◎ CARL ZEISS JENA (カールツァイス・イエナ) PRAKTICAR 50mm/f1.4 MC《前期型》(PB)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


今回完璧なオーバーホールが終わってご案内するモデルは、旧東ドイツのCARL ZEISS JENA製標準レンズ『PRAKTICAR 50mm/f1.4 MC《前期型》(PB)』です。当方でのこのモデルの 扱い本数は今回が累計で5本目にあたりますが、以前オーバーホールした際に撮影した記録用写真などがハードディスククラッシュにより全て消失した為、今回再び記録用写真を撮って アップします。

ところが今回5本目の個体をバラしたところ「光学系の設計が違う」事に気が付きました!(驚) 調べてみるとそもそも製造番号が違うのです。この一文を読んだだけでピ〜ンと来た人は相当なマニアです(笑)

そうですね、製造番号がマックス値に到達してしまいリセットされてから製産出荷された個体だったのが今まで扱っていた4本の「前期型」タイプだったのです。逆に言えば、今回に手にした「前期型」は、何と製造番号がリセットされる直前の「純然たる前期型」だったワケで、これは当方にとっては非常に新鮮なオドロキでした!(笑)

この場を借りてこのような貴重な個体のオーバーホール/修理をご依頼頂いたお礼を申し上げ ます。ありがとう御座います!

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1949年に旧東ドイツのPENTACONから発売されたフィルムカメラ「CONTAX S」或いは1959年からのフィルムカメラシリーズ「PRAKTICA」など凡そネジ込み式マウント規格「M42マウント」 でしたが1960年代後半になるとスクリューマウントに対する人気の 衰えから、1979年新たな「バヨネットマウント方式」として登場したのが今回の「PBマウント (PRAKTICA Bayonet)」です。

マウント面に「電気接点端子」を有するシャンパンゴールドのとても美しいマウントです。

1980年にPENTACONから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「PRAKTICA B200」モデルより順次PBマウントのフィルムカメラが発売されていきましたが、既に当時台頭し始めていた日本製フィルムカメラと様々な国の販路でかち合っていたようです。

ところで実はこのモデルの前身が存在し「Pancolar 55mm/f1.4 zebra (M42)」と言うモノコーティングゼブラ柄モデルです。このモデルは光学硝子材に「酸化トリウム」含有の俗に「アトムレンズ (放射線レンズ)」であり、僅か5,000台程度の生産数から巷では「幻の銘玉」とも呼ばれています。

この「幻の銘玉」の製産時期はちょうど同じ標準レンズの「Pancolar 50mm/f1.8 zebra」が発売されていた時期でもあり、やはりPancolarにも光学硝子材に「酸化トリウム」を含有 した設計を採りました (Pancolarの中で唯一の8枚絞り羽根を実装した初期型モデル)。

しかし以前この「幻の銘玉」を完全解体してオーバーホールした際、内部の構成パーツを確認すると「ブルー系のメッキ加工」が施された「本社工場とは異なる別工場」の製産である事が判明し、一方の標準レンズ「Pancolar 50mm/f1.8 zebra」の「本社工場での生産品」との相違を確認しています (本社工場の場合全てのオールドレンズでパープルのメッキ加工)。

この内部構成パーツのメッキ塗色 (全部で3色存在する) に着目し、その付番されている製造 番号を拠に調べると次のような結果が導き出されます。

【メッキ塗色に見る製産工場の変遷】
オリーブ/グリーン系メッキ塗色:シルバー鏡胴モデル以降に消滅した工場
ブルー系メッキ塗色:シルバー鏡胴時代を経てゼブラ柄まで生産した後に消滅した工場
パープル系メッキ塗色:シルバー鏡胴時代から一貫して最後の黒色鏡胴まで本社工場

そして実際に製造番号のシリアル値で並べていくと、実は製造番号が様々なモデルに飛んで いる事に気が付きます。

例) ある任意の製造番号を「モデルA」とするとその次のシリアル値が「モデルB」になり、さらにその次も「モデルC」「モデルA」「モデルB」のように製造番号のシリアル値増分に対して同じモデルに集約しない現象を確認できる。

別の言い方をすれば例えば仮に「製造番号100010011002000」の1,000本を検証した時に、その番号帯の中に複数のモデルが混在して存在すると言う事実に突き当たります。普段皆様は工場の一つのラインで連続的に大量生産していたハズなので、付番される製造番号は 自ずと任意の幅でシリアル値がまとまると考えていると思います。

