◆ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) FUJINON 55mm/f2.2《初期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産は
FUJICA製標準レンズ・・・・、
FUJINON 55mm/f2.2《初期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で当時のFUJICA製標準レンズの廉価版モデルたる「55mm/f2.2」の括りで捉えると累計で66本目にあたりますが、今回扱った個体「初期型」は実は初めてになります。他に「前期型」タイプを42本扱っていますし「後期型」は23本という状況です。

さらにその「前期型」の中で大変貴重な「総金属製」が6本に「一部金属製」が16本と筐体外装の材質や設計の相違でタイプを区分けしていますが、モデルバリエーションで捉えるなら大きく「前期型後期型」しかありませんでした。

それは筐体外装の材質がエンジニアリング・プラスチック製だったり金属製だったりの相違があっても、或いはそれら筐体外装の違いに伴い「合わせて距離環の駆動方法が変わっていたり」一部には指標値環の設計まで変わっていたタイプがありました。

しかしそれら幾つかの相違を把握したとしても根本的な「光学系の設計はモールド (一体成形) 方法が僅かに替わるだけで光学硝子レンズの設計に違いがなかった」為モデルバリエーションとして判定するなら大きく「前期型後期型」の区分けにしか成り得なかったと言えます。

・・ところが今回は全く別次元の話光学系の設計が別モノだったと言う発見でした!(驚)

実は今回扱った「初期型」・・この「初期型」と言う区分けは今回当方が初めて命名した分類なので、ネット上の解説などは一つもありません・・を知ったのは2020年で、それまでその存在すら知りませんでした (当然ながらネット上の何処にも解説が無い)。

たまたま海外オークションebayでこのモデル「FUJINON 55mm/f2.2」の出品状況をチェックしていてフッと気づいたのです。

・・ウン? 何で指標値環が2段に分かれているんだ???

しかもその掲載写真をよ〜く観察すると、写っている写真を見る限りは「まるで前玉が奥まった位置にセットされているように見える」と、今まで数多く扱ってきたモデルバリエーションの中に「1本も存在しないカタチ」を目の当たりにして考えてしまったのです。

何しろ相手は海外オークションebayの出品商品なのでなかなか確信を持って落札する気持ちになりませんでした。そもそもその時の出品商品は「指標値環のマーカーライン中心の位置で割れている」状況、且つフィルター枠まで割れていました。

それから数ヶ月後にやはり2020年でしたが運良く再び同じように「指標値環が2段に分かれている」個体を海外オークションebayで発見しましたが、同様に指標値環が割れており (マーカーライン中心で破断)、合わせて光学硝子にまで欠けがありました。

しかしこの2020年にたまたま発見した海外オークションebayでの出品個体のおかげで「指標値環が2段に分かれているタイプが顕在しその製造番号先頭2桁は24xxxx25xxxx」との大変貴重な情報を手に入れました。

ちなみにこの「FUJINON 55mm/f2.2 (M42)」だけはそのシャボン玉ボケの表出レベルからして貴重なので、ヤフオク! はもちろんの事海外オークションebayまでほぼ毎日市場チェックしています。そういう状況で出現率が極端に少ないとの意味で「稀少品」です。

↑上の一覧は以前にこのブログで解説した◆ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) FUJINON 55mm/f2.2《前期型:一部金属製》(M42) ※注意喚起の内容を含むで使った表を転載しています。

この一覧は「FUJINON 55mm/f2.2 (M42)」に於ける「M42マウント規格品」だけに限定した製造番号を調査し、そのタイミングでネット上で確認できた総数300本以上のサンプル写真をチェックして判定していった内容を基に一覧にまとめたものです。

・・さすがに調査が終わった時は疲れ切ってしまい相当に意識薄弱状態でした(笑)

すると今回初めて「初期型」と分類した製造番号先頭2桁「24番と25番」について、そのタイミングでは「一部が金属製に見えていた」為に右側の説明一覧でそのように明記しています (サンプル総数は300本を超えていますが製造番号の先頭2桁だけでカウントすると00番〜99番までの100種類しか考えられないのでその台数を示している)。

ここで一つちゃんと説明する必要がある内容があります。これら当時のFUJICA製オールドレンズ達の製造番号で各モデル別に割り当てられていた符番番号は「00番から順にシリアル値として増加していなかった」事です。

