◆ CORFIELD (コーフィールド) ENGLAND LUMAX 45mm/f1.9 (silver)《中期型》(L39)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、英国は
CORFIELD社製標準レンズ・・・・、
ENGLAND LUMAX 45mm/f1.9 (silver)《中期型》(L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のCORFIELD社製標準レンズ「45mm/f1.9」の括りだけで捉えると3本目にあたりますが、今回扱った個体「中期型」としては初めての扱いです。

先ず冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜りました事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!

そもそもこのモデルの開発/製造会社「CORFIELD (コーフィールド)」がマイナーな会社なのであまり知名度は高くないですが、近年市場流通品が激減しており、例えば海外オークションの
ebayに出現しても、標準レンズになるとすぐに落札されていく始末です(驚)

当方がこの会社のモデルについて目をつけたのは2017年でしたが、それでもなかなか光学系の状態が良い個体が流通せず、整備している本数はいまだに30本を超えない状況です(泣)

後でちゃんと解説しますが、CORFIELD社製オールドレンズのモデルは大きく二分でき、初期に内製していた頃のモデルと、後期に旧西ドイツはENNA MÜNCHEN (エナ・ミュンヘン) 社に製造委託していた時期とに大別できます。

実際の処、ネット上の解説サイトなどをみると「前期型/後期型」として案内されているタイミングが不正確です・・パッと見の外見だけで、特に筐体外装の意匠として「前期型シルバーモデル、後期型ゼブラ柄」にて区分けしているサイトが非常に多いですが、当方の区分けは全く異なります(笑)

当方は「あくまでも内部構造の設計概念の相違」だけを根拠として、シルバーモデルに限定せず、ゼブラ柄さえも「前期型」と区分けしているモデルがあります・・まさに今回扱うモデルがその良い例で、シルバー鏡胴モデルである以上「前期型」としつつも、その後に登場したゼブラ柄さえも「前期型」と区分けしています (45mm/f1.9の話)。

逆に言うなら、後のENNA MÜNCHEN社に製造委託したタイミングでは「このモデルは後期型が登場しなかった」と判定を下しているので、前期型だけで消滅していったモデルの一つと
捉えています。

↑上の写真は、そのゼブラ柄たるBRITAIN LUMAX 45mm/f1.9 (zebra)《後期型》(L39)」を、以前オーバーホールした際に撮影した工程写真からの転載で、ヘリコイドオス側を撮った写真ですが、解説のとおり「鋼線」をグルっと急勾配で巻いただけの簡素なヘリコイドネジ山と言う設計です (CORFIELD社内製モデル)。

後で今回扱った個体のオーバーホール工程でもご紹介しますが、初期の頃CORFIELD社が内製していたモデルは「全てのモデルがこの鋼線によるヘリコイドネジ山と言う設計概念」だったので、この点を根拠に「前期型 (或いは初期型)」と大別しています・・もちろん後にENNA MÜNCHEN社に製造委託したモデルは、全て一般的なヘリコイドネジ山の設計なので「設計の概念相違は歴然」との判定に至っています(笑)

このような要素が、単に筐体外装の外見上の相違から捉えたモデルバリエーションの区分けとは大きく異なる当方の捉え方ですが、如何せん信用/信頼が皆無な『転売屋/転売ヤー』の輩が述べているに過ぎないので(笑)、ネット上の多くの解説を『正』とされるのが良いでしょう。
(そう明記しないと誹謗中傷メールが着信するので)(笑)

  ●               

1924年に英国はバーミンガム近郊のラシャルで生まれたKenneth George Corfield (ケネス・ジョージ・コーフィールド) 氏は、10歳の時にKodak製ボックス・ブラウニーカメラを手に入れて初めて写真に興味を持ったようです。印画紙や薬品を購入するお金が無いので、自宅の屋根裏の作業部屋で引き伸ばし機を自作し、自ら薬品を配合し、戦時期に製産され期限切れになった政府の余剰印画紙を手に入れて写真現像していたようです。そんな少年の情熱は最後まで尽きる事なく、85歳になるまでロンドンのオフィスで働き続け、2016年1月11日に91歳で永眠されました。

CORFIELD (コーフィールド) 社は、イギリスのグレートブリテン島の中部に位置するバーミンガム近郊のスタッフォードシャー (現ウェスト・ミッドランズ州) Wolverhampton (ウォルバーハンプトン) と言う街で、創業者ケネス・ジョージ・コーフィールド卿によって1948年に創設されたフィルムカメラメーカーです。

創業当初の頃は、フィルムカメラ用アクセサリを開発/製産し「引伸し用露出計ルミメーター」や「距離計テレメーター」などを販売していたようです。

1953年にライカ版サイズ「24x36㎜」を採用し「L39マウント規格」で斬新的な「潜望鏡方式」のミラー機構部を採り入れたレンジファインダーカメラ「periflex I」を発売しました (右写真は第2世代の黒塗り本革貼り仕様のタイプ)。

