◎ YASHICA AUTO YASHINON 5cm/f2(M42)vs Asahi Opt. Co., Auto – Takumar 55mm/f1.8 zebra(M42)
だいぶ前から今回の「検証」をやりたいと考えていたのですが、なかなかタイミングが合わずに数年過ぎてしまいました・・。
ラッキーにも、今回対象のレンズが2本同じタイミングで調達できたので検証を行います。
以下の2本のレンズを「同時にバラして組み立てていく」検証です。
・「YASHICA AUTO YASHINON 5cm/f2 (M42)」
・「Asahi Opt. Co., Auto-Takumar 55mm/f1.8 zebra (M42)」
どうしてこの2本を「同時に」バラして「組み立てていく」必要があるのか・・?!
富岡光学の「Tominon C. 5cm/f2」がオリジナルのモデルであり、そのOEMモデルとしてヤシカに供給していたのが上記の「AUTO YASHINON 5cm/f2」になります。レンズ銘板のみをすげ替えてヤシカに出荷していました。
ところが上記のもう1本、旭光学工業の「Auto-Takumar 55mm/f1.8 zebra」或いは「Auto-Takumar 55mm/f2」もバラしてみると、非常に内部構造やパーツ構成が近似しています。
それを実際に解体後に組み立てていく工程の中で、検証していきたかったのです。
まずは「AUTO YASHINON 5cm/f2」です。オーバーホールのために解体したパーツの全景写真です。
次の写真は今回入手した旭光学工業の「Auto-Takumar 55mm/f1.8 zebra」になります。解体したパーツの全景写真です。
そもそもこの2本は「焦点距離」や「開放F値」などが異なっているので、光学系や絞り羽根を含む絞りユニットに相違があります。
ここからは解体したパーツを実際に組み立てていく組立工程写真になります。
左側が「AUTO YASHINON 5cm/f2」になり、右側が「Auto-Takumar 55mm/f1.8 zebra」です。
まずは絞りユニットや光学系前群を収納する鏡筒です。
この2本の諸元が異なるので、必然的に鏡筒のサイズが違います。しかし鏡筒自体の構造はまったく同一です。
実際に絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。左側が「ヤシノン」で右側が「タクマー」です。
この時点ではまだ何も掴めないと思います。次の写真は「絞り環」を組み付けた状態の写真です。
ここまでは「たまたまデザインが似ている」或いは「当時はこのカタチが流行っていた」・・とも受け取れかねません。
次は1番目の「証」です。この2つのモデルは、絞り環で希望するF値にセットすると、そのまま実絞り (手動絞り) で絞り羽根が閉じてしまいます。ピント合わせをする際には「チャージレバー」をスライドさせて、一旦絞り羽根を「開放状態」にしなければなりません。
その「絞り連動アーム」の「形状」とチャージレバーに連動する「仕組み」がまったく同一なのです。
タクマーのほうが焦点距離と共に開放F値が明るいので、実際には鏡筒サイズも大きくなっています。その関係で「絞り連動アーム」を引き回す距離が少々長くなります。
下の写真はその「仕組み」です。鏡筒の周囲をグルッと「バネ」を使って絞り連動アームを引き回す方法です。そのバネを写しました。バネが絞り連動アームに繋がっており、鏡筒の回りを巡っています。
次の写真が2つ目の「証」です。マウント部内部の「チャージレバー」の構造です。
角度を変えて撮影しました。左側が「ヤシノン」で右側が「タクマー」ですね。
如何でしょうか? ほぼ同一と言っても良いと思います。写真にある「バネ」を使ってチャージレバーを戻す方法になります。
次の写真はチャージレバーを保持すると同時に、バネを格納する「仕組み」を採用したパーツです。
この「環」の突起部分にチャージレバーの「ツマミ」が組み付けられます。バネは何処に入るのか? 「環」をひっくり返した写真です。
「環」自体が「コの字型」になっており、環の中に「バネ」を収納する方式で・・まったく同一です。
実際に組み付けてみました。
