◎ KMZ (クラスノゴルスク機械工廠) MC ЗЕНИТАР-МЕ1 50mm/f1.7《ZENITAR》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧ソビエト製の
KMZ製標準レンズ・・・・、
MC ЗЕНИТАР-МЕ1 50mm/f1.7《ZENITAR》(M42)』です。


 

  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のロシアンレンズZENITARシリーズ」の括りで捉えると4本目にあたりますが、今回扱ったモデルMC ЗЕНИТАР-МЕ1 50mm/f1.7だけでカウントすると初めての扱いです。

先ずはこのような特殊なオールドレンズが存在する事を知らず(汗)、今回オーバーホール/修理ご依頼を賜り初めて知見を得た次第ですが(恥)、このような機会に恵まれ、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!(涙)

そこで今回ネット上を色々探索して調べ、このモデルの誕生と共に、その背景に迫っていき
たいと思います。

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今回扱うMC ЗЕНИТАР-МЕ1 50mm/f1.7《ZENITAR》(M42)』の凄みは、何と言っても「四角く閉じていく絞り羽根」であり、必然的に「四角いボケが表出する」と言う他に類を
見ない特殊性です。

話は違いますが、例えば「三角形のボケ」を表出するオールドレンズなども顕在し「QBM (Quick Bayonet Mount) 規格」たる、旧西ドイツはCarl Zeiss製中望遠レンズPlanar 85mm/f1.4 HFT《後期型》(QBM)」などは、モロに絞り羽根が三角形状に閉じていくので、表出するボケも三角形に至ります(笑)

他に有名処では、同じロシアンレンズとして、LZOS (リトカリノ光学硝子工場) 製標準レンズINDUSTAR−61 L/Z−MC 50mm/f2.8 (M42)』も絞り羽根を閉じていくとf5.6~f8辺りで「星型に閉じる」ので、巷でいまだにダビデの星などと呼ばれる事も多いモデルです(笑)
(確かに星型のボケが表出する)

同じくロシアンレンズで、同一工場KMZ製広角レンズMIR-10A 28mm/f3.5 (M42)』も、絞り羽根を閉じていくと途中で近似した「星型に閉じる」為に、星型のボケが表出します(笑)
(但し広角レンズなのでボケが小さく分かりにくい)

このように或る特定の絞り値で絞り羽根が閉じていく際の形状、開口部面積/カタチ/入射光量に影響を受けて表出する「円形以外のボケ」は、オールドレンズ全体のボケ方からすれば非常に少なく、希少性が高いと言うよりもその特殊性から一部の沼住人には大きな魅力として映るモデルではないでしょぅか。

例えば、今回扱うモデルも「完全開放時は円形ボケで表出する」ので、必ずしも全てのボケが四角い話ではありませんし、それは光学の原理からしてそうなるのだと受け取れます。その
意味で (良い意味合いとして偏重させるなら) 円形ボケも四角いボケも両刀使いとの捉え方も可能なので、角ばったボケ味は好みではないと吐き捨てる前に、今一度立ち止まって、味わってみるのも沼住人なら一考する価値があるやも知れません(笑)

  ●               

今回扱ったモデルの解説に進む前に、まず先に「KMZ (クラスノゴルスク機械工廠)」について知っておくべき話があります。当方がこのロシアンレンズの工場「KMZ」を「工廠」と
述べ続けている理由があります (ネット上の一般的な表記は工場)。

戦前も含め、旧ソビエト連邦時代から開発/生産され続けているオールド
レンズに対して、当方が勝手にロシアンレンズ」と呼称しているだけ
ですが (2006年頃からそう呼び始めた)、旧ソ連は当時は社会主義
体制国家 (共産主義の性格が非常に色濃かった時代)、現在は全体主義
体制国家と言えますが、特に戦後に「産業工業5カ年計画」に基づき
占領統治した旧東ドイツ含め国家経済の繁栄に努めていました。

その関係から「私企業」の概念が存在せず、全ての企業は「国家の所有物/人民の所有物/国営企業」の概念の基、光学製品たるオールドレンズもいったい何処の工場で生産された製品なのかが不明瞭でした。

そこでレンズ銘板のモデル名に付随させて「製造工場を示すロゴマークを刻印」すると同時にある種のブランド化にも務めていた次第です。
(台形はプリズムを表し入射光が屈折反射しながら透過していく様を示す)

第2次世界大戦中の1942年に、旧ソ連陸軍の命令により、モスクワ近郊のクラスノゴルスク郡に疎開された第69光学機械工場として設立しています。当時は主に軍用光学製品やスパイ活動用の特殊光学製品などを主体的に開発/製産していたようです。
(参考URL=https://www.cryptomuseum.com/manuf/kmz/index.htm)

機械工廠」と「工廠」と表記する理由は、このように設立の背景がそもそも軍用に特化した工場だった背景から、その区別として敢えて当方では呼称し続けています。

例えば1943年に開発されたフォトスナイパーFS2-KMZなどは、まさに小銃の台座に装着して使用する、300㎜の超望遠偵察用スコープとして転用した軍用品があります (さすが怪力イワンは凄い/
wikiはこちら
)(驚)

