♦ Canon Camera Co. (キヤノンカメラ) CANON LENS 50mm/f1.2《前期型》(L39)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、国産は
キヤノンカメラ製標準レンズ・・・・、
『CANON LENS 50mm/f1.2《前期型》(L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のCanon製標準レンズ「50㎜/F1.2」だけで捉えると
僅か5本目にあたりますが、前回の扱いが2020年だったので4年ぶりです(汗)
先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜りま
した事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!
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Canonは戦後すぐの1946年から、戦前から続くバルナックライカコピーモデルの生産を販売を始めますが、1956年フィルム装填がより楽な裏蓋開閉式とした「CanonVT」を発売して一新します。
(右写真はCANON LENS 50mm/f1.2を装着したCanonVT)
このレンジファインダーカメラのモデル銘「T」はトリガーを意味しボディ底面に在るトリガー式フィルム巻き上げ機構採用により、速写性の向上を狙った製品とのことです。
従って今回扱う標準レンズ『CANON LENS 50mm/f1.2《前期型》(L39)』も同じタイミングで発売され、さらに後の1959年には開放F値:F0.95を発売しています (同系列の光学設計を実装)。
←当時のレンズカタログは「最小絞り値:f16」の印刷ですが、掲載写真をチェックするとちゃんと「f22」まで刻印が続くので、ミスタイプと推定されます (左は1957年のレンズカタログより引用)(汗)
↑上の図は、左側の2つが特許情報プラットフォームJ-PlatPatより引用した、今回扱った
モデルに大変近似した光学系を持つ特許出願申請書で「特願昭34-029547」の2ページを
掲載しています。
右端の光学系構成図は、この特許出願申請書掲載構成図面から当方がトレースした構成図に
なります。
ネット上の解説では、この近似した光学設計の発案者を「向井二郎氏」としていますが、この特許出願申請書を見ると「伊藤 宏氏」の印刷表記になっています (よく分かりません)(汗)
そして右構成図が、今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
今回のトレースでは、特に光学系後群側第4群2枚貼り合わせレンズについても「ちゃんと剥がして計測した」ので、その結果を反映し、
貼り合わせ面の曲がり率と共に、その窪みまで再現させています(汗)
↑上の写真は完全解体が終わり、バラした各構成パーツを当方の手により『磨き研磨』実施後にピックアップした、光学系第1群前玉〜第2群までの格納環を並べて撮影しています。
光学系第1群前玉は、上の写真左端の「フィルター枠」に格納される設計を採り、その上からレンズ銘板が単独でネジ込まれる仕様です (上の写真ではそのフィルター枠をヒックリ返して
裏面側面の向きで撮影しています)。
ちゃんと当初バラした直後の写真を撮ったのに、ミスッて削除してしまい載せられません(汗)
当初バラす際は、この前玉を格納環 (フィルター枠) から引き抜けず、仕方なく「加熱処置」をしています(汗) 然し問題だったのはその状況ではなく「上の写真右側に重ねて並べて撮影している光学系第2群の格納環と締付環」の上に「非常に微細なガラス片」が数点パラパラと散らばっていたことです (ほとんどがほぼ粉末状)!(驚)
「ガラス片」が散らばっていた場所/階層は「前玉と第2群の間の空間」だったので、もしも
光学硝子レンズがダイレクトに欠けていたのだとすれば「前玉の裏面側」か「第2群の前玉側方向側」との推測になります (第2群の裏面側が欠けていた場合は、その次の第3群の格納筒のほうに散らばるから)。
