♦ Canon Camera Co. (キヤノンカメラ) CANON LENS 50mm/f1.2《Sレンズ:前期型》(L39)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わりヤフオク!出品するモデルは、国産は、
キヤノン製標準レンズ・・・・、
CANON LENS 50mm/f1.2《Sレンズ:前期型》(L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

ご落札頂きましたぁ~!(涙)
ありがとう御座います!(涙)

当初バラす前時点の実写確認でその異常性を視認し、光学系後群第4群の2枚貼り合わせレンズ「バルサム剤の厚み」が多すぎると、直ぐに原因を直感したものの、本来簡単なハズのたった2枚の再接着に四苦八苦してしまい(汗)、
自身の技術スキルの低さを痛感した次第です・・(泣)
(逆に言えば、それだけ厳しい追求を極めた光学設計だったことが判明)

14年間の経験値と光学系第4群の現ブツのカタチを知っていたが為に、しっかりと確実に適切な組み上げが遂行でき「任務完了」といったところです(笑)

願わくば、是非開放からの写真撮影にもご使用頂き、その醍醐味をご堪能頂きたく祈念するところで御座います(祈)
今一度、本当にありがとう御座いました!(涙)

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた14年前からの累計で、当時のCanon製標準レンズ「Sレンズシリーズ」だけで捉えると19本目にあたりますが、今回扱った「50㎜/f1.2」だけカウントすると僅か6本目です。さらに述べるなら、実は今まで扱ってきた5本は全てオーバーホール/修理ご依頼分での個体だったので、純粋なオーバーホール済によるヤフオク!出品は今回が初めてになります。

このモデルについてはオーバーホール/修理でご依頼を受け付けて本格的に整備するようになったのは2020年からですが、それ以来このモデルの描写性能に惹かれて、是非ヤフオク!でもオーバーホール済で出品したいと市場流通個体を探していましたが、その多くの個体で光学系の状態に確信が持てず、なかなか手を出せずに過ぎました(涙)

今回の扱いに際し、現在ネット上で確認できる海外オークションebayなどに流通している個体をチェックしたところ、50本のサンプル数の中で実に「真に光学系がクリア8本のみ」というリアルな現実で、残りは「多少なりともクモリを確認24本」に対し「前後群でのバルサム切れ発生18本」との状況に、さすがに恐れをなした次第です(怖)
(14年間で3,400本も整備していれば、さすがにパッと見でも察しが付きます)(笑)

これらの中で実際に現ブツを手にすれば、おそらく「クモリ」と判定した個体の中にも、実はバルサム切れ個体が混じっているのは想定に難くありません(汗)

巷ではこのような状況を指して「クモリが多い持病持ちのモデル」の如く語られることが多いですが、当方が考えるにそれは違うと思います

このモデルの実装光学系は5群7枚拡張ダブルガウス型光学系なので、基本的に絞りユニットを挟んだ前後群の中に、1つずつ貼り合わせレンズが配置されるのは特に珍しい話ではありません。特に標準レンズ域のモデルになれば、そんな光学系を抱えている個体は数多く流通しています。

それなのにどうして巷では「クモリの持病」と揶揄され続けるのでしょうか???(汗)

すでにこの時点で皆さんは「持病と片付けることで納得感を得られる」方向性に、自らの受け取りを持っていこうとしており、そうすることで「仕方がないのだ」との諦めに近い納得感を得てケリを付けたがっています(笑)

残念ながらそれがそもそも間違っています。皆さんがそうやって本質から目をそらそうとするから、それに付け込んで「ごまかしの整備」をする整備会社や整備者が横行し続けます(汗)

決して「持病」ではありません。過去メンテナンス時の整備会社や整備者が、鏡筒内壁や光学系格納筒内壁などに「反射防止黒色塗料」を塗ったくってしまうから「光学硝子レンズに対する圧が加わり続け、その環境下で経年劣化進行が促されている」のが真実なのです!(涙)

何故なら金属材は日本の四季の中で、その気温差に金属膨張/収縮を繰り返しています。その中にあって光学硝子材は金属材と一緒に膨張/収縮をしません・・ひたすらに耐え凌いでいるのです・・何と健気なことなのでしょう(涙)

逆に言うなら、製産時点はそのような溶剤で溶けてしまう「反射防止黒色塗料」など着色していなかったハズです。何故なら、光学設計者が真に必要と考える箇所には、ちゃんと製品設計者と話を通して製産ライン上でメッキ加工しているのがリアルな真実なのに、誰もそれを認めようとしません (そうしないとメッキ加工の厚み分を光学系の計算値に含められないから)(涙)

するとこの時、金属材からその熱膨張/収縮に係る「圧力」を受け続けながら、2枚貼り合わせレンズの光学硝子材が耐え続けている中、張り合わせ面に接着剤として使われている「バルサム剤」こそが、それに耐えられずに浮き上がってしまう、或いは確実に剥離してしまう原理なのです。

・・だから不必要な「反射防止黒色塗料」の着色をやめてほしいと訴え続けています(涙)

特に近年非常に多くなっている「レジン液」を代用した接着には、また別の懸念を抱えることになります(泣) 本来光学硝子レンズの接着に適さないそれら「レジン液」は、経年の中での褐変化、或いはせん断性の脅威に晒され続けます。エポキシ系瞬間接着剤も含め垂直方向での接着力が強い原理は、硬化時に圧力が加えられることで結晶化する際により強固になる性質からです。ところが垂直ではない斜め方向や横方向からのチカラに対してはめっぽう弱く、アッと言う間に剥離します。この時剥離面をチェックすると「接着していた片側面にそれら接着剤が集中的に残る」から一目瞭然です (何故なら、垂直方向で互いに結晶化するから一方の面に集中する性質がある)(汗)

この時、昔から使われていた「カナダバルサム」を考えてみて下さいませ。まさに米国東部やカナダに広く産するバルサムモミなどから採取できる天然の樹脂系樹液であり淡黄色の色合いです。周囲の気温変化に対し柔軟に対応し、85℃までの温度帯まで溶けずに耐え続けますが超えるとすぐに溶解します。仮にカナダバルサム剤を使っていた貼り合わせレンズを剥離すると「カナダバルサム剤は剥離面の両方に残っている」と共に、ツンッと鼻につく刺激臭 (松脂の臭い) を伴うのですぐに分かります (100%間違いなく片側だけに集中的に残りません/これが光学レンズ専用の本来適切な屈折率と透過率を担保するバルサム剤の証です)。もう一度言います・・片側に残るのは「レジン液」です(泣)

カナダバルサムは凡そ1.50nの屈折率を誇る為クラウンガラスに近い屈折率により昔から多用されていますが、耐候性が低く近年は合成樹脂剤に代替されています。当方で使う光学硝子レンズ専用バルサム剤の屈折率は「1.65n」なので一般的な数値であるものの「耐用温度帯−45℃+156℃」のタイプに変更して現在使っています (北海道でも耐えられるようにしました/以前取材させて頂いた工業用光学硝子レンズ精製会社様にご相談し、調達ルートを確保しました)。

さらに指摘するなら、一度でも浮き始めてしまったバルサム剤は「そのせいで張り合わせ面の蒸着コーティング層に対し、酸化の脅威を今度は与え続ける」ことに皆さんは着目するべきです(汗) 張り合わせ面の蒸着コーティング層には保護膜が積層されていない為、酸素に晒されると容易に酸化が促されます(怖)・・結果、せっかくバルサム剤を剥がして再接着を試みても「そもそも張り合わせ面の蒸着コーティング層経年劣化進行による薄いクモリが残っている」結末になり、最終的に蒸着コーティング層を剥がす必要性に迫られます(涙)

・・これが14年間、3,400本のオールドレンズを扱ってきた経験値です(泣)

もっと言うなら、光学硝子レンズを清掃している際、シルボン紙を巻いて清掃液を浸して回す時、大変滑らかにクルクルと清掃できるのは「保護専用の蒸着層が被せられているから」と指摘でき、例えば仕方なくガラセリウムで表層面を剥がして蒸着コーティング層が露出した時、同じようにシルボン紙に清掃液を浸してもツルツルと小さく回せません(汗)・・抵抗/負荷/摩擦が増大してしまい、明らかに掴んでいる指にその抵抗感が感じ取れます。