・・しかもこれ、今現在も製産が続いていると言うのですから「恐るべしロシアンレンズ」です(怖) ちゃんと銃床に備わる引き金で撮影できてしまうところが「大丈夫なの? 被写体は狙撃されていないか?!」みたいな・・まるで
これを見ただけで怖気づいてしまいそうです (連写が怖そう!/1個分隊程度なら壊滅か?)(笑)

さて、今回扱うオールドレンズの話に戻りますが、ネット上の解説
サイトで「ZENIT」ホームページの中でЗЕНИТАР-М 50mm/f1.7 (M42)」に掲載されている光学系構成図を観ると、右図のように案内されています (右図は掲載構成図を当方の手でトレースしたもの)。

ロシア語キリル文字なのでモデル銘をそのまま原語で「ЗЕНИТАР-М」と表記していますが、ラテン語/英語翻訳すれば「ZENITAR-M (ゼニター)」となるもののモデル銘語尾に付随する「」はプラクチカスクリューマウント規格の「M42マウント規格」を表しています・・例えばもしも仮に「PKマウント規格」であればモデル銘に付随する語尾は「−K」に代わりるのがロシアンレンズの表記ルールです。

ちなみに当方は歴とした純粋なるニッポン人なので(笑)、この「ゼニター」を巷で流行って
いる「ゼニタール」と「語尾のR発音を誇張した表現」で表記しません(笑)・・例えばちゃんと原語のままロシア語キリル文字でGoogle翻訳で発音させると「ゼニィタール」と聞こえてくるので、確かに語尾に「R誇張」の巻き舌発音に至るのでしょうが(笑)、当方はロシア人でもポルトガル人でもないので・・巻き舌はできまッしぇん(汗)

或いは他に「ИНДУСТАР (INDUSTAR)」と言うモデル銘のオールドレンズもありますが、どう言うワケか「ゼニタール」と呼称していた人達がそれらを指して「インダスタール」と語尾のR発音を誇張して呼びません(笑)・・いわゆる「らしく聞こえる/格好いい」的な捉え方で、好んで語尾のR発音を誇張した呼び方にしたり、しなかったり、しているように見えますね。

さらに前述のモデル解説ページを観ると、標題の案内として「1950年にAlbrecht Wilhelm Tronnier (アルブレヒト・ヴィルヘルム・トロニエ) 博士が開発したUltron型光学系を踏襲している」と述べています・・これを以てしてネット上の一部解説サイトに「凹Ultron 50mm/f1.8と同じ光学系」との説明が写真家により執られていますが、違うと思います(汗)

ちゃんと先のモデルページを読めば分かる話ですが「1937年まで遡るXenon型光学系が
ルーツ
」と但し書きがあるので(笑)、まさか1950年に当時のVOIGTLÄNDER社に在籍していたトロニエ博士が、KMZに開発した光学設計を納品しているハズがありません(汗)

そこでトロニエ博士の特許出願申請を調べていくと、まさに戦前ドイツで1935年に特許出願申請した「DE2105799XA」がヒットし「US2105799A」として1938年に認可を受けているのが分かります (以下の左端)。さらに同じタイミング1935年時点で別に5群7枚
構成「DE2106077XA」として、やはり1938年に「US2106077A」の特許出願申請まで認可されています (以下の中央)(驚)・・最後1950年時点で登場する特許出願申請が「US2627205A」になり1953年の承認です (以下の右端)。

↑左端は4群5枚の拡張ダブルガウス型構成として開発し、中央では7枚構成にさらに第4群を3枚貼り合わせレンズとしています。最後右端がまさにVOIGTLÄNDER社で採用された「COLOR-ULTRON 50mm/f1.8」モデルの祖とも受け取れます (基本的にいずれも特許出願申請時の話なので、製品として量産される光学系とは一致しないのが一般的です/ネット上に
掲載する際は量産型とは異なる旨の注意書きが必要です
)。

・・と言うのも、例えば前出右構成図「ZENITAR-M 50mm/f1.7」のトレース図で、光学系第5群後玉は「表裏で同一の曲り率として両凸レンズになっている」ものの、今までに数多くのオールドレンズ個体を完全解体して、その実装光学系を計測してきた経験値から述べるなら「表裏面で同一曲り率の後玉は見た/手にした記憶がない」とも指摘できます。

従って、まさにプロの光学硝子レンズ設計者の方が述べられているように、特許出願申請書の掲載図面と製品化した量産型光学系の構成図とは一致しないのが常との認識に変わりました。

すると立ち返って、ではいったい「ZENIT」のホームページ標題で案内されていた「Schneider-Kreuznach製のXenonが原型のルーツ」との話は、一体何なのか???・・に到達します(泣)

そこで思い浮かんだのが先日このブログで散々解説しまくったОРИОНー15 (ORION-15) 2.8cm/f6 П (silver)《ZORKI》(M39)』の調査で、戦前1920年代の旧ソ連は国自体が経済面で破綻しており、当時の戦前ドイツに協力/援助を要請し「経済協力協定樹立」により1930年~1937までの凡そ8年間、光学技術の移転も執られていた話を専門研究者の論文を読み漁り知り得ました(涙)・・但しこの中で光学系の設計面で技術移転が適ったのは、旧ソ連内で1931年に制定された「発明及び技術上の改良についての規則」により、初めて著作者免許制度を用いて発明を法的に保護下に置く処置が講じられていますから、それ以降の話と考察できます (つまり1931年バルバロッサ作戦による戦前ドイツ軍の旧ソ連侵攻直前たる
1937年までに限定が濃厚
)。