つまりこれらフィルター枠から始まる光学硝子レンズ格納環への「前玉〜第2群の格納は裏側からセットする仕様」なので、そう言う話になります。一般的に多いのは「前玉の露出面側の方向から順に格納していく仕様」なので、その逆の設計と言う話になります。
・・どうしてそんな面倒な設計にしたのか???(汗)
「観察と考察」を試みると、例えばフランスはP. ANGENIEUX PARIS社が世界で初めて開発/
発売した、1953年に登場した広角レンズ「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」と言うオールドレンズの光学系格納手法は、レトロフォーカス型光学系の設計なので「光学系前群の構成は3群3枚の単独設計」であるものの、3群全てを順番にセットしていく段々畑状に
臼型の筒状のカタチをしているのが一般的です。ところが「前玉〜第2群〜第3群」と個別に格納させる格納環をいちいち用意して重ね合わせていく設計を執ったと言うことは「第1群〜第3群のそれぞれで個別に光路長をキッチリ合わせたかった」との憶測が浮かび上がります。
逆に言えば、光学系前群の一番最後たる「第3群を最初に落とし込んで締付ネジで締付固定」してから、次に第2群そして第1群前玉と格納していく設計なら、それらの厳密な光路長は「格納筒の段々畑状の厳密な格納位置の設計に偏に係る」と指摘でき、それを担保するには「厳格な切削技術が大前提」であり、後の時代にはそれが当たり前の話に代わります(笑)
もっと言えばこのモデルが発売された1956年当時で、Canonでさえもまだ真鍮材/ブラス材や黄銅材を切削した格納環や締付環しか用意できなかったとも考えられます (つまり後の
時代に当たり前になるアルミ合金材の切削にまだ課題があった時期)。
話を戻すと、当然ながら光学系各群は互いに前群の光路長の中で空間を仕切って遮るので、もしも仮に光学ガラスが欠けたとしても、その欠片はそれぞれの空間に残るのは同じ話です(汗)
従って今回の問題も「前玉裏面側、或いは第2群表面側の欠片なので、前玉と第2群との間に残っていた/散らばっていた」のは至極当然な話なのが判ります。例え前玉の露出面側が欠けたのだとしても、既に紛失しているからです。
すると上の写真でグリーン色の矢印で指し示した箇所が問題だったのですが(汗)、当初バラした直後「加熱処置」した際には「上の写真シルバーの枠内が全周に渡り反射防止黒色塗料で
着色されていた」為に、前玉を引き抜こうとしても抜けなかったのが分かります (つまりガッチガチに嵌っていた)(怖)
「加熱処置」で火傷するくらいに加熱してようやく前玉を引き抜けましたが、それでも抵抗/負荷/摩擦を指が感じている状況だったので「相当な圧力が前玉に加えられている状況だった」のが理解できます(涙)
↑欠けた箇所を幾つか発見しましたが、一番大きな欠損箇所は上の写真前玉の赤色矢印で指し示した露出面側方向でした(驚)
↑その赤色矢印で指し示している一番大きな欠損箇所をさらに拡大撮影しました(汗) 写真撮影スキルがド下手なので上手く撮れていませんが (スミマセン!)、円形状に欠損しているものの
その底部分が斜め上に欠けているのが分かります (運良く裏面側まで欠けて到達していない/
つまり裏面側が円形状にスポット的にかろうじて貫通していない)。
さらにグリーン色の矢印で指し示したように「フィルター枠のシルバーな枠部分で隠れている内側の場所」なのがキズのつき様から分かります (これらの汚れ状を清掃しても一切除去できないのでキズと判定/もちろん物理的にLED光照射でもこのラインが視認できる)。
するとここで「???」になりますが「前玉の露出面方向で、且つシルバーの枠で囲われていたのに、どうやって第2群との間の空間にカケラが散らばったのか???」になります (物理的にも封入されている環境だから/割れていった際に裏面側に貫通していないから)。
シルバーな枠の中でそのままのカタチで残っていれば納得できますが、今回前玉を抜いた時は既に空白でした(汗)
第2群との間の空間に粉末状に散らばっていたガラス片をもう一度チェックすると、一部に「黄銅材の粉」が金色に含まれているのが判りました(驚)
