◎ Canon Camera Co. (キヤノン) CANON LENS 50mm/f1.8《Sレンズ:第2世代》(L39)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、国産は
キャノン製標準レンズ・・・・、
CANON LENS 50mm/f1.8《Sレンズ:第2世代》(L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のCanon製標準レンズ域でライカ判スクリューマウント
規格品「50㎜/f1.8」だけで捉えると初めての扱いです。

CanonNikonに関してはメーカーの技術認定整備会社様がいらっしゃるので、本来当方ではメインに扱っていません。

株式会社ユー・シー・エス様CanonNikon 技術認定会社
有限会社フォト工房キィートス様Nikon 技術認定会社

ちゃんと旧製品の内部パーツまで内製し揃えている徹底ぶりですから、他を寄せ付けません。特に思い入れの強いオールドレンズなどは、是非ともこれらの専門認定会社様宛に、オーバーホール/修理ご依頼なさるのが良いでしょう。

そんな中、稀に当方宛オーバーホール/修理をご依頼頂く『神々しい方々』が数人いらっしゃいます・・本当にありがたい思いでいっぱいになります(涙) ありがとう御座います

今回扱ったモデルも、いつも懇意にして下さる方からのご依頼分であり、あわせて初めての
扱いとなれば、なおさらに楽しみにしていた次第です。

当方にとり、内部構造を知る機会を与えられること。もちろん実装光学系をデジタルノギスを使って逐一 (何回も) 計測しまくって、各群の空間距離まで計測し/計算し尽くした上で、最終的な光学系構成図をトレースする楽しみは、本当に幸せいっぱいの気持ちになります(祝)

さらに今年に入ってからは「特許出願申請書を探索する醍醐味まで知ってしまった」から堪りません(笑) そもそも「極度のカメラ音痴」「光学知識皆無」さらに「写真スキルも皆無」と三段構えで揃ってしまえば、このようなブログなど全く以てアップする資格は微塵もありません(汗) それでもお優しい皆様のお許しを請うて、何一つエビデンスを明示せず、ひたすらに妄想だけに浸り尽くすブログなのに、まさに言いたい放題に楽しませてもらえる境遇に、感謝しないハズがありません!(涙)

・・皆様、本当にありがとう御座います!!!(涙)

基礎疾患者なので日常の生活にも苦を伴うこと屡々、さらに2021年来ワクチン後遺症による極度の睡眠障害に日々苛まれつつ、1988年にTVCM誕生した栄養ドリンクリゲインの「24時間戦えますか」を、今頃になって (この歳になって) 実践している始末で、自分の人生きっと最後まで底辺生活なのだと近年は腹を括ったところで御座います。

・・まさに身から出た錆なので仕方ありません(涙)

そんな次第で、せめてオールドレンズくらいは「中からキレイにしてあげたい!」を合言葉に
一番最初に倒れた13年前から『DOH』に励んでいますが、なかなか頭ばかりが先行しているだけで、肝心な技術スキルが全く伴っていないと言うリアルな現実に、今度は日々精神面まで追い詰められる始末で、本当に人生楽に生きていけませんね(笑)

特に今年に入ってから一般からのオーバーホール/修理ご依頼受付を再開したところ、今度は
徹底的に貶めるクレームをしてくる方もおいでになり、過去にリストラ退職していながら未だに身につけた昔勤めていた頃の小売業界でのクレーム対処をやらされている始末で、最近本当に何をヤッているのか分からなくなってきましたね (自分でクレームを作っているから)(笑)

それもこれも自身の技術スキルが低いが故の結末であり、皆様には幾多のご迷惑ばかりおかけしており、本当に申し訳ない限りです(涙) 再び活躍してもらいたいが為オールドレンズをバラしていながら、まともに仕上げられない本末転倒な結果とその責任に、今度は押し潰されそうになる毎日です(怖)

・・本当に世知辛い世の中です(涙) そして皆様ごめんなさい。

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気を取り直して、ずーっと楽しみにしていた今回のモデルを精一杯の想いを込めて整備させて頂きます!(涙)・・ありがとう御座います

↑上の図は、CANON CAMERS MUSEUMから引用させて頂いた製品概要です (一部は当方にて加工)・・「Serenar 50mm/f1.8 I」と「CANON 50mm/f1.8 II」ですね。
きっと皆様のほうがもっとお詳しいのだと思います。ちなみにSerenarのほうの光学系構成図は当方にてトレースしましたが、今回扱うCANON LENS 50mm/f1.8《Sレンズ:第2世代》(L39)』については、オーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

・・ハッキリ言って「Sレンズ」とそのシリーズ銘を呼ぶことすら知りませんでした!(笑)

未だに銘玉に含まれる誉高いモデルなのだと思いますが、今更あ~だこ~だ述べるのもどうかと思うので、今回はこのまま光学系の背景について探った内容を載せていきます(笑)

↑上に挙げた特許出願申請書は「一番左端だけが今回扱うモデルの発明案件図面」であり、
それ以降2つめ~右端までは、特許出願申請書の記述に際し「参考にした既知の特許出願申請
とその発明
」を申請書内に明示している分として、合わせて掲示しました。

今回扱うモデルを開発した張本人は「元キヤノン常務取締役伊藤宏」氏です。

左端:US2681594A (1950-11-7)』(米国特許庁)
→ キヤノンカメラ、伊藤宏氏申請
2つめ:GB297823A (1927-09-29)』(英国内務省)
→ Carl Zeiss、Ludwig Jakob Bertele (ルートヴィッヒ・ヤコブ・ベルテレ)
3つめ:GB522651A (1938-12-17)』(英国内務省)
→ T&T HOBSON LTD.、Arthur Warmisham (アーサー・ウォーミィシャム)
右端:GB602813A (1944-08-10)』(英国内務省)
→ Kodak Ltd.、George Harry Aklin (ジョージ・ハリー・アクリン)

