◎ FUJI PHOTO FILM CO., (富士フイルム) FUJINON 5cm/f1.2 (black)《後期型》(L39)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、国産は
富士フイルム製標準レンズ・・・・、
FUJINON 5cm/f1.2 (black)《後期型》(L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で捉えても初めての扱いです。

先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜りま
した事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います

何しろ当時の製産出荷本数が少ないことにあわせて、その市場流通価格が尋常ではなく(汗)、60万円辺り〜180万円クラスまで高騰している「幻の銘玉」の一つです(驚)

←左写真は、ネット上で偶然見つけた「当時の製品に使われていた
化粧箱
」ですが、こんな写真を今も見られるとはラッキ〜です!(驚)

この写真を見て初めて、このモデルが登場した1954年時点でも
まだ戦前 (1937年) から続くコーポレート・ロゴを使い続けていたのが、今更ながらに新鮮でホロっと来ました!(涙)
(こういう情報が当方にはこの上なく貴重で、ありがとう御座います)

オモシロイことに(笑)、モデル銘が「フジノン」とカタカナ表記で(汗) しかもレンズ銘板の刻印が「5cm」なのに、化粧箱の蓋は「50㎜」とチグハグです。さらに配色も「オレンジ」に「F1.2」と、穿って数歩引き下がっても(笑)「1954年時点で世界最速」だったことは歴史が証明していると思うのですが (帝国光学のZUNOWが居ますが)(汗)、何となんと控えめな化粧箱だったのでしょう・・(涙)

・・こういう企業姿勢に、今も波々と続く富士フイルムらしさを感じ入ってしまいます(涙)

残念なことに、今や主体は光学機器の業界から医療の薬学業界へと移っていますが、それは
そもそも元を正せば「写真機材会社」から始まり、フィルム印画紙や引き伸ばしレンズで一世風靡した「もとから一歩下がった立ち位置」とも受け取れそうな(笑)、最前線よりも補給線を維持・・みたいな印象を受けるものの、医療業界で世界シェア70%以上牛耳るOLYMPUSに続き「富士フルム、お前もか!」と薬学で世界制覇に果敢に挑戦してほしいところです(涙)

・・ガンバレ、富士フイルム!!!(涙)

なお、今回オーバーホール/修理の工程を進める中で「ちょっとした妄想」
閃いてしまい、その点についてもこのブログページ中腹辺りで検証しながら
解説しています。

いったいどんな妄想なのでしょうか・・お楽しみに!(笑)

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←1956年時点の米国写真雑誌内広告です。歴史を紐解けば・・

1954年:FUJINON 5cm/f1.2
1956年:CANON LENS 50mm/f1.2
1966年:ERNST LEITZ WETZLAR NOCTILUX 50mm/f1.2
1975年:PENTAX SMC 50mm/f1.2
1978年:MINOLTA MC ROKKOR-PG 58mm/f1.2
1978年:Nikon Ai NIKKOR 50mm/f1.2

・・以降1980年〜1984年まで焦点距離50㎜の括りの中で、各社より発売が続きますが、その一方で例えば帝国光学の「ZUNOW 5cm/f1.1」は前年の1953年に登場しています。

↑上の図は、一番左端が1953年に申請された富士フイルム、土井良一氏発案の特許出願申請書『US2718174A』で、2つめと3つめがその特許出願申請書に掲載図面から、当方の手によりトレースした構成図になります。一方右端が今回今回のオーバーホールで完全解体した際、光学系の清掃時に当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です

この特許出願申請書の記載事項を読み進めると、先ず大前提として新種硝子を使う想定で発案していることが記載されています。記述には「EK330/EK210」など記載がありますが
この番号がSchott社製、オハラ社製、或いはCDGM社製などの相当硝子と比較して、それらの30種類を超える光学硝子材の型番で、どの新種硝子に近似するデータを持つのかが分かりません(汗)

さらに「既存の開放f値f1.5との比較」の記載から、既に「F1.5モデル」を造っていたことが記載されており、その一部の形態として上に示した2つめの構成図を示しています。ここから発展させることで「開放f値F1.2」の発案が適った経緯が説明されており (3つめの
構成図
)、且つそこで球面収差、コマ収差、非点収差、及び像面歪曲に至るまでの改善が狙え、合わせて新種硝子の屈折率を基に色収差まで勘案して発案している点を述べています(驚)

↑上の写真は今回扱ったモデルのバリエーションを示すものですが、当初造られたのは左端の「クロームメッキタイプ」のようで、マウントは「L39マウント規格品」のみと受け取れます。次に「ブライトブラックモデル (中)」を用意し「L39マウント規格品と一部僅かにNikon Sマウント規格品」の2種類を出荷したようです・・その「Nikon Sマウント規格品」が右端です。

後でオーバーホール/修理が終わり組み上がったオールドレンズの筐体外装写真を載せますが、このモデルの「ブライトブラックのメッキ加工」は本格的な光沢ブラックではなく「僅かに
光沢が鈍い印象の黒色メッキ加工
」で、特にメッキ成分が1980年台以降とは違うようで「下手に磨くと微細なキズが付く」ほど柔らかいです(怖)・・従って今回は「木綿の雑巾」の登場と言ったところです (旧西ドイツ製オールドレンズに似ている光沢感/僅かに艶が少ない)。

  ●               






↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端から円形ボケの表出具合を確認したくネット上から実写をピックアップしています。円形ボケは残念ながら真円を維持してくれませんが、その代わり滲んで溶けていく際にトロットロボケに変異していきます(涙) 然し、その途中で収差の影響を受けてグルグルボケが現れると
共に、背景ボケの輪郭が残る分で少々見辛い印象の写りになることもあります(汗)

二段目
しかしそれを何とか乗り越えれば、その先には光操作の世界が待っていて(涙)、トロットロボケを楽しみながら、ピント面のエッジ表現にこだわりを貫く撮影なども期待大です!(驚)・・しかも、そこに「繊細感」が纏わり付くとなれば「まさに当方の琴線触れまくり」と指摘しても良いくらいで、琴線が鳴り止まずまるで煩いくらいです(笑)

特に最後の右端4枚めをみるとその繊細さの感じが伝わってきて・・堪りません(涙)

