◎ Revue (レビュ) AUTO REVUENON 55mm/f1.2 TOMIOKA《初期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方の記録データが無かったので (以前のハードディスククラッシュで消失) 無料で掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。

今回オーバーホール/修理を承ったモデルは、Revue (レビュー) 製標準レンズ『AUTO REVUENON 55mm/f1.2 TOMIOKA《前期型》(M42)』です。レンズ銘板に『TOMIOKA』銘が刻印されていることからも分かるとおり「富岡光学製」のOEMモデルになります。

【富岡光学製55mm/f1.2のバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

YASHICA:AUTO YASHINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

CHINON:AUTO CHINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

COSINA:AUTO COSINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

Revue:AUTO REVUENON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

YASHICA:AUTO YASHINON DS-M 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm


・・これら5つの富岡光学製OEMモデルは、すべてのモデルで光学系後群側はマウント面に配置されている「絞り連動ピン」を避ける必要から独特なカタチに切削されている光学硝子レンズで、第4群〜第6群の全てのコバ端が一部切削されています。
(右写真は光学系後群が鏡筒にセットされている状態)

逆に言えば、使えるスペースを最大限に使い切って設計された拘りの光学系とも言えます。

TOMIOKA:AUTO TOMINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

そして何と言っても本家本元の富岡光学のオリジナルモデルとなれば、上記モデル「AUTO TOMINON 55mm/f1.2 (M42)」になりますね。もちろん光学系の設計から仕様諸元値まで
全く同一です (特にAUTO YASHINONモデルはオリジナルモデルのレンズ銘板すげ替え版と
言える)。

この後に登場したモデル (おそらく1970年代) が、レンズ銘板から「TOMIOKA」銘が省かれてしまったが為に、ネット上であ〜だこ〜だと騒がれる一因になっています(笑)

前期型PORST COLOR REFLEX MC AUTO 55mm/f1.2 F (PK)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f22
フィルター径:⌀ 55mm

後期型PORST COLOR REFLEX MC AUTO 55mm/f1.2 F (PK)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f22
フィルター径:⌀ 55mm

YASHICA:YASHICA LENS ML 55mm/f1.2 (C/Y)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.5m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 55mm

・・こんな感じですが、これら後に登場したOEMモデルは光学系後群の仕様が初期のモデルとは変わっており、従前の切削をやめています (当然ながら光学系は再設計されています)。

 

左写真は前述のレンズ銘板に「TOMIOKA」銘が刻印されているモデル「AUTO REVUENON 55mm/f1.2 TOMIOKA」をオーバーホールした際に撮影した写真から転載しています。

ご覧のとおり第4群は片面側 (後玉側) が非常に
緩い (平坦に近い) 凹レンズになった両凹レンズです。

それら「TOMIOKA」銘がレンズ銘板に刻印されているモデルの光学系は、6群7枚の拡張ウルトロン型であり本家ウルトロン型構成の後群成分を1枚追加しています。描写性能は折紙付きで富岡光学製オールドレンズの特徴を最大限に堪能できる、まさに銘玉中の銘玉です。

右の構成図は過去にオーバーホールした際のバラした清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。当方が計測したトレース図なので信憑性が低い為、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「」です (つまり右図は参考程度の価値もない)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

また「PKマウント」のモデルは右の光学構成図になり、後群側の切り欠き部分が消失した光学設計に変わっています。

Flickriverでこのモデルの実写を検索したので興味がある方はご覧下さいませ。

最後に、騒がれているもう一つのモデル、コシナ製「COSINA 55mm/f1.2 MC (PK)」についてご案内しますが、当方はまだこのモデルをオーバーホールした経験が無いので、何とも判定できていません。しかし、最も関心を引く相違点は、これらのモデルの中で唯一フィルター枠径が「⌀58mm」であり、当方ではコシナ製ではないかと踏んでいます・・どうでしょうか。
ネット上では、最短撮影距離が60cm (最小絞り値:f16) がコシナ製であるとの解説が多い
ようですね。

