◎ PORST (ポルスト) COLOR REFLEX 50mm/f1.2 UMC X-M G(AX)

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オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


富岡光学製の55mm/f1.2モデル (PKマウント) は何本か今までに扱いましたが、今回扱う富士フイルム製50mm/f1.2 (AXマウント) は初めてです。貴重なモデルのオーバーホール/修理
ご依頼を賜り、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとう御座います!

PORST (ポルスト)」はレンズやフィルムカメラなど光学製品に対するブランド銘で、会社は1919年にHanns Porst (ハンス・ポルスト) 氏によって旧ドイツのバイエルン州ニュルンベルク市で創業した「PHOTO PORST」になり光学製品専門の通信販売会社です。

PORSTは旧東ドイツの会社だとよく間違われますが、そもそもバイエルン州は東西ドイツ分断時期に於いてアメリカ統治領だったので旧西ドイツになり、別に存在する「Porst市」とは違います。

ブランド銘としては当初1930年〜1950年代にかけては、自身の名前の頭文字を採って「HAPO」ブランドを展開していました。
その後「PORST」になりますが、自社での開発や製造を一切せずにすべての商品を光学メーカーのOEM供給に頼っていた通販専門商社になります(最後期にはcarenaはブランドも追加されている)。
(左写真は1960年当時の500世帯分の従業員社宅も含めた本社屋)

大戦により社屋も含め全て破壊されましたが、幸運なことに13万人もの顧客台帳が焼け跡から回収でき、それを基に戦後PORSTの再建をします。1960年には長男のHannsheinz Porst氏に会社を譲渡し最盛期を迎えます。

この時に「carena (カリーナ)」ブランドが商標登録されています (carenaはHanns Porst氏の末娘の名前/会計事務所を創設)。しかしHannsheinz Porst氏は1964年に脱税容疑で逮捕され1,860万円の追徴課税と共に罰金490万円を払い釈放されました。さらに1968年にはスパイ容疑をかけられ有罪になり実刑となりました。2年9カ月服役し釈放されましたが既に会社の勢いは失せており、1978年に社長を退任します。その後従業員の為に用意した500世帯分の社宅も含め、1981年から会社の売却を試みますが失敗します (翌年1982年に社長復帰)。

なお、carenaブランド銘についてはドイツ語サイトの「こちらのページ」にモデル一覧があるので信憑性が高いです。

1996年にはベルギーの投資会社に買収されますが2002年に倒産しPixelnetを経てRingfotoに商標権が移譲されました。

今回扱うPORSTブランドの「COLOR REFLEX」シリーズは、1980年に発売された富士フイルム (当時のフジカ販売) 製一眼レフ (フィルム) カメラ「AX-1」から始まるシリーズの海外輸出向けOEMモデルにセット販売されていたオールドレンズのシリーズです。


一段目
左端から当時PORSTが発売していた「CR-3/CR-5/CR-7 MULTI PROGRAM」モデルです。

二段目
左端よりOEM元のフジカ製「AX-1/AX-3/AX-5」モデルです。

OEM元のフジカ販売が、1985年に発売した輸出専用機「STX-2」を最後に一眼レフ (フィルム) カメラ事業から撤退してしまった為、以降のPORSTへの供給は他社製品に変わります。

同じPORSTからは、先にPKマウントモデルとして「COLOR REFLEX MC AUTO 55mm/f1.2」が登場していましたが、こちらは富岡光学製のOEMモデルになります (左写真)。

焦点距離も光学系構成も異なるのでその描写性も必然的に全く別モノの写りです。

今回扱う『PORST COLOR REFLEX 50mm/f1.2 UMC X-M G (AX)』は、原型モデルがやはり富士フイルム (フジカ) 製モデル「EBC X-FUJINON 50mm/f1.2 DM (AX)」になり全くの同一品です。
(左写真)

当然ながら光学系構成も同一なので描写特性も同じ写りになりますがコーティング層だけはその蒸着が僅かに異なります。

今回のモデル『PORST COLOR REFLEX 50mm/f1.2 UMC X-M G (AX)』の「UMC」は「Ultra Multi Coating」の略であり、富士フイルムの「EBC (Electron Beam Coating)」と
同じ当時としては驚異的な11層にも及ぶ蒸着のマルチコーティングです (PORST説明書より)。

また「X-M」の「X」は富士フイルム (フジカ) のバヨネットマウントである「AX」を意味し「G」は光学硝子レンズの実装枚数「7枚」を表した暗号です (F:6枚/G:7枚)。

