◎ mamiya (マミヤ光機) MAMIYA-SEKOR C 80mm/f1.9 N《後期型》(M645)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、国産は
マミヤ光機製標準レンズ・・・・、
MAMIYA-SEKOR C 80mm/f1.9 N《後期型》(M645)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を
始めた13年前からの累計で、当時のマミヤ光機製標準レンズ「80mm/f1.9」の括りで
捉えても初めての扱いです。

そもそも極度の『カメラ音痴』なので、中判カメラも中判向けオールドレンズの事も疎く、
恥ずかしい限りです(汗)・・それでもこのような機会に恵まれ、オーバーホール/修理ご依頼
を頂けるので本当に感謝しています。

・・ありがとう御座います!

 

  ●               

1975年に世界初として発売された6x4.5セミ判の中判一眼
(レフ) フィルムカメラ「Mamiya M645」向けの標準レンズが、今回扱ったMAMIYA-SEKOR C 80mm/f1.9 N《後期型》(M645)』ですが「前期型」が存在します (右写真がその前期型モデル)。

元々は1940年に現在の東京都文京区に創業したマミヤ光機製作所で、戦後すぐの1946年にレンズ溶融解設備を整えた世田谷工場を新設・・後の1950年に共に法人化され「マミヤ光機(株)」と「世田谷光機(株)」として
います。

1960年に世田谷光機を吸収合併し東京工場とし、さらに1992年(株)オリムピックが
マミヤ光機を吸収合併した後、翌年にマミヤ・オーピー(株)と変更しています。2000年に
釣具事業から撤退後、同様2006年に光学事業からも撤退しています。

ちなみに1985年に発売された「Mamiya M645 SUPER」登場のタイミングで、右写真のようにオプション交換レンズ群の設計変更を行い、モデル銘に「」を付随させています。
(右写真の装着標準レンズはMAMIYA-SEKOR C 80mm/f2.8 N)

【 モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元値の要素を示しています。
1975年発売前期型
光学系:6群7枚拡張ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:6枚
フィルター枠径:⌀ 67㎜
筐体外装:金属製/絞り環のみ樹脂製
飾り環:距離環の縁に有り

1985年発売後期型
光学系:6群7枚拡張ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:6枚
フィルター枠径:⌀ 67㎜
筐体外装:金属製/絞り環のみ樹脂製
飾り環:距離環の縁に無し

上記モデルバリエーションについては、特にネット上の解説サイトにも案内がありません(泣)

当方がこのようにこのブログで解説を試みると「公然と平気で嘘を拡散し続けている」と某有名処サイトのコメント欄で誹謗中傷されるので、今回は一眼 (レフ) フィルムカメラの取扱説明書から探っています。

↑上記写真は、左側が1975年発売の一眼 (レフ) フィルムカメラ「Mamiya M645」取扱
説明書からの抜粋になり、一方右側の写真が1985年発売「Mamiya M645 SUPER」取扱説明書からの抜粋です。

すると1975年時点では距離環の縁に銀枠飾り環を有するオプション交換レンズ群にて展開していたのが分かりますし、一方1985年時点ではその銀枠飾り環が距離環の縁から消えています。

さらによ~く観察すると、例えば「前期型」の焦点距離表記は「レンズ銘板も絞り環側も共に筆記体の㎜表記刻印」であるのに対し「後期型」はその筆記体から丸ゴシック体へと変わっていると同時に、距離環のラバー製ローレット (滑り止め) の凹凸意匠も変更しています。

但し、当初より筐体外装のほとんどのパーツを金属製で設計していながら、どうしてなのか
その理由は不明ですが「絞り環だけは樹脂製の設計」を採っています(汗)

これは市場流通品の掲載写真をチェックして、金属製筐体外装パーツと樹脂製絞り環との経年に於ける擦りキズの付き方が異なる点を根拠として「前期型も樹脂製絞り環を採用」と判定しています (今までに扱い無し/樹脂製は削れても白っぽくアルミ合金材の地が露出しないから)。

  ●               







↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端から順に、被写体のバックに写る円形ボケのカタチや輪郭、或いは乱れ方をチェックしています。イメージサークルとして考えると、焦点距離80㎜は中判サイズでは標準レンズ域のモデルにあたりますが、35㎜判換算すると129㎜になり中望遠レンズ域に相当します。