ここで初めて「ZENIT」のホームページ標題で案内されていた話の辻褄が適合し、4群5枚のXenon銘 (当時はXenar銘だったが) 光学系が旧ソ連に伝わったとの内容で信憑性を帯びてきました (あぁ~話が長い/スミマセン!)(汗)

当然ながら今回扱ったモデルは「ロシア産の光学硝子材で精製」なので、そのまま伝承した「Xenon型光学系」で設計が適うはずがありません(笑) 旧ソ連「GOI (Государственный Оптикал Институте)
州立光学研究所」での開発/設計を経て1980年に一眼 (レフ) フィルムカメラ「ZENIT-18用セットレンズ」として登場した経緯が理解できます (右写真はMC ZENITAR-ME1 50mm/f1.7装着)。

なお、今回のモデル名で冒頭に付随する「MC」刻印は、確かにマルチコーティングを表しますが、そもそもモデル銘がロシア語キリル文字の刻印なので「何でMC表記だけラテン語/英語なの???」との細かくも素直な疑念が湧きます(笑)

皆さんこう言う要素にこだわらないのでサクッと進めて良いなぁ~と羨ましいですが(笑)、当方は気になると立ち止まって固まってしまうタチなので(汗)、調べざるを得ません・・すると当然ながらロシア語キリル文字なのでМНОГО СЛОЕВ」になり、ラテン語/英語直訳すると「マルチレイヤー転じて多層膜」になり、間違いなくマルチコーティングを表す刻印なのが
判明します (ロシア語キリル文字のはラテン語英語表記のです)。

そのままキリル文字をラテン語/英語表記に強制的に当てハメてしまうと「EOGO IOEV」になるので、まさにKMZとキリル文字をそのまま英語表記に当て嵌めて示しているのと同じ話になります (如何ですか? 理解できてますかぁ~?)(汗)

・・確かに間違いなくマルチコーティングを表すものの「MC」ではないのだ!(驚)

即ち、この刻印の表記はラテン語/英語表記で「MS」と刻印しているのが正しい捉え方なので・・今回の扱いモデルで言うなら、ロシア語キリル文字表記で「MC ЗЕНИТАР-МЕ1 50
mm/f1.7
」になり、一方ラテン語/英語表記で「MS ZENITAR-ME1 50mm/f1.7」と言う話・・本当にロシア語キリル文字とラテン語/英語表記との整合性を考え始めると「???」に頭が混乱してきますね(笑)

  ●               






↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端から順に、開放撮影時に唯一表出が適う「円形ボケ」が滲んで溶けていく様をピックアップしています(笑)・・なんとかギリギリ「円形ボケだったのかなぁ~?」と滲み方が角ばらない寸前のタイミングで耐え凌いでいます(笑)・・この先、収差の影響を受け始めると途端に角ばったボケ味に豹変しますが、その前に「徹底的に開放撮影にこだわる」と、運が良ければ次の段の写り具合を手に入れられるかも知れません(笑)

二段目
円形ボケ」が滲んだ先にトロットロに溶けていくシ~ンを上手く捉えられたら(笑)、こんな感じで滑らかな背景ボケへと変異しますが、おそらく相当写真スキルを要するのだと、撮影がド下手な当方は恐れおののいてしまいます(笑)

三段目
この段では確実に絞り羽根を閉じ始めていて、むしろ「四角いボケ味を楽しんでいる」時の
ボケ味をピックアップしています(笑)

四段目
そしていよいよ耐えられなくなってきて(笑)、収差の影響が如実に現れ・・一般的なオールドレンズなら二線ボケの領域・・なるも、このような一種独特な世界観の中に引きずり込まれ
ます (つまり本人たる本レンズは、あくまでも二線ボケのつもりでしか居ないからマジッ凄!)

五段目
この段ではピント面の鋭さ感と、何よりも被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さをチェックしています・・どうしてなのかよく分かりませんが (当方は基本的に光学知識皆無だから) 光りモノ、陶器やガラスや金属質の表現性が生艶めかしくて堪りません (素晴ら
しい
)!(涙)

六段目
最後この段では一般的なスナップ写真を集めています。ちゃんと普通にこう言う写真が撮れるから、これは見っけモンかも知れません!(驚)・・実はよ~く観ていくと、黒潰れの耐性がそれほど良くないので、或る特定の影部分でストンと漆黒化してしまいますが、その直前の階調は妙に生々しいです(驚) それが一番感じられてため息が出たのが一番右端の実写で「この夜の明かり越しの雰囲気・・マジッリアルじゃねぇ~???」と言うのは、左側の路面の階調や金属質の光沢感/輝き感、その鈍い光沢感・・などなど、なかなかこういう写真を残せるオールドレンズと言うのも少ないかも知れないと、改めて感心しため息が出てしまいそうです (とにかく素晴らしい)!(驚)

詰まる処、決して解像感だけに特化して追求していないところが「甘々じゃねぇ~???」と言われれば、返すコトバがありませんが(汗)、そこはそれ、オールドレンズの領域ですから今ドキのデジタルなレンズと一緒にして対決しないでほしいですね!(笑)

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジ
タルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