この当時の初期の頃のモデルではミラー部の降下は押し下げ操作が必要になりシャッターボタン押し込みでも格納されないままでした。

1957年にはフィルムの巻き上げと同時にミラー部が降下し、且つシャッターボタン押し込みと同時に瞬時に格納するよう改良し、布幕フォーカルプレーンシャッター方式を採り、合わせて対物レンズの交換で画角を変更できるファインダーとしてきた「periflex 3」を発売します。

潜望鏡方式」と自ら呼称したミラー部は、こんな感じで垂直状に
そろそろとフィルム印画紙の巻き上げに連動して降りてきます(笑)

シャッターボタン押し下げに合わせ連動して右側に備わるスプリングガイドのバネのチカラを借りて瞬時にミラー部が格納されます。

また翌年の1958年には「periflex 3」の廉価版モデルとしてシャッター速度を1/500秒とし、ファインダーの対物レンズが交換できないモデル「periflex 2」を投入してきます。

 

さらに、フィルム巻き上げをダイアルノブからレバー方式に改変して、スプリット式のスクリーンを実装し、再びシャッター速度を1/1000秒に戻したモデル「periflex 3a」が1959年に登場します。


この後1961年には「periflex Gold Star」及び「INTERPLAN-A」が投入されます (右写真はGold Star (左) にINTERPLAN-A (右))。

ちなみに1959年にアイルランドに会社を移転させますが、その後すぐ1960年にギネスに買収され1961年末には生産を停止してしまいます。

さらに1971年には工場を閉鎖するものの、1980年に入って
から今度は建築用のフィルムカメラ「CORFIELD WA67」を手掛けるなど、フィルムカメラに対する情熱は留まるところを知りませんでした(涙)

合わせてケネス氏は同時期には英国の電話交換システム大手の「STC (Standard Telephones and Cables)」を15年間指揮し、欧州からの大陸間横断海底ケーブル敷設に貢献し、その一方でやはり当時英国最大規模を誇っていた
コンピューター会社「ICL」を買収し、英国に於ける通信ハードウェア輸出額の著しい増大を実現させ、ついに1980年にはそれら英国に於ける貢献が認められ「ナイトの爵位」を拝受しています。

・・その懐の深さと胆力から自然と周囲に人が集い、人脈が構築されていったようです。

【CORFILED社製オールドレンズ】

  • CORFILED内製 (Wray PAT.):RETRO-LUMAR 28mm/f3.5 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):RETRO-LUMAX 35mm/f3.5 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):RETRO-LUMAX 35mm/f2.8 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAX 45mm/f3.5 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAX 45mm/f2.8 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):ENGLAND LUMAX 45mm/f1.9 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAR 50mm/f3.5 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):BRITAIN LUMAX 45mm/f1.9 (zebra)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAR 50mm/f2.8 (zebra)
  • ENNA製 (Wray PAT.):LUMAX 50mm/f1.9 (zebra)
  • ENNA製:RETRO-LUMAX 28mm/f3.5 (zebra)
  • ENNA製:RETRO-LUMAX 35mm/f2.8 (zebra)
  • ENNA製:LUMAX 50mm/f2.8 (zebra)
  • ENNA製:LUMAX 50mm/f2.4 (zebra)
  • ENNA製:LUMAR 95mm/f2.8 (zebra)

・・他にも中望遠〜望遠レンズまで発売していましたが、オールドレンズに関する詳しいことはネットを検索してもあまり出てきません。

上記一覧で「CORFIELD内製」はウルバーハンプトンの自社工場で製産していた事を意味し「シルバー鏡胴に黒色の合皮革を巻いていたtwo-toneのカラーリングになる初期型」モデルを指します (左写真は当時の写真で中央手前の敷地に広がっているのが工場と本社建屋/
Northern Ireland COMMUNITY ARCHIVEより
)。

また「Wray PAT.」は同じく英国はロンドンの「Wray Optical Works (レイ光学製造所)」による特許登録光学設計を指します。後に登場する「ENNA製」は旧西ドイツのENNA MÜNCHEN社によるOEM生産 (製造委託) を意味します。

なお最後期には鏡胴に「MADE IN JAPAN」刻印がある「LUMAXシリーズ」も極短い期間に登場していますが、詳細は不明です。

  ●               





↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
久しぶりなので、再びネット上の実写をチェックしてみました。左端から円形ボケの表出状況を確認しています。光学設計が典型的な4群6枚ダブルガウス型構成なので、円形ボケはなかなか真円の維持が難しく、口径食や収差の影響を受けがちながらも、意外だったのは円形ボケのエッジが明確にちゃんと残せている点でしょうか。