もちろん一つの製造ラインで製産されて出荷される本数は数百本〜数千本になると推測できますが、しかしその後同一のライン上で付番されている製造番号が「続きのシリアル値になっていない」現実にブチ当たるワケです(笑)

ウソだと思うなら数十本分の製造番号を基に並べてチェックしてみるとすぐに分かります。
当初Tessarで調べていたのに途中Biotarが混在していたりします (シルバー鏡胴の場合)(笑)

この意外な事実から当方では「製造番号 (事前) 割当制」という仕組みを割り出し、同時に当時国からの命令として増産体制を執る必要から複数工場で同じ時期に同一モデルを「並行生産」していた事も掴めます。

【当時のオールドレンズ製産概念】
製造番号は生産前に事前に割り当てを計画していた (これを以て計画生産と言う)
その際複数の工場別に並行生産する事で増産体制を執っていた
吸収合併した光学メーカーの工場製産設備の事情からメッキ塗色に相違が表れていた

そしてこのような製産に係る概念は、実は当時の日本製レンズの光学メーカーにも大きく影響し、特に「製造番号割当制」は計画生産と言う概念から必須の仕組みへと変わっていったのだと推察できます。

簡単に説明すると「製造番号1000100110002000」の1,000本はTessarを製産し、併せて「製造番号100020011003000」の1,000本は隣接する町の別工場でBiotarを造らせる計画を来月は立てて、頑張って1カ月間で2,000本出荷しよう!・・こんな事がイメージ できますね(笑)

たかが「製造番号」ですが、このようにモデル銘と内部構成パーツのメッキ塗色なども絡めて考察していくと当時の知られざる背景が浮かび上がってくるのがオールドレンズの面白さとも言い替えられますね(笑)・・ロマンは際限なく広がっていきます(笑)

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
※Pancolar 55mm/f1.4 zebra (M42) からの展開として掲載。

Pancolar 55mm/f1.4 zebra (M42)
発売:1967年
光学系構成:5群7枚拡張ダブルガウス型 (酸化トリウム含有)
コーティング:モノコーティング
最短撮影距離:36cm
絞り羽根:6枚 (左回り)
マウント種別:M42

前期型:1980年発売
光学系構成:6群7枚拡張ウルトロン型 (酸化トリウム含有)
コーティング:マルチコーティング
最短撮影距離:36cm
レンズ銘板:フィルター枠外周
絞り羽根:6枚 (左回り)
マウント種別:PB

後期型
光学系構成:6群7枚拡張ウルトロン型 (酸化トリウム含有無し)
コーティング:マルチコーティング
最短撮影距離:40cm
レンズ銘板:前玉側に配置
絞り羽根:6枚 (右回り)
マウント種別:PB

なお、一部サイトでこの他に「最終型」として3つ目のモデル (左写真) を案内していますが、これはモデルバリエーションの相違ではなく、単に輸出先指向国での商品競合問題から旧西ドイツ側Zeiss-Optonによる制約でモデル銘をフル表記できなかった事に由来する、いわゆる「西欧圏向け輸出品」です (PRAKTICARの頭文字を採った 表記)。

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻し滲んで円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。2枚目の女性の写真は人物ではなく背景のシャボン玉ボケの状態に着目してピックアップしました。すると相応にエッジを明確に表現するシャボン玉ボケが表出しますが、光学系内の構成や曲率の高さから口径食やコマ収差の影響を受け、真円だったシャボン玉ボケが変形している場合も多々あります。しかしそれでもシャボン玉ボケ〜円形ボケのエッジは煩く現れずにむしろ自然な溶け方をするのではないでしょぅか。

二段目
さらに円形ボケが滲んでいく途中で収差の影響を色濃く受け乱れていく様をピックアップしました。二線ボケっぽい表現や相当乱れた滲み方をするので、これを「背景の効果」として使うのか、或いは単なる「汚いボケ味」として認識するのかはそのシ〜ンやもちろん撮影者の力量にも拠るでしょう(笑)

 三段目
この左側2枚の人物写真がこのモデルの最大の特徴を現している要素です。おそらくこの写真は何処ぞの有名処観光地で来訪している観光客相手にポートレート撮影をしているのだと推測しますが、たぶんレフ板とか無しでそのまま撮っていると考えています。それにしてもまさにポートレートレンズではない標準レンズでこれだけ本格的な人物写真が撮れるという現実がもの凄いと評価しています。