三段目
そして一番のオドロキは、この「空気感を残す撮影がサクッとできてしまうこと」です!(驚) このモデルの特性なのでしょうが、あまり気を遣わずにいつでも残せているようにみえるのが (実写が多いから) 素性の素晴らしさを物語っていると思います(汗) 「空気感」を残せると言うことは「リアル感/臨場感/緊迫感」のみならず、そこには被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さが伴わなければ成し得ません(汗) プラスして「光の留め方」に特別な特徴を持ちない限り、このようにサクッといつでも「空気を撮影できる」特技を発揮できないと思うのです(涙)

・・素晴らしすぎる!!!(驚)

四段目
そこから狙える期待値の増大は、当然ながら人物撮影たるポートレート撮影まで到達するので、一般的にポートレートレンズと言えば中望遠レンズ辺りがメインでしょぅが、それをこの標準レンズはヤッてしまいます!(驚)

実は、単に質感表現能力が高いからと、ポートレート撮影をしまくっても上手くキレイに人肌感を残せなかったりします(汗) やはり光の入射角度や照り返しに非常に敏感な光学設計を持たなければ「人肌表現に納得できない」のだと思います。そしてあわせてそこには「髪の毛の一本一本がちゃんと写っているのに、どうして繊細感まで漂わせるのか???」との錯覚を上手く利用してしまう「表現性」こそが、このモデルの大きな魅力ではないかと感じ入りました (収差の影響があるので、なまじ画の周辺域までキッチリ解像していないから)!(涙)

五段目
そして、意外にも「日中のピ〜カン撮影時」や、そま真逆な条件下である「帳がおちる頃」などの明暗差が厳しい条件下で、ご覧のようにキッチリ階調表現を残しつつ、然し鋭く在るべき所はちゃんと鋭さ感を感じる (感じる程度で良いのです!)(笑)、そういう個性を持つ特徴的な写りに・・唸ってしまいます(涙)

開放F値F1.2ながら、被写界深度が神経質すぎることなく自然なのが、まるで信じられません・・例えば富岡光学製モデルの「F1.2クラス」で同じシ~ンを撮影したら、とんでもない写真しか残りません (被写界深度が浅すぎて/狭すぎて全体を掴めない写真に堕ちる)(笑)

そしたら、この実写のシ~ンでは「海での撮影なのか山での撮影なのか (背景に湖が写っているのか?)」納得感がないままに、目の前の石ころばかり強調した写真になってしまいます(汗)

・・F1.2のくせにF1.2の振る舞いを魅せない事がある、オマエも悪ョのぉ〜の世界(笑)

六段目
そして光源を含む写りになっても、相変わらず個性を最前面に出してくる写りが堪りません(涙) やはり光が介在するとどうしても「光のコントロールが上手いのか否か」が最前線で問われるので(汗)、まさに富士フイルムの独壇場と言ったところです(笑)

それはカラーでも白黒でも関係ありません・・こういう要素こそが、業界きっての「引き伸ばしレンズメーカー」でもあった『エビデンス』なのではないでしょうか???(涙)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入りますが、その前に当初バラした直後に溶剤で洗浄した後の状況を載せていきます。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
ツマミロック時はオーバーインフ状態で、50.5ft辺りが無限遠合焦。
距離環を回すトルクが少々重い印象で、特にピーク/山の前後動が辛い。
絞り環操作も同じく重い印象で、特にクリック感が硬い感触。
光学系内の透明度は高いが、微細な塵/埃と汚れが少しある。

《バラした後に新たに確認できた内容》
 ヘリコイドグリースに潤滑剤系グリースが塗られている。
空転ヘリコイドの経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びが放置プレイ。
その結果、空転ヘリコイドの駆動が重くなっている (潤滑剤に頼った整備)。
空転ヘリコイド接触面を確認して、それらが判明 (既に擦れており摩耗が進んでいる)。
光学系内の反射防止黒色塗料が3種類塗られている。
 その結果、光路長が僅かに逸脱しつつも、ヘリコイドのネジ込み位置で訂正。
 これらは、オールドレンズの整備を熟知したプロの整備者の所為との判定。

↑先ずは光学系から写真掲載し解説していきます。当初バラした直後の光学系第2群で、ゾナー型なので、3枚の貼り合わせレンズです。すると過去面弟子に着色された厚塗りの「反射防止黒色塗料」のせいで「光学系前群格納時に加熱処置で入れ込んだ為に、経年で圧力を受け続けていた証拠が現れている」のを赤色矢印て指し示しています。

赤色矢印は「3枚の光学硝子レンズの貼り合わせ面」になり、経年の圧力から四季の温度変化により「バルサム剤が溶け出してハミ出ている状況」です (褐色なのがバルサム剤)(汗)

今回のオーバーホール/修理に際し、光学系前群格納筒からこの光学系第2群貼り合わせレンズを取り出すことができず「加熱処置 x 2回」で引き抜いています。例えばその「加熱処置」の結果バルサム剤が溶けてしまうと、引き抜いている最中に剥がれてしまう為すぐに分かります (ッて言うか、引き抜いている時に剥がれてしまうのは最悪の状況で、今までに一度もない)(怖) もちろん光学硝子レンズが割れてしまうことすら想定できますから、加熱したまま格納筒から引き出すことは有り得ません(笑)

当方でのオーバーホール工程で貼り合わせレンズを剥がす場合は「必ず単独で取り出してから個別に加熱処置」なので、不本意に剥がれてしまったことは一度たりともありませんね(笑)

↑当初バラした直後の撮影ですが、取り出した光学系第1群前玉光学系後群第4群後玉までを左から順に並べています。光学系の前群側を赤色文字で表記し、後群側をブルー色の文字にしています。またグリーン色の矢印が指し示している方向は「前玉の露出面側の方向」を表し、各群の光学硝子レンズがどの方向を向いて並べてあるのか、分かるように配慮しています。

↑同じ並び順のまま、ヒックリ返して裏面側を上向きに於いて撮影しています。すると第2群第3群の裏面側を見ればよ〜く分かりますが、着色してある「反射防止黒色塗料」の照り返しで「色の具合が違う」のが窺えます・・上の写真だけでも2種類使っているのが分かりますが
実際に溶剤で溶かし始めると「或る溶剤では溶けないのに、別の溶剤で溶ける」作業の結果から「何種類の反射防止黒色塗料が塗られているのか???」が見えてきます(笑)