↑当方がネット上に掲載されている光学系構成図と異なる解説や、トレース図をこのブログに
アップすると、途端に某有名処のコメント欄に「公然と平気で嘘を拡散し続けている」との
誹謗中傷コメントが2018年来掲載され続けている始末で(涙)、ちゃんといちいち「証拠
写真
」を撮影して載せないとイケナイみたいです (サイトの運営者がその誹謗中傷コメントを
削除してくれません
)(涙)

今回のオーバーホールで完全解体して取り出した光学系の各群を左から順に第1群前玉第5群後玉まで並べて撮っています。グリーン色の矢印で指し示している方向が「前玉の露出面側方向」にあたり、一方ブルー色の矢印で指し示している方向が「後玉の露出面側方向」の向きを表しているので、第3群と第4群の間で「互いに向きが反転している事を意味する (もっと
端的に言えば第3群と第4群の間に絞りユニットが挟まっている)」次第です。

↑同様、今度は全ての群をひっくり返して裏面側を上に向けて並べて撮っています。同じように左端から第1群前玉第5群後玉の順で、グリーン色の矢印の方向が前玉露出面を指し、反面ブルー色の矢印が後玉の露出面側方向です。

↑特に当方が計測してトレースした構成図の「証拠写真」として掲示する目的で撮ったのが上の写真で(笑)、光学系第3群の裏面側のカタチを撮っています。当方が自分の手でデシタルノギスを使って計測してトレースした構成図と同じなのを示しています (グリーン色の矢印側方向が
前玉の露出面側方向を表す
)。

↑また光学系第5群の後玉も、前述の解説のとおり表裏面で曲り率が同一ではなく、ブルー色の矢印で示している後玉の露出面側方向に対し、内側の内部に向かっている面のほうが曲り率が高く突出しているのを「証拠写真」として撮っています (信用/信頼が皆無なので面倒くさいったらありゃしません)(汗)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

実は今回のオーバーホール/修理ご依頼者様には、当方が冒頭で述べたとおり「モデルの知見がなく初めての扱い品」と正直に伝えてありますが (恥ずかしい限り)(汗)、パッと見でまるで「HELIOS-44Mシリーズ」と似たような筐体の印象を受けたので「内部構造似てるかも?」と、如何にも安い金額でオーバーホール/修理が仕上がるが如く、概算見積時点で述べてしまいましたが・・とんでもない!!!(驚)

・・まさかこんな構造しているとは?! まさに異次元レベルでした!(涙)

当初バラす前のチェック時点で、確かにご依頼内容であった「絞り羽根の動きが不安定で絞り羽根開閉異常が起きている」のを間違いなく確認できました(涙) また距離環を回すトルクは
相応に重めで、且つトルクムラも少し指に伝わってきます。

合わせてマウント部が何だか膨れているようで「抵抗感を感じる」ワケで、おそらくちゃんと適切にマウント部がネジ止めされておらず「内部で何かが干渉していて膨れ上がっている状況 (おそらく僅か0.1㎜0.3㎜くらいの話)」です・・つまりマウント面を指で押し込むと撓むので、そのように感じ取りました(汗)

ちなみにモデル銘たるMC ЗЕНИТАР-МЕ1 50mm/f1.7《ZENITAR》(M42)』の「MEのE」は電気接点端子をマウント面に有するタイプであることを示していますから、このモデルを日本製たるRayqual製マウントアダプタなどに装着すると、電気接点端子がマウントアダプタのネジ穴にハマってしまい外れなくなるのを当初バラす前の時点で確認しています (厚紙を挟んで試してみた)(怖)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です・・アルミ合金材ですが鋳型鋳造のパーツで黄土色に微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工が施されています。

左写真がこのモデルの絞り羽根で「僅か2枚しか実装していない」のが事実です・・ネット上では、例えば某有名処などの解説でも「ME1モデルは4枚絞り」と解説されていますが、当方が見る限りは左の写真のとおり2枚しか見えません (但し信用/信頼が非常に厚いサイトなので、そちらを正として頂くのが良いと思います/信用信頼が皆無
な当方はウソだと言われても仕方ないので
)(笑)

一部のネット上ではちゃんと「2枚の絞り羽根を装備」と明記していても、嘘だ何だと言われないので(笑)、さすが信用信頼が厚いと言うのは何者にも代えがたい存在なのだと、今更ながらに反省しきりです (当方が悪いのですが)(泣)

また「V字型の絞り羽根」と解説しているサイトもありましたが「V字型なのはカットしているカタチ」であるものの、厳密にはキッチリV字型にカッティングしていません (キッチリとカットしてしまうと重なった時に隙間が空いてしまうから)。

ちなみに「重なった時」と言うのは、この2枚の絞り羽根が絞りユニットに組み込まれた状態で「駆動している最中の重なり時」の話であり、左写真の絞り羽根を互いに重ね合わせると「ピタリと100%同一の大きさ」です(笑)

↑上の写真は何とこのモデルの「絞りユニット」です!(驚)・・ハッキリ言って、こんなカタチの絞りユニットは今までの13年間で初めて見ました!(驚)

おそらくフィルムカメラの修理をしている人なら「あぁ~!」とすぐに分かったと思いますが(笑)、カメラ音痴な当方にはひたすらに「???」でしかないカタチです(笑)