また右側2枚はピント面の解像度として被写体の素材感や材質感を写し込む「質感表現能力」の高さを魅せつける写真と評価しています。同時に被写体との距離感や空気感までも写し込まれているような錯覚を覚える「立体的な描写性」にも長けているモデルと言えます。

四段目
左端の1枚は明暗部の色付きがちゃんと残っておりダイナミックレンジの広さを物語っていると解釈しています。またそれは白黒写真にするとより一層明確な特徴として現れ、明暗部の飛びの少なさだけではなく非常に緻密な印象を与える解像感の躍動や (本当に解像しているワケではない)、併せてとても滑らかな階調表現によりやはり「質感表現能力の高さ」がそのまま現れています。

光学系は前身モデルたる「Pancolar 55mm/f1.4 zebra」では5群7枚の拡張ダブルガウス型構成でしたが (右図) 光学硝子材の一部に「酸化 トリウム」を含有した「アトムレンズ (放射線レンズ)」です。

右図はだいぶ前にオーバーホールした際デジタルノギスで逐一計測したトレース図です。

そして今度は右図が一般的にネット上で掲載されている「PRAKTICAR 50mmf1.4 MC《前期型》(PB)」の構成図になりますが、当方では今までに扱った4本でこの光学系の設計に出会った事がまだありません。

つまりまだ検証が取れていない構成図と言えます。

一方右図は今回のオーバーホールで完全解体した際に逐一光学系の硝子レンズをデジタルノギスで計測して描いたトレース図です。

6群7枚の拡張ウルトロン型構成に設計していたワケですが、 部分の 第4群第5群の光学硝子材に「酸化トリウム」を含有しており、経年 劣化進行から既に「赤茶褐色化」しています。

左の写真は当初光学系から第4群〜第5群を撮りだした時に撮影した「黄変化の状況」です。濃い黄色というよりも赤みがかった茶褐色なので当方では「赤茶褐色化」と呼称しています。

これは例えばコーティング層経年劣化進行により「コーティング焼け」している場合「濃い黄色」になるので違います (酸化トリウム含有とは同じ色合いに変質しない)。

左写真は24時間UV光の照射を施した後に撮影した写真です。だいぶクリアに戻ったように写ってしまいましたが、実際は相応に「黄変化」が残ったままなので「半減程度」とご認識頂いたほうが間違いないです。

これ以上照射を続けても変化しないのでやめています。

特にこのブログの一番最後のオーバーホール後の実写をご覧頂ければ一目瞭然ですが、ブラウニング現象による「黄変化」によりコントラストへの影響が色濃く表れているのが分かります (階調表現に影響が現れ濃く写る)。

よくアトムレンズ (放射線レンズ) の場合にカメラボディ側オート・ホワイト・バランス (AWB) の設定だけで普通の写真で撮ることができると声高らかに謳っている人が居ますが(笑)、例えAWB設定で白色の基準値を合わせられても「階調幅に影響を来す入射光までイジれない」のが道理ですから、このようにコントラストがキツメに出てくる傾向にあります。

では光学硝子材に「酸化トリウム」を含有した「アトムレンズ (放射線レンズ)」を敢えてチョイスするメリットとはいったい何なのでしょうか???

答は「20%代の解像度向上」の結果 (の写り具合) です。酸化トリウムを光学硝子材に含有させることで最大で20%代まで解像度を向上できる期待値が上がります。つまり光学系各群の曲率や硝子材成分だけでは解決し得ない解像度の狙いに対しての効果をメリットとしています。従ってアトムレンズ (放射線レンズ)のほうが緻密ではないのに情報量豊かに表現されるというのが、おそらくこの当時の様々なアトムレンズ (放射線レンズ)に対する評価なのではないでしょうか (実際にそのような写り具合になっていると認識しています)。

ちなみにその後酸化トリウム含有をやめてから光学硝子材に混ぜられた材料は「ランタン材」であり、狙える解像度の向上は約10%代ですが、その代わり「黄変化」の程度は相当低くなります。