つまりこうです・・シルバーな枠全周に「反射防止黒色塗料」が塗られていた為に、前玉は何十年間も相当な圧力に耐えながら嵌っていたと推測できます(涙) そんな中で「四季の温度差で締付環の黄銅材に熱膨張/収縮が起き、その圧力すら受け続けていた」環境下で、ついには赤色矢印の箇所に欠けが入り、且つ割れた際はほぼ粉砕状態だったのかも知れません。次第に締付環の黄銅材の膨張/収縮の中で、少しずつ、本当に少しずつ粉砕した破片がネジ山に入り「さらに砕かれて微細に粉砕されて空間に落ちていった」とも推測できます・・そのくらい
微細な粉末状でした(汗)
当初バラした直後に溶剤で拭った綿棒に黒色の「反射防止黒色塗料」が付着しているものの、その中に白っぽい硝子粉や金色の粉が視認できたので、慌てて透明な溶剤に綿棒を浸して混ぜたところ、瓶の底に3つの色の粉末が沈殿したのです・・黒色:反射防止黒色塗料の剥離した粉末、白色:ガラス片と推測、金色:黄銅材と推測。
・・こんな感じです。それにしても推測の域を出ていませんが(汗)、前玉の締付環は数列も続くネジ山なのに、いくら黄銅材と言ってもそのネジ山をくぐり抜けてガラスと黄銅材の粉末片が落下してくるものだと「リアルな現実の物理的な状況」に、一人冷や汗状態でした(怖)
よく「締付環で光学硝子レンズを最後まで締め付け固定しているから密閉されている」等との解説をネット上で観ますが(笑)、実際は全く密閉などされておらず、そもそもカビ菌糸もいくらでも侵入して浮遊している状況であり(笑)「四季による金属材の熱膨張/収縮に比例して、光学系内の気圧差が現れている」ことを・・今回今一度肝に銘じた次第です!(怖)
当方は「光路長を狂わす一因になる」ために「反射防止黒色塗料」を逐一一旦剥がしてから、最低限必要箇所のみ再着色しています(汗) 然し今回の一件で「何十年も前に精製された光学硝子レンズの、物理的な破壊の進行まで促す一因」なのが判明し、より意識的に捉え、確実に「反射防止黒色塗料の剥離/除去作業」を徹底し、可能な限り『絶滅危惧種』の「延命化」に
トライしていきたいと思います(涙)
・・過去メンテナンス時の反射防止黒色塗料着色は、詰まる処、必要悪です!(涙)
↑上の写真は当初バラしている途中での撮影ですが、光学系第4群の2枚貼り合わせレンズです。グリーン色の矢印で指し示しているのは「反射防止黒色塗料」ですが、実は一度溶剤を使い溶かして剥がしているにも関わらず残っている部分です。
つまり「2種類の溶剤を使わないと完全除去できない」ことから、最低でも過去に2度にわたりメンテナンスされているのが推察できますが(汗)・・相応の厚さで塗料が残っているのが上の写真から分かります(汗)
さらに赤色矢印で指し示している箇所が2枚の光学硝子レンズ貼り合わせ面です。
実はこの「貼り合わせ面の隙間が太すぎる???」と違和感を抱き、ブルー色の矢印のようにこの第4群の全高をデジタルノギスで計測している次第です(汗)
↑上の写真も作業途中の撮影です。赤色矢印で指し示している箇所が2枚の貼り合わせ面になり「褐色のバルサム剤が僅かにハミ出ている」のが分かります。
この後実際に「加熱処置」により貼り合わせ面を剥がして光学系構成4枚目と5枚目の2つに分離させたのですが、その『証拠写真』をミスッて削除してしまいました(汗)
特にバルサム切れの症状が現れていたワケではありませんが、当初バラす前の実写確認時に
ピント面の鋭さ感に違和感を感じたので、実際に剥がして本当にこのような厚みになるのかを確認したかったのです (それでブルー色の矢印のように全高を計測している)。
ちなみに「加熱処置」で剥離させると (普通に300℃で剥離できました) それもそのハズで「バルサム剤にツンと松脂の刺激臭を伴うカナダバルサム」を確認しています(汗)
もちろん分離させた状態で、それぞれ光学系第4群と第5群をデジタルノギスで逐一計測したので、その計測結果を冒頭のトレース図に反映させています(笑)
そして (写真がありませんが)(汗) 実際に再接着してから、この第4群貼り合わせレンズの全高をもう一度デジタルノギスで計測すると、当初剥がす前「第4群全高:10.52㎜」に対し、バルサム材を再接着した後の全高は「10.28㎜」と変化したのが判明しました(汗)
