◎ KMZ (クラスノゴルスク機械工廠) ロシアンレンズ ОРИОНー15 (ORION-15) 2.8cm/f6 П (silver)《ZORKI》(M39)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、旧ソ連は
KMZ製超広角レンズ・・・・、
ОРИОНー15 (ORION-15) 2.8cm/f6 П (silver)《ZORKI》(M39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、初めての扱いになります。

旧ソビエト連邦時代の、いわゆる巷で呼ぶ処の「ロシアンレンズ」の類ですが(笑)、実はこのモデルの存在自体はだいぶ前から知っていたものの、死角に入っていたと言うよりも、正直なところ「どうせロシアンレンズだからとバカにしていた」次第で、プラスして「光学系が得体の知れないトポゴン型構成」で、しかもちっちゃくて「凡そ人気がないモデル」と端から相手にしていなかったワケで・・今回扱うのに際していろいろ調べたところ、本当に自分の受け
取り方が浅はかすぎたと反省しきりです(汗)

つい先日、このモデルの光学系を基本とする国産は、Canon製オールドレンズCANON LENS 25mm/f3.5 (L39)』を扱ったばかりですが、何気に市場流通価格帯を調査したところ、むしろこちらのロシアンレンズのほうが高額取引されている現実を知り、合わせてその吐き出す描写性を確認して「何と凄いモデルなのか?!」と感嘆した次第です・・むしろCanonどころの騒ぎではなかったと「自らの勝手な思い込みを猛省」しているところであります(泣)

先ずはそのような意味合いもあって、冒頭で今回のオーバーホール/修理ご依頼者様に対し心から御礼申し上げます・・このような機会を与えて下さいました事、真摯に反省すべき良きチャンスとなり大変ありがたく感謝しております!(涙)

全く以てカメラ音痴写真センス無さすぎで、挙句の果てに思い込みが酷く全く
信用にならない
と、まさに巷で誹謗中傷されているそのままであり、逃げ隠れする入るべき穴すら見つからない状況です!(恥)・・あぁ~恥ずかしい!

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

◉  一段目
さすがに円形ボケを目的で撮っている実写を1枚も確認できなかったので、この段では単にピント面の鋭さ感を確認する為にピックアップしています。パッと見でこの実写がロシアンレンズで撮られているとすぐに指摘できる人は相当少ないのではないでしょうか・・なかなか鋭いピント面ですが、そうは言っても周辺域の収差は相応に残っているように見えます。

それでもこれだけちっちゃな筐体で、しかもトポゴン型光学系を実装していると知らなければ、なかなかな写りにしか見えないと思います。

◉  二段目
この段では敢えて陰影の写り方をチェックすべく、少々暗めの印象の実写をピックアップしています。しかし注意して観るべきは暗部の黒つぶれよりも、その直前まで粘って頑張って階調を残している「暗がり部分」ではないかと思います・・いわゆる「ストンと黒潰れに堕ちてしまう印象」にしかまとまらない写りとは、あまりにもかけ離れた立派な表現性です(驚)

左から3枚目の写真など、背景の壁面に残る起伏のニュアンスまでしっかり解像しているところが凄いです。一番右端はさすがに懐かしきかな香港で、どうしても見つけると選んでしまうスターフェリーの写真ですが(笑)、さすがにこういう夜景をちゃんと残せているところがオドロキです!・・と言うのも、確かに香港はほぼ一年中湿度が高めで (唯一冬真っ盛りの時だけは乾燥しているが) 間違いなく曇っている空に反射する街明かりが、本当にこんなふうに見えるのです (とても懐かしい!)。

◉  三段目
この段では打って変わって明部の確認です。特に明るい場所のグラデーションについてチェックしています。カラー写真でもこれだけちゃんと階調を残せていて、決してノッペリ写真に堕ちていないのがさすがです。しかしもっと言うなら、このモデルはもしかすると白黒写真で本領発揮するオールドレンズなのかも知れません。白黒写真の生々しさは相当なレベルではないでしょうか。

被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さも、特に白黒写真になると相当なレベルです。

◉  四段目
左側2枚では、意外でしたが人物撮影のポートレートにも十分対応できそうな印象です。最短撮影距離が1mなので、ポートレートと言ってもそこそこの距離でしか撮れませんが、被写体が緊張しなければ十分ステキなポートレートを残せそうです。

右側2枚ではパースペクティブを確認していますが、まさかこんなちっちゃなオールドレンズでこれだけ端正な写り具合を残せるとは恐れ入ったものです。

◉  五段目
この段では光源を含んだ実写や逆光耐性を確認していますが、非常に多くのオールドレンズで特に逆光撮影時にちゃんとシッカリと光彩を残せているモデルと言うのは意外に少ないです・・このモデルの逆光耐性の凄さ/素晴らしさが十分伝わる写真ではないでしょうか。