・・反射防止黒色塗料の種類の数が、過去メンテナンス時の回数に一致するのが常(笑)

↑光学系第2群の3枚貼り合わせレンズ (左) と、第3群の3枚貼り合わせレンズ (右) を並べて撮影しています。すると過去メンテナンス時に着色された「反射防止黒色塗料」の種類は、ブルー色の矢印グリーン色の矢印、そして赤色矢印の合計3種類が使う溶剤の変更で「溶けるか溶けないか」により明白になります(笑)・・一部は1種類の「反射防止黒色塗料」の上から、新たに別の「反射防止黒色塗料」を塗り足している箇所もあったりします(怖)

・・「反射防止黒色塗料」の塗膜の厚み分で、光路長が狂うと言う感覚が一切ない!(怖)

上の写真で左側の第2群は、既に1つめの溶剤を使い溶かして剥がしている最中なので、光学ガラス材が露わになっています。しかし赤色矢印の側はほぼ影響を受けず溶けていないのが
分かります (つまり別の溶剤でないと溶けない反射防止黒色塗料の成分が違う)。

↑光学系第2群の3枚貼り合わせレンズのコバ端着色「反射防止黒色塗料」を完全除去したところです。最終的に3種類の溶剤を使ったので、着色されていた「反射防止黒色塗料」も3種類になり、且つ過去メンテナンスも3回は実施していたのが分かります。

赤色矢印で指し示している箇所が3枚の貼り合わせレンズ面を意味し、このように「反射防止黒色塗料」を完全除去すると「貼り合わせレンズの枚数すら間違いなく明白に視認できる」のがご理解頂けると思います (そのために撮影しました)(笑)

まぁ〜、確かに特許出願申請書の掲載図面を観たり、或いはネット上の光学系構成図で自ずと「3枚の光学硝子レンズの貼り合わせ」なのは分かりますが、それを実際にこのように現物で見て確かめるのも (写真掲載するのも) 有意義だと、当方だけは信じていますね(笑)

↑やはり後群側の第3群3枚貼り合わせレンズに着色されていた「反射防止黒色塗料」も、2種類の溶剤でも溶けずに2つめの「反射防止黒色塗料」を溶かしたその下から「3つめの塗膜が現れた」のを撮影しました (ブルー色の矢印)。

こうやって「何回も反射防止黒色塗料を塗り足していく感覚、概念が信じがたい話」としか言いようがありません。下手すれば光路長を逸脱していく懸念すら残る場所なのが光学系なのに
どうして何度も何度も塗りまくるのでしょうか???

・・整備者の方、このブログを観ていたらどうが教えて下さいませ。

いったい何の根拠があって、このような所為を執るのか是非知りたいです。それほど毎回毎回
必ずと言って良いほどに「反射防止黒色塗料」に悩まされ続けています(涙)

↑同じ光学系第3群の貼り合わせレンズですが「反射防止黒色塗料」を完全除去したところ、何と今度はその塗膜の下から「ー2.6」との鉛筆書きが現れました(汗) さすがに富士フイルムの製産時点では「裏写りする」ので、こんな鉛筆書きをしないだろうと思います(汗)

確かに今までも、何回も何回も (それこそ累計で100本を超える勢いで) 同じように鉛筆書きで、光学硝子レンズのコバ端に直接記入してあった個体を見つけています。中には本当に「裏写り」してしまい、その影が前玉側方向から覗き込んで見えていたこともありました(汗)

・・まるで信じられません!(驚)

なお赤色矢印の箇所が「3枚の光学硝子レンズの貼り合わせ面」を表し、この貼り合わせ状況から (ちゃんとデジタルノギスで計測して) それぞれの3枚の光学硝子レンズの貼り合わせ位置と方向を掴みました(笑)

↑同じ場所をさらに拡大撮影すると、こんな感じです(笑) ちゃんと貼り合わせ面のバルサム剤とコバ端が視認できます・・どうでも良い話ですが(汗)

←ついでにその確認できた貼り合わせ面を基に、さらにシッカリ計測して冒頭のトレース図にも反映しているつ・も・りです(汗)

ご覧のように貼り合わせ面は、互いに極僅かにズレつつも中心部を基準に左右 (上下) に均等張り合わせしていたのが判明しました。従ってネット上で数多く確認できる光学系第3群の貼り合わせ面、接続様態ではありません(汗)

↑当初バラし終わってから、溶剤で洗浄した後の撮影です。グリーン色の矢印で指し示している箇所が接触面ですが、経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びが進んでいます。

マウント部 (空転ヘリコイドの受け部を含む) (真鍮製/ブラス製)
空転ヘリコイド (黄銅材)
フィルター枠 (黄銅材)

冒頭で示した瑕疵内容のうち、トルクを重くしたり固くしたりの因果関係が、これら経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びによる抵抗/負荷/摩擦の増大です。

↑ここからはオーバーホール/修理の工程写真に移ります。既に完全解体した後に溶剤での線状が終わり、当方の手による『磨き研磨』を施し、それら各構成パーツを使いながら組み立てていく工程に入ります。

絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。上の写真に見えている小さな穴が「位置決めキー用の穴」で、ここに絞り羽根の裏側にプレッシングされている「位置決めキー」が刺さります。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑12枚の絞り羽根をキレイに清掃してから組み付けました (当初バラした直後は僅かに油染み状態)。決して薄すぎない、然しライカレンズほど分厚くない印象の肉厚で造られた絞り羽根であるものの、実は絞り羽根の表裏面に1本ずつ打ち込まれている「小さな円筒のキー (黄銅材) のプレッシングが厳密で確実」なので、絞り羽根の経年に対する耐性も高そうで(驚)、特に「キーの垂直度の維持に優れている」印象を受けました (この印象はライカ製オールドレンズと同じレベル)。