・・「▲0.24㎜」なのが分かります。
要は光学系構成4枚目と5枚目の光学硝子レンズ自体の計測値が変化することは有り得ないので(笑)、詰まる処「貼り合わせ面の隙間の厚みが変化した」としか受け取れず、それが意味するのは「当初バルサム剤の厚みが厚かった分、締付環で押されて長年の間にハミ出てきていた」とも受け取れます (推測の域を出ませんが)。
例えば実際にデジタルノギスの計測値をみると「光学系構成4枚目の厚み:5.73㎜」或いは「構成5枚目の厚み:3.74㎜」なので、前述貼り合わせレンズの全高「10.28㎜」に対し差になる「10.28㎜-(5.73㎜+3.74㎜)=0.81㎜」こそが、上の写真赤色矢印で指し示している箇所の「貼り合わせ面の隙間の厚み」と計算できます(笑)
そして実は当初剥がして分離させる前のこの隙間の厚み赤色矢印は「1.05㎜」だったので、確かに今まで数多くのオールドレンズを完全解体してきて、貼り合わせレンズの接合面を観てきましたが、さすがに1㎜を超える厚みでバルサム剤が塗られていた個体は、あまり多くみていません(汗)
すると一般的に多い寸法公差は「±0.02」として当てはめた時「凡その許容値は0.41㎜」から、この貼り合わせレンズだけで「0.24㎜」を食ってしまった場合の光路長はどうなる
のかとの心配が頭を過ります (このモデル全群での許容値は凡そ1.86㎜)(汗)
↑さらに上の写真は光学系第5群後玉の格納環をヒックリ返して撮影しています。この後玉は
黄銅材の格納環に一体モールド成形されるので、後玉で光路長を狂わせる要素は「製産時点なら有り得ない」ものの、上の写真赤色矢印のように過去メンテナンス時の整備者の所為によっては「光路長が狂う」話の要素になっていきます(汗)
ご覧のように「反射防止黒色塗料を塗りまくっている」ものの、光学系の光路長の方向たる「前後方向での反射防止黒色塗料着色は、光路長を狂わせる要素にしかならない」ことを自覚していません(汗)
何故なら、このモールドされた後玉格納環をねじ込んでいったら「赤色矢印で指し示している反射防止黒色塗料を塗った場所は、最後は締め付け固定されて見えなくなる」ワケで、結局「単に光路長を狂わせている以外の何モノでもない」ことが、今このブログを読んでいらっしゃる皆様にも、ご理解頂けると思います。
そもそも本来製産時点で、この後玉格納環の外壁/側面は黄銅材のままでメッキ加工されていないのに、そこに「反射防止黒色塗料」を塗ったくっているのは、まさに過去メンテナンス時の整備者の「自己満足大会」でしか有り得ません(汗)
従って当方のオーバーホール工程では、ご覧のとおり「磨き研磨」して必要ない塗膜を全て
剥がしているところです(笑)
このようにオールドレンズを完全解体していくと「必要ない場所にまで、執拗に反射防止黒色塗料を厚塗しまくっている」リアルな現実を目の当たりにすることになり(汗)、しかもそれを
逐一剥がす作業に運命づけられてしまう身の上なのは・・当方と言う本末転倒な話です(笑)
↑上の写真もオーバーホール工程を進めている途中の撮影ですが、光学系前群の第1群前玉〜第3群貼り合わせレンズまでをネジ込んで組み上げた状態を撮っています。
赤色矢印で指し示した位置が当初バラした直後のマーキングの状態で、これらのマーキングは当方が刻んでいないにもかかわらず(笑)、赤色文字のズレた位置のまま組み込んで仕上げてた
のです(汗)
そして各群の不必要な「反射防止黒色塗料」を剥がしまくったので(汗)、光学系前群を組み上げるとご覧のようにグリーン色の矢印の指し示した位置でピタリとマーキングが合致したと
言えます(笑)
つまり当初バラした直後は「光学系第3群が最後までキッチリネジ込まれていなかった (凡そ2㎜分足りない)」ことが明白で、マーキングした意味がありません(笑)
↑上の写真も途中の撮影です。絞り環を回した時にカチカチとクリック感を伴うのは、鋼球
ボールが溝にハマってクリックが実現される仕組みです。
その溝を指して「絞り値キー」と呼び、そこに鋼球ボールがハマるものの「スプリングによるクッション性ではなく板バネを使っている設計」なのが分かります。
当初バラす前の絞り環操作確認時に、そのクリック感に違和感を覚えたので「本来の製産時点と同じクンクンと銅板が反発する時の振動が指に伝わる感触」に戻しています(笑)