しかし円形ボケの表出レベルをチェックすると、意外にも明確な輪郭を遺さずに滲み始めて
しまう印象が残ります。

二段目
さらに円形ボケが滲んで溶けていき、合わせてその際、次第に収差の影響が増大して乱れて
いく様をチェックしています。最後は右端の如くトロトロに溶けてしまいますが、そこに
到達するまでの滲み方は、少々クセが強く現れる印象です (僅かに二線ボケ傾向か?)。

三段目
この段では中判サイズの最大のメリットたるイメージサークルの広さを活用した、ポートレートレンズとしての写り具合を確認しています。赤色の表現性も色飽和ギリギリの所で耐え凌いでいるように見え、さすがだと感じますが、一方で右端写真のように濃紺のスーツになると
意外にも早めにストンと黒潰れしていく印象が残ります(汗)

四段目
植物の葉っぱの緑色と共に花の発色性についてチェックしています。たまたまデジタル一眼レフカメラ/ミラーレス一眼レフカメラのボディがCanonEOS 5DmarkIIの撮影写真でまとまってしまいましたが(笑)、いずれも大変自然な緑色の表現性で葉っぱが写っており、好感が持てます。

そしてやはり赤色の表現性は色飽和までの耐性が強く、色飽和せずにシッカリと表現できて
いますが、どうもこれら植物の実写を観ていても、何かしっくり来ません(汗)

五段目
この段では被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さをチェックしています。光量が多い分、しっかり表現できているようですが、やはり前段の植物の実写同様に何か足りないような印象が残ってしまいます(汗)

陶器の質感表現能力や金属質、或いは人肌表現に動物毛などなど・・どれももう一つ何かが足りないような気持ちが大きいです(泣)

六段目
ここでは左側2枚で街中のスナップ撮影をチェックしています。さすが情報量が多く緻密感も残しているのですが、右側2枚の写真を見ると、パースペクティブの面では少々樽型に歪む印象が拭えません(汗)

七段目
最後この段では光源を含む写真や逆光耐性について確認しています。ここで何だかこのモデルの写りに一つの区切りをつけられたような気持ちがします。やはり黒つぶれが早めに訪れるようで、ストンと堕ち込んでしまいます(涙) 合わせてその直前の中間調で階調が残せていないので、突然黒潰れしている印象がより濃く増大しているように感じました。その印象は、残念
ながら白黒写真でも引きずるので、暗部への耐性がもう少し欲しいところです(涙)

光学系は6群7枚の贅沢な光学設計で拡張ダブルガウス型構成です。「前期型」の扱いが今までに無いので、右構成図は1975年に登場した「Mamiya M645」取扱説明書の掲載構成図から当方の手によりトレースしています。

一方右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の
清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い、逐一全ての光学
硝子レンズを計測したトレース図です。

すると特に光学系第2群の凹メニスカスレンズについて、前玉側方向の曲り率がかなり変わっていました(汗) 同様、光学系第4群の貼り合わせレンズも曲り率かだいぶ違うように感じますから、もしかしたらこの「後期型」登場の
タイミングで、光学系を再設計しているのかもしれませんが、仕様上の変更は無いので確かなところは分かりません。

ちなみにパッと見でネット上の掲載構成図も含め「前期型/後期型」の別なく、光学系第一群前玉が「凸平レンズ」に見えてしまいますが、実は「前期型」もちゃんと拡大していくと裏面側が本当に平坦に近い曲り率しか無い「凸メニスカスレンズ」なのが判明します。さらに今回扱った「後期型」も同様で前玉は「凸メニスカスレンズ」でした (裏面は平坦ではなかった)。

これら実写の描写性の印象から、すぐにパッと頭に閃いたのは、旧東ドイツはMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズに観た共通項的な描写性の印象「生々しさのある立体感を感じない」でした(涙) Meyer-Optik Görlitz製モデルの中で、唯一「Primoplan 58mm/f1.9 」だけは、立体感を感じる写りを植物の写真を観ても感じ取れましたが、その他の多くのモデルは
残念ながら平面的でノッペリした印象が強く残っています (当方の印象です)。