本来オールドレンズの製造番号は当時の多くの光学メーカーやカメラメーカーで「1つずつ加算式のシリアル値として符番」される場合と、突然ある特定の/任意の番号で出現して/発売されて、そこからシリアル値で増加していく符番ルールを執る場合の大きく2種類があります。

例えば今回のモデル「FUJINON 55mm/f2.2 (M42)」に限定するなら、ネット上の写真をどのようにチェックしても「白色のマスの番号」だけはその個体写真がいまだに発見できていません。その一方でカラーリングした符番2桁のほうは相当数が今現在も市場流通しています。

従って当時のFUJICAではこれら製造番号先頭2桁には何某かの意味合いが含められたある種の暗号的な使われ方をしていたのではないかと当方は捉えています。そのような解説を補強するような事実が上の左側一覧の中で「符番番号2桁を跨いでモデルバリエーションが顕在している」ワケで、そこに「前期型後期型」の区分けが製造番号先頭2桁の小さい番号/大きい番号のルールに則っていないのが歴然です (つまり混在している状況)。

すると何かしらの暗号的な意味合いがこの製造番号の先頭2桁だけに附随していたと捉えなければ当時の製造メーカー富士フイルムでさえ管理する方法がありません。

そのような考察から「当時のFUJICAはシリアル値で管理していなかった」或いは「先頭2桁以降のみシリアル値で符番していた」とみています。

前置きが長くなりましたが、そんな経緯で今回初めて扱った「初期型」は当方にとり絶大に調査/研究する価値がある個体だった事をここに明言させて頂きます。10年間でやっとの事で手に入れた製造番号先頭2桁「24番と25番」たる初期型 FUJINON 55mm/f2.2 (M42)」です (2つのどちらの番号なのかは伏せています)!(涙)

ちなみに製造番号先頭2桁「24番と25番」の前の番号である「12番〜14番と22番」に「前期型」のタイプが現実に複数流通しており、且つそれら番号の個体は「金属製鏡筒」である事実からして「決してエンジニアリング・プラスチック製の後期型に入らない」との判定から「前期型」と捉えています。

これは現実に/事実として「後期型の鏡筒はエンジニアリング・プラスチック製で、且つヘリコイドオス側ネジ山がそのエンジニアリング・プラスチック製の鏡筒外壁に用意されている」ので、金属製で用意されていた「前期型の鏡筒」と明白に「ヘリコイドのネジ山数とその勾配が100%異なる」事までちゃんと確認できているから「明確に前期型と後期型は分類を分ける必要がある」との結論に達しています。

どうしてヘリコイドのオス側ネジ山の勾配が関係するのかと言えば、それは「後期型の光学系第1群前玉はエンジニアリング・プラスチック材にモールドされてハメ込み式でセットされているだけだから」です。

逆に言うなら金属製鏡筒の「前期型」では光学系第1群の前玉は「金属材にモールドされていて鏡筒にネジ込む固定方式」と一般的なオールドレンズと同一のセット方法を採っているからです。

このような事柄一つ一つが「モデルバリエーションでの区分けの最大の根拠」として原則的な考察に到達するワケで、決してテキト〜に決めつけて表現しているワケではありません (SNSでそのように批判されていますが)(笑)

  ●               

ここからは今回の個体から離れて「そもそもモデルバリエーション上の前期型〜後期型の見分け方とは?」まで含めて、今まで解説してきた内容から転載します。

先ず一番最初に「皆様がネット上写真だけで判定できる外見上の前期型/後期型見分け方」を説明します。どうしてそこまで執拗に「前期型/後期型」の分類にこだわるのかと言えば、前述のとおり最終的には「光学系の特に前玉の格納方法の相違」がありますが、そもそも鏡筒の材質が「アルミ合金材なのかエンジニアリング・プラスチック製なのか?」と言う要素に対して最終的に「ヘリコイドの駆動/距離環操作時の感触がガラッと変わるから」とも指摘できます。

例えば金属製のヘリコイド (オスメス) なら相応にトルク感を指で感じつつ操作できますが、その一方エンジニアリング・プラスチック製の鏡筒だった場合はヘリコイドのオス側だけが金属ではないので (メス側はアルミ合金材) 必然的に一般的な金属同士のヘリコイド (オスメス) と同一の勾配でネジ山を設計できません。

それにプラスして今現在あたかも当たり前に使われている「白色系グリース」を塗布した場合エンジニアリング・プラスチック材のネジ山を駆動すると「距離環の操作感はツルツルした印象の感じ方」になり、まるでツーツーの操作性です。

当方は基本的にライカレンズのトルク感が最も素晴らしいと感銘を受けているので、それを鑑みると「白色系グリース」をエンジニアリング・プラスチック材のネジ山に塗布した「ツルツル感」はどう考えてもオールドレンズの操作性として許せません!