このように光学硝子レンズには幾層にも化学的に被せられているのが一般的なので、外見から捉えた「薄いクモリ」が必ずしも清掃だけで除去できるとは限らず、さらにガラセリウムを使い剥がしたとしても「既に最下層の蒸着コーティング層まで酸化が進んでいれば、薄いクモリが除去できるハズがない (要は蒸着コーティング層すら剥がす必要に迫られる)」運命なのは、火を見るよりも明らかです(汗)

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今回扱った個体も、光学系内をLED光照射で確認しても薄いクモリすら皆無な状態で、本当に喜んでいました(祝) ようやく手に入れた納得できる光学系の個体だったのです(涙)

ところが当初バラす前に念のために実写チェックしてみると「ピント面は甘く、しかもピントのピーク/山の前後にパープルフリンジブルーフリンジが現れる」というとんでもないリアルな現実でした(涙)

・・これが意味するのは当方には明白です。バルサム剤が厚すぎるのです!(涙)

光学系後群側の第4群「集光の役目」の2枚貼り合わせレンズ部分に処置されたバルサム剤が厚すぎた為に「歪曲収差が増大してしまい波長の長短両端で結像ズレを来してしまい、ピント面の解像度低下 (ズレた分の光量が逃げて減じられるから) を招き、解像度不足に陥り、プラスしてピーク/山の前後にそれらズレた入射光が透過してくる (その結果、波長の違いを反映して各色のフリンジが順に現れる)」という流れが、光学知識皆無な当方ですら容易に察しが付きます(涙)

当然ながらそのようなバルサム剤の処置を施したのは製産時点ではなく「過去メンテナンス時の整備者の所為」ですが、当方が許せないのは、そのような対策を執れる整備者の技術スキルなら「せめて組み立て後にちゃんと実写確認してチェックしてみたらどうなの???」と言いたいのです(泣)

結局、過去メンテナンス時の整備者の不始末の尻拭いをさせられるハメに
陥っているのは当方であって、毎回毎回本当にこのような立場の宿命に
うんざりしています(涙)

  ●               

↑例によって「極度のカメラ音痴」ともなれば、そもそも今回扱うモデルの存在すら知らなかったほどで、上の図はキヤノンのカメラミュージアムからの引用になります (当方により構成図など手を加えています)。

上の光学系構成図は、今回のオーバーホールで完全解体した際、光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図なので、まさに実装しているその実態を正確に表しています (ネット上に多く掲載されている構成図を引用しての、そのままのトレースとは別モノです)。特に今回バルサム剤を再接着した光学系第4群のカタチは、まるで別モノです (張り合わせ面コバ端が極僅かに窪んでいる/凹んでいる)(笑)

↑なお冒頭のとおり、海外オークションebayで今回扱ったモデルの個体サンプル写真を50本ピックアップして調査しましたが、その際モデルバリエーションを掴みました。製造番号を基にした時「1250635942前期型」に対し「3686354472後期型」とレンズ銘板に刻印されているメーカー銘の表記が変化しています (それ以外で仕様や内部構造、構成パーツの変化は認められず)。

上に挙げた写真はそれら調査した際の終端を示す製造番号の個体です (いちいち「証拠写真」を明示しないとイケナイので)(汗)

前期型
CANON LENS 50mm f:1.2 Canon Camera Co. Japan No.xxxxx
後期型
CANON LENS 50mm 1:1.2 No.xxxxx Canon Camera Co., Inc. LENS MADE IN JAPAN


↑また例によって最近「光学系開発/設計のルーツを巡る旅」を辿るのが楽しくなってしまい、オーバーホールの整備作業で厳しいリアルな現実に遭遇する中、少しでも自身の気力を保つが為に勤しんでいるところで御座いまする(汗)

US2836102 (1955-08-16)』米国特許庁宛出願
→ キヤノン在籍「伊藤 宏」氏による発明

氏による特許出願申請書の提出が発売前年の1955年なので、この発明案件こそが今回扱うCANON LENS 50mm/f1.2《Sレンズ:前期型》(L39)』の実装光学系を語るべきモノとの推測に立ちます(汗) そしてその記述を読んでみると「本発明の目的は、特にゾーン球面収差を効果的に補正することにより、非常に高い開口率の対物レンズを提供することにある」との出だしてスタートし「6つのレンズから成す高開口率ガウス対物レンズには、多くの場合で絞り開放時に斜め球面収差の残存が課題になる為、少なからずフレアの発生という共通の欠点を抱える」と続き、まさに今回扱うモデルがネット上での評価で語られている状況に一致するその内容を見た時「まさに既に特許出願申請書の記述内で明示されている」点に於いて、さすがだと感心してしまいます (きっと光学設計者なら当然に考えるのでしょうが)。

この記述が語っている内容は「要は多少に関わらずフレアの発生により、それら斜め球面収差の影響がより強調され解像度不足とコントラスト低下を印象付けてしまう」描写面での負の印象に繋がっていると指摘しているように受け取れます (あくまでも光学知識皆無な当方の妄想範疇を逸脱しません)(汗)

そして上に挙げた中で、氏がさらに前年の19554年に出願したに示す特許出願申請書の記述の中で示したように「それら残存球面収差は6つのレンズで構成されるガウス型の接合面に於ける、屈折率と曲率半径の配置を適切に選択することで大幅に改善が期待できる」としています(驚)

実はすでにこの記述を読んだ時点で、今回扱った個体第4群貼り合わせレンズの接着面の (バルサム剤の厚みの) 問題であることが、まるでそのまま示されているようなもの (ピント面の解像度不足と前後のフリンジ発生) との受け取りだったのです(驚)

つまり今回扱ったこのモデルでは、開発の段階からピント面の極度な解像度不足が起きる背景を改善している (改善させた発明) と述べているワケですから、それがリアルな現実に起きているとなれば「まさに接着面が適切ではない」と指摘されているようなものです(笑)

そこでバラしてから先ずは前群側の第3群2枚貼り合わせレンズをチェックしたところ、光学硝子レンズが格納筒のアルミ合金材にモールド一体成型なので、再接着する要素が存在せす、残るは後群側の第4群と言う話にならざるを得ません(笑) それで実際に現ブツを確認したら「あらまッ! 本当にバルサム剤が厚すぎる」とまるで目からウロコの感じでした!(笑)

要は一見全く目の前に起きている瑕疵内容とは関係性がない話のように捉えられがちなものの
実のところ光学設計時の狙いを探ってみれば、まさにその答えが遥か昔に記されていたようなストーリーに至り・・ちょっとしたファンタジックな感慨にふけっていた感じです(笑)

↑例によって今回も氏が発明した参照/引用先を辿ってみました (既知の特許出願について時系列に昇順です)。

US2718174 (1953-06-25)』米国特許庁宛出願
→ 富士フイルム在籍「土井 良一」氏による発明

まさに今回も直前に参照しているのは海外勢の既知案件ではなく、国内勢たる富士フイルムの「土井 良一」氏による発明であり、この1950年代初頭は何とも心強くも頼もしい限りです (ありがとう、先達の皆様方!)(涙)・・この発明案件はそのまま、製品として1954年に発売されたFUJINON 5cm/f1.2 (black)《後期型》(L39)』に繋がっていると受け取れます。

そしてやはり記述を読むとキヤノンの伊籐氏が述べていたとおり「本発明は45°までの画角で使用できる既知のf1.5、f1.4の対物写真レンズに於ける欠点である残存収差に関し、開口率をf1.3、或いはf1.2まで増大させても球面収差、コマ収差、サジタルコマフレアについて良好に改善を期待できることを示した」と述べ、その実施案件の中から「Fig.1」が量産型光学系へと繋がっています。