二段目
この段では収差の影響を受けて円形ボケが破綻して収差ボケへと変異する様をピックアップしています。中には周辺域で相当なレベルにグルグルボケが表出している実写もあり、少々極端な印象を受けます。

三段目
この三段目と四段目がこのモデルの大きな魅力で、特に暗部の耐性の高さと素晴らしさは特筆モノです(驚) また白黒写真を観てもカラー成分が本当にキレイに伸び伸びと254階調グレースケールに振り分けられているのが分かりますし、そもそもカラー写真のグラデーション/階調の滑らかさが素晴らしいです。発色性は色付きが良く、鮮やかな印象に好感を持てます。

四段目
ウインドウのガラス質感表現能力や、壁面のグラデーションの素晴らしさ、陰影の生々しさ、影の部分でもちゃんと階調を残せていたり、なかなかの写りです。

五段目
人物写真が無いのでこの左端の1枚だけですが、本来ならもう少しポートレート的な実写も
期待したいところです・・グラデーションが滑らかなので、特に美肌効果ではありませんが
(笑) 人物撮影にも向いていそうです。

ちなみに当方は特にそのような嗜好を持ちませんが、右端の如くゴーストや光輪を誇張的に「如何にもオールドレンズの特徴」の如く謳っているネット上での写真家による解説や、下手すればヤフオク!の転売屋/転売ヤーが居ますが(笑)、そう言うまるで一昔前の「インスタ映え狙い」のような、極端にオールドレンズを脚色する考え方ッて、マジッでどうかと思います・・それは確かに何十年も前に造られていたオールドレンズなので、今ドキのデジタルなレンズと比べれば明らかに収差レベルが酷いのは自明の理であり、合わせて未完成のような描写性能も仕方ない要素ではないかと思います。

それはそれでオールドレンズが好きなユーザーの捉え方次第だと思うので、そこを「如何にもこの写りこそがオールドレンズだ!」的に誇張表現する・・例えば極端にハイキーにだけ仕上げた実写ばかりを載せていたり、まさに光輪/ゴーストばかりを称えるような姿勢は、本当に
どうかしているとしか見えませんねぇ~(笑)

・・オールドレンズに期待するその描写性の嗜好は人それぞれであって然るべきと思います。

シャボン玉ボケあり、円形ボケあり、玉ボケあり、グルグルボケあり・・収差ボケも二線ボケも煩いボケ味だってボケ具合の一つです。ピント面の鋭さ感も、まるで等倍鑑賞しか認めないような言い草で、徹底的に攻撃する掲載主も居り、そういう姿勢ってはたしてどうなのかと、
いつも思います。

当方宛オーバーホール/修理をご依頼頂く方の中にも、現実にそのような状況に「人としての
違和感
」を強く感じられる方も居り (当方も全く以て同感)、はたして自分が大切にしている、
そのオールドレンズが「実は父の背中を追っているが如く思いが詰まっている」モデルだって在るのです・・それを徹底的に写りが悪いだ何だと、あ~だこ~だ描写性能を貶されまくられては「人としてまさに人情としてどうなの???」と思えて仕方ありません!(涙)

良し悪しを評価したい気持ちは分かりますが、それは人それぞれで捉え方の角度だって違うのだから、その点をちゃんと配慮して解説を進めるべきと「非常に強く」思いますね(涙)

光学系は典型的な、それこそまさにオーソドックスとのコトバが当て
ハマるが如く(笑)、4群6枚のダブルガウス型構成で、本当に美しく
後群側がバランス良く小径を成しています。

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを
計測したトレース図です。

【モデルバリエーション】

オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元値の要素を示しています。
前期型
光学系:4群6枚ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:12枚
絞り羽根のキー:折り曲げ式
最小絞り値:f16
筐体外装:シルバー鏡胴
ママウント部:L39 シルバー

中期型
光学系:4群6枚ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:12枚
絞り羽根のキー:折り曲げ式
最小絞り値:f16
筐体外装:シルバー鏡胴
ママウント部:L39 メッキ加工

後期型
光学系:4群5枚ビオター型構成
絞り羽根枚数:10枚
絞り羽根のキー:キープレッシング方式
最小絞り値:f22
筐体外装:ゼブラ柄鏡胴
ママウント部:L39 メッキ加工

↑上のモデルバリエーションで、例えば「前期型中期型」はパッと見で同一のように見えますが、実はママウント部のネジ部がメッキ加工されているのが今回扱った「中期型」の、唯一の外見上から捉えられる違いの要素です (現実には完全解体すると内部構造面でも設計の相違がちゃんと確認できる)。また「後期型」はゼブラ柄モデルに代っているので、冒頭解説のとおりネット上ではENNA MÜNCHEN社製モデルの如く扱われて説明されることも屢々です。しかしバラしてみると「鋼線を急勾配で巻いた方式のヘリコイド」なので、この設計概念は旧西ドイツのENNA MÜNCHEN社製品には一つもありません (つまりCORFIELD社内製と判定するしかありません)(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

