◆ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Biometar 80mm/f2.8 silver《初期型》(M42)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツは
Carl Zeiss Jena製中望遠レンズ・・・・、
『Biometar 80mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainie! Geroyam Slava!
ご落札頂きましたぁ〜!(涙)
ありがとう御座います! 感謝感激です・・(涙)
先月からなかなか生活が厳しい状況が続いており、本当に助かります・・!
今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で当時のCarl Zeiss Jena製中望遠レンズ「80mm/f2.8」の括りで捉えると累計で48本目にあたりますが今回扱った個体「初期型」のシルバー鏡胴モデルだけでカウントすると21本目です。他にGutta Percha巻ローレット (滑り止め) モデルが3本に、その後登場したゼブラ柄モデルで10本、そして最後のマルチコーティング化された黒色鏡胴が14本と言う状況です。
《モデルバリエーション》
※オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
初期型:1950年〜1958年
コーティング:モノコーティング T (後に刻印省略)
絞り羽根枚数:12枚 (最小絞り値:f16)
絞り方式:プリセット絞り機構装備
最短撮影距離:80cm
筐体:クロームメッキ (シルバー鏡胴)
前期型−Ⅰ:1958年〜1963年
コーティング:モノコーティング (T刻印省略)
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:クロームメッキ+Gutta Percha 凹凸エンボス
前期型−Ⅱ:1962年〜1965年
コーティング:モノコーティング (T刻印省略)
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:ブラック+Gutta Percha 凹凸エンボス
前期型−Ⅱ:1962年〜1965年
コーティング:モノコーティング (T刻印省略)
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:ブラック+Gutta Percha 凸突起
中期型:1965年〜1970年
コーティング:モノコーティング (T刻印省略)
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:ブラック+ゼブラ柄
後期型:1971年〜1981年
コーティング:マルチコーティング
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:ブラック鏡胴
上のモデルバリエーションの中で「前期型−I」に今まで掲示していなかった/欠落していたシルバーアルマイト鏡胴にGutta Percha凹凸エンボス加工を施したローレット (滑り止め) タイプを追加しました。
ネット上の解説やヤフオク! などの出品状況をチェックしていると、このGutta Percha巻を「本革張り」の如く表現している説明が非常に多いですが、正しくは「皮革柄を模した硬質ゴム材 (現在で言う処のいわゆる合皮革材)」であり、野生皮革とは全くの別モノです(笑)
◉ Gutta Percha:
グッタペルカ (日本語)/ガタパーチャ (ラテン語/英語)/グッタペルヒャ (ドイツ語)
マレーシア原産のアカテツ科樹木/樹皮から採取した樹液から得られるゴム状の素材でマレー語で「ゴムの木」の意。弾性が低く硬質化する性質を持ち絶縁性に優れている。
いわゆるゴム材/ラバー素材として語られる事もとても多いですが、現実には弾性がほぼ無くてどちらかと言うとまるで樹脂材/プラスチック材の如く硬質化するので、特に経年の酸化進行に伴い素材収縮により亀裂や割れが生じる懸念が高く非常にモロイです。
当時出荷されていたモデルは距離環ローレット (滑り止め) に「皮革柄を模した凹凸エンボス加工」の他、一部に「凸突起のある加工」のGutta Percha巻が存在します。
市場出現率としては現在多く見かける/流通している「ゼブラ柄」の他「後期型」たる黒色鏡胴モデルの2種類で大多数を占めますが、その一方で「前期型−I〜前期型−II」についてはそもそも生産数が少ない為、出現する機会が極端に少ないです (特にGutta Percha巻の凸突出タイプは欠損している個体がとても多い)。
このGutta Percha素材については、一時期に家具専門店に勤めていた経験から相応に詳しくなりました (職人より直接教授)(笑)
《Carl Zeiss Jena (戦前〜戦後) コーティング技術の発展》
〜1934年:ノンコーティング (反射防止塗膜の蒸着無し)
1935年〜:シングルコーティング (反射防止単層膜塗膜の蒸着)
1939年〜:モノコーティング (反射防止複層膜塗膜の蒸着:T)※
1972年〜:マルチコーティング (反射防止多層膜塗膜の蒸着:T*)
※ 世界初の薄膜複層膜蒸着技術開発は1958年のMINOLTAによるアクロマチックコーティング
が最初でありモノコーティングとは異なる/当時のライカがMINOLTAと技術提携
※ それぞれドイツ国内に於ける最初の特許登録年を列記/国外登録年はまた別
またネット上の解説の中ではやはり多くのサイトで「zeissのT」刻印について「シングルコーティング (単層膜蒸着)」と述べていますが、今まで3,000本を優に越えるオールドレンズを扱ってきた中で、一番初期の「ノンコーティング (非蒸着)」がまさに無色透明であるものの、上の列記のとおり「シングルコーティング (単層膜蒸着)」はそのコトバのようにブル〜系単色のみのコーティング層蒸着を指し、現実にオーバーホール/修理してきた際の事実から「カビ除去痕などのコーティング層ハガレを確認すると単色/単一資料なのが明白」です (ここで述べる資料とはコーティング層蒸着時の鉱物素材を指す)。
その一方で例えばレンズ銘板に「zeissのT」刻印が在るオールドレンズなどをチェックした時、光に反射させてその光彩を確認すれば「パープルアンバーの2色の光彩を放つ」ので「2種類の波長を有する事実からコーティング層蒸着資料は最低でも2種類使っている」と考察しています。
従って当方では「zeissのT」を指して「シングルコーティング (単層膜蒸着)」とは捉えておらず、むしろ「モノコーティング (複層膜蒸着)」が適切ではないかとの認識です。
例を挙げるなら、例えば1936年に戦前ドイツのナチス政権時に開催された「第十一回夏期ベルリンオリンピック」の際に撮影製作された国威発揚目的の「オリンピック映画」に於いて、まさにその撮影に使うために間に合わせて登場した『Olympia Sonnar 180mm/f2.8《初期型》』の存在がポイントになります。
この「Olympia Sonnar」の異名を持つ望遠レンズに施されていたコーティング層蒸着は「ブル〜系単色のみ」であり、その後に登場した『Olympia Sonnar 180mm/f2.8《前期型》(exakta)』の光学系が放つ「パープルアンバーの2色の光彩」とは明らかに異なっていました。