COSINA:COSINA 55mm/f1.2 MC (PK)
光学系:6群7枚
絞り羽根枚数:8枚
最短撮影距離:0.6m〜∞
最小絞り値:f16
フィルター径:⌀ 58mm

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。「富岡光学製」オールドレンズの製造番号は、必ず先頭番号が暗号になっており何かの意味合いを持たせています・・今回のモデルは先頭番号1桁目がRevue社向けOEMモデルであることを意味する符番のようで、その後がシリアル値になっていますが、今回の個体はシリアル値自体が大変若いので、おそらく初期ロット生産品のひとつではないかと推察します。とても貴重な個体ですね・・。

今回のオーバーホール/修理のご依頼内容は・・、

  • 距離環と絞り環の遊び (ガタつき)。
  • 光学系内の黄変化改善は一任。

・・と言うことでしたが、当初バラす前のチェックでは以下の現象を確認しました。

  • そもそも無限遠が出て (合焦して) いない。
  • 距離環を回すトルク感はグリース切れの印象。
  • スイッチの「自動 (A)」設定時に絞り羽根の戻りが緩慢。
  • スイッチの「手動 (M)」設定時に「f8」以降閉じていない。
  • 絞り値「f8」で最小絞り値「f16」まで閉じている「閉じすぎ」の状態。

・・こんな現象が生じていました。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在するので、鏡筒はヘリコイド (オス側) の内部にストンと落とし込みで格納する方式です。

↑8枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます・・上の写真では既に「メクラ環 (カバー)」を被せてイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 3本で鏡筒の外側から締め付け固定していますが、このイモネジを締め付け過ぎると絞り羽根が動かなくなります。
富岡光学製オールドレンズに多く採用されている方式で、「メクラ環」は単なるカバーだけの役目だけではなく絞り羽根が開閉時に浮き上がるのを防ぐ役目も兼ねているために、イモネジの締め付け具合で絞り羽根の開閉が変化してしまう設計を採っています。

↑この状態で鏡筒をひっくり返して撮影しました。上の写真の解説のとおりイモネジ (3本:鏡筒外壁に均等配置) を使っています。鏡筒の裏側は至って簡素な構造で「絞り羽根開閉アーム」が1本飛び出ているだけです・・引張式コイルばねを使って常に開放状態を維持するようチカラを及ぼしています。

鏡筒の前玉側には1箇所に「絞り羽根開閉幅制御キー」と言う小さな真鍮製の「円盤」を皿ネジで締め付け固定しています・・これが富岡光学製オールドレンズの特徴のひとつで、「鏡筒の位置調整で絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) を調整する」方式を採っていました。従って、組み上げが終わった後の確認では、いちいち鏡筒が見える位置まで再びバラして、この「絞り羽根開閉幅制御キー」を調整することで絞り羽根が開いたり閉じたりする開口部/入射光量の調整をするしかありません・・非常に厄介な調整方法です (メンテナンス性が良いとは決して言えませんね)。

今回問題だったのは、この「絞り羽根開閉幅制御キー」の部分が丸ごと「瞬間接着剤」で固められていたことです。除去薬を塗っても表面しか取れませんから真鍮製の小さな円盤の裏側部分に塗られている瞬間接着剤は全く除去できず、且つ皿ネジも溝が埋まったいるので動くようにするのに時間がかかりました。このキーが調整できないと絞り羽根の開閉具合を変えられません・・瞬間接着剤を使っているので、過去のメンテナンスは、それほど前ではないと推察しますが如何でしょうか。

↑では、どうやって絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) を調整するのか? 鏡筒は上の写真のようにヘリコイド (オス側) の内側にストンと落とし込む格納方法ですから (何と鏡筒は一切固定されません!)、ヘリコイドの上部には「切り欠き」が用意されており、そこに「絞り羽根開閉幅制御キー」が入り込みます。すると、キーの小さな円盤を回すことで (皿ネジが中心部に固定されていないから) 鏡筒が左右に位置をズラすことになるワケですね(笑)

