◎ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) EBC FUJINON 50mm/f1.4《後期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
FUJICA製標準レンズ・・・・、
EBC FUJINON 50mm/f1.4《後期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた11年前からの累計で当時のFUJICA製標準レンズ「50mm/f1.4」の括りで捉えると累計で24本目にあたりますが、今回扱った個体「後期型」だけでカウントすると「意外にも初めての扱い」です。決して敬遠していたワケではなく、真面目に死角に入っていて今まで未扱いだったのを認識していませんでした(笑)

↑当時富士フイルムが「M42マウント規格」を採用した一眼レフ (フィルム) カメラを初めて 発売したのが1970年で「ST701」からスタートしますが (上写真左)、1972年の「ST801」発売に合わせ「M42マウント規格を踏襲しつつも開放測光機能を付加した独自マウント規格」を採った為に従来広く巷で「Pマウント」と呼称されていた「PRAKTICA (プラクチカ) ネジ 込み式マウント規格 (つまりM42マウント規格のこと)」或いは単に当時の旭光学工業製の「PENTAXネジ込み式マウント規格」といずれも頭文字「」をとって呼んでいたところに その完全互換性から逸脱しています。逆に言うなら既に1970年時点で世界規模で「M42マウント規格」が陳腐化していたとも指摘でき、日本でも「バヨネットマウント規格への移行期」に瀕していた時期とも受け取れます。

バヨネットマウント
レンズ側マウント部の爪とカメラボディ側マウント部の爪が互いに噛み合いロックする方式

ちなみに当時富士フイルムは1978年発売の一眼レフ (フィルム) カメラ「ST605II」が実質的に「最後のM42マウント規格モデル」になり翌年1979年から「AXバヨネットマウント規格」へと移行しています。然し既に時遅く事業性の低下からついに1985年に戦後1947年から培ってきた一眼レフ (フィルム) カメラの開発/製産から撤退してしまいました(涙) 次に富士フイルムが光学製品の歴史に再び舞い戻りあたかもまるで降臨の如くデジカメ一眼/ミラーレス一眼たる栄光の「FUJIFILM Xシリーズ」で再起を図った2011年を待つ必要がありました。そして今現在はむしろ光学製品に特化せずに世界規模で医療分野に於いてその存在感と貢献を示す企業に生まれ変わり、何十層にも及ぶフィルム印画紙積層開発の技術革新が、今となっては医療分野でも応用できたのかどうかはド素人故によく分かりませんが、本当にニッポン人としてこれほど誇り高い想いはありませんね・・。

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型:1970年発売 (ST701用)

コーティング:モノコーティング
開放測光用の爪:無
距離環ローレット:金属製
レンズ銘板:金属製

前期型1972年発売 (ST801用)

コーティング:マルチコーティングEBC
開放測光用の爪:
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製

後期型1974年発売 (ST901用)

コーティング:マルチコーティング「EBC
開放測光用の爪:有
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製

このモデルの光学系に関する記事は意外にもネット滋養を探索してもそれほど多く解説していません。上のモデルバリエーションでの括りでは「初期型前期型後期型」と3つに分かれますが、光学系の括りで捉えると「前期と後期」と大きく2つに分かれるようです。

1970年に発売した「初期型」からその後の1972年「前期型」まで同じ光学設計を踏襲し続けたようです。光学系は6群7枚の拡張ウルトロン型で後群側を1枚拡張しています。

 部分の光学硝子レンズには「酸化トリウム」を含有した
いわゆる俗に言う「アトムレンズ (放射線レンズ)」です。

光学系の第3群の無色の光学硝子レンズには「酸化トリウム」を含有していません。また第1群 (前玉) 〜第2群と第5群は共に凸メニスカスになり第6群 (後玉) は内側 (内部側) の曲率がほぼ平坦に近い両凸レンズです (平凸レンズではありません)。

この光学系構成図は前回扱った「初期型」の個体をオーバーホールした時の完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。実際当初バラす前の時点で既に経年に拠り「ブラウニング現象」が生じ「赤褐色化」していたので24時間のUV光の照射にて半減程度まで改善させています。

 アトムレンズ (放射線レンズ)
光学硝子材に酸化トリウムを含有 (10%〜30%代) させて屈折率の向上 (20%代) を狙った光学硝子レンズ

ブラウニング現象
物質の経年変化に拠り褐色に着色し褐変 (かっぺん) する現象を指す (食品や光学硝子レンズ等)

