〓 Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Pancolar 50mm/f1.8 zebra《初期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツは
Carl Zeiss Jena製標準レンズ・・・・、
Pancolar 50mm/f1.8 zebra《初期型》(M42)』です。


当方が10年間で扱った旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製「Pancolarシリーズ」は累計で今回が102本目です。その中で『初期型』の標準レンズ域「50mm/f1.8 zebra」モデルは、今回が23本目にあたります。さらにオーバーホール/修理ご依頼分を除いた純然たるヤフオク! の出品分としてカウントすると今回が僅か15本目と言うワケで、それほど多くありません。

しかも前回オーバーホール済でヤフオク! に出品してから2年が経ってしまいました。

特に敬遠しているワケではありませんが、なかなか光学系内の状態が納得できる個体に出会える率が低く調達にも苦労します。プラスして近年のミラーレス一眼の流行りで今回扱う『初期型』の人気も高まり、市場価格帯まで高騰してしまったのが調達のネックにもなっています。

ヤフオク! も海外オークションebayも共に流通価格帯は2万円台後半辺りから4万円台までと、ワリと高止まり傾向です。今回のモデルの後に登場する「前期型」になると未整備品なら流通価格帯も2万円台が相場で安いですし、最後に登場したマルチコーティング化の黒色鏡胴も高くても3万円代前半辺りでしょうか。

ではどうしてこの『初期型』だけが高騰しているのでしょうか???

旧東ドイツが手掛けた「Pancolarシリーズ」の中で唯一「光学硝子材に酸化トリウムを含有 したいわゆるアトムレンズ (放射線レンズ) だから」です。それは光学系を光に反射させてみると放つコーティング層の光彩が、その後のモデル「前期型後期型」とは異なることからも 何か違うと気づきます。

光学硝子精製時に「酸化トリウム」を含有させてしまった最大の目的と狙いは「屈折率を最大20%向上させる目的」であり、要はピント面の鋭さを徹底的に追求した結果でした。

然し1970年代に入ると「酸化トリウム含有により黄変化が進行」する問題から硝子材への含有をやめる光学メーカーが続出し、代替のさらに屈折率の高い光学硝子材精製技術が開発されました。ちなみに1970年代に入ると一部で代替として流行っていたのは「ランタン材」で「屈折率の10%台向上」を目的としていたようです (もとから茶褐色化した硝子材)。この頃になるとマルチコーティング化が進んでいた為、多少の茶褐色化はコーティング層の蒸着で制御でき、写真の記録に大きく影響しませんでしたが「酸化トリウム含有アトムレンズ」の 黄変化は相当なレベルで、さすがに光学メーカーも制御外だったのではないでしょうか。

なお放射線の半減期が長いのでいまだに放射線を放出したままなのがこれら「アトムレンズ (放射線レンズ)」ですが、そうは言ってもフィルム印画紙面での放射線レベルは低いので気に する必要もありません (抱いて寝るような話ではないから)(笑)

↑上の写真は今回出品個体をバラした際に光学系を取り出してその「黄変化」状況と(左写真)、24時間のUV光照射により「黄変化低減処置」を講じた後の写真 (右写真) です。

写真撮影すると色合いが薄く撮られてしまいキレイに見えますが、現物はもっと真ッ黄ッ黄 です!(笑)

さらにこれら各群が重なって実際に鏡筒内にセットされるともっと色濃くなり、当初バラす前の状態は「紅褐色状態」なのが「アトムレンズ (放射線レンズ) 黄変化」の現象です。従って もしも仮に「レモンイエロー」のような色合いに染まっていたら、それは「黄変化」とは呼ばずに「経年のコーティング焼け」なので、UV光の照射をしようが何をしようがどうにも処置 なしです (前述のランタン材もUV光照射も変化なし)(泣)

この点を一緒くたにしてクレーム付けてくる人が居るので本当に困ったモノです!(涙)

黄変化/褐色化/コーティング焼け/コーティング層の経年劣化 (変質)」とこれらは全て別の話であり、その経緯も因果関係も何もかも異なりますから、光学系が「無色透明ではない!」からと因縁付けないでほしいですね(笑)