・・どうでもいい内容ですが、それが所有者の充足感を満たしていく一つになる!(涙)
と、当方は信じているので(笑)、敢えてこだわってそういう感触を楽しめるよう微調整しているところです(笑)
またこの個体はグリーン色の矢印で指し示した「シム環」の内径が違っており、僅かに鏡筒
よりも大きいサイズのため、ご覧のように遊びが出てしまいます(汗)
この「シム環の厚み」如何では無限遠位置が変化する構造なので、おそらく過去メンテナンス時にこの「シム環」が入れ替えられていると推測します (Canonレベルならピタリと入る内径サイズでシム環をちゃんと用意していたハズ)(汗)。
従って今回扱ったこの個体は「オーバーインフ量が僅かに多い印象」ながら、実は「L39
マウント規格品」だと、例えばα7IIに装着しても「少々多めのオーバーインフ量」なのが常なので、よく分かりません。
但し一緒にお送り頂いたライカM11Pに装着すると「僅かなオーバーインフ量」に減るので
そのまま組み上げています。
↑上の写真は当初バラした直後の「空転ヘリコイド (黄銅材)」が1枚めで、当方による『磨き研磨』が終わった状態が2枚めです(笑)
特に赤色文字で指し示している箇所は「平滑仕上げ」が必須な箇所なので、1枚めの写真のとおり「グリースに頼った整備」が過去メンテナンス時に執られていると、経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビも合わせてご覧のような駆動痕 (横方向の筋) が残る状況に陥ります(汗)
今回の個体は当初バラす前時点で「距離環を回すトルクが重すぎる」状況だったものの、バラしてみると過去メンテナンス時に塗布されていたグリースはウレアグリースだったので、相応に劣化しています(汗)
↑同様「距離計連動ヘリコイド (左)」と「マウント部 (右)」を並べて撮影していますが、1枚めがバラして溶剤洗浄した直後の撮影になり、2枚めが当方による『磨き研磨』が終わった状態を撮っています。
やはり「空転ヘリコイド」が格納される箇所を「平滑仕上げ」で処置し、ちゃんと製産時点に近い平滑性を復元しています (赤色文字)。
従ってここ「空転ヘリコイド」で「距離環を回すトルクの重い/軽いの微調整が実現できる」
仕様に戻るので、一方のヘリコイドオスメス側は「限りなく抵抗/負荷/摩擦を低減させてから
ヘリコイドグリースを塗れば良いだけ」と言う、明確な部位別の微調整が適います (当たり前の話ですが)(笑)
このように当方は「至極道理に適った当たり前の作業しかしていない」ので(汗)、何一つ高い技術スキルを必要としない「低い技術スキルのまま単にバラして組み上げている」だけです(笑)
そもそもオールドレンズの構造が簡素なので、誰でも整備できる為、ちゃんと設計者の意図を汲んで組み上げていくだけで、自ずと「本来在るべき姿」として組み上がりますね(笑)
↑なお、上の写真は鏡筒内部の絞りユニットに配置される「位置決め環」で、絞り羽根が刺さるべき場所を確定させる役目の構成パーツです。
アルミ合金材で切削されていますが、赤色文字で指し示した両サイドの2箇所だけで「イモネジ締め付け固定」の設計です。
◉ イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイス切り込みが入るネジ種で
ネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する。
大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定するだけの場合がある。
するとこの部位で使うイモネジの役目は「締め付け固定位置の微調整を兼ねる締付固定」なので、ここのイモネジ締め付け痕をチェックするだけで「製産時点から後に2回目の締め付けがあったのか否か」が掴めます。
今回の個体は上の写真では分かりませんが、よ〜く凝視すると「締め付け痕が2つ重なって
いる」のが、一番尖った先端の締め付け痕で明白になります(汗)
ほぼ重なっているくらいのズレなので良いのですが、問題なのは上の写真のとおり「イモネジの締め付けが強すぎて、材に応力の擦れ痕が残ってしまった」のが、リアルな現実に「凡そ