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台です。光路長が長いので基台の長さ (深さ) が相応にあります。

↑真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。今回の個体は当初から無限遠が出て (合焦して) いないので、この時点ではおおよそのアタリしか付けられません。いちいち組み上げては実写確認していくしかありませんね・・厄介です。

↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各連動系・連係系パーツは取り外して当方による「磨き研磨」が終わった状態で撮影しています。当初バラした時点では、このマウント部内部には過去のメンテナンス時に塗られた白色系グリースがビッチリ塗られており (既に濃いグレー状)、且つ経年劣化から液化が進行してしまい一部の連動系・連係系パーツにはサビも発生していました。
冒頭解説のとおり、当初のチェック時に絞り羽根の戻りが緩慢だったりした (スイッチ自動設定時) ワケですが、このグリースの劣化が原因であれば何ら問題無くオーバーホールが完了した次第です。しかし、実際にはこの後とんでもない作業に入っていくことになります。

↑今回の個体が初期の生産品であることを製造番号から推察しましたが、当初ご依頼頂く際には当然ながら、そんなことは分かり得ません。上の写真はマウント部内部で使われている連動系・連係系パーツのひとつです・・スイッチの「自動 (A) /手動 (M)」切り替え時に他の連動系・連係系パーツの動きをコントロールしている「棒バネ」が用意されている絞り環との連係環になります。

ハッキリ言って、この「棒バネ」が備わっているタイプだと事前に知っていれば (つまり初期の頃の生産品だと分かっていれば)、今回のオーバーホール/修理はお受けしなかったでしょう・・それほど厄介を通り越して「関わりたくない」パーツが、この「棒バネ」です。
実は、この「棒バネ」はYASHICA製オールドレンズの中にある「YASHINON-DX」シリーズに多用されているパーツでもあるので、当方は2015年以来「YASHINON-DX」シリーズのオーバーホール/修理はもちろん、ヤフオク! への出品さえも一切やめています。

この「棒バネ」の問題点は・・「S字型」のカタチであることです。このカタチから別の連動系・連係系パーツである「絞り連動ピン連係アーム」の動きをコントロールしているワケですが「S字型」のカタチが、ほんの僅かでも変形しただけで「絞り連動ピン連係アーム」の駆動が適正ではなくなり、スイッチ操作に伴ってデタラメな絞り羽根の開閉を始めてしまうのです。
かと言って、この「S字型」の正しいカタチを知っているワケでもありませんから、一体どのようなカタチに戻せば不具合が改善できるのか、毎回毎回何時間もかけて取り組まなければならず大キライなパーツなのです・・残念ながら、今回この「棒バネ」と戯れることになってしまいました(泣) 既に当初段階から絞り羽根の動きに違和感を感じていましたから、バラした時点で溜息しか出ませんでした・・。

↑外していた各連動系・連係系パーツも個別に「磨き研磨」を施し、サビも除去してグリースなどを塗らずとも滑らかに駆動するよう処置します。その上で組み上げたのが上の写真です・・単に組み上げるだけならば至って簡単です。しかし、地獄の調整作業がこの後に待ち構えているワケです。

マウント面の「絞り連動ピン」が押し込まれると、上の写真の左端「絞り連動ピン連係アーム」が動き、グリーンの矢印で指し示した「爪」が鏡筒から飛び出ている「絞り羽根開閉アーム」をダイレクトに操作して絞り羽根を開いたり閉じたりしています。至って簡単な (納得できる) 動きのシステムなワケですが、その調整となるとお話は全く別です。