こういう要素なども当方との「認識の相違」になる為、クレームしてきた人は二度と当方の 出品に入札できないようブラックリスト化して対応しています。

なお上の写真で右側の「UV光の照射後」がほとんど無色透明に写っていますが、現物は前述の「レモンイエロー」のような色合いに染まっている状態なので、鏡筒内にセットすると「相応に黄色っぽく視認できる」のでご留意下さいませ (これ以上改善できません)。

  ●               

↑上の写真は今回の個体を当初バラした直後、洗浄する前の状態のまま撮った写真です。ヘリコイド (オスメス) や基台のネジ部には「濃いグレー状のドロドロ状態」が相当な量で附着しています。

そもそも当モデル『初期型』が登場したのは1965年ですから、その当時に「白色系グリース」が使われていたハズがありません(笑)

要は一度過去メンテナンスされていて、その時に「白色系グリース」が塗られた為にネジ部のアルミ合金材が摩耗した「摩耗粉」が混じってしまい (当初真っ白だった) グリースが変質し「濃いグレー状」になっている次第です。

これも「白色系グリースはアルミ合金材を摩耗しない!」と当方を猛攻撃する人が居ますが(笑)当ブログの『検証:白色系グリースはヘリコイドのネジ山を摩耗しているか』で実際に「黄褐色系グリース白色系グリース」を使い実験しているので、興味がある方はご参照下さい。 それでも当方がウソを載せていると疑われる方はもう反論しません (どうぞご自由にSNSで ご批判下さいませ)!(笑)

今回の個体は、当初調達して届いた時、距離環を回すと「ツルツルしたトルク感」でした。 もうこの状態でヘリコイド (オスメス) に「白色系グリース」が塗られ、さらに『潤滑油』まで注入されているのが分かりました(笑)

そして実際にバラして撮った写真が上の写真です (溶剤で洗浄する前の状態)。

すると左側の鏡筒の下に「濃いグレー状」が垂れてしまったのが写っています。写真ではなかなか伝えにくいですが、この「濃いグレー状」が相当に液化した状態なのでポタッと垂れてしまったのです。然し実は鏡筒の上部分を見ると分かりますが「濃いグレー状」が粘性を帯びてグチャグチャと広がっている部分が確認できます (実際に現物を触ると確かに粘性を帯びて いてほとんど乾いている状態)。

そんな乾いてドロドロッとした「濃いグレー状」の箇所があるのに、ヘリコイドの一部には 水溶性のヒタヒタ状態があり、それがポタッと垂れてしまった次第です。

何を言いたいのか???

今回の個体はもうバラした時点で分かっていましたが「その異臭の強さから呉工業製CRC
5-56が注入されている
」と推測できます。

するとこれらヘリコイド (オスメス) と基台のネジ部などをチェックしていったい何が判明するのか?!

つまりだいぶ昔に一度メンテナンスされ、その時点で「白色系グリース」が塗られた後、今度は経年劣化進行に伴い「液化してアルミ合金材の酸化/腐食/錆びを促していた」事が判明し ます。

然しそのまま再び整備されることもなく長年経過したので「揮発油成分がオールドレンズ内部に飛んだ後、粘着化してスカスカになってきた」状態だった時期が数年あります。

さらにさらに・・その後今度は『CRC5-56』をプシュッとやられてしまったのです(笑) おかげで当方に届いた時点ではそれはそれは滑らかに「ツルツルという印象のトルク感」で軽く 動いていた次第です。

当方ではこのトルク感を「良し」と判定していません。何故なら『潤滑油』のチカラを借りてそのように至っているからで、早ければ1年〜遅くても数年内にヘリコイド固着してついに『製品寿命』を迎えます(涙)

そのような整備状況を適切と当方では受け取っていません

ある意味、当方と同業者たる『転売屋/転売ヤー』の常套手段の一つでもあるので、当方も含め非難の対象になるのは何とも仕方ないことです(涙)

従って今回のタイミングで再整備の機会に恵まれ(笑)、この個体の『製品寿命の延命処置』を講じられたのがせめてもの救いでしょうか(涙) 当方も生かされている身の上なので(笑)、何とかこのオールドレンズももう少し生き延びてほしいものです!(涙)