サジタルコマフレア
結像した画像周辺部の点光源の像が翼を広げた鳥のようなカタチに滲む収差

US2701982 (1953-03-26)』米国特許庁宛出願
→ フランスのP. ANGENIEUX PARIS社発明案件

US2681594 (1950-11-07)』米国特許庁宛出願
→ キヤノン在籍「伊藤 宏」氏による発明

先日このブログにアップしたCANON LENS 50mm/f1.8《Sレンズ:第2世代》(L39)』に実装した光学系の発明案件と推測できます。

US2319171 (1940-12-02)』米国特許庁宛出願
→ TT&H社在籍時のArthur Warmisham (アーサー・ウォーミィシャム) 氏発明

GB544658 (1940-10-21)』英国内務省宛出願
→ TT&H社在籍時のArthur Warmisham (アーサー・ウォーミィシャム) 氏発明

これらArthur Warmisham (アーサー・ウォーミィシャム) 氏の発明案件は「屈折率が高いクラウンガラスと低いフリントガラスの凹凸を接着することによる近軸色消し効果は知られているものの、2種類のガラスの相対部分分散が異なる為、二次スペクトルと呼ばれる残存色収差が顕在する」と述べ「非点収差と像面収差に歪みを犠牲にすることなく、類似の対物写真レンズに於ける二次スペクトルの良好な改善を示す」としています。

US2117252 (1935-12-18)』米国特許庁宛出願
→ KAPELLA社のHorace William Lee (ホレス・ウィリアム・リー) 氏発明

US2012822 (1933-07-22)』米国特許庁宛出願
→ KAPELLA社のHorace William Lee (ホレス・ウィリアム・リー) 氏発明

同じく英国はTaylor, Taylor & Hobson社に在籍していたHorace William Lee (ホレス・ウィリアム・リー) 氏が退社して自身の会社「KAPELLA Ltd.」を創設した後に出願した発明案件です。前出の同僚だったArthur Warmisham (アーサー・ウォーミィシャム) 氏も一緒に転籍していたようです。

詰まるところ、様々なオールドレンズの基を正せば、Horace William Lee (ホレス・ウィリアム・リー) 氏が発明した「4群6枚オピック型光学系」を経由せざるを得ないようで、本当に頻繁に登場します(驚)

そんな中で今回のオドロキはこのの案件であり「まるで今回のモデルの光学系まんま」と
本当にビックリでした (特許出願申請書掲載図面の中のFig.3が該当する)(笑)

その記述の中心的要素をみると「分散要素は2つの凸メニスカスが互いに接触、或いは近接し
且つ2つのより高い屈折率の二重の凹メニスカスの組み合わせ
(絞りユニットを挟んだ2つのダブレットを意味する) と組み合わせることでf1のような大きな開口率すら実現し得る拡張性を有する」と記しており、結果として伊藤氏の発明は凡そそれを体現させてしまったと指摘できるのではないでしょうか(驚)

・・まさにルーツがルーツであることを示しているが如く、本当に楽しいです!

↑なお上の図は「球面レンズのカタチ」を解説しており、光学系内の光学硝子レンズのカタチは凡そこれらのどれかに該当します (もちろん外形サイズや厚みに曲がり率などは任意です)・・
ちなみに入射光の透過する方向を黒色矢印で示しています (左から右に向かう方向)。

すると例えば❶ 両凸レンズは、表裏面の曲がり率 (膨らみ具合) を別にして、垂直方向での中心から左右に互いに突出している時点で「両凸レンズ」と呼称します。その表裏面での突出の度合いから一方が「平坦」の場合にの呼称になります。

また「メニスカス (meniscus)」はレンズのコバ端 (上の図では上下方向の端部分を指す) とレンズの中心部分の厚みを比較した時の度合いを基に「中心>端凸メニスカス」と呼称し()
その反対を意味する「端>中心凹メニスカス」と呼びます () (メニスカスの詳説はこちらwikiに説明されています)。

そして 色付のグループを指して「凸レンズ系」を表し、一方 色付が「凹レンズ系」を意味します。

・・いずれも曲がり率が任意であることを前提にすれば、分かり易いと思います(笑)

従って入射光の方向性に対して「左から右に向かう透過」なら、その時に「凸平レンズ」と言われれば「前玉側方向が凸で後玉側方向の面が平坦」だと、すぐにレンズの向きが確定し理解が進むワケです(笑)

なお一部には「両平レンズ」と言う、要はまるで両面のガラス板のような光学硝子レンズが存在しますが、これは入射光/波長の分散を逆手に活用した概念で、実際に前後玉として使っていたりする光学設計があります (球面レンズではないので上の一覧には載らない)。

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はCANON LENS 50mm/f1.2《Sレンズ:前期型》(L39)』のページをご参照下さいませ。

内部構造は直近でこのブログに幾つか挙げてきたCANON LENS 35mm/f1.8《Sレンズ》(L39)』CANON LENS 50mm/f1.4《Sレンズ:第1世代》(L39)』CANON LENS 50mm/f1.8《Sレンズ:第2世代》(L39)』などほぼ同じ構造設計を採り、各構成パーツの役目にカタチまで含めて互いに近似しています。

それらの中で今までに解説してきたこれら別焦点距離モデルに共通項的に問題として取り上げられるのが「絞りユニット内構成パーツの位置決め環固定手法」とそれによって影響が現れる「最終的な絞り環操作の硬さ」と言う操作性を損ねる大きな要因に対し、まるで同じ手法で過去メンテナンス時に整備している点に於いて「同一の整備会社、或いは在籍する複数人の整備者の仕業による」との結論に達し、プラスしてこれらの問題については「製造メーカーたるキヤノンの設計面に於ける配慮不足」との側面も併せ持つことをほぼ確信しています(汗)

少なくとも「位置決め環は鏡筒に格納した後、鏡筒側面から3方向による均等配置で、イモネジ締め付け固定にするべきだった」と指摘でき、そうしていれば大凡絞り環操作時に非常に硬い操作性に陥る因果を大部分防げていたと結論づけしました。それを「僅か2本で2方向からの集中締め付け固定」としてしまったが故に、今現在の市場流通個体に於ける「絞り環操作が異常に硬い」瑕疵内容に繋がっています。

しかしその根本であるキヤノンの設計面よりも何は置いても「過去メンテナンス時の整備者の処置が悪い」ワケで、それによってキヤノンの設計配慮の欠落部分がより誇張的な瑕疵内容へと進展してしまっている背景が本当の真実です。

罪深きは、今まで数多くのキヤノン製「Sレンズシリーズ」を整備してきた、或る特定の整備会社に在籍する複数人の整備者の所為が悪いのです(汗)・・いったいどうして絞りユニットにグリース (しかもウレアグリース) を公然と平気で塗ることができるのでしょうか???

そのような処置を行う時「はたして絞り羽根の油染みへの配慮をどう考えているのか???」について、マジッで面と向かって追求したいくらいです(怒)

するときっと「使っているうちにヘリコイドグリースのせいで自然に油染みしてくる」と普通に語るのでしょうが、そういう考え方こそが「プロの整備者としてあるまじき概念」なのだと言っているのです!

↑今回扱った個体もやはり「絞り環操作が異常に硬すぎて、力づくで絞り環を回そうと試みると、マウント部が回ってしまうほど」です(涙)

この非常に操作面に於いて違和感を超越し「マジッで困る」問題について、過去メンテナンス時の整備者の仕業を露わにしていきます。

上の写真は当初バラして始めている途中での撮影です。このモデルは鏡胴が「前部/後部」の
二分割方式の設計なので、鏡胴「前部」だけを抜いて絞り環を外したところの写真です。

鏡筒を下に向けて撮影しています (下方向が前玉側方向を意味する)。すると鏡筒内部に組込まれている絞りユニットの構成パーツ「開閉環」から飛び出てきている「開閉キー」と言う金属棒を受けて保持する「コの字型の受けパーツ」をグリーン色の矢印で指し示していますが、先ずはこの「コの字型をラジオペンチでムリヤリ曲げて調整している」始末で、本当にロクなことをしません(汗) ちょうどグリーン色の矢印で指し示している箇所の左右両端位置にラジオペンチで強く掴んだ時の小さな凹みが残っているので間違いありません(汗)

何故なら、その「コの字型受けパーツ」の締付ネジの穴にはマチが備わり、左右方向に少しだけ固定位置をズラせられるよう配慮されている設計です。しかしそれが右端に突き当たってしまい、それ以上コの字型の位置を左方向にズラせないから「ラジオペンチで掴んでエイッと右向きに曲げてしまった」のがこのようにバラせば一目瞭然です(汗)

・・はたしてこういう所為を「整備している」と呼ぶべきなのでしょうか???