・・とまあ~遡ること、1927年の彼の有名なLudwig Jakob Bertele (ルートヴィッヒ・ヤコブ・ベルテレ) 氏発明のダブルガウス型光学設計案件を参照していることが記されています。

これはドイツ敗戦に伴う戦時賠償の一環として、連合国により戦前に遡り凡そ70%の特許権剥奪が実施されたことによるところが大きいように考えます。他、Kodakにまで到達する特許出願内容に対し抵触する分について順次記しています。

実際には左端の特許出願申請書は、モデルで言えば「Serenar 50mm/f1.8 I」を指す内容だったのだと思いますが、後に1955年にはDE1102434B (1955-01-03)』で再び特許出願申請しており、全く同一の発明案件ながら、実は細かい数値を辿ってみると微妙に光学設計が変わっているようにも捉えられます。

当方ではおそらくこの時の特許出願申請書が今回扱うCANON LENS 50mm/f1.8《Sレンズ:第2世代》(L39)』の光学設計を示す内容ではないかとみています。実際計測したデータからトレース図を起こすと、特に光学系後群側の第3群、向かって絞りユニット側方向に面した「凹レンズ面」の曲がり率が僅かに緩やかに変わっているのが掴め、使用している光学硝子材が変わったようなイメージさえ浮かびます。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。「L39マウント規格」のオールドレンズの場合は、他のオールドレンズも同様で「鏡胴二分割方式」の設計が多く、鏡胴「前部/後部」に簡単に分割できます。

鏡胴「前部」が光学系と絞りユニット、鏡胴「後部」がヘリコイド群とマウント部と言う配置です。構造的なイメージとしては「鏡胴後部のヘリコイドオス側の内側に前部の鏡筒がセットされる」ので、距離環を回してヘリコイドオス側が繰り出されると、それは鏡筒の繰り出しを意味しており最短撮影距離位置までピントを詰められると言う仕組みです。

実際は今回のモデルのように「L39マウント規格」になれば、必然的にCanon製品やライカ製レンジファインダーカメラなどのフィルムカメラへの装着が十分想定されるので、その際に「距離計連動機構との整合性が前提になる」面倒臭さが憑き纏います。

従って構造面ではまるで初心者向けのように見えますが、適切に仕上げようとすると意外に厄介なマウント規格だったりします(汗)・・それもあって当方でも今までなかなか積極的に扱えなかった一面がありま(恥) 今回はRICOH製「GXR」にLMレンズマウントA12ユニット経由でちゃんと確認できるので、ようやく今頃になって扱えるようになった次第です(笑)

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
絞り環操作時f5.6~f22で異常に重いトルクに変わり、f22辺りではマウントが回るほど。
絞り環操作時に、内部で擦れている感触が指に伝わってくる。
鏡胴前部と後部の間で極僅かなガタつきを感じる。
距離環を回すトルクがだいぶ重い印象でピント合わせし辛い。

 光学系内のおそらく後群側にコーティング層の劣化が視認できる。

《バラした後に新たに確認できた内容》
グリースに頼った空転ヘリコイド駆動に仕上げている為、必然的にトルクが重くなる。
絞りユニット内構成パーツの固定手法が拙い→これが原因で擦れ感が発生。
絞りユニット内や、驚いたことに光学系内にまでグリースを塗っている。
反射防止黒色塗料が最低限レベルで塗布しており、プロの整備会社の作業と推測。

今回のオーバーホール/修理ご依頼内容は上記羅列のだけになります。また最近ではとても珍しいですが、「反射防止黒色塗料」の着色レベルが最低限であり、合わせて「固着剤」の塗布も最低限と、おそらく本格的な整備会社によるプロの整備者の仕業と推測できますが、なかなか見ない状況に改めて新鮮なオドロキだったりします(笑)

裏を返すなら、どんだけ「反射防止黒色塗料」着色と「固着剤」を被せまくった整備ばかりが横行しているのかを意味します。

そして今回いの一番に皆様に是非お伝えしたい事柄があり、おそらくこのモデルが発売された1956年以降、キヤノン製オールドレンズの内部構成パーツの多くに「光沢メッキ加工が施されていた事実」です。このブログに後で掲載するオーバーホール工程の写真をご覧頂ければ、どんだけ「艶のある濃い紫色のメッキ加工」が施されているのかを知ることができます。

・・何を言いたいのか???

皆さんが光学系内の「迷光迷光」と騒ぎ囃し立てる中で、当の光学メーカーたるキャノンが「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」から転換していた事実です。これこそが当方の持論たる「迷光も光学設計のうち」との、完全に光学設計時点でその許容値を制御され、合わせて製品設計もそれに準じ製産まで進められていたとの論説であり、今回の個体を完全解体して、自分で見て触って、やはりその査証に至ったと当方では改めて受け取りました

それが意味するのは「当時の光学設計者も、製品設計者も許容範囲として認識していた要素に対し、今ドキの皆さんが問題視している一つが迷光騒ぎ」だと言う話です。もちろんいつも指摘しているとおり、もっと根本を正せば「そこまで迷光を騒ぎ立てるなら、ではどうして絞り羽根がメタリックグレーのままなのか???」と言う純粋な問に突き当たります。

この問は実は当方が以前取材させて頂いた工業用光学硝子精製会社様でのご教授の際に、ご担当者様に突きつけられ全く返答できなかった、まさに目から鱗の質問だったのです (何を隠そう、当方自身も気づいていなかった、まるで灯台下暗しのような話)(笑)

そしてもっと言うなら「そもそも絞り羽根開閉機構の仕組み自体に、迷光騒ぎどころではない入射光低減の物理的な道理が隠されていた」事実です(涙) いつも当方のブログページの最後で仕上がったオールドレンズによる各絞り値での実写撮影写真を載せていますが (ミニスタジオ
撮影
)、その際最小絞り値側に近づいた撮影に従いコントラストと解像度の低下が進行していく様子を、まさに確かめることができます。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

するとこれらの原理に従えば、メタリックな絞り羽根に反射しまくった入射光は、その際に合わせて「回折現象」すら発生して失っていることが明白です。

そこに重箱の隅が隠されていて(笑)、実は光学設計者も製品設計者も許容範囲の内と捉えていた製品の仕上がりに対し、製品終了後に何十年も経ってから今ドキになって「この箇所の反射を低下させればもっとキリッと引き締まった写像に結像する」と等倍検証による検査からMTF曲線 (Modulation Transfer Function) を以て実証させるから大騒ぎになります。

誰だってそのようなエビデンスを示されれば反論のしようがありません (もちろん当方も反論しません)(笑) しかしそれを言うなら、世の工業製品総ては詰まるところ近い将来に向かって次から次へと発展を遂げているワケで、その中途のある一瞬を捉えてあ~だこ~だ騒ぎ立てられても困ると言いたいのです。

・・どうしてそういう言い方になるのか???

