◎ Sankyo Kōki Tokyo (三協光機) W-KOMURA 35mm/f3.5《初期型》(L39)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、国産は
三協光機製広角レンズ・・・・、
『W-KOMURA 35mm/f3.5《初期型》(L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた14年前からの累計で、当時の三協光機製広角レンズ「35㎜/f3.5」だけで捉えると僅か2本目です。
先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り
ました事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!
実は正直に打ち明けると「ジャンク箱」の中に「KOMURA- 35mm/f2.8」や「W-KOMURA 35mm/f2.5」などが転がっています(汗) 2本共ヤフオク!に出品するつもりでバラして壊してしまいました (如何に技術スキルが低いのかまで、バラしているようなもの)(笑)
前回「W.KOMURA 35mm/f3.5 (L39)」を扱ったのが2018年だった為、何だかもう遥か昔のことのように思えます(汗) それから前述の2本について「ジャンク箱」に転がせる運命を辿りすっかり意気消沈してしまい、きっと相性が悪いのだとまさに敬遠していたところで、今回オーバーホール/修理ご依頼メールが着信し、まさに「悔い改めよ」と神の救いの手を差し伸べられたのだと、ありがたく思うところです (ありがとう御座います)(涙)
・・最近こういう機会が訪れない限り、なかなか気力が湧かなくなりつつあります(汗)
ハッキリ言ってこのモデルが吐き出す写真の写りは「ボケ味に特徴があるとか、階調表現が得意とか、そういう今ドキ流行りのオールドレンズたる魅力的な特徴は、正直皆無」です(笑)
・・いえ、むしろピント面が鋭く出るのにその背景は、周辺域に向かうに従ってまるで収差まみれです(汗)
それなのに「一度目にすると目が止まってしまう (釘付けになる) 独特な雰囲気を残す恐ろしい魔力を持っている」と言うのが、実は今まで挑戦して「ジャンク箱行き」にしてしまった動機だったりします(恥)
ちょっと暗くなるとすぐに黒つぶれしまくって、まるで中間調の表現に我慢が無いみたいな、全く以て当方のようにすぐ挫けてしまう性格の持ち主です(笑)・・ところが条件が揃うと (揃えてあげると) 驚くほどにリアルで生々しくて臨場感たっぷりに、その場の喧騒や湿気や臭いまでまるで伝わるが如く写真を残す「まさに魔力を持つモノ」に映るほど、得体の知れない写真を残すからびっくりします(驚)
こちらのサイト・・Manuell fokus「Kyoei W.Acall 35mm f/3.5」のサイト・・に載せられている掲載写真を見れば、それがどんな魔力なのか分かると思います(汗)
・・素晴らしい写真です、ため息が出ます。
本来、当方の琴線に火をつけられ「ジャンク箱」を騒がさせるだけになってしまった2本を調達する動機になった感動写真があったのですが、今回ネット上を探しても見つかりませんでした(涙)・・しかし、その写りの傾向は前述サイトの掲載写真にとても近似しています。
当方は映画鑑賞が大好きなので、同じように瞬時に没入できる生々しい写真に呆気にとられます(汗) 没入できることで、まるで自分が主人公になったように感じられる、そういう或る意味ファンタジックな要素を併せ持つ写真に引き込まれやすいです(汗)
ネット上では一部に「パンケーキレンズ」と紹介されますが、当方の印象ではそこまで薄い筐体には見えません。しかし確かにコンパクトなのは間違いありません! こんなちっちゃな
オールドレンズなのに、本当にだいそれた写真を残すからオドロキなのです(驚)
しかもカラー撮影だけの話ではなく、白黒撮影でも同じ趣が感じられるので、光に対する何かの魔力を持つと信じたくなってしまいます(笑) その意味で「収差が酷すぎる」と見る人には受け入れられないモデルなのかも知れませんが、当方は等倍鑑賞したり画の隅々まで精度チェックするようなことをして、オールドレンズとその設計者達 (光学設計者と製品設計者) を貶めるようなことは・・したくありません(涙)
何故なら、そこまで厳しく調べてあ~だこ~だ言いたいなら、今ドキのデジタなレンズを使えば良いのにと・・思うからです(笑) 光学設計や光学硝子材の発展途上にあった頃のオールドレンズを引き合いに出して、あれが悪い、これが良いと決めつけるよりも「そのモデルの味を引き出してあげるほうが、もっと有意義」だと考えている一人だからです(笑) その意味で、そういう評価サイトには全くなびきませんし、当時の写真月刊誌や特集本の評価記事なんかにも興味関心が湧きません(笑)
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↑上の一覧は、せっかく今回扱う機会を得たので、現在ネット上で確認できる掲載写真の中から30本ほどをピックアップして調査し一覧に仕上げました。
なにしろ当方は筐体外装や距離環/絞り環の回転方向など、或いはそもそもの意匠 (デザインや刻印文字の書体含め) など、凡そ判定基準に据えて調べる気持ちが湧きません(笑)
「ヨシ、調べるぞ」と決意する動機は「内部構造/設計概念の相違」或いは「光学系の相違」が基準であり、外面の違いはどちらかと言えばどうでも良い部類です (何故なら、どうにもでも製産時点で旋盤切削できるから/単なる工程管理の問題だから)(笑)
すると今回扱った個体を完全解体し初めて「当方の今までの受け取りが間違いだった!」ことを確信しました(汗) その最大の根拠は「絞り羽根の駆動方法」だったのです(汗)