黄変化 (おうへんか)
光学で言う処の黄変化とは光学硝子レンズの経年変化に拠る変質で褐色に色付く現象を指す

↑上の写真 (2枚) は「酸化トリウム」を含有している群だけを取り出してUV光の照射を施す前 (左写真) と照射後 (右写真) を並べています。特に左上の黒色格納筒に一体成形されているのが光学系第4群の貼り合わせレンズなので2つの光学硝子レンズが接着されている分少々色濃く変質しています (これら光学硝子材の赤褐色化は今回の個体ではなく、以前オーバーホールした初期型〜の転載写真ですからご注意下さいませ)。

写真で撮ると特にUV光の照射後の写真 (右側) が無色透明に写ってしまいますが現物はとても薄い色合いで「黄変化」しているのが残っているので第1群 (前玉) 〜第6群 (後玉) まで全てを光学系内にセットすると相応に黄色っぽく見えます。また当初バラした直後 (つまりUV光照射する前の時点) 各群でその色付きの濃さが異なる理由は不明ですが、単純に光学硝子の厚みの相違なのかも知れません。

ちなみにオーバーホールが終わって仕上がった後に光学系の放射線量を計測すると前玉直前で「8.68μ㏜/h」になり後玉直下では「22.24μ㏜/h」なのでまさに「酸化トリウム含有のアトムレンズ (放射線レンズ)」なのが分かります。この数値を外部被曝量として脅威に感じるか否かは自由ですが(笑)、単位がマイクロシーベルト (μ㏜/h) なのでミリシーベルト (m㏜/h) ではない分どうかなと思います。そもそも撮影時だけの話でありタダでさえ屋外に長時間居るだけでも被曝しているのを考えればどうしてそんなに大騒ぎするのかと思います(笑)

ちなみに写真撮影への影響度として考えた時にやはり前述同様「プロの写真家」が今ドキの デジカメ一眼/ミラーレス一眼で使う場合カメラボディ側のオート・ホワイト・バランス設定 (AWB設定) で適切なホワイトバランスに自動設定してしまえば色付きの影響度が適正化されるので何も心配する必要がないと案内していますが、当方は違うと考えます。

そもそもオールドレンズの光学系内に光が入射してきた時に「オールドレンズ内部でAWBに より適正化されるのではない」ことから結果的に光学硝子レンズの「黄変化」はコントラストにより強く影響が現れるためAWB設定で例えホワイトバランスが適正化されても「コントラストまで適正化されていない」と考えています。

・・従ってアトムレンズは暖色系にまとまりコントラストが強調される写りが多い。

と当方では認識しています (当時の国産のオールドレンズに限定せず海外のモデルも含めての総括的な印象)。

一方こちらの右構成図は今回扱った出品個体で「後期型」になり、同じ6群7枚の拡張ウルトロン型構成ながら光学硝子材への「酸化トリウム含有」をやめた為に改めて再設計された光学系構成図です。

今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

光学硝子材に「酸化トリウムやランタン材を含有していない」ので 色の着色はありませんし仮に光学硝子レンズの一部が「黄変化しているように見える」としても、それは各群を実際に取り出して確認してみれば一目瞭然で「光学硝子レンズの中心部辺りに特に黄変化っぽく見える/集中している」とすれば、それは「経年によるコーティング (層) 焼け」で、いわゆる蒸着コーティング層の経年に伴う変質とみています。

その考え方を補強する意味で今回も各群の放射線量を測定すると「第1群 (前玉)≦0.05μ㏜/h、第2群0.12μ㏜/h、第3群≦0.05μ㏜/h、第4群0.09μ㏜/h、第5群0.09μ㏜/h、第6群 (後玉)0.05μ㏜/h」と言う測定値でした (取り出した各群直上にてそれぞれ約10分ほど計測した平均値)。

第2群だけが唯一一桁計測値の結果が違い「0.12μ㏜/h」でしたが、これはいわゆる「ランタン材含有」ではないとみています。光学硝子レンズへの「ランタン材含有」により最大で屈折率を10%代まで向上させられる (0.13%) ようですが、前述のように光学硝子材に「酸化トリウム」を含有すると経年で「赤褐色化」するブラウニング現象が起きます。同じようにランタン材も含有させると「僅かに褐色化」します。しかしそれは今まで数多くそのようなオールドレンズをバラしてきた経験値から説明すると「その含有した光学硝子レンズの全面に渡り均等に変質している」のが「酸化トリウム含有」も「ランタン材含有」も同じ傾向を示していると言えます。