逆に言うなら確かに参考文献などを確認するにつけ「zeissのT」を指して「シングルコーティング (単層膜蒸着)」と述べられていますが、もしもそれが正しいと捉えるならその後に登場した「モノコーティング (複層膜蒸着)」の特許登録申請時点での合理性/整合性が欠落してしまい矛盾しか残りません。一つ前の「シングルコーティング (単層膜蒸着)」特許登録後にレンズ銘板に「zeissのT」との刻印をスタートしていたのなら、その次の「モノコーティング (複層膜蒸着)」特許登録後にどうしてそのまま「zeissのT」の刻印をし続けていたのか? 且つ真の多層膜蒸着たるマルチコーティング化された際に「zeissのT*」と明示していた事に対する整合性すら失います。
どうして「モノコーティング (複層膜蒸着)」特許登録後に明示内容を変更せずに、相変わらず「シングルコーティング (単層膜蒸着)」時代から継続していた「zeissのT」の刻印を行い続けたのでしょうか? その点についての解説がネット上何処を探しても発見できません。その一方でその当時のオールドレンズ光学系を光に反射させて見れば「ブル〜系単色のみ」或いは「パープルアンバーの2色の光彩」を放つモデルと2つのコーティング層があからさまに確認できる状況になってしまっているのに、どうして相変わらず「シングルコーティング (単層膜蒸着)」たる「zeissのT」を「モノコーティング (複層膜蒸着)」のモデルにも刻印し続けたのか当方はどうしてもその合理性が見出せません(泣)
・・何しろ頭が悪いのでこういう時に困ります (恥ずかしい)(笑)
このような非常に矛盾した非合理的な解説さえもまるで通説の如く罷り通っているのが実際で、特にネット上の某有名処での解説が相当インパクトが大きいのだと受け取っています。
このブログで何度も執拗に述べていますが当方では「zeissのT」を指して「シングルコーティング (単層膜蒸着)」とは捉えていません。「パープルアンバーの2色の光彩を放つ」のであればそれは真実であって波長の相違からして2色の色合いが重ならずに視認できているのが間違いなく確認できる以上、それを「シングル/単波長」と受け取れと言われても当方は納得できていません(泣)
仮に光に反射させても見ている箇所が違うから「パープルアンバーの2色の光彩を放つ」ように見えるのだと言うなら、そんな光学硝子レンズは「斑模様になってしまいあり得ない」と容易に答えられます(笑) 当然ながら全く100%同一箇所を光に反射させて確認しているのに見る角度によってその色合いが「パープルアンバーの2色の光彩を放つ」のだとすれば「それはまさに波長が異なるから見る角度を変えると2色それぞれを個別に視認できる」のではないかと、ひたすらにバカな頭で考えまくっているので、そのうちだんだん何が何だか分からなくなってきます (やっぱり恥ずかしい)(笑)
従って「zeissのT」は当方の認識では「モノコーティング (複層膜蒸着)」との認識です。
ちなみに今回のオーバーホールで完全解体し取り出した光学系の各群を当方の手でデジタルノギスを使い逐一計測してトレースした構成図が右図で、間違いなくこのカタチの構成図は「初期型」を現していると納得できました。
先日やはりオーバーホール済でヤフオク! 出品した『MC BIOMETAR 80mm/f2.8《後期型》(P6)』で同様に光学系をトレース済なので、残るは「前期型〜中期型」辺りの構成についての確認が命題になっているところです。
↑上の写真は今回扱った個体から取り出した「鏡筒」ですが、その右横に「開閉環用固定環」のC型環を並べて撮影しています。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
すると上の写真で赤色矢印で指し示している右横の「開閉環用固定環」のC型環は開閉環を格納した後にその固定の役目としてセットするパーツなワケですが、このパーツ自体を表裏面で「反射防止黒色塗料」で過去メンテナンス時の整備者が塗ったくっていました(泣)
このパーツはアルミ合金材で用意されておらず、その材質は「塩ビ版」のカッティングです。そこに「反射防止黒色塗料」を着色してしまったのでいつもと同じですが「光学系第2群貼り合わせレンズの特に裏面側」及び「第3群裏面側」の2つの光学硝子面に対して経年でインク成分が飛んでしまい「コーティング層に頑固にこびり付いて化学反応を誘発している状況」でした。
もっと言うならそもそも絞りユニット内の「開閉環」やそれこそ光学系の光学硝子を締め付け固定する「締付環」から光学硝子格納筒の内壁に至るまで「ありとあらゆる箇所に反射防止黒色塗料を塗りまくり」状態でした。
当然ながら光路長に影響が現れたので当初バラす前時点での実写チェックでは「カメラのピーキングに反応しないレベルでピントのピークが不明瞭」だった次第です。いつもの事ですが最近ちょっと多い傾向に感じています。
↑実際に12枚の絞り羽根を組み込んで「開閉環」をセットし「固定環」をセットしたところです。内部が見えるようワザと露出オーバーに撮っています。微かに見えていますが「C型環」のカタチが分かるでしょうか。
また今回の個体は当初バラして判明しましたが、12枚の絞り羽根全てが「表裏逆向きでセットされている」状況でした。どうして絞り羽根の表裏が逆向きだと分かるのかと言えば、それは「観察と考察」を行えば自ずと絞り羽根をどのように組み込むのが正しいのかが明白になるからです。
当然ながら表裏逆向きにセットすると「絞り環絞り値との整合性を喪失する」ので刻印されている絞り値に対して絞り羽根が閉じすぎていたり、逆に開きすぎていたりといった状況に陥ります。まさに何も考えずに整備している過去メンテナンス時の整備者の実状が明らかになってしまいました(笑)
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『Biometar 80mm/f2.8 silver《初期型》(P6)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。今回の個体のレンズ銘板には「zeissのT」刻印がありません。製産出荷した時期からして既に刻印を省いていた頃の個体と推測できます。もちろん当然ながら光学系の光彩を見れば「パープルアンバー」なのでモノコーティングと言えます。
刻印を省くようになった理由は、おそらく全ての製産出荷品についてモノコーティング蒸着が当たり前に変わったので、或いは他社光学メーカーの動向も合わせて勘案し刻印しなくなったのではないかと推察できます。
《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
❶ 距離環を回すとトルクが重すぎてマウントのネジ込みが回ってしまう。
❷ 距離環を回した時に重くなる箇所がありトルクムラを感じる。
❸ 距離環を回しているとジャリジャリ感が強い箇所がある。
❹ 光学系内に薄いクモリと明白な菌糸状のカビがある。
❺ 無限遠位置が5目盛分前で相当なオーバーインフ状態。
❻ ピント面がとても甘くカメラ側ピーキングの反応がギリギリの印象。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❼ 至る箇所に反射防止黒色塗料が塗られている。
❽ ヘリコイドなどに白色系グリースが塗布されている。
❾ 光学系の光路長が適切ではない (ピント面が甘い原因)。