←当時1950年代の日本国内には、光学メーカーの中で左写真のような「絞り羽根にプレッシングの際、切り込みを入れて折り曲げキーの代用にしていた」製品設計が流行っていたようです。
時代の流れとして「このような羽根のカタチに切り込んで曲げる」方式から、やがて後の時代に「金属棒をダイレクトに絞り羽根にプレッシングして打ち込む方法」へと変遷していったと捉えていたのです(汗)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
↑拡大撮影するとこんな感じです。絞り羽根は表裏面の端に「十字に切り込みが入り、そのプレッシングの時、同時に垂直に折り曲げられて三角状にキーとして立ち上がり刺さる先の穴やスリットに入る」仕組みです。
ちなみにこれら2つの写真は2018年に扱った「❷ 240413 ~ 241717」の 色付の欄のモデルに該当し、当方のこのブログ内『W.KOMURA 35mm/f3.5 (L39)』のページで解説しています。
上の写真で言えば、左端の円形パーツ「位置決め環の穴に位置決めキーが刺さっている (4枚の羽根のカタチで刺さっている)」また絞り羽根の反対側の面にも逆向きで十字の切込みが入り三角状の羽根が切り立ちます (開閉キー)。この「開閉キー」が別の円形パーツたる「開閉環のスリット/切り込み/溝」に入るので「開閉環が絞り環と連携すると絞り環操作で絞り羽根が開閉する」ワケです。
従って上の写真で「位置決めキー側が軸になって (位置が確定し) 反対側の開閉キーが円運動に移動するので、絞り羽根が閉じたり開いたりする」原理ですね(笑)
てっきりこの「三角状の羽根のカタチのキー (代用)」がすぐ後の時代に金属棒の打ち込みに変わったとばかり思い込んでいたのです(汗)
ところが、今回の個体をバラしたところ「何と金属棒がプレッシングされていた!」ワケで、この絞り羽根の設計が「真実は逆だった」と確信を持ちました(驚)
実はこれら「三角状の羽根のカタチ」は絞り環操作しているうちに、或いは最悪の場合「絞り羽根に油染みが発生すると、途端に羽根の根本から割れる/破断する危険性が極端に上がる」危険があるのです(怖)
それはそうです。そもそもプレッシングで垂直状に折り曲げており、プラスして絞り環操作でさんざん駆動している中で経年が過ぎていく為、絞り羽根の油染みはハッキリ言ってこの方式の絞り羽根には「超致命的」だったりするのです(怖)
そんな背景が裏にあり実はなかなか扱う気持ちになれなかったのがホンネだったりします(汗)
すると今回の個体を扱ったことでそれがヒックリ返り「実は金属棒→三角状の羽根に退化した」と言うプロセスが初めて見えてきました!(驚)
・・これはマジッでオドロキです!(驚)
どう考えてもこの「三角状の羽根のカタチ」は絞り羽根の厚みしかなく、さらにプレッシング時に強制的に垂直状に折り曲げられる為、ちょっと触ってイジると簡単にパリンと折れる為、本当に触りたくないくらいです!(怖)
もう一度上の拡大写真をご覧下さいませ。左端の円形パーツ「位置決め環の穴に刺さる4枚の羽根のキー」のうちの1枚でも折れて欠落すると、特定の方向に対して絞り羽根が傾く角度が変わってしまい、絞り羽根が閉じる際の開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) が歪になります(汗)
やがて残った3枚で閉じたり開いたりしているうちに「さらに欠落した辺に隣接する2つの両サイドのうちの1枚がまた折れる (何故なら、絞り羽根が閉じたり開く角度と方向は決まっているから、両サイドのいずれかに負担が増える)」流れに陥り、ついにその絞り羽根は「2枚の羽根しか残らず全く正しく動かなくなる」瑕疵へと至り「製品寿命」を迎えます(涙)
・・たった1枚でも塞ぐ絞り羽根が居るオールドレンズを買いますか???(笑)
従って、今まで退化することが一切頭になかった為、まさか逆転するとは想定していなかったのです(汗) すると見えてきた流れはこうです・・。
当初一番最初は真面目にコストをかけてキーとして金属棒をプレッシングしていたものの、単にプレッシングで切込みを入れて折り曲げるほうがコストはかからず、工程も短縮でき人件費面で大きく貢献します(汗) しかしその時におそらく社内で議論が2つに別れたと容易に妄想できます(汗)
それは「サービスレベルから言えば耐性は明らかに金属棒のほうが高い (長い)」一方「造りきりで委託生産やOEMには、むしろ薄利多売の中で少なからず利益に貢献できる切り込みのほうが良い」と別れたと考えられます。はたして青と赤どちらが勝ったのでしょうか(汗)
実はここに三協光機が後に1980年倒産に追い込まれていく道筋の要素が一つ隠れていたように、当方は今回妄想しました!(笑) 明らかに工場設備をかっさらって共栄光学を設立し「薄利多売の委託製産とOEM製産に活路を見出した」のは赤色陣営だったように妄想するのです(笑)
これが「絞り羽根のキーが退化してしまった理由」とみています。逆に言うなら、それほどこの「三角状の羽根のカタチのキー (代用)」は非常に脆く、また容易に垂直上の折り曲げ部分が変形する為、絞り羽根の開閉角度すら製産時点を維持できないと言う根本的な問題を抱えている設計とも指摘できます(汗)
要は戦前の1927年に「島司製作所」を創設して光学製品の設計製産に取り掛かっていた創業以来の気概は、1937年に「小島 満」氏が代表を引き継ぐと、戦後のシベリア抑留から復員した1951年に再び「三協光機研究所」を設立した流れからすれば、とても耐性が低いのを承知で敢えて利益追求 (と言っても委託生産とOEMではたかが知れている) に流れた部分に何かしら違和感を覚えるからです(汗) 挙句の果てに社内で労働争議が起きて、工場の機械設備まで持ち逃げされて別会社「共栄光学」を設立され、直前の製品まで別モデル銘で発売されたのでは堪ったものではありません(涙)
