◎ Revue (レビュ) AUTO REVUENON 55mm/f1.4《後期型:富岡光学製》(M42)
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富岡光学製の「55mm/f1.4」のモデルは個人的に好きなモデルなので、見つけるとどうしても手を出してしまいます。特に今回オーバーホール済で出品する個体は『驚異的な透明度の光学系』をキープした個体です・・この当時に仮に入手したまま保管していたのなら富岡光学製オールドレンズのことですからカビが生えていたと考えられます。それが今回の個体 (光学系) にはカビが一切ありません (過去のカビ除去痕まで皆無)。恐らく適度に使用していた愛用レンズだったのではないでしょうか・・。
「Revue (レビュ)」と言うブランド銘は旧西ドイツのバイエルン州フュルトで1927年に創業した通信販売専門商社「Quelle (クェレ)」の写真機材部門が発行していた100ページ以上に及ぶ写真専門誌「Foto-Quelle」にて、オリジナル・ブランド銘として使われていたようです。フィルムカメラや交換用レンズ、或いはアクセサリなど多数を販売していました。Quelleはすべての商品を自社開発せずにOEM生産に頼った商品戦略を執っており、オールドレンズに関しては日本製レンズや韓国製、或いはドイツ製などで製品群を揃えていたようです。
ちなみに「Quelle」は「クヴェレ」と記載されているショップさんもありますがドイツ語の「u」は「ヴ」ではなく「ウ」だと思います・・例えば「Ultron」は「ウルト(ロ)ン」と発音するようなので「ヴ」ではないと考えます。逆に広角レンズの「Weitwinkle 28mm/f2.8」などは「ヴァイトヴィンクル」のような発音なので「w」が「ヴ」になります。
今回のモデル「AUTO REVUENON 55mm/f1.4」は富岡光学製のOEM輸出用モデルで、他にも幾つかモデルバリエーションが顕在しています。
「AUTO REVUENON 55mm/f1.4 TOMIOKA」
レンズ銘板に富岡光学銘が刻まれているので間違いなく富岡光学製です。距離環にはエンボス加工を施したラバー製ローレットが貼られています。後に生産されたモデルのレンズ銘板からは「TOMIOKA」銘が省かれています。
しかし、不思議なことに距離環のローレットが金属製のモデルが存在しています。レンズ銘板には「TOMIOKA」銘はありません。製造番号から捉えてもレンズ銘板に「TOMIOKA」銘を刻印していた個体より後の生産品にあたるワケですが金属製のローレットにしているのが不思議です。
他にも距離環にラバー製ローレットを配したモデルが存在しています。この筐体デザインは同じく旧東ドイツの「PORST」に供給されていたモデルと全く同一の意匠でPORSTでは「COLOR REFLEX」銘をレンズ銘板に刻んでいました。
今回発見してしまいましたが、左のようなモデルも存在していました。これはまさしく「AUTO YASHINON-DS」と瓜二つです。やはりラバー製ローレットを距離環に配しています。
今回出品するモデルは当初生産されていたのはモノコーティングを施したモデルでした。
左の写真は過去に整備した個体の写真から転用していますが光学系がモノコーティングであることがお分かり頂けると思います。
今回出品する個体の写真です。マルチコーティングが施されているのがお分かりでしょうか? このモデルにマルチコーティングのタイプが存在することを今まで全く知りませんでした。その意味でも今回出品する個体はとても貴重だと考えています。
光学系の設計は当初より変更が無かったようで5群7枚の変形ダブルガウス型です。特に後玉の突出量が多いので距離環を無限遠位置にした状態で不用意に置いたりすると後玉に当てキズを付けかねません。
描写性はまさに富岡光学製オールドレンズの特徴を存分に愉しめるモデルで非常に浅い被写界深度にエッジが繊細な鋭いピント面を構成しトロトロにボケていくアウトフォーカス部は溜め息が出るほどです。富岡光学製オールドレンズで特質される被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に優れているのはもちろん、距離感や空気感さえも表現してしまう立体的な画造りと緊迫感や臨場感などを漂わすリアルさはさすがです。
なお、このモデルの派生系でもある他社光学メーカーの製品については「こちらのページ」で詳しく解説していますので興味がある方はご覧下さいませ。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。
絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在しています。
ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
ヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