・・とこんな感じでした。ヘリコイド (オスメス) には砂が混入しており、それでジャリジャリした印象のトルク感だったようです。またトルクムラについては原因が不明です。
光学系内のクモリは冒頭のとおり「反射防止黒色塗料」のインク成分が経年で飛んでしまいその一部がコーティング層に蒸着して化学反応を起こしたのか相当頑固にこびり付いていた状況です。
残念ながら第4群の後玉裏面は既にコーティング層が反応してしまい外周から中心に向かってコーティング層に薄いクモリが残っています。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体ですが、前述のとおり後玉裏面に極薄い微かなクモリが残っています。LED光照射で確認しても「言われて探してそう言われればクモリなのか?」と受け取れるくらいに非常に薄い状況ですから、そのままLED光照射で見ても下手したら気づかないかも知れません。しかし後玉単体だけでチェックすると微かなクモリなのが判明します。
従ってヤフオク! 出品ページに記載しましたがこのクモリの影響が現れる撮影シ〜ンとしては相応に暗い状況下で光源を撮影した時に僅かにコントラスト低下を招くかも知れないというレベルですから、おそらく普段の撮影時にコントラスト低下を考える以前に「開放で撮影すれば自ずと収差の影響が大きい光学設計なので分からない」とも指摘できそうです(笑) 一応念の為に (後玉単体では分かるので/清掃時に確認しているので) 神経質な人達の為にご案内しておきます。
・・つまり気にするレベルギリギリの話程度です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑前述のとおり光学系後群側も透明度が高いですが後玉裏面側に微かなクモリが残っています。クモリよりもそもそも光学系前群/後群共に微細な点キズと「気泡」が多めの印象です。パッと見で「微細な塵/埃」に見えますが微細な点状キズと「気泡」です。
◉ 気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「証」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大12mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前後玉に点状カビ除去痕複数残っています)
(前後群内に微細な経年の拭きキズ数本あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・後玉裏面側に外周→中心に向かい極薄いクモリが残っています。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません。
・光源含むシーンや逆光撮影時にフレアの出現率が上がる懸念がありコントラスト低下の一因になる事があります。事前告知済なのでクレーム対象としません。
↑12枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環/絞り環ともども確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら閉じていきます。
前述のとおり当初バラした際は過去メンテナンス時に絞り羽根の表裏を逆向きでセットしていましたが、当然ながら今回のオーバーホールで正しい無機で組み込んであります(笑)
なお「プリセット絞り環」のスプリングが硬めなのでプリセット絞り操作する時にガチャガチャ操作する印象になります (つまり操作感が硬め)。スプリングをカットしたりすれば良いのでしょうがオリジナルの状態を残したい一心から一切手を加えずそのまま組み込んで仕上げています。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感強め)。
・附属品のK&F CONCEPT製M42 → SONY Eマウントアダプタへの装着に限りちゃんと最後までネジ込めるようマウントアダプタ側を処置しています。
また本来内側にセットされていたオリジナルのピン押し底面も附属しているので、附属品の1.3ヘクスレンチを使って入れ替えができるよう配慮しています。市場流通しているFOTGA製M42マウントアダプタを使えばピン押し底面が存在しないマウントアダプタなので最後までネジ込めますがこのマウントアダプタはフランジバック計算が適合しておらず「無限遠合焦が甘く堕ちる」現象に至ります。そのために今回敢えてマウントアダプタを附属品にしています。
・附属のマウントアダプタに装着しても無限遠位置は凡そ2目盛分程手前のオーバーインフ状態になりますが、当初の5目盛分からは大幅に改善させています(これ以上改善不可能)。事前告知済の為クレーム対象としません。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
① marumi製MC-Nフィルター (新品)
② 本体『Biometar 80mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』
③ 純正樹脂製被せ式前キャップ (中古品)
④ 汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
⑤ K&F CONCEPT製M42 → SONY E マウントアダプタ (新品)
⑥ マウントアダプタ附属ピン押し底面 (両面使い)
⑦ 汎用クロムバナジウム鋼製ヘックスL形レンチ1.3 (新品)
この当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製シルバー鏡胴に多く見られる「M42マウント規格の問題」からそれに対処したマウントアダプタをご用意しました。
数年前に同じようにご落札者様に対し配慮してオーバーホール済でヤフオク! 出品したところ、どうしてなのかいまだに不明ですが数ヶ月落札されずに残り続けました。ちゃんとブログでも解説していたのに不思議です。もしも今回も落札されずに残るなら「せっかくのご落札者様に対する配慮もムダ」と捉え、要は当方に対する「胡散臭いヤツ」との認識から落札されないのだと受け取るしか残されていません(涙)
なお前述した当初バラす前の時点での懸念事項は、以下のように全て改善できています。
《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
❶ 距離環を回すとトルクが重すぎてマウントのネジ込みが回ってしまう。
→ トルクは「普通」人により「重め」に感じ滑らかで普通にピント合わせできる状況。
❷ 距離環を回した時に重くなる箇所がありトルクムラを感じる。
→ トルクムラは消えて∞〜最短撮影距離80cmまで均一でスムーズなトルク感に改善。
❸ 距離環を回しているとジャリジャリ感が強い箇所がある。
→ ジャリジャリ感は消えているがヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる印象。
❹ 光学系内に薄いクモリと明白な菌糸状のカビがある。
→ 全てのカビを除去済で特に目立つカビ除去痕も残っていない。
❺ 無限遠位置が5目盛分前で相当なオーバーインフ状態。
→ オーバーインフではあるものの2目盛分に留まる程度に改善。
❻ ピント面がとても甘くカメラ側ピーキングの反応がギリギリの印象。