このモデルの光学系を考察する際、必ず避けて通れないのが右構成図で、独特な4群4枚のトポゴン型光学系です。この光学系を設計した設計者はドイツ人光学設計技師のRobert Richter (ロバート・リヒター/ドイツ語発音) で、1933年に特許出願申請し1936年に認可されている「DE636167C」で確認できます (右構成図はこの特許出願申請時の記載内容から当方がトレースした構成図です)。

この時の特許出願申請書を読むと何処にも開発者本人の名前「Robert Richter」名が現れず、さらに出願者はZeiss Ikon AGになっており、何とも不遇な話です(泣) アナスティグマート
あるこの光学設計は中間に絞りユニットを配置して真ン丸な対称型とする事で、理論上100度の画角と開放f値「f6.3」を実現させ、屈折率を高めたクラウンガラスを配置する事で、同時に色収差と球面収差にコマ収差、像面歪曲、非点収差の全てを低減できている、対角線画角が82度と言う超広角レンズを実現し、当時は航空写真用レンズとして重宝したようです。

Robert Richterは1886年にドイツはベルリン創業の光学機器メーカー「C. P. Görz (ゲルツ)」に1923年転職した後、ゲルツ合併に伴いZeiss Ikonにそのまま在籍していたようです (最後はZeiss Ikonの吸収先たるCarl Zeissに在籍したまま1956年にアーレンで死去)。

一方今回のモデル、ロシアンレンズ側の立場で捉えるなら、戦前戦後を通して「GOI (Государственный Оптикал Институте) 州立光学研究所」での開発/設計をチェックする必要が起きます。一部の光学設計については戦後欧州や米国などでも特許出願申請していますが
多くのモデルがGOIでの登録に限定して残されており、且つ特に旧ソビエト連邦時代に於いては1931年にようやく制定された「発明及び技術上の改良についての規則」により、初めて著作者免許制度を用いて発明を法的に保護下に置く処置が講じられています。また現行の特許法制度は (1991年の旧ソビエト連邦崩壊の後)、1992年9月23日より旧ソビエト連邦より現ロシア連邦に継承が認められ、2003年2月7日に民法典第4部に集約の後、2008年1月1日より施工しています。

従って、前述の戦前ドイツZeiss Ikon AGで (Robert Richterのもと) 開発された4群4枚トポゴン型光学系は、旧ソ連邦の1931年からの発明に関する法制度下でようやく戦前ドイツからの光学技術提供が適ったようです (専門研究者の論文から考察)。そこから見えてくるのは、1945年以降のドイツ敗戦に伴う戦時賠償に於ける接収による技術模倣ではなく「正統進化たるいわゆる技術移転」的要素としてこのトポゴン型光学系は捉えられるべきと分かります。

まさにロシア国内で研究開発されていった大変数少ないモデルの一つである事が、これらの考察から裏付けできます。しかしいろいろ調べていてオモシロイと感じたのは、戦前ドイツに於ける旧ソビエト連邦向け技術提供に際し、肝心な要素については一切提供していなかった点です・・例えば爆撃機に搭載される射爆撃照準機に実装するべく焦点距離の光学レンズ設計での収差改善技術、或いはドイツ陸軍での着弾測距儀や照準機の解像度を高める技術については全く移転していないようなのです(笑) 特に1920年代に旧ソ連の経済状況悪化に伴う戦前ドイツとの積極的な経済協定樹立は、その後1930年代半ばから戦前ドイツを仮想敵国と捉えるように変貌していった背景なども相まり、詰る処1938年から準備が始まった1941年ドイツのバルバロッサ作戦 (旧ソ連邦への侵攻) によって決定的になったと受け取れます (つまり1931年~1937年までの凡そ6年間弱しか互いの経済協力は進展しなかった)。

このように調べていくと、どうやら今回扱った超広角レンズ域の焦点距離:28㎜は、特段戦前ドイツにとりさして重要な要素を占めていた光学技術ではなかったようにも思えてきますね (悪く言えばまるで締結してしまった協定に則して、それこそポーズ的に技術移転したかのような見え様)(笑)

実はその辺りをいろいろ調べたくなった理由があり、せっかく1933年に戦前ドイツから技術移転を受けていながら、肝心な製品化が成されたのは終戦間近の1944年頃からなのが腑に落ちなかったのです (どうして凡そ10年間も製品化を見送り続けていたのか???)。