そして驚いたことに(驚)、このモデルの登場が1954年と日本国内では極早い時期であったにもかかわらず「真鍮製/ブラス製や黄銅材にアルミ合金材までの金属材全てについて、その
切削加工技術と面取加工技術が完成の域に到達している
」点に於いて、残念ながらつい先日に
オーバーホール/修理したCanonCANON LENS 50mm/f1.2《前期型》(L39)」とは次元が違うレベルであることを、ここに告知させて頂きます!(驚)

それは完全解体して見れば一目瞭然ですが(汗)、筐体外装まで含めた構成パーツの全てについて「指が切れそうになる/触ると引っかかりを感じる/ネジ込みの際にねじ山の咬み合わせが神経質」などの事象が起きないのです。また切削と面取りが厳格なので「不必要な遊びがない」ことからも、各構成パーツの組み上げには理にかなった組み合わせの良さを整備していて感じ取れます(汗)

ネット上で整備を解説している何処ぞのプロのカメラ店様専属整備者のサイトがありますが、自慢話する前にこういう情報こそ、ちゃんと自身の印象として述べたほうが良いのではないでしょうか???(笑)

何故なら、そういう金属材の取り扱いに対する企業姿勢こそが、まるでそのままに加工品には現れてしまうからで、どんだけ工場設備にお金を投じて「納得いく加工品に仕上げるとの強い概念」が在るのかを示している、一つの事実だと受け取っているからです。それは裏を返せば「設計者の意図をいち早く具現化できる能力」を有する企業としての左証であり、結果的に「組立工程の難易度について平準化が進んでいた」ことをも明示し、そしてその根底には・・
急がば回れ」との経営者の思想がまるで現れているからとも受け取れます(涙)

このような思想を金属材の加工とその面取り技術として見受けられる当時の光学メーカーには
何よりも戦前から真摯に臨んできたNikonがありますが(涙)、そこはそれ「大海原の中で塩害に耐えなければならない劣悪環境下での使用に耐え得る」ことが絶対であり (大日本帝国海軍御用達)、右も左もなくただただひたすらに100%の担保を求められていた背景からすれば、どんだけ厳しく辛い環境下で軍需光学製品を開発/製産していたのかが窺われます(涙)

それに相通じる印象を受けるとなれば、まさに「企業概念」そのものに何かがちゃんと現れている光学メーカーだったと受け取らざるを得ません(涙)・・今ドキ、日本国内の有名処大企業での絶えることがない不正問題が次から次へと露呈し続けていますが(泣)、トヨタでさえ創業時の理念をグループ全体に一貫して通せていなかった点についても、今一度ニッポン人は他人事として受け取らず、自身の足元を顧みるくらいの心の余裕を、その向上心からこそ自覚するべきです。「長いものには巻かれろ」の「長いもの」とは、職場の上司や環境/慣例、或いは詰まる処の経営陣ではなく「最終的な顧客であり社会であり日本国民を指す」ことを見失う危険すらはらんでいることを、是非とも顧みて頂きたいです(涙) 「技術大国ニッポン」を実証するのは、日本国民と世界中の顧客なのであり「ごまかしの概念」はオールドレンズに限らず、何事に対しても道理が通ることを肝に命ずるべきですね (いつかはバレます)(笑)

  ●               

話を戻して(汗)、ここからはちょっとばかりオーバーホール/修理の工程を逸脱して「湧き出てしまった妄想の確認」をしてみたいと思います(笑)

↑その「妄想」の確認に際し、先ずは完全解体してしまった一部の構成パーツを一旦組み上げて「仮組み」にします(汗) バラしていた光学系の後群を後群格納筒ら組み込んで、一旦戻し
ました (未だ清掃などが終わっていません)(笑)

↑そのまま光学系後群をヒックリ返して撮影していますが「仮組み状態」なので、ご覧のとおり「必要なコバ端着色」すらできていない状況です (まさに皆様が執拗にこだわる迷光だらけの世界)(笑)

↑この仮組みした光学系後群格納筒を、上の写真グリーン色の矢印で指し示すように完成したばかりの鏡筒に組み込みます。

↑ちゃんと光学系の清掃が終わっていれば、まさにこんな感じで組み込みが終わり組立工程を進められますが、今はいっとき「仮組み状態」です(笑) 鏡筒に対して光学系後群格納筒
キッチリ最後の位置までネジ込まれている状況に仮組みしました (どうしてキッチリと断言できるのかの根拠がちゃんと在るからそう述べています/つまり最適な光路長を担保できる位置までネジ込まれていると明言しているのです)(笑)

・・例え仮組みするにも、このようにちゃんと「原理原則」に則り実証するべきですね。

詰まる処「単にテキト〜にネジ込んだだけ」ではないのが、その「湧いてしまった妄想の検証」だからです(笑)

↑さてさて、前玉側方向から鏡筒内部の絞りユニットを覗き込んでみましょう(笑) まだ絞り環をセットしていませんが、それでもこの状態で「開放状態を再現」するのはできる為、上の写真のとおり「開放時の絞り羽根の位置に開いて撮影」しています (だから仮組みして組み込んだ光学系後群が絞りユニットの奥にちゃんと見えている)。

ここからが「涌出し妄想に対する重要な検証ポイント」です(汗)・・上の写真の赤色矢印
指し示している位置は (矢印の先端) は「このモデルでの開放設定時の絞り羽根の縁の位置
であり、絞り環で言うところの「F1.2刻印位置」を意味し、開放まで絞り環を回した時の
絞り羽根の状態「完全開放状態」を再現している写真です。

・・ご覧のように絞り羽根が顔出ししている設計なのです!(驚)

鋭い方々は、もぅピ~ンと来ましたね!(笑)

↑さらに絞り羽根を「この鏡筒の設計上で回せるギリギリの端まで回し切って」本当の意味で絞り羽根を開ききってしまった時の撮影が上の写真です (開放設定時のF1.2よりさらに開いている状態)(汗)

そうなのです!(驚) 絞り羽根は鏡筒の中では「まだ開く余裕が残っている」設計だったの
です(汗) するとご覧のとおり「絞りユニット背後に居る光学系後群の第3群コバ端が露わになった」のがちゃんと視認できています!(驚)

実は一つ前の「開放時の再現写真」では、絞り羽根が光学系第3群のコバ端の上に僅かに覆い被さり、極僅かに内側方向に「閉じている状態」だったのです!(驚)