2/3の領域に擦れたあとが残っていて研磨しても除去できない」状況です(涙)
これはイモネジが両サイドからの2箇所締め付けだったので、片側にだけ極僅かに寄ってしまい(汗)、且つその寄ってしまった側が「絞り環との連携の為に切削されている切欠き/スリット/開口部側」で、その応力に対してより弱い場所だったが為に、このような擦れた痕跡が着いてしまいました(涙)
応力と言うのは、絞り環操作で内部の「開閉環が回される」ワケで (絞り羽根の開いたり閉じたりで回るから) その時のチカラの伝達・・ひいては掴んでいる指から伝わるチカラの強さがそのまま伝わるので、このように極僅かに位置がズレたしまっただけで「薄いアルミ合金材
だと擦れ痕が残ってしまう」次第です(涙)
それは上の写真がまさに「生きた証拠」になり、ご覧ようにほぼ均質に波状的に何回もチカラの伝達で擦れ痕がついていることから「定期的なチカラの変化で波状に残った」その波状の根拠は「まさにクリック感の鋼球ボールによる板バネからの反発」とも言い替えられ(汗)、このように「全てには原理原則が適用し逃げられない」からこそ「観察と考察」に「原理原則」に則った組立工程が必須なのだと、このブログでも執拗に何度も指摘しているのです(汗)
ちなみに上の写真で反対側の1/3の領域は濃い紫色のメッキ加工がそのまま製産時点を維持し残っており、この点を以て「極僅かにズレていた」との根拠に到達するしかありません(笑)
(実際にイモネジの締め付け痕がちゃんと隣り合わせて残っているから)
きっと過去メンテナンス時に、絞り羽根の油染み清掃で取り外したのでしょうが、ちゃんと「観察と考察」ができていれば「製産時点のイモネジ締め付け痕であるたった一つの点」目がけて、イモネジをネジ込んでいればこんな状況にも至らなかったのです (ズレなかった)(涙)
結果、今回のオーバーホール工程では絞り環操作時に微かな「キ〜キ〜音」が聞こえてしまうので (製産時点の位置で締め付けたのに、既に摩耗している為に絞り環操作時にこの位置決め環の切り欠き/スリット/開口部辺りで撓って鳴ってしまう) それこそまるで当方の整備が悪いと言わんばかりに「耳障り」です(涙)・・仕方なく、開閉環に極僅かにグリースを塗布して撓った時の鳴りの影響を最小限に食い止めています(涙)
・・こういうのを当方は過去メンテナンス時の不始末による不条理と受け止めています(涙)
↑なおモデルバリエーションを明示すると、上の掲載写真のようになりますか、左端は今回
扱った個体で「前期型」にあたり「絞り環の絞り値にラインの刻印を伴う」一方、2つ目にはそのラインが無く「後期型」と当方では区分けしました。
また右側の2つの写真で「ブラックバージョン」を載せていますが (海外オークションebay
から拾ってきた写真)、確かにこのモデルに黒色鏡胴モデルがあるらしいですが、上の掲載写真の個体は「黒色に焼付け塗装したのがバレバレ」です(笑)
出品者が自分で拡大撮影してしまって (右端の写真) それでモロバレしてますが(笑)、このモデルの距離環ローレット (滑り止め) の平目模様の刻みに対する平面仕上げ部分は「微細な横方向のヘアライン仕上げ」なので、他の鏡胴部分と同一の「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」にはなりません(笑) ヘアライン仕上げの加工は「切削時」なので、製産後の過去メンテナンス時などのタイミングで、このように「焼付け塗装」すると、ヘアライン仕上げを維持させることが不可能です(笑)
したがって、この個体は12万円以上の価格帯で出品されているものの「自分で焼付け塗装した偽物のブラックバージョン」と指摘できそうです(笑)・・ご注意下さいませ。
