◎ Carl Zeiss (カールツァイス) CONTAREX Planar 55mm/f1.4 silver(CRX)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーガ終わって出品するモデルは、旧西ドイツはOberkochenに
位置するCarl Zeiss製標準レンズ・・・・、
『CONTAREX Planar 55mm/f1.4 silver (CRX)』です。
今回のモデル『CONTAREX Planar 55mm/f1.4 silver (CRX)』を扱う気持ちに至ったのは「ほんの一瞬の出来事」で、ネット上の実写の中にあった「ポートレート写真」を見た瞬間 でした (今回の扱いが初めてです)。
「これは凄い!!! バラすしかない!!!」
実写写真を見た瞬間にその描写性能の凄さに圧倒されて「凄い!!!」と感嘆符付なのは当方の純粋なる感激を表しているのですが、すぐ後に出てきたコトバが「バラすしかない!!!」と言う、フツ〜一般的には皆さんの口から出てこないコトバです(笑)
つまりはその感動した写真を見た瞬間にほぼ「扱う」ことが確定していたと言うくらい、当方にとってはまさに清水の舞台から飛び降りる決心をした瞬間でした(笑)
様々なオールドレンズを扱っていますが、その中で銘玉中の銘玉といまだに呼ばれ続けているモデルが数多く存在します。仮にその銘玉中の銘玉でポートレート撮影をしたとしても「必ずしも感動するレベルに至るとは限らない」のが不思議な結末で、光学系の知識が疎い当方にはいったいどうしてなのかがいまだに不明ですが(笑)、少なくとも人物写真で感動するモデルと言うのは大変少ないです。
当方が苦手とする (扱っていないから) NikonやCanonのオールドレンズはともかく、今すぐに挙がるモデル銘と言えば「MINOLTA製標準レンズMC ROKKOR-PG 58m/f1.2」くらいしか思い付きません。しかしそれを遙かに凌いでしまう実力なのが今回扱うPlanarと言うワケで、本家と呼ばれし「Carl Zeiss CONTAX Planar 50mm/f1.4」さえもブッ飛びで追い越してしまうとてつもない人物撮影の表現力と当方では評価しています (つまり最上のベスト)。
それ故に下位格版の「CONTAREX Planar 50mm/f2」では臨場感の凄さで感動してしまいましたが、上位格版のこのモデルは何を於いても「人物写真」にはベストなので「自分の子供達の成長記録」に使うオールドレンズとしてピックアップされても良いくらいだと思いますね。
【今回のヤフオク! 出品の狙い】
① 完璧なオーバーホールによる使い易い操作性の復活
② LMマウント化する事で汎用的に使えるようにする
(絞り環を装備しているのでこの段階で完結する)
③ さらにマクロヘリコイド装備のマウントアダプタ併用
によりSONY Eマウント化を狙う
(最短撮影距離を10cm短縮化して35cmを達成)
④ もちろんフィルターやキャップ類をちゃんと用意
⑤ CONTAREX版標準レンズの良さを広める
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↑1959年に旧西ドイツZEISS IKONから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX」は、発売時点で既に焦点距離:21mmから何と1,000mmまで取りそろえており、巷での俗称「Bullseye (ブルズアイ)」と呼ばれる異様な外観、非常に高額だった価格設定、そしてその 重量から販売は進まず僅か32,000台しか生産されなかったようです。
大きな円形窓が軍艦部に備わりますが絞り羽根開閉動作とシャッタースピードの両方に連動する世界初のクィックリターン式ミラーを装備した一眼レフ (フィルム) カメラですね。この円形窓を指して「Bullseye」と呼ばれますがセレン光電池式連動露出計であり、この俗称の由来は「bulls (雄牛) のeye (目) を射貫く」から来ており「射る的」転じて最近では軍用語でもある「攻撃目標地点 (ブルズアイ)」に至っています (攻撃目標を無線などで傍受されても分からないようにする暗号として使われた)。
↑上の光学系構成図は、1960年に発売された追加バージョンの一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX special」取扱説明書からの抜粋です。
この一眼レフ (フィルム) カメラは、外観の大きな特徴だった「CDs セレン受光露出窓 (Bullseye)」を外してしまいウェストレベルファインダーを実現したタイプになり、3,000台製産されたそうです。
従ってwikiでは今回扱う『CONTAREX Planar 55mm/f1.4 silver (CRX)』の発売が1961年と案内されていますが、前年の1960年時点で既に登場していたと考えられます。
光学系は5群7枚のビオター/クセノン型構成で、今回のオーバーホールでバラして光学系を清掃する際、各硝子レンズを当方の手でデジタル ノギスを使って計測しましたが、ほぼ取扱説明書に掲載の構成図と同一と判定しています。
特に後群側が量産型では改良されており、貼り合わせレンズの設計と 最後の第5群「両凸レンズ」の表裏面曲率が異なっていました (当初の特許登録時点では表裏面で同一の曲率で申請していますが量産型は表裏面で異なる)。
上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
◉ 一段目
左側の2枚はシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様子をピックアップしていますが、右側2枚はさらにピント面のアウトフォーカス部のボケ方の特徴として載せています。
するとシャボン