〓 CHINON (チノン) AUTO CHINON 55mm/f1.4《前期型−II:富岡光学製》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
チノン製標準レンズ・・・・、
AUTO CHINON 55mm/f1.4《前期型−II:富岡光学製》(M42)』
です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体はこの当時作られていた『富岡光学製』と思しきOEMモデルのすべてを含んでカウントすると、当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で55本目にあたります。さらにその中でチノン製だけでカウントすると僅か9本目と言う状況ですが、実は先月末に1本出品したばかりでまだ1カ月も経っていません(笑)

前回出品の個体を手に入れたタイミングより遡る事1カ月近く前に実は既に海外オークションebayで調達しており、遙々英国から届いた個体が今回オーバーホール済で出品する個体になります。つまり先に調達していたもののその個体が届く前に前回扱った個体を国内で発見してしまったので順番が逆になってしまいました(笑)

特に当方が好きなモデルだからこだわって調達しているワケではありません。実はこれらこの当時の富岡光学製OEMモデルの多くに「後玉表面のコーティング層経年劣化による薄いクモリの発生」が頻発しており、且つそれら薄いクモリはどんなに清掃しようともまず除去できません。コーティング層が変質してしまった結果なので「蒸着してあるコーティング層を一旦研磨して剥がさない限り薄いクモリは除去できない (もちろん剥がした以上再蒸着が必要になる)」と断言できます。

そんな近年の問題を抱えている現実からたまたま2つの個体を続けて手に入れてしまいましたが、逆に言うなら「それほど後玉の状態が良い個体の入手が相当難しい」のが残念ながらこれら富岡光学製OEMモデルの現況です。

従ってこのような状況を鑑みるに富岡光学製OEMモデルのいずれのタイプを狙うのかという 趣味嗜好以前に「とにかく後玉がキレイなら手に入れろ!」みたいなくらい指摘できてしまう光学系の限界がついに訪れているのだと考えています。

その意味で当方では『オールドレンズは絶滅危惧種の一つ』との認識であり、おそらくこれから近い将来50年後には市場流通している大多数の個体は「モデルの希少性よりも何を置いても光学系の透明度だけで高値が付く時代」の到来と容易に妄想できそうです(笑)

ちなみにこの後玉の研磨をするにも凡そ人力レベルで処置できる話ではないので (研磨を専門にしている会社もあるが) 例えばルーターなどにバフを装着して機械レベルで研磨して剥がそうなどとトライすると悲しい結末を迎えます(笑) そのように機械レベルで処置するとたいていの場合で光学硝子レンズ面が傷んでしまいコーティング層どころか光学硝子自体を破壊してしまう結果に陥ります (要は細かい凹凸ができてバタバタになる)。後玉にポツポツと小さな穴が空いているような凹凸がある個体はパッと見ただけでそのような処置が施されてしまったのだと推測できますね(笑)

もちろん光学系内に貼り合わせレンズが配置されている場合、そのバルサム切れに伴う薄い クモリの発生も特に富岡光学製OEMモデルに限らずどのオールドレンズにも起こり得る話なので、そこまで勘案して調達を試みるとなかなか簡単な話ではなくなります。特に調達先が海外オークションebayになると個体の状況の信憑性がさらに低くなるのでハードルは余計に高く なりますね(泣)

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは 反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

するとこれらバルサム切れが光学系のどの位置で起きているのかによっても写真への影響度が変わるので、例えば前群側で起きているバルサム切れは「霧の中での撮影」のようになりますし、逆に後群側でのバルサム切れはそもそも集光する箇所なので「霧の中での撮影」にプラスして「本来の描写性を維持しない写り方」まで堕ちていきます(涙) 一旦ハガレ始めてしまったバルサム剤をムリに圧着させたところで既にバルサム剤としての機能を失っているのでその時点で逃げられてもまた時間が経てば数ヶ月くらいで浮いてきますから厄介極まりない話なのです。

ましてや海外オークションebayから調達する場合「たいていの場合で航空便で輸送」するのでさらに厳しい環境を突きつけてしまい「高高度での気圧の変化」に耐えられずオークションで出品していた時点で起きていなかったバルサム切れが届いた個体に発生している事も十分考えられます (実際に当方でもそのような個体が何本もある)。光学硝子材はその種類にも拠りますが凡そ1,000度までなら耐えられるのでたかが盛夏の車の中に放置プレイされても何ら気に止める必要もありませんが、相手が「気圧」ともなるとその硝子材の種類の違いが仇となり破壊へと突き進むので怖いのです(怖)