何故なら、何よりも当時の光学設計者と製品設計者の両方が許容範囲と認めて製品化した工業製品だったのがその対象となるオールドレンズだからです。今ドキのデジタル一眼レフカメラ/ミラーレス一眼レフカメラで撮像素子に留められた写像を以て、あ~だこ~だ騒ぐ前に一歩下がって冷静に戻り「それこそがまさにそのオールドレンズの描写性の味なのではないのか」と改めて眺めてほしい・・それが当方の論説です(泣)

どうしてもエビデンスに示された「迷光の根源」を許せず許容できないなら、さらに納得できるオールドレンズのモデルを追い求めるべきで、そこに「反射防止黒色塗料を塗ったくってでも改善しろ」との要求を示すから、整備者がつけ込んで巷のカメラショップ店頭により高額な価格帯に煽られて陳列される悪循環に陥ります(泣)

結果、既に製産時点にメッキ加工が被されていた場所なのに「反射防止黒色塗料」が厚塗りを繰り返され、気がつけばまるで光路長を逸脱してしまい、ピント面の解像度低下を微妙に招いていたなど、当方のオーバーホール作業からすればまるで頻繁に起きている事実だったりします (だから当方がオーバーホール済みでヤフオク!出品するオールドレンズの出品ページには、
非常に多く個体で当初より解像度が改善されている点を明記している
)(笑)

一部に単にパーツを磨いただけでどうして解像度が上がると言えるのか???・・との指摘があるようですが、光路長に影響を来す箇所の「反射防止黒色塗料」を除去しているから、実際にバラす前時点の実写確認時と、仕上がった後の確認時で「カメラのピーキング反応レベルが増大している事実」を以て、解像度が改善したと告知しています。

それは実写確認するピント面の位置にある「建物のフェンス」で確認しているワケで、バラす前のピーキング反応よりも、より広くより詳細にピーキングを示していれば、その事実を以て「解像度が上がっている」と捉えてはイケナイのでしょうか(汗)・・と言う当方のまるで純粋な質問です(涙)

電子検査機械設備でチェックしていないと言われれば (つまりはMTF曲線) 返すコトバがありません(泣) まさにご指摘のとおりで御座います。

・・要は当方が述べることの逐一に対し、疑義を呈し論破したいのだと思います(涙)

そうやって論破して相手を平伏しさせる手法は、なんだか昔住んでいた香港でもしょっちゅう目撃していたような・・気がしないでもありません(笑) 当方はそういう某国と某国人のような気質にはなりたくないのですね(怖)

↑当初バラし初めて取り出した絞りユニットの構成パーツの一つ「位置決め環」を拡大撮影しています。冒頭に挙げた問題点の中から、 絞り環操作時f5.6~f22で異常に重いトルクに
変わり、f22辺りではマウントが回るほど
、の因果関係を突き止めるべく、探っているところの撮影です。

溶剤で一度サクッと洗浄しましたが、グリーン色の矢印で指し示している箇所に「グリースの塊が溶けずに残っている」のを確認でき、合わせて赤色矢印で指し示す箇所には横方向に相当な長さで「擦れ痕」が残っています。

このように残る強力なグリースは「ウレアグリース」なので、過去メンテナンス時にこの絞りユニット内にウレアグリースを塗布していたことが判明てしまいます(汗)

ちなみに冒頭解説のとおり、これら内部構成パーツの多くが「濃い紫色光沢メッキ加工仕上げ」ですが、パッと見で「光沢黒色」に見えるものの、メッキ加工の基色は「紫色」なので、ほぼ黒色に近いくらいの濃い紫色という表現が最も適しているようです。

↑さらに今度は同じ「位置決め環」なるも、手前右側に位置する「イモネジ用の下穴」を拡大撮影しています (赤色矢印)。右側が明確な下穴の切削として製産時点に用意されている一方、左側で赤色矢印で指し示している箇所に残るポチっとしたイモネジ締め付け痕には「下穴が用意されていない」ことが分かり、実はここの絞りユニットの設計上でとても大きなポイントになっています(汗)

しかし過去メンテナンス時の整備者は、残念ながらそこまで気が回りませんでした(涙)

右側の下穴に「固着剤」を注入してしまったのです(涙) これこそがの問題を起こした因果の一つであり (もう一つ別の原因が複合的にあります) たったこれだけで絞り環操作時に、下手するとマウント部が回って外れてしまうほどの異常な重いトルクに至っていました(涙)

そしてその影響を一番先に受けていたのが一つ前に載せた拡大写真で示した赤色矢印の「横方向に長く残る擦れ痕」であり、本来製産時点に製産設計者が敢えて被せた「光沢メッキ加工」を台無しにしてしまい、抵抗/負荷/摩擦として増大していたのが判明します(涙)

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイス切り込みが入るネジ種で
ネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する。

大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定するだけの場合がある。

この「位置決め環」を鏡筒の側面からイモネジを使い締め付け固定しますが、多くのオールドレンズに採用する「3方向からの均等締め付け」ではなく、このキヤノン製品で採った手法は「2方向からの締め付け」です(驚)