但しMeyer-Optik Görlitz製モデルの多くには、逆に共通項的に真円の大変美しいシャボン玉ボケ表出が適う光学設計を感じ取れるので、それはいまだに大きな魅力になっています。

個人的な好みから言えば、やはり同じ中判サイズ (セミ判) としても、装着して使うオールドレンズにはCarl Zeiss製CONTAX 645向け標準レンズたる「CONTAX Planar 80mm/f2 T*」のほうが・・と思ったりしますが、お値段がなかなかです(笑) ならば、そこはやはり王道狙いで、同じくCarl Zeiss製35㎜判オールドレンズたる「CONTAREX Sonnar 85mm/f2」辺りのほうが、その生艶めかしいまでにリアルさが伝わる写りに、どうしても惚れ込んでいます。
(あくまでもカメラ音痴写真スキル皆無或いは光学知識皆無な当方の嗜好です)(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回初めて扱いましたが、内部構造は確かに初期の頃のMIRANDA製オールドレンズやSoligor銘モデルに共通項的に見られる内部構造の設計概念を確認できます。

但し特にSoligor銘モデルなどは、製造番号先頭1桁~2桁が暗号に割り当てられていて、製造元の光学メーカーを表しているようで、必ずしも同じ/近似した構造設計を確認できません。

今回の個体のバラし作業時に、心底懲りてしまったのは、過去メンテナンス時に塗布されていた「黒色の固着剤」の執拗さで、特に光学系を取り出す際に何回も「加熱処置」を行うハメに陥り(泣)、大変な思いをしてしまいました(涙)

・・と言うのも、完全解体してみて「やはり予測したとおりだったか?!」と本当に安堵しましたが、実は当初バラす前の確認時に光学系内を覗き込んで、絞り羽根の動きをチェックしていた時に「???」と感じた事柄がありました・・それは「絞り羽根の周囲に視認できる円形状のパーツ表面材が???」だったのです(汗)

パッと見で「金属材に見られる材質の質感を見い出せなかった」次第で、要は「樹脂製パーツが絞りユニットに使われているかも知れない!」との憶測が突然現れました(怖)

もしも仮に、本当に樹脂製パーツとして環/リング/輪っかが絞りユニットに使われているなら光学系の格納筒「前群格納筒後群格納筒」の両方が全く外せないからと「加熱処置」を執り続けると「樹脂製パーツが溶けてしまう」からです(怖)

しかし、その一方で光学系が取り出せなければ絞りユニットもバラせませんし、もっと言えば今回のモデルの扱いが今までに無いので、バラしていく手順が掴めません(汗)

逆に言うなら、今までに扱いがあるモデルなら解体手順が掴めるので、内部のパーツを壊してしまう因果に至る恐れがありませんし(怖)、もしも仮に樹脂製パーツとの懸念が高くなるなら「逆手順で解体していく手法が適う場合もある (必ずしも逆手順で全てのオールドレンズがバラせるとは限りません)」ものの、初めての扱いではそれすら期待できません(泣)

従って今回は本当に怖くて仕方ありませんでしたが、恐る恐る何回にも分けて「加熱処置」を執り続け、何と「2時間半の時間」をかけて光学系前群/後群格納筒をそれぞれ取り外すことができました (珍しい回数ですが5回も加熱処置しています)(涙)

単に加熱するだけでは全く歯が立たなかったので、溶剤を注入しつつ光学系前群格納筒と後群格納筒を回そうと試みますが、下手に多量の溶剤を注入しすぎると「光学硝子レンズを急激に冷やしている話」になり兼ねず、本当に怖いったらありゃしません・・つまり「樹脂製パーツを溶かしてしまう恐怖感」にプラスして「光学硝子材の破壊」の恐怖とのバトルを2時間半も続けた次第です(怖)

・・さすがに懲りました!(涙)

そして完全解体してみたところ、光学系前群格納筒と後群格納筒のネジ山は全周に渡り執拗に「黒色の固着剤」が塗布されているものの、その一方で絞りユニット内の構成パーツは「一般的な固着剤」でこの色合いのタイプが塗られていたので、絞りユニットの前後に光学レンズの格納筒が入るとなれば「過去メンテナンス時にワザと故意に黒色の固着剤を注入していた」としか考えられません。