従って50年後にモデルとしての希少性よりもむしろ光学系内の透明度のほうが「商品価値として高まる」のもあながち違わない予測とも言えそうです。

今回オーバーホール済で出品する個体が遙々英国から届いたものの、実のところそのような ハードルを乗り越えて当方の手元にまで届いたのだと考えるとまた別の角度から慈しむ想いになったりしますね(笑)

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はAUTO CHINON 55mm/f1.4《前期型−II:富岡光学製》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。先月末に続いて2回目の出品になりますが、今回も バッチリ仕上げられています。

今回の個体は海外オークションebayで英国から遙々届きましたが、既に直近でメンテナンスが施されており恒例ですが「塗布されているヘリコイドグリースは微かに芳香が匂う」ワケで、しかもちゃんと「黄褐色系グリース」を塗布していると言うおそらくはプロの手による整備だったと推察しています。至る箇所に固着剤が注入されているので締付ネジのネジ頭に固着剤を塗る日本の整備者とは異なり本道たる「ネジ部に注入」とこれもまた当方のポリシ〜に合致 する行いで久しぶりに唸ってしまいました (最近あまり目にしないから)(笑)

逆に言うなら久しぶりに固着が酷くて解体に苦労した次第ですが、バラしてみればそのようにプロの手によるものだったと至極納得です。

しかも当初バラす前の時点で距離環を回してみるとまるで当方の整備の如く似たような擦れ感を伴うので思わず笑ってしまいました(笑) 世の中似たような考えを持つ人も居るものだと 機会があればお目にかかってお話したいくらいです。

そんなワケで久しぶりに他人様の整備で「おぉ〜!」と唸ってニヤついてしまいました・・。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

但しこのプロページ最後に載せている今回のこの個体に対する評価判定として「クモリの有無」について「」としてますが、後玉外周部分に1箇所だけ全長1cm弱ほどの領域でカビ 除去痕なのかコーティング層の経年劣化なのか判別ができないくらいにとても薄いクモリが 残っています。

おそらくLED光照射状態で「必ず存在する」と決めてかかってこれでもかと真剣に探さない限りその領域を発見できないと思いますが(笑)、そんくらいにとても薄いクモリを指して一応クモリである以上「」と扱って判定しています。

従って気にならないレベルですがよほど神経質な人でも「あっ!これの事?」と下手すると 笑ってしまうかも知れません(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無ですが、前述のとおりカビ除去痕なのか否か判別がとても難しい箇所がこの後玉の1箇所に残っています (写真では写せません)。

また当方では光学系内をLED光照射して撮った写真を載せません。その理由は光学系内のどの群に生じているのか判別できないままに認識してしまうのでそれは違うとの立場から敢えて撮影しません。前群なのか後群なのかどの構成箇所なのかの違いで写真への影響度も変化するのにそれを一緒くたに捉えられるのは整備者としては不本意だからです。

その意味で光学系内の状況なのだから結果的に同じだと言う反論には当方は同意できません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:18点、目立つ点キズ:11点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:15点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かなカビ除去痕が計5箇所あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い4mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(第2群外周に1本目立つ拭きキズがあります)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(後玉外周に1箇所1cm程の領域にコーティング層経年劣化に伴う極微かな薄いクモリあり)
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになりA/M切替スイッチや絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じていく際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

なお一部のオークションで上の閉じ具合よりも広い開口部の大きさ/カタチ/入射光量で最小 絞り値「f16」の写真が出品ページに載っている場合がありますが、この当時の多くの富岡 光学製OEMモデルで最小絞り値「f16」時の閉じ具合は上の写真になります (もちろん一部の
モデルに異なるタイプも顕在するので必ずではない
)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・A/M切替スイッチのツマミのカタチは片側だけが短いのが製品の仕様です(M側が短い)。ツマミの一部が破断しており過去接着しているようです。再び折れやすいので操作に際しご注意下さい。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製WPC WIDE MCレンズガード (新品)
本体『AUTO CHINON 55mm/f1.4《前期型−II:富岡光学製》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

距離環を回すトルク感は実は当方の感触からすれば「軽め」なのですが神経質な人も居るので念の為に「重め」或いは「普通」にしています。

また前述のとおりA/M切替スイッチのツマミが片側破断したのをおそらく前のメンテナンス時に接着しているようなのでご注意下さいませ (当方では処置せずそのままにしています)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。既に「回折現象」の影響が現れ始めておりピント面の解像度が極僅かに低下しています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。