↑そこで同様1969年版GOI諸元書を調べていくと、その後に発展系としてちゃんと
残っていた光学系の設計がシリーズ化されて存在しました。

上段左端からのは、まさに今回扱ったОРИОНー15 (ORION-15) 2.8cm/f6 П (silver)《ZORKI》(M39)』の源流たる「ZORKIバージョン (M39)」の諸元です。特に「Zorki版」との名称ながらも、を確認すればフランジバックがちゃんと「28.8㎜±0.02㎜」と表記されており、まさにライカスクリューマウント規格たる「L39コピー版」なのが一目瞭然です(笑)

そしてこの1933年に伝播してきた「トポゴン型光学系」からの発展として残っているのが上段右側2つのです。超広角レンズ域の「 РУССАР (RUSSAR) МР-2 (MR-2) 20mm
/f5.6
」はシリーズ名「RUSSAR」とラテン語/英語翻訳でき、或いは「 РУССАР-49 (RUSSAR-49) 60mm/f6.8」も同様です・・これらを見る限り、光学系内第2群と第3群を
2枚接合の貼り合わせレンズ化させる事で像面歪曲と共に他の収差まで低減を狙ってきていたのが分かります。

また下段に移ると4種類全てが「ОФ (RF) シリーズ」として様々な焦点域のプロジェクションレンズ向けモデルとして存続していた事が分かります。

なお「Marco Cavina氏のサイト」によると、1933年にはドイツ空軍が当時開発し使っていたRMK航空製カメラ向け「100mm/f6.3」の標本が渡っているとの指摘ですが、その標本がまさに源流となり、これら下段側のモデルへと発展していったのかも知れないとの憶測に
及び、まさにロマンが広がりますね(笑)

ちなみに当時多種多様に開発されていた「RUSSARシリーズ」の中で1969年版GOI諸元書に記載が残っていたモデルは上段の2本だけでした。

従って旧ソビエト連邦のGOIにて一番最初に登場したのは、1944年の戦前ドイツCONTAXコピーマウント「Kievマウント規格」向けプロトタイプになります (右構成図はさらにその後の1951年に登場したプロトタイプになり再設計しています)。

ネット上掲載構成図から当方の手によりトレースした構成図です。

さらに今回扱ったマウント規格ライカスクリューコピーマウント規格の「ZORKIバージョン (M39)」光学設計が右構成図で、同様GOI
諸元書掲載の構成図から当方がトレースした図です。モデルとしては既に1951年時点のプロトタイプとして既知だったようですが、
1969年時点のGOI諸元書にもそのままの載っていました。

そして右構成図が今回のオーバーホール/修理で完全解体した際、光学系の清掃時に当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

現物を実測するとさらに再設計していたようで、全ての群の曲り率が変わっており、厚みから外形サイズまで違っていました (特に外形サイズについてはGOI諸元書掲載に記載があったので実測値との相違が確認できています/例:第1群GOIは11.7㎜ですが現物は12.7㎜)。

この後、KMZからZOMZに生産移管されるので、その際に三度光学系が再設計されている可能性もあります。

なおここまでの解説でロシア語キリル文字とラテン語/英語の文字で紛らわしい部分があります。例えばロシア語キリル文字にも存在する「」は、そのままラテン語/英語翻訳すると「」ですから(笑)、前述の「РУССАР」もラテン語/英語翻訳すれば「RUSSAR」と言う次第です。ロシア語キリル文字表記での「MP」もラテン語/英語では「MR」に変わるので、なかなか混乱してきます(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は至って簡素で、凡そこの当時のロシアンレンズに多く見られる合理的、且つ最大限に工程数を減じた「大量生産向け」の設計概念で造られています。

・・とここまでの解説だけなら他のロシアンレンズと同じようにいつでも、幾つでもオーバーホールできると受け取られがちですが、実は今回のモデルは「間違いなく造りきり!」の設計を採っており、生産後に再整備する事を一切想定していません(涙)

今回、初めての扱いだったのでそんな事柄を知る由もなく「原理原則」に則り、上の写真のとおり「完全解体してしまった!」次第です(笑)

バラしてから後悔先に立たず・・あぁ~、オーバーホール/修理作業を受けなければ良かった
・・と、全く以て疲れきった次第です(涙)

その最大の因果は「光学系の格納方法」とフラスして切っても切れない「絞りユニットのからくり」です(泣)

原理原則」を熟知できているので、それら因果関係について全て理解できていますが、作業工数1人日で済んだものの (基本的に内部構造は非常に簡素)、問題だったのは「どうやって仕上げるのか???」であって、バラすのはチョ〜簡単でも、組み立てはそれこそ「地獄を見るぞ!」みたいな感じでした(笑)

・・そんな次第で現在の処「最初で最後にしたいかなぁ~」的な気持ちが大きい状況です(笑)

その描写性が素晴らしいだけにとても残念ですが、今回のオーバーホール/修理でスッカリ懲りてしまったので、今後扱う予定は現在の処ありません(泣)