このような感じになります。チャージレバーを組み付けて、マウント部が完成しました。
次はヘリコイド(メス側)を無限遠域のアタリを付けてネジ込みます。このモデルは両方とも、組み上げ後に無限遠域の調整機能を持っていません。
まずはヘリコイド(メス側)の写真です。共に真鍮材で作られています。
次の写真が3番目の「証」です。当時はヘリコイド(メス側)を真鍮材で作っていた光学メーカーは他にも多くありました。しかし、次の写真のようにヘリコイド(オス側)が同一になるコトは、メーカーが異なるのに考えられません。
取り付けネジやその他の「穴」の「数」と「位置」まで同一です。
ヘリコイド(オス側)を無限遠域のアタリを付けた正しいポジションにてネジ込みます。
上の写真をご覧頂くと分かりますが・・この2つのモデルでは、距離環の「回転方向」が「逆方向」になります。従って距離環の駆動域に対する「切り込み」が逆方向に切削されています。左側の「ヤシノン」は「左回り」ですが「タクマー」は「右回り」です。
この状態で距離環をセットします。
次の写真が4番目の「証」です。距離環の「回転するチカラ」を鏡筒を前後動させる「直進するチカラ」に変換する「直進キー (棒状)」の「組み付け方法」とその「位置」までが・・まったく同一なのです。
上の写真で奥に1本棒状の突起が刺さっています。これが「直進キー」になり両サイドに1本ずつ、合計2本が刺さっています。
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これらの検証から「謎」が出てきました・・。
「ヤシノン」を製造し供給していたのは「富岡光学」です。一方「タクマー」は旭光学工業です。富岡光学が旭光学工業に「OEM供給」していたことになってしまいます。
富岡光学がヤシカに吸収合併したのは1968年です。一方「Auto-Takumar 55mm/f1.8 zebra」が発売されたのは1958年・・。富岡光学は自社ブランドのモデルを一時期発売してはいましたが、主力はOEM生産です。当時の光学メーカーの格付からすれば、旭光学工業のほうが富岡光学よりも遙かに会社規模は大きいのではと思うのですが・・どうなのでしょうか?!
どうして旭光学工業は富岡光学からOEMレンズを供給してもらっていたのでしょうか・・???
因みに、旭光学工業の「Auto-Takumar 55mm/f2」も同一になります。今回はワザと諸元の異なるタクマーのほうを入手しての検証です。
如何でしたでしょうか? ネット上ではタクマーとの比較でも (外見が似てますから) 距離環の回転方向が異なったり、コーティングの色合いが違う、そもそも焦点距離も開放F値も異なるなど・・それらの理由から「別モノ」として扱われることが多いですが、今回のバラしで具体的な「非常に近似した」構造とパーツ構成には、ないがしろにはできない要素が含まれていると思います。
私の中ではちょっとした「ミステリー」になっていますね(笑)
ここからはヤシノンの写真になります。光学系前群を組み上げます。前玉裏面に極微細なカビ除去痕が数箇所あります。
こちらは光学系後群です。やはり極微細なカビ除去痕が数点見受けられます。
ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。富岡光学製のOEMモデルとして発売された「AUTO YASHINON 5cm/f2」ですね。原型は「Tominon C. 5cm/f2」です。
光学系前群もキレイになりました。極微細な点キズ3点と極微細なカビ除去痕が数箇所ある程度で、大変キレイな状態を維持しています。このモデルはカビが生じている個体が非常に多いですね・・。
ここからは鏡胴の写真です。外観も経年の使用感をほとんど感じられないほどの大変キレイな状態を維持しています。距離環や絞り環など、とても滑らかな駆動になり、ほんの軽いチカラでピント合わせもでるので・・楽ですね。
描写は銘玉と言われている「Tominon C. 5cm/f2」と同一ですから、ブランドの分だけお安く入手できるのがありがたいですね。
光学系後群にも極微細なカビ除去痕が数箇所ありますが、これらはすべて写真への影響はありません。