・・などと得体の知れない使命感に駆られ(笑)、然し辿ってきた長き道のりにエールを贈りながらも (楽しみながら) 今回の『DOH』も手を尽くしていく次第です。

なお「経年の揮発油成分で金属は錆びない!」と頑なに指摘する人が居ますが、これも思い 込みの一つで(笑)、確かに油性分が直接金属の表層面を酸化/腐食/錆びさせません。然しその油性分の「油膜の界面原理」によって引き寄せられた「水気/湿気/水溶性成分」などが油膜面に留まり、その影響で境界面に於いて金属材の酸化/腐食/錆びが進行しますから、結果的に「経年の揮発油成分が金属材の酸化/腐食/錆びを招いた」と言い替えられるのではないでしょうか?(笑)

それもおかしいと言い張るならもう反論しません。どうぞご自由にご批判下さいませ(笑)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は「aus JENA Pancolar 50mm/f1.8 zebra《初期型》(M42)」のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑前回オーバーホール済でヤフオク! 出品してからアッと言う間に2年が経ってしまいました。多少光学系内にカビが発生していましたが、清掃でキレイになると判定して調達したキチョ〜な『初期型』です。

どうして貴重なのかなど解説は前述の参照ページで詳しく説明しているので、興味がある方はご参照下さいませ。

後の時代の「後期型」黒色鏡胴時代に入ればマルチコーティング化が進んでレンズ銘板にも「MC」刻印を伴いますが、その光学系が放つコーティング層の光彩が意外にも今回の『初期型』ととても近似した輝きです。

もちろんマルチコーティングの「多層膜蒸着技術」が開発され完成の域に到達するにはまだ 10年の歳月が必要でしたから、今回のモデル『初期型』発売時点では「モノコーティング (複層膜蒸着技術)」止まりです。

逆の指摘をするなら、モノコーティング時代に限りなくマルチコーティングに等しいレベル迄徹底的にこだわって光学設計したのがこのPancolar『初期型』なのだと言い替えられます。

その意味で、旧東ドイツ時代のCarl Zeiss Jena製標準レンズを語る時「このアトムレンズ (放射線レンズ) たるPancolarゼブラ柄/8枚絞り」を紹介せずして全容は語れないとも言い切れるくらいの勢いです(笑)

そうなんです! 後にも先にも「絞り羽根を8枚装備したパンコラー」はこの『初期型』だけだったのです。

どうして8枚にそんなにこだわるのか???

答は簡単で、絞り羽根を小さくして従前の5〜6枚から8枚に拡張しないと「入射光の制御を厳密にできなかった/期待する数値まで改善できなかった」からなのです。つまりそれほどクリティカルに光学系内の入射光制御にこだわっていた事の「」であり、おそらく設計陣のまさに意地を架けた製品としての登場だったのではないでしょうか。

もしかしたら徹底的に破壊され尽くした敗戦後にようやく訪れた平和の中で、然し東西ドイツの経済格差は相当なレベルで広がりを見せ、もうこれ以上は底を打てないと「威信と維持と 祈り」を込めて、どうか景気が良くなってくれとの願いまで賭して一心不乱に開発したモデルだったのかも知れません(涙)

それはこのモデルの筐体外装パーツの一部が下位格の「Tessar 50mm/f2.8 zebra」と共通パーツ化してまでこだわっていた事からも、相当企業利益が逼迫していた時期だったことが 伺えます (実際歴史を紐解いてもベルリンの壁が敷設されたのは1961年だったから)。
要は亡命者が後を絶たないくらいに旧東ドイツの経済環境は奈落の底だったのでしょう(泣)

ロマンは広がりますね・・ (涙)
オールドレンズはこのように末広がりで妄想が進むから愉しいです!(笑)

ちなみにこの実装されている「8枚の絞り羽根」微調整で「開閉動作の範囲設定」をミスるとそれぞれの絞り羽根が小さい事から「沈降現象」が起きてしまい (閉じていく時に中心に向かって絞り羽根が落ち込む現象) 適切な入射光制御ができなくなりますから、整備する場合は 要注意です!(怖)

こんな点を指摘しているサイトも残念ながらネット上何処を探してもありませんね(笑)