詰る処、先日のCANON LENS同様、そもそもトポゴン型光学系は当方の技術スキルにとり、まるで「禁断の地」だったようです(笑)

しかし、今回扱ったこのモデルのおかげでロシアンレンズに対する捉え方を、今一度顧みるべく「ロシアンレンズパチモン」的な受け取り方に真摯に反省しているところで御座います(笑)
・・そのような機会を与えて下さったご依頼者様に感謝しつつ、このモデルからは潔く身を
引きたいと思います(涙)

↑順番が逆になってしまいましたが、上の写真は当初バラし始めた時に取り出した鏡胴「後部」側に含まれる「ヘリコイド群」です。溶剤で洗浄する前なので、古いヘリコイドグリースなどが目一杯付着したまま残っています。

今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の主題がまさにこの問題で「ヘリコイドが引っかかるように感じる」であり、当初バラす前の確認時点では、距離環を回すにも「まるでスカスカ状態でヘリコイドグリースのグリース切れ」なのがすぐに分かりました。

また、そのスカスカ感から「中に塗られているのは白色系グリースに間違いない!」と踏んでいたので、開けてみればご覧のとおりです(笑)

上の写真グリーン色の矢印で指し示している箇所に塗られているのが「白色系グリース」であり、且つ構成パーツの全てがアルミ合金材なので「濃いグレー状に変質」しているのは、経年劣化進行に伴い「白色系グリース」のせいで削れてしまったアルミ合金材の「摩耗粉」が混じっているので白色を維持していません(泣)

さらに赤色矢印で指し示している箇所には (写真撮影がド下手なのでとても分かりにくくてスミマセン!) 生産当時に塗られていた、油成分が非常に強い「黄褐色系グリース」がガッチガチに固まって残っています。

つまりこの個体は過去メンテナンス時 (おそらく10年前後前の整備) に古い「黄褐色系グリース」を拭い去らずに、その上から塗り足しで「白色系グリース」を塗布したのが判明します(笑)

さらに、このようなスカスカ感が強い状況に到達している事から「おそらく一度潤滑剤を注入されている」とも推測でき、潤滑剤を注入したのは整備者ではなく、当方とご同業の『煮ても焼いても食えない転売屋/転売ヤーの類とすぐに理解できます(笑)

このまま放置プレイが進めば、間違いなく残り数年~せいぜい5年ほどで「製品寿命」たる「ヘリコイドの固着/融着」に至り、その終焉を迎えていたことでしょう(怖)

・・オーバーホール/修理ご依頼者様ご英断に、心より感謝します (復活しましたョ~ぉ)!(涙)

ちなみにロシアンレンズの多くのモデルが、その国土の状況からマイナス40℃以下に至る極寒地を含む為、金属凍結を防ぐ意味から非常に油成分の強い「黄褐色系グリース」を塗布しており、且つ粘性が非常にドロドロッとしていながらも長期間潤滑性を維持できる大変優れたグリースです。さらに一番ネックとなる「絞り羽根にプレッシングされている金属棒状突起のキー脱落」を防ぐ意味合いから、凡そ世界中の多くのオールドレンズで禁断行為たる「絞りユニット内部にまでグリースを塗布する」のが罷り通っている現実です。

これをしないと絞り羽根の表裏にプレッシングされているキーがすぐに脱落してしまい、オールドレンズの役目を全うできません(泣) 従って現在市場流通している非常に多くのロシアンレンズ個体で「絞り羽根の油染み」は至極真っ当な話なのです(泣)

それなのに平気で「白色系グリース」を塗ったくる整備者が後を絶たず(泣)、非常に多くのロシアンレンズがアルミ合金材で造られている関係から「経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びが進行してしまう」現状に至り、何とも数多くの個体が「製品寿命」まっしぐらです(涙)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、前述のとおりアルミ合金材切削で用意されており、且つこの当時のロシアンレンズに非常に多い「濃いグリーン色のメッキ加工」が施されています (そもそもKMZ製なのでメッキ塗色が共通)。

↑何とも恨めしい写真ですが(恨)、鏡筒から取り出した絞りユニットの構成パーツで「開閉環位置決め環」です。「位置決め環」側の丸穴に絞り羽根のキーが刺さり「軸として回る」時、もう一方の「開閉環」が絞り環と連結しているので「絞り環操作で開閉環が回り絞り羽根が角度を変える」原理ですね(笑)

その絞り環との連結の為に用意されている開口部/切り欠き/スリットが赤色矢印で指し示している箇所です。ところがそれとは別にこのモデルの最もヤバい因果となってしまっている「アルミ合金材の」が「位置決め環」の両サイドに備わります (グリーン色の矢印)。

この爪の役目は「内側に組み込まれた開閉環を爪で抑え込む役目」であり、その爪が抑え込む箇所を左側に並べて撮っている「開閉環グリーン色の矢印で指し示して明示」しています。