こちらはマウント部内部の写真を撮りました。既に当方による「磨き研磨」が終わっている状態です。すべての連動系・連係系パーツを外しており、それらのパーツが接する部分を「磨き研磨」して「平滑性」を復活させています。当初はこのマウント部内部にもビッチリとグリースが塗られていました・・いわゆるグリースに頼ったメンテナンスが過去に施されていました。
外していた連動系・連係系の各パーツを組み付けます。これらのパーツもすべて「磨き研磨」が終わっており、グリースなどを塗布せずとも滑らかに、そして確実な駆動が実現しており、負荷が架からない連係で駆動します。
完成したマウント部を基台にセットしました。このモデルでは指標値環が後からセットできないので、ここで先に入れておきます。
「自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) 」の機構部を組み付けてから最後に「固定環」をハメ込んで3本のイモネジで締め付け固定します。この「薄い厚みの固定環」をイモネジを使って締め付け固定して初めて絞り環も含めて固定される方式を採っているのも「富岡光学製」モデルに多い特徴です。
ここでようやく指標値環をイモネジで締め付け固定できるようになります。各絞り値とそのクリック位置とをキッチリ適合させた場所で指標値環を固定します。
距離環を仮止めしてヘリコイド (オス側) の内部に「鏡筒」を落とし込んで「固定環」で締め付け固定してから、光学系前後群をセットし、無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行います。最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
マルチコーティングが施された「AUTO REVUENON 55mm/f1.4 (M42)」は当方でも今回が初めての扱いになります。
今回出品する個体の光学系内は・・とにかく『驚異的な透明度』です。カビの発生はもちろん過去のカビ除去痕すらありません。さらにコーティング層の経年劣化すら進んでいません。LED光照射で光学系内部を確認してさすがに驚いてしまいました。
上の写真は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。確認できる極微細な点キズは写真に写っているものしかありません。
そして後玉がまたオドロキでした・・このモデルは後玉の突出量が多いので、まず間違いなく何かしらの極微細なヘアラインキズや点キズなどがあるのですが、上の写真のとおり『皆無』です! これは本当にオドロキです・・。
上の写真は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。後群内には極微細な点キズや非常に薄い5mm長ほどのヘアラインキズも何とか見つけられますが、後玉はこのとおりキズがありません・・!
【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:11点、目立つ点キズ:6点
後群内:7点、目立つ点キズ:2点
コーティング層の経年劣化:前後群なし
カビ除去痕:なし、カビ:なし
ヘアラインキズ:あり
LED光照射時の汚れ/クモリ:皆無
LED光照射時の極微細なキズ:あり
・その他:バルサム切れなし。特に明記するようなキズや汚れ、クモリなど一切ありません。
・光学系内の透明度は非常に高い個体です。
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細なキズもあります。
・いずれもすべて写真への影響はありませんでした。
ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感が極僅かに感じられますが (特に絞り環の滑り止めローレットのジャギー部分) 当方にて一部着色しています。
【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽め」を塗布しています。距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「普通」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「完璧に均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
ハッキリ言って富岡光学製オールドレンズで「55mm/f1.4」をお探しの方はブランドがどうだとか言っている場合ではありません。モノコーティングのモデルをお探しならば仕方ありませんが、それでもこの光学系内の透明度は凄いです!
当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトに合わせていますが、被写界深度が浅いので本当にヘッドライト内部の「電球の部分」にしか合っていません (このミニカーはヘッドライトが点灯するラジコンカーなのです)。
当レンズによる追加の実写です。最短撮影距離50cm附近での開放実写です。