そのたった一つの理由は「開閉環の操作 (により絞り羽根の開閉角度を制御する際) と絞り環の連結で、円周の凡そ1/3以上の領域だけにチカラが集中するから」という人の手のチカラが及ぶことをちゃんと想定した「非常に細かい要素にまで事前に徹底的にこだわっている設計」だからこその2方向締め付け固定なのです。

言い替えるなら、仮に3方向から均等配置による締め付け固定を試みても「円周の凡そ1/3以上の範囲に集中的にチカラが及ぶのは変わらない」からこそ、最終的な製品として仕上がった時の操作性を担保するが如く、それを目指して設計していたことが「たったこれだけの事実を積み重ねただけで判明する」からこそ「観察と考察」は重要だと申し上げています(笑)

しかも今回の個体を完全解体して初めて知り得ましたが、この当時のキヤノン設計陣が「イモネジの先端を丸める処置までちゃんと講じていた徹底ぶり」には、さすがに当方ですら敬服する意外あり得ません(驚)

・・どういうことなのか???

普通一般的にはイモネジを締め付け固定で使う場合、そのネジ部の先端は尖らせたままです。しかしそうすることで「尖った先端部が食い込んでいく相手側金属材の種別、或いは形状や肉厚によっては却って応力反応を促進してしまい構成パーツの仕様、ひいては製品仕様すら担保できなくなる」ことをちゃんと理解しているからこそ、このモデルの設計では「2方向締め付けとし、且つ先端まで丸めた」徹底ぶりだったのです(驚)

ところが過去メンテナンス時の整備者はそれを全く理解しておらず「徹底的に最後まで硬締めしてしまい、さらに始末が悪い事に固着剤を注入していた」からこそ、その後の経年の中では四季の温度変化に固着箇所からの応力反応が反対方向に及ぶのは至極当然な道理で、その中で絞り環操作を続けたが為に「削れて摩耗が進んでいった」次第です(涙)

そんなことが内部で起きているなど、もちろん所有者は露も知らず(涙)、どんどん悪化していっただけの経緯が見えてきました(涙)

ではどうして右側だけ下穴を用意していたのかと言えば、それこそが「円周の凡そ1/3以上の長さで絞り環と連結していた設計」であり、そしてさらにそこに大きく影響していた道理が「実装している8枚の絞り羽根は、最小絞り値側f22に近づくに従い膨れ上がって開閉環を押し上げるチカラが発生する」つまりその位置をちゃんと計測して掴んでいたからこそ「その時にそのチカラの影響を最小限に減じるが為に下穴を用意してイモネジの締め付けにより抑え込んでいた」・・だから右側の1箇所だけに下穴用意で至極物理的にも道理が通ってしまうのです(笑)

逆に言うなら、左側のイモネジ締め付け箇所は「単なる保持の役目だけ」であり、そこに応力反応など抑え込みの役割は担わされていません(笑) だからこそ「イモネジのネジ部先端を
敢えて丸めた
」気配りの効果が最大限に及んでいる設計なのです。

・・それを過去メンテナンス時の整備者が台無しにしてしまったのです(涙)

こういうとても細かい気配りを示す設計者の気概に、本当に先達への畏敬の念しか湧き上がりません(涙) 本当に凄いことだと思います、皆さんはどのように印象を抱かれましたか???

彼の有名なルートヴィッヒ・ヤコブ・ベルテレが「模倣しまくるニッポン人が嫌いだ」と言ったのかどうかは知りませんが(笑)、確かに嫌われていたのは間違いない事実なのでしょう(汗) しかしはたして彼の国ドイツとドイツ人でさえ、ここまで徹底的なこだわりを以て「たかが絞りユニットの位置決め環固定」に気概を持つのでしょうか???(笑)

当方が言いたいのはその点です! 確かに同じ敗戦国だったのに特許権を剥奪されるどころか「戦前にまで遡って保護されてしまった」ニッポンは、敗戦国のドイツ人技術者からみればなんとも悔しい限りだったでしょう(涙) もちろんその日本はその後の戦後初期段階からして、一貫して戦時賠償の道筋をひたすらに邁進し、欧米諸国のみならずその対象に東アジア諸国まで含めてしまい、戦時賠償に率先的に臨んでいった真摯な姿勢こそが今も当方は同じニッポン人として誇りに思い大好きなのです(涙)

敗戦後占領統治していた米国機関たるGHQ含め、連合国軍総司令官として赴任していたダグラス・マッカーサーが当時のニッポン人の素養を知っていたのか否かは知りませんが、少なくともその一面は「戦前まで遡って特許権を保護した」行為に現れており、その後すぐの朝鮮戦争をも見越して東西冷戦を意識した「戦時賠償と経済復興の同時進行による早期の世界秩序把握 (もちろん米国がリードしての話)」を狙っていた思惑が見え隠れしているように思います(笑)

そこに同じ勤勉さと細かな工業生産が得意なドイツ人に比して、米国にとって有利な発明を伴いつつも「同じように勤勉で細工技術に長けている国とその民族」たるニッポン人を手懐けておくのは(笑)、東西陣営に占領統治されてしまった敗戦国ドイツを当てにするよりも至極自然な道理として、米国にとり日本は誠に良いポジショニングだったのではないでしょうか(笑)

欧州に参戦するよりも先に、米国は実は太平洋戦争で日本をターゲットにしていたのかも知れず、当時のルーズベルト大統領は戦後世界秩序という相当な先見性を持つ大統領だったのかも知れません(怖) そのレールを敷かれてしまった日本は、まさに機関車に牽引されつつ思うがままに戦後の高度経済成長を成し遂げていったのでしょう(笑)

・・たかが位置決め環の固定に、そんな雄大なロマンを追い求めてしまいます(笑)

イモネジの先端を丸める面取加工処理を一太刀製産工程に組み入れる繊細感こそが、実は今回扱うこのモデルの光学設計まで含めた真髄を裏打ちしているのかも知れませんね(笑)

↑同様バラして溶剤洗浄した直後に撮影している鏡筒で、前玉側方校から覗き込んでいる写真です。するとやはりグリーン色の矢印で指し示している箇所にウレアグリースの塊が溶剤で溶けずに残っています。また赤色矢印で指し示している箇所には前述の「位置決め環固定のイモネジ用下穴の為のネジ穴」が見えているものの、やはり「固着剤」がビッチリ残っています(汗)

ここで解説したいのはその内容確認ではなく、実は上の写真をそっと眺めて頂きたいのです。如何ですか??? 鏡筒の内外壁に「光沢メッキ加工」が施されているのが分かるでしょうか???

