されたSEARS製フィルムカメラ「TLS」が、そもそも日本のリコー製「ジングレックスTLS」まんまでしたから (つまりOEM輸出モデル) そのセット用標準レンズも自ずとリコー製「AUTO RIKENON 55mm/f1.4 (M42)」と言うことになります。
ところが、このリコー製の標準レンズも実は富岡光学製OEMモデルだったワケで、なかなかややっこしいですね(笑)

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今回は立て続けに4本の富岡光学製OEMモデルをオーバーホール済でヤフオク! に出品する、『今一度輝け! 富岡55mm/f1.4』企画です(笑) 企画の目的は、富岡光学製OEMモデルの特に焦点距離「55mm/f1.4」に関して、富岡光学製オールドレンズとしての妥協のない最高の描写性能がギュッと凝縮されているにも拘わらず、ヤフオク! での評価 (落札価格) が低迷していることにガツンと活を入れる目的です (なので強気の即決価格)。
確かに開放F値「f1.2」のモデルのほうが過去から現在に至るまで「銘玉」と揶揄されているのは事実だと考えますが、当方の評価は逆で・・「f1.2」モデルは被写界深度が狭すぎて撮影時には相当難儀します。むしろ開放F値「f1.4」のほうが、富岡光学製オールドレンズとしての使い易さと最高の描写性能の堪能を両立させる要素が備わっていると受け取っているからです。

↑上の写真の4本はすべて同じ焦点距離「55mm/f1.4」であり、左から順に新世代のモデルバリエーション (構造/設計が異なる) へと変遷しています。

  1. SEARS製:AUTO SEARS 55mm/f1.4 (M42)【前期型】
  2. Revue製:AUTO REVUENON 55mm/f1.4 (M42)【中期型】
  3. CHINON製:AUTO CHINON MULTI-COATED 55mm/f1.4 (M42)【後期型】
  4. PORST製:COLOR REFLEX MC AUTO 55mm/f1.4 G (M42)【後期型】

4本全てを完全解体でオーバーホールしましたから、内部の構造など富岡光学製であることの「証」をご確認頂きつつ、実写の相違なども見据えて是非ともご検討願えれば・・と意気揚々と作業に臨んだのですが、アッと言う間に後悔です(笑) 肝心なことをスッカリ忘れたまま企画してしまいました。富岡光学製オールドレンズの内部構成パーツを調整するのが、如何に神経質で大変なのかと言うことをオーバーホール工程の中でイヤと言うほどに思い知らされた次第です (もぅ当分の間触りたくない見たくない状態です)・・従って、また1年くらいしてほとぼりが冷めた頃なら触ってもいいかな?(笑)

なお、これらのモデルが富岡光学製であると言う「証」の源は、過去にオーバーホールしたCHINON製『AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)』を証拠として当方では把握しています。レンズ銘板に『TOMIOKA』銘が刻印されていた頃の個体ですから、これは疑いようがない事実だと思うのですが、どう言うワケか当方が拘ると反論する方が多いのが現実だったりします(笑)

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光学系は5群7枚のダブルガウス型から発展し、後群成分を拡張してきた描写性能をギリギリまで追求した設計 (ビオター/クセノン型) を採っています。その描写性も、まさに「富岡光学製」であることを見てとれます。
エッジの繊細なピント面と共に背景のボケ味が大変滑らかな階調で破綻していく様が素晴らしいのですが、円形ボケは口径食の影響から真円には到達せず歪です。しかし、動物毛の写真なら富岡光学製オールドレンズ以外考えられないと感じるほどに超リアルな存在感を漂わせているのは、被写体の材質感や素材感を余すことなく写し込む質感表現能力に優れ、背景のボケ味と相まり空気感や距離感までも感じさせる立体的な画造り、そして何よりも現場の雰囲気や緊迫感など閉じ込めたままの1枚を残せると言う豊富な臨場感が何物にも代え難い富岡光学製オールドレンズとしての特徴ではないでしょうか・・少なくとも当方は好きです。