ここで最も重要なポイントは「この爪で目一杯ガッチガチに開閉環を抑え込んでしまったら、開閉環は回らなくなる」であると同時に「逆に緩すぎると最小絞り値側で絞り羽根が重なり合って浮き上がるチカラが生じた時に開閉環が外れる」因果に至ります!(怖)

つまり強すぎてもダメで、緩すぎてもダメ!・・しかもとても薄いアルミ合金材なので「何回も折り曲げしているとアッと言う間に折れる」と言うシロモノです!(怖)・・実際今回の整備作業で片側の爪が根本からポロッと折れてしまいました!(涙)

すると本来の役目たる「開閉環の抑え込み」を行う必要が生ずるので、イモネジを使って代用するにも「そのままネジ込んだだけでは開閉環をキズ付けて削ってしまうだけでもっと悪化してしまう!」(怖)と言う同道巡りに陥りました(涙)

・・これで懲りまくったのです (当方の技術スキルが低すぎるからこうなった話)!!!(涙)

確かにこの爪を折ってしまった自分が悪いと言われれば返すコトバがありませんが(泣)、たったの1回もう一度曲げようとしただけで「ポロッ!(怖)」と逝ってしまった次第で、それをいったいどのように予測すれば良かったのか、マジッに反省してもしきれていない状況です(涙)

現実に折ってしまった犯人は当方自身なので、この点についてご納得頂けない場合は (当然ながら納得できるハズがない!/壊したのはオマエ)、ご請求金額よりご納得頂ける分の減額を是非お願い申し上げます (減額の最大値MAXはご請求金額まで/つまり無償扱いとし、当方による弁償は対応できません)

もちろんちゃんとイモネジをネジ込んで「開閉環を確保」しましたし、そのネジ込んだイモネジも先端部分を研磨して開閉環の「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」を剥がすような結果に繋がらないよう処置済です。

・・はい、イモネジのその加工がメチャクチャ大変だったのです(笑)

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種 (左写真)

イモネジの有効性
締め付け固定する際に対象となるパーツの固定位置を容易に変更/ズラして固定できる
(但し別の用途で敢えて使う場合もあるので必ずしも微調整を伴うとは限らない)

↑「開閉環位置決め環」はこんな感じに組み込まれて、且つ両サイドから「」で抑え込まれます (グリーン色の矢印)。上の写真ではコワイ為、爪を曲げずにそのまま撮影していますが
最後鏡筒最深部に絞りユニットを組み込んで曲げたら「ポロッ!」と逝ってしまいました(涙)

ちなみにこの絞りユニットを鏡筒最深部にセットする「行為」自体がメチャクチャ大変です
・・おそらく生産時点はグイグイっと治具で押し込んでいたのだと思いますが、ストンと中に落ちるレベルの話ではなく「マイナスドライバーで縁を少しずつ両サイドを交互に押し込みながら、それこそ0.5㎜ずつ気長に押し込んでいく」作業で、本当にイヤになりましたね(笑)

どうしてかと言うと「マイナスドライバーで押していく時、ググッググッと抵抗/負荷/摩擦が加わるのでその振動で開閉環が外れる/浮き上がる/飛び出でようとする」ワケで、そのたびに再び取り出してまた被せる作業をしました(笑)

・・作業中、こんなくだらない作業を延々としている自分がまるでアホだと思いましたね!

凡そ3時間がかりでようやく最深部に絞りユニットを組み込み、イモネジで無事に締め付け完了です(笑)

従って、このモデルの設計上「再整備を一切想定していなかった」としか考えられません(泣)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑鏡筒内部に格納する光学系前後群を順番に並べて撮影しました。第1群が前玉で、第4群が後玉なので、互いに外側に露出します・・赤色文字光学系前群を意味し、グリーン色の文字光学系後群を表します (鏡筒内部での配置)。

↑同様、今度はひっくり返して裏面側を上に向けて撮影しています。並び順は同じままです。これらの写真を見るとすぐに分かりますが「光学ガラス面がちゃんとコーティングされている」ワケで、まさにそれこそが名に刻印されている「П」刻印を表し、モノコーティングと言う複層膜コーティングを意味し、且つロシア語キリル文字で「Покрытие (コーティング)」の頭文字を採っており、ラテン語/英語に訳すと「」にあたります。

↑それぞれ光学系前群後群として互いに重ね合わせるとこんな感じになり、赤色矢印で指し示しているのが露出する前玉であり、一方グリーン色の矢印で指し示しているのが同様露出する後玉です。

するとブルー色の矢印で指し示している箇所・・要はシルバーなアルミ合金材の箇所は全て
・・こそが「平滑性の担保が必須」であって、それ無くして鏡筒内部へのこれら4つの光学系格納は完遂できません(涙)