前出の「位置決め環」含め、凡そこのモデルの内部構成パーツの中で「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」が施されていたパーツは唯一「光学系の締付環1本だけ」と言う徹底ぶりで「光沢メッキ加工」なのです!(驚) 皆さんが期待する「迷光対策の艶消しメッキ加工」とはまるで真逆の設計なのです(笑)

↑取り出した光学系を前群側 (左) から順に並べて撮影しています。赤色文字が光学系前群側の格納光学硝子レンズを意味し、ブルー色文字が後群側です。またグリーン色の矢印が指し示す方向が前玉の露出面側方向 (つまり対物方向/被写体がある方向) を表しています。光学系後群側が絞りユニットを挟んで反転するので、グリーン色の矢印もそのように反転しています。

↑同じ順番ですが、今度はヒックリ返して裏面側を撮影しています。

↑驚いたことに、光学系第2群のカタチがあまりにも突飛すぎてビックリでした(驚) また第3群のコバ端着色のようにオレンジ色の矢印で指し示している箇所の「反射防止黒色塗料」とブルー色矢印箇所の「反射防止黒色塗料」とは、互いに同一ではなく、二度に分けて塗られていたことが分かります (溶かす時の溶剤の種類が違うので判明する)。

つまり最低でも過去メンテナンスは2回、別の整備者の手により行われていると推測できます・・すると見えてくる経緯があり、おそらくは前述した「位置決め環を固着させた整備」が一番先で、その結果削れて摩耗してしまった箇所に「ウレアグリースを塗ったのが2回めの整備者の手による仕業」との順番が見えてきました(笑)

逆に言うなら、グリースを塗ることで削れてしまった箇所の抵抗/負荷/摩擦を低減させようと考えていたことになり「それが意味するのは、既に過去メンテナンス時点で絞り環操作が重かった、或いは極度にトルクムラが起きていた個体」との背景が目の前に広がり始めました(笑)

↑さらに驚いたことに、左側第2群の裏側には「おそらく金属製の被せ環」がブルー色の矢印で指し示している箇所に接着されています。オレンジ色の矢印で指し示している箇所に着色されているのが「反射防止黒色塗料」なので、その対象先が光学硝子材なのが分かりますが、ブルー色の矢印の部分はドライバーでコツンと叩いても金属製の音が聞こえますし(汗)、光学硝子材にメッキ加工してもこのような平滑的な面に仕上がりません (つまりメッキ加工が施されている)。

どうして金属環を被せる必要があるのか、当方には推測できません。なお右側の第3群の「反射防止黒色塗料」の塗料の質の違いが分かると思います。

↑興味津々な光学系第2群の2枚貼り合わせレンズを立てて撮影してみました(笑) 赤色矢印で指し示している箇所が金属製の被せ環です。

そして実は特異なカタチで切削されている光学硝子レンズで、グリーン色の矢印で指し示している箇所は段差があり凹んでいます。それに反しブルー色矢印の箇所は最大径をもちます。

↑裏法校から眺めるとこんな感じです(汗) ちゃんと赤色矢印で指し示している箇所に段差が
視認でき、さらによ~く凝視すると微かな隙間もあり、やはの金属環を被せているとしか考えられません。

↑着色されていた「反射防止黒色塗料」を剥がすとこんな感じです。掴んだ指の指紋がどうしても残ってしまうので、メッキ加工してあるのがご理解頂けるでしょうか (もちろん組み込みの際にはこの油脂も完全除去しています)???

↑今度はこの第2群を格納した後に締め付け固定する「締付環」を上に乗せて (ワザと故意斜めにして) 撮影しています。要はこの締付環が被さる位置に「金属製被せ環」を接着していることになりますが、その必要がどうしてあるのかまで流石に分かりません(笑)

↑今度は光学系第3群のほうの拡大写真ですが、既に「反射防止黒色塗料」を完全除去しています。ところがコバ端に「まだ反射防止黒色塗料が残っているのが映っている」のが分かると思います。

↑同じ第3群を立てて撮影しました。絞りユニット側方向から見ている位置になります。ご覧のように「溶剤で溶けないので製産時点の焼付け塗装」とみています。僅かに見えているバルサム剤が褐色系なので「当時一般的に使われていたカナダバルサム」なのが分かります。

しかしここでのポイントは「焼付け塗装」ではなく、実はこの「カナダバルサム」です。このように褐色に視認できると言うことは「経年の中で温度変化に耐えきれず、極々僅かに溶け始めたフチのカナダバルサム」がこのように褐色に見えています(汗)

それが意味するのは「少なくともこの第3群は近年に一旦剥がしての再接着していない」ことが判明し、この個体が直近で「光学硝子研磨していた」との事前情報は残念ながら適合していません(汗)・・告知してしまって大変申し訳ございません。お詫び申し上げます(涙)

しかしさらに不運なことに、この2枚貼り合わせ面の蒸着コーティング層に経年劣化が起きているようで、組み上がった個体の後玉側方校から覗き込んでも、光に翳すと見えますが「微かな斑模様状のコーティング層劣化が反射して1/3領域に視認できる」ものの、それは光学系内を透過して覗いてみても視認できないレベルです (まるでスカッとクリアにしか見えないが、光に反射させると視認できるタイミングがある)。