→ 反射防止黒色塗料を除去し光路長を正したので大変鋭いピント面に改善。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❼ 至る箇所に反射防止黒色塗料が塗られている。
→ 全ての反射防止黒色塗料を除去し、且つ磨き研磨して光路長を正した。
❽ ヘリコイドなどに白色系グリースが塗布されている。
→ 今回のオーバーホールで黄褐色系グリースを塗布し入れ替え済。
❾ 光学系の光路長が適切ではない (ピント面が甘い原因)。
→ LED光照射でもクモリを視認できないレベルまでクリアに改善し鋭いピント面に改善。
→ 但し後玉単体でチェックすると裏面側に非常に薄い微かなクモリが残っている。
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↑そんな次第でその当時は相当なショックを覚えたので、今回も面倒くさいのですがちゃんと解説していきます。
この当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製シルバー鏡胴モデルの中には「M42マウント規格ながらネジ部の先にさらに突出が備わる」タイプが幾つか顕在します。
今回のモデルも「M42マウント規格ながらネジ部の先に突出が備わる」ワケで、上の写真はそのマウント部を拡大撮影して説明しています。
マウント面からの「M42マウント規格のネジ部」を含めた突出全体のサイズはグリーンの矢印で指し示したとおり「6.28㍉」あります。さらに「M42マウント規格のネジ部」の先だけを計測すると凡そ「2.24㍉」の実測値です (赤色矢印)。
さらに前述の「この当時に顕在したM42マウント規格からさらに突出部が備わるモデル」として、ちゃんと証拠写真を掲示しました。左の写真は過去に扱った同じ旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製標準レンズ「Tessar 50mm/f2.8 T silver《中期型》(M42)」のマウント部拡大写真です。
左側の写真では「M42マウント規格のネジ部の先にさらに突出が備わる」事を赤色矢印で指し示しています。この突出部分の長さは今回出品する個体よりもさらに長い/多いのが分かると思います。上の写真はたまたまTessarを扱った時の写真ですが、他にも市場流通しているこの当時のシルバー鏡胴モデルの中には、例えば「Flektogon 35mm/f2.8 silver (M42)」にも同じように突出があったりします (突出が無いタイプも顕在する/つまり混在している)。
もっと指摘するなら皆さんが唯一無二と信じてやまない「M42マウント規格 (正しくはプラクチカ・スクリューマウント規格)」のフランジバックが、実は初期の時代とその後と大きく2種類存在する事を知りません。
詳細はこちらのwikiのページの途中に「プラクチカスクリューマウントまたはM42マウント」との案内で掲載しています。そのフランジバックはwiki上では小数点以下1桁に簡略化して明記していますが、正しくは1947年時点の初期時点で「45.74㎜」であったのに対し、その後は「45.46㎜」に変遷しています。
◉ フランジバック
レンズマウント面から撮像面 (フィルムカメラならフィルム面でデジカメ一眼/ミラーレス一眼ならば撮像素子面) までの距離
◉ バックフォーカス
光学レンズの後玉端から撮像面 (フィルムカメラならフィルム面でデジカメ一眼/ミラーレス 一眼ならば撮像素子面) までの距離
するとマウント規格に対しての「フランジバック」は固有のある特定の一つの数値で示されるべきと数多くのサイトで案内されていますが、そもそも史実の中ではこのように「2種類顕在してしまっていた」事が明白です。
例えば当時発売されていたコシナ製フィルムカメラに「COSINA CSL」と言うモデルが存在し、その取扱説明書を調べてみると意外な事実がちゃんと残されています。
まさにこのフィルムカメラのマウント規格が「M42=42⌀ P=1.0 screw mount」と「M42マウント規格」である事が示されていますが重要なのはそのフランジバックです。
↑このフィルムカメラの取扱説明書最後のページに印刷されている「仕様欄」の一行目に、ちゃんとフランジバックが明示してあり「45.45㎜」なのです。
前述のwikiでは「現在:45.46㎜」とアナウンスされていますが、既に当時の時点でコシナでは自社製品たるフィルムカメラの「M42マウント規格」に対するフランジバック設計を「45.45㎜」に採っていた事が明白です。たかが「僅か0.01㎜の差」と言うのでしょうが、現実的な話としてヘリコイドのオスメスのネジ山に当てはめた時に「この0.01㎜の差」とは一体どの程度のネジ勾配に値するのでしょうか?
おそらく実際に検査してみれば「距離環刻印距離指標値の∞の左端辺りのズレ」に至ると推測できます。
その程度のズレならそれこそいくらでもゴロゴロ市場に転がっていると言われるかも知れませんが、事はマウント規格のフランジバックに対する話なので、単なる距離指標値のズレとは趣旨が全く異なります。
もっと言うなら日本製マウントアダプタを製作している会社の自社ホームページ解説では「アダプターは厚さを高精度に仕上げてあり∞マークと実写時の無限遠が高精度で一致します」と明記していますが、だとすればはたしてこの当時に発売されていた数多くのコシナ製フィルムカメラ向けオールドレンズの無限遠位置は、どのようにピタリと一致しているのでしょうか?
確かに当時それこそ旭光学工業製「ペンタックスシリーズ」などフィルムカメラでも一世風靡した「M42マウント規格」との認識が一般的なのでしょうが、だからといって全ての「M42マウント規格のオールドレンズなら当然に同一規格」との認識が、そもそもここまでの解説で既に瓦解していませんか?(笑)
日本のマウントアダプタ製作会社が「実距離の無限遠位置と一致する」と謳っている以上「その一致と言うコトバの概念はどのように裏付けられているのか?」と指摘したいのです。
皆さんは当方が仕上げた整備に対し「アンタの整備が悪いから無限遠位置が合致しない!」とクレームしてきますが、そうではなくて「端からM42マウント規格が複数顕在していた事実を史実として受けとめ受け入れているからこそオーバーインフに仕上げている」のです。
何故ならマウントアダプタの製作会社が、日本製だろうが中国製だろうが、或いは台湾製でも米国製でも一体どの寸法を採って設計した製品なのかが不明瞭だからです。
当方の探し方が悪いのかも知れませんが、残念ながら日本製マウントアダプタ製造会社のホームページを見ても対象となるマウントアダプタの仕様欄が掲示されていません。つまりそもそもこの日本製マウントアダプタのフランジバック計算値すら告知せずに不明瞭なままです。
ちなみに当方が普段のオーバーホール作業で基準として使っているマウントアダプタはK&F CONCEPT製なので「中国製」です(笑) どうして工作精度が高く信用/信頼に足る日本製マウントアダプタを基準としてオーバーホール作業時に使わないのかはこの後に「その現実」をちゃんと知らしめていますからご参照下さいませ(笑)
また実際にK&F CONCEPT社に数年前ですが問い合わせを行い、今回のマウントアダプタ製品に採用しているフランジバックについて専門的な問い合わせをしたところ、ちゃんと「設計時のフランジバックは45.5㎜としている」と明確な返答を頂きました (設計部門の副責任者の方/設計誤差許容値±0.02%)。現実的に製品全高などを計測しても確かに設計誤差許容値に収まる範囲内で製造されているように受け取られますが、当然ながら当方のデジタルノギスによる計測自体にそもそも信憑性が附随しません (・・と相変わらず批判され続けている)(笑)