少なくとも当時同じ頃に、同じように「羽根をキーの代用にしていた藤田光学工業」の流れとは真逆であり (羽根→金属棒へと変遷)、それこそが一般的な変遷だったように考えられ、退化する意義をどのように見出すのか考えた時「薄利多売」しか思いつかなかったのです(汗)
実際その後の共栄光学の営業手法を探れば、まるで委託生産とOEMばかりで、せっかくの「Acallシリーズ」もその後の技術革新を見出す要素が窺えません(汗)
↑サクッと今現在ネット上でチェックできる写真をピックアップするとこんな感じです。❶~❺までは上の一覧の符番に合わせています。
⑥ W.TELESAR 35mm/f3.5
⑦ W.ACCURAR 35mm/f3.5
⑧ W.Acall 35mm/f3.5
同じ共栄光学の「W.Acall銘」でも、絞り環用の基準「●」マーカーがフィルター枠外周に刻まれているタイプは「絞り環操作が独立した構造なので設計が別モノ」であり、距離環と一緒に絞り環が回っていかないタイプですから、同一品として扱うこと自体が間違っています。
逆に言うなら、今回の個体も含め❶~❺は全て「距離環と一緒に絞り環が回っていく回転式の駆動方式」なので、絞り環用の基準「●」マーカーは「必ず距離環側に刻印される」のが道理になりますね(笑)
それで⑧ W.Acall 35mm/f3.5の写真が一緒に並んでいます (回転式だから)。こういう部分から捉えるのが当方の調査手法です(汗)
他にもOEM先のモデル銘は「W.HONOR、W.A. Astra、FORCE」などもあるらしいですから、その指向先の国が何処だかよく分かりません (おそらくは共栄光学が本気で進出を図っていた米国向けと推察します)(笑)
なお一部に栗林写真工業製品にレンズ銘板が附されて流通しているタイプが顕在しますが、そもそも光学設計が別モノです(笑)
←左の図は共栄光学の製品「W.Acall 35mm/f3.5」のカタログからの抜粋ですが、この仕様諸元の内容を見ると「光学系:4群5枚」とあります。
共栄光学の製品も三協光機製品と100%同一ですから、モデルバリエーションで言うと上の一覧の❷~❸辺りが左の図の仕様に該当します。逆に言うなら今回扱ったモデルが「初期型」の為、内部構造が複雑で難しく、総重量は重くなっています (186g)。
・・するとこの光学系が凄いのです!(驚)
右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
旧東ドイツのCarl Zeiss Jena製は「Biometar 80mm/f2.8」或いはつい先日扱った英国はCORFIELD製『LUMAX 50mm/f1.9 (zebra)《ENNA製》(L39)』と全く同じ「4群5枚ユニライト型光学系」なのです!(驚)
いいですか! 焦点距離:35㎜でユニライトをやっているんですョ!(驚) 当方はもぉ~嬉しくて仕方ありませんね(笑)
そしてせっかくバラしたのですから、光学系各群の放射線量も調べました。
・第1群前玉:0.05≦µSv/h
・第2群 (構成2枚め~3枚め):0.11µSv/h
・第3群:0.05≦µSv/h
・第4群後玉:0.05≦µSv/h
ポイントは光学系前群内の第2群2枚貼り合わせレンズ・・ここだけ「0.11µSv/h」と一般的な放射線量と比較して2倍以上の数値を計測しています。また実際に白紙の上にこの光学系第2群貼り合わせレンズを置くと「微かに褐変化しているように見える」ものの、そもそも蒸着コーティング層の色の濃さからして違います(驚)
・第1群前玉蒸着コーティング層:プルシアンブル〜
・第2群蒸着コーティング層:濃いパープルアンバー
・第3群蒸着コーティング層:アンバーパープル
・第4群蒸着コーティング層:パープルアンバー
これらの放射線量とそもそも計測した光学系のカタチ/曲率/厚みなどから光学系第2群の光学硝子材には「ランタン材」を含有していると推察できます。屈折率を「最大で13%」上げられるとしてランタン材を含有させている結果、放射線量が10%代をとると推測できます。
またそれを裏付けるが如く光学系の構成図を見れば、まるで屈折率任せて前玉からの入射光集光分を強制的に後群側に透過させているのが分かり、だからこその「ユニライト型光学系」なのだと納得できます(汗)
しかしだとすれば、この「ユニライト型光学系」を発明した英国の「WRAY OPTICAL WORKS LTD. (レイ光学研究所)」が黙っていなかったハズで、まだ戦時中だった1944年で特許出願申請書を出願している以上、1956年に発売した今回のモデル『W-KOMURA 35mm/f3.5《初期型》(L39)』に実装しているとなれば放置していたとは考えられません。
そこで今回のモデルの特許出願申請書を探索しましたが、そもそも三協光機も共栄光学も島司製作所も何もかもヒットしません(汗) 少なくとも1969年以降の出願では間に合わないので、それ以前で検索しましたが「一つもヒットしない」時点で、個人名での出願だったのかも知れません (ちなみに小島 満氏や役員の稻村氏の名前検索でも調べましたが、国内/海外ともにダメです)(涙)
・・ここでも謎のままの特許出願申請書になり、ちょっと消化不良です(涙)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑今回のオーバーホール/修理個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。パッと見で内部構造が簡素で構成パーツ点数すら少なめに見え「初心者向き」のように見えますが(笑)、実はこのモデルは「超高難度モデル」の一つでした。2018年に扱った個体は今回の調査で判明した限り、モデルバリエーション上この後に登場するタイプだったのが判明し、合理的に再設計したことも掴めたような気がします。その意味で以前のモデルは「原理原則」さえ分かってしまえば簡単でした。