当方にはどう考えても「ごまかしの整備」にしか見えず、こういうことを (外から見えないからバレないので) 平気でヤッています(怒)

そもそもどうして製産時点に正しく位置合わせできていたハズなのに、経年の中で位置合わせができなくなるのでしょうか (ズレていくことを指摘しているのではなく、位置合わせができなくなることを指摘している)???(笑) 当方のような頭が悪い人間でもそんな事柄はすぐに考えられるのに、どうしてこうやって直ぐに「ごまかしの整備」に走るのでしょうか???

・・本当に低俗な整備レベルです!(怒)

そしてブルー色の矢印で指し示している箇所のように、他の直近で扱ってきた「Sレンズシリーズ」同様「相変わらず絞りユニット内部にウレアグリースを塗ったくっている」始末です(汗) 今まで直近で扱ってきた「Sレンズシリーズ」のモデルも製造番号も何もかも別モノなのに、どうして同じウレアグリースが絞りユニット内部に塗布されているのでしょうか???(汗)

・・このようなリアルな現実に、本当にオドロキを隠せません!

ちなみに赤色矢印で指し示している箇所の白っぽく残っている痕跡は、まさに「カビ」そのモノです(汗)

↑上の写真は光学系第4群格納筒を真横から撮影しています。他の直近で扱ってきた「Sレンズシリーズ」同様、やはり今回のこの個体にも「数値がマーキングされている」事実であるものの、他の個体との違いは「数値の筆記書体」であり、要は別の人の手によるマーキング/刻み込みなのが明らかです。

それが意味するのは、最低でも2人この整備会社に「Sレンズシリーズ」整備者が居ることの証とも指摘できます(汗)

↑同じ光学系第4群格納環ですが、反対側を撮影しており、そこには「B14」と刻み込んであります。

↑一方、こちらは鏡胴「後部」側のヘリコイド群を撮影していますが、やはり赤色矢印で指し示している箇所に、別人の筆記書体で「7763」と刻み込んでいるのが分かり、今回扱った個体も同様「ニコイチ品」なのが確定です(涙)

・・光学系の状態が良かっただけに本当に残念です!(涙)

世の中、製産時点にこだわりたい人間だって居るのです!(涙) 良品パーツだけでまとめたのだからと言いますが、当方はそれを指して「ニコイチ/サンコイチ」と呼称し、決して製産時点を維持していないとの認識です。確かに製産時点の工程管理の中でさえ、こういう構成パーツは複数個用意され組み合わされています。確かにそれは間違いありませんが、一度市場に出荷された以上、その時の状態にこだわりたい人間だって居るのだと言いたいのです!(涙)

・・神経質すぎますか??? こういうこだわりは異常ですか???(涙)

生産後何十年も経ているのだから、そこまでこだわっても意味がないと言うのは分かります。しかしもしもそうであれば「所有者が真に望んだ時だけニコイチ/サンコイチすれば良い」ものを、どうして勝手に (外部に知られないままに) ニコイチ/サンコイチをやって「良い状態を維持している個体と、割高な価格帯にして売り捌いているのか」と指摘しているのです!

・・それって卑怯ではありませんか??? どうしてニコイチの事実を隠すのですか???

実際、或る整備会社は「良品パーツをちゃんと用意している」とさも差別化の如く自信満々で謳っていますが、それって平たく言えば「ジャンク品を買い漁ってバラして使える部品だけ揃えている」からこそ、その管理番号が必要になる為、マーキングしているのではありませんか (それらパーツに幾らのコストを払ったのかを管理する目的)???(汗)

・・そういう魂胆を汚いと言っているのです!(怒)

少なくとも当方のオーバーホール作業では、そのような代替用パーツを用意することは滅多にありません。当方のミスや、バラしている最中に既に破断していた場合など仕方なく用意することはありますが、年間で捉えても片手で数えられてしまう回数ですし、そもそも隠したりしません (このブログで有り体のまま正直に暴露し、或いはオーバーホール/修理の場合は返却時に報告しています)(汗)

実際今までの14年間で3,400本ものオールドレンズ個体を扱ってきて、ほぼその9割方強バラす前の個体に使われていた構成パーツそのままに使い続け、当方の手による『磨き研磨』を経て再生させて組み上げています。

再生と言っても、それは決して二次的な再生を意味せず、単に経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビなどの除去を目的に再生処理しているにすぎず、当方の手による『磨き研磨』を指して述べています。従ってほぼ製産時点に近い各構成パーツの状態に戻るので、余計な「ごまかしの整備」を執る必要が起きません (むしろ過去のごまかしを当方が正すハメに陥っている)(汗)

・・それをどうして安直にニコイチ/サンコイチに走るのでしょうか???

↑こちらもバラしている途中の撮影です。絞り環を取り外した時の写真で、鏡筒の赤色矢印で指し示している箇所には「ウレアグリース」が使われずにそのまま残っているのが分かります。一方グリーン色の矢印が示している箇所は、互いのアルミ合金材が接触して擦れていた痕跡を指しています。

これが意味するのは「絞り環内側のほとんどの領域が直接鏡筒と互いに接触していない」設計であることを意味し、そこにグリースなどを塗っても効果ゼロだと述べているのです。しかもこれら余分に塗られてしまった多量のウレアグリースは、経年の中で固まってしまい、それが大口径の絞り環に内側から圧力を加え続ける因果に至り、互いが接触する面の摩耗をより促してしまう悪循環に陥っています(汗)

数多くの「Sレンズシリーズ」を扱う整備会社のクセに、そんな簡単なことすら把握してません(笑)

・・要は「観察と考察」「原理原則」から外れた整備しかできないと貶しているのです!

いったいこの何処がプロの整備者たる資質を表しているのですか???
・・本当に恥ずかしい

何でもかんでも金属材が接触する箇所にはグリースを塗れば良いと、しかもその塗布しているグリースが「ウレアグリース1種類だけ」と、まるで共通的に全ての部位に対処している時点で呆れる以外の何物でもありません。

・・こういう整備を低俗と言わずして、何と表現すれば良いのでしょうか???

せめてオールドレンズが金属材による工業製品なら、その部位別、構成パーツ別に塗布する潤滑剤 (グリース含む) くらい、数種類を使い分けたらどうなんですか??? どうしてそんな簡単な事柄について社内で整備レベルを標準化させようとしないのでしょうか???

・・全く以て低俗極まりないレベルで、本当に腹が立ちます!(怒)

↑このモデルはフィルター枠が光学系第1群前玉~第2群の格納筒の役目を兼ねています。上の写真はそのフィルター枠を伏せて撮影していますが (写真下方向が前玉側の方向)、続いて光学系第3群の格納筒もネジ込まれているままでの撮影です (光学系第3群のコバ端が上方向に突出しているのが見える)。

すると赤色矢印で指し示している箇所にはエポキシ系瞬間接着剤が意味なく多量に固まっています(笑)・・フィルター枠と第3群格納筒を接着固定するつもりだったのでしょうか(笑)

その一方で、大変キモイことにグリーン色の矢印て指し示している箇所は全てカビ菌糸とその繁殖です(怖)

↑反対側を撮影しました。赤色矢印で指し示している箇所に2つの格納筒を跨いて縦線にマーキングしてあります。このマーキングが意味するのは「当初ネジ込まれていた場所を残す目安としてのマーキング」なのが分かります。

↑やはり光学系第1群前玉~第3群までが「189」の刻み込みで、反対側には「B14」のマーキングもあります (赤色矢印)。

↑こちらは光学系を取り外した鏡筒を前玉側方向から覗き込んで撮影しています。すると赤色矢印で指し示している箇所に多量のウレアグリースが残っています(汗)

↑そんなことをヤッているので、当然ながら組込まれていた絞り羽根は油染みするのが当たり前の話です(笑)・・ご覧のように、まるで11枚全てが固まってしまい一体になっています(汗)

これではいずれサビが出て、プレッシングされている金属棒のキー脱落へと向かっていく運命です(泣)

↑鏡筒最深部から「位置決め環」を引き抜こうとしていますが、抜けません (赤色矢印)(汗)・・鏡筒内壁のグリーン色の矢印で指し示している箇所が既に酸化/腐食/錆びてしまい、それが抵抗/負荷/摩擦を増大させ、引き抜けないのです(汗)

・・いったいどうしてこんなにサビが出る結末に至るのでしょうか???(涙)

↑こちらは「空転ヘリコイド」を取り出して撮影しています。既に溶剤洗浄が終わっていますが赤色矢印の箇所に擦れ痕が無数に残っており、合わせてグリーン色の矢印で指し示している箇所には水平方向に異物が混入して削れていた痕跡まで残っています(泣)

・・いったいこれでどのように空転ヘリコイドの機能が発揮できるのでしょうか???