しかも金属材のヘリコイドネジ山に比較して「エンジニアリング・プラスチック材のネジ山に塗布した白色系グリースの経年劣化」は意外にも早く1年〜数年で変化してしまい、入手時よりもさらにトルク感を感じない操作感に変化します。

・・このような要素から当方は「白色系グリース」を敵視しています!

そもそも数多くのオールドレンズが開発/設計され製産されていた当時に使っているのが「黄褐色系グリース」なので、現在に流通している「白色系グリース」が想定外なのは誰が考えても容易に認識できると考えるのですが、皆さんは気にならないんですね・・(涙)

・・オールドレンズを慈しむ者としてなかなか哀しい現実です(涙)

そのような背景があるので当方はこのモデルの「前期型/後期型」にかくも執拗にこだわるのです。

↑上の写真はその「前期型/後期型」の最も分かり易い外見上の区別を解説しています。一番適確なのはレンズ銘板と光学系第1群 (前玉) モールドとの材質の相違をチェックする事で判定が適うと考えます。

或いは「後期型」の場合レンズ銘板と遮光環部分が「一体成形で分割していない」ので、それを以て判定材料にするのも分かり易いです。

確かに「後期型」のほうが特にエンジニアリング・プラスチック製の距離環に割れが発生しない設計に変更されているので、現在のヤフオク! 出品/落札状況をチェックしていても「後期型のほうが有利」と言う側面がありますが、その一方で「光学系第1群前玉の格納方法の問題」と合わせて「白色系グリースが塗布されていた場合」があるので、なかなか悩ましいところです。

すると特に右写真の「後期型」の場合は左写真のように前玉までエンジニアリング・プラスチック製の格納筒にモールド成形されてしまったので「同じくエンジニアリング・プラスチック製の鏡筒にハマっているだけ」なのが経年の揮発油成分の侵入に対しほぼ無防備状態と言える設計に変更されてしまいました。

この前玉の直前に位置する「フィルター枠/レンズ銘板」わ締め付け固定する固定ネジで圧着しているだけなので、確実に金属鏡筒にネジ込んでいる金属製モールドの「前期型の前玉」とは明らかに封入レベルが別世界です

これはそもそも「後期型」では鏡筒自体がエンジニアリング・プラスチック製なので前玉と鏡筒の両方が「経年の揮発油成分に対してほぼ無防備」と指摘できます。

従って「後期型」は定期的にメンテナンスを施し内部に廻る経年の揮発油成分が特に光学系内に侵入しないよう気を配る必要があります (コーティング層の経年劣化が促される懸念から)。

ちなみに当方が扱った「後期型」はヘリコイド (オスメス) のネジ山に「黄褐色系グリース」を使い、且つ経年劣化の耐性が高いグリースを使っているので「白色系グリースの場合の劣化」ほど神経質に考える必要がありません(笑)

↑上の写真の解説はこのモデルに於けるモデルバリエーションで言う処の「前期型」について その筐体材質を解説しています。「前期型」の括りの中でも各部位の外装に材質の相違、或いは設計の相違が顕在するので今までに知り得た違いを列記しています。

《前期型に於ける筐体外装部位別の材質/種類の別》
※「前期型」はレンズ銘板と遮光環が分割している
※「後期型」はレンズ銘板と遮光環が一体成形のプラスチック製
フィルター枠:金属製
距離環:金属製
距離環:エンジニアリング・プラスチック製 (分割ハメ込み式)
距離環:エンジニアリング・プラスチック製 (一体モールド成形)
距離環:エンジニアリング・プラスチック製 (一体モールド成形/アルミテープ)
指標値環:エンジニアリング・プラスチック製
指標値環:金属製
指標値環:金属製 (イモネジ穴1箇所位置変更タイプ)
絞り環:金属製
絞り環:エンジニアリング・プラスチック製
マウント部:金属製