↑実際に「鏡筒の設計上で絞り羽根が開ききってしまうギリギリの位置まで開いた」時の状況を拡大撮影しました(汗)

赤色矢印で指し示している位置が「絞り羽根が完璧に収納された設計上の限界地点」を意味し
それは「絞り羽根が開閉環のフチにピタリと合致しているからこそ、設計上の意図が見え隠れしている」と申し上げているワケで、絞り羽根がさらに奥の位置まで収納されているワケではなく、或いは極僅かに絞り羽根が開閉環のフチから顔出ししてもおらず、ピタリと互いが合致している時点で「設計者の意図」を感じずには居られません(汗)・・つまり絞り羽根が奥まで収納される必要性が一切無く、合わせて開閉環の縁から内側方向に顔出しさせてはイケナイとの考えが・・窺えたのです(汗)

そしてグリーン色の矢印が指し示しているのは「光学系後群第3群のコバ端の縁」であり、それが意味するのは「光学系に入射してきた入射光の透過限界」を意味します(汗) 至極当たり前な話であり(笑)「反射防止黒色塗料」を使いコバ端着色してしまったら、入射光は物理的にそこを境としてコバ端の外苑をさらに透過できません (塗料で塞がれているから)。

すると上の写真で示した「ブルー色の矢印の距離が確定してしまった」のです!(驚)

デジタルノギスを使い実測すると「ブルー色の矢印の距離2.23㎜」開いているのです!
・・ちなみに、光学系後群の格納筒ではなくて「第3群の締付環の縁が写っている」ので、真に本当に光学系第3群のコバ端位置で、前玉を通して差し込んできた入射光が透過できる、物理的に開いている距離を計測するとブルー色の矢印の囲い部分になるのです。

・・つまり何を言いたいのか???(汗)

設計時点も製品の時点でも「絞り羽根を敢えてワザと故意に閉じさせて、開放F値F1.2として製品化した」と透けて見えてくるのです!(驚)

当方が所有している簡易検査具が、厳密に開放f値を計測できるモノではないので(汗)、残念ながらこの状態での入射光の光量をf値として計測できませんが、少なくともその道理は通っているとみています(汗)・・皆様は如何でしょうか???

↑「妄想」も度を越すと勢いが止まりません(汗)、さらに検証を進めます。今度は「光学系前群格納筒」に光学系第2群の3枚貼り合わせレンズを仮組みしました。前述同様未だ光学清掃していませんし、ご覧のとおり「反射防止黒色塗料」によるコバ端再着色も実施していません。

↑この状態で鏡筒に収納される距離を実測します。この光学系前群格納筒を鏡筒にネジ込むと、上の写真グリーン色の矢印の領域が鏡筒内部に格納していく設計です。そして格納されると、絞りユニットの直上「光学系第3群コバ端の真上に位置する光学系第2群のコバ端の領域
/開口部
」こそがブルー色の矢印の範囲です。

↑以上の検証を以て考察すると(汗)、絞りユニットの絞り羽根が開閉する位置の前後で残っているスペースは、絞り羽根の水平一方向に対し「ブルー色の矢印の水平方向2.23㎜」に対して、前述の光学系第2群コバ端の迫り出し/落とし込み/最接近位置は赤色矢印で指し示した「まさに開閉環のフチ部分に第2群のコバ端までが合致」する計測値になり (但し互いが接触する位置ではない)、そこから逆算していくと光学系第3群コバ端の縁から直上に空く空間は「オレンジ色矢印の垂直方向凡そ1.5㎜」との計測値に到達しました!(驚)

このように「絞り羽根の格納位置端開閉環の端光学系第2群コバ端の最接近位置と言う、
三つ巴での合致」こそが「設計者の画策/意図/欺瞞」の左証ではないかと、独り勝手に盛り
上がり、昇華してしまっています!(笑)

はたして「この極々僅かな1.5㎜の空間だけで開放f値が変化するのか???」は「光学知識が皆無」な当方には計算のしようがありませんが(汗)、少なくとも光学系後群に光学系前群を透過してきた入射光を渡すべく「その隙間/スペース/許容寸法が、実は残されていた」との憂がった憶測と共に、それこそが「涌出し妄想」にアッと言う間に膨らみました(笑)

・・要は、このモデルは既に開放F値:F1.1を実現していたのでは???

・・との憂がった妄想と憶測の渦中にグルグルと飲み込まれてしまったのです(笑) いえ、もしかすると「F1.0」すら達成していたのかも知れません(汗)・・妄想が妄想を呼んで留まるところを知りません (十分お酒の肴になってくれそうです)(笑)

そこで冒頭の特許出願申請書の記述に立ち戻り、その内容に思い馳せれば「ザイデルの5収差
球面収差・コマ収差・非点収差・像面収差・歪曲収差」の中で「球面収差・コマ収差・非点収差・像面収差」について改善を確認し、且つ新種硝子の使用で色収差まで追求できたとの、土居氏のたゆたゆに波打つ自信が溢れた記述に「光学知識皆無なクセに」納得感さえ覚えて
しまうから、要は舞い上がっている時は何でも良いのです!・・ガハハハッ!(笑)

そこから透けてくるのは「そうは言っても、開放付近〜F2.0辺りでの収差の影響と、被写界深度の浅さ/薄さから、敢えて絞り羽根を閉じさせた (顔出しさせた)」との配慮さえ浮かんできます・・それはそもそも当時がフィルムカメラでの撮影だったので、ファインダーを覗いていて、いったいどんだけピント面の鋭さ感に感じ入って撮影できているのかまで考えた時、おそらくは無駄に「開放F値F1.1を製品化しない」と、こんなところにまで富士フルムの企業姿勢がヒタヒタと迫っているように感じ、またまた涙ぐみそうです (こじつけているだけ)(笑)

ちなみに、設計者が意図してか否か分かりませんが、何と絞り環には駆動域を限定してしまう造りを備えていません!(驚)・・するとここで一つの壮大な
閃きが起こります!(汗)

もしも鏡筒とフィルター枠の切り欠き/スリット/開口部を切削して「F1.2の先の絞り羽根が、物理的に完全に収納してしまう位置/完璧に開ききってしまう位置まで駆動域を広げてしまったら」どうなるのかと言う、妄想から発展した幻覚にまで行ってしまいそうな話です!(笑)