上の写真は前玉側方向から見ている時の面を写していますが、上下にガイド (と言うかたぶんレールと表現したほうが良いと思うが) が備わります。

↑今度はひっくり返して後玉側方向の面を撮影しました。

よ~く観察すると「ポツポツと微細な点状に穴/窪みが開けられていて、さらに非常に平滑性が高い処理が施されている」のが分かります。

・・何を言いたいのか???(笑)

つまり、今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つであった「絞り羽根の開閉異常」の原因は、過去メンテナンス時にこの絞りユニットを取り出してバラさずに「おそらく組み込まれているままの状態で綿棒か何かで溶剤で拭いただけ」だったのだと推察します(涙)

当初バラした直後の「観察と考察」で、これら平滑プレート面は経年劣化進行に伴い酸化/腐食/サビが出ている始末で、結構本格的にゴシゴシ、ゴシゴシ「磨き研磨」して平滑性を取り
戻しました(笑)

最近のヤフオク!などで「整備済」を謳って出品している、当方とご同業者たる『転売屋/転売ヤーが居ますが(笑)、何と金属用の「研磨剤」を利用して磨いている出品者が居ます(汗)

ちゃんと調べれば分かりますが「研磨剤」はその役目と目的が違います・・当方が執っている「磨き研磨」の目的は一にも二にも「経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビの除去可能な限り製産時点にパーツを戻す/近似させる」であり、磨き上げて「ピッカピカにする」のが目的ではないと、何度も何度も執拗にこのブログで述べています(笑)

それにもかかわらず「研磨剤」を使っているようで・・何ともその個体は可哀想な限りです。

逆に言うなら、当方では「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類は一切行っていません(笑)・・それらを執ると金属材表層面に対して期待とは真逆の反応が現れるので、結果的に「製品寿命を
短命化させてしまう
」結果に繋がりかねません(怖)

・・それではせっかく整備していながら、あまりにも本末転倒すぎます!(涙)

まさに「白色系グリース」どころの話ではありません(汗)・・ちゃんとそれら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の目的や役目、或いは施された金属材がどのように至るのかを、もっとちゃんと研究するべきですね(涙)

少なくとも当方は家具専門店に在籍していた8年間、ず〜ッと家具職人に「磨き技術」を毎日ひたすらに伝授され続けたので(笑)、そんな化学薬品を使って処置するだけで良いワケがありません(笑)・・最初の頃は、木綿の雑巾だけを手にするのを許され、ただただひたすら一日中ゴシゴシ、ゴシゴシやってました (懐かしい!)(笑)・・2日もすれば両手に豆ができます(笑)

↑前出の絞りユニットは上の写真の鏡筒赤色矢印の隙間部分に組み込まれます・・上の写真は鏡筒を後玉側方向から撮影している向きです。

↑真横から見ると (同様写真上方向が後玉側方向の向き) 赤色で囲った四角い領域の部分に絞りユニットが組み込まれます。

↑絞りユニットを構成するパーツには上の写真のようなアームが2本備わり、それぞれに右側に並べて撮った「C型ワッシャー (固定具)」で赤色矢印のように差し込んでパーツを固定しますが、このような原理の固定方法も今回が初めての経験です!(驚)

↑実際に2枚の絞り羽根を組み込むと・・こんな感じに絞りユニットが完成します(笑)

左右のアームで駆動域を決められている絞り羽根2枚が、互いに反対方向に「横方向で開閉動作する (ブルー色の矢印)」ので、絞り羽根の開閉が適う原理です。さらにその際絞りユニット上部から飛び出ている「赤色矢印のように動く開閉操作キー」の動きにより、強制的に開いたり閉じたりができるようちゃんと考えられています (ちなみに上の写真は前玉側方向から写した撮影です)(驚)

↑今度はひっくり返して後玉側方向からの向きで撮影しました。前述の赤色矢印で指し示していた「操作キー」が特異なカタチをしているのが最大のポイントで、且つ合わせて「C型留め具と同じ原理のカタチが備わる留め具が用意されている」のも、この原理を確実にしている設計概念そのモノです(驚)

↑完成した絞りユニットを実際に鏡筒に組み付けたところです・・何だかギミック感タップリでメッチャ楽しいんですが、作業している最中はマジ顔で胃が痛くなる感じでした (それほどとにかく微調整がめちゃくちゃ難しい!)(涙)

↑鏡筒に絞りユニット組み込んだ状態のまま、実際に前玉側方向から撮影するとこんな感じです(笑)・・ちょうど一眼 (レフ) フィルムカメラのフォーカルプレーンシャッターの方式原理に似ているのだと思いますが、当方はフィルムカメラの修理ができませんし、何しろ極度のカメラ音痴なのでよく知りません(笑)

↑そのままの状態で今度は再びひっくり返して後玉側方向からの撮影です。

すると「制御環」が光学系後群がネジ込まれる箇所の直前にセットされ、その途中に備わる「なだらかなカーブ」の坂を登りきった頂上部分に「操作カム」が突き当たると「開放側」を意味し、その反面「なだらかなカーブ」の麓側に突き当たると「最小絞り値側」として「絞り羽根の開口部の面積/カタチ/入射光量のカタチが決まる原理」であり、要は「四角い絞り羽根の閉じ具合が決まる」次第です(笑)

こで非常に厄介極まりなかったのは、この時「操作カム」にチカラを与えてブルー色の矢印のように、横方向だけに限定してスライドさせて/駆動させている元が「1本の細い線径の捻りバネ」である設計です(涙)