↑上の写真は今回扱った個体たる「初期型」の筐体外装を説明しています。

《初期型に於ける筐体外装部位別の材質》
※「初期型」はレンズ銘板と遮光環が分割している/遮光環がより深い
フィルター枠のネジ部分:金属製
フィルター枠の台座部分:エンジニアリング・プラスチック製 (ハメ込み式)
距離環エンジニアリング・プラスチック製 (一体モールド成形/アルミテープ)
指標値環:エンジニアリング・プラスチック製 (このモデルで唯一の2段)
絞り環:エンジニアリング・プラスチック製 (前期型と同一設計)
マウント部:金属製 (前期型〜後期型全てに共通設計)

この通り「初期型」は筐体外装の材質のみならず「設計からして全く異なる」ので、もしも仮に他の個体から転用するとなればせいぜい「絞り環とマウント部だけ」と言う話になります。

逆に言うなら「絞り環とマウント部だけがその後の前期型に設計が継承された」とも指摘できます。

・・そこで考察が閃きました。詰まるところ光学系の設計が違う?!(驚)

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型:
製造番号:24xxxx〜25xxxx
プラスティック製:フィルター枠台座/距離環/指標値環/絞り環
金属製:フィルター枠ネジ部/マウント部
距離環指標値:印刷 (アルミプレート板に印刷)
距離環成形材質:エンジニアリング・プラスチック製 (金属製芯材)
鏡筒及びヘリコイド (オス側):金属製

前期型-I:
製造番号:・・現在検証中・・
プラスティック製:なし
金属製:筐体外装/内部構成パーツ全て
距離環指標値:印刷 (アルミプレート板に印刷)
距離環成形材質:金属製
鏡筒及びヘリコイド (オス側):金属製

前期型-II:
製造番号:12xxxx、13xxxx〜、34xxxx〜49xxxx
プラスティック製:距離環/指標値環/絞り環
金属製:フィルター枠/マウント部
距離環指標値:印刷 (アルミプレート板に印刷)
距離環成形材質:エンジニアリング・プラスティック材 (金属製芯材)
鏡筒及びヘリコイド (オス側):金属製

後期型:
製造番号:5059xxxx、6973xxxx、8194xxxx
プラスティック製:距離環/指標値環/絞り環
金属製:フィルター枠/マウント部
距離環指標値:直接刻印
距離環成形材質:エンジニアリング・プラスティック材のみ
鏡筒及びヘリコイド (オス側):金属製

・・モデルバリエーションを更新して今回扱った「初期型」を加えました。

なお「前期型−I」の総金属製、或いは一部金属製について製造番号を「検証中」と表記していますが、同業者たる『転売屋/転売ヤー』の狙い撃ちをできるだけ回避する為にワザと故意に告知しません(笑)

今回扱った「初期型」も確かに2〜3年に1本出現するかどうか的な稀少品ですが (当方は10年間で今回初めて)、あくまでも構造面での違いで捉えるしかなく、そもそも光学系の相違については「その描写性の違いが一切不明」である点を考慮する必要があります (前期型後期型と分けて実写を調査できないから)。

実装されている光学系はオールドレンズの中でも特異な4群4枚のフジノン型ですが、右構成図は「前期型/後期型」の個体をオーバーホールした際に各光学硝子レンズの清掃時に当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測してトレースした構成図です。

一方こちらの右構成図は今回扱った「初期型」をオーバーホールの際に完全解体した時、各光学硝子レンズの清掃時に当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測してトレースした構成図です。

当然ながら同じ4群4枚フジノン型構成なのは当たり前ですが、パッと見で同一に見えてしまってもよ〜く観察して下さいませ。

実は「第1群前玉と第2群との間/間隔が大きい」と言うのが歴然です。

しかし実際に各群を計測すると「前玉の外径サイズが前期型よりも小さい」点と合わせて最もオドロキだった「何と前玉は凸メニスカスだった!」のが今回の最大の発見です!(驚)

メニスカス
光学硝子レンズで片方が凸状に歪曲/曲率を有し、且つ裏面側も歪曲/曲率を有しつつも硝子レンズの中心部の厚みが最も厚いレンズを「凸メニスカス」と呼び、逆に硝子レンズのコバ端が最も厚いレンズ (中心部分が最も薄い) を「凹メニスカス」と呼ぶ。