逆に言うと入射光量が中心部だけ極端に多いワケではなく、均一に透過していくのだとすれば中心部に集中的に変色が現れるのは蒸着コーティング層の問題ではないかとの考えですが、その方面の研究者ではないので正確なところは知りません (申し訳御座いません)。

なお今回初めて扱ったので光学硝子レンズを格納筒から取り出したのも初めてですが、それまでの「初期型前期型」が実装していた光学系のカタチとは全くの別モノに変わっていました。唯一後群側の貼り合わせレンズ「第4群」のカタチだけが同じ設計概念のようにも見えますが (もちろん設計自体は再設計で全く別モノ) 何しろ第1群 (前玉) 〜第6群 (後玉) までとにかく「急な曲率に変化している」のが印象的で、特に第3群などはクルクルに真ん丸状態でした(驚) 隙間や距離も全て計測しているのでトレースしてみると一目瞭然で「第2群と第3群の間の隙間まで同間隔をキープ」なのが意外でしたね (そもそも光学知識が疎いので一生懸命に計測してそんな程度/レベルしか感想を抱かないと言う悲しすぎる現実)(笑)

・・せっかくバラしたのだからせめて計測した構成図くらいは載せたい。

だけの話と言うまるで笑い話です (まともな解説一つできずスミマセン)(笑) ちなみに第1群 (前玉) は中心部が最も厚みがある凸メニスカスですし、最後の第6群 (後玉) は裏面側が緩やかながらも両凸レンズです。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

フレア
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端から真円でエッジが細く繊細なシャボン玉ボケが表出する実写をピックアップしており、右に向かうに従いエッジが強調されたリングボケや玉ボケを経て、やがて破綻して円形ボケへと変わっていく様を並べています。これら実写を探索する際に「EBC (Electron Beam Coating)」を含めて検索しているので、シャボン玉ボケだけでもこれだけヒットしましたが、観ていくと凡そ「初期型前期型」よりもその先鋭感が増しているようにも印象を抱きます (ホントのところはどうなのか不明ですが)。しかし一つだけ言えるのは、このモデルのボケ味は「決してふわふわ柔らかに終わらない」と思います。むしろ当方には相応に主張が強いボケ味を表現すると感じ取れたので「ふわふわ感」が何を指すのかが正直全く分かっていない状況です・・恥ずかしい(泣)

二段目
さらにそれら円形ボケが破綻して収差の影響を受けつつも溶けて単なる背景ボケへと変わっていく様をその特徴としてピックアップしました。同じ高額携行性を持つオールドレンズと比較しても「どちらかと言うと乱れ方が大人しめで端正に見える」と言うか、まるで正統的な乱れ方になっていないのが意外だったりします・・ちょっと整いすぎの感もあるのか。

三段目
ここでは単にピント面の印象を観るべくピックアップしているだけですが、予想どおりの整った仕上がり/ピント面状態といった感じです。しかしこういうピント面を期待してオールドレンズを手に入れるならもっと感動的なピント面を残してくれる標準レンズがあると思うのですが、ある意味ちょっと拍子抜け的な印象です。ちなみに一番最後の右端はエクステンションやヘリコイド付マウントアダプタなどを駆使して最短撮影距離を縮めて撮影した実写ではないかとみています (最短撮影距離45cmなのでまるでマクロレンズのようにここまでアップできないと思うから)。

四段目
被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さについてその印象を確認できそうな実写をピント面してみました。一部はフィルムカメラによる撮影なので、そもそもフィルム印画紙の粒情感が強調されているのかも知れませんが、観た印象としては「素直に質感表現能力の高さを残す」と言えますが、悪く言うなら「リアル感が足りないようなちょっと消化不良」なのが、実は他の写真を観ていても感じたのでこのモデルの一貫した印象なのかも知れません。

五段目
この段では標準レンズなのに敢えてポートレートレンズの如く「人物撮影」をピックアップしてみました。そもそも標準レンズなので画角的にやしりポートレート撮影にはムリを感じますが、そうは言っても写し出されている人物像は意外にも素晴らしいレベルではないかとちょっと感心しました(笑)