従って、レンズ銘板をすげ替えただけの筐体意匠が同一な純然たるOEMモデルのように受け取られがちですが、実はバラしてみると7群ある光学系硝子レンズ (各群表裏で合計14面) に蒸着されているコーティング層の種類が違います。それゆえ、パッと見でフジカ製の原型モデルと今回のPORSTとではコーティング層が放つ光彩の色合いが多少違って見えるワケですね。

光学系は7群7枚の拡張ウルトロン型構成で、従前の6群7枚ウルトロン型構成から後群側の第4群貼り合わせレンズを分離させる事により、コーティング層蒸着面を増やして解像度の向上と屈折率を稼いだ考え方のようです (第4群は貼り合わせレンズではなくほんの僅かに隙間/空間が用意されている分離状態の設計なので7群7枚)。

貼り合わせレンズ
2枚〜3枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群

なお、OEM元のフジカ製X-FUJINONモデルに附随する「DM」表記は「Dial Mode」の略なので、当時発売されていた一眼レフ (フィルム) カメラ「AX-1/AX-3/AX-5/STX-2」に装着時のみ全ての自動絞り機能 (プログラムモード/シャッター速度優先/絞り優先/マニュアルモード) が働きます (PORSTでも同じ)。非DMタイプの場合は「絞り優先/マニュアルモード」に
限定されています (絞り環に刻印のロックボタンを装備しているので判別できる)。




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から順にシャボン玉ボケが滲んで円形ボケを経て背景ボケへと変わっていく様をピックアップしています。開放f値が「f1.2」で明るく、被写界深度が非常に狭いことからシャボン玉ボケのエッジ (輪郭) も明確になりにくく、且つ誇張気味に表出せず口径食の影響などもあり真円のキレイなシャボン玉ボケ表出は苦手です (他社光学メーカー品でも似た傾向を示す)。

二段目
左側2枚は背景ボケの中で収差が酷い実写をワザと選びました。これはこれでこの収差ボケを逆に活かして使えてしまうシ〜ンも十分あるかも知れません。また右側2枚はピント面の鋭さよりもマイルド感タップリな画造りをピックアップしています。カリカリで鋭いだけの描写ではなく、配色や光の状況などを柔らかくマイルドに仕上げてくれる要素も「f1.2」の楽しみ方と言えます。特に右端の動物毛の表現性は、このモフモフ感がたまりませんね(笑)

三段目
左から4枚全てをダイナミックレンジの広さを表す実写としてピックアップしました。コントラストの強弱感にも違和感を感じずに、然しちゃんとインパクトを以て表すべきコントラストは維持されている部分が余裕のスペックを示していると思います。また発色性もビミョ〜な色再現性にもシッカリ反応し、レンガの淡いライトト〜ンも確実にこなしています。

四段目
ガラス質や金属質、或いは木質感など被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力に優れ、前述のダイナミックレンジと相まり人肌の表現能力も高く光学性能の高さが覗えます。被写界深度は相当狭いレベルなのでピント合わせには苦労するかも知れません (そこが逆に楽しみでもありますが)。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回の個体はオーバーホール/修理ご依頼として承りましたが、当初バラす前の状態は距離環が固く固着している状態で、相当なチカラで回さなければ動かない状態でした。

左写真はバラした直後の写真で、まだ溶剤などで洗浄する前を撮影しています。

するとヘリコイド (オスメス) や基台のネジ山はご覧のように「濃いグレー状」の附着があるものの、ほとんどグリースが残っていません。

この事から、経年の揮発度合いから判断してもおそらく数年〜5年内の過去メンテナンス時に「潤滑油」を使って整備されていると推測します。使われていた「潤滑油」は有名な呉工業の「CRC5-56」ではなく別の工業用潤滑油ではないかと考えます (臭いが違うから)。

塗布した「潤滑油」の経年による揮発からネジ山が互いにカジリ付き始めていた状態だったので非常に固い (回らない) 状況でした。このまま進行するとやがて一部のネジ山がカジリ付いてしまい、一切動かなくなり「製品寿命」に至りますから、オールドレンズのヘリコイド (オスメス) に「潤滑油」を注入するのは禁じ手ですし、そもそも「潤滑油」では10年トルクを維持させることができません (数年内のトルク維持が精一杯)。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑上の写真は、前出の鏡筒の最深部にセットされる「絞りユニット」そのものを撮影しました。