完全解体して並べてみると、如何に構成パーツ点数が少ないのかと言う話に尽きますが(汗)、実は「ここまで完全解体できる人がいったいどれだけ居るのか???」みたいな特殊な設計の概念で造られています(涙)

実際、今回扱った個体も過去メンテナンス時にそれに気づかず作業されていた個体だったのが判明しています (メチャクチャ大変だった)(泣)

当初オーバーホール/修理ご依頼時の概算見積メールを送信した際に「どんだけ大変なのか!」を淡々とご依頼者様に述べてしまったのですが (スミマセンでした!)(汗)、まさにそのとおりと言うか、もしかしたらそれ以上に今回扱った個体は大変でした(涙)

と言うのも、当方が基礎疾患者 (慢性の呼吸器疾患/睡眠時無呼吸症候群/血栓体質) なので、
特に肺動脈塞栓症を2回やって倒れている為に「腕を使ったりチカラを入れて何かを思いっきり回したり/押したり/持ち上げたり」すると、途端に過呼吸、酷ければ呼吸困難に陥るので、
本人的にはだいぶ怖いのです(怖)

今回それをやってしまい、呼吸を元に戻す (平常時に戻す) のに40分かかってしまい (横に
なりました
)、ちょっと拙かったなと反省しきりです・・(汗)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。絞り羽根が刺さる丸穴が12個空いていますが、グリーン色の矢印で指し示している箇所に絞り環と連結する為の切り欠き/スリット/開口部が備わります。

今回の個体で絞り環の操作性を極端に悪くしているのがこの切り欠き/スリット/開口部の仕上がりで、ちょうど上の写真でグリーン色の矢印で指し示している箇所が最も酷いですが、切削の後処理/面取加工がちゃんと仕上がっていません(泣)

これは製産時点での処置の話なので、この問題から別の問題点が判明したくらいで(汗)、ちょっと想定外の難問でした(泣)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑上の写真は今回の個体から取り出した絞り羽根12枚のうちの1枚ですが、ひっくり返して裏側を撮影しています (前玉側方向から覗き込んだ時に裏側で見えていない面)・・「位置決めキー」側にあたります。

すると赤色矢印で指し示している箇所に「製産時点で五線の切り込みを入れて反対側に折り
曲げるプレッシング加工
」が施されています・・この加工により反対側方向にご覧のような「羽根状の突出が5枚現れる」ワケで、これをキーの代用とした設計です。

日本国内でも戦後初期の黎明期に多く、この設計のオールドレンズが顕在しますが「日本国内の設計は十字に切り込みを入れて4枚の羽根を反対側に突出させる手法」でした。

別に羽根状に反対側に突出するなら同じだから良いではないかと・・考えるかも知れませんが
違います!(泣)

4枚の羽根状にするか、5枚にするかで「折り曲げている箇所の強度が違う」のと、一番の
問題は「羽根のカタチが鋭角の羽根か緩やかなカタチか違いが現れる」と言う、大きく2点の課題が残ります(泣)

今回のモデルは5枚の羽根なので、そのカタチが緩やかな形状である分、変形に弱くなります(怖)・・この問題は当時のCORFIELD社内製品全てに共通項で残る課題なので、仕方ありま
せん(泣)

↑再びひっくり返して、今度は前玉側方向から光学系内を覗き込んだ時に目に入る面を撮影しました。同様赤色矢印で指し示していますが「やはり製産時点の工程でプレッシングにより
折り曲げただけの開閉キーの代用羽根
」です。

すると上の写真の絞り羽根でも明確に見えていますが(汗)、折り曲げている箇所がキレイな
長方形になっていません (台形っぽいカタチに曲がっている)(泣)

何しろ、絞り羽根の板金の厚みと成分に従うしかないので(泣)、経年劣化進行に伴い変形し
易い問題が憑き纏います(怖)

このように絞り羽根単体/1枚だけでチェックするだけなら「単に適切なカタチに戻せば良いだけの話」ですが、リアルな現実には「絞りユニットに組み込まれて絞り環操作に伴い角度を変えつつ常に駆動する」のがチョ〜ヤバいのです!(怖)

これがどんだけ大変な話なのかをここから解説していきます・・(涙)

↑上の写真は絞りユニット内の構成パーツの一つで「開閉環」と言う、絞り環と連携して実装する絞り羽根の開閉角度を変更する役目の環/リング/輪っかです (アルミ合金製)。