六段目
いつものように陰影表現やグラデーション、或いはコントラストと共に被写界深度の確認でピックアップしています。最後の右端を見る限り逆光耐性も良さそうにみえます。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

・・と普段なら全景写真を載せるのですが、何と撮影したつもりで実は写っていなかったと言う大失敗。ちゃんと三脚に付け替えて全景写真を撮ったハズなのに・・無い!(驚) 全景写真が無いなんてそれだけでガックリです(泣)

↑全景写真を載せた上でそこから解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入るのですが、今回はいきなり組み立て工程からの解説です(泣) 絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、外壁部分は「ヘリコイド (オス側)」のネジ山が切削で用意されています。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

なお今回の個体は実装している6枚の絞り羽根のうち1枚だけ打ち込まれているキーの金属材が他と違っていたので、過去メンテナンス時に他の個体から転用しているようです。

↑上の写真は絞りユニットを構成するパーツを並べたところです。後列左端の「格納環」の中に他の構成パーツがセットされます。この中で他の当時のフジノン製オールドレンズと異なるパーツが一つだけ存在していて「調整環」が他のモデルには存在しません。

逆に言うとこの「調整環」が1つ多く存在することで絞り羽根の開閉動作を行う「絞り羽根開閉時の角度を司る制御の方法が違う」ことが確実になります。他のモデルで絞りユニットの中で決められる「制御 (絞り羽根の傾く角度を決める要素)」をこのモデルでは絞りユニットの中で行わずに別の場所・・「マウント部内部」・・で行う方式に敢えて設計変更しています。

↑実際に6枚の絞り羽根を組み込んで絞りユニットを完成させたところです。「格納環」に各構成パーツが全て収められ (合わせてもちろん6枚の絞り羽根も既に組込済) ちゃんと「開閉アーム」が飛び出てきています (赤色矢印)。

↑ひっくり返して表側 (前玉側方向) から撮りました。他のモデルの絞りユニットにも必ず存在する「位置決め環」が写っていますが、それとは別に「調整環」が組み込まれています (赤色矢印)。「位置決め環」は絞り羽根の表裏に打ち込まれている「キー」のうち軸となる役目の「位置決めキー」が刺さる先の巻/リング/輪っかですが、本来絞り羽根の開閉角度を微調整する機能が最初から与えられています。

絞り羽根の軸部分の位置を微調整する事で絞り羽根が閉じる角度全体を「広げる方向に微調整するのか閉じる方向なのか」をイジれるようになっています。

それとは別にさらに「調整環」が存在する点で、このモデルでの「絞り羽根開閉動作の微調整機能は他のモデルと何が違うのか?」をこれらをセットする時点で既に気づいて把握できていないとテキト〜に絞り羽根の開閉をセットしてしまう事になります。

実は今回の個体は当初バラす前のチェック時点で「絞り羽根が閉じすぎていた」為に最小絞り値「f16」が閉じすぎの状況でした。開放時点ではちゃんと完全開放していましたが、最小絞り値側が閉じすぎだったのです (簡易検査具で絞り値との整合性をチェックすると少しずつ閉じすぎの傾向に至り最小絞り値で確実に閉じすぎていた)。

↑実際に完成した絞りユニットを鏡筒最深部にセットするとこんな感じですが、これを見ただけでは他のモデルと全く同じにしか見えません。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上方向が前玉側方向になります。すると下のほうに「開閉アーム」がちゃんと飛び出ていますが、他のフジノンレンズではもう一つ「制御アーム」の金属棒が飛び出ていて合計で2本なのですが、このモデルは1本だけです (赤色矢印)。

つまり前述のとおり「絞り羽根の開閉角度を決める制御部分がこの鏡筒内部に存在しない」から飛び出ているアームが1本だけと言う話です。

ちなみに鏡筒の外壁は上から下までビッシリと「ヘリコイドオス側のネジ山」が切削されています。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑無限遠位置のアタリを付けた場所までヘリコイド (メス側) をネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑他のフジノンレンズであまり見かけない黄銅材の環/リング/輪っかが一つ間に挟まっています。これは「締付環」で距離環を固定する役目の環/リング/輪っかです。また基台の中腹には「制限キー」と言う突出があり「距離環の駆動域を決めている」役目なので、距離環を回した時に無限遠位置で突き当て停止したり、その反対側の最短撮影距離位置でカチンと音が聞こえて突き当て停止するのもこの「制限キー」の存在のおかげです (赤色矢印)。