・・しかしこのモデルはなかなか厄介で、結局当方の低い技術スキルでは3日がかりです(汗)
基本的にこれら三協光機製の「L39マウント規格品」は鏡胴「前部/後部」の二分割方式の設計なので、外せてしまえば鏡胴「前部」はまだ楽なほうです (正し絞り環の微調整は理解していないと適切に仕上がらないレベルが求められます)。
ところが鏡胴「後部」側のヘリコイド群が相当難しく、特に今回扱った個体は「ヘリコイドが固着していた」ために、当初の無限遠位置が正しかったのかどうかが「???」で分からず、しかも特殊な設計だった為に「3日がかり」という為体です(恥)
・・ちょっと自信なくしましたね (ッて元から技術スキル低いですが)(汗)
2018年扱い品はこの後に登場したタイプの為「ヘリコイドオス側と距離計連動ヘリコイドは互いが逆回転方式」で、例えば距離環を回して繰り出すと鏡筒が沈んで格納され無限遠位置に到達すると言う逆の動き方です。
ところが今回のモデルは「ヘリコイドオス側も距離計連動ヘリコイドも同じ方向に回る」方式ながら、これが同じ直径のヘリコイドオス側と距離計連動ヘリコイドならまだ簡単でした。
しかし実際は距離計連動ヘリコイドのほうが直径が大きい為「ヘリコイドオス側の回転数のほうが距離計連動ヘリコイドの回転数よりも1.5倍近く多い」条ネジのネジ山だったのです(汗)
・・これが超高難度!(涙)
当初バラす際に無限遠位置が分かっていれば (ちゃんとバラす前時点で実写確認できていれば) 大凡の2つのヘリコイドの関係性が掴めますが、今回はバラす際に全く固着していて動かず、仕方なくゴッソリ丸ごと完全解体しました。結果、互いのヘリコイドがどのようにネジ込んでいたのかを全く知らないままオーバーホール作業に入らざるを得ず、それが意味するのは「自分で無限遠位置の適切な2つのヘリコイドの関係性 (位置関係) を調べろ」と言う、まるで謎解きのような話になってしまいました(涙)
必然的に距離計連動ヘリコイドのネジ山のほうが緩やかなので、基本的に最短撮影距離の1m位置と無限遠位置とでどのくらいネジ込むのかは他の「L39マウント規格品」を参考にすればOKです。
しかしそれに対して問題だったのは、ヘリコイドオス側のネジ山が急勾配なので、何処までネジ込んだ時に距離計連動ヘリコイドと連携して動けば良いのかを掴むのが「自分で調べろ」の話で(笑)、要は当たりをつけてネジ込んでは距離計連動ヘリコイドの動きを確認して、適切か否かをチェックしていくハメに陥りました(涙)
・・たったそれだけで3日間でした (超恥ずかしい!)(汗)
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。当初バラした直後は「経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びで真っ黒」でしたが、当方の手による『磨き研磨』を施すと、こんな感じに美しいです(涙)
基本的にこのモデルの多くの構成パーツが黄銅材で造られていますが、その金属材の成分/配合に何か違いがあるのか「磨き研磨したらカッパー色 (銅材の色合い) が強調された」印象です。
↑鏡筒最深部に格納される絞りユニットの構成パーツは2つしかありません。「位置決め環 (左)」と「開閉環 (右)」です(笑)
↑上の写真は「位置決め環」の拡大撮影で、赤色矢印で指し示している箇所には回りに均等配置で「3箇所のイモネジ締付痕」が確認できます。
するとご覧のように「締付痕が1つずつ (合計3個) しか残っていない」事実が明示する経緯は「製産後一度も外されていない」つまり製産時点の絞り羽根開閉角度をず〜ッと維持し続けていた個体だったのが判明します(涙)
・・美しい! 素晴らしい!(涙)
さらにグリーン色の矢印で指し示している箇所の面には絞り羽根が刺さりますから、ちゃんと製産時点に「平滑メッキ加工」が施されており、当方の手による『磨き研磨』を処置し終わるとツルツルに戻りました (だから平滑メッキ加工なのが分かる)(笑)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
今回のモデルは『初期型』なので、ご覧のように絞り羽根は「表裏面で対称型」であり、表裏面いずれのキー (金属棒) も「開閉キーであり位置決めキーでもある両方の役目を持つ」と指摘でき、要は裏表の別がないのです(笑)
↑上の写真も今度は「開閉環」を拡大撮影していますが、絞り環との連携用のネジ穴のところに (赤色矢印) 何かの工具で引っ掻いた痕跡 (キズ) が残っていました。これが意味するのは「強制的に開閉環を回そうとした行為がバレる」話になり(笑)、きっとどの位置で停止すれば完全開放なのか、どの位置なら最小絞り値なのかの組み込みをミスったのだと推測できます(笑)
・・時々こうやってムリヤリ回す整備者が居る(笑)
↑適切な絞り羽根の開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) の位置で位置決め環を組み込み (つまり製産時点と同じ) 絞りユニットを最深部にセットし終わったので、ご覧の絞り羽根が閉じきった位置が「最小絞り値:f22」を意味します(笑)
このように製産時点の位置が明確に残っていることは「何モノにも代えがたい明白な証拠」であり、まさにその位置で組み立てればOKなのが確定です (だからとてもありがたい)(笑)
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上方向が前玉の方向を意味します。内部には「開閉環」が見えています。また赤色矢印で指し示している箇所には「開閉環の側面」が見えていますが、そこにネジ穴もあります。