従って上の右構成図たる「初期型」には硝子レンズの中心部が極僅かに凹んでいる曲率の「凸メニスカス」に対し、一つ前の「前期型/後期型」の前玉は「凸平レンズ」で裏面側には歪曲/曲率が無くて平坦という相違が発見でした。

それが何を意味するのかと言えば必然的に後群側に入射光を (絞りユニットを通過して) 渡す時、中心が凹んでいる分屈折がある為「前期型/後期型と同じ間隔/距離のまま設計できない」のが歴然で、だからこそ光学系第2群との間の間隔が広く設計されていたのが納得なのです。

当然ながら光学系後群たる「第2群第3群」の曲率や厚みなどもビミョ〜に「前期型/後期型」とはその計測値が明確に違っていました。このように言うとまたSNSで公然とウソを拡散していると批判されるので解説を続けます(笑)

↑上の写真は「前期型」の光学系を取り出した時に撮影した写真で、左端から第1群 (前玉) 〜第4群 (後玉) の順で並べています。4群全て単独の光学硝子レンズなので貼り合わせレンズが存在しません。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

↑一方こちらは今回扱った「初期型」の光学系を取り出して並べて撮影しました。同じように左端から光学系第1群 (前玉) 〜第4群 (後玉) へと順に並べています。このままパッと見で考察するとまるで同じように見えますが、それぞれを並べて比較していくとまた違いが分かります。

↑今度は光学系第1群の前玉だけをピックアップして並べてみました。左側が今回扱った「初期型の前玉」で右側が「前期型の前玉」です。

ちなみに「後期型」は前述のとおりエンジニアリング・プラスチック製の格納環/リング/輪っかに一体成形のモールドなのでここではご案内しませんが光学硝子レンズの設計は「前期型」と100%同一です。

するとグリーンのラインで示していますが右側の「前期型」の高さを並べた時に同一にするよう紙を重ねて高さ調節して撮影しています。

この時、明らかに鏡筒にこの前玉がネジ込まれて格納された時「下側のグリーンのライン」で面が同一なのに対して上のほうのグリーンのラインを見れば「初期型のほうがより突出した位置に前玉が格納されている設計」なのが分かります。

合わせて前述構成図の解説のとおり、前玉の赤色矢印で指し示した位置は「初期型が極僅かに凹んでいる」に対し「前期型は平坦」と言う設計上の違いまで明らかです (ちゃんと計測している)。

↑今度は同じ前玉を表面を上に向けて並べて撮影しました。するとグリーンのラインで示したのは「前玉の最も突出している頂点を同位置になるよう並べている」事を解説しています。

・・何を言いたいのか???

つまり一つ前のひっくり返して並べた写真だけを見ると、下手すれば「前期型のほうが光学系第2群までの距離/間隔が大きい」との錯覚に至りますが、正しくは上の写真のように「格納する際のネジ山の位置が違う分前期型のほうが深い位置にセットされるので第2群との距離/間隔はむしろ狭くなる」との話に至ります。

従って前述の構成図の解説のとおり「初期型のほうが前玉は第2群との距離/間隔が大きくて離れている」との結論に至ります。

実際のところ光学系第1群 (前玉) 〜第4群 (後玉) までのそれぞれの格納位置すらちゃんと計測して構成図をトレースしているので現実的に離れているのか近いのかの相違は明確です(笑)

ちなみにこの光学系第1群 (前玉) の外径サイズを計測すると「初期型25.46㎜」に対して「前期型26.12㎜」なので、明らかに「▲0.66㎜」の違いがありました。

↑上の写真は今度は光学系後群に含まれますが、光学系第2群の両凹レンズを並べて比較しました。するとやはりグリーンラインで明白なとおり「初期型のほうが厚みが少ない (但し全高は同一)」のが判明しました。実際は凹み面の表裏もその曲率が全く違います。

↑今度は同様に第3群です。ちょっと分かりにくいですが計測すると「初期型のほうが厚みが極僅かに少ない」のが判明します。ちなみに外径サイズは一つ前の光学系第2群と共にこの第3群も同一径で「光学系後群格納筒にスッポリと落とし込み方式でセットされるから」と指摘できます、この2つの群 (第2群第3群) には締め付け固定する締付環が存在しません。

↑最後の光学系第4群 (後玉) です。この後玉だけが互いに全く同一の計測値でした。つまり第1群 (前玉) 〜第3群までで徐々に入射光の集束を制御して最後の後玉では同一レベルに収めている設計ではないかと悪い頭で考えています(笑)

↑次にここからは筐体外装の互いの比較を行っていきます。上の写真のパーツは「フィルター枠」ですが左側が「初期型」で右側が「前期型」です。

解説のとおり「初期型 (左)」はフィルター枠のネジ山部分だけが金属製で台座のほうはエンジニアリング・プラスチック製です。おそらくパチンとハメ込み式になっていると考えますが、既にイモネジの穴にヒビ割れが入っているので今回派敢えて解体しませんでした (割れると困るから)。

ちなみに左側「初期型」でグリーンの矢印で指し示している箇所には締付ネジのイモネジがネジ込まれますが、3箇所の均等配置であるものの「そのうちの2箇所にヒビ割れ」があります。

しかしご覧のようにその箇所は「材の厚みが充分に在る」為に実は裏側をチェックしたところ「外側のヒビ割れは内側まで一切到達していなかった」事が判明し、そのような配慮を施した設計なのが分かりました・・さすがです!(驚)

↑今度はフィルター枠の次となれば「距離環」なので、同様左が「初期型」で右が「前期型」です。現在の市場流通品でとても多くの個体が「前期型はヒビ割れしている」状況ですが、その因果関係は「グリーンの矢印で指し示した芯材 (白っぽく写っている箇所) たる金属環/リング/輪っかにパチンとハメ込み式だから」と指摘できます。経年の材の収縮で芯材の金属が同じように収縮しないので「割れが入る」と言う原理です。

一方「初期型」は同じように芯材が金属であるものの「一体成形のモールド式」なので割れが入りません。

さらによ〜く観察すると距離環の駆動域を決めている「制限壁」と言う出っ張り壁部分 (上の写真で互いに右下辺りの下部に出っ張りがある) の領域が全く違うので「距離環の駆動制御まで設計が異なる」事になります。

↑今度は指標値環です。左側の「初期型」だけが明確に「2段になっている」のが明白です。互いにエンジニアリング・プラスチック製ですが、どう言うワケか海外オークションebayで発見した個体は基準「●」マーカーの箇所が割れて破断していました。その一方で右側の「前期型」の個体で多いのは「イモネジ用の穴の箇所にヒビ割れ/破断している個体が多い」状況です。

なおこの次のマウント部に関しては「初期型/前期型」共に金属製ですが、合わせてその設計まで全く同一です。

今回扱った個体「初期型」の絞り羽根も「前期型/後期型」と100%同一仕様の設計ですが、ご覧のとおり錆びまくっていて一部はボロボロになってしまい薄くなってしまった箇所を反射防止黒色塗料で着色しています (左側の絞り羽根)。

右側の絞り羽根は赤サビのままセットされていました。

当然ながらいくら何でもこれでは気持ち良く使えないので「今回のオーバーホールでは絞り羽根を入れ替えた」事を明かしておきます(笑)

合わせていつもの事ですがマウント部内部で使う「」をご覧のように過去メンテナンス時に強制的に向きを曲げて変形させていました(笑)

この「」は絞り環に固定されるので鏡筒から飛び出てきている「制御アーム」をガシッと掴んでいます。

要は過去メンテナンス時の時点で既に「絞り羽根開閉異常」が発生していたのを「ごまかしの整備」で変形させて仕上げている次第です。

当然ながら今回のオーバーホールではいちいち面倒くさいですが (何で当方が直さなければイケナイのか毎回頭に来ますが) 適切な正しい角度に戻してセットしています。

なお蛇足ですが、ヤフオク! ではなくてもう一つの某有名処で相変わらず「金属製」を謳って「FUJINON 55mm/f2.2 (M42)」を3万円以上の高値で何本も出品していますが、その根拠を「完成品の総重量160g」を根拠にしています。それは以前当方がオーバーホール済でヤフオク! 出品した「まさに総金属製の個体」を当ブログに掲載した際にいつも載せている以下の仕様一覧を見て「総金属製は165gだ!」と認識したようです(笑)

その時のブログはこちらFUJINON 55mm/f2.2《前期型:総金属製》(M42)』です。この時の出品個体の仕上がり総重量は正しくは「165.5g」だったハズなのですが、どういう事か「165gが総金属製の総重量」と捉えたようです(笑)

しかし今回の「フィルター枠のネジ部とマウントだけが金属で他全てがエンジニアリング・プラスチック製の総重量は?」どうでしょうか?(笑)

以下の仕様一覧でちゃんと実測した総重量を載せています。「初期型の総重量159.5g」でした。その差「僅か6g」です。

逆に言うならこれだけ筐体外装のほとんどがエンジニアリング・プラスチック製なのに、それでも「159.5g」に到達している事実を知った時、そもそも「製品総重量だけを根拠にして金属製の判定を下すことにムリがある」ことをその某有名何処の出品者は気にしていません(笑)

もっと言うなら今回の「初期型」はおそらく当時の富士フイルムに於いて「まさに廉価版の格付で製品設計をスタートし製品化した」ものの、その後の「前期型」でエンジニアリング・プラスチック材の配合に問題を来し、さらに「後期型」が登場するまでの間に幾つもの改善品を送り出したそのトータルの製品戦略として考えれば・・まるで製造コストは逆に消費しまくってしまいとても廉価版の評価に値しなかった・・とも受け取れるくらいにあ〜だこ〜だ仕様変更しています。

その意味で、例えば今回扱ったこの「初期型」の内部構造をちゃんと検証しないままに「単に完成時の製品総重量だけを根拠に据えても、そこに何の信憑性も附随しない」と指摘できます(笑) 何故なら、内部構成パーツの相違点やそもそも距離環の駆動方法が違っただけで総重量の加減は互いに相殺し合うのでたいした根拠を持ちません(笑)

自ら整備して出品するならせめてそのくらいの認識力を発揮してもらいたいものです。そうでないと以前当ブログに掲載した時のように「まるで駆け込み寺の如く問い合わせしてくる人」をこしらえているようなもので、本人にすれば金属製と信じて3万円以上を払ったのに、落としてキズが付いても削れた箇所が銀色にならなかったのを知って相当落胆したようです (つまり金属製ではなくエンジニアリング・プラスチック製の距離環だった)(涙)

その意味で単にヒビ割れが無いからとか、その時の総重量が「160g」だからとか謳っている要素は、残念ながら何の信憑性にも至っていません。真に金属製の距離環ならテーブルの上から3cm位の高さで軽く落としてみれば良いのです。金属製なら「カランカラン」ととても美しい響きで回り続けます。一方でエンジニアリング・プラスチック製なら単に「コトン!」と響くだけです(笑) そんな簡単な検証もせずに単純にヒビ割れが無くて「160g」との根拠は、例えば「前期型−II後期型」にかけて「再び一体成形モールド式のエンジニアリング・プラスチック製距離環に戻った」からこそ、ヒビ割れが無いのが当たり前の話なので(笑)、それが決して金属製の根拠ではないのが明白です。

・・シッカリしてほしいですね(笑)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はFUJINON 55mm/f2.2《前期型:一部金属製》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。今回初めて扱った「初期型」モデルで、フィルター枠のネジ山部分とマウント部だけが金属製で、その他筐体のほぼ全てがエンジニアリング・プラスチック製です。

ネット上何処を探しても「FUJINON 55mm/f2.2 (M42)」で「初期型」の存在を解説しているサイトなどありませんが(笑)、当方がそのように分類した理由は今まで解説してきた「光学系設計の違い」或いは「筐体外装の大きな設計の相違」の他、実は「内部に使われている黄鋼材の非磁性な締付ネジの多さ」も合わせて「初期型である点を補強する有力な材料の一つ」と判定を下したからです。

何故なら、後の時代には圧倒的に磁性タイプの締付ネジが多用されるように時代が変遷しますし (今現在も同じですが)、もっと言うなら当時は「マイナス溝の締付ネジばかりを多用」でしたが、その後も含め今現在も「プラスの締付ネジ」が当たり前です。

こういう内部で使っている小さなネジ類も大凡の使用していた時代を探る手がかりになったりします。少なくとも「黄鋼製のマイナス締付ネジ」が主流だったのは相当昔だと考えます。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

但し光学系前後群共に「極微細な点キズは逆に多めの印象」で、パッと見で「微細な塵/」に見えてしまいますが「極微細に点状キズ」です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。同様「極微細な点状キズ」が多めの印象です。そもそもこのモデルは光学系の特に「前玉と後玉のコーティング層にクモリが生じ易い」欠点があるので、それを鑑みても「初期型の本来の造りたる設計の光学系を実装しているのが大きな安心材料になる」とも受け取れます。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大28mm長1本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前後玉に点状カビ除去痕複数残っています)
(前後群内に微細な経年の拭きキズ数本あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系前後群共に上記極微細な点状キズが多めに残っています。パッと見で微細な塵/埃に見えまますがほとんどが極微細な点状キズです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑上の写真解説のとおり「開放測光用の爪」がマウント面から飛び出ています (グリーンの矢印)。当時のFUJICA製フィルムカメラ「ST-801/901/AZ/1」などに装着すると開放測光機能がご使用頂けます。

もしもマウントアダプタ (ピン押し底面タイプ) 経由デジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着される場合は、ご使用になられるマウントアダプタによってはマウント面の「開放測光用の爪」が当たって擦れるので/最後までネジ込めないので切削する必要があります

申し訳御座いませんが切削にはご落札者様自身で行って下さいませ (当方では切削しません)。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

前述した赤サビの出ていた絞り羽根も含めて「全取替」したので絞り羽根に問題は一切ありません。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感強め)。
・フィルター枠のネジ部とマウント部を覗く筐体外装の全てがエンジニアリング・プラスチック製のため特に絞り環操作時に相応の頼りなさを感じますが造り自体はすぐに割れが入るような簡素ではなくしっかり造られている事をオーバーホール時確認済です(後に登場した前期型とは違う造りです)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・フィルター枠の外周にあるイモネジ3箇所のうち2箇所の穴に微かな割れが入っていますが裏側に到達していないのでこれ以上割れません。また同じくフィルター枠に2箇所打痕があり修復痕として残っています。フィルターの特に装着時にはフィルターを反時計方向に回しつつちゃんとネジ山が噛むことを確認後ネジ込むようご留意下さいませ。できれば外さないほうが無難です(コツが必要なので)。
・マウント面にも引っ掻きキズなどが複数残っています(着色済)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体『FUJINON 55mm/f2.2《初期型》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑筐体外装は冒頭解説のとおりほとんどがエンジニアリング・プラスチック製なので、合わせて距離環には「アルミテープに印刷された距離指標値」である分、経年のキズや剥がれが残っています。

↑冒頭解説のとおりフィルター枠の台座部分のエンジニアリング・プラスチック製に備わる「3箇所のイモネジ」のうち2箇所の穴にご覧のような微細なヒビ割れ (赤色矢印) があります。既に解説済ですが裏側にまで到達していないのを確認しているので将来に渡りこのヒビ割れが広がる懸念はありません。

↑さらにフィルター枠のネジ山部分にはご覧のような過去の打痕修復箇所が残っており、フィルターの着脱が可能なものの「特に装着する際にコツが必要」です。装着の際は必ず反時計方向に少しずつ回しながら確実にネジ山が咬み合って、且つ「フィルターが水平」なのを確認してからネジ込んで下さいませ。下手にネジ込むと噛んでしまい外せなくなります。

↑マウント部の一部にも引っ掻きキズがあり着色しています (赤色矢印)。

真円で繊細なエッジを伴うとても素晴らしいレベルの「シャボン玉ボケ」をちゃんと表出できる数少ないオールドレンズの一つです。確かに旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズを手に入れれば同様のシャボン玉ボケ表出が適いますが、如何せんその他の一般的な写真の写り具合で「圧倒的に立体感を残せるのはFUJINONのほう」なので、逆に言えば平面的な画にしか至らないのがある意味Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズ達の悲しい欠点とも言えます (おそらくPrimoplanを除いて立体的な空間表現が苦手)。

少なくとも2〜3年に1本レベルの大変希少な「初期型」で、且つ光学系の今後の劣化まで配慮すればなかなかありがたい光学系の設計との捉え方もあるので是非ご検討下さいませ。

↑当レンズによる最短撮影距離60cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮影しています。

↑f値は「f8」に上がりました。

↑f値「f11」です。もう相当絞り羽根が閉じてきていますがまだまだ「回折現象」の影響を感じません。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。