↑やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑ひっくり返して裏側を撮影しました。「直進キー」が両サイドのネジ止めされていて「開閉アーム」もちゃんと1本ですが飛び出てきています (赤色矢印)。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

従ってこの「直進キー」の組付けを失敗するとトルクムラが出てしまったり重いトルクに変わってしまいますから、意外とこの「直進キー」を組み付ける工程は重要です。

↑マウント部内部を撮影しましたが既に各構成パーツを取り外して当方の手で「磨き研磨」を施してから撮っています。

↑取り外していた各構成パーツも「磨き研磨」を施した上で組み込みます。

他のフジノンレンズでも絞り環がマウント部に配置されているのですが、その内部の構造が違います。絞り環と「制御環」が直結して、さらに「カム」の存在によりこのマウント部内部で絞り羽根の開閉角度を決めている設計にワザワザ変更しています。

本のフジノンレンズでは前述したように絞りユニットの内部でこの役目の正義部分を備えています。

するとこのモデルでは「絞りユニットの内部・・詰まるところ鏡筒内部にその制御系 (絞り羽根の開閉角度を決める制御系) を内包するスペースが無かった」と言う考えに到達します。それで仕方なくマウント部内部にこのような制御機構を持ってきています。

実はこの時代の後に登場する (1979年に登場する)「AXバヨネットマウント規格」のモデルに変遷すると、この絞り羽根の開閉角度を制御する機構部の設計がもっと洗練されてスッキリ整えられますが、このモデルではまだまだ粗削りと言うか「正直どうしてこんなに微調整が難しいのか?」と苛立つほどに厄介極まりない設計です。

このマウント部内部に「カム」或いは「制御環」を内包するオールドレンズなどは当時他の光学メーカーでも数多く設計していましたが、こんなに微調整が大変な設計はあまり見かけません。

今回も上の写真を撮るのに6時間を要してしまいました(泣) あ〜だこ〜だ作業していた内容は「絞り環の開放f値f1.4の時に完全開放しない」問題や最小絞り値が閉じすぎてしまう問題、或いはマウント面から飛び出ている絞り連動ピンとの連係動作で期待した動き方をしないなど、凡そ「絞り羽根の開閉に係る問題」でスッカリ時間を費やしてしまいました(泣)

ご覧のように絞り環と直結する「制御環」には「なだらかなカーブ」が備わり、そこに「カム」が突き当たるので、その時のなだらかなカーブの勾配により「絞り羽根の開閉角度が決まる仕組み」です。「なだらかなカーブ」の頂上が開放側にあたり、一方の坂の麓部分が最小絞り値側です。上の写真ではちょっと「カム」が見えにくく写ってしまいましたが、マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印❶) そのチカラの分だけ伝達されて (ブルーの矢印❷) 最終的に先端の「操作爪」がやはり絞り連動ピンを押し込んだ時のチカラの分だけ移動します (ブルーの矢印❸)。

従ってこの「絞り連動ピンを押し込んだ時のチカラ」がちゃんと正しく「操作爪」まで伝わらないと「絞り羽根の開閉異常」が起きます。その問題に取り組んでいたらアッと言う間に時間が過ぎて6時間経っていたと言う話です(泣)

これは現実には「絞り連動ピンの固定位置」と共に「操作爪の位置」にプラスして「操作爪の移動量」が適正なのかどうかがポイントになるので、だとすると「絞り連動ピンを押し込んだチカラが何処かで操作爪の移動量に変換されている」事を理解し、それをキッチリ微調整しないとイケナイのです。

つまりは過去メンテナンス時にこの点について上手く微調整されていなかったか、或いは下手すると気づかずにただ単に組み立てただけだったのかも知れません。

さらにこのモデルの設計で悪い事に前述した「絞りユニットの内部にもう一つ調整環が存在する」のがこれらの微調整機能に大きく影響している事に気づき、最終的に微調整していたのはこのマウント部の他に「鏡筒内の絞りユニットまで調整していた」から大変だったのです。