もちろん絞り環はそのような設計なので「F1.2の先まで回ってしまう」操作に簡単に改造できてしまい、しかもちゃんと開放〜最小絞り値の両端で停止する設計なのです!(驚)
(つまり鏡筒とフィルター枠を切削するだけで実現する世界と述べています)

はたしてこの時、実効開放f値は「F1.1」まで明るくなるのか、はたまた
驚異的な「F1.0」すら狙えるのか、幻覚の深淵は果てしなく・・(笑)

完全解体するからこそ、合わせて「観察と考察」「原理原則」から捉えるからこそ、このような別次元の妄想すら容易に閃くのです(笑) そして仮にこのような改造 (切削する必要があるので、当方ではそのようなオリジナルに戻せなくなる状態を指して改造と定義している) を執ったとしても、何ら個体の操作性や性能から逸脱しないと言う「お墨付き」すら残ると言う確証を得られるのが、まさに当方のオーバーホールに対するポリシ~なのです(笑)

・・長々と大変お騒がせしました (スミマセン)!(汗)

↑ここからは再びオーバーホール/修理の工程に戻ります(汗) 当方の手による『磨き研磨』を終わらせた状態の絞り環に関係する構成パーツ群です。

ステップアップリング (アルミ合金材)
フィルター枠 (黄銅材)
絞り環 (アルミ合金材)

するとここでの最大のポイントは「黄銅材のフィルター枠に対して、その周辺パーツがアルミ合金材で、且つ内側までメッキ加工されている」点です(汗)

ステップアップリングの遮光環部分は当然ながら反射を防ぐ目的なので「微細な凹凸を伴う
マットな梨地メッキ加工
」ですが、肝心なネジ込み箇所は違います。今回の個体の付属品に「中古MCフィルター (Nikon製)」が付いていましたが、実は当初取り外す際に回らず、上の写真 ステップアップリングまで一緒に回って外れてしまいました(汗) その際、さらにその次の フィルター枠のネジ山に応力分で干渉して、時々引っかかって噛みそうになっていました(怖)

そこでオーバーホール/修理工程では「逆に干渉せずにすぐに ステップアップリングが回ってすんなり外せる」ように仕上げないと、近い将来完全固着して「装着したフィルターが外せなくなる (その際ムリにステップアップリングを外そうとすれば齧りついて二度と外せなくなる)」のが、そもそも「黄銅材の特性 (応力に弱い/撓り易い)」からなので、そういう部分に
こそ「原理原則」が反映しています(汗)

また 絞り環との関係性にも注意が必要であり、クリック感の感触を決めているだけにその
操作性の良し悪しを決めるのは、ここ フィルター枠の黄銅材に残る経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びの除去状況が強く影響します。従って上の写真の如くピッカピカに『磨き研磨』して仕上げています(笑)

するとここで初めて「クリック感を実現している鋼球ボール+スプリングの反発力」だけ勘案して、最終的な絞り環操作時の「操作感」に集中的に微調整に取り掛かれます・・いわゆる
一般的な「グリースに頼った整備」を行わず、製産時点で処置されていたであろう「本来在るべき姿」として組み上げていくことが適います(涙)

だからこその フィルター枠を中心にした ステップアップリング 絞り環との接触状態→メッキ加工の具合なのであり、それを先に解説した次第です(笑)

これらの処置から冒頭で挙げた瑕疵内容たる「 絞り環操作も同じく重い印象で、特にクリック感が硬い感触」について、確実に改善できるところです(笑)

そう言う意味で、単にバラしてグリースを塗って組み立てていくだけでは決して到達し得ない「本来在るべき姿」がしっかりと、ウソ偽りなく実現してく次第です(笑)

↑鏡筒を取り外す際に「引っかかって抜けない」などと解説していた、某有名処カメラ店様の専属整備者解説サイトがありましたが(笑)、ちゃんと「切り欠き/スリット/開口部」が備わるので「開放位置にセットしていればちゃんとすんなり鏡筒を抜ける」のに、その整備者が
いつも基準の位置にセットして整備作業を始めていない事実が明らかになり、自らその証拠を述べてしまった」ような話で(笑)、要は「単にバラして、その逆手順でしか組み上げていない証拠でもある」とも明言でき、当方ではそういう整備を『低俗な整備』と呼称しています。

もしも製産時点になるべく近しい状態にまで組み上げたいとの「ほんの僅かな気概でも持っているなら」絞り環や距離環などは基準位置にセットしてから、その状態のままを維持させつつバラしていくことで「過去メンテナンス時の整備者の所為が拙かったのか否か」の判定が下せるのであって、どのセット位置でバラしたのか分からないままでは「単にバラして組み立てている低俗な整備者のひとり」としか言いようがありません(笑)

さらに上の写真を見ると分かりますが、その「切り欠き/スリット/開口部」は、横方向にまでそのまま伸びて続いています (左横の赤色矢印)。この領域が絞り環と鏡筒内部の絞りユニット (さらにその中の開閉環) と連携したまま移動するので、結果的に絞り羽根が開閉動作する原理ですね(笑)

・・するとここで初めて今度は組立時の手順が見えてくる(笑)

ので、適切な組立工程をちゃんと経ていれば「本来在るべき姿」として組み上がるのは、それぞれの構成パーツ経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びなどを、ちゃんと除去するだけで良いと言う簡単な話に到達します(笑)

従って、当方は何一つ難しいことをヤッておらず(笑)、むしろ当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話ですから(笑)、相変わらず
13年間も低レベルな技術スキルのまま3,000本以上ものオールドレンズを組み上げてきたと言ったところです(恥)

フィルター枠を基準にして、 ステップアップリング 絞り環がセットされ、もちろんこの中に鋼球ボール+スプリングも組み込まれていて「とても素晴らしい操作環とクリック感に戻っている」次第です(笑)

特に フィルター枠の黄銅材には不必要な箇所には一切グリースを塗っていないので(笑)、上の写真を見れば分かりますが「はみ出てきているグリースなど全くありません」と言う、至極当たり前の組み上がりです(笑)