この「横方向のスライド」と言うのは、何を隠そう「前玉側方向から見た時に視認できていた金属製のガッチリしたガイド/レール」ですから(汗)、そこを2枚の絞り羽根が「互いに反対方向にチカラを及ぼしつつ開閉動作する」のに「この細い線径の捻りバネ・・たったの1本」と言う設計なのです(涙)

実は、おそらく過去メンテナンス時にも「絞り羽根開閉異常」の現象が既に生じていて、捻りバネのカタチをペンチが何かで強制的に曲げてしまっていると推察します(涙)

おそらく本来はこんなに角ばったカタチで捻りバネが用意されていなかったと考えられるのですが、残念ながら下手に角度をイジると折れそうです・・仕方なくこの捻りバネのカタチを変えること無く、別の箇所で「操作カム」のチカラを適正に戻す微調整を執りました (ちょっと普通の手法ではないので1時間かかりました!)(涙)

・・過去メンテナンス時にバラさずに捻りバネだけ曲げてごまかした整備だと思います!(涙)

ロクな事をしません!(泣)

そんなワケで、この「捻りバネ」の存在により「絞り羽根を常に閉じるチカラが及んでいる」のが、この絞りユニットの制御に於ける最大のポイントになります。

逆に言うなら、自動絞り方式を採り入れた設計である以上「常時閉じるチカラが捻りバネ」なら、内部の何処かで「常時開くチカラを及ぼしている部位が存在するハズ」さらに合わせて「そこで使っているバネ材は一体何なのか???」と、すぐに思い至る必要があるのが「原理原則」です(笑)

・・閉じるチカラと開くチカラのバランスの中で自動絞り方式が完結するから。

そしてプラスαで、マウント部から飛び出ている「絞り連動ピン」からのチカラの伝達、或いは鏡胴側面に備わる「ロータリー式/切替スイッチ」によるチカラの伝達に対して「それらチカラが伝達される時の強さを微調整するキー」も用意されており、まぁ~ハッキリ言って
ガイドのレールに捻りバネに操作キー (操作キーの向きがクルクルと回る)と、最後は微調整
キーですから「4つの微調整を同時に熟していかなければ適切に仕上がらない」とんでもない設計です!(涙)

しかも「絞り連動ピン」と「ロータリー式/切替スイッチ」はマウント部までセットして
からの話なので、その後にようやく微調整できる作業です (何回バラしては組み立て直したのか??? 数えていて分からなくなったほどです)(笑)

↑ようやくオーバーホールの工程を進められます(泣)・・距離環やマウント部を組み付けるための基台です。赤色矢印で指し示している箇所にイモネジ用の下穴が用意されていますが、そのイモネジを緩めずに強いチカラで回した時に残った削れ痕が「約7㎜ほどの長さ」で残っています(泣)

実はこの点と合わせてもう一つの要因が重なり「距離環を回す時のトルクムラ」と「重いトルク感」に至っている複合要因に繋がっていそうです(涙)

↑ヘリコイドメス側をセットしたところですが、実はこのヘリコイドは「空転ヘリコイド方式」で設計されています。同様、赤色矢印で指し示している箇所に、過去メンテナンス時に違う
箇所で距離環を締め付け固定するイモネジをとめていた痕跡が明白です。

↑ヘリコイドオス側を無限遠位置の当たりをつけた正しいネジ込み位置でネジ込みます。このモデルでは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ません (合焦しません)。再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

結局、この個体は過去メンテナンス時にイモネジをちゃんと取り外してから反時計方向に回して指標値環や、特に「空転ヘリコイド用の締付環」を緩めずに、ムリに強いチカラで回したが為に「約7㎜ほど削れた」事が推察できます・・回しているのにビクともしないので、ようやく気づいたのではないでしょうか?(涙)

人力ではたかが知れているチカラしか加えられないので、おそらく専用治具を使い反時計方向に回したからこそ、このような削れ痕が残ったとも考えられ、残念ながらその時にこの「空転ヘリコイドの格納部分」が極僅かに変形したか、撓ってしまったのだと考えられます(泣)

僅か1㎜にも満たない肉厚しかないので、専用治具を使っているならムリに加えたチカラだけで容易に (アルミ合金材は) 撓ってしまいます(涙)

それが因果になって最終的な距離環を回す時のトルクムラを起こしているのではないかと考えます。

距離環をセットしたところで、ひっくり返してマウント側方向から撮影しています。制御環から飛び出ているブルー色の矢印で指し示したコの字型の切り欠きが絞り環と連携します。

↑鋼球ボールを組み込んでから「絞り環」をセットしました。ブルー色の矢印の箇所でちゃんと制御環のコの字型切り欠き部分と連結しています。

またグリーン色の矢印で指し示しているように「操作カム」を捻りバネが常に押し込んでいますが、絞り環の設定絞り値が「f1.7」で完全開放状態なので、絞り羽根が左右に開いている状態です(笑)

↑オーバーホール工程を進めます。ようやくここまで来ました(涙)・・マウント部内部の写真ですが、既に当方の手による「磨き研磨」が終わり、備え付けられていた各構成パーツも全て取り外しています。