↑今回のオーバーホール/修理個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。具体的なオーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『CANON LENS 50mm/f1.2《前期型》(L39)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。絞り環のクリック感に「クンクンと板バネによる小気味良い感触重視」の微調整にトライし、光学系後群第4群のバルサム剤を最低限に減らし、光路長を狂わす「反射防止黒色塗料」も低減させています(汗)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。
コバ端が微かに剥がれている箇所は、例の再接着した第4群のコバ端着色が剥がれているところで、格納筒に入れる際に「加熱処置」してセットしているくらいにキツキツです(汗)
↑11枚の絞りユニットぢ値もキレイになり、絞り環操作共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。絞り環操作時のクリック感も前述のとおりこだわって仕上げています(汗)
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を塗りましたが、このモデルのピントのピーク/山が、特に開放側に近い程不明瞭で被写界深度も浅い/狭いので、それらを勘案して「軽めのトルク感」にワザと故意故意に仕上げています。当初バラす前の距離環を回すトルク感が相当重めだったので、劇的に変化している印象です(汗)
また構造上/設計上「距離計連動ヘリコイド側がダイレクトに直進動して鏡筒を押し上げる設計」なので (一般的にL39マウント規格品には距離計連動機構としてダブルヘリコイド方式が多い)、無限遠位置の微調整は鏡胴「前部」の位置をダイレクトに訂正する「シム環」を使う方式であるものの、この個体に入っているシム環は、ちょっと違うような気がします(汗)
最大限オーバーインフ量を低減し「凡そ0.5㎜ほど低減」させたものの、それでもライカM
11Pに装着すると「距離環の距離指標値で∞刻印の左側直前辺りで無限遠合焦」します(汗)
(ツマミのロック位置直前辺り)
↑ご報告すべき瑕疵内容はありませんが、前述の「絞り環操作時のキ〜キ〜音」は「開閉環」に塗布したグリースが無くなると、また騒ぎ始めると思います(汗) その他は無限遠位置のオーバーインフの状況だけです・・申し訳ございません。
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
無限遠位置 (当初バラす前の位置から僅かに低減/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:50㎜、開放F値:f1.2、被写体までの距離:81m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:40m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、50m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の90m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)
↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f11」です。絞り羽根がだいぶ閉じてきているので「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
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ここからは別件のオーバーホール/修理にについて少しだけ言及します。
↑お預かりした、栗林写真工業製標準レンズ『C.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (B)《前期型》(M42)』を完全解体した時の全景写真です。
この個体は当初バラす前の確認時点で「とても重い距離環を回すトルク感」でしたが、バラ
したところ「純正グリース」の上から「白色系グリース」と、もしかしたら「潤滑油」も少し注入してあるのかも知れません。相応に粘性を持っていました。
❶ 直進キーが完全に錆びついていて外せない