ッて言うか、さんざんゴシゴシゴシゴシやって「平滑面を確保」しまくったのに (凡そ1時間ヤリ続けていた)(笑)、鏡筒に落とし込もうとしても引っかかってしまい全く入ろうとしません (つまり抵抗/負荷/摩擦がまだ多いと言う話)。

そもそも当初バラしている最中に「この光学系を取り出すだけで大騒ぎ!」だったのは当然な話で(笑)、どうやって光学硝子レンズにキズを付けずにグイグイッと押し込んで鏡筒から押し出すのか「???」だったくらいです(笑)

それもこれもあって「コイツ設計したヤツッて再整備を全く考えてねぇ~じゃんッ!」と怒り心頭だったワケです、はい(笑) 試しに「加熱処置」しても全く変わらずなので (相当鏡筒内部はクリティカル)、間違いなく再整備する事は想定していません(泣)

ちなみに上の写真では、ワザと故意に分かり易いよう各群の光学硝子レンズ (と言ってもそれぞれアルミ合金材に一体モールド成形ですが) が互いに積み重なっていく様を表していますが、実際はご覧のようにピタリとツライチで円筒にならず「平滑性が担保されなければご覧のようにズレていく結果に繋がる」事を示しています。

すると詰る処、光軸ズレは当然ながら偏芯まで起きて吐き出す写真をチェックすれば、まるで一目瞭然になりますね(怖)

↑まぁ~何とも恨めしい写真です!(笑) やっとの事で光学系前群を押し込んで (もちろん当然ながらシッカリ光路長確保済) レンズ銘板をネジ込んだところです(笑)

↑こちらの写真はひっくり返して今度は後玉側方向から撮影しています。ブルー色の矢印で指し示しているとおり「平滑性を担保したアルミ合金材」の一部が見えています。

実はこのように後玉は「鏡筒の外枠内にハマっている状況」なので、赤色矢印のようにグイグイッと相当強いチカラで押し込んで、鏡筒から押し出さない限りバラすことさえできません(涙)

普通なら「鏡筒内に落とし込み方式」の光学系なら、ひっくり返すだけでバラバラと光学系各群が勝手に落ちてきます。そうならない時点で「???」だったワケで・・モロにハマりましたねぇ~(笑)

↑完成した鏡筒を建てて撮影しました。写真上方向が前玉側の位置にあたりますが、結局この鏡筒は「全てが落とし込み方式」の設計なので、組み立てるなら「一番最初に第4群後玉を落として次に第3群」そして途中で「絞りユニットを落とし込んで」最後に再び光学系「第2群第1群前玉」を落としてからレンズ銘板で締め付け固定する順番です(笑)

この時、一発目の第4群後玉からして「マイナスドライバーで本当に根気よく両サイドをチビチビと押し込みながら入れ込んでいく」作業しかできず(笑)、下手に加熱すると絞りユニットを入れ込む際に絞り羽根に影響が出るので「一切加熱処置できず!」のまま、ひたすらにチビチビとマイナスドライバーで押すだけの世界です(笑)

これを絞りユニットを含めて5回もヤッていると・・いつの間にか「恍惚に堕ちている自分」を発見する事に至ります(笑)

ちなみに赤色矢印で指し示している箇所が開閉環と絞り環とが連結する為に用意されている開口部/切り欠き/スリットです。つまりこの位置にピタリと「開閉環が到着していないとダメダメ!」なワケで、これが意外とピタリと合わなかったりするので大変なのです (つまり絞りユニットが内部で極僅かに斜めっているから)(怖)

最後にちゃんとピタリと適切な位置に絞りユニットが来ていれば「グリーン色の矢印で指し示しているイモネジを締め付けて固定できる」次第です(笑)

・・頭ではそんな事は百も承知なのですが、リアルな現実はその通りに進まない!(笑)

↑この絞り環をネジ込む時が訪れるのを・・どんだけ待ち侘びたことか!!!(涙)・・ただただ、ひたすらに涙が溢れそうです(笑)

ちなみに絞り環もレンズ銘板も何処も彼処も「反射防止黒色塗料」で塗りまくり状態だったので、当初バラした直後に全て溶剤で除去しています (赤色矢印)。 溶剤で除去してみれば何のことはなく「元々生産時点からしてちゃんと鈍い艶有りの黒色メッキ加工」が施してあったのに、見てくれの良さからワザワザ敢えて「反射防止黒色塗料」を塗りまくります(泣)

そのせいで、結局は経年劣化進行に伴い光学硝子レンズにインク成分が付着したりの「薄いクモリを帯びた状態」に堕ちていきますね(涙)・・全くロクな事をしません! (この溶剤による除去作業だけで1時間かかってるので全く以てバカみたいです、イヤ本当にバカなのだと思います)(笑)