↑取り外した光学系第3群の2枚貼り合わせレンズを前玉側方向から撮影しています。すると赤色矢印で指し示している箇所にはまるでコバ端着色が浮いてしまい白く写っています(汗) またグリーン色の矢印で指し示している箇所もコバ端着色の浮き部分です。

↑こちらの写真は前出光学系第3群の2枚貼り合わせレンズについて「反射防止黒色塗料」を溶剤を使い溶かしつつ剥がしている途中の撮影です。赤色矢印で指し示しているように、相当な厚みで塗られていたのが分かります。また赤色矢印で指し示しているコバ端部分にもまだ「反射防止黒色塗料」が全周に渡ってちゃんと残っているのに一つ前の写真では白く浮いていました(笑)

これが意味するのは、既に過去メンテナンス時点で白く浮いていたのに、その上から平気で「反射防止黒色塗料」を上塗りして終わらせていると言う行為が見えてきました(笑)・・いったい何の為に上塗りしているのでしょうか (意味が分かりません)???(笑)

↑ようやく今回の主人公が登場しました(汗) 当初バラす前の実写確認時点で「甘いピント面とその前後でパープルフリンジブルーフリンジを起こしていた光学系第4群の2枚貼り合わせレンズ」です(汗)

赤色矢印で指し示している箇所が光学系の構成5枚目のコバ端です。つまりグリーン色のラインで囲っている厚み分が、バルサム剤の厚みの中で「多すぎる分」を表しています。

僅かこれだけの厚みのせいではありますが、光学系の光路長とその結像からすれば十分ズレの原因にあたります(汗)

↑取り出した光学系前群 (第1群第3群) を並べて撮影しています。光学系前群を赤色文字で表記し、前玉の露出面側方向をグリーン色の矢印で指し示しています。

↑ヒックリ返して裏面側を撮影しています。当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話なので(笑)、「公然と平気でウソを拡散し続けている」と某有名処のコメント欄に誹謗中傷され続けている始末で(泣)、仕方ないのでちゃんと『証拠写真』を載せて解説しなければイケナイみたいです (面倒くさい)(笑)

↑今度は光学系後群 (第4群第5群) なのでブルー色文字で表記しています。絞りユニットを挟んで反対側に位置する為、グリーン色の矢印で指し示す方向は逆転します。

そしてご覧のとおり『証拠写真』として光学系第4群の2枚貼り合わせレンズを剥がしたことを明示しています(汗) 従って説明は「構成5枚目6枚目」との表記になります(汗)

↑同様ヒックリ返して撮影しました。光学系第5群は、上の写真のとおり黄銅材の格納環にモールド一体成型なので、そのままですが当方により『磨き研磨』して仕上げています (当初バラした直後は反射防止黒色塗料で着色されていた)。

・・あくまでも適正な光路長を確保するのが狙いの為「反射防止黒色塗料」は完全除去です。

↑そして問題となる光学系第4群の2枚貼り合わせレンズですが、赤色矢印で指し示している箇所のコバ端「面取部分/領域」だけが張り合わせ時に窪みになるになる厚み/凹みです。

↑同じ光学系第4群の構成5枚目凹メニスカスを立てて撮影しています。赤色矢印で指し示している箇所がそのコバ端です。バルサム剤を塗ってもこのコバ端に対してその厚みはたかが知れています (本当に接着させる目的の量だけで薄くて十分だから)。ちなみにグリーン色の矢印で指し示している面が接着面を意味します。

すると接着するバルサム剤の厚みとして考えた時、この窪み/凹みの厚さ分を除外できますから、この窪み/凹みの厚みだけ知っていれば塗布したバルサム剤の量が多すぎたのかどうかは、即座にその接着時に判定を下せます (実際後から実写確認しても入射光の透過が不適切なのがその描写から判定できますが)。

だからこそ「光学硝子レンズのカタチや曲がり率に厚み」など、逐一ちゃんと確認しておく必要性が高いとこのブログでも何度も執拗に述べているのです。単に当方の嗜好の範疇だけで、光学系の各群をデジタルノギスを使い計測しまくって構成図をトレースしているだけの話ではないのです(笑)

←左図は当方がトレースした構成図の中から該当する光学系後群側の第4群2枚貼り合わせレンズだけ拡大した図です (左から右へ透過)。

 色付構成5枚目両凹メニスカスで上の写真になり (上の写真は反対向きですが)、直後に張り合わせている 色付凸レンズ構成6枚目です。また 色付第5群の後玉です。この時グリーン色の矢印で指し示している箇所が上の写真赤色矢印の窪み/凹み箇所を表します。

今回の個体も確かに当初バラす前の実写確認時点で描写の異常性を確認しましたが、そもそもその因果関係推定と現ブツの確認が合致するか否かを握るのは、まさにこの光学系第4群構成5枚目凹メニスカスの張り合わせ面に係る「窪み/凹み」の存在を知っているかどうかにかかっていたと明言できます(汗)

実は当初バラす前時点に実写し確認して問題を発見した際、光学系を覗き込んだ時に「後群側内部に虹色に輝くニュートンリングを僅かに視認した」為、既にその時点でもしかしたらバルサム剤の塗布量が不適切かも知れないと薄々勘づいていました(汗)

ほんのちょこっと頭頂部分に数本の「小径ニュートンリング」が現れていたのです・・これが意味するのは、接着時の圧力が足りなかった、或いは格納筒に収納する際の抵抗/負荷/摩擦による影響なのかも知れません (その影響を受けたまま硬化してしまったと言う意味)。

これは2枚~複数枚貼り合わせレンズに於いて、その接着面で互いの張り合わせ面が近接した時、その屈折の変化が即座に現れて反射している光の波長が視認できてしまうから「ニュートンリング」として確認できる現象を指しています (バルサム剤の存在有無は関係なし)。
(左写真はwikiより引用)

wikiでは左写真を平面同士の密着時と説明していますが、この「ニュートンリング」の現れ方は、完全なる平面ではないと思います(汗)

互いの貼り合わせ面が極度に離れている時、入射光はそのまま透過してしまう為 (その入射光の透過が適切か否かに関係なく)「ニュートンリング」を示しません。一方互いが近接してくると、その距離に従い即座に近接した張り合わせ面同士で反射を繰り返してしまう結果、その変化が「ニュートンリングの色の数の相違」として視認でき、複数の色合いが幾重にも重なってリング/輪状に広く広がる場合 (近接するもまだまだ距離が空いている時)、或いは幾つかの大きな色がついたリング/輪状が数本だけ視認できる場合 (非常に互いが近接してほぼ密着に近くなった時) と変化していき、最後は完全接触/密着に伴いそれら「ニュートンリング」は消滅して (接着面の空間が消えて光が反射できなくなるから/密着性が確保されれば入射光はそのまま屈折して透過していくから) 透明に到達します。

従って視認できる「ニュートンリング」の色つき具合をチェックするだけで、どんだけ離れているのか、或いは残りどのくらい圧力を加えて密着させれば良いのかの判定にも至ります。

ちなみにこの「ニュートンリング」は、表出するかしないかではなくて、圧が適切ではなかった場合、或いは密着性が不適切だった場合必ず表出します (光の入射光の屈折時に必ず反射を繰り返すから)。

すると例えばオークションの出品ページ掲載写真を見ていて、この虹色の輪っかを発見した時「あぁ~バルサム量が不適切なままなんだ」と入手する前に把握が適います(汗)
(実際当方もそうやってチェックしています)(汗)