このモデルの実写をFlickriverで検索してみましたので、興味がある方はご覧下さいませ。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。この「完全解体」についてお問い合わせ頂くことがありますが、例えば「絞り羽根の油染み」が発生していたと仮定して、その油染みだけを無水アルコールなどを使い綿棒で拭いて清掃するのも方法ですが、その絞り羽根の開閉を制御している箇所にも経年の揮発油成分が廻っているハズです。

それを放置したままにしてしまうので、次に不具合が発生するとすれば、今度は「絞り羽根の開閉異常」に至り、その原因はマウント部内部の捻りバネだったり、或いは鏡筒裏側のスプリングだったり・・それらが弱ってしまい改善が難しくなってしまいます。それは、まさしく当方が拘っている「DOH」たる由縁ですが、本質を探れば絞り羽根は何のためにオールドレンズに備わっているのかに行き着きます。絞り羽根の開閉制御が正しく行われなければ、狙ったとおりのボケ味も期待できなくなり、それは大きな危惧になってきます。

完全解体せずに、その場限りの整備/メンテナンスだけで終わらせるのは、確かにストレス無くオールドレンズが使えるようになりますが、それは「その時点」だけの話であるとしか言えないのではないでしょうか。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。上の写真で一番手前側に写っている環 (リング/輪っか) は、絞りユニットの「メクラ環」になり、刺さっている6枚の絞り羽根が脱落しないように覆う役目ですが、実はこの「メクラ環」は鏡筒の外側からイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 3本を使って締め付け固定されています。このイモネジの締め付けを最後まで締めすぎてしまうと、絞り羽根の開閉異常を来します (メクラ環が絞り羽根を押さえ込んでしまい摩擦で絞り羽根の開閉に支障を来すから)。

このことは「メクラ環」をよ〜く観察すれば自ずと明白になるのですが、過去メンテナンス時には気づかずに締め付け過ぎてしまい、結果絞り羽根の開閉異常に陥りますから別の箇所をイジることで改善させていたりします。ひとことに「絞り羽根の開閉が緩慢」と言っても、オールドレンズ内部の状況がどのようになっているのかはバラさなければ判明しませんね。

この当時の富岡光学製オールドレンズで、一番最初に「調整が神経質必要な箇所」が、先ずはこの「メクラ環」の調整になりますが、バラしてみると意外にも正しく調整されている個体は少なかったりします (不適正な確率70%程度)。

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台です。前側に複数の穴が空いていますが「制限キー」と言うパーツを固定するネジ穴になります。距離環を無限遠位置と最短撮影距離位置の2箇所で停止させる役目のパーツが「制限キー」ですが、複数の穴が用意されていると言うことは、ここで無限遠位置調整を行っていることになります (つまり無限遠位置調整機能を装備している)。

しかし、これはあくまでも「微調整」の範疇であり、根本的にはヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置が適正でなければ、この微調整の範囲を逸脱してしまいます。

↑真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。ご覧のように制限キーにヘリコイド (メス側) の環が突き当たることで停止しています。

↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みますか。このモデルでは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

この状態で上の写真の裏側には「直進キー」なるパーツが両サイドに1本ずつネジ止め固定されており、既に真鍮製のヘリコイド (メス側) を回すとヘリコイド (オス側) が上下するように組み上がっています・・つまり、この時点でほぼ60%距離環を回す際のトルク感が決まってくると言えます。実は上の写真を撮るまでに6回ほどの組み直しを行いヘリコイド・グリースの粘性を替えたりして調節していました。この当時の富岡光学製オールドレンズで2番目に「調整が神経質な箇所」がこの直進キーとヘリコイドとのトルク感調整です。さすがに5回目の組み直し辺りから「チョ〜面倒くせぇ〜」とぼやいていたワケです(笑) 何故ならば、一旦バラしてすべてのグリースを洗浄して落とさなければならず、イラッと来ますね・・。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に当方による「磨き研磨」が終わった状態で撮っています。当初バラした時点では内部に経年劣化で濃いグレー状になってしまった白色系グリースがビッチリ塗られていました。最も問題なのが、その不必要なグリースのおかげで大切な「捻りバネ」にサビが生じていた事実です。この捻りバネが弱ってしまうと途端に絞り羽根の開閉が適正ではなくなり、大抵の場合「絞り羽根の動きが緩慢」と言う現象に至ります。「絞り羽根の油染み」が原因だと言われることが多いのですが、実際の原因箇所はこのマウント部内部だったりします (しかも過去メンテナンス時に塗られていたグリースが原因)。