・・申し訳ございません。

そしてガラス研磨したとのご指摘の前玉も、実はその外周に「締付環で締め付けた際の締め付け痕が残ったまま」なので、やはり前玉も研磨していないと思います。

そもそも前玉も後玉も、さらに上の写真で映っている凹み面も全て「清掃すると蒸着コーティング層の平滑性を指が感じ取る」が故に、この個体の蒸着コーティング層は再蒸着していない「製産時点のまま」を維持していると指摘できます。

当方にはむしろそのほうがありがたく受け取れますが、少なくともガラス研磨はしていないと判定を下せます・・申し訳ございません(汗)

↑異常、バラした直後の疑念について逐一ご報告申し上げました。上の写真はオーバーホール工程に入ったことを示す写真撮影で、絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒を前玉側方向から撮影しています。

↑さんざん冒頭で解説しましたが、実はこんな感じで鏡筒 (左) の最深部に「位置決め環 (中) と開閉環 (右)」が格納されます。そしてグリーン色の矢印で指し示している箇所にある開口部が絞り環との連結用に開けられており、その開口部を貫通して「開閉環 (右)」に用意されているネジ穴 (ブルー色の矢印) にシリンダーネジがネジ込まれて、絞り環と連結を果たします。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

シリンダーネジ シリンダーネジ
円柱の反対側にネジ部が備わり、ネジ部が締め付け固定される事で円柱部分が他のパーツと連携させる能力を持ち、互いにチカラの伝達が実現できる役目として使う特殊ネジ (単なる連結のみに限らず多くの
場合でチカラの伝達がその役目に含まれる
)。

↑さんざん解説してきた「位置決め環 (左)」と「開閉環 (右)」です。この2つを鏡筒最深部に組み込むと、赤色矢印で指し示している箇所が互いに擦れ合っていて抵抗/負荷/摩擦が増大し絞り環操作が異常に重く変わります。

従って上の写真撮影時には既に当方の手により『磨き研磨』が終わって、平滑性を取り戻そうと試みているところを撮影しています。またグリーン色の矢印で指し示している箇所の「イモネジ用下穴」も『磨き研磨』により平滑に戻し終わり、下穴内部もキレイに「固着剤」の残りを完全除去済みです。

ここまで徹底的に『磨き研磨』しないと、おそらく抵抗/負荷/摩擦を減じるのはそれほど容易い話ではないとの推測からの処置です。

↑実際に絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところです。普通に8枚の絞り羽根が最小絞り値まで閉じきてくれます。

↑この状態で完成した鏡筒を立てて撮影しました。この後、絞り環をセットする工程に移ります。

↑その前に重要なポイントを解説します。鏡筒を真横から撮影しています。グリーン色のラインで囲った領域のメッキ加工は「平滑仕上げ」に対し、赤色ラインで囲った領域は「普通の光沢メッキ加工」であり、この相違があることで絞り環のセット時に或る一つの所為が決定づけされます。

・・後でその考えが正しいのかどうかを確認します。

さらに上の写真ではブルー色の矢印で指し示している箇所に、前述の「位置決め環を締め付け固定しているイモネジが刺さっている (下穴が用意されていたほう)」のを示し、また左側の開口部はオレンジ色の矢印で指し示している箇所に位置するのが「位置決め環」であり、さらにその奥ブルー色の矢印で指し示しているのが「開閉環」になります。

するとご覧のように「開閉環位置決め環の位置関係と水平のレベルが明確になり、互いに干渉しない設計だった」ことがこの角度からの写真で見ても理解できます (実際上の写真でも擦れているようには見えない)。

↑左側に並べた鏡筒にセットされるのが右側の絞り環であり、内外を「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」に仕上げられた美しい絞り環です。

↑ところが過去メンテナンス時の整備者は、この絞り環をちゃんとチェックしていませんでした(泣) 当初バラした直後には、鏡筒側面も、この絞り環内側も「互いにウレアグリースが塗布されていた」のを確認しています。しかし上の写真をご覧下さいませ。

赤色矢印で指し示している箇所が極僅かに凹んでいるのです。つまりこの形状/切削からして「この赤色矢印で指し示している箇所の窪んだ領域は、ダイレクトに鏡筒側面には接触しない (もっと言えば一切触れていない)」のが物理的に明白です。

逆に言うなら絞り環のフチであるグリーン色の矢印で指し示している箇所に「確かに経年で擦れていた痕跡が縦方向や横方向に複数残っている」ものの、鏡筒側面に直接接触していたのは、この部分だったことが間違いありません (つまり窪んでいる箇所にグリースを塗っても意味をなさない)。

・・過去メンテナンス時の整備者はこれを見逃していました(汗)

はたしてこの事実が意味することは何でしょうか??? この絞り環の内外をよ~く凝視してチェックすると「同じ微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工でも、一部はマットではなく平滑仕上げに施されている」ことが分かり、それはこの絞り環を斜めに光に翳して反射させたり、或いは指で触ってなめらかな感触を調べても分かるほどの違いです。

・・何を言いたいのか???

この絞り環の内側には「グリースなどを一切塗布せずに、裸のまま鏡筒に側面に被せて組み上げる」手法で設計してあるのが、ここまでの確認で歴然になりました。

逆に言うなら、どんなに絞り環の内側にグリースを塗布しても意味がなく、最終的に経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びを余計に促す要因にしかなりません。実際、鏡筒側面もこの絞り環のフチにも「横方向の擦れ痕」だけではなく「縦方向の擦れ痕が明確に残っていること自体、縦方向でのチカラが及んでいた何よりもの証拠」です(汗)

要は「位置決め環の応力反応により開口部位置で開閉環と擦れ合っていた時の、さらにその応力が今度はシボ゛罹患のフチにスレコントして縦方向に残った」という経緯が見えてきました。

ちなみにこのモデルの場合、絞り環操作時は横方向にしか回さないので、縦方向にチカラを加えることはありません。

結果、全ての因果は「位置決め環の間違った固定手法」からスタートし、それを見抜けなかった2回めの整備者のせいで、ウレアグリースなど塗っても何一つ対策に至らず、そのまま放置プレイで組み上げてしまった・・と言う流れがようやく掴めました。