しかしこれは残念ながらオールドレンズの整備に於いて、仮に貼り合わせレンズの再接着を行う場合、必ずしも適切に圧を加えられるとは限りません。それは再接着した貼り合わせレンズも最後は格納筒/格納環に収納する必要がある為、その時の抵抗/負荷/摩擦との関係性も発生します(汗) 特にコバ端着色が必要な時など、その着色する「反射防止黒色塗料」の成分などによっては厚みが影響し、格納してから接着面が離れ始めて「十分な時間を経て乾燥が進んだらニュートンリングが現れていた」などと言うことにも陥りかねません。

そういう意味で、製産時点に工程ラインで使用する治具や設備などでは起こり得ない事象にも悩まされる話であり、なかなかひと言に「再接着すれば良い」とは語れないのがホンネだったりします (単に当方の技術スキルが低いだけの話ですが)(汗)

もちろん接着時の結果は、その貼り合わせレンズに圧を加える際に使う治具にも大きく依存し例えば過日実施した「3枚貼り合わせレンズの再接着」などは、その圧を加える治具に関し、どうやって均質に局所的に圧を加えられるか、或いは全面に加えられるのかと考えるしかなく
本当に3日間大変な思いをしました(涙)

その意味で、貼り合わせレンズというのは単に光軸合わせ (俗に芯出しと呼ぶ) だけが全てではなく、詰まるところ2つ以上の光学硝子レンズを接着する以上、その間に介在する接着剤の品質と能力が求められ (屈折率の問題だけではない) サクッとレジン液で済むような話ではないことを覚悟する必要があります(汗)

今でもヤフオク!で自分で貼り合わせ処置している出品者が居ますが、65℃以上で重篤な重合反応を示す接着剤を工業用ガラス専用接着剤を謳い使い続けていますが、例えば日本でも地域によって盛夏の車内は80℃以上まで高温に至ることがJAFの告知データを観ただけでも掴めます(汗) するとその時、そのオールドレンズはどのうよに変化してしまうのか、怖かったりします (落札した人達、かわいそう)(涙)

同じ話はヘリコイドグリースにも適用されますが、はたして日本ですら国内の温度帯は季節の変化でどのくらいの幅をもたせチョイスすれば良いのか考えた時、意外にも北海道でさえマイナス40℃まで下がる地域や年度すら顕在し (気象庁観測統計上の1902年旭川の計測値で
−41℃
)、一般的なグリースの「−20℃120℃」程度では対応できない懸念すら起きます(汗) もっと言えば一般的な都市部でさえ「冬の時期に外出から帰宅した際の結露問題」まで勘案していくと、前述ヤフオク!出品者が述べるところの「水没しない限り酸化/腐食/サビなどの進行は起きない」と自信満々に謳っていることすら(笑)、はたしてどうなのかと思ったりします(汗)

意外と皆さんも冬場に帰宅して、そのままカメラバッグを部屋に置いたままにすることだってありませんか???(笑) その時、もしかしたら装着していたオールドレンズの光学系内部は「プツプツと微細な結露が生じていた」かも・・などと気になり始めたら、眠れなくなってしまう当方のような神経質な人間だって居るのです(笑)

合わせてそもそもグリースの油成分は水を弾くからと安心材料にしている時点で、全くお門違い甚だしく焦ってしまいます(笑) 「界面原理」を少しは研究したほうが良いと思いますね(笑)
・・そう考えた時、どうしてオールドレンズの光学系内部にカビ菌糸が繁殖を始めるのか、いったいそれらカビ菌糸の糧になる水分が何処から登場するのか(笑)、ちゃんと真摯に向き合って考えることも使う立場上、少しは必要なのではないかと思ったりします(笑)

よく自分の所有物に対して気に入っているので「使い倒す」と言いますが(笑)、はたしてその時、そういう配慮まで含めての「使い倒す」なのか否かが、結果的に『絶滅危惧種』たる素養に至っているようにも思えてなりません。まぁ~その時に当方はもう居ないので気にしても仕方ありませんが(笑)

50年後には、サクッとガラス研磨する簡素な工具が流通していて、合わせて大袈裟に蒸着などせずともコーティング層を光学硝子レンズに、それこそまるでセロファンを被せて密着させるが如く、そような製品が流れていれば誰でも容易にガラス研磨できてコーティング層も再び確保でき、またスカッとクリアなオールドレンズ達の活躍が増えて流通する期待がもてます(涙)

ついでにバルサム剤も自己吸着タイプのシート式で、厚みを指定して購入できるようになればさらに楽になります(笑)

・・そんな時代が本当に来るといいですね!(笑)

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

偏心
光学系内で上下左右で同じように収差の影響が現れない傾いた入射光の収束状態を指す

迷光
光学系内で必要外の反射により適正な入射光に対して悪影響を及ぼす乱れた反射光

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

↑一方こちらは光学系第4群の構成6枚目の両凸レンズです。同様グリーン色の矢印で指し示している面が接着面なので、ご覧のとおり一つ前の両凹レンズのコバ端の凹み分がほぼ窪み箇所の厚みになる道理です→つまり窪み/凹みが厚ければバルサム剤の量が多すぎて、冒頭のような斜め球面収差の制御が適切でなくなることが想定されます(汗)

従って「何でもかんでもバルサム剤は接着すればそれでOK」みたいな考え方で整備に臨むから、今回の個体のような不始末に繋がるワケで、自分が処置していながらその確認を怠っている全く以て整備者の風下にもおけない感覚です(汗)

こういう人間/整備者に限って「クモリ (バルサム切れ) なら剥がして再接着すれば大丈夫」みたいな安直な考え方しか頭にないから、そればかり狙って肝心な光軸の担保や収差制御について蔑ろになります(怖)

・・オールドレンズを整備するとは、そういう要素にまで配慮するのが「当然」です!(怒)

ちなみに、上の写真で本当はさらに拡大すれば良かったのですが、グリーン色の矢印で指し示している箇所の接着面は「コバ端直前が極僅かに平坦なカタチになっている」のが確認でき、要は手前に張り合わせられる光学系構成5枚目 (上の写真のレンズは構成6枚目だから) の窪んだコバ端限界が来る箇所から、ちゃんと曲がり半径を切削している造りなのが判明します(驚)
(光学設計上、それは至極当たり前の話ではありますが)

・・当方はこういう発見がとっても楽しくてワクワクします!(笑)

↑光学系前群の第1群前玉~第2群が格納される、フィルター枠を兼ねる格納環をバラしたところです。赤色矢印で指し示している箇所に前玉が入りますが、当初バラす際は硬く入っていて外れませんでした(汗)

結局、赤色矢印で指し示している箇所に「反射防止黒色塗料」が着色されていたので、溶剤で溶かして除去したところです。すると露わになったのはアルミ合金材削り出しのままなので、本来製産時点はそのまま前玉を格納していたハズです (反射防止黒色塗料などで着色していなかったハズ)(汗)

・・如何に「反射防止黒色塗料」着色が不必要なのか、ご理解頂けるでしょうか???