◉ シリンダーネジ
円柱の反対側にネジ部が備わり、ネジ部が締め付け固定される事で円柱部分が他のパーツと連携させる能力を持ち、互いにチカラの伝達が実現できる役目として使う特殊ネジ (単なる連結のみに限らず多くの
場合でチカラの伝達がその役目に含まれる)。
するとこのネジ穴に「シリンダーネジ」が入り、絞り環と連結するので絞り環を回すと上の写真グリーン色の矢印で囲った範囲内で「開閉環が回って」絞り羽根が開いたり閉じたりする原理です。
従って例えば赤色矢印で指し示している箇所の「端部分:開放位置」を意味し、反対側の突き当て停止位置が「最小絞り値」であることはこれを観ただけで分かりますね(笑)
・・こういうのが「観察と考察」であり「原理原則」です(笑)
当方は大学に行っていないので頭が良くないですから (高卒です)、要は簡単な話しかしていません(笑)
↑実際に絞り環をセットするとこんな感じです(笑) このモデルでは「絞り環=フィルター枠兼用」なのでフィルター枠を回すと絞り環操作していることになります(笑) ご覧のように「シリンダーネジ」で絞り環と (鏡筒内部の開閉環が) 連結していますね(笑)
↑ここからが難度が高くなっていく話です(笑) 今回のオーバーホール/修理ご依頼内容のうちの一つ「使っているうちに絞り環操作でクリック感が消えた」と言うのは、上の写真赤色矢印で指し示している箇所に切削さている「絞り値キー (丸い溝)」にカチカチとハマってクリック感を実現する設計なので、このモデルの場合は「クリック感を感じる絞り環操作が正常」なのは間違いありません。
↑上の写真はそのカチカチとクリック感を実現する為の道具で「黄銅製のピン (棒状ピン) +反発式スプリング」であり、このピンは矢尻みたいなカタチをしています。この先端部分が前述の「絞り値キー (丸い溝)」にハマるので、カチカチとクリック感を実現しているワケですね(笑)
・・しかしだとすると、いったいどうしてクリック感が消えたのでしょか???
その原因をちゃんと掴んで組み立てていく必要があるのが「1つめの難しさ」なのです(汗)
何故なら、これだけの長さのパーツが飛び出るほどの空間は内部には用意されていませんから、クリックしなくなる原因をちゃんと掴み、同じことが起きないよう保証する必要性があるのです(汗)
そうしないとどうして動かなくなったのか分からないまま、これから先もビクビクしながら、恐る恐る使うのではこのオールドレンズに申し訳ありません(汗) だからこそちゃんと原因を究明してから適正に組み立ててあげるべきなのです(涙)
↑鏡胴「前部」はこの後、光学系前後群を清掃して組み込めば全て完成なので、ここからは鏡胴「後部」の組立工程に入ります。
❶ ヘリコイドオス側 (黄銅製)
❷ 距離環ローレット (滑り止め) (黄銅製)
❸ マウント部 (真鍮製/ブラス製)
❹ 制限環 (黄銅製)
❺ 鏡胴「前部」固定環 (黄銅製)
❻ 距離計連動ヘリコイド (黄銅製)
・・といった感じです。グリーン色の矢印で指し示している箇所のネジ状のモノが「直進キー」で、反対側にもあります。一方ブルー色の矢印で指し示している箇所の切り欠き/スリット/溝は「直進キーガイド」で「直進キー」が行ったり来たりスライドする場所です。
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
◉ 直進キーガイド
直進キーが直進動でスライドして移動するガイド/溝であり鏡筒の繰り出し量をカバーする
↑上の写真は「❸ マウント部」の内側に備わるヘリコイドのネジ山を赤色矢印で指し示していますが、真鍮製/ブラス製なるも、ご覧のように「切削痕」が残っています。要は製産時点の旋盤機による切削時の痕跡がこのように視認できるワケですが、ちゃんと「面取加工」しているから指を切るような鋭角ではありません (条ネジの螺旋方向に対して垂直交差状に/縦方向に切削痕が視認できる)(笑)
するとこの切削痕が条ネジの何処に残るのかがヘリコイドネジ山の基本になります(笑)
要は何でもかんでも金属研磨すれば良い話ではないワケです (何故ならちゃんと面取り加工してあるから)。
ヤフオク!で同じように自分で整備している出品者は、やたらめったら「ラッピング研磨」にこだわって磨きまくっていますが、はたしてこの「面取加工」と「メッキ加工」の耐性は、いったいどう変化してしまうのでしょぅか(汗)
ヘリコイドグリースで守られている為、経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びにヤラれない (水没でもしない限り酸化/腐食/錆びでヤラれないとのこと) と自分のコトバで出品ページに述べていますが「ならばどうしてそれをワザワザまた金属研磨 (ラッピング研磨) する必要があるのか???」頭が悪い当方にはその辻褄が理解できていませんね(汗)
↑前述の「直進キー」で、両サイドに用意されています (❶ ヘリコイドオス側)。
↑今度は「❻ 距離計連動ヘリコイド」で、やはり両サイドに「直進キーガイド (溝)」があります。
↑ところが、その「直進キー」は上の写真のとおり「直径上に居ない」のを赤色矢印で指し示して解説しています(笑)
これがこのモデルでの「距離環を回した時にトルクが重すぎる」と言う、今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つの因果関係を決める設計の一つです(汗)
それはそうです。キッチリちゃんと両サイドに均等に「直進キー」が居てくれれば、距離環を回した時も均等にチカラが伝達されるので、トルクに負担がかかりません(汗)
・・それなのに、どうしてこの製品設計者はズラして造ったのでしょうか???