・・最低限のグリースしか塗らないのは、結果的に仕上がりの良さを担保できるのです。

ヤフオク!で「分解設備済」を謳って、その出品ページ内に「必要ない箇所にはグリースを塗らない最低限のグリース塗布」と真似して述べているアホが居ますが(笑)、その前提条件を蔑ろにしている時点で・・笑えます (毎回飛ぶように落札されていきます)(笑)

・・こういうのを「グリースに頼った整備」と言っているのです(笑)

このように「真似て謳い文句にするバカ」が毎年必ず現れる為(笑)、当方はその出品者のように「手の内を見せない」ワケで、整備内容や施している所為などは事細かく紹介しません(笑)
・・それは当方とはオールドレンズを観ている角度が違うので(汗)、そのような輩と同一視してほしくないですね(笑)

先週末にいつも当方を懇意にして頂くファンの方からメール着信し「そろそろ警鐘を鳴らしたほうが???」とのことで、なんでもそのヤフオク!出品者の
勢いが増しているらしく・・釘を刺しませんか???とのご所望です(笑)
今準備しているところなので、今暫くお待ち下さいませ(笑)

↑一つ前の フィルター枠の「切り欠き/スリット/開口部」に入る部分は、上の写真鏡筒から横方向に飛び出ている「確定キー開閉キー」なので、開放F値「f1.2」の位置にセットしていなければダメなのです (鏡筒を抜くのもセットするのも両方ともできない)(笑)

ちなみに開放位置なので「開閉キー」は絞り環操作に従いブルー色の矢印方向に動きます。

↑こんな感じでようやく鏡筒がセットされました(笑) 当方のオーバーホール/修理工程の中ではここまで来るのにアッと言う間ですが(笑)、解説のためにいちいち撮影しているので (説明文もあり) 長くて本当に申し訳ございません!(汗)

↑鏡胴「前部」は上の後、光学系前後群を清掃て組み込めば終わり/完成なので、ここからは
鏡胴「後部」の組立工程に入ります。このモデルは「鏡胴二分割式」なので「前部/後部」に
分かれます。

距離環ローレット (滑り止め) (アルミ合金材)
距離計連動ヘリコイド (真鍮製/ブラス製)
空転ヘリコイド (黄銅材)
マウント部 (真鍮製/ブラス製)
制限キー (黄銅材)
空転ヘリコイド封入環 (黄銅材)

ご覧のように鏡胴「後部」はヘリコイド群の塊なので、極々簡素です(笑)

距離計連動ヘリコイドは真鍮製/ブラス製なので、本格的な『磨き研磨』が材として処置できません(汗)  マウント部も同じ真鍮製/ブラス製ですが、そうは言っても一部には「 空転ヘリコイド」がダイレクトに接触する箇所もあり、研磨しないとも言っていられません(汗)

なお 距離計連動ヘリコイドには「直進キー」が備わり突出しています (グリーン色の矢印)。一方マウント部の内側にも「直進キーガイド」が切削されていて、底に「直進キー」が入りスライドしていきます (ブルー色の矢印)。

すると勘の良い方は既に気づいていますが(笑)、この「直進キーとガイドの長さ鏡筒の繰り出し/収納量に合致」がオールドレンズの原理ですね(笑)

そこでよ〜く注意深く観察すると「直進キーの近くが盛り上がった切削になっている」のが分かります・・何と平滑仕上げではないのです(笑)

これこそが当方が普段からこのブログで何度も何度も執拗に述べている「直進キーにグリースを塗ったくっても意味がない」ことの左証であり(笑)、そもそも距離環の回転とともにすぐにスライドしてしまうので、ここにグリースを塗る意味がありません (つまり距離環を掴んで回している指先から伝わるチカラの伝達は、この直進キーとガイド部分に一切留まらない)(笑)

・・「原理原則」とは、そういう事柄です(笑)

だとすれば、滑らかにスムーズにスライドしていくように仕向けるには、どうすれば良いのかが自ずと導き出されますね (そもそも真鍮製/ブラス製なので磨き研磨もできない)(笑)

↑このモデルの操作性を左右させる心臓部たる「空転ヘリコイドに纏わる構成パーツ」です(汗)  マウント部内側に指し示したグリーン色の矢印の位置が「 空転ヘリコイド」が100%ダイレクトに接触し続ける「平滑面」です(汗)

グリーン色の矢印だらけになってしまうので(笑) 全てを指し示していませんが(汗)、これらの平滑仕上げの仕上がり具合によって最終的な距離環を回すトルクが決まってきます(汗)

そして何よりも一つ前の写真にある「 距離計連動ヘリコイド」をとても滑らかにスムーズに
それこそ一切の抵抗/負荷/摩擦を残さずに組み込まない限り「最終的な距離環を回すトルクは重い方向へとどんどん加算されていく」次第です(汗)

従って徹底的にグリーン色の矢印の平滑面を『磨き研磨』しますが、実は寸法公差を逸脱するような研磨を施すと、逆に平滑性を著しく損ない「互いの接触面に非常に微細な遊びが現れ、最悪齧りつく」ものの、一度研磨してしまった金属材を基に復元することは不可能です(怖)

・・だからこそ当方は金属用研磨剤を使いません!(怖)

ヤフオク!出品者の出品ページを観ると、出品商品の解説よりもさらに2倍以上のスペースを割いてまで「金属研磨の有用性」を力説しまくっていますが(笑)、3,000本以上仕上げてきた当方の経験値からは「何一つ靡かない」としか言いようがありません (皆無です)(笑)

そもそも現在の光学メーカーのサービスに質問している時点でお話になりません (それに答えてしまうサービスも問題ですが)(笑)

そろそろ釘を刺したほうが良いとのご指摘がありましたが(笑)、その解説はまた長くなるのでここは省いてサクッと済ませます(笑)

↑いよいよ 距離環のマウント部との関係性に至りますが(汗)、このモデルは当時の「L39マウント規格品」の数多いオールドレンズの中にあって「希少な内部にツマミロック機構を忍ばせている設計」と、ここにも当時の富士フイルム設計陣の「外への出っ張りを極力減らしてスマートにしたい (フィルムカメラの邪魔をしたくない)」との配慮が見え隠れします(涙)