↑マウント部だけの状態では、調整するにも意味を成さないので組み立て工程を進めます。完成したマウント部を基台にセットします。当初のチェック時に筐体にガタつきが発生していた原因のひとつは、このマウント部を固定している皿ネジ (3個) を完全に締め付け固定していなかったからです・・過去のメンテナンス時に締め付けを忘れてしまったのではなく、故意に締め付けていません。どうしてそのようなことをしたのか、それは後々明確になってきます。

↑絞り環を組み付けたところですが、絞り環の裏側には「溝」が幾つも刻まれています・・各絞り値に見合う位置で溝が刻まれており「絞り値キー」と言うことになりますね。この「溝」部分に鋼球ボールがカチカチと填ることでクリック感が実現されています。

↑この当時の「富岡光学製」のオールドレンズであることを筐体外観から唯一判定できる最大のポイント・・マウント面の「絞り環固定用カバー」をイモネジ (3本) で固定している方式です。単に絞り環を固定する役目のカバー (環/リング/輪っか) であるならば何のことはありませんが、「意味不明」な設計を平気でする富岡光学ならではの拘り (?) がこの部位にもあります。この「絞り環固定用カバー」の固定位置をミスると、絞り環操作でクリック感と絞り値とがチグハグになりズレてしまうのです。

絞り環の内側 (つまりマウント部側の側面) に鋼球ボールを入れれば良かったものを、ワザワザ「絞り環固定用カバー」の裏側に鋼球ボールを入れているので、固定位置をミスると当然ながら前述の「絞り値キー」の溝と位置が合致しなくなりますから、チグハグなクリック感に陥るワケです。従って、この部位もイモネジを緩めては絞り値とクリック感が合致するかどうかの調整が必須になります。開放F値「f1.2」〜最小絞り値「f16」まで、各絞り値とのクリック感の合致と共に、ちゃんと刻印されている絞り値の中央でピタリとクリック感を感じなければ「違和感」になりますョね? 「あれ? どっちの絞り値でクリックしてるんだろう?」頭に来ます・・。

↑今回の個体に様々な不具合 (問題点) が生じてしまった最大の原因が上の写真です。このモデルはマウント面から最大で「8mm」が絞り連動ピンの突端まで含めると必要なのですが、一般的な「ピン押し底面」を有するM42マウントアダプタに装着してしまうと、その「ピン押し底面」の深さが足りません (大抵は5.5mmか6mm)・・当然ながら絞り連動ピンが押し込まれたままの状態になるのですが (そのためにピン押し底面がマウントアダプタ側に用意されている)、問題はこのモデルのマウント部内部の設計です。

絞り連動ピンが必要以上に押し込まれることを想定してはいるのですが「2.5mm」すべてが押し込まれてしまうと、内部の絞り連動ピン受けパーツがマウント部の内壁に突き当たってしまい、同時に必要以上に (許容値を超えて) 絞り連動ピン連係アームと言う連動系・連係系パーツが動いてしまいます。ところが、肝心な「絞り連動ピン連係アーム」がアルミ材で作られているパーツであるために容易に変形してしまうのです。

今回の不具合 (問題点) の根本原因は、今回の個体が過去にピン押し底面を有するM42マウントアダプタに装着されていたために既に「絞り連動ピン連係アーム」が変形してしまっていたことです。結果、絞り羽根の開閉制御が正しく行われずに、且つ自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) との連係動作にも支障を来した次第です。

これがフィルムカメラであれば、シャッターボタンを押し込んだ瞬間的なタイミングでしか絞り連動ピンは押し込まれませんから (しかも、フィルムカメラ側の絞り連動ピンを押し込む機構には内部にクッション性があり適度なチカラで絞り連動ピンを押し込む構造を採っている)、マウント部内部の各連動系・連係系パーツも許容範囲の動きをするワケですが、絞り連動ピンが常時押し込まれ続けると (そもそもそんなことを想定していない時代の設計ですから)、今回のような状態に陥ってしまうワケです何でもかんでも絞り連動ピンを押し込んで使えばいいと言うのは、実は所有者の思い込みであり、今回のモデルは「非ピン押しタイプ」のM42マウントアダプタに装着するのが絶対条件なのです。ご依頼者様は、ちゃんとそのことを心得ているので「非ピン押しタイプ」のM42マウントアダプタに装着して使っていらっしゃいましたが、残念ながら既に内部パーツが変形しています。