もしも光学系前群格納筒と後群格納筒の両方を外さずとも、その中間に挟まれている絞りユニットだけを取り外せるのなら、そもそもの製産時点に「黒色の固着剤」が注入されていたとも考える必要がありますが、そのような設計にはなっていません (必ず光学系前後群を外す必要がある)。

そこから過去メンテナンス時に敢えて「黒色の固着剤」を使って完全固着させていた事実が浮かび上がりました(涙)・・もっと言えば、フィルター枠まで同じ固着剤を使っていたので、とても解体できる状況ではありませんでした!(泣)

と言うのも、このモデルの設計は世田谷光機のモデルに採用されている構造設計を採っていたので、距離環を外すにも「鏡筒を抜くのが大前提」だからです(泣)・・つまりフィルター枠は
外れない
距離環も抜けない、当然ながら鏡筒は取り出せず光学系前群も後群も格納筒が
回らない
・・となれば、いったい次に何処が解体できるのか???と言う話です(笑)

・・せめてマウント部をバラしただけで先に進めなくなります(涙)

リアルな現実の話として、要は内部構造を一切知らないのに「逆手順」でマウント側方向からバラしてみたワケですが(笑)、鏡筒側の塊を取り出せたものの「フィルター枠距離環鏡筒光学系前後群」がまるごとゴロッとハズれずに残っただけで・・次の解体作業に進めない
状況に陥った次第です(汗)

・・単にマウント部の爪と制御機構部をバラしただけの話で終わった(涙)

ワケで、そこから2時間半の「加熱処置」と言う、まさにホラ~映画以上の恐怖感とのバトルが始まった次第です(笑)・・まるでエクソシストのバトルのように怖かったです(笑)

↑マジッで恨めしい写真ですが(笑)、ようやくバラせた・・絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。ご覧のとおり、鏡筒外壁はヘリコイドオス側のネジ山切削が施されています。
(アルミ合金材の削り出しパーツです)

↑上の写真は、光学系前群格納筒と後群格納筒の中間位置にセットされる「絞りユニットの
構成パーツ
」を並べて撮っています。

手前左端から順に「制御環位置決め環開閉環」になり、後列に移って同様左端から順に「C型環締付け環格納環」ですが、この他に当然ながら絞り羽根6枚があります(笑)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑取り外した絞りユニットの各構成パーツを、当方の手により「磨き研磨」を施してから組み上げた絞りユニットです・・上の写真は撮影方向として、後玉側方向から撮影している向きで撮っています。

開閉アーム」には引張式スプリングが付随していて「常に絞り羽根を閉じるチカラが及んでいる」状況なのが分かります。また「制御アーム」が回ることで、上の写真左側に位置する「カム」の金属棒が突き当たる場所が変化し、それに従って「絞り羽根の開閉角度が決まる
原理
」なのが歴然ですね(笑)

制御アーム」が垂直状に突出している「制御環」の途中には「なだらかなカーブ」が備わり
絞り羽根の側に向かって坂の麓部分が「最小絞り値側」を意味し、反対側の坂を上り詰めた
頂上部分が「開放側」にあたり、その位置で「カムの金属棒」が突き当たる事で、絞り羽根が閉じる角度が決まります。

例えば、この当時のオールドレンズの開発設計/製造メーカーに有名処の富岡光学がありますが
富岡光学製オールドレンズの多くのモデルで採用している同じ概念たる「なだらかなカーブ」には、今回のモデルの世田谷光機による設計概念と大きく異なり「開放時のロック機構を備えていない」ので、上の写真で言う処の「開放時の坂を登りきった箇所にある円形状の凹み」を用意する考え方が、当時の富岡光学製オールドレンズには一切顕在しません。

当時の富岡光学製オールドレンズに実装している絞りユニットの制御機構に備わる「なだらかなカーブ」は、その坂を登りきった頂上部分で「凹みではなく逆に板金をプレッシングさせて突出させる方式の設計概念」を採っていたので、真逆の手法ですね(笑)

このような設計概念を根拠にした考え方を主体的に考察していく手法は、以前取材した金属加工会社の社長さんからご教授頂き、自社の機械設備含め、社内設計陣の概念に沿って製品開発するのが自然な成り行きと教えて頂きました・・社長さん、ありがとう御座いました (その節は大変お世話になりました)!