その意味でも先日のCanon『CANON LENS 50mm/f1.2《前期型》(L39)とは対極的な
ポジショニングの印象です(笑)

上の写真のようにグリーン色の矢印で指し示している箇所にツマミのロック機構がかちっと入るので、その微調整はバラさないとできませんが、固着が酷く外せませんでした(涙) おそらく90度のラッチ式アングルドライバーがあれば良いのでしょうが、削ってしまうと怖いのでムリしてバラすのをやめました(汗)

なお 制限キーは単に距離環の駆動域を制限する為だけの役目で用意されていますが、これを単独でワザワザ敢えて構成パーツとして用意してきた設計者の意図が明確に在り、その為の事前根回しをちゃんとシッカリ処置していないと効果が発揮できません(笑)

・・そう言うのも「観察と考察」なので「本来在るべき姿」実現はアッチコッチ大変です(笑)

↑こんな感じで空転ヘリコイドが封入され、要は当方のオーバーホール/修理では「この空転
ヘリコイドでトルクを重くしたり軽くしたりの微調整を執っている
」ワケで(笑)、凡そ過去
メンテナンス時の整備者の所為たる「空転ヘリコイドに潤滑油を注入しまくるグリースに頼った整備」とは、全く正反対に位置する概念でのオーバーホールです(笑)

従って10年後に再び今回のこの個体をトルクが重くなったりしてバラした際、この空転ヘリコイドの経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びは「最低限レベルに留まっている」ことを、当方が自ら整備した個体の回収が「8年前までの個体で検証済」なので、このように述べられるワケです(笑)

・・ちゃんと根拠があって実地検証済みで8年の時を鑑みて述べている(笑)

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。何し市場流通価格が65万円〜180万円の価格帯なので、当方が生きている間に触れることができないと、すっかり観念して決めてかかっていましたが、本当にご依頼者様に感謝しかありません!(涙)・・ありがとう御座います!(涙)

冒頭でいろいろ瑕疵内容を挙げましたが(汗)、組み上がってしまえば「何一つご報告すべき
瑕疵内容がない
」状況です(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化進行に伴う極薄いクモリすら皆無です。

写真に少しだけ写っていますが(笑)、ご覧のとおり今回扱った個体のレンズ銘板刻印製造番号は「500xxx」です(驚)

↑光学系後群側もスカッとクリアで、もちん極薄いクモリすら皆無です。冒頭でさんざん写真掲載してきた「反射防止黒色塗料」も、必要最低限で再着色しています。それでもこの写真と
一つ前と「光学系内に迷光迷光!と大騒ぎする要素は一つも残っていない」のが一目瞭然です(笑) それこそ遮光環にまで塗られていた「反射防止黒色塗料」を溶かして剥がしまくったので(笑)、製産時点のメッキ塗膜である「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」に戻っており、まさに「購入して箱から取り出した時の感動を今再び」みたいな話です(笑)

そして何よりも一番重要な課題だった「 ツマミロック時はオーバーインフ状態で、50.ft辺りが無限遠合焦」との瑕疵内容も、まるでウソのように「お借りしたライカM11Pでの実写確認で、ツマミロック位置でピタリと無限遠合焦」に戻りました(涙)

↑12枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したままとじていきます(笑)

冒頭瑕疵内容「 絞り環操作も同じく重い印象で、特にクリック感が硬い感触」も適切な小気味良い「鋼球ボール+スプリング反発の感触」にも戻してあります(笑)・・これは「板バネの反発力に拠るクンクンと指に伝わる感触とは別次元」の話なので(笑)、例えば先日オーバーホール/修理したCanonCANON LENS 50mm/f1.2《前期型》(L39)」とお手元で比較して頂ければ明確に分かります(笑)

・・このように明言しきってしまうのが当方のオーバーホール/修理の特徴です(笑)

事実なので隠す必要がありませんし、何一つ誇張もせず、もちろんウソを公然と平気で述べているワケでもなく(笑)、ありのままをそのままご報告しているに過ぎません。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっていますが、前述のとおり「いつもの本格的な磨き入れ」ではないので (単に木綿の雑巾で磨いただけ) 特に変化して
いません(汗)

「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースはいつもの「黄褐色系グリース」ですが(笑)、このモデルのピーク/山の前後動を勘案して少々軽めに仕上げています。冒頭の説明のとおり、特に被写界深度が極端に様くて薄いワケではありませんが、そうは言ってもピーク/山に前後動させるのに「指にチカラを伝える信号を意識して送り続けける」のは、なかなか使い勝手が良いとの印象には
結びつきません(笑)

・・そんなのはどうでも良い話と言われれば返すコトバがありませんが(笑)

意外にも、当方のオーバーホール/修理工程ではとても重要な工程であり、その微調整でもあるので、いちいち解説しているところです (スミマセン)(汗)

また前述のとおり「ツマミロック位置で無限遠合焦に仕上げた」関係で、内部の空転ヘリコイドの固定位置を変更しています。その結果「ツマミのロックが当初バラす前よりも、より確実にガシッと入るように変化した」ので(汗)、本来はツマミの裏側を直角レンチで外せば良いのでしょうが、おそらく「加熱処置」も必要になり、あまりイジりたくありません(汗)・・意外とこのツマミの固定パーツは神経質で、下手にイジるのも怖いです(怖)

・・シッカリと強めにツマミを掴んでロック解除してから回すようなコツが必要です(泣)

↑何とも丹精で迫力ある写真です・・今回扱ったこの1本が最初で最後でしょうね(泣)

もちろんそれだけで自分の人生にすれば「あまりにも身の上以上で誉れ高きこと」で全く以て十分です(涙)・・ご報告すべき瑕疵内容は一つもありません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置から変更/ツマミロックにピタリの位置)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離50㎜開放F値f1.2被写体までの距離81m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度40m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、50m辺りの被写体にピント合わせしつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の90m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f1.4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.0」での撮影です。

↑f値は「f2.8」に上がっています。

↑f値「f4」になりました。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」に上がりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値{f16}での撮影です。もうほぼ絞り羽根が閉じきっている状況ですが「回折現象」の永享は極々僅かです。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、真にありがとう御座いました。明日ライカM11Pも梱包して全てまとめてクロネコヤマト宅急便で発送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。