逆に言うなら、そこまでして何としてでも鋭いピント面の標準レンズを創りたかったのかも知れません(涙)

↑前述のとおり、光学系内の第1群 (前玉) 外周にカビ除去痕が残ってしまいましたが、そう言われてマジッモードで探さない限りおそらく発見できないレベルです(笑)

もちろん今回出品する個体も光学系内の透明度が非常に高く、LED光照射してもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。当方が「皆無」と言えば、本当に一切クモリがありません!(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

第1群 (前玉) 裏面側に今回の清掃時に生じてしまった「コーティング層の微細な線状ハガレ」がスッスッと2cmくらいの長さで3本ほど光に反射させてチェックすると視認できますが、ご覧のように (上の写真) LED光照射で探すとそれら線状ハガレ部分が見つけられません。

要は光学硝子面を削ってしまった物理的なキズではないからLED光照射でも視認できないワケで、当方では「コーティング層の微細な (非常に薄い) 線状ハガレ」と認識しています (当然ながら事前告知済なのでクレーム対象としません)。

↑光学系後群側もスカッとクリアな状態を維持しており、もちろんLED光照射で極薄いクモリが皆無です。多少経年による微罪な点キズが多めですが、パッと見で「微細な塵/」に見えたとしても3回清掃して除去できなかった「微細な点キズ」です (同様クレーム対象外)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:17点、目立つ点キズ:13点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か。
(前玉裏面に極微細な薄い2cm長3本あり)
※但し実際はコーティング層の線状ハガレなので線キズではない為LED光照射で視認できません。
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑8枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。上の写真をご覧頂くと分かりますが、8枚の絞り羽根のうち一部に「経年のサビ」箇所が残っています。このサビ痕が目立たなくなるくらいに「磨き研磨」してしまえばもっとキレイになりますが、前述のとおりこの絞り羽根は「下手すると沈降現象が発生する」ので、その微調整範囲は相当限られており神経質です

従って下手に手を加えずにそのままの (絞り羽根の) 厚みを維持させたままで組み上げている次第です。

このように当方のオーバーホールでは、問題箇所/不具合箇所などあらゆる全ての事象に対して「具体的に因果関係や原因/対処を100%説明できる」のが大きなメリットです。

どうしてそのような動き方をするのか、どうしてこんな風になったのか・・などなど必ず事細かく解説できます!(笑)

それでご納得頂けないなら (事前に判明しているので) ご落札頂かずにもっと状態の良い個体を探せば良いワケですね!(笑)

絞り羽根が閉じる際は残念ながら「ほぼ正八角形を維持」しながら閉じていく状況で、時に開口部は歪になります。これも原因があって、絞りユニット内の真鍮 (黄鋼) 製の「位置決め環開閉環」両方に経年の腐食箇所が幾つか残っており、ここも「磨き研磨」してしまうと擦り減って肉厚が薄くなり「却って絞り羽根開閉異常を誘発する原因」に至るので、敢えて処置していません (そのまま組み上げている)。

従って絞り羽根が閉じる時にその腐食箇所の抵抗/負荷/摩擦が影響して絞り羽根の開閉角度が変化するので「再現性が低い」ながらもこのような歪なカタチで閉じる次第です。

どうでしょうか?(笑) これだけ明確に因果関係を説明できる整備があるでしょうか?(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑今回も素晴らしい仕上がりでオーバーホールが終わったので、その記念に新品でMCフィルターをセットしました。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MCレンズガード (新品)
本体『Pancolar 50mm/f1.8 zebra《初期型》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
純正樹脂製被せ式前キャップ (中古品)

距離環を回すトルク感は敢えて「重め」に設定しました。もう少し軽くする事もできますが、残念ながら前述のとおり既にアルミ合金材の一部に経年のサビが生じている為、その箇所だけは (特にネジ山の谷部分など) はどうしても擦れ感の原因になり、且つトルクムラが発生する因果関係にも至るので「重めながらもピント合わせの操作性の良さを優先」した次第です。

従って軽めのトルク感にセットするとトルクムラが発生し、ピント合わせ時にククッと微動するなど違和感に至りますから、これもクレーム対象としません (当方の認識上良しと判断して処置した事だから)。