なお、横に並べているのは締付環や光学系第2群の格納環ですが、まだ当方の手による『磨き研磨』実施前の状態なので、ご覧のように経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びを帯びている状況です。

↑ここからは完全解体した各構成パーツの『磨き研磨』が終わっているオーバーホール工程の組み立て途中の写真掲載に移ります。鏡筒をヒックリ返して撮影していますが (前玉が入るのは下のほう)、既に最深部に絞りユニットをセット済みの状態です。

すると赤色矢印で指し示している箇所だけが僅かに飛び出ており、この上から被さる絞り環の内壁と直接接触するのは赤色矢印で指し示している箇所の領域です。従ってグリーン色の矢印で指し示している箇所は凹んでいる為、ダイレクトに接触しませんから、ここにグリースなど塗っても意味がありません。同様ブルー色の矢印で指し示している面も実は絞り環の内側とは一切接触しません (従ってこの面にもグリースを塗っても意味がない)。

唯一絞り環と接触するのはオレンジ色の矢印で指し示している箇所の縁であって、赤色矢印の領域と共に接触します。ご覧のようにオレンジ色の矢印で指し示している箇所は既に経年劣化進行に伴い絞り環の縁と擦れ合ってしまい削れて摩耗しています(汗) 仕方ないので今回の整備ではこの赤色矢印オレンジ色の矢印の領域にのみ限定してグリースを極僅かに塗布します。

理由は、当初バラす前の時点で絞り環の操作が異常に硬く、ムリにチカラを加えるとマウント部が回ってしまうほどだったからです。従って目的は「最低限絞り環操作ができる/回ることを最優先」してグリースを塗布しますが、おそらく赤色矢印で指し示している領域に塗布したグリースはグリーン色の矢印の方向に今後の経年の中で移動してしまうと推測できます (直接接触する箇所なので)。

つまりこれらの領域にグリースを塗っても、そもそも効果を発揮しない/意味がないのが製品設計時点の想定であり、その根拠は鏡筒外側の「ブライトな微細な凹凸を伴う光沢梨地メッキ加工」に対する絞り環内壁の「微細な凹凸を伴う梨地平滑メッキ加工」と言う「2種類のメッキ加工の違い」からです。

↑実際に『磨き研磨』後の絞り環を撮影しています。赤色矢印で指し示している箇所の領域は「平滑仕上げ」してある為、本来グリースを塗布する必要性が低いですが、残念ながら今回のこの個体は既に経年の中でグリースが塗られ続け (しかもウレアグリース)、摩耗してしまった為に今回は仕方なく塗布します。

しかしその一方でブルー色の矢印で指し示している箇所の面には一切グリースを塗布しません (そもそも接触しない面だから)。そして鏡筒の側面とダイレクトに接触するのはオレンジ色の矢印で指し示している箇所のフチ部分ですが、ここも本来グリースを塗る必要がありません (ちゃんと互いに組み込んで接触状況を確認済)。しかしやはり経年の摩耗で擦れ感が強い為、今回の整備ではグリースを極少量のみ塗布します。

いずれにしても狙いは「最低限絞り環を回せるだけの平滑性を取り戻す」ことであり、マウント部が回ってしまうほどの硬さを排除するのが目的です (既に摩耗している為、本来の製産時点を示す軽い操作性にはもう戻らない)。メッキ加工を削ってしまうと言うことは、そういうことを意味します (覚悟する必要性が起きます)。

そもそもそういう金属相手の作業をしていることを全く理解せずにヤッている「過去メンテナンス時の整備が問題である」と述べ続けています。

↑フィルター枠を兼ねる光学系第1群前玉~第2群の格納環に組込まれる「光学系第2群の格納環 (左)」とその「締付環 (右)」です。既に当方の手による『磨き研磨』が終わっています。「格納環 (左)」の表面が黒色にメッキ加工されているのは、その上に光学系第1群前玉が被さるからです・・つまり、ちゃんと必要箇所には製産時点でメッキ加工が施されているのです(笑)

さらに当方の手による『磨き研磨』を施した理由は、これらがフィルター枠の内部にネジ込まれる為、その時の光路長確保を担保すべく、キッチリ最後までネジ込めるよう経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びを完全除去する目的があるからです (それでネジ部含めピッカピカに黄銅材が光っている)。

↑ヒックリ返して裏面側を撮影しました。赤色矢印で指し示している箇所の経年に於ける酸化/腐食/錆びが原因で、当初バラしている最中に光学系第2群もハマったまま取り外せませんでしたから『磨き研磨』により平滑性を確保します。

このように各群全ての光路長確保について、どんなに細かく大変な作業だと
しても乗り越えて処置していかなければ、最終的に適切なピント面と解像度、
そして描写性能を保証することは不可能になります。
その意味で、単にバラした時の逆手順に組み立てるだけが脳ではないことが
ご理解頂けると思います(笑)

光学系前群の第1群前玉第3群までの全てについて『磨き研磨』を終わらせ、経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びを完全除去した上で光学硝子レンズを格納し、セットするとご覧のとおりです(笑)

赤色矢印で指し示している箇所に残る過去メンテナンス時の整備者がマーキングした「縦線」の位置が、最後までキッチリネジ込めたのでズレているのが分かります(笑)

相当な幅でズレていますが(笑)、要はこのズレた分の量だけ「反射防止黒色塗料のせいでネジ込みが足りていなかった適切な光路長から足りなかった」ことを如実に表しています。

これは実際に組み上げが終わってから実写確認した際に、念のために赤色矢印で指し示している箇所のマーキング「縦線」を合致させてから実写確認するのと比較した時、明らかにピント面の解像度に変化が現れ「僅かこれだけのズレでも、明確に解像感が変化する」ことから確信を抱いた次第です(汗)

そもそも製産時点を逸脱した処置として「反射防止黒色塗料」を塗りまくっていたままでマーキングしても意味がないことを述べています(笑)

↑上の写真は後群側の格納環で、赤色矢印で指し示している箇所に残るマーキング「縦線」も過去メンテナンス時の整備者の手による刻み込みです。

特に今回の個体は光学系第4群の2枚貼り合わせレンズのバルサム剤の厚みが多すぎた為に「ピント面が甘い印象で、そのピーク/山の前後でパープルフリンジブルーフリンジが現れた」という当初バラす前の実写確認時の瑕疵内容がありました。今回の整備では「反射防止黒色塗料」の完全除去まで含め、バルサム剤の再接着まで行い、その作業が完璧になるのに3回も接着し直した次第で、如何にバルサム剤の接着料が難しいのかを体験した次第です (当方の技術スキルが低いから)(汗)

これは過日「そうやって大変な作業だったと煽って大袈裟に表現している」と罵られましたが(笑)、決してそんな話ではなく、リアルな現実に3回めの再接着で、ようやく解像度感が増したのを確認できましたが、それはそもそも「接着面を透かしてみてみれば接着量が適切なのかどうかが分かる」から3回も再接着しているワケで、決して大袈裟に述べている話ではありません (ニュートンリングの話)(笑)

その確認手法の中には、前のほうで説明書きを加えた「ニュートンリング」の問題も起きるので、実際当初バラした直後に同じ光学系第4群貼り合わせレンズをチェックしてみれば、極僅かな「ニュートンリング」を確認できていたワケで、その量が少ないと言うことは「既に互いの接着面が離れている/空いている証拠」だからこそ、写る/確認できる「ニュートンリング」の大きさや量が違って見えるのです。

それがもしも近接している時の「ニュートンリング」なら、互いに曲がり率を持つガラス面なので、中心から均等に広がる中で何本現れているのかで判定できます。そういう要素から特定していく次第ですね(笑)

このように「観察と考察」「原理原則」を照らし合わせれば、明確に現状把握が成されるのに、過去メンテナンス時の整備者はそれを放置プレイしました(汗)・・いったいこの何処に「整備する意義」を見いだせるのでしようか???(笑)

・・おそらく今現在も活躍するとても大手の整備会社の一つです(笑)

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ネット上を見ると「開放実写ではピント面が甘い」と解説されることが多いモデルですが、いやいやどうして、組み上がってから実写確認すると「明確な切り上がりとしてピント面のピーク/山を視認できる」ように変化し、合わせて「解像感が増したと同時に、そのピント面のピーク/山の前後に於けるフリンジの出現が大幅に低減した」とも指摘でき、明らかに途中で解説した光学系第4群貼り合わせレンズのバルサム剤接着量の多さが問題を起こしていたと確信を得ました(汗)

・・これがこのモデルの本来の描写性能だと、改めて感心した次第です(涙)

確かに絞り値を数段上げた時の解像感と比較すれば当然ながら「甘い」印象に堕ちますが、それはどんなオールドレンズでも開放f値が明るくなれば同じ現象が起きます。それをこのモデルの欠点の如く言い煽ることのほうがむしろ誇張的ではないかと強く感じるところです(汗)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

もともと入手時からして光学系内に極薄いクモリすら皆無の状況でしたが、当然ながらオーバーホール後も同じレベルを維持しています。それにプラスして「コバ端の白っぽい浮き」も減らした為 (反射防止黒色塗料を一旦完全除去してから再着色したから) ご覧のようにキレイに仕上がっています。

その意味で、冒頭でさんざん述べてきたように「このモデルは光学系にクモリが起きる持病持ち」との決めつけ、認識がどんだけ間違っているのかを明示できたのではないでしょうか???