中国製だからと皆さんは卑下しますが、そのK&F CONCEPT社の対応のほうが当方にしてみればとてもユーザーサイドに立ってくれている姿勢を感じ取れると思っています。
・・基本当方は国や民族を差別/偏重して捉える気持ちが無く事実を基に考察しています。
↑当方所有の「M42マウント規格 → SONY E マウントアダプタ」を3種類用意し、且つ今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際し「附属品にしたマウントアダプタ④」も揃えてこれから検証していきます。
検証すべき内容は前述のとおり「M42マウント規格ネジ部のさらに先に突出が在る」問題がいったいどのようにマウントアダプタ装着の障害に至るのかを解説していく目的です。
当方はあくまでも個人の格付で法人格ではありませんが、皆さんができる限りご納得頂けるよう敢えて複数のマウントアダプタを購入して手元に揃えています。その目的はもちろん今回のような検証を実施できる話にも繋がりますが、一番は「ヤフオク! でのご落札者様やオーバーホール/修理ご依頼者様の手持ちマウントアダプタの状況を検証できる」事が最大の命題であり、何かトラブルや不具合が生じた際に当方の手元でも同じように検証でき「改善策を考察できる/講じられる」事が最大の狙いです。
・・何故ならハッキリ言って普段作業に使うのは上の写真②のたった一つだけだからです(笑)
そのように言うと今度は「プロならそのくらいの準備は当然だろ!」と言ってきますが(笑)、当方はこのブログでも何度も何度も執拗に「プロではない」と告知しています。
・・基本当方はご落札者様・オーバーホール/修理ご依頼者様に対し50 vs 50の心積もりです。
残念ながら当方には「お客様は神様です!」との概念は存在せず、あくまでも対等の立場なので「ご落札者様・オーバーホール/修理ご依頼者様の我が儘」に付き合う気持ちは一切ありません。当方が自分の眼で見て確認して触って感触を調べ処置して仕上げた内容に対し「事実を曲げてまで受け入れる気持ちは一切ありません」と明言させて頂きます。
《今回の検証に揃えたマウントアダプタ》
① RAYQUAL製M42−SαE マウントアダプタ (日本製)
② K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ (中国製)
③ FOTGA製M42−NEXマウントアダプタ (台湾製)
④ K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ (中国製) ※今回の附属品
赤色ラインで区切って上下で分けていますが、下段はマウントアダプタの内側に「ピン押し底面」と言う「M42マウント規格」のオールドレンズ中で自動絞り方式を採用した「マウント面から絞り連動ピンが飛び出ているタイプ」を対象にした、その絞り連動ピンを強制的に最後まで押し込みきってしまう方式のマウントアダプタを2点用意しました。
一方上段側はその「ピン押し底面が内側に存在しないタイプ」を用意しており、前述のとおり④は今回の出品に際し附属品としています。
↑まずは① RAYQUAL製M42−SαE マウントアダプタ (日本製) から説明していきます。日本整の高精度な工業製品で内側に「ピン押し底面」と言う棚のような部分が迫り出していて「M42マウント規格のオールドレンズ」をネジ込んでいくと強制的に「絞り連動ピン」を最後まで押し込みきります。マウントアダプタの内面は反射防止黒色加工が施され、且つ遮光板まで備わる気配りが素晴らしい製品です。
↑今度は製品全高をデジタルノギスで計測しその平均値で明示しました。製品全高はそのまま「フランジバック寸法」を意味するので以下のような計算値になります。
《参考とすべきフランジバック計算の内容》
(1) M42マウント規格のフランジバック:45.46㎜
(2) SONY E マウント規格のフランジバック:18㎜
(3) 上記の「(1) − (2)」が製品全高であるべきサイズ:27.46㎜
すると製品全高たる赤色矢印の領域は「27.5㎜」でした。さらにピン押し底面までの深さは「凡そ6.08㎜」でした (グリーンの矢印)。
↑そこで実際に今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体をネジ込んでみました。すると赤色矢印のとおり『Biometar 80mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』はマウントアダプタに最後までネジ込む事が適わず「隙間がマウント面に空いてしまう」状況で、且つオールドレンズ側指標値の基準「▲」マーカーが反対側で止まってしまいます (正しくはちゃんと上に現れるのが適切)。
これは前述のこのオールドレンズ側マウント部の実測値からして容易に最後までネジ込めない原因が判明します。何故なら「マウント面からの突出はネジ部も含めて6.28㎜だから」です。このマウントアダプタのピン押し底面までの深さは「6.08㎜」しかないので必然的に「0.2㎜分ネジ込めないのは自明の理」と言えます。
たかが「0.2㎜」でどうしてそんなに大騒ぎするのかと言われても、現実に最後までネジ込めず、基準「▲」マーカーも反対側でネジ込みが停止してしまいます (つまりピッチ1㎜のネジ山で半周分位置がズレる事の証)。それが僅か「0.2㎜」の現実です。
↑今度は当方のオーバーホール作業時に必ず使っている基準マウントアダプタとも言える② K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ (中国製) を検証してみます。同様マウントアダプタ内側に「ピン押し底面」が備わり棚状に迫り出しています。
↑デジタルノギスで計測するとその平均値は「製品全高:27.45㎜」でした。やはりフランジバック計算値の「45.46㎜」からは逸脱した実測値をとり「▲0.01㎜」という状況です。
さらにピン押し底面の深さを計測すると「5.62㎜」と浅いのが分かります (計測平均値)。
ちなみに左横に一緒に並べて撮っているのは今回のヤフオク! 出品に際し附属品にしている「ピン押し底面を取り外したマウントアダプタ」として④ K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ (中国製) を並べています。
製品全高は同一なので並べて撮っており、計測値も同じです (但し計測平均値)。
↑実際に今回のヤフオク! 出品個体を ② K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ (中国製) にネジ込んでみました。すると当然ながら前述の実測値からしても「さらに最後までネジ込めない状況」のが当たり前の話です。ピン押し底面の縁にオールドレンズ側マウント部の突出部分が当たってしまい最後までネジ込めないのです。
然し一応基準「▲」マーカーは上に位置していますが、これは逆に言えば日本製マウントアダプタ ① RAYQUAL製M42−SαE マウントアダプタ (日本製) の時の半周ではなく「丸々一周ネジ込めていない」のが歴然です(笑)