当初バラした時は一部に酸化/腐食/サビも残っていたので、もしかしたら過去メンテナンス時にバラさずにグリースを塗っただけか、潤滑油を注しただけではないかと推察できます。

↑取り外していた各構成パーツもちゃんと「磨き研磨」してから組み込みました。このマウント部内部の制御系パーツの組み込み方が特異な構造で、正直今までに扱ったロシアンレンズの中に似たような設計がなく、一瞬「???」に陥りました(笑)

特に操作アームの箇所の構造が複雑で、よくもまぁ~こんな構造を思いついて設計したものだと関心です(驚)・・マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルー色の矢印❶)、それに連動して即座にカムが左側に倒れ (ブルー色の矢印❷)、合わせて「操作アーム」が絞り連動ピンの「例の曲げられてしまった捻りバネのチカラだけで移動する」仕組みです (ブルー色の矢印❸)。

従って、ただでさえ線径が細い捻りバネなのに、そのチカラだけでマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」と連携しているワケですから、どんなに弱く少ない抵抗/負荷/摩擦だとしても、この「操作アーム」の機構部には致命的なので「可能な限り経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビを除去して黄銅材を磨き上げた」次第です (結果捻りバネのチカラだけで絞り羽根がちゃんと開閉するように戻った/捻りバネを元のカタチに戻さずに改善できた)。

ちなみに上の写真では「ロータリー式のA/M切替スイッチは自動絞りのにセット」されています (グリーン色の矢印)。

↑今度は「ロータリー式のA/M切替スイッチを手動絞りのにセット」して「操作アーム」の動き方を撮影しています (赤色矢印)。

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」は「ロータリー式のA/M切替スイッチを手動絞りのにセット」してあるので、強制的に操作されていてブルー色の矢印❶のように押し込まれている状態にセットされます。当然ながらカムが左方向に大きく傾き (ブルー色の矢印❷) 同時に「操作アーム」も強制的に左方向に移動しており (ブルー色の矢印❸)・・要はマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれている状態に (強制的に) セットされます。

・・だから手動絞りに切り替わっていてスイッチがマークにセットされていますね

頭の中では、いとも簡単な話で明確に理解できているのですが、その動きをこれらのパーツを組み込む際に、ちゃんと実現するよう仕向けつつセットするとなると、実はなかなか大変だったりするのがオールドレンズの機構部の面倒な要素です(笑)

ちなみに、冒頭の解説のとおり、絞りユニット内部で使われていた「絞り羽根を常に閉じるチカラを及ぼす捻りバネ」の存在に対し、自動絞り方式を採り入れている以上「常に開くチカラを及ぼすバネ材」がもう一つ存在するハズなのが「原理原則」と解説しました。

このママウント部内部のママウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」に付随する「捻りバネ」が一つ介在しており、常に開くチカラを及ぼす役目を担っているものの、実は「同じバネ材たる捻りバネ」なので、チカラのバランスを図るために上の写真に写っている「操作アーム」の機構部で、使っている捻りバネの強さを減ずる設計をワザと採り入れている次第です(驚)

逆に言うなら、どうしてワザワザ複雑化してパーツ点数を増やし、せっかく及ぼしている捻りバネのチカラを消耗させてしまうのかが「???」だったのですが「原理原則」から捉えれば、敢えてチカラを減ずる設計にしているのだと理解できました・・それは一般的に、多くのオールドレンズで、仮に閉じるチカラで「捻りバネ」を使うなら、もう一方の開くチカラにはスプリングや棒バネを利用している場合が多いからです (つまり同一種のバネ材を使わない)。その理由は「バネ材を組み込んでいる部位が異なりチカラの伝達経路が長大化/複雑化するから」とも言い替えられ、互いに別の部位からのチカラの伝達経路に於いて、伝達されるべきチカラが減じられていく方向なのか、そうであればその時、減じられてしまったチカラを再び補う必要が起きるのか、そういった「適切なチカラの伝達」を必ず考慮した設計を執る必要があるからです。

だからこそ、結果的に距離環を回す時に掴んだ指が伝えたチカラだけで (軽いトルクで) 鏡筒の繰り出し/収納が適い、且つその時同時に連携して各部位に対し、或いは各部位からの影響を受けながらも「操作性の良さを担保したまま」撮影できる道具として完成させているのが、この当時のマニュアルフォーカスのオールドレンズ設計の宿命とも指摘できます。

その意味で、電気的にモーターを介在させて、瞬時に自動的にピント合焦させるオートフォーカスシステムが当たり前になった、今ドキのデジタルなレンズでは、必然的に樹脂製パーツが多用され、且つ最も適切な潤滑性能を担保できるシリコーン系グリースとしての「白色系グリース」が希求され、技術革新と共に発展を遂げていった背景は至極自然な流れであり、そこに「黄褐色系グリース」が介在する機会は、相応に限定されていったのは間違いありません (但しオールドレンズの話ですが)。

従ってネット上では、当方が何でもかんでも「白色系グリース」を悪者にして、まるでシリコーン系グリースの技術革新に知見を持っていないと貶されていますが(笑)、とんでもない話で、製産時点に「黄褐色系グリース」しか存在せず、主体的に使う事ができなかった時代のマニュアルフォーカスなオールドレンズに於いて、どうしてその時代に存在しなかったハズの「白色系グリース」を使ってしまうのかを指摘し続けているのだと、何度も何度も執拗にこのブログで述べています(笑)