そのくらいオールドレンズと言うのはマニュアル操作部分が多いので、実際の撮影時に「撮影に没頭したい!」となれば、それは可能な限り各部位の操作性の良さを追求するしかないとも言え、多少のトルクの重さは犠牲にするしかありません (その結果違和感なく撮影に臨める)。

逆に言うと「違和感なく撮影できる」と断言しているくらいなので(笑)、重めのトルク感と言っても「あくまでも軽めのトルク感と比べたら」と言う表現が本当は適しているのですが、中には相当神経質な方がいらっしゃるので(笑)、敢えて大袈裟に「重め」と明記しています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑今回もいつもと同様「M42マウント規格」なので、マウントアダプタとの相性問題が顕在するのですが「当方のオーバーホールが上手く仕上げられなかった言い訳としてマウントアダプタのせいにしている」と批判する人が居るので(笑)、当方所有マウントアダプタでチェックしている写真を載せています。

上の写真ではK&F CONCEPT製マウントアダプタ (中国製) に装着して、実際に最小絞り値「f22」まで絞り羽根を閉じる挙動をチェックしています。問題なく正常に最後まで閉じて「f22」に到達します。

グリーンラインのとおり基準「」マーカーが真上に位置し、マウントアダプタとの間に1㍉弱の隙間が生じますが、マウントアダプタ側に突出がある為です。

↑今度は日本製Rayqual製マウントアダプタに装着してチェックしました。

同様実際に最小絞り値「f22」まで絞り羽根を閉じる挙動をチェックしています。問題なく正常に最後まで閉じて「f22」に到達します。

グリーンラインのとおり基準「」マーカーが真上に位置し、マウントアダプタとの間に1㍉弱の隙間が生じますが、マウントアダプタ側に突出がある為です。

なお、前出のK&F CONCEPT製マウントアダプタは「ピン押し底面が凹面を上向きでセット」していますが、日本製Rayqual製はピン押し底面の深さが可変ではないのでそのままです。

マウントアダプタのピン押し底面に関しては当ブログ「解説:K&F CONCEPT製M42→SONY Eマウントアダプタ《最新モデル》」にて詳しく解説しているので、興味がある方ご参照下さいませ。

サイト上にはこの製造元K&F CONCEPT社と繋がりのある方のコメントが載っていたりしますが、このような細かい部分の (ある意味トラブル的な) 要素の説明は全くしてくれないので、如何なものなのでしょうか?(泣)

要は当方は一切この中国の会社K&F CONCEPT社と関わりがないのですが(笑)、それにもかかわらず事細かく説明しているのは「当方のオーバーホールが悪いから」とクレームが付くので、仕方なくいろいろ検証して調べている始末です(笑)

まぁ〜、それだけ多くの人々に認められていないのが当方なのだと言う「まさに証のような話」ですね(笑)

クレーム対策として (本当は全く関係ないのに) 自ら検証しなければイケナイと言う何とも辛い話です(笑)

↑ちなみに光学系内の「レモンイエロー」のような色合いに光彩を放っている状況を撮影しようと試みましたが、撮影スキルがド下手なので(笑)、上手く撮れませんでした。

現物を見るとそれなりに黄ばんでいますからご留意下さいませ。これでも当初バラす前の時点から比較すると「黄変化は半減程度まで改善した」と言えます。

↑上の写真は別個体からの転載写真になりますが、当方が「シーソー」と呼称している「プレビューレバー」部分の機構部を撮った写真です。

当初バラした時点ではこの機構部の「カム」のセットが適切ではなかった為、設定絞り値に対して絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) が今ひとつバラツキがありました。

この「カム」が絞り環の内壁に突き当たって絞り羽根が閉じる際の開閉角度が決まる原理なので、この「カム」の微調整をミスるとそのような結果に至ります。

マウント面から飛び出る「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) そのチカラが伝達されて「カム」が絞り環内壁に突き当たり (ブルーの矢印②) 設定絞り値まで絞り羽根が閉じます。同様に「プレビューレバー」を操作しても (ブルーの矢印①) 全く同一の動き方が伝達されて設定絞り値まで絞り羽根が閉じる仕組みですね。

従ってそのシーソーの機構部は「要微調整!」なのですが、過去メンテナンス時にキッチリちゃんと調整されている事があまりありません(笑)