左写真は当方がまた光学系構成図を勝手に変えて掲載していると (ウソを載せている) とSNSで批判されるので(笑)、いつもながら証拠写真を撮りました。

光学系第4群の貼り合わせレンズで右側が後玉側方向になります。特に左側の硝子レンズのカタチが違うことが一目瞭然です。

なおこの後に登場した「後期型」が右図で同様6群7枚の拡張ウルトロン型構成のままです。しかしモデルバリエーションに明記した仕様のとおり「最短撮影距離40cm」に後退しているので光学系は再設計されています。

またこう記載するとウソだと指摘されるので(笑)、証拠として例えば
第1群 (前玉) の外径サイズは「前期型:⌀44.75mm」に対し「後期型:⌀44.48mm」なので後期型のほうが僅かに小ぶりに変わっているのが分かります (もちろん必然的に厚みも曲率も全て違う)。ちゃんと自らデジタルノギスを使って計測しているので、具体的な実測値を言ってみろ!と問われれば報告できるワケです(笑)

しかし当方が計測しているにすぎないので、あくまでもネット上で掲載されている (特に有名処のサイトの) 構成図が「」であり、上図は信憑性が低いのだとご認識下さいませ(笑) 当方が独りで勝手に自己満足しているにすぎません(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。完全解体してバラすと各構成パーツが逐一確認できるワケですが、内部の制御方式など設計の基本的要素 (概念) には大きな仕様変更がありませんが、細かい構成パーツの形状カタチには僅かながら違いが見てとれます。ところが今回の個体はそのような問題ではありませんでした(泣)

【当初バラす前のチェック内容】
 ご依頼者様のご認識では「全く以ての正常品」であり強いて言えば「黄変化」の問題だけ。
無限遠位置が2〜3目盛分も手前の相当なオーバーインフ状態。
開放時一部の絞り羽根が顔出ししており最小絞り値も閉じすぎている (実測でf22越え)。
マウント面絞り開閉レバーの動きがぎこちない (抵抗を伴う場合がある)。
特に最短撮影距離位置で距離環が突き当て停止する際に詰まった感触が指に伝わる。

【バラした後に確認できた内容】
過去メンテナンス時にフィルター枠/光学系前群の格納位置が違う。
ヘリコイド (オスメス) の固定位置がズレている (締付環に緩み発生)。
開放時やはり絞り羽根が顔出ししている (最小絞り値側は完璧に閉じすぎ)。
過去メンテナンス時に白色系グリース塗布 (濃いグレー状に変質済)。
マウント部内部に過去メンテナンス時何かを塗布している (不明)。
無限遠位置の割り出しと共にヘリコイド (オスメス) 固定位置割り出しも必要。
極僅かに合焦時のピント面が甘い気がする。

・・とまぁ〜「完璧な正常品」とのご案内でしたが、実際はいろいろ問題点が見えてしまい ました(泣) 申し訳御座いません・・。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。当方では必ずオールドレンズをバラした際「ヘリコイドのオス側の状況をチェック」します。ヘリコイド (メス側) ではありません、オス側です!

どうしてオス側のヘリコイドがどんな設計/構造なのかが重要なのでしょうか???

たいていの人が思い込んでいる要素の一つとして「距離環を回すトルクを決めるのはグリースの問題だけ」という点です。要は現状重いトルク感なら軽めの粘性のグリースを塗ってあげれば軽い操作性になる・・という認識です。

しかしこれは正しくありません。確かに軽い粘性のグリースを使えば当初より軽めのトルク感として仕上がりますが、全ての部位が関わって組み上がると逆に重いトルクに至ってしまう場合もあったりします。

つまり「距離環を回す時のトルクを決める要素」には塗布する「ヘリコイドグリース (の粘性)」と他の部位からの「伝達されるチカラ (とその構造)」そして最終的に「鏡筒を繰り出す/収納する構造と原理」と言えます。従って塗布するグリースの粘性を軽くすると同時にこれらの要素全てが改善されない限り期待値どおりの仕上がりには至りません。

これはヘリコイド (オス側) に鏡筒が組み込まれるからで、それ故に鏡筒が繰り出し/収納する事でピント合焦する仕組みですョね??? だからこそメス側ではなくオス側が重要なのです。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

上の写真を見ると分かるのですが、実は「幻の銘玉」と揶揄され続ける「Pancolar 55mm/f1.4 zebra」に実装されている絞り羽根のカタチにかなり近似しているのです。そんな処からも継承している事を確認できたりしますね(笑)

↑さて、ここから過去メンテナンス時の整備者による「ミス」を列挙していきます。まず鏡筒を横方向から撮影した写真ですがイモネジ用の下穴が用意されており、そこから横方向に削れた痕が残っています。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種