↑取り外していた各連動系・連係系パーツも個別に「磨き研磨」を施し組み付けます。上の写真の解説のとおり、マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれると、それに連動して「絞り連動ピン連係アーム」が動き、結果的にグリーンの矢印のように「爪」が動いて絞り羽根の開閉をコントロールしていますから、ここで使われている「捻りバネ」が弱ると「爪」の移動範囲が減ってしまい「設定絞り値まで絞り羽根が閉じない」現象に至るワケです。

従って、ここまでの解説で「絞り羽根の油染み/絞り羽根の動きが緩慢」などの現象が生じる原因箇所が複数あることがご理解頂けたでしょうか? 絞り羽根自体の問題だけではなく、その他にも鏡筒裏側のスプリングや、マウント部内部の状況次第では絞り羽根清掃だけでは改善できない場合がある・・と言う話です。

↑完成したマウント部を今度はひっくり返して絞り環をセットします。絞り環の裏側には「絞り値キー」と言う「溝」が幾つか用意されていますが、各絞り値に見合う箇所に溝が用意されており、ここに鋼球ボールがカチカチと填り込むことで絞り環のクリック感を実現している仕組みです。

この当時の富岡光学製オールドレンズで3番目に「調整が神経質な箇所」が、実はこの次の工程になります。

↑マウント面の「梨地仕上げ銀枠の飾り環」を3本のイモネジで締め付け固定しますが、問題なのはこの「飾り環」の内部に「鋼球ボール+スプリング」がセットされている点です。どうして問題なのか (調整が神経質なのか) と言うと、この「飾り環」を固定する位置をミスると、途端に絞り環を回した時のクリック感が絞り環に刻印されている絞り値と一致しなくなります・・それはそうですョ。鋼球ボールの位置がズレてしまうのですから、本来クリックするべき箇所がズレていることになります。

単に絞り環を回した時のクリック感がズレているだけなら、まだ何とか我慢できますが、実は絞り環と前出の「絞り連動ピン連係アーム」は互いに連係しています。つまり、鋼球ボールの位置がズレることで結果的に絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) 自体が適正ではなくなってしまう問題を引き起こします。事は単なるクリック感の違和感に留まらない大問題に繋がっていくワケです・・過去メンテナンス時の「飾り環」固定位置が適正ではなかった場合、絞り羽根に対して数十年もの間必要外の「チカラ」が及んでいたことになり、それは逆に言えば鏡筒裏側のスプリングやマウント部内部の「捻りバネ」にも少なからず影響が出てきます (つまり弱まってしまう)。

たかがマウント面の「飾り環」如きに、このような重要な役目を担わせてしまった富岡光学の設計の拙さが罪深いと言わざるを得ません。何故ならば、他社光学メーカーでは絞り環の「絞り値キー (溝)」はマウント部の外壁側に向かって (つまり絞り環の内側に) 用意されているのが一般的であり、鋼球ボール+スプリングはマウント部側に埋め込まれています。従って、鋼球ボールの位置が整備の都度ズレてしまう懸念が一切ありません。

この「飾り環の固定位置調整」が富岡光学製オールドレンズで最も重要な調整箇所であり、同時に「意味不明なマズイ設計」と言わざるを得ません。ちなみに、後の1970年代〜1980年代辺りになると、さすがの富岡光学も設計の拙さに気がついたのか(笑)、この意味不明な鋼球ボールの位置は改善されて他社光学メーカーと同じ設計に変わっています。なお、この当時のオールドレンズで「富岡光学製である証」として外観上最も容易に判定できるのが、この「飾り環をイモネジ3本で締め付け固定している」方式です。飾り環をネジ込む方式の固定方法を採っている光学メーカーは他社にもありますが、ワザワザイモネジ3本を使って締め付け固定させている (鋼球ボール+スプリングが組み込まれているから) 方式を採っていた会社は富岡光学以外存在しません。