また、当然ながらこの「制御アーム」を掴んで離さないのが「絞り環」なのは歴然ですね(笑)

逆に「開閉アーム」を操作する機構部が別に存在し、フィルムカメラ側ボディからその操作が行われることで自動絞り方式で撮影できている仕組みなのも理解できると思います(笑)

ここでポイントになるのは「いったい何処で絞り羽根の開閉角度の微調整を行っているのか
???
」であり、合わせてこれら後玉側方向に突出している垂直状の板状パーツ「開閉アーム制御アーム」を互いに絞り環やマウント側制御機構部がガシッと掴んだままに「ヘリコイドのオスメスが回転することで鏡筒の繰り出し/収納が実現できる設計」なのも最大の要素になります。

・・何を言いたいのか???(笑)

要は、皆さんの多くの方々が、ヘリコイドを回す時のトルクを決めているのは「塗布するヘリコイド・グリースの粘性である」と信じてやまないものの(笑)、実はこれら多くの部位からのチカラが影響して、初めて距離環を回す時のトルクが決まってくるのがマニュアルフォーカスのオールドレンズの宿命なのです(笑)

従って今回の個体も同じでしたが、過去メンテナンス時に塗布されていた「白色系グリース」の性質のせいで、少々重めの印象のトルクに堕ちていましたが(涙)、それらにプラスしてこれらの部位からのチカラの影響まで勘案して組み上げていく必要があります。

そうしないと「白色系グリースに頼るだけ」では、おそらく1年~遅くても5年ほどで距離環を回すトルクは徐々に重く変質してくると推測できます(泣)

↑本当に恨めしい写真が登場しました!(笑)・・赤色矢印で指し示していますが「樹脂製パーツたる遮光環 (リング/輪っか)」です(涙)

当初バラす際の話ですが、もしもちゃんと「観察と考察」できていないままに、いい調子になって「加熱処置」を続けていれば、せっかく光学系前群格納筒と後群格納筒を外せたものの「この樹脂製遮光環が溶けてしまう」結末に至るのは歴然です(怖)

遮光環」と呼称しましたが、この環/リング/輪っかの役目は、絞りユニットに格納された絞り羽根を上方向から被さって脱落を防ぐ「抑えの役割」も兼ねていながら、光学系前群からの反射光に対する「迷光処理の問題から敢えてこの色合いで着色した樹脂材による成形として
仕上げられた設計
」なのが容易に推測できます (何故なら樹脂材の色合いは自在だから/つまりメクラの役目を兼ねたパーツ)。

すると仮に溶けてしまったらどのような問題が起きるのかと言えば・・樹脂製パーツの平坦性が失われる (つまり変形する)・・ので、必然的に絞り羽根開閉時に大きく影響を受けて「絞り羽根開閉異常」が発生するか、上手くいっても「開口部のカタチが歪になる」のは容易に想像できます(怖)

例えば開放時に絞り羽根が顔出ししてしまい、完全開放しない場合などもこの樹脂製パーツの変形で起因する因果関係に至ります(涙)

当方のオーバーホールについて「解体するのは上手い」などと誹謗中傷を受けていますが(笑)、実はそのような事柄まで「ちゃんと分かっていてバラしている」ワケで、とても解体するのが上手いだけでは、適切に組み上げられる保証は一切ありません (ドシロウト考えに限ってそういう思考回路に至る)(笑)

当方が一番最初の完全解体の工程で必ず考えているのは「どの部位との連携、或いはチカラの伝達が行われる設計なのか?」或いは「その時の伝達/強度レベルはどの程度必要なのか?」だったりしますから(笑)、そのバラしている箇所の構成パーツ組立手順や固定位置などを記憶したり、書き留めたりする必要が一切ありません(笑)・・何故なら、それら構成パーツや部品/ネジ類を見れば自ずと固定位置も使い方も何もかも明白だから記録する必要がないのです・・むしろ重要なのは「どこの部位と連携させている設計概念なのか???」しかありませんね。