イモネジ用の下穴
一般的なイモネジは先端が尖っているので刺さるべき穴を用意する必要がある

上の写真を解説すると、過去メンテナンス時の整備者はこのモデルのフィルター枠直下に位置する「イモネジ」の存在を確認せずに「思いっきりフィルター枠を反時計方向に回して外そうとした」ワケです(笑)

確かに反時計方向に回して取り外すフィルター枠が多いのは間違いありませんが、必ずしもそうだとは限りません。従ってイモネジが刺さったままだったのでそのまま横方向にアルミ合金材が削れてしまったワケです (赤色矢印)。

↑上の写真 (2枚) も同じで、やはりイモネジ用の下穴ですがよ〜く観察すると「ビミョ〜に穴の水平方向の位置がズレている」事が一目瞭然です (赤色矢印)。要は同様やはり過去メンテナンス時の整備者が下穴をドリルを使って用意した事がこれでバレバレです!(笑)

イモネジを締め付ける際にもしも仮に「下穴が無い」とどうなるのか???

答はイモネジが入っているほうのアルミ合金材が膨れあがって抵抗/負荷/摩擦に直結していく結果に繋がります。かと言ってイモネジの締付が緩すぎると、今度は脱落や部位自体のズレに至る懸念も高くなるので、相応に締め付ける必要があります。

今回の個体で言えば、過去メンテナンスはこれらイモネジの下穴の状況から「全部で3回実施されている」事が明白になりました。

では製産時点のイモネジ用の下穴はいったい何処にあるのでしょうか???

↑その答が上の写真です。上の写真は光学系前群の第1群 (前玉) 〜第3群までが格納される「光学系前群用格納筒」を真横方向から撮影した写真です。

すると「イモネジ用の下穴」がちゃんと赤色矢印で指し示して解説しています (第3群だけは格納筒にカシメ止めされている/外せない)。

つまりこのモデルは光学系前群とフィルター枠の両方をイモネジ1本で締め付け固定する設計を採っていた事になりますね(笑) 逆に言えば3回に及ぶ過去メンテナンス時の整備者はいずれも気が付かずに「下穴をワザワザ用意した」と言えるワケで・・それって「ごまかしの整備」ではありませんか???(笑)

↑というワケで正しく絞りユニットを鏡筒最深部にセットします。

なお当初絞り羽根が開放時に顔出ししていた根本的な原因は過去メンテナンス時に「開閉環用微調整ネジ」のネジ山を潰してしまい、エポキシ系接着剤で接着していたからです。エポキシ系接着剤を全て除去し、且つ潰れたネジ山が効くよう処置を講じましたが、残念ながら最小絞り値側は「f16」ギリギリの閉じ具合です (僅かにf16手前くらいの印象)。これ以上閉じるようにすると再び顔出しが始まり、且つ他の絞り値も閉じすぎるようになってしまうので諦めました。申し訳御座いません・・。

↑今度はひっくり返して後玉側方向から撮影しました。鏡筒裏側にはたったの一つ「開閉アーム」だけが飛び出ています (グリーンの矢印)。また両サイドには「直進キー用のガイド (溝)」が縦方向で用意されています (赤色矢印)。

マウント面から飛び出ている「絞り連動レバー」が操作されることでこの「開閉アーム」が操作されて (ブルーの矢印) 設定絞り値まで絞り羽根が閉じたり開いたりします。

また「直進キー」という板状パーツがこのガイド部分を行ったり来たりスライドするので「鏡筒が繰り出されたり/収納したり」する原理ですね。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑この基台に用意されているネジ山に距離環をネジ込むワケですが、今回の個体の無限遠位置が相当オーバーインフに陥っていた原因がここからの解説になります。

この当時のCarl Zeiss Jena製オールドレンズの多くのモデル (但し黒色鏡胴に限って) でこのようにヘリコイド (オスメス) が設計されています。距離環側の内側に切削されているのが「メス側」にあたり相当な長さで上から下までネジ切りされています (グリーンの矢印)。

一方ヘリコイド (オス側) のネジ山はご覧のようにとても短い距離です (グリーンの矢印)。

何を言いたいのか???