↑ここでせっかく並べて撮影したので先に ④ K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ (中国製) を検証してしまいます。マウントアダプタの内側に本来オリジナルの状態でセットされていた「ピン押し底面を取り外してしまった附属品」なので上の写真では「非ピン押し底面」タイプと謳っています (但しこのような製品は発売されていない/市場流通していない)。
↑当たり前の話ですが今回出品したオールドレンズのマウント部にどんだけ突出が在るとしてもご覧のように最後までネジ込めるのは当然な話です(笑)・・何故なら突き当たる先の「ピン押し底面が存在しないから」ですね。もちろん基準「▲」マーカーもキレイに真上に来ています。
ちなみに今現在当方の手元にある他の「M42マウント規格」のオールドレンズも複数ネジ込んでちゃんと指標値の基準マーカーが真上に来るのか調べたところ「大多数は真上で一部がマウントアダプタのNEX辺りでネジ込み停止」とほぼ許容範囲内に収まっている事を確認済です。
↑検証の最後に現在の流通市場で唯一入手可能な「非ピン押し底面タイプのマウントアダプタ」として ③ FOTGA製M42−NEXマウントアダプタ (台湾製) を検証します。何しろ普段チェックで使わないので汚れていて申し訳御座いません(汗)
ご覧のとおり「非ピン押し底面タイプ」なので内側に棚状の迫り出しがありません。
↑その製品全高を実測すると「27.81㎜」でした (但し計測平均値)。本来「M42マウント規格」としてあるべきフランジバック計算から導き出された製品全高たる数値が「27.46㎜」なので相当な誤差に至り「+0.35㎜」なので、この数値を調べただけでもアンダーインフ状態に陥る事が明白になってしまいます。
◉ アンダーインフ
無限遠合焦しない状態を指し、距離環距離指標値の∞位置に到達するまで一度も無限遠合焦せず、且つ∞位置でも相変わらず無限遠合焦していない状態を現す。一度も無限遠合焦しないので遠景写真が全てピンボケになる。
◉ オーバーインフ
距離環距離指標値の∞刻印に到達する前の時点で一度無限遠合焦し、その位置から再び∞刻印に向かうにつれてボケ始める状態を指す。一度は無限遠合焦しているのでその位置で撮影すれば遠景のピントがちゃんと合焦している。
この「アンダーインフ/オーバーインフ」を逆に捉えてしまう方が非常に多いですが、これを誤って認識すると相手方に状況を伝える際に全く逆の話に至るので要注意です。
これらカタカナ言葉を日本語的に捉えるから逆に認識してしまいます(笑) 「インフ=infinity」との和製英語なので外国人に「インフ」と言っても全く伝わりません(笑)
本来の無限遠合焦する位置に対して∞刻印位置が到達していない状況を「アンダー=under」とするので「アンダーインフ」の表現になり、一方一度∞刻印に到達する前の何処かの目盛で無限遠合焦しているので「オーバー=over」との捉え方になります。
↑上図は解説用に作った概念図です。中央左端に人が立っていて右方向に向かってカメラを構えて遠景を見ています。この時実際に無限遠の領域に合焦する実距離を「無限遠合焦」としてそれ以降どんな遠景に対しても常に無限遠合焦している状態を示しています。
一方「無限遠合焦」に到達する前の段階はピンボケでピントが合っていないので「ボケ領域」として現しています (実際に無限遠合焦する前の段階は右方向に向かって少しずつピントが合うように変化してきている状態)。
また「∞」マークは実際にオールドレンズの距離環に刻印されている「∞」刻印を指しており、その位置が来ると距離環はカチンと音が聞こえて突き当て停止してしまいます (∞刻印位置から先に回らない)。
この時、距離環を回して無限遠にピントを合わせようと操作している最中に「オーバーインフ」の場合は「∞刻印に到達する以前の位置で一度無限遠合焦する」事を現し、ちゃんと一度は無限遠にピントが合って撮影できる状態を意味します。従って一度無限遠合焦してパキッとキレイな写真が撮れる位置から「∞刻印に向かってさらに距離環を回し続けると再びボケ始めて今度はどんどんボケ量が増えていく状況」である事を「オーバーインフ」と呼びます。
但し「オーバーインフ」は距離環の「∞」刻印がまだ到来する前の状況なので、例え「∞」刻印に向かって再びボケ始めてもより遠くの距離に対して距離環を回していくと合焦していくので「人の瞳で見てピントが合っていく状況と同じ」であって「∞」まで無限遠合焦していく事になります (∞刻印位置で突き当て停止するまで距離環を回せる限りは遠景にピントを合わせ続けられる)。
つまり一度は無限遠合焦しているので、仮に「∞刻印」の位置に到達していなくても遠景写真をキレイに撮影できます。
ところが「アンダーインフ」状態は少しずつ遠景にピントが合いつつある状況ながらも「∞刻印」位置が先に到来してしまうのでカチンと音が聞こえて距離環が停止してしまいます。当然ながら「真に無限遠合焦する位置はまだまだ∞刻印の先なのでピンボケ領域のまま」と言うお話です。
つまり「アンダーインフ」状態とは∞刻印が到来しても相変わらず遠景にピントが合わないまま甘い画の状態を意味します。
従ってこれらのコトバの捉え方として「真の無限遠合焦の位置に対して∞刻印が不足した距離 (under) なのでアンダーインフ」と呼称し、一方「真の無限遠合焦は先にピントが合い、その後にその合焦位置を越えて (over) ∞刻印が来るのでオーバーインフ」と呼称します。
距離環に刻印されている「∞」が「インフ (infinity)」なので、その刻印が「現実の真の無限遠合焦する位置」に対してアンダーなのかオーバーしているのかの判定により「アンダーインフ/オーバーインフ」と呼称するとのイメージですね。
これを履き違えている場合は、たいていの場合で認識の中心を「距離環の∞刻印位置」を基準に考えているので、この「アンダー/オーバー」のコトバの捉え方が逆転してしまい、結果として相手に対し意思疎通が叶わなくなります(泣) 基準に捉えるべきは「本当にリアルに合焦している無限遠位置って・・何処なの?」との疑問を抱きつつも、その無限遠合焦の位置に対して「∞刻印」が停止して回らなくなったから到達しないのか (under)、あらあら越えちゃったョ (over) と言うストーリーです。
プロの写真家でもその人達のサイトを見ていると逆の捉え方で解説している人が居るので、意外とマジックに填まりやすい概念なのかも知れません(笑) しかし確実に認識しないと全く逆の意味で相手に伝わってしまうので厄介な話になります。
何故なら、現実に当方も今まで扱ってきたオーバーホール/修理のオールドレンズに於いて、逆にご依頼頂いてしまいあ〜だこ〜だこちらのほうが填まっていたりする事があったからです(笑) 今となってはまるで笑い話ですが、何度も作業しているうちにようやく「これは逆に捉えているな?」と判明して、メールで問い合わせ確認すると逆の認識だった・・なんて言う事が何回もあります(笑)
↑実際に今回の個体を ③ FOTGA製M42−NEXマウントアダプタ (台湾製) に装着してもご覧のとおりキレイにピタリと最後までネジ込めますが、如何せん製品全高自体がフランジバックの計算値を優に超過してしまっているので「アンダーインフ状態」でまるでピンボケの遠景写真にしか至りません。もちろん遠景でなければ普通に問題なく撮影できます。