逆に言うなら、それら「白色系グリース」を塗布しまくって、オールドレンズ内部のアルミ合金材に浸透し「白色に金属浸透している現実」まで、その反論をちゃんと解説するのが「貶す側の務めであり義務ではないのか???」と言っているのです(笑)

・・誹謗中傷メールを送信するだけしておいて、肝心なそのような説明は一切ありません(笑)

それがネット上の解説に於けるリアルな現実であって、何とも情けなくみっともない話です(笑)

↑このモデルは電気接点端子を有するので、その基盤を組み込みます。

↑真横方向から覗き込むと、こんな感じで絞り環にセットされている端子が基盤の回路を舐めていき、その時の抵抗値に従いフィルムカメラ側に絞り値を伝達する仕組みですね(笑)

この後は完成したマウント部をセットしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。今回初めて扱いましたが、筐体外装のデザインと言うか意匠に惑わされて「HELIOSシリーズと同じ内部構造か?」と高をくくっていましたが(笑)、飛んでもありませんでした(汗)

また何しろ当方にとり相当難しい絞りユニットの設計と、合わせてマウント部内部のパーツは微調整が厄介で「さすがロシアンレンズ・・恐ろしきかな?!」と、改めて感心を通り越してお疲れモードです(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化進行に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑光学系後群もスカッとクリア極薄いクモリすら皆無です。赤色矢印で指し示しているとおり、マウント面に電気接点端子が突出しているので、装着するマウントアダプタにはご注意下さいませ。

このマウント部を取り外す為の締付ネジ3本が同じマウント面に位置するので、マウントアダプタにハマってしまうとどうにも解体できなくなります(怖)・・その意味でもマウント面にネジ穴を用意してしまう設計をヤッてしまう事自体、多少なりともオールドレンズを知っているなら「???」としか考えられませんね (特に日本製マウントアダプタの話です)(泣)

↑2枚しか組み込まれていない「真四角に閉じていく絞り羽根」もキレイになり、絞り環やA/M切替スイッチ共々確実に駆動しています。当初バラス前の「絞り羽根開閉異常」も完璧に改善できています (自動のA/手動のMいずれの設定でもちゃんと確実に開閉動作しています)。


↑上の写真は、上段左端から順に完全開放のf1.7/f2/f2.8/f4、下段に移ってf5.6/f8/f11/最小絞り値のf16までキレイに正しく閉じていく様を撮影して明示しています (いずれも真正面の
前玉側方向から撮影しています
)。

ちなみに上段左端のように完全開放の「f1.7」状態でも、ご覧のように絞り羽根の辺部分が顔出ししています・・試しにいろいろ動かしてみましたが、どう動かしてもそもそも絞り羽根のカタチからして必ずこのように開くのを確認済です (つまり設計上の仕様です)(笑)

せっかくガイドと言うかレールが介在するのだから、完全開放するように設計すれば良かったのにとも思いますが・・(笑)

なお、光学系前後群が組み込まれているので、光学系内を覗き込みながら絞り羽根が閉じていく様を確認すると「正方形ではなく長方形に閉じているように見えてしまう」事がありますが「???」と思い、その時に光学系前後群を念の為に取り外して確認すると「ちゃんと正方形を維持していた」ので(笑)、錯覚なのだと納得できました。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが、残念ながら前述のとおり「空転ヘリコイド部が撓っている」のか、或いは距離環を回して半分ほど繰り出ししてから「距離環と鏡筒との間の隙間を確認」すると、どうも均等ではないようにも見えるので、もしかしたら「落下などの要因で距離環が真円を維持していない???」のかも知れませんが、いずれにしてもトルクムラが僅かに残っており、合わせて「重めのトルク感」でしかしげあられませんでした・・申し訳ございません!(涙)

この点、ご納得頂けない場合はご請求金額よりご納得頂ける分を減額下さいませ (スミマセン!)。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑その他「絞り羽根開閉異常」については完全に改善でき正常に戻っていますし、その挙動は確実に「/切替スイッチの設定と100%連携」を確認済です。合わせてマウント面から飛び出ている「絞り連動ピンの押し込み動作」についても絞り羽根の挙動を確認済で正常です。

↑実際に検証しているところですが (いちいち検証して証拠写真を載せないと信じてもらえないから)(笑)、K&F CONCEPT製「M42 – SONY Eマウントアダプタ」に装着したところです (中国製)。赤色矢印で指し示しているのは、マウントアダプタの仕様としてオールドレンズ側マウント面に「1㎜弱の突出が備わる」ので、その分の隙間を指し示しています (つまり隙間があってもこれで正常/ちゃんと最後までネジ込めている状態)。

この時、実はマウントアダプタ内側の「ピン押し底面を凹面に入れ替えている」状況ですが、正しく絞り連動ピンが機能できています。

↑「/切替スイッチ」のセット状態を撮影しました。当初バラす前の時点ではクリック感がだいぶ硬めの印象でしたが、ちゃんと「磨き研磨」を施したので、小気味良く、然し確実に機能しています (整備した以上、当たり前の話ですが)(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮影しました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」に上がりました。もうだいぶ絞り羽根が四角く閉じきっていますが(笑)、それでも「回折現象」の影響を感じ取れません(驚)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。このたびのオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。本日梱包し発送致しますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。