するとご覧のとおり縦方向に短い切り込み/スリットが備わり、そこに「絞り羽根の開閉キーが刺さる」原理ですが、必然的に、このように薄い肉厚の単なる切り込み/スリットなので「刺さっている開閉キーに長さが伴う理由がこれ」ですね(笑)

つまり、各絞り羽根が一斉に角度を変えて閉じたり/開いたりする時、この切り込み/スリット部分を「長方形に折り曲げられている開閉キーがスライドして通り過ぎていく」から、反対側に用意されている「位置決めキー (の5枚の羽根)」を軸にして角度を変えることが適う・・と
言う原理です。

逆に指摘するなら、設定絞り値に従い、開放側~最小絞り値側まで「常に行ったり来たり長方形のカタチをした開閉キーがスライドを続ける」動きを続けるのが原理です。

・・何を言いたいのか???

この薄い肉厚にしてしまった切り込み/スリットの分、スライドして通過していく「開閉キーは変形してしまう懸念との背中合わせ状態」なのが拙いのです!(怖)

経年劣化進行に伴い開閉キーが変形していってしまう因果関係が、まさにこの切り込み/スリットの肉厚の薄さなのです(怖)

↑実際に12枚の絞り羽根を組み込んでから「開閉環」を被せて、絞りユニットを完成させた状態で「現実に絞り環と連携させて回してみる動き」を解説していきます。

上の写真は絞り環の設定が完全開放状態で「f1.9」の時ですが、既にこの時点で12枚の絞り羽根のうち「開閉キーの突出量が個別に違う/一定ではない」のを赤色矢印で指し示しています(泣)・・中には端が既に曲がっているモノもあります。

↑ここで絞り環を回して設定絞り値「f4」まで回したとします。すると12枚の絞り羽根が一斉に「同じチカラ」で周り、閉じているハズなのに、グリーン色の矢印で指し示しているように
ここでも個別に「突出している開閉キーのカタチが変形している」のが視認できます(涙)

↑さらに最小絞り値「f16」まで閉じきってしまった時の状況を撮影しています。するとブルー色の矢印で指し示している個別の絞り羽根は、さらに変形の度合いが変化しているのが分かります。

実は、これらの写真はオーバーホール工程の中で組み込んでいる最中に撮っていますが「絞り環を回す時に途中で重くなって止まってしまう事が起きる」状況の中、もしも停止してしまった時は一旦反対方向に戻してから再び回して絞り羽根の開閉動作を繰り返しています。

つまり回したり、戻したりを繰り返しているワケですが、その際「軸側の位置決めキーとの
関係から開閉キー側が影響を受けて変形していく
」次第です。

つまりここまで3枚の写真を載せて、それぞれの色付け矢印で「開閉キー側のカタチが変形
していく様子
」を示しましたが、裏面側の「位置決めキ側の5枚の羽根の状況」によっても
これら開閉キー側のカタチ変形度合いが都度違ってきます。

従って、上の写真のように絞り環を回して開閉キーを露出させつつも「その時に同時に工具を使って開閉キーの変形をまっすぐに正す作業」を施しながら、再び絞り環操作して各絞り羽根を開いたり閉じたりしてオーバーホール工程を進めていきます。

これを数十回続けていくと「素直にまっすぐにキレイに戻った開閉キーが現れる」(涙) 一方で、逆に何回工具を使ってまっすぐに正しても、絞り環操作に従い再び変形してしまう開閉
キーが明確になってきます。

つまり12枚のうち、凡そ半分ほどまでカタチが変形する開閉キーが減じられてきます。

↑12枚の絞り羽根の中から特に酷い状況に陥っている絞り羽根1枚を取り出して、例として
解説します。

この絞り羽根には「赤マジックで点を打って分かるようにしてある」のですが、赤色矢印で指し示しているように「開閉キー側が変形しきってしまい三角形状に変わっている」次第です。

他にも様々なカタチに変形したり弧を描いていたりとバラバラなので、幾つかの色合いのマジックを用意して点を打って明確にしながら、それら絞り羽根の修復作業を続けていきます(泣)

すると明らかにマジックで点を打った絞り羽根だけがカタチの変形を繰り返すので (合わせて絞り環操作も重くなり停止したりするのを続けている)、それら絞り羽根だけを取り出して、
いったい何処のカタチ変形が拙いのか、影響しているのかをチェックしていきます。

その後に、正しくカタチを戻し整えてから再び組み込んで、絞り環をセットしてまた開閉動作を行い、そのマジックで点を打った絞り羽根が問題なく、カタチを正したまま角度を変えて
いくのかを都度調べていく作業を続けます。

↑ではどうしてこのように開閉キー側の長方形のカタチが崩れてしまうのか???(泣)・・それが赤色矢印で指し示している反対側の「位置決めキー代用の5枚の羽根」です。

ちょうど赤色矢印で指し示している1枚だけが特に大型/大ぶりなのが他の4枚と比べても分かります・・つまり過去メンテナンス時にちゃんとこれら5枚の絞り羽根を「適切なカタチに戻さずに整備してしまった」為に、一部の羽根だけに変形が集中するからこんな話に至ります。