↑そしてさらにさらに「???」極まりなかった鏡胴「後部」のヘリコイド群達です。マウント規格がライカスクリューマウントのコピー規格「ZORKI版」ですから、例え「M39」としてもちゃんと距離計連動ヘリコイドを有します (赤色文字)。

何が厄介だったのかと言えば、グリーン色の矢印で指し示している箇所に「制限域」と言う、シリンダーネジの「直進キー」が行ったり来たり左右に振れる領域が用意されています。「直進キー」はちゃんと鏡胴の両サイドに均等配置なので両方にこの開口部/切り欠き/スリットが備わります。

その一方でブルー色の矢印で指し示したように、同様「直進キーが今度は直進動するガイド (開口部/切り欠き/スリット)」まで両サイドに備わります。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

直進キーガイド
直進キーが直進動でスライドして移動するガイド/溝であり鏡筒の繰り出し量をカバーする

つまりこのモデルの設計概念は「直進キーが左右と上下両方向で移動する駆動方法」でヘリコイド群を管理している点です(驚)

例えば「初期型前期型」辺りの「JUPITER-9シリーズ」で、特にシルバー鏡胴モデルが同じような設計概念を持ちますが、そのモデルでは「左右方向で1セット (つまりヘリコイド筒のオスメスが一式用意されている)」或いは直進動方向で1セットと言う「ダブルヘリコイド方式」を採ります。

すると互いにそれぞれ1セットずつオスメスでヘリコイド筒が用意されるので、各々左右回転と直進動をするようセットしてあげれば良いのですが、今回のこのモデルは「本来4個必要なヘリコイド筒を3つにまとめてしまった」から堪ったものではありません!!!(涙)

・・さすがに技術スキルがチョ〜低い当方は「???」しかありませんでした!(涙)

しかもこれをものすごく難しくしているのが「距離計連動ヘリコイドの概念」であって、否応なしに「外部に飛び出てきている距離計連動ヘリコイド筒の厚み分が、ちゃんと無限遠位置の量にピタリと合っていないとライカカメラなどで二重像ズレしまくり!!!(怖)」なのが歴然です。

こんなまるで知恵の輪のような世界の中で悶々していたのが本当に恥ずかしい以外の何物でもない!

・・ワケですョ(笑)

距離計連動ヘリコイドに距離環がセットされるので、距離環を回すとダイレクトに距離計連動ヘリコイドが回り始めます (つまり無限遠位置から移動を始める)。するとそれに呼応してヘリコイドオス側がちゃんと直進動しなければピント位置がズレまくりなのは当然な話です!(笑)

これのいったい何処が「知恵の輪の世界!」なのか・・分かるでしょうか???(笑)

↑するとですョ・・上の写真で赤色矢印で指し示している「制限壁」は、いったい何の役目で備わるの???・・誰か教えてください!(涙)

何とも不思議な話で、この「制限壁」は全く意味を成していません(笑)・・使っていないのです!(驚)

通常一般的なオールドレンズでは「距離環の駆動域を制限する役目が制限癖の突出」ですが、このモデルにはこの「制限壁に衝突するパーツが存在しない」のです(笑)

ではどうして無限遠位置と最短撮影距離1mの位置でカツンかツンと音をたてて小気味良く停止するのかと言えば、それは前出の「距離計連動ヘリコイドの下部に備わる左右の開口部/切り欠き/スリット (両サイドにある) の円弧を描いた縁にシリンダーネジたる直進キーが付き当て停止する」から、ちゃんと止まるのです(驚)

↑完成したヘリコイド群をひっくり返して、今度は後玉側方向が写真上に位置になるよう撮影しています。するとブルー色の矢印で指し示しているシリンダーネジ直進キーガイドを上下方向/直進動で行ったり来たりしつつも、実はその時連動して距離計連動ヘリコイド下部に備わる左右方向の開口部/切り欠き/スリット (グリーン色の矢印で指し示している箇所) をも左右に行ったり来たりしています。

しかもこの時、上の写真で飛び出て露出しているのが「まさに距離計連動ヘリコイド」なので、ちゃんとこの露出量が適合しないとライカカメラに装着した時のファインダー二重像がズレまくりです!(怖)

3つ用意されているヘリコイド筒のネジ山を調べると、全部で24通りものネジ込み位置が存在する事が判明しますが、その中で「距離計連動ヘリコイドの適切な露出量適切な無限遠位置ファインダで二重像がズレない当然ながら鋭いピント面で無限遠合焦している」と言うこのようなまるで4重方程式のような意味不明な関係性を・・誰か解いて下さいませ!(涙)

・・数学が赤点ギリギリだった頭の悪い当方には解けません!!!(涙)