❷ 絞り環用ベース環の締付環が外せない
❸ 絞り環のほうのストッパーが欠落
「直進キー」が結局外せなかったので、距離環を回す際のトルク微調整が完璧にできません(涙) 例えば黄銅材のヘリコイドオス側に薄いアルミ合金材のヘリコイドメス側を、グリースを塗布してからネジ込んで回しても「とても軽いトルク感で回せる」のに、鏡胴にセットして「直進キーが介在する」と途端にトルクムラが出ます(汗)
❶の因果は「経年で直進キーの棒状が擦り減って摩耗しているから」と言え、そのネジ込みを微調整することで軽いトルク感に仕上げられますが、この個体の「直進キー」は完璧に錆び
きっていて全く外れません (加熱処置するも効果なし)(涙)
仕方ないのでヘリコイド群のトルクを軽く仕上げた上でネジ込んで、ダイレクトに「直進キーを研磨して微調整」しました。現成トルクムラが現れる場合と均一な場合と再現性が不安定です・・申し訳ございません。
❷は「加熱処置」を2回試みてようやく外れました。絞りユニット内の構成パーツに一部変型が認められたので、修復し改善が終わっています。
然し❸の絞り環内部のストッパーが欠落しており、使えそうな金属棒を切削して造り打ち込みました(涙) 現状適切に動きますが、時々擦れる感触が指に伝わることがあるかも知れません
・・申し訳ございません。
これらの状況から、再現性が低いですが、瑕疵が現れることを確認しています。もしも「トルクムラ、或いは引っ掛かり」などが発生し、距離環を回せなくなった時は、一旦反対方向に
僅かに戻してから再び回してみて下さいませ。戻るハズですが、再現性は低いです。
また絞り環操作時に擦れ感を伴う操作性も起きますが、使っているうちにまた戻ります。これも再現性が低いです。
いずれにしても、これ以上の改善は難しいです・・申し訳ございません。
↑1年近く前にオーバーホール/修理済みの個体ですが、ご指摘のあった「ツマミのロック位置が無限遠位置になっていない (オーバーインフ状態)」は、以前解説したとおり「マウント部の飾りネジを強く本締めすれば位置を合わせられるもののトルクが再び当初の重い状態に戻る」関係性です。
今回再びバラしましたが、やはり同じ因果なので、化粧ネジ3本を本締めするとトルクが重くなる一方で、無限遠位置のオーバーインフ量が減ります (ほぼツマミのロック位置で無限遠
合焦に近づく/それでもまだ僅かなオーバーインフ状態でピタリではない)。
当初バラス前は化粧ネジ3本がユルユル状態だった為、その同じ状況が既に過去メンテナンス時に起きていたように推察します(汗)
今回再びバラしてから「観察と考察」及び「原理原則」に乗っ取り、ヘリコイドのネジ込み
位置を変更すると同時に内部のストッパーの位置を、当初バラした時の位置から大きく変更し、それに合わせてヘリコイドのネジ込み位置も大きく移動させました。
その一方でマウント面直前の飾りネジを本締めするとトルクが重く変わるのは変化がありません。そもそも本締めすると「指標値環とマウント面との間に隙間が空く (全周で均一の隙間ではない)」のが「???」なままです(汗)
その結果、ご希望の「ツマミ位置で無限遠合焦」に戻っています。この作業だけに凡そ丸一日を要していますが、その間お借りしたライカM11Pに装着して何度も何度もライブビューで実写確認するハメに陥り (そのたびにまたバラして位置を変更して組戻して確認の繰り返し)、当方には相当辛すぎます!!!(涙)
この後、もう1本のオーバーホール/修理に引き続き入りますが、ライカM11Pに装着して
の無限遠位置合致の微調整は、これが最後にさせて頂きたいと、本当に切にお願い申し上げ
ます!(涙)
・・もう、ちょっと辛すぎです!!!(涙)
大変申し訳ございませんが、今後はやはりライカレンズを専門に整備しているプロのカメラ店様や修理専門会社様にてオーバーホール/修理をお願いしたいです(涙)
ライカM11Pをお借りして作業するのも、相当なプレッシャーに至っており、整備を始めるのに何日も精神面で準備する時間が必要になったほどで、あまりにも当方には辛すぎます(涙) できればご勘弁頂きたく、お願いするところで御座います(涙)
勝ってばかり申し上げて、本当に申し訳ございません・・失礼の段、お詫び申し上げます。