結果、位置決めキー側代用5枚の羽根が適切ではないのに「一方反対側の開閉キー代用のほうが強制的に回され続けてチカラが加えられる」から、絞り環操作しているうちにどんどん変形が進んでしまうのです(泣)

つまりこれら変形が現在進行系で起きているからこそ「絞り環操作した時に重くなって止まっていた」ワケで、実際はさらに各絞り羽根が膨れ上がっている状況でした (だから位置決め
キー側も変形していく
)。

・・おそらく過去メンテナンス時からず〜ッとこの状態だったのだと推察しています(涙)

最終的にひたすらに組み付けては絞り環操作しつつ確認して、カタチを正し、またバラしては犯人を見つけて正す作業を淡々と繰り返しました(笑)・・凡そ2時間かけて、最終的に「問題となる絞り羽根4枚」にまで、マジックの点打ちを減じられてから (つまり他の8枚はカタチが変形しなくなった) いよいよ最終段階として「その4枚についてはもうカタチを正してもすぐにまた変形してしまう」(涙) ので、今度は組み込む順番を変えて、カタチを正した絞り羽根との組み合わせの中でどうなるのかをチェックしていきます。

それは適切なカタチに戻りなめらかに動くように戻った絞り羽根達の中に混じって挟まれれば、否応なくちゃんと動く環境下で変形を抑えられる・・との期待が込められています・・
もっと言うなら、そもそも鏡筒の位置決めキー用の丸穴でさえ、その面取加工が適切なのか
否か保証がありません(泣)

それを滑らかに動くようにと、例えば丸穴を丸ヤスリで削ったりしたら、丸穴の径が大きくなってしまい最悪悪化の要因にもなりかねません(怖)・・従って執るべき行動は「組み込む箇所を変更して馴染ませる」くらいしかできないのです(泣)

さらに1時間経過後・・本当に長かったです(涙) 辛かったです(涙)・・とうとうマジックで点打ちする絞り羽根が無くなり「ついに12枚全ての絞り羽根がカタチの変形を免れ、滑らかに駆動するようになった」次第です(涙)

・・都合3時間かかりましたが、本当にもう放り出したいくらいの気持ちでした!(涙)

どうしてそのような気持ちに至るのかと言えば、問題となっている箇所、原因箇所・・がちゃんと目視できて、確認しながら作業を続けるのなら良いのです。しかし現実は全く原因箇所が不明瞭なままに、ただただひたすらに絞り環操作で重くなって停止しない動き方になるまで
作業を続けるしかできないのです (まるで暗中模索みたいな話)(泣)

↑上の写真は「取り敢えず」適切な角度変更で12枚の絞り羽根が滑らかに開閉動作するように至った「3時間後の絞りユニット」を撮影しています(涙)・・2時間+1時間です!(涙)

そもそも冒頭の解説のとおり「鏡筒の切り欠き/スリット/開口部の切削時に面取加工が粗いまま」なのが大きく影響していて、絞り環操作した時ガリガリ感がだいぶ残っています(泣)

後で出てきますが、おそらく「開閉環と絞り環とを連結させているネジが代替ネジではないか
???
」とみていますが、よく分かりません(汗)・・その影響で削れていき切り欠き/スリット
/開口部の面取加工が粗くなっているのだと推測します (おそらく製産時点は滑らかだったと
思います
)。

・・そのような考察に至った別の根拠もちゃんとあります(泣)

そのような状況なので「取り敢えず」と言う言い回しになってしまいました(泣)・・申し訳
ございません!

絞り環操作はガリガリ感目一杯ですが、途中で重くなって停止してしまう事は起きにくく変わっています。

↑完成した絞り環 (内側に鏡筒が入っています) を立てて撮影しました・・写真上方向が前玉側方向にあたります。

すると例えば赤色矢印の箇所に「焦げ茶色の微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」が
施されています。合わせてブルー色の矢印の箇所は「黒色の微細な凹凸を伴うマットな梨地
メッキ加工
」がやはり施されています。

これらのメッキ加工は冒頭で説明した「前期型のシルバー鏡胴モデル」では製産時点には
処置されておらずシルバーなままでした。従ってこれを根拠として「中期型の特徴/相違点
(製産時点のメッキ加工だから)」と判定を下しています。

・・何故なら、ちゃんと溶剤で拭ってみたがメッキ加工なので一切溶けないから。

それを以てして「製産時点」との判定に至ります (過去メンテナンス時に塗装したなら必ず
溶剤で溶けるから
)。

なお、グリーン色の矢印で指し示しているネジが前述の「絞りユニット内部の開閉環と連結
しているネジ
」なのですが、おそらく代替ネジを使っているのだと推測しています (そのネジ部が当たって削れるのでガリガリ環が残っている)。

何にしても「開閉キーと位置決めキーの羽根」を可能な限り守りたいので、現状抵抗/負荷/摩擦が最も少なく滑らかに戻った時点で「OK」として、このネジのガリガリ感にはこだわらないように決めました (ちゃんといろいろ試して確認済です/現状がこの個体でのベストです)・・申し訳ございません!