実はこの「絞りユニット」の構造と、この「絞りユニットを鏡筒内に格納する方法」の2つをチェックする事で「富士フイルム (フジカ) 製の証」を検証できるのです。

↑「絞りユニット」の内部に「開閉環/位置決め環」それぞれをセットしてから、絞り羽根 (6枚) を組み込んで絞りユニットを完成させたところです。

開閉環」からは「開閉アーム (棒状)」が飛び出て、さらに「制御環」からも「制御アーム」が飛び出ます。すると「制御環」の途中に用意されている「なだらかなカーブ」に「カム」が突き当たることで、その勾配 (坂) の角度を以て絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。

なだらかなカーブ」の麓部分が開放側になり坂を登り切った頂上部分が最小絞り値側になる設計です (ブルーの矢印)。この時マウント部内部の絞り連動レバーが操作されて、そのレバーの先にある「」がガッチリ掴んでいる「開閉アーム」が動かされることで (ブルーの矢印①) 同時に「カム」も動いて絞り羽根の開閉角度が決まります ()。

富士フイルム (フジカ) 製である「」は上の写真グリーンの矢印で指し示している「2本の黄銅製支柱」です。この支柱が存在することを覚えていてください。

↑完成した絞りユニットを組み込んだところです。

左写真は、完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (後玉側) 方向から撮影しました。すると「開閉アーム/制御アーム」が鏡筒の後に飛び出てきていますが、ポイントはグリーンの矢印で指し示した「2本の支柱」です。

この当時の富士フイルム (フジカ) 製オールドレンズの多くのモデルが2本の支柱が刺さることで絞りユニットの位置を決める設計でした。

例えば左写真は当時の「EBC FUJINON 55mm/f1.8 (M42)」の絞りユニットですが、同じように「開閉アーム/制御アーム/カム」が備わり、グリーンの矢印で指し示した「2本の支柱」によって鏡筒最深部に絞りユニットが刺さる位置が確定される設計を執っています。

違いと言えば「なだらかなカーブ」の使い方が逆だという点だけです (麓が最小絞り値側で頂上が開放側)。

このように内部構造から判断して製造メーカーを確定させる時、ワザワザ他社光学メーカーの設計やその概念にピタリと合わせて「まんまコピー」を設計する必要性は一切存在しないと考えられます。

例えばロシアンレンズのように敗戦時に接収した戦前ドイツの機械設備や資材、或いは人材を使い没収した設計図面から「まんまコピー」を一度製産して、そこから独自の設計を起こすと言った目的があるなら、他社光学メーカーの構成パーツに似せた構造にすることは考えられますが、ゼロスタートで自社製品を開発する際、ワザワザ他社光学メーカーの内部構造や構成
パーツに似せる必要は全く無いと当方は考えています。

左写真は冒頭で案内した先代「PORST COLOR REFLEX MC AUTO
55mm/f1.2
(PK)」の鏡筒裏側写真です。

このモデルは富岡光学製OEMモデルなので、絞りユニットではなく鏡筒裏側に制御系の構成パーツをまとめており、この当時の他のM42
マウントモデルの設計も酷似しています。

その意味で自社工場や設備など、或いは製産工程を見合わせた最も都合の良い方法や概念で設計すれば良いハズで、故意にコストを掛けてソックリの構成パーツを用意する必要性の説明ができません。従って、構成パーツの設計概念や手法が同一であれば「自ずと同じ製産メーカーの設計」と考えるのが自然ではないでしょうか?

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で6箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑この状態で再びひっくり返して裏側を撮影しました (つまり後玉側方向からの撮影)。「開閉アーム/制御アーム」が相変わらず飛び出ていますが、鏡筒 (ヘリコイド:オス側) には「直進キー」と言うパーツがネジ止めされています。

すると、この板状の真鍮製「直進キー」が溝部分を行ったり来たりスライドすることで鏡筒 (ヘリコイド:オス側) が直進動している考え方ですね。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

従って、ヘリコイド (メス側) が回り始めるとその「回転するチカラ」と一緒に鏡筒 (ヘリコイド:オス側) も回りたいのですが、両サイドに「直進キー」が刺さっている為に回ることができず直進動にチカラが変換されて鏡筒 (ヘリコイド:オス側) が繰り出されたり/収納したりする仕組みです (ブルーの矢印)。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。

↑ひっくり返して撮っていますが、外していた構成パーツも個別に「磨き研磨」してセットします。

↑鋼球ボールを組み込んでからエンジニアリング・プラスティック製の絞り環をセットしたところです。どう言うワケでこの「絞り環」だけをエンジニアリング・プラスティック製にしたのか見当がつきませんが、他がシッカリした造りの金属製である分少々残念ですね(笑)