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別に日本製たる ① RAYQUAL製M42−SαE マウントアダプタ (日本製) を貶したいが為に解説しているワケではありませんが、日本製マウントアダプタを唯一と信じてやまない信者の方々/勢力が実際に居るので(涙)、そのような方々は当方がオーバーホール済でヤフオク! 出品するオールドレンズを落札しないほうが良く、プロのカメラ店様や修理専門会社様などが扱う「信用/信頼に値する商品」をお買い求め頂くのが最善と考えます (何度も何度も執拗にこのブログでその旨告知して促しています)。
・・それでも必ず毎年クレームしてくる人達が居るので参ります(涙)
だから引退を決めたとも言えるほどに相当堪えてしまいました(涙)・・マジッで世知辛い世の中です。
ちなみに前述のとおりある一つのマウント規格なのに様々な仕様で設計されているマウントアダプタが流通してしまっている以上、ある特定の位置で無限遠位置を決めるワケにもいかず、オーバーホール/修理作業のたびにちゃんと遠景を確認しつつヘリコイドのネジ込み位置や距離環固定位置を決めていますが、そもそもそれぞれのオールドレンズで設計している「ヘリコイドのネジ山勾配が千差万別」なので、一概に決まったオーバーインフ量で組み上げられないのが余計に拍車を掛けて批判対象になっている始末です(笑)
・・もぅこうなるとまな板の鯉状態で、どうぞお好きなように批判しまくって下さいませ。
詰まるところ信用/信頼が絶大なのはマウントアダプタの製造会社であり、日本の会社であって何処のウマの骨か分からないド素人崩れのプロになれなかったヤツがムリな逃げ口上を並べているに過ぎないとSNSで批判されまくりです(笑)
・・サッサとケツをまくッて逃げるが勝ちです (せめて晩年は幸せに過ごしたい)!(笑)
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ここからは再び出品個体に関する内容に戻ります。
↑上の写真は今回の出品に際し附属させている「非ピン押し底面化の処置を施したマウントアダプタ」の解説用写真を撮りました。ちゃんと製品本来に備わっていた「ピン押し底面」を右横に並べて (証拠として) 撮影しました(笑)
・・何しろいろいろ次から次へと疑われる (相当嫌われている)(笑)
ちゃんと1.3のヘクスレンチも附属したので後からオリジナルな状態に戻す時に「ピン押し底面を組み込む」事ができるように配慮しているつもりです。「つもり」と言うのはこれでもクレームが来るのでマジッで笑ってしまいましたが(笑)
人情とは残酷なモノで、商品が手元に届いて期待していた仕上がりや写りとは異なるとなれば全く酷いものである事無い事クレームしてきて全額返金を要求してくる人が居ます。確かに出品ページで「返品受付可」と設定してあるので、セッセと返品承諾して言い値でメッセージしてきた振込手数料まで加算して返金送金しています (はたして540円という振込手数料があるのか知りませんが一番高かった振込手数料の金額です)。
・・ご落札者様が一切損しない事が大前提だから(笑)
コイツ馬鹿だなと言いたければどうぞ(笑) そのくらいに当方がオーバーホール済でヤフオク! に出品するオールドレンズには既に当方自身の愛着が湧いているので、お使い頂く方が納得されないならどうしようもないのだから真摯に受け止めるべき・・とのポリシ〜です。
・・ポリシ〜の「ー」が「〜」なのは心の揺れを意味します(涙)
↑附属品のマウントアダプタの「ピン押し底面」は両面使いができるので「片側は凹み面で0.4㎜分の窪み」が備わるものの、反対側は「平面」なので、特に「M42マウント規格」などは絞り連動ピンの反応に対して意外にもこの設計で助かったりしています。
以前にもこのように述べたところ今度はまたメールが着信してオドロキましたが(笑)「マウントアダプタが優れている以前にオマエの整備はどうなんだ?」との一文で、さすがに笑ってしまいました。何に付けても卑下したいみたいです。
意外にもこの「僅か0.4㎜分の窪み」のおかげで結構助かっている人達がいらっしゃるのでこのマウントアダプタは手放せません。
ちなみにこのK&F CONCEPT製のマウントアダプタは第1世代では「金属製のピン押し底面をセットしていた」のに、第2世代以降は「プラスチック製/樹脂製のピン押し底面に替わった」ので、何とも中国人らしい発想と言うか処置ですが(笑)、現実的な話で当初は「片面の窪みが0.5㎜」だったのに対し、プラスチック製/樹脂製に替わってからは「0.4㎜」に変化しています。
従って上の2つの写真を見ても右横に並べて撮っているプラスチック製/樹脂製の「ピン押し底面」は、端っこの1箇所がだいぶ雑にカッティングされています (まぁ〜その辺はさすが中国製と言った感じですが)(笑)
そもそも第1世代とは製品全高 (つまりフランジバック計算値の残り分) が異なるのでまた面倒くさい話ですが・・詳細は当ブログの「補足解説」の中で説明していて「◎ 解説:M42マウント規格用マウントアダプタのピン押し底面について」をご参照下さいませ。第1世代〜第3世代までの相違点について解説しています (但し何度も言いますが当方はK&F CONCEPT社とは一切関わりがありません)。
↑一応手元にある「M42マウント規格」のオールドレンズ達を何本かネジ込んで確認した位置で「ちゃんと基準マーカーが真上に来る位置をマーキングした」ので、ほぼ近しい位置でちゃんとネジ込みが停止すると思います。こうしておけば/マーキングしておけば後から何回「ピン押し底面」の「平面側/凹み側」或いはそれこそ「ピン押し底面無し」と入れ替えても、その都度ちゃんとネジ込んだ「M42マウント規格」のオールドレンズ指標がちゃんと真上に来てご納得頂けるとの配慮です。
するとこのマーキングさえも「自分で刻み込みたいのでマーキングがないマウントアダプタと交換してほしい」とまで要求してきた人も居ました(笑) もちろん対応していますが・・マジッで世知辛いです(涙)
このように当方は戸籍上もちゃんとしたニッポン人なので(笑)、少なくともチビッとは「相手に配慮する思いやり大国ニッポン人」の如く実践しているつもりなのですが、そのような心根とは裏腹に空振り三振している状況です(笑)
↑ちなみに「ピン押し底面」とはこんな感じでマウントアダプタの外周3箇所に備わるヘクスネジを緩めると「M42マウントネジ部」が外せて、且つその下にセットされている「ピン押し底面」が取り出せます。絞り連動ピンの反応次第で上手く使えるよう「平面側/凹み側」を使い分けて組み込んであげれば、大方のトラブルで改善できています。
確かに中国製ですが、この発想はなかなか素晴らしいと感銘を受けています。今回の出品で附属させてあるマウントアダプタには別モノを組み込んであるので「非ピン押し底面」が実現できている次第です。
すると詰まるところこのマウントアダプタは「ピン押し底面の平面側と凹み側」と言う絞り連動ピンに対する2種類の使い分けが適うのに加えて、今回の附属品だけは「さらにピン押し底面無しにもできる」と言う一粒で三度美味しい的なマウントアダプタになっています(笑)
ちなみにこのマウントアダプタはそもそもオールドレンズ側マウント面から突出している、例えば当時のFUJICA製 (富士フイルム製) オールドレンズの「開放測光用の爪」或いはマミヤ光機製オールドレンズの「SXシリーズ」に備わる同じく金属製の棒状ピンの突出、また絞り環の縁などが当たらず干渉しないところまで配慮して作られているようなので (よく知りませんが一応検証済) とても重宝なマウントアダプタです。