↑いよいよ佳境に入っていきます(怖)・・CORFIELD社内製に限定した、この当時でほぼ唯一と指摘しても良いくらいの「大変珍しい鋼線を使ったヘリコイド駆動方式」です。

例えばヘリコイドのネジ山が大型で、大ぶりで急勾配に回していく方式のヘリコイドオスメス設計は、日本国内の旭光学工業製オールドレンズの初期モデルにちゃんと顕在しますが(笑)、
然しさすがに「鋼線を使っているオールドレンズはCORFIELD社内製品以外見た記憶がない」と明言できます(笑)

ご覧のとおり、ヘリコイドメス側に「鋼線が刺さる/入る溝が用意されている」のですが、ポイントなのはブルー色の矢印で指し示している「鋼線の反対側1箇所だけが折り曲げられている」設計です (もう一方は真っ直ぐなまま)。

↑実際に鋼線を差し込むとこんな感じになります・・ブルー色の矢印で指し示している箇所に折り曲げられているフック状部分が刺さっています。

つまりこの折り曲げられている理由・・ストッパーの役目・・により、初めて最短撮影距離の位置でヘリコイドメス側が脱落せずに突き当て停止する原理だからです(笑)

・・ここまでの写真を観て整備者なら当然に気づいていると思いますがね(笑)

↑いよいよ距離環をセットしました。距離環には△の刻印で絞り環用の「絞り値基準マーカー」が備わるので (グリーン色の矢印)、このモデルは距離環を回した時「一緒に絞り環側も
回転していく設計
」なのが分かります・・つまり「回転式鏡筒繰り出し方式」です。逆に言うなら、皆さんご存知のとおり、一般的なオールドレンズの多くは鏡筒が直進動するので、絞り環の位置は確定しています(笑)

↑ここで光学系前後群を組み込んでしまいます。

実は前のほうで解説したとおり、当方が体調を悪化させてしまった理由がここで分かります。この鏡筒部分は鋼線のヘリコイド方式を採る鏡胴「後部」側に「ネジ込んで締め付け固定する方式」を採用しています。

当時、鏡胴が「前部/後部」に二分割され、互いにネジ込む方式で固定する設計のオールドレンズはとても多く存在しました。しかし今回のこのモデルで大きな問題だったのは「ネジ込みの回転方向が一般的なオールドレンズとは真逆である点」なのです(涙)

つまり「一般的に反時計方向に回してネジ込みが外れていく」のに対し、このモデルは「カニ目穴に工具を差し込んで反時計方向に回すと、どんどん締め付けていってしまう事に至る」のが大問題なのです(涙)

おそらく過去メンテナンス時の整備者はそれに気づかず、どんどんチカラを加えて反時計方向に回して外そうと試みたのだと推察します。しかし外れません(泣)

結果、ガッチガチにネジ込まれてしまい、今回当方がカニ目レンチをカニ目穴に差し込んで「時計方向に回そうにも全くビクともしない」ワケで、加熱処置しようが溶剤を注入しようがまるで動きませんし、その際に目いっぱいのチカラを加え続けたので過呼吸が始まり体調が
悪化してしまったのです(涙)

・・大変だったのは、意外にもこんな大した、大騒ぎする話ではない要素だったのです(笑)

しかしこの鏡胴「前部」が外れない限りは、このモデルは当初一番最初の完全解体が100
%不可能ですから、距離環を外せないは、絞り環は外れない、絞りユニットも外せないと・・何から何まで解体できません(涙)

要はカニ目穴を用意した方向から捉えようとすれば「反時計方向の回転で外せない」事に至りますが、一方反対側の前玉側方向から眺めれば「普通に反時計方向に回して外れていく状況」であり、何ひとつ特別な話ではありません(笑)・・しかしカニ目穴が備わっている側が反対だったので、過去メンテナンス時の整備者が気づかず、どんどん締め付けていってしまっただけだった次第です(泣)

こう言う事柄/要素こそが当方にとり最も重要な「観察と考察」であり、合わせて「原理原則」に則るなら外す方向/回転させる方向が反対なのは全く以て理に適わず、その捉え方を逆に
考える必要性が起きます。

本当はちゃんとカニ目穴を反時計方向に回す側に用意した設計にしてくれれば良かっただけなのですが(笑)、まさにこの問題点こそが冒頭で「完全解体できる人がはたしてどれだけ居るのか???」との言い草に至った因果です(笑)

↑全てセットするとこんな感じですが、これでもまだママウント部の「L39ママウント」が組み込まれていません・・ちゃんと理由があって最後なのです(笑)

もっと別の言い方をするなら「だからこそ鋼線によるヘリコイド駆動方式を採っており光学系の設計との関わりが強い」次第です (整備者なら当然気づいていなければイケナイ話)。

この後は無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。2017年来なのでだいぶ久しぶりにオーバーホールしました(笑)・・改めてお礼申し上げます、ありがとう御座います!