つまりこのモデルはヘリコイド (オス側) がズズ〜ッと距離環内側の長い距離を何度も何度もクルクル回りながら「繰り出し/収納動作」する設計であり、それが意味するところは「ヘリコイドグリースの粘性だけではトルクを制御できない」設計なのだと言えます。

従ってそれを容易に簡単に整備して仕上げるなら「白色系グリースを使えば最も短時間で軽い操作性に仕上がる」から何処も彼処も皆「白色系グリース」ばかり使いたがるワケですね(笑)

当方では基本的に「DOH」なので使うのは「黄褐色系グリース」であり、滅多に「白色系グリース」は使いません。

↑このモデルの多くの場合でオーバーインフに陥ってしまう、或いは無限遠が合焦しないなどの不具合に至る原因を解説しています。

何と「ヘリコイド (オス側)」は締付環で締め付け固定する設計なのです(笑) これが例えば当時の多くの日本製オールドレンズなら「たいていの場合でヘリコイド (オス側) はネジ止めされる」ので組み上がって使い始めてからズレてしまう不具合が起きません(笑)

まさに「設計の拙さ」の何物でもありませんね!(笑) 長年使っていると締付環が緩み始めてヘリコイド (オス側) の位置がズレていくので、必然的に無限遠位置がどんどんズレて無限遠合焦しなくなっていきます。

↑完成した距離環と基台に「直進キー」を組み込んで鏡筒をセットしたところです。実際に最短撮影距離位置まで繰り出した時の内部の状況を分かりやすく撮影しました (ブルーの矢印)(笑)

すると「直進キー」の先っぽ部分だけで鏡筒が辛うじて保持されているのが最短撮影距離の時ですから、このように繰り出した状態のままフィルターの着脱で強く回したりすると「アッと言う間に直進キーの付け根が折れる/変形する」ワケです(怖)

直進キー」は2本の締付ネジで締め付け固定されているので、曲がりのチカラが加わった時、そのチカラの全てがこの根元に集中する事がすぐに分かると思います。

従ってよく皆さんが「何十年の前のオールドレンズなので多少キズや変形していても構わない」と仰いますが(笑)、実はこのように距離環の裏側が「ヘリコイド (メス側)」なのだとするとお話が変わります。もしも過去にこの個体を落下させたりぶつけたりして距離環に変形が生じていた場合「容易にトルクムラに至る」事が自明の理ですョね???

要は「例え興味が無くても構造を知っていれば避けるべき個体が見えてくる」とも言い替えられるワケで、その為にこのようにグダグダと超長文で書き連ねています(笑) スミマセン・・。

少しでも参考にして頂き、不具合を抱えている個体を手に入れてしまわないよう努めて下さいませ。そしてもしも不具合のある個体を手に入れてしまったのならできるだけ早いタイミングで「オーバーホール/修理ができる会社に頼んで調整/直してもらう」のが良いと思います 。
(クレームする人が居るので当方ではもぅオーバーホール/修理の受付を止めました)

基本的に当方は気が小さい人間なので(笑)、クレームを受けるとどうにもこうにもいつまでもその事実だけが残ってしまい、相当なプレッシャーが何ヶ月も続き精神的に参ってしまいます・・・・お恥ずかしいダメ人間です(笑)

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを全て取り払い当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。とても美しいシャンパンゴールドの光彩を放ちます。

↑上の写真は当初バラした時に清掃せずにそのまま撮影したこのマウント部の写真です。

マウント部
マウント部の枠 (外壁)
絞り環用ベース環
電気接点端子基板

赤色矢印の箇所に本来刺さっているべき「オレンジ色のリリース用突起」があるのですが、軸だけで折れて消失しています。また一部に「汚れ」がこびり付いており除去できません。

はマウント部の外回りのカバーですが、やはり「汚れ」が残っています。③は絞り環用のベース環でここに絞り環がハマるワケですが、やはり「汚れ」が取れません。特にの基板は相当ヤバい状況です (全て赤色矢印の箇所)。

↑さらに上の写真も当初バラし始めた時点で途中に撮影した絞りユニットの写真ですが、完全開放状態にセットしているのにご覧のように不定期に/不均質に一部の絞り羽根が顔出しします (赤色矢印)。

ここで問題なのは均一に顔出ししていない事です。6枚ある絞り羽根のうち顔出ししているのが「5枚」であり、1枚だけ正常に格納されています (つまり顔出ししていないのが正常と言う意味)。またよ〜く観察するとその顔出ししている量も僅かに違います。

これがいったい何を意味するのか???