↑ここで後からでは組み込むことができないので、先に光学系後群をセットします。

↑完成した基台とマウント部を組み込んだところです。この時、鏡筒裏側から飛び出ている「開閉アーム/制御アーム」それぞれがマウント部内部の「」でガッチリ掴まれているので、マウント面の「絞り連動レバー」が操作されたり、或いは絞り環が回ることで設定絞り値が「制御アーム」を通じて変化し絞り羽根の開閉角度が変わります。

従って、重要なポイントは「距離環を回す時のトルク感を決めるのはヘリコイドグリースではなく、これら各部位からのチカラ伝達レベルが適正であること」になりますね。どんなに軽い操作性を実現できるヘリコイドグリースを塗布していたとしても、これら各部からの伝達されるチカラが大きすぎて、その抵抗/負荷/摩擦によって距離環を回すトルク感が重くなっては意味がありません。

↑マウントの爪をセットします (ちゃんと内部には電子基板がセットされていて設定絞り値がカメラボディ側に伝達されます)。

↑距離環を仮止めしてから光学系前群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

上の写真で赤色矢印で指し示しているネジ穴が2個ありますが、相応に技術スキルがある整備者ならこれを見ただけですぐにピ〜ンと来ます(笑) このモデルには「無限遠位置調整機能」が附加されていません。距離環の固定位置をズラせるようワザワザ設計されているのですが、赤色矢印の箇所にネジ穴がある理由でそもそも無限遠位置を変更することすらできない設計であることが明白です。

従って、当初バラす前の無限遠位置と全く同じ位置での組み上がりになりますね(笑)

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが完了しました。製産されてから40年近く経って、はるばるドイツやヨーロッパを巡って再び生まれ故郷の日本に帰ってきた『PORST COLOR REFLEX 50mm/
f1.2 UMC X-M G
(AX)』です。

光学系内の7群14面ある光学硝子レンズのうち5面濃いグリーン色のコーティング層が蒸着され、また2面ブル〜、或いは5面パープルアンバーが蒸着されているので (2面は無色)、組み上がってからちゃんとそのような光彩を見る角度によって放ちますね。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

しかし残念ながら、当初光学系内を覗き込んだ時に「塵/埃」などが少々多めに入っているように感じたのですが、そのほとんどが「微細なキズや汚れ」だったので、清掃しても除去できませんでした (3回実施済)。

また一部にはカビが発生していたので、その部分が汚れのように5mm長の太目の線状で後群側に視認できます (写真には一切影響なし)。

カシメ止めされている後玉の縁に1箇所打痕があり枠 (外装) が変形している箇所がありますが、修復することができません (従ってそのままの状態です)。申し訳御座いません・・。

↑しかし光学系後群側も極薄いクモリすら皆無の透明度なので非常に良い状態を維持した個体です。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。但しエンジニアリング・プラスティック製の絞り環だけは処置できないのでそのままです。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の「粘性中程度軽め」を使い分けて塗っています。距離環を回すトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」なトルク感を実現しています。

このモデルのピント合わせは、ピントの山が掴み辛いので敢えて少々トルクを与えた操作性に仕上げています。特に開放時には被写界深度が相当狭いのでトルクが軽すぎると余計に大変です。しかしそうは言ってもピント位置までのトルクが「普通〜重め」と言うだけで、ピント合わせ時は極軽いチカラだけで微動できるので操作性は良くなっていると思います。

皆さんが喜ばれる「ヌメヌメッとシットリ感漂うトルク感」に仕上げてあります(笑)

↑今回初めて扱いましたが、内部構造には確かに富士フイルム (フジカ) 製オールドレンズの匂いが残っており、せっかくバヨネットマウントに移行したにも拘わらず僅か7年足らずで廃れてしまったのが残念ですね。

ちなみに左写真は光学系前後群を清掃している最中に綿棒で拭った「黒マジック」です。光学系硝子レンズのコバ端に、おそらく前回の整備時だと考えられますが「黒マジック」が塗られていたようで、清掃していたらシルボン紙に紫色が付いたのですぐに分かりました。

全て一旦除去して今回は反射防止塗料を塗っています。相当な本数を使ったのでこの分追加料金になります。申し訳御座いません・・。

当方にAX用マウントアダプタが無いので、実写は撮っていませんが、無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。