結局この難問を正解で解いて初めて、完成している鏡胴「前部」をセットできるワケで、組立工程が終わります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました(涙)・・一つ前の工程写真から実に延々と3つのヘリコイド群と3時間がかりで臨んで(笑)、やっとの事で完成しました(涙)

当初バラす前の実写確認時点で「凡そ1目盛り分 (10mの位置で) 合っていたオーバーインフ量が多い無限遠位置」も、ほぼピタリと無限遠位置を合わせてあります。当方使用のミラーレス一眼カメラも「SONY製α7II」なので、お手元に戻ってからも問題なくご使用頂けるハズです(涙)

しかし、前述のとおり「絞りユニットの爪を1本折った張本人は当方」なので、以下のとおり減額をご検討下さいませ・・(涙)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑このモデルの開放f値は「f6」なので、ご覧のように完全開放せずに絞り羽根が顔出しします。光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

当初バラす前のチェック時点では、ご依頼者様ご指摘のとおり「薄いクモリ」が全面に渡り残っていましたが、全て完全除去できておりスカッとクリアです!

↑後群側もスカッとクリア極薄いクモリが皆無です。上の写真で解説しているのは、実は当初バラす前のチェック時点から同じなのですが、筐体が極僅かにガチャガチャしていました。当初バラすまえは距離環の締め付け固定が緩いのかと考えましたが、そうではなく「設計上直進キーと左右移動の開口部/切り欠き/スリットとでマチ幅を持っており、その分で鏡胴が前後方向にガチャガチャガタつきが残る」仕様なのが判明しました。

残念ながらこれは設計上の問題なので、どうにも改善できません(涙)・・従って前述の「減額対象」にもこの点のみ入りませんので申し訳ございません(涙)

ちなみに上の解説は、鏡胴「前部」について赤色矢印とラインで囲っており、それをブルー色の矢印で指し示している「鏡胴前部締付固定環」が確実にガッチガチに締め付け固定しています(笑)

しかしながらグリーン色の矢印のとおり丸ごと「前後方向/前玉と後玉の方向」で微動するガタつきが残っています(涙)

↑7枚の絞り羽根も本当にちっちゃいので、そもそもセットする時からして大変でしたが、無事に組み込みが終わり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「多少歪に閉じる絞り羽根が1枚居る」ので、ご覧のようなカタチに閉じていきます(涙)・・プレッシングされているキーの問題なので (垂直状態を維持していない) 下手に垂直に戻そうと処置すると脱落の懸念が高いので触れません(涙)

この点も申し訳ございません。「減額対象」としてご検討をお願い申し上げます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、全域に渡り完璧に均一なトルクで「普通」人により「軽め」のトルク感で仕上げてあります。特にこのモデルのピントのピーク/山が「まだかまだかと不明瞭」なので、本来なら多少重めのほうが良いのかも知れませんが、何しろアルミ合金材で造られているロシアンレンズなので(笑)、当初バラす前のスカスカ感とズリズリと擦れる感触の違和感にまで想いを馳せて「素晴らしい気持ち良いトルク感」に仕上げてあります(笑)

ピント合わせの際は掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピントのピーク/山の前後微動が適います(涙)・・はい、気持ちいい~です!(笑)

絞り環操作だけは何しろ内側に入り込んでいる環/リング/輪っかなので、相応に操作し辛さが残るのは致し方ありませんが、相応に軽めに仕上げてあるので「指の爪で引っ掛けて操作できるトルク」にしてあります(笑)

・・総じて大変良い操作性として完成の域に到達していると思います(笑)

↑「距離計連動ヘリコイド」の設定は、当初バラす前の位置から適切な無限遠位置まで追い込んで組み上げていますが、当時のライカカメラやレンジファインダーカメラなどを使って確認できていません (当方にはライカカメラが無いので確認環境がありません/当時のレンジファインダーカメラなどを使っても視認できないので確認できません)。あくまでも今ドキのデジタル一眼カメラ/ミラーレス一眼カメラ向けにマウントアダプタ経由装着してご使用頂くことを前提としています (距離計連動ヘリコイドに纏わる無限遠位置の問題などクレームとして対応できません)。

光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

なお、今回のオーバーホール作業でこのモデルの難しさに、ホトホト懲り
まくったので「今回の扱いが最初で最後」にしたいと思います・・。
申し訳ございません。

とても当方の低い技術スキルでは対処できないので、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様宛に整備をご依頼下さいませ。

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回してせって低絞り値「f8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f11」で撮りました。

↑f値は「f16」に上がっていますが、もう既に絞り羽根がだいぶ閉じてきているので「回折現象」の影響が現れ始めていて、焦点移動も起きているのが分かります。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。このたびのオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。また機会がありましたら是非宜しくお願い致します。