たいていの場合で皆さんは「顔出しの事実だけを問題視」するのですが(笑)、実は顔出し自体は微調整でどうにでも直せるのでたいして問題になりません。ところが「均一に顔出ししていない」となると話は厄介です。

これは過去の一定期間に於いて「絞り羽根の油染みが粘着を帯びて閉じる際に界面原理が働き癒着していた」証とも言えます。絞り羽根が閉じる際に互いが重なり合いながら内側へ飛び出てきますから、その時油染みの影響で粘着を帯びると「界面原理」が働いて「絞り羽根が中心に向かって膨れあがる」現象が起きます。

この結果「本来製産時点で垂直だった絞り羽根のキーが斜め状に曲がってしまう」ので、このように6枚全てで同一の「曲げ角度」で制御されているにもかかわらず「一部の絞り羽根で曲げ角度にズレが生じて垂直を維持していない量の分だけ顔出しする」のがその原理です。

つまり上の写真で言えば赤色矢印で指し示した「5枚の絞り羽根の開閉キー」側は残念ながら既に垂直を維持しておらず直せません。このまま放置していればいずれ「キー脱落」に至りそれはそのまま「製品寿命」という結末を迎えます。

今回の個体は完全開放時でこれだけ顔出ししていたので「最小絞り値側では閉じすぎていた」次第で実測で「f22」まで閉じきっていました(笑)

↑まずは前述のような背景から絞り羽根の開閉に限りなく抵抗/負荷/摩擦を与えたくない点と、そもそも当初バラす前のチェック時点で時々「マウント面から飛び出ている開閉レバーの戻りが引っかかる」症状を確認した為、その2点から「鋼球ボールのチェック」を実施しました。

具体的には一つ前の写真で明白ですが「開閉レバーの環 (リング/輪っか)」がセットされるべき場所すらバラして外してしまいました。これは「全部で81個組み込まれる鋼球ボールを逐一全て磨いた」ワケで(泣)、その理由は一部の鋼球ボールに「赤サビ」が生じていたからです。

このように現れている症状の因果関係を突きとめて、その根本から原因要素を排除する事でグリースに頼らない「本来の製産時点のより近い状態」で組み上げができると言う思想です。

・・と言っても当方だけが独りこだわっている思想なので意味がありません (世間的な認知度が皆無状態)(笑) 要は一生懸命作業していても何ら誰にも認められないという結末が待つだけです(笑)

これがプロが同じ事を処置すると「さすがプロだけはある」とガラッと違う評価に至るので(笑)、何ともオモシロイ限りです。

開閉レバー」が操作される事で回って「カムが動く」ので絞り環で設定されている絞り値まで絞り羽根が閉じたり/開いたりする原理ですね (ブルーの矢印)。従って「鋼球ボールの滑らかさが実は重要なポイント」だったりしたので「81個の⌀1.5mm径鋼球ボール」を1個ずつゴシゴシと磨いたワケです(笑)

さすがに81個もあると (全部サビが出ていたので何でなの???) (怒)、いったい自分が何の為に作業しているのか気が付くと見失っていたりします(笑) 逆に言えばそれほどの単純作業なのに実は鋼球ボールが小さすぎて同じ面を磨きかねないのが相当怖いのです (特定の面だけ磨きすぎると凹んでしまいそれが原因で滑らかな動きが消失するから)(笑)

その意味で全部で81個処置するのに丸ッと2時間要しましたが(笑)、その間「恍惚と真剣の行ったり来たり」と言う、何とも恥ずかしい状況です。おそらく表情を見られていたら「目が徐々に点になっていくと突然口をひん曲げて目を吊り上げて真剣モードに戻る」イメージです(笑) なかなか2時間も緊張感を維持し続ける事ができないダメダメ人間です!(笑) こういうヤツが運転しているとトラックとかで事故るんでしょうねぇ〜ッ!(怖)

↑2時間ひたすらにゴシゴシの甲斐あってとても滑らかで小気味良いクリック感を伴い絞り環操作できるように戻りました。

↑マウント部をセットして駆動状況を最終チェ〜ック!(笑) もちろん写っていませんが電気接点端子の基板も汚れ状をゴシゴシやって除去したのでキレイです! (ただそれだけの話/外から見えませんが)(笑) いいんです!そう言う処が自己満足大会なので・・!(笑) 自分の中で「ちゃんとヤルべきことはやったかんねぇ〜!」と言う自覚さえあればそれだけでいいのです。