従って、このブログのオーバーホール工程の解説を読んで、自分でバラしている人達も居るようですが(笑)、はたしてちゃんと組み上げられているのか否かは、また「???」な話だったりしますね(笑)

↑完成した絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところで、前玉側方向からの撮影になります。

↑この状態で再びひっくり返して、今度は後玉側方向から撮っています。するとちゃんと「開閉アーム」に「制御アーム」が飛び出ていて操作できるようになっています。さらに鏡筒の外壁に用意されているヘリコイドオス側は、その途中両サイドに「直進キーガイド」の溝が刻まれています。

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台になりますが、そもそも鏡筒の繰り出し量/収納量が長大なので、ご覧のように深さのある基台です。今回扱った個体が「後期型」のモデル
バリエーションなので「80㎜」刻印の「」が丸ゴシック体なのが分かります(笑)

↑無限遠位置の当たりをつけた場所までヘリコイドメス側 (赤色矢印) をネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑同様、やはり無限遠位置の当たりをつけた正しいポジションでヘリコイドオス側のネジ山をネジ込みます。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ません (合焦しません)。再びバラしてここまで戻るハメに陥ります(笑)

↑このまま再びひっくり返して後玉側方向から撮影しています。基台の両サイドに「直進キー」が写っています。この「直進キー」の締め付け固定にもちゃんといろいろな要素がポイントとして顕在しますが、それについて解説しているネット上サイトはさすがにありませんね(笑)
・・単に締付ネジで締め付け固定するだけでは適切なトルク管理が適いません(笑) それはちゃんと「観察と考察」ができていれば、誰でも理解できる話です(笑)

基台の側面には均等に刻まれている切削が備わり「絞り値キー」の役目です・・ここにベアリングがカチカチとハマるので、絞り環を回した時にクリック感が実現できています(笑)・・ポイントは「半段ずつのクリック感」で設計されている絞り値なので、自ずとその際の「絞り羽根の開閉角度の微調整はどうなのか???」が適切に仕上げられていなければ、当然ながら絞り環刻印絞り値との絞り羽根の綴じ方に整合性が現れません (当たり前の話です)(笑)

そのような細かい事柄まで神経を遣いつつも「観察と考察」を経て「原理原則」に則れば、自ずと「本来在るべき姿」として、できるだけ製産時点に近似した仕上がりで組み上げが適うと言うものです(笑)

↑ベアリング+スプリングを組み込んでから「樹脂製の絞り環」をセットしたところです。この写真を見れば、他の部位の構成パーツが金属材で造られている中、絞り環だけ材質感が違うと理解できると思います(笑)

↑マウント部の写真ですが、セットされていた構成パーツを取り外して当方の手で「磨き研磨」が終わった状態を撮っています。途中にシルバーに削れている箇所がありますが、そこに「A/M切替スイッチのベアリングがセットされる」ので、カチカチと操作しているうちに経年で削れているのが分かります (つまり想定内の設計と言う話)。

↑実際に取り外していた「A/M切替スイッチ」もベアリングを組み込んで仕上げていますが、ご覧のとおり「スプリングでクリック感のカチカチをやっておらず板バネが使われている」のが歴然です・・しかしそのクリック感の強さまでは、設計時点での配慮が成されていません。(つまり微調整できないと言う意味)

こういう部分で組み上げが完了した後に、ご依頼者様の手に戻り、ご依頼者様から何某かのお問い合わせを頂いた時、その内容が微調整できる内容なのか否かが明確になるので、当方のオーバーホール/修理作業では「必ず逐一全ての部位についてその現象と結果の根拠を100%
説明できます
」と述べている次第です(笑)

・・その裏を保証しているのが「観察と考察」であり「原理原則」でもありますね(笑)

↑マウント部をセットしたところです。この部位がフィルムカメラボディ側との連携機構であり、最終的に絞りユニット内の「開閉アームを操作している部位」でもありますが、組み込みに際し少々面倒くさい微調整も介在しています(汗)・・逆に指摘するなら、この当時の多くのオールドレンズで「絞り羽根が常に閉じるチカラを及ぼす」バネ材と「絞り羽根を常に開くチカラを及ぼす」バネ材の2つのバネ材が必ず介在するのが「原理原則」ですが、多くのモデルでそれらバネ材は「捻りバネとスプリングの組み合わせ」だったりするものの、今回のモデルは「スプリングだけしか介在していない」点も、実は組み上げていく際の大きなポイントに
なります。