↑今回初めてバラすことができた光学系後群内の第4群〜第5群を撮影しました。上の写真のように硝子レンズ自体を切削して生産していたワケですね・・素晴らしいです。ちなみに、この第4群と第6群 (つまり後玉) の2枚だけが屈折率を高める目的から「酸化トリウム」を含有した俗に言う「放射能レンズ (アトムレンズ)」になっているので、経年劣化から既に「黄変化 (ブラウニング現象)」が進行しています・・UV光の照射にて半減程度まで改善させています。

↑こんな感じで光学系後群が鏡筒の残っている面積を最大限使ってセットされます。この「切り欠き」部分には「絞り連動ピン」が位置するので、それを避ける目的で硝子レンズを切削しているワケですね。

↑鏡筒に光学系前後群を組み付けてヘリコイド (オス側) の中にストンと落とし込みます・・鏡筒は一切固定されませんから、フィルター枠 (レンズ銘板を兼ねる) を締め付けて最後にイモネジ (3本) で固定しなければ、鏡筒自体も固定されません。
当初のチェック時に筐体の一部にガタつきが生じていた別の原因がこのフィルター枠の固定を、やはり故意にしていなかったことに一因します。

↑ここまで組み上げが進めば前述の「絞り羽根の開閉幅の調整」や「不具合 (問題点) 」の改善を試みることができます。そのためには、再びバラすワケです・・組み上げが完成したところで具体的な問題点をすべて調べ、その改善をひとつひとつ実施していきますが、実際には複数箇所 (複数部位) との関係で結果的な不具合 (問題点) が生じているので、1箇所を調整すれば、また別の箇所で問題が出てきます。これがオールドレンズの調整の難しさですね・・(泣)

上の写真の解説のとおり、「絞り環連係環」には「なだらかなカーブ」が備わっており、そのカーブ部分にカムが突き当たることで「絞り羽根の角度が決まる」仕組みです・・つまり、設定絞り値になるワケですね。

↑今回の個体の不具合 (問題点) の原因を作っている、また別の箇所 (部位) です。マウント面の「絞り連動ピン」の動きに連動して一緒に動いている「絞り連動ピン連係アーム」の先端部分に用意されている「アーム受け (爪)」が、何とカム下側に入ってしまうのです (ブルーの矢印)。正しくはグリーンの矢印のようにカムに突き当たらなければイケナイのに、下に潜ってしまうのでカムが動かなくなり、同時に絞り羽根の開閉も停止してしまいます。

実際には、カムの下側の台座との間のほんのわずかな隙間「0.8mm」くらいのところに、爪 (アーム受け) の先端部が潜ってしまうのがダメなのです・・つまり、その分「絞り連動ピン連係アーム」が変形していたワケです。アルミ材ですから・・どうして肝心な「絞り連動ピン連係アーム」をアルミ材の板ッ切れで設計しているのか?!(怒) 最低でも真鍮材を使ったらどうなんですか? 富岡光学さん!!!

って、実は、この「絞り連動ピン連係アーム」の直上に真鍮製の「絞り環連係環」が来てしまうので、ワザと材質の異なるモノ (アルミ材) を使っているのが本当の理由なのですね・・(笑)

さらに、距離環を仮止めしてセットすると、今度は距離環を回すトルク感がムラが酷すぎます・・距離環をセットする前までは大変滑らかなのに。結局、調べなければイケナイ箇所が他にも出てきてしまい、以下の不具合 (問題点) を改善させるだけで丸7時間を要してしまい徹夜作業になった次第です (途中でやめると各不具合/問題点の感覚/感触が分からなくなるので止められないから)。