するとここから当方がオー工程としてヤルべき内容が決まり「位置決め環の摩耗箇所を可能な限り平滑状態に戻す」処置と共に、絞り環の裏側とフチも製産時点に近づけるべく「平滑仕上げの状態にメッキ表層面を戻す」という、大きく2つの柱が見えてきました。

↑上の写真はその対策作業の途中で撮影しています。各構成パーツの組み込みで「最も適切な位置」でセットすると、当初バラしている最中に当方がマーキングした「バラす前の時点で締め付け固定していた位置の印」を赤色矢印で指し示しているものの、そこからズレているのが分かりました。

つまり本来適切と思われる位置から、ワザと故意に絞り環と鏡筒最深部の「開閉環」との連結位置をズラしています。上の写真グリーン色の矢印で指し示している箇所の棒状ネジがシリンダーネジであり、開閉環にネジ込んであります。

このように開口部を貫通してシリンダーネジが「開閉環と絞り環を繋ぐ」から、絞り環操作により「開閉環が回って」絞り羽根が開いたり閉じたりする仕組みです。

するとここのパーツで微調整しているのは「絞り環に刻印されている絞り値と実際の絞り羽根の開き具合の調整」であるのが判明するものの、それを適正位置から過去メンテナンス時にはズラしていたと言う話です。

↑結局、適正位置で組み付けると「再び絞り環操作時にトルクムラが起きてしまうものの、相当低減され、あまり違和感には感じないレベルまで減じられた」印象なるも、当方の判定からするとまだまだ軽く仕上げたいところです。

そこで仕方ないので再びバラして完全解体まで戻ったところを撮影しています。調べているのは「開閉環の該当箇所の擦れ痕 (赤色矢印)」ですが、危惧するようなレベルではなく、まだまだ製産時点に施された平滑メッキ加工がちゃんと残っています。

すると「開閉環は悪くない」と言う判定にならざるを得ません(笑)

↑と言うことは必然的に「位置決め環側の削れた箇所の平滑性がまだ足りていない」話にしかならざるを得ず (赤色矢印)、再び『磨き研磨』している時の撮影です。

このように当方自身が納得できるまで、何度でも完全解体まで戻って、気になる構成パーツや部位の微調整や『磨き研磨』を繰り返し、バラす前時点に起きていた瑕疵内容を改善させていく努力を惜しみません。

もちろん今回のオーバーホールでは当然ながら、この絞りユニット内部などにグリースなどには一切塗りません (当たり前の話ですが)(笑)

上の写真を撮影した時点では、さらに『磨き研磨』が進んで、だいぶ研磨し尽くした状態になっているのを撮っています。

しかしこの削れている箇所をあまり研磨しすぎてしまうと、前出の鏡筒を真横から撮影した写真のとおり「今度は鏡筒の開口部に干渉してしまう」懸念が現れるので、徹底的に削ってしまうワケにはいきません (最小絞り値側方向の時に開閉環が浮き上がるので、その時に鏡筒のフチが干渉し始める)。

このように様々な角度から「観察と考察」することで、何をヤルべきか、やらないほうが良いのかを選択していきます。従って鏡筒に仮組みして見ながら『磨き研磨』を進めましたが、そろそろ限界といったところです(汗) これ以上研磨を続けると鏡筒開口部のフチが今度は干渉するようになりかねないので、ここで研磨をやめます。

↑「位置決め環」を再びイモネジ固定してからグリースなど塗らずに絞り環を組み込んだ状態を撮影しました。最終的に当初マーキングした位置で (つまりバラした時の位置で) シリンダーネジの受けを固定しました。

↑さらにカチカチとクリック感を感じる鋼球ボール (グリーン色の矢印) と赤色矢印で指し示している箇所の「絞り値キー (溝)」との整合性を確保してから、締め付け固定します。この銅板で造られている板バネのチカラで、クリック感の強さが決まりますが、強く押し込んでしまうとクリック感が固く変わり絞り環操作も重くなります。適度な感触になるよう微調整して仕上げます。

↑結果、絞り環操作は当初から比べれば天と地の差レベルで軽くなりましたが、それでもf5.6f22間で多少重くなります。これは前述したように絞り羽根が互いに重なり合い、膨れ上がる現象が起きるからトルクが変化する原理ですが、おそらくは製産時点は「トルク変化が感じられないほど小さかった」ものの、今となっては既に削れまくってしまった分、解消させることは不可能との最終的な判定です。

・・申し訳ございません!(涙)

↑光学系前後群を組み込んで鏡胴「前部」が完成したので、今度は鏡胴「後部」のヘリコイド群の組み立て工程に入ります。

空転ヘリコイド」を封入する役目の「封入環」が一番左端になり、順に「空転ヘリコイド」に「ヘリコイドオス側」そして「マウント部 (右端)」の順番でセットしていきます。

↑当然ながらこのヘリコイド群の中でトルクの重さを決めてしまうのは、この「空転ヘリコイド」であり、ここに過去メンテナンス時には「ウレアグリース」を入れていたので、トルクが重くならざるを得ません(笑) 当方ではグリースに頼った整備をしない方針なので「徹底的に平滑仕上げに磨き研磨」してから封入環で締め付け固定したところです。もちんこの状態で素晴らしいトルク感に仕上がっています(笑)

↑距離環を組み上げて鏡胴「後部」が完成したので、仕上がっている鏡胴「前部」をセットしていよいよ完成です。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。冒頭の問題点について、以下のようになりました。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
絞り環操作時f5.6~f22で異常に重いトルクに変わり、f22辺りではマウントが回るほど。
相当改善なるもf5.6~f22間重く、f22から戻る際抵抗増す傾向は変わらず
絞り環操作時に、内部擦れている感触が指に伝わってくる。
相変わらず擦れ感伝わるも相応に低減。但し擦れる際の音が聞こえてくる
鏡胴前部と後部の間で極僅かなガタつきを感じる。
改善済。確実に締め付け固定したのでガタつき発生せず
距離環を回すトルクがだいぶ重い印象でピント合わせし辛い。
改善済。決して軽くはないが、普通程度までに改善済
 光学系内のおそらく後群側にコーティング層の劣化が視認できる。
バルサム剤を一旦剥がす必要があり、未処置の為残っている