実際これらヘリコイド群を差し込む時、ワザと故意に逆にセットするともちろん「直進キー」の位置が合わず入りません (当たり前ですが)(笑)
これが意味するのは「❸ マウント部内部のネジ山の中で、おそらく1箇所しか適切なネジ山の位置が存在しない」と言う話になり、これら2つのヘリコイド群をどのネジ山の位置でネジ込めば適切になるのかを把握する必要性に迫られる次第です(汗)
↑「❶ ヘリコイドオス側」と「❻ 距離計連動ヘリコイド」を、ちゃんと「❸ マウント部」の内部のネジ山で連携させて組み上げたところです (つまり3日めに撮影しました)(汗)
本当に恥ずかしい話ですが、如何に当方の技術スキルが低いのかをまざまざと痛感する3日間でした(恥)
当然ながら「❶ ヘリコイドオス側」を回して繰り出すと、それに連携して「❻ 距離計連動ヘリコイド」が回って格納されます (最短撮影距離位置で突き当て停止する)。逆も同じですね(笑)
ところがこの時「❶ ヘリコイドオス側」が約1周半回る時に「❻ 距離計連動ヘリコイド」は1周しか回らない為、ゆっくり格納したり繰り出したりする原理です。すると「❶ ヘリコイドのオス側」はいったいこの「❸ マウント部」の中の何処で「❻ 距離計連動ヘリコイド」と連携して繋がれば良いのでしょうか???(汗)
・・と言う問題で3日間バラしたり組み直したり、ネジ込んだり外したり(笑)
朝から晩までそれを繰り返していた次第です(恥)・・実際はこの後に出てくる距離環の駆動域との関係性も当然ながら決まっているので、せっかく適切にネジ込めても、今度は距離環をセットしたらダメだった・・なんていうことでまたバラして最初からヤリ直しです(笑)
その最初からネジ込みをやり直す時に、またネジ山のどの位置で (❸ マウント部内部の何処で) 連結すれば良いのかが内部が見えない為「???」になるのは当たり前で、それすら最初からヤリ直すから大変だったのです(笑)
・・ウ〜ン、マジッで恥ずかしい(恥)
↑ヘリコイド群がキッチリネジ込み終わっても、今度はこの「❹ 制限環」がセットされて、初めて距離環の駆動域が決まり「∞と最短撮影距離の両方でカチンと突き当て停止する」必要があります(笑)
ではその時、はたして「❻ 距離計連動ヘリコイド」の繰り出し/収納は適切なのか???・・で、ヤッてみるとポロッと脱落した、なんて言うザマです(汗)
↑上の写真のように制限環には「距離環をネジ締付で固定する穴が3箇所用意されている」ものの、実は赤色矢印で指し示している箇所のネジ穴は、単に距離環を締め付け固定するだけの役目ですが、ブルー色の矢印で指し示している箇所のネジ穴は「制限環まで締め付け固定する2つの役目を持つネジ穴」なので、距離環の固定位置は一つしか無い話になります(汗)
逆に言うなら、距離環を強く回すとこの「❹ 制限環」と一緒に回ってしまうのを防ぐ目的で、そのようにネジ穴の位置をずらして製産しています(汗)
ちなみにグリーン色の矢印で指し示している箇所に前出の「ピン+スプリング」が刺さって、絞り環操作でクリック感を実現します。
↑距離環を同じ方向から眺めるとこんな感じでネジ穴が空いています(笑) 各色の矢印で示しました。ブルー色の矢印のところだけ内側に寄っている為、距離環を締め付け固定すると「同時に❹ 制限環まで締め付け固定される」原理です(汗)
・・三協光機さん、いろいろ工夫して考えていたんですね (凄い)!(涙)
↑正しい位置でヘリコイド群がネジ込めて、且つ正しい制限域で距離環も駆動するようセットできて、それらが互いに適切な「たった一つの解」で組み上がった、3日目の撮影です(恥) グリーン色の矢印で指し示している箇所にちゃんと「ピン+スプリング」が刺さっており、ここが絞り環の「絞り値キー (溝)」にカチカチとハマるので、クリック感が実現されます(汗)
・・ハッキリ言って、こんなに難しい構造とは思いもしませんでした(汗)
まぁ~本当に何回バラしては組み直したのか、最初はカウントしていましたが「14回」以降もう頭が真っ白になって寝てしまい、しかも起きてからの作業でまた同じ回数分をヤッていたと言う (要はネジ山の何処なのかが判別できないから、同道巡りになるワケ) なんともお粗末な話です(笑)
結局、ポイントだったのは「何処まで❶ ヘリコイドオス側を❸ マウント部内部に先にネジ込んでから、❻ 距離計連動ヘリコイドをネジ込めば良いのか」という❸ マウント部内部が見えていないだけに、何周回したのかをちゃんとチェックしながらヤルべきだったのですが、実際互いの直径が違う分、作業しているうちに頭が混乱してくるから同道巡りになるのです(笑)
・・作業しているうちに笑えてしまいましたね(笑)
↑ちなみに上の写真は取り出した光学系第1群前玉~第4群後玉までを順に並べています。光学系前群を赤色文字で表記し、後群をブルー色文字で明示しています。またグリーン色の矢印で指し示す方向が前玉の露出側方向を意味します。
↑同様ですが、今度はヒックリ返して裏面側を撮影しています。当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話なので(笑)「公然と平気でウソを拡散し続けている」と某有名処のコメント欄に誹謗中傷され続けている始末で(泣)、仕方ないのでちゃんと『証拠写真』を載せて解説しなければイケナイみたいです(笑)