つまり部位が異なるのに別の要素との関係性を残したまま設計してしまったワケで、この当時の他のフジノンレンズの洗練された設計に比較するとあまりにもゴテゴテな印象です(泣) 例えば安価なシリーズの「55mm/f1.8」のほうがこの絞り羽根の制御に関して既に完成の域に到達しているのに、上位格付の「50mm/f1.4」でこんな複雑な設計を採ったのは「おそらくは光学系の設計で使う体積が思いの外多すぎて必要に迫られて制御系をマウント部に追いやってしまった」からこそ、絞りユニット内部に調整箇所を残したままマウント部内部でも同じような微調整機能を用意せざるを得なかったとみています。

・・きっとあ〜だこ〜だ考える時間がなくムリな設計で仕上げてしまった。

そんな印象を大きく抱いた設計だったのが判明しました。

↑外から見れば他のオールドレンズと何一つ変わらない絞り環と連係ネジの存在でしたかありません (赤色矢印)。

↑6時間もあ〜だこ〜だ取り組みましたが(笑)、ようやく微調整が納得でき整合性が執れたので完成したマウント部を基台に取り付け、この後は距離環をセットしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑意外にも死角に入っていて今までの11年間で未扱いだった「後期型」のモデルです。また今回のオーバーホールで意外にも絞り羽根の開閉角度の微調整機能が難儀したので、次の扱いをどうするのか (今回の扱いを最初で最後にするのか) ちょっと悩んでしまったモデルでもあります。

・・それほどマウント部内部の微調整は大変だった(泣)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

・・と言うか、実は当初バラした直後は光学系内の締付環や格納筒の内壁などに過去メンテナンス時に塗布されていた「反射防止黒色塗料」のインク成分が飛んでしまい、光学系の半分の群で「とても薄いクモリ」がほぼ全面に渡り附着していて、しかも溶剤で簡単に堕ちなかったので、その薄いクモリを取り去るだけで2時間を要したほどです(涙)

最近の市場流通品たるオールドレンズに「極薄いクモリ」が全面に渡り帯びているなど別に珍しい話ではありませんが、それらの多くがこのような過去メンテナンス時に塗られてしまった「反射防止黒色塗料」の影響を受けているとすれば、毎度ながらオーバーホール工程の中でその除去で2〜3時間を費やしている身の上としては、何とも忸怩たる想いです(泣)

無事にそのような「極薄いクモリ」の類は全て完全除去できたので良いのですが、光学系の各群の硝子レンズには経年並のヘアラインキズや拭きキズなどが極微細ながら残っています (撮影する写真には一切写り込みません)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もこれだけ「スカッとクリア」なら文句の付けようがないでしょう・・と言いながらも微細な拭きキズやヘアラインキズは残っています (最大で13mm長の薄いヘアラインキズが数本あり)。

まぁ〜それもそれも全面に渡って残っていた極薄いクモリが除去できたから晴々した顔で言える話で(笑)、腹した直後は「ヤバい・・」と冷や汗ものでした (何しろ後群側なのでヤバいです)(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大13mm長複数あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑上の写真解説のとおり「開放測光用の爪」がマウント面から飛び出ています (グリーンの矢印)。当時のFUJICA製フィルムカメラ「ST-801/901/AZ/1」などに装着すると開放測光機能がご使用頂けます。

もしもマウントアダプタ (ピン押し底面タイプ) 経由デジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着される場合は、ご使用になられるマウントアダプタによってはマウント面の「開放測光用の爪」が当たって擦れるので/最後までネジ込めないので切削する必要があります

申し訳御座いませんが切削にはご落札者様自身で行って下さいませ (当方では切削しません)。

またK&F CONCEPT製のマウントアダプタをご使用頂ければ/手に入れればこの「開放測光用の爪」を回避するので干渉せずに正常使用が可能ですからご検討下さいませ。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。距離感を回していると時々僅かな抵抗/負荷を感じる事がありますが塗布したヘリコイドグリースの影響なので回しているうちに改善します。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(神経質な人には擦れ感強め)。
・マウント部内部の捻りバネの経年劣化進行に伴い僅かに弱っている為鏡筒から飛び出ているアームを掴んでいる爪が擦れて「カリカリ音」が聞こえてくる事があります(特にマウントアダプタに装着すると聞こえてきます)。捻りバネの経年劣化が原因なのでこれ以上改善できません。また当問題で将来的に不具合を起こす因果関係に至ることはありません。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体EBC FUJINON 50mm/f1.4《後期型》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」での撮影です。相当絞り羽根が閉じてきていますがご覧のとおりまだまだシッカリ写っています。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響が極僅かに現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。