・・何故なら、その概念で絞り羽根の開閉角度が変わるから(泣)

ですね(笑) 従って、例えば仮に今回の個体で当初バラす前の時点で既に「絞り羽根の開閉異常」が発生していれば、その疑うべき部位の中に、この制御機構部も含まれてくるワケです(笑)

原理原則」とはそう言う話なので、現実に起きている現象/事象から逆に辿っていくことが適い、その際に重要度が高いのが「各部位の設計概念」であり、それらをちゃんと「観察と考察」できていれば「本来こう動くべきなのに?」とか「連携のタイミング/箇所が違う?」或いは「チカラの伝達レベルが違う?」など、様々な与件が現実に顕になるから「単にそれを一つずつ潰して改善させていくだけで本来在るべき姿に落ち着く」だけの話ですね (何ひとつ難しい事はヤッていない!)(笑)

・・だからこそ、当方の技術スキルは相当低いですョと何度も述べています!(笑)

オーバーホール/修理の作業を施すのに際し、何か複雑で難しい処置を必ず執るのなら「自らをプロと自称できる」或いは「職人技」と褒め称えることが適うのでしょうが、当方は今までの13年間ひたすらに独学だけなので(笑)、そもそもプロに師事して伝統技術の伝授など受けていません(汗)

さらに言うなら、前述のとおり一つずつの課題を潰して改善しているだけの工程しか経ていないので(笑)、そこに何一つハイレベルな技術スキルが介在していません(恥)

従って巷で「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキ/整備者崩れとのご指摘は、全く以て的を射ていて適切な表現と言えます(汗) 実際、リアルな現実として、13年間も少しでもマニアに近づきたいと頑張ったのに、結果的にこのような為体な始末なので(恥)・・なんとも恥ずかしい身の上としか言いようがありませんね(笑)

↑最後にマウントの爪と光学系前後群をセットして、この後は無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。今回初めて扱いましたが、ネット上で数多く「造りが良い」との感想でアナウンスされているものの、まさか絞り環が樹脂製だとは予測しておらず、さらに一番怖かったのは「何よりも絞りユニット内の樹脂製パーツ」であり、おそらく光学系内を覗き込んだ際の質感の類似性から「前期型も同じ設計概念」との推測に至らざるを得ません。

・・ちょっと怖すぎて次に扱う気持ちが湧きません!(涙)

従って、残念ながら中判向けのこのモデルは「前期型/後期型」の別なく、今回の扱いを最後にするつもりです(涙)

今このブログをご覧の皆様も、やはり当方のような何処の馬の骨だか分からない処に依頼せずに(笑)、ちゃんと高い技術スキルを有するプロのカメラ店様や修理専門会社様宛に是非とも
整備をご依頼下さいませ・・当方は技術スキルが相当低いのでご辞退するしかありません(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

当初バラす前の確認時点で、少々光学系内の塵/埃/微細な点キズが多めの印象でしたが、現実にバラして清掃したものの、除去できなかった微細な点キズがほとんど残っており、半減程度でしょうか???(涙)・・申し訳ございません!

・・パッと見で微細な塵/埃の類に見えますが微細な点キズです (清掃で除去できず)。

↑後群側もスカッとクリアであり、極薄いクモリすら皆無です。光にかざして反射させる角度により、ご覧のような大変美しいグリーン色の光彩を放つます(涙)

↑当初のバラす前のチェック時点と何ら変わりありませんが、6枚の絞り羽根が閉じる際は「完璧な正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、いつもと同じ当方独自の「ヌメヌメっとしたシットリ感漂うトルク感」で、全域に渡り完璧に均一なトルクを維持しつつ、このモデルのピントのピーク/山の特徴である「突然合焦する」挙動と共に「アッと言う間にピーク/山を超えてしまう」状況を勘案して「軽めのトルク感」に仕上げていますが、前述のとおり相応に長大な長さのヘリコイドネジ山なので、それなりにシッカリした印象のトルク感です。