↑さらに今回の個体は当初届いた時点で「絞り環のクリック感がガチガチの印象」でカチカチと小気味良く (如何にもクリックしているという) 気持ちの良い操作性ではなく、ハッキリ言って内部で何かの出っ張りがガチガチと突き当たっている感じ的なクリック感でした(泣)

その原因はバラさずともすぐにピ〜ンと来ましたが(笑)、要はこの「棒状ピン」部分が錆びついてしまい、せっかくの板バネ方式のクッション性が全く利いていなかったのです (ブルーの矢印のように板バネでクッション性があるのが正常)。

従って届いて現物を多少いじくり回した時点で、当方にはもぅ内部の状況が手に取るように分かっていました(笑)

上の写真で言えば「棒状ピン」が真っ赤に錆びついていてまるで一体成形の如くガシッとくっついてしまい、全く以てクリック感になっていなかったので「ガチガチと当たる印象の絞り環操作」だった次第です。

そしてその因果関係こそが「まさに過去に一度経年の揮発油成分でヒタヒタ状態に液化していた時期が何年もある」ワケで、それは取りも直さず「アルミ合金材の至る箇所にサビが生じている状況」なのが明白だったのです。

にもかかわらず距離環を回すトルクがツルツルなのは『潤滑油の注入』しか考えられないワケです(笑)

このように「観察と考察」をちゃんとごまかさずに実施しているからこそ「全ての現象の因果関係を知っている」ワケで、同時に「どう処置すれば改善できるのか/改善できないのか」まで熟知しているのが当方の『DOH』の醍醐味とも言い替えられますね(笑)

小さくてチョ〜面倒くさかったですが「ちゃんと棒状ピンを磨き研磨した」ので現状は適切な心地良いクリック感で絞り環操作できるように改善されています(笑)

↑なお後玉の格納筒がご覧のとおり「3.6㍉」突出しているので、一部のデジカメ一眼/ミラーレス一眼では干渉する懸念がありますからご留意下さいませ。

↑当レンズによる最短撮影距離35cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

また前述のとおり光学系内の「黄変化」は半減程度なので「レモンイエロー」のような色合いに光彩を放っている状況なのが影響して、ご覧のような少々黄ばんだ世界での写り方になりますが、これ以上改善できません (クレーム対象とせず)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。この「多少黄ばんだ写り方」を最も有効に/効果的に使うなら「白黒撮影」にすると、階調幅とコントラストが得られるのでパキッとした写真になり、特に白黒写真派の人には堪らない写り方になります(笑)

これもちゃんと説明できる現象で、総天然色のカラーで入射光が光学系内を透過しますが、白黒写真に変換される時「総天然色のカラー成分が256階調のグレースケール成分に振り分けられる」からです。

この「振り分けられる」要素が最も重要で、あくまでも階調の幅として振り分けられるので、仮にカラー写真だったら特に感動にも至らなかった1枚の写真が、白黒写真になった途端に「おぉ〜!」と感動を伴う1枚に変わったりするのは、まさに256階調に振り分けられた からこそ感激的な写り方に変化したと言えます。

カラー写真でノッペリした平面的な写真だったのが白黒写真になると立体的な臨場感溢れる 写真に変わるなど、よくありがちな変化だったりします(笑) その階調表現にこの「黄変化」がある意味功を成すと言うワケで、それはそれでなかなか使える要素の一つだったりします。

故に白黒写真ファンにとってはとても涙が出るくらいに嬉しい話の一つなのですが、あくまでも光学硝子レンズを透過してきた光成分での話なので、同じ事を画像ソフトでやろうとすると相当大変な作業になると思います (白黒ならそれほど自然な振り分けなので意外とソフト的に加工するのは難しい)。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。当初バラす前の実写チェック時点では「こんなに鋭いピント面に至らなかった」のでこれが本来のこのモデルのカリカリ感です(笑)

↑f値「f8」での撮影です。如何ですか? 1965年の設計でこれだけカリッカリです!(涙)

↑f値「f11」です。絞り羽根がだいぶ閉じてきているので多少ですが「回折現象」の影響がピント面の周りに現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑f値「f16」になりました。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。