するとご覧のとおり一番右端の光学系第4群後玉が「黄銅材にモールド一体成型」なので、オールドレンズの後玉を見た時に「ここに締付ネジのカニ目穴や溝が在るハズがないのが初期型の証拠」と言う根拠になります (従って冒頭の一覧は決して嘘ではありません)(汗)
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。いやいやこんなに大変な作業になるとは、実は正直な話、全く想定しておらず焦りましたね(笑)・・まだまだ未熟者なのだと思い知らされただけのオーバーホール作業でした (どうぞお笑い下さいませ)(笑)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。
前玉の外周に1箇所「カビ除去痕としての菌糸の痕跡が残る」ものの、クモリはありません。
また前玉の蒸着コーティング層は「裏面がプルシアンブル〜」ですが、セットするとパープルに見えます。光に翳す角度によっては「プルシアンブル〜」が見えます。
↑後群側もスカッとキレイになり、LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。後玉の露出面側にはポツポツと「白っぽいとても微細な点状カビ除去痕 (一部は菌糸状)」が数点残りますが、写真には影響しません。
そしてご覧のように「黄銅材に後玉がモールド一体成型」なのに (後玉専用の締付環が存在しない) その一つ前の光学系後群第3群光学硝子レンズの回りは「後玉から見て丸見えなのに、まるで無垢な黄銅材のまま」なのが視認でき、皆さんが「迷光!」と執拗に気にする要素が、このとおり光学設計者には意味がないことを如実に示しています (必要ないから、製産時点にメッキを被せていない)(笑)
そもそも前述した後玉の一つ前に位置する光学系後群第3群も「一体モールド成型」ですから
上の写真で露わに見えている無垢の黄銅材部分は封入された内部であり、触ることも当方の手による『磨き研磨』すら施せません(汗)
それはそうです。仮に指摘するなら、光学系内に前玉方向から透過してきた入射光は、最後に後玉裏面側から透過していくものの、その時に反射してしまう最大値で捉えても4%分の入射光がはね返って、一つ前の光学系後群第3群の後玉側方向の面に「迷光」として反ってきても
それが再び反射して後玉を透過していく時の「迷光としての影響度」はたかが知れています(笑)
・・だから光学設計者は既に織り込み済みで計算値に含んでいるのだと考えます。
このように具体的に計算してみれば (4% x 4%) 明らかに気にするべき数値を執らないのに「迷光」というコトバの表現だけにこだわって大騒ぎしている人達/勢力が居るから、そこに目をつけられ「外見上の見てくれの良さ (要は光学系内が真っ黒) の処置を施すことに整備者がこだわり、結果的に光路長を逸脱していく」まるで本末転倒な結末に、皆さんが右往左往していることに、はたしてどうして疑念を抱かないのでしょうか???(笑)
「分解整備済」を謳うオールドレンズを手に入れる際、いったいどうしてそのコトバだけを鵜呑みにして光路長確保済みと信用するのでしょうか???(笑) 当方のような信用/信頼が皆無な『転売屋/転売ヤー』とそれら出品者とはいったい何が違うのでしょうか???(笑) それら「分解設備済」を謳う出品者はウソをついていないが、当方はウソまみれだと指摘するなら、もう何を言っても通用しないレベルの次元だと思いますね(笑)
・・こういう事にも目を向け、神経質にならず認めるべきは認めたほうが良いと思います(笑)
↑8枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら閉じていきます (途中カタチが変わります)。
この後に登場するモデルでは「絞り羽根のキーが羽根に退化したので角ばった開口 (開口部の面積/カタチ/入射光量) に変化する」のを考えると、当方などはむしろこのほうが「心の健康には良い」と安心だったりします(笑)
なお当初絞り環まで固着していた原因、或いはクリック感を消失していた原因は、最後の方で解説します。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)
もちろん今回のオーバーホール/修理ご依頼時の指示内容に従い「軽めのトルク感」に仕上げています。但し、このモデルは「回転式ヘリコイド駆動」なので、距離環を増す際一緒に絞り環まで回っていきます。
従って距離環操作してピント合わせした後にボケ量の変化をイジッて絞り環操作すると、それに合わせて距離環まで回ってズレるので「最初に絞り値をセットしてから撮影する」撮影手法で使うと良いかも知れません(汗)
とりあえず、絞り環操作とクリック感も軽めに仕上げてありますが、絞り環を回すと距離環まで回ります (申し訳ございません)(汗)
↑今回のオーバーホール/修理で仕上がったオールドレンズにセットした附属品の一覧です。
《今回のオーバーホール/修理に際し附属したモノ》
❶ marumi製UVフィルター (新品)
❷ 本体『W-KOMURA 35mm/f3.5《初期型》(L39)』
❸ 汎用樹脂製ネジ込み式M39後キャップ (新品)
❹ 汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)