例えば、絞り環を回した際のクリック感が「感じないほど軽すぎる」場合は、この「飾り環」の締め付け固定位置自体が上下方向でズレていますし、逆に「クリック感が硬い」場合などは飾り環を締め付けているイモネジを強く締めすぎていたりします。つまり「飾り環の固定位置」は上下左右方向で調整が必要なのであり、全く以て厄介な意味不明な設計です (いつもながら頭に来ますね) 。

作業している最中は「金庫破り」ではありませんが、左手で「飾り環」を適度なチカラで押さえ込んだまま、右手でイモネジを締め付けているワケで、その両手に伝わってくるビミョ〜な「感覚 (膨れる感覚や位置がズレる感覚など)」に感性を研ぎ澄ませてジ〜ッと堪えている状態が続きますから、いつの間にか息を止めていたりして作業が終わると思いっきし息を吸い込んだりしています(笑) 時々、息が苦しくて調整を断念することがありますが、考えたら息を止めずにフツ〜に呼吸していればいいんですね(笑) それはそうなのですが、頭で考えていることとカラダが従わないことが最近多くなって困ります(笑)

↑いよいよ最後の4番目の「調整が神経質な箇所」に工程は進みます。ヘリコイド (オス側) に鏡筒を落とし込んでフィルター枠で締め付け固定する工程です。説明すればいとも簡単な内容なのですが、実は上の写真に写っている「絞り羽根開閉幅調整キー」なるパーツの調整がヒジョ〜に面倒なのです。

その「絞り羽根開閉幅調整キー」をよ〜く観察頂くと、真鍮製の円形板をネジで締め付け固定してあるのですが、固定ネジの締め付け位置が円形板の中心から僅かに反れています。気がつかれたでしょうか? つまり、この真鍮製の円形板はグルグルと回ることで「左右方向に鏡筒の位置を微動させている」調整方式を採っているのです。円形板を右回りで回すと右側方向に鏡筒がズレていき、次第に中心に収束してきます。しかし、さらに回し続けると今度は左側に鏡筒はズレて、再び中心位置に収束してきます (それで円形板が一周したことになる)。結果、絞り羽根の「開閉幅 (開口部/入射光量)」の大小が変わるワケであり、それは同時にマウント面の絞り連動ピン押し込み動作や、絞り環と連係して駆動している「絞り連動ピン連係アーム」、或いは強いて言えば前述の「飾り環の固定位置」とも強く関係してきますから、最後の最後でこの鏡筒位置をズラした結果、他の全ての箇所の調整がヤリ直しになることもあるのです (今回も1回やりましたが)。何故に、こんな面倒な調整方式を幾つも採り入れてしまったのか、本当に恨みますョ富岡光学さん!

どうしてそのような恨み辛みを言いたくなるのかと言えば、絞り羽根の開閉幅とは要はボケ味ですから絞り環の設定絞り値との兼ね合いになります。つまり光学系をセットして実写してみて初めて確認できる話であり、絞り環の絞り値との整合性が無いとなると、再びここまでバラして調整しなければならず、下手すれば「飾り環の位置調整」までやるハメに陥りますから、如何に面倒なのかと言う話だからです。このような調整作業を何度も繰り返していると、正直爆発寸前になりオールドレンズを壁に放り投げたくなってきますね(笑)

↑今回は1回のバラしだけで調整が完了したので、鏡筒を締め付け固定する役目も担うフィルター枠を組み付けます。

↑光学系前後群を組み付けてしまいます。鏡筒の裏側には1本だけ「絞り羽根開閉アーム」と言う金属棒が飛び出ており、このアームをマウント部内部の「絞り連動ピン連係アームの」が掴んで操作しているワケです。ご覧のとおり「直進キー」と言うパーツが両サイドの1本ずつ入ります。