そもそもそういう立場で観てしまうから「このモデルにしては薄いクモリ具合で撮影には影響しません」との表現自体が差別なのだと思いませんか???(泣)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑後群側もスカッとキレイになり、LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。

特に今回のオーバーホールで最優先課題だった第4群貼り合わせレンズの再接着を適正かできた為、組み上がってからの実写は大幅に改善されました(驚)

このような事実からして「如何に光学系の構成の考察や設計記述 (特許出願申請書) を読むべきなのか改めて重要性を再認識」した次第です・・反省極まります(汗)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:17点、目立つ点キズ:12点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:なし、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大16mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
(第4群を一度剥がし、再接着しています)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。

↑11枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正十一角形を維持」しながら閉じていきます (途中カタチが変わります)。

絞り環操作は残念ながら「軽め」には仕上げられませんでした・・これ以上軽くするのは金属材相手に不可能なレベルです(涙)

従って絞り環操作はとても硬いですが、マウント部が回るレベルからは大幅に改善できています (つまり絞り環を回す時しっかりした操作性という印象)。ちなみにその硬い操作性を勘案し「クリック感を軽めに仕上げた」分、まだマシなのかなと言うレベルです(汗)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の磨きいれを施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。特にピント合わせ時は距離環を掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで微妙な前後動が適い正確にピント合わせできる素晴らしい操作性を実現しています。
距離環を回すとヘリコイドネジ山が擦れる感触が指に伝わります(神経質な人には擦れ感強め)。
なお距離環を早めに回すと設計上の問題からトルクムラのような抵抗感を感じますが、操作しているうちに解消します。事前告知済みの為クレーム対象にしません。
絞り環操作が少々硬めです(クリック感は軽めに微調整しています)。事前告知済みの為クレーム対象にしません。
付属品の純正UVコニフィルターは枠の一部に打痕が残っており, その影響からネジ込みが少々硬めです。最後まできつくネジ込んでしまうとフィルター自体が薄いために外せなくなると思います。ご留意下さいませ(事前告知済みの為クレーム対象にしません)。
・付属品の汎用樹脂製後キャップを装着したまま距離環操作すると回すトルクが重くなります。後キャップを外してから操作して下さいませ。後キャップにより空気の流れが阻害される為距離環を回す時のトルクが重くなるのが原因です(商品の現状や当方の整備に係る瑕疵内容ではなくクレームに対象になりません)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
付属品の純正金属製UVコニフィルターはカビ除去, 及び清掃実施済ですが経年のキズや拭きキズが複数残っています(使えるレベルを維持しています)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
社外品樹脂製被せ式前キャップ (中古品)
純正金属製UVコニフィルター (中古品)
本体『CANON LENS 50mm/f1.2《Sレンズ:前期型》(L39)』
汎用樹脂製ネジ込み式M39後キャップ (新品)
クリーニング用ファイバークロス (新品)

付属の被せ式前キャップは輸送時の保護用としての約役目です (カパカパなので、スミマセン!)(汗)

↑当方所有RICOH製GXRにLMマウント規格のA12レンズユニットを装着し、ライブビューで無限遠位置の確認等行い、微調整の上仕上げています。その際使っているのは「Rayqual製変換リング (赤色矢印)」です。無限遠位置は「∞」刻印ピタリの位置でセットしています。
(写真に写っているGXRやA12レンズユニットにRayqual製変換リングは今回の出品物には含まれません)

あくまでも当方での確認環境を明示しているに過ぎません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置から改善/ほぼピタリの状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離50㎜開放F値f1.2被写体までの距離81m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度41m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、50m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の90m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)

当初バラす前の実写確認時点から比べると「f1.2での撮影にもかかわらず」明確にピント面の解像感が増し (当初は何回も前後動しないと分からなかったレベル)、そのピーク/山の前後動で解像感の変化が分かるように変わりました(汗) 合わせて問題視していた「カラーフリンジの出現」も大幅に低減でき (全くのゼロではありません。それはこのモデルの光学設計の特徴です)、明らかに光学系第4群の貼り合わせレンズ接着面の問題だったことが実証できたとの体験を改めて確信しました(汗)

・・そうは言っても3回も貼り直しするのは少々面倒くさかった(汗)

きっと気に入って頂ける「本来の」描写性能に戻っていると思います(涙)

以下に掲載するオーバーホール後の実写撮影写真で、決してこのモデルでの写り具合が「低コントラストで甘い印象」ではないことをご確認頂けけると思います(涙) ピント面の解像感も「f1.2の開放f値」と言う、この当時のオールドレンズとして勘案するならちゃんと解像しているレベルだと受け取れます (あくまでも当方の印象です)。

逆に例えば設定絞り値を「f16f22」辺りまで絞り羽根を閉じてしまうと「明確にコントラスト低下が起き、合わせて焦点移動に解像度低下まで発生する」現象は、まさに皆さんがこのモデルの評価として指摘する印象に近いことがご覧頂けると思います(汗)

それが意味するのは「絞り羽根が閉じきって回折現象により入射光が絞り羽根の裏面に回り込むから」撮像素子面まで透過されない (光量が減じられる) ことを意味し、だからコントラスト低下を招く道理が納得できるのではありませんか???

そしてこの時、メタリックグレーな絞り羽根が閉じきってくることで「絞り羽根に反射した迷光の量が増大しさらに透過を試みてくる」からフレアが増大します。結果、やはりコントラスト低下と共に解像度不足も起きる原理なのは歴然ではありませんか???

要は皆さんは「ピントが甘くてコントラスト低下したハイキ〜な写りばかりをオールドレンズの特徴として挙げる」ワケですが、当方はそれは間違った感覚だと述べているのです(汗)

何故なら、このような要素の話を放置プレイし続けると、例として挙げるなら「bokeh玉ボケ」みたいな話に堕ちてしまい、外国人に対する意識面での重大な齟齬を生みかねません(汗)

本来ニッポン人にとり「ボケ」とはピント面から外れた周囲の滲みだけを指す日本語とその文化ではありません! 例えば「落語でのボケ」或いは「ツッコミに対するボケ」なども「ボケ」と表現しますし、地域によっては「ボケ、カス」みたいな少々蔑視した意味合いを含む言い回しだってあります。

そういうとても貴重な日本文化と日本語表現の領域にまで侵入している要素の話なのに「bokeh」と言う英製和語のような今ドキの造語を、さらに齟齬を帯びたまま世界中に知らしめてしまう結果に繋がるのだと危惧して述べているのです(泣)

さらにそれを誇張的に取り上げて、敢えてワザと故意にそういう撮影ばかりに仕上げるプロの写真家が多いから「余計にそのような印象付け操作が横行している」始末で、そういうのを指してプロの写真家と表現するのに当方は抵抗感が強いです(汗)

プロの写真家なら、もっと客観的に自身の主張なり表現性を残すのが資質であるべきなのに、今ドキヨロシク、サクッと仕上げて好まれようと言う魂胆が本当に卑怯で汚いです(汗)

その意味で正統派写真家とは、まさに過日オーバーホール/修理ご依頼を賜った彼等の見た光景を追って、、、メキシコ1988 (井上喜雄著)』を出版していらっしゃるプロの写真家のように、真摯に写真撮影に向き合う方々を指すと当方では強く認識している次第です。

・・もちろん他にも大勢のプロの写真家がいらっしゃいます。

しかし決して今ドキを吹聴せず、それこそYouTuberの如く振る舞わず、真摯な想いで真っ向から写真に向き合っている方々を、当方は畏敬の念を以て観る次第です(涙)

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f1.4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.0」での撮影です。

↑f値は「f2.8」に上がっています。

↑f値「f4」での撮影です。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」です。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきている為、おそらく解像度とコントラスト面の両方でこのf値が限界値のように見えます。

↑f値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響が現れ始めました。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。

なお、このオールドレンズの出品で、本年のオーバーホール済ヤフオク!出品は最後になります。以降年末ギリギリまでオーバーホール/修理ご依頼分の作業に移ります。また追って整備完了後にこのブログでご案内申し上げます。
どうぞよろしくお願い申し上げます