《バラした後に新たに確認できた内容》
グリースに頼った空転ヘリコイド駆動に仕上げている為、必然的にトルクが重くなる。
平滑性を戻した為、改善するも普通程度のトルク感止まり
絞りユニット内構成パーツの固定手法が拙い→これが原因で擦れ感が発生。
適切に固定手法に訂正済なるも、瑕疵の現象は改善解消できず
絞りユニット内や、驚いたことに光学系内にまでグリースを塗っている。
絞り環含めグリース塗布せず、本来の製産時点と同様に組み立て済み
反射防止黒色塗料が最低限レベルで塗布しており、プロの整備会社の作業と推測。
同様最低レベルに止めた反射防止黒色塗料り再着色実施

・・とこんな仕上がり状況です。赤色文字部分が「残ってしまった瑕疵内容」であり、9項目の中で5項目もあり、要はほとんど大きく改善できていない仕上がりとしか言いようがありません・・申し訳ございません!(涙)

絞り環操作に関し、現状当初より軽いトルクの「印象」には改善できましたが、相変わらず「f5.6f22」間で重くなるのは、絞り羽根の膨らみが始まるからで、その時に神経質に影響を受けてしまうのは「位置決め環の削れ」よりも、おそらく「位置決め環が極々僅かに撓っている為」と判定しました。

今までの経年の中で長年硬い絞り環操作で強く回され続けてきた経緯から、既に極々僅かに撓って真円を維持できていないように受け取りました。これは「位置決め環と開閉環だけの組み合わせだけで回転操作していて確認できた回転ムラ」時点で、そのような判定を既に下しており、そこからどの程度解消できるのかについて『磨き研磨』処置を講じましたが、そもそもの撓りには効果を発揮できていません・・申し訳ございません。

位置決め環」側の削れ箇所を、許容値を超えて研磨しすぎると、今度は「開閉環」の回転時にマチ (微かな隙間) が増大して、今度は引っかかる現象に至るので (絞り環が突然止まるほどの引っ掛かりに増大していく) 特に絞り環のフチに残る縦方向の擦れ痕から、その歌詞に至る懸念が残っており『磨き研磨』は最低限にとどめています・・申し訳ございません。

従って及びについて、改善レベルは半分程度以下のレベルに留まります・・申し訳ございません。

またについては「空転ヘリコイドの内部擦れ痕の問題」よりも、むしろ「距離環のツマミの変形」のほうが脅威になっているように感じますが、内側方向に傾きながらも (真横から見ると分かります) ツマミの何処がどのように影響しているのかが見るだけでは掴めず、これも対処できていません・・申し訳ございません。

従って改善項目は「僅か3項目のみ」であり、ご期待に添えず本当に申し訳ございません。お詫び申し上げます。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

光学系内には僅か数点レベルで「気泡」が確認でき、パッと見で傷のように見えてしまいますが、光学硝子レンズ単独で拡大視認すると「気泡」であるのが確認できています。

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

気泡は玉ボケなどの内側に映り込むことがありますが、玉ボケの大きさ如何によっては視認できないと思います。

↑後群側もスカッとクリアになりましたが、冒頭解説のとおり「第3群貼り合わせ面の蒸着コーティング層経年劣化による斑模様」が、凡そ1/3の領域で光に翳して反射させると視認できます (但し、光学系内に光を透過させつつ覗き込んでも視認できないレベル)。

↑8枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動し、外堀羽が閉じる際は「完璧に正八角形を維持」しますが、冒頭説明のとおり当初バラす前から起きていた瑕疵内容は半減以下レベルの改善に留まります・・申し訳ございません。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)

但し、距離環を回した時の「前後方向のガタつきは解消したが、左右方向のガタつきが残ったまま」です。これは「直進キー」をおそらく過去メンテナンス時に僅かに研磨したのだと推測していますが、一度削れた金属は物理的に戻せないので改善できません・・申し訳ございません。

距離環を回している時に左右方向に微動させると「その時にガタつきが指に微かに伝わってくる」本当に小さなガタつきですが、決して起きていない話ではないので、気にするとちゃんとガタつきを確認できます。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離50㎜開放F値f1.8被写体までの距離54m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度27m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、30m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の60m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮影しました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」ですが、もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況の為「回折現象」の影響が極僅かに現れ始め、解像度の低下を招いています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。この「f22」から絞り環を開放側に向かって戻していく時に、やはり重いトルクに変わります。当初バラす前の「マウント部が回ってしまう重さ」からはだいぶ改善できたので、もうマウント部が回ってしまうことは起きませんが、それでも普通の絞り環操作に比べると「異常に重く感じるレベル」との当方判定です・・申し訳ございません。

さらにその際に「キーキー音」が聞こえてくるようになってしまったのは「位置決め環の削れている箇所を研磨して平滑性を戻したから」であり、トルクの重さを改善するのと反比例して「開閉環との干渉レベルが僅かに上がってしまった」のは、どちらか一方しか選択できない道理からです。

これは偏に「f5.6f22」間で絞り羽根が重なり合って膨れ上がる現象が内部で起きている、そのチカラに対して位置決め環側の削れた箇所を研磨した為に「開閉環が一緒に傾くマチを与えてしまったから」と言うのが原理であり、トルクを軽くするか開閉環への影響が増大するギリギリのところで留めるか、いずれかの狭間だからです・・申し訳ございません。

以上、今回のオーバーホール/修理ご依頼分のご報告とさせて頂きます。明日完全梱包の上、クロネコヤマト宅急便でご返却申し上げます。この度のご依頼、誠にありがとう御座いました。ご期待に添えず、本当に申し訳ございませんでした。お詫び申し上げます。