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です・・近年このモデルにしては、これだけ光学系の状態が良い個体は珍しいです(驚)

↑後群側もスカッとクリアで、当然ながら極薄いクモリすら皆無です。赤色矢印で指し示している箇所が「焦げ茶色の微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」が施されており、これを根拠として「中期型」のモデルバリエーションに判定しています。

フランジバックは28.8㎜なので「L39ママウント規格」ですが、距離計連動機構を備えていないので、ライカ判レンジファインダーカメラに装着しても目測でしか使えません・・しかし、その反面「最短撮影距離がメチャクチャ短い」ので、はたしてそれを見越して光学設計しているのではないかと勘ぐりたくなるほどに素晴らしい描写性です(驚)

↑3時間もかかってしまい、マジッで閉口状態ですが(笑)、12枚の絞り羽根の動きは限りなく滑らかです・・その一方で残念ながら絞り環操作はガリガリ感が残ったままです (申し訳ございません!)。

この点についてはご請求金額よりご納得頂ける分を減額下さいませ・・スミマセン(涙)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています (ピッカピカです!)(笑) 「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが、いつもとは違って「鋼線を使ったヘリコイド方式」である点を考慮して、ちゃんと軽い操作性になるよう仕上げています。当初バラす前の確認時点で、異常に重いトルクだったのは、過去メンテナンス時に粘性が強い潤滑油を使っていのが原因です・・もちろん今回はちゃんとグリースを使っています(笑)

ヘリコイドグリースを今回変更しているので、いつもの当方のトルク感「ヌメヌメっとしたシットリ感漂うトルク感」とは少々異なる印象ですが、軽い操作性ではあります (ヌメヌメ感と言うよりもシッカリ感と言う印象のトルク感)。

↑おそらくこのモデルとしてはベストな仕上がり状態と言えるでしょうが、願わくば絞り環のガリガリ感が無ければ完璧でした(涙)

↑上の写真のとおり「距離環を回していくと最短撮影距離の2ftを超えて一周以上回る」ワケで、詰まって停止している箇所を赤色矢印で指し示していますが「一周回った15ft地点」ですから、実測すると「凡そ被写体までの距離22cm (フィルター枠端まで)」です!(驚)・・
前のオーバーホール工程の途中で解説した「鋼線がフック状にカタチ付けられている箇所」が存在するから、この距離環が脱落せずに詰まって停止してくれるワケです (だからストッパーの役目と前のほうでは解説していた)(笑)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離22cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」まで上がりました。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきていますが、まだまだ行けます!(笑)

↑このモデルの仕様である最小絞り値「f16」ですが、まだ背景の壁紙辺りがボケていますから「回折現象」など微塵も感じません!(驚)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑さらに回し切って、絞り環が停止する位置まで絞り羽根を閉じました・・簡易検査具で調べると「f22」を超えています。赤色矢印で指し示しているように他の数多くのオールドレンズで「黒潰れしてしまう」お城の模型の穴部分が明確に視認できています!・・凄いです!(驚)

これは詰まる処、最短撮影距離を22cmまで繰り出し切っているからこそ光量が増大して、
且つボケ味までより溶けているワケで、いわゆるマクロレンズ的な (当方ではこのような状況を
今までにも疑似マクロ化と呼称していますが
) 使い方とも言い替えられます。

それはそうですョね?(笑)・・被写体に接近して距離が縮まれば、被写体からの光量が増大
するのは至極当然な話ですし (同じf値でもより明るく撮れるから黒つぶれしなくなる)、合わせて光量が増大するなら、それに合わせてボケ量まで増大していくのも理に適います(笑)

まさしく一般的なマクロレンズが狙っている/ヤッている原理と同じ事ですが「疑似マクロ化」と呼称し、合わせて当方のオーバーホール工程でもそれを実現できるよう工夫をいろいろ施したのですが・・如何せん、当方がヤルと人気がなく(汗)、やめてしまいました(笑)

・・疑似マクロ化」で検索すると、過去に扱ったオールドレンズが数多くヒットします(笑)

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き次のオールドレンズの作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。