↑お借りできた付属品全てをセットしたところです・・ワザワザ当方の為に専用マウントアダプタまでご用意頂き、本当にいつもながらそのお心遣いに感謝感激しています・・ありがとう
御座います!(涙)

↑上の写真は、今回の付属品の一つだったKenko製特殊効果フィルターブラックミストNo.5の裏側を撮影していますが、赤色矢印で指し示しているようにフィルターの光学ガラスを固定する「鋼ワイヤー」が変形していました。

Kenkoのホームページを調べると、これらの製品は「日本製」を謳っていますが、はたしてこの変形は「鋼の反発力を焼入れしてある」ハズなので、変形を正すには強制的に曲げるしか
ありません(汗)

下手に処置したくないので、そのまま溝部分に戻していますが、何となく光学ガラスにガタ
つきが生じているかのような振動を指が感じます(汗)

そもそもKenko製のフィルター枠類は、どれも「日本製」を謳いますが、そのワリに当然ながら未開封の新品を開封した際「微細な塵/埃が少々多めに付着している」印象が強いです(泣)

かと言って、それこそ1万円に近い、何千円もするような光学フィルターを手に入れて調べている話ではないので、総ての製品が該当する話ではありませんが、そうは言っても「日本製」でこの微細な塵/埃の多さには毎回閉口しています(泣)

例えば同じフィルターメーカーでもmarumi製のほうがまだ微細な塵/埃が少なめの印象ですし、今回のような鋼が変形したまま使われている製品にも出くわした記憶がありません(泣)

ワザと故意に鋼ワイヤーには2箇所に捻りを入れてある設計なのが見ると分かるのですが、その捻りの具合が適切ではない為に、このように溝から浮いてしまうのではないかとみています (製造現場を観ているワケではないので不明ですが)(泣)

以前、複数の同一径/同型製品フィルターを入手した際に、国内のKenkoからの配送ながらも、届いた製品はまとめてダンボールに入っており、そのダンボールに「MADE IN CHAINA」と印刷されている何かの番号のシールが貼られていました(笑)

もちろん未開封状態でしたが、内部の製品フィルターを念の為に全てチェックすると「確かに個別の印刷は日本製」を謳っています(笑)・・はたして段ボール箱のシールの製造国表記とは、いったい何なのでしょぅか「???」(笑)

今ドキの国際貿易管理法でも昔と同様に「製造国表記は義務」のハズなので(笑)、はたして
謎めいた「???」だったりします(笑)

もっと言えば、前述のmarumi製フィルター製品も、ホームページを観ると「信頼の日本製」を謳っており、その製造には徹底的なこだわりを持つように記載があるものの、はたしてその造っている人達が日本人ではない写真を載せているのは「いったい何処の国の工場なのかしら???」と、掲載されている文面の内容と違うようにも思ったりします(笑)

・・まぁ~当方だけの感想ではありますが(笑)

ちなみに「MADE IN JAPAN」と「ASSEMBLED IN JAPAN」とは当然ながら違う意味合いなので、国際貿易管理法のスタンスから捉えれば、後者表記は存在せず、あくまでも製造国表記のみしか認められていないと思いますが・・どうなのでしょうか??? 何だか、それこそ今ドキの「日本産しじみ」の話の如く(笑)、北朝鮮産も国内の浜にバラ撒いて数週間経てば「日本産」を謳っているが如く (昔あった話) ですが、何を信用すれば良いのか難しいですね (まるで自分の事を話しているような錯覚です)(笑)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離70cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

なお、同じ開放f値の設定によるオーバーホール/修理完了後の実写が2枚掲載されているのは、1枚目が素のままのオールドレンズによる実写で、2枚目が付属品のKenko製特殊効果フィルターブラックミストNo.5を装着した状態での実写です (開放f値の設定なのは変わらず)。

↑絞り環を回して設定絞り値を「f2.8」にセットして撮影しています・・同様2枚目はブラックミスト装着状態での実写です。

↑さらに回してf値「f4」での撮影です。

↑f値は「f5.6」に上がりました。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「f11」です。

↑f値は「f16」になりました。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況なので、極僅かですが「回折現象」の影響を感じ取れます。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました!(涙) 承ったオールドレンズ達4本の全ての作業が終わったので、本日梱包して発送させて頂きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。