❺ クリーニング用ファイバークロス (新品)
今回のオーバーホール/修理ご依頼に際し、ご依頼者様のその動機をご紹介頂いたので、当方はその理由に大変感動した為、少しでも役に立てばとの思いからいろいろ付属品を揃えました。
・・きっと喜んで使って頂けるのではないかとお祈り申し上げます(祝)
この他に、このオールドレンズをしまっておくケースとして「透明ケース (傷つき)」も一緒に梱包します。このケースは新品は新品ですが、別の目的のケースなので、そもそも開封した時からキズが付いています (スミマセン)。
もしかしたらこのケースに入れて棚に置けば、格好が良いかも知りません(笑)・・ッて言うか、当方はそうやってお気にのオールドレンズを眺めては酒の肴にしています(笑)
↑当方所有RICOH製GXRにLMマウント規格のA12レンズユニットを装着し、ライブビューで無限遠位置の確認等行い、微調整の上仕上げています。その際使っているのは「Rayqual製変換リング (赤色矢印)」です。無限遠位置は「∞」刻印の「左側の◯辺り」の位置でセットしています。
あくまでも当方での確認環境を明示しているに過ぎません。
↑今回扱った個体が当初使っているうちに「絞り環も距離環も全て完全固着した原因」を解説します。
上の写真は「光学系第4群の後玉だけを取り外して内部を見せている写真」ですが、その内部はこんなふうになっています。
・ブルー色の矢印で指し示している箇所:ヘリコイドオス側
・赤色矢印で指し示している箇所:鏡胴「前部」の締付固定環
・グリーン色の矢印で指し示している箇所:鏡胴「前部」
・オレンジ色の矢印で指し示している箇所:締付環の締め付け用イモネジ
・・こんな感じです。すると鏡胴「前部」と「ヘリコイドオス側」とを「締付環」で締め付けて固定している仕組みなので、絞り環操作が固くなったりしてチカラを入れて回すと「絞り環を回す方向 (最小絞り値に向かう方向) によっては締付環が一緒に回ってしまい、さらに締め付けられてしまう」結果、距離環が固着し、絞り環まで固着し「ピン+スプリング」は完全に押し込まれたままになってクリック感は消失すると言うストーリーが見えてきました(汗)
・・これは決してご依頼者様の操作が悪かったのではありません。
そもそも絞り環をネジ込む時のネジ込み量 (何周回してネジ込めば良いのか) を過去メンテナンス時の整備者がミスっていて、1周分多めにネジ込んでいた為、すぐに固着してしまったのが原因です。
逆に言うなら「絞り環操作が軽いトルクだったら (1周分猶予が残されていれば軽いトルクになるので) 固着する因果にも至らなかった」と指摘できます(汗)
・・要は過去メンテナンス時の整備者の不始末です(涙)
ご依頼者様の操作は何一つ間違っていませんし、問題もありません。
但し、上の写真 のように原理上/設計上「締付環で締め付けて固定しているだけ」なので (赤色矢印) オレンジ色の矢印で指し示している箇所のイモネジの効果はそれほど期待できません (締付環が回らないようイモネジで締め付けて固定する設計)(汗)
これはイモネジが確実に刺さる下穴を用意していない設計、もっと言うなら「用意できないから」とも指摘でき、どうしようもありません。
従って絞り環操作が万一固くなった場合、或いはフィルターの着脱で強く回したりすると再び固着する懸念は「構造上残る」ので、絞り環操作に留意するのがベストです。
一応それを考えて「軽めの絞り環操作」になるよう、本来の1周分余裕が残る位置でネジ込んで仕上げてありますから、今後は固着する懸念は相当低いと思いますが「唯一フィルターの着脱だけはご注意」下さいませ。或いはフードなどネジ込む際も注意が必要です。
・・何しろ、絞り環/兼フィルター枠なので要注意です(泣)
万一もしもまた固着してしまったら、いろいろイジらずにまたお送り下さいませ。すぐに直します。
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
無限遠位置 (当初バラす前の位置から再調査/僅かなオーバーインフ状態/∞刻印の左丸辺り)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:35㎜、開放F値:f3.5、被写体までの距離:14m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:7m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、10m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の20m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)
↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f11」での撮影です。そろそろピント面の「回折現象」の影響が僅かに現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。本日完全梱包のうえ、クロネコヤマト宅急便にて発送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。