↑完成したマウント部を基台にセットします。この時、例の「爪」を絞り羽根開閉アームと噛み合わせています。

↑基準「Ι」マーカーのある指標値環を組み付けます。

↑距離環を仮止めして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (それぞれ解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

 

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑リコー製「AUTO RIKENON 55mm/f1.4 (M42)」と全く同一のOEM輸出モデルです (レンズ銘板をすげ替えただけ)。富岡光学製オールドレンズの描写特性をギュッと凝縮した大変扱い易いモデルが、完璧なオーバーホールが終わって出品できます。

↑光学系内の状態は「新品同様品」とまでは言わないにしても「驚異的な透明度」を維持した個体です。実は、富岡光学製オールドレンズは、東京光学製「RE,Auto-Topcor 58mm/f1.4 (RE/exakta)」でも同じなのですが、光学系内の状態がだいぶ悪化している個体が多くなってきています。そのほとんどはコーティング層の経年劣化に伴う「極薄いクモリ」なのですが、コーティング層の経年劣化は清掃では一切改善できないので厄介な問題です。まだカビの発生のほうが写真への大きな影響には至りませんが「薄いクモリ」が生じているとコントラストの低下を招くので、写真には大いに懸念が残ります。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。いずれも極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全て写っていません。

↑焦点距離「55mm/f1.4」の富岡光学製オールドレンズで最も気になる箇所が、この「後玉の状態」です。この後玉にキズが多かったりしても、それは直接大きく写真には影響しませんが、コーティング層の経年劣化に伴う「極薄いクモリ」だけはコントラスト低下に直結しますから要注意です。今回の個体は光学系後群もヒジョ〜にキレイです。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。後玉の外周附近や中心部辺りに極薄い微細なカビ除去痕が数箇所残っていますが、このカビ除去痕が「薄いクモリ」にまで至っていないのが素晴らしいです。つまり前述の「新品同様品」に見える程までに驚異的な透明感を維持してくれています。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:7点、目立つ点キズ:3点
後群内:10点、目立つ点キズ:7点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:無し
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):皆無
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが実際はカビ除去痕としての極微細な点キズです (清掃しても除去できません)。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・いずれもすべて写真への影響はありませんでした。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感がほとんど感じられない大変キレイな状態を維持した個体です。当方による「磨きいれ」を筐体外装に施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。

なお、当方では筐体外装の「磨きいれ」と言っても、何でもかんでも光沢のある状態には仕上げません・・あくまでも「オリジナルの状態に戻す」ための磨きいれですから、マットなブラック (つまり艶消し) の筐体外装は、そのままを維持させた状態で仕上げています (マットプラックが光沢感のあるブラックになるのは経年でマット感が消失してしまった黒光りか、磨きすぎて表層面のメッキ塗色を剥がしてしまった場合、或いは筐体外装に光沢剤を塗布して故意にピカピカにしている場合だけです)。もちろんシルバー鏡胴モデルは、地のアルミ合金材が剥き出しになるまで (つまり金属質が出てしまうまで) 研磨しませんし、光沢感には違和感を感じないレベルで留めています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽め」を塗布しています。距離環や絞り環の操作はとても滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「普通」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「ほぼ均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・距離環を回していると擦れる感触を感じる箇所がありますが内部パーツが擦れる感触ですので改善はできません (クレーム対象としません)。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。光学系の状態も良く、距離環のトルク感も滑らかで操作性がだいぶ良くなっています。このモデルは、焦点距離「55mm/f1.4」の富岡光学製オールドレンズとして捉えると「前期型」の頃のバリエーションに入りますが、コーティング層はモノコーティングの時代です。しかし、鋭いピント面を構成するのですが被写界深度の狭さも手伝い、開放F値「f1.2」のモデルよりも却って扱い易く感じます。

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。

↑絞り環を回して設定絞り値を「f2」にセットして撮影した写真です。

↑さらに絞り環を回してF値「f2.8」で撮りました。

↑F値は「f4」に変わっています。

↑F値「f5.6」で撮りました。

↑F値「f8」です。

↑F値「f11」で撮りました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。