↑基台にマウント部を組み付けていよいよ各部位の操作性と正確性をことごとくチェックしていきます。オーバーホール工程としてはこの後に光学系前後群の組み込み作業がありますが、取り敢えずここの確認で「何かしら自分でウン???」と感じる要素があったらアウトですね!(笑) 何度でも納得できるまでバラしては再調整を施し、チェックをクリアするまでひたすらに続けます。これも自己満足大会です!(笑)

この後は光学系前後群を組み込んでから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑これでもかと言わんばかりに完璧なオーバーホールが終わりました!・・と言っても自分で そう満足しているだけのお話ですから(笑) しかしそこが結構重要だったりします・・(笑)

ハードディスクの故障でデータが消失していたので調度良い機会になりました。ありがとう 御座います!!!

↑光学系内はとびきりの透明度を維持した個体です。もちろんLED光照射でもコーティング層 経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。ご指示により「UV光の照射」を24時間実施しましたが、冒頭のとおり「黄変化は半減程度の改善止まり」ですのでご承知おき下さいませ。 逆に言えばこれ以上照射を続けても変化しませんでした (つまり実際は24時間以上やっているがそれすら自己満足の為)(笑)

↑「黄変化」が発生していたのはこの後群側の第4群〜第5群なので、覗き込むと黄ばんで
います。申し訳御座いません・・。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「ほぼ正六角形を維持」したまま閉じていきます。冒頭解説のとおり当初バラす前のチェック時点で閉じすぎていたので改善させています。また同時に各絞り値も検査具を使い設定済です。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の粘性「中程度軽め」を使い分けて 塗っています。距離環を回す時のトルク感は「普通」人により「軽め」の印象で、どちらかと言うと「軽め」の感じです。

このモデルのピント合焦がアッと言う間でしかもピントのピークが掴み辛いので軽めのトルク感に仕上げないと使い辛いと思います。自ら完全解体してオーバーホールしていると、このような重箱の隅を突くような微調整のメリットがありますが、同時に皆様からのクレームもより厳しいモノに至ると言うワケです(涙)

赤色矢印で指し示しましたが、このイモネジ1本がちゃんと光学系格納筒まで貫通してシッカリと締め付け固定されないと「光学系の甘さが表れる」設計とも言え、どうしてこんな拙い 設計で造ってしまったのかよく分かりません(笑)

と言うか、おそらく1980年辺りの話なのでもうCarl Zeiss Jenaには細かい事にこだわって改善するパワーすら残っていなかったと考えます。それほど当時ヨーロッパに台頭してきた日本製光学製品は脅威だったのだと思いますね(泣)

ちょうど今の日本がまさしくその状態なのでしょうが、人件費を掛けてこだわってモノ造りしても、その対価が回収できない状況に陥ると自然に淘汰されていくワケで、自然と同じように厳しい状況ですね。

↑距離環に巻かれているラバー製ローレット (滑り止め) のプニプニ感もちゃんと中性洗剤で洗浄したのでまた復活しており、ついつい触りたくなってしまいます(笑)

マウント着脱の目安になる「リリースの為のプラスティック製突起 (マーカー)」が紛失の個体なので代用でネジを入れてあります (一応オレンジ色に塗りました)(笑)

当初の問題点まで全て改善できました。但し「黄変化」だけは半減程度の改善に留まります。申し訳御座いません・・。

また無限遠位置の割り出しとヘリコイド (オス側) の固定位置確定は何度も何度も組み上げては実写してチェックしない限り分からないので、最終的に組み直した回数は「17回」に及んでいますから、さすがにちょっともう当分このモデルはお腹いっぱいです(笑)

ハッキリ言って2時間も鋼球ボール磨きで恍惚と闘い(笑)、さらに17回も組み直ししていると丸2日掛かりになってしまい、甚だ自らの「技術スキルの低さ」を思い知らされた結末でした(泣)

どうかこのブログをご覧の皆様も当方の技術スキルはその程度ですので、重々ご承知おき下さいませ(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離36cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」に設定して撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮っています。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」です。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」での撮影です。まだまだ「回折現象」の影響が現れないので相当なポテンシャルの光学系です。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。お詫び申し上げます・・。また長きに渡りオーバーホール/修理をご依頼頂き、本当に感謝しております。ありがとう御座いました!