  • 絞り連動ピン連係アームの変形修復。
  • アーム受け (爪) と絞り羽根開閉アームの擦れの解消。
  • S字型棒バネを正しいカタチに戻す。
  • 自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) と棒バネとの連係改善。
  • 距離環のトルク感改善。
  • 無限遠位置の調整。
  • 筐体の複数箇所のガタつき解消。

・・ザッと挙げただけでも、これだけあるワケで、相当にハードな内容です。結局、過去のメンテナンス者も同じ不具合 (問題点) と付き合っていたのではないでしょうか? 今回当方が同じ改善にトライすることになるワケです(笑) それは、故意に緩めたままにしてあった (不具合を少しでも解消したいが為) 部位を見れば自ずと明確なワケで、すべては「絞り連動ピン連係アーム」の変形からスタートしてしまった各部の不具合 (問題点) に繋がっています。

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DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑結局、自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) は「自動 (A)」での操作性を諦めました・・申し訳御座いません。完璧にすべてを修復できれば良いのですが、当方の技術スキルではこれ以上どうにもなりません。お詫び申し上げます。もしもご納得頂けない場合ご請求額より必要額分の金額を減額下さいませ

↑光学系内は第1群 (前玉) と第5群にあった点状のカビを除去していますが、他には何も無いので大変キレイな透明度の高い状態を維持した個体です。

↑後玉の硝子レンズ面には極微細な点キズがあるので (清掃しても除去できませんでした) 微細な塵やホコリが付着しているように見えてしまいますが、塵やホコリではありません。UV光の照射により「黄変化」を半減程度まで改善させています (階調に影響が出ないレベルまで改善しました)。

↑絞り羽根の開閉は、自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) を「手動 (M)」設定の時だけ正常に駆動するよう調整を集中しました (絞り羽根の開閉幅も適正化しています)。「自動 (A)」にセットすると絞り羽根の開閉はデタラメです・・できれば「自動 (A)」にはセットしないで下さいませ。「手動 (M)」オンリーでお使い頂くのが最も安心です。

ここからは鏡胴の写真になりますが、当方による「磨きいれ」を筐体外装に施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。

↑塗布したヘリコイド・グリースは「黄褐色系グリース」を使い「粘性:中程度と軽め」を部位を使い分けて塗布しています。シットリしたトルク感で距離環を回せるようにしてありますが、極僅かなトルクムラは残っているので僅かに重くなる箇所があります。また、当初の無限遠位置がズレていた原因が不明です (調べても分かりませんでした)。本来、鏡筒の外側に「シム環」と言うスペーサーのようなパーツが1つ附随しているハズなのですが、今回の個体にはありません。従って、距離環指標値も極僅かですが入り込んだ位置でのセットになります (指標値刻印が極僅かに被っている状態)。

↑無限遠位置の調整や距離環のトルク改善のためにドリルを使って真鍮製のベース環にイモネジ用の下穴を開けて、ようやくトルク感が改善できました。当初バラす前のチェック時に筐体にガタつきが発生していたのは、各部位のイモネジや皿ネジを故意に締め付け固定していなかったことが原因ですが、そもそもは「固定できなかった」のが原因です。絞り羽根の開閉が適正ではない動きになってしまったり、或いは距離環のトルク感にムラが酷いなど、それらの改善策として故意に締め付けなかったのだと推測します。

以上から、「手動 (M)」設定で使うことや、他の事柄など含めて最終的にご判断頂き、MAX「無償扱い」までの減額をご判定下さいませ。申し訳御座いません。当方の現在のスキルではどうにもなりませんでした。お詫び申し上げます。

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。

↑絞り環を回して設定絞り値をF値「f1.4」にセットして撮影しています。

↑さらに絞り環を回してF値「f2」で撮りました。

↑絞り値はF値「f2.8」になっています。

↑F値「f4」です。

↑F値「f5.6」で撮りました。

↑F値「f8」で撮っています。

↑F値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」になります。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。