↑最後にここから「プリセット絞り機構の操作方法」をご存知ない方の為にご案内していきます。このモデルには「プリセット絞り機構」と言う事前に撮影に使う絞り値を決めて設定する仕組みが備わっています。まぁ〜その仕組みが現実的には面倒くさいと言ってしまえばそれまでですが(笑)、実のところ多くの方は最小絞り値「f16」まで設定してどの位置でも絞り値を操作できるようにしているのが一般的でしょう。
ネット上をチェックすると「この当時は逆の使い方になっていた」とまるで意味不明な解説をしているプロの写真家が居ますが(笑)、そんな事はなく「至って撮影時の自然な動作に適っている仕組み」です。
そもそもそのように「納得できない解説に至ってしまう原因」とは何かと言えば「まさにプリセット絞り環と絞り環を真逆に捉えているから」とも容易に指摘できてしまい、それこそはたして本当にプロの写真家なのかと言いたくなります(笑)
このモデルに於ける「プリセット絞り環 (グリーンの矢印)」が上側の絞り値が刻印されている環/リング/輪っかになり、その直下のギザギザローレット (滑り止め) の環/リング/輪っかこそが「絞り環 (赤色矢印)」です。
・・この捉え方を逆に認識するとまさに意味不明な操作方法になりチョ〜面倒くさい(笑)
上の写真では「プリセット絞り値:f2.8」にセットしてある状態を意味します。フィルター枠外周の基準「▼」マーカー位置 (ブルーの矢印) が「現在の絞り羽根の開閉状況」を指すので、上の写真状態では完全開放しているのが光学系を覗き込まなくても分かります(笑)
合わせて「プリセット絞り環 (グリーンの矢印)」に1箇所だけ刻印されている「●」マーカーがプリセット絞り環なので当然ながら「現在設定されているプリセット絞り値を指し示している」次第です。
つまり上の写真の状態は「現在絞り羽根が完全開放状態にあり、且つプリセット絞りも開放f値のまま」なのがこれを見ただけで一目瞭然です。
するとプリセット絞り値も絞り羽根も開放状態となれば「プリセット絞り環も絞り環も両方とも動かない状態」なのが上の写真です。
ここから仮にプリセット絞り値を「f5.6」に設定すると仮定して説明を進めます。まずは「プリセット絞り値をf5.6に設定する操作」を行う必要があります (ブルーの矢印①)。
↑ギザギザのローレット (滑り止め) 側の環/リング/輪っかだけを指で保持しつつ、合わせてその直上の「プリセット絞り環」ももう一方の手の指で掴んで上の写真グリーンの矢印のように「プリセット絞り環側をマウント側方向に押し下げて回しf5.6位置 (グリーンの矢印) で指を離す」とカチッと言う音が聞こえて「f5.6位置に●マーカーが填まる」次第です。
するとこの時絞り羽根の状態はどうなっているか分かりますか?(笑)
基準「▼」マーカー位置にまだ「f2.8」が居るので「光学系を覗き込まなくても相変わらず完全開放状態のまま」と分かります。
つまりこの完全開放状態のままで「距離環を回してピント合わせを行う」のが一般的に撮影時の動作で至極自然な話です。
ピントが合ったらシャッターボタン押し下げ前に設定絞り値「f5.6」まで絞り羽根を閉じる必要があるので「単純に絞り環を回す」操作をブルーの矢印②のように行うと「プリセット絞り環側のギザギザローレットまで一緒に回る」ワケです。
だからこそ最初にプリセット絞り値を設定した際に「カチッとハマる音が聞こえていた」のが納得できるワケです。
↑設定絞り値「f5.6」で無事に撮影が終わったとします。別に戻さなくても良いのですがここでは念の為当初の開放f値「f2.8」までプリセット絞り値を戻すとします。
現状フィルター枠外周に刻印されている基準「▼」マーカーに「f5.6」が来ているので (ブルーの矢印)、絞り羽根は正しく「f5.6まで閉じている状態」なのが光学系を覗き込まなくても分かります (グリーンの矢印)。
ここから開放f値まで絞り羽根を完全開放させるのでブルーの矢印③方向に目一杯回せばカツンと音が聞こえて停止しちゃんと「f2.8」になります。
↑確かに絞り羽根はブルーの矢印の位置基準「▼」マーカーからして「f2.8」なのは分かりますが、この状態のままでは肝心なプリセット絞り値のマーカー「●」がまだ「f5.6」のままです (グリーンの矢印)。
そこで当初の逆手順ですが、ギザギザローレット (滑り止め) のプリセット絞り環側を保持したまま、合わせて絞り環側も指で保持しつつグリーンの矢印のように一旦マウント側方向に押し下げてから回して「f2.8」で指を離すとカチンと音が聞こえて填まります。
内部のスプリングが少々硬いので「プリセット絞りちの設定はガチャガチャ操作しにくい」ですが仕方ありません(涙)
↑まるで一番最初の状態に戻っただけの話ですが、プリセット絞り値も絞り羽根も完全開放状態なのが見ただけで判明します (ブルーの矢印とグリーンの矢印)。つまり開放f値「f2.8」からプリセット絞り環も絞り環も一切動きません (設定がそうなので動くはずがないのが一目瞭然)。
これが一連の「プリセット絞り値の設定操作」であり、何も逆の話などではなく至極撮影時の動きに適った操作方法でしかありませんね(笑)
こう言う話が「原理原則」であり、至って普通で自然な道理としか言いようがありません(笑)
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今回のモデルは鏡胴が「前部/後部」の二分割方式ですが、その間に「シム環」と言う無限遠位置の微調整の意味と、合わせて鏡胴「前部」との必要なスペース確保の意味があるパーツを介在させています。
そのシム環が今ドキのマウントアダプタやデジカメ一眼/ミラーレス一眼とのフランジバックに合致しないので、今回のオーバーホールではその微調整として「ヘリコイドのネジ込み位置を変更」しています。
合わせて当初バラす前の実写チェック時点でカメラのピーキングに反応するか否かギリギリだったピント面も確実に「カリッと鋭く改善させた」ので以下のオーバーホール後の実写の如くステキな写りに変わっています(笑)
光学系のクモリも反射防止黒色塗料のインク成分のせいでクモリが増大していましたが可能な限り除去しました。ピントが鋭くなってクリアになったとなれば最後は操作性だけですが、当初砂が混入していた関係からヘリコイドのネジ山が既に摩耗していて少々ザラつき感を感じるトルク感に仕上がっています。
それでも今までのこのモデル「初期型」からすれば十分に軽い方向のトルクで仕上げているので決して違和感には至らないと思います。
ちゃんと最後までネジ込めてフランジバックも適合させているマウントアダプタも附属させたので、何一つ危惧する内容が残っていないと思います。但し当初のオーバーインフ寮が5目盛分だったので、改善しても「1〜2目盛分のズレ」しか収められていないので、少々当方が仕上げるオールドレンズのオーバーインフ量としては僅かに多めの印象です。
・・是非ご検討下さいませ。なかなかの収差を楽しめる素晴らしいモデルです!
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離80cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f11」での撮影です。極僅かですが「回折現象」の影響が現れ始めて背景のお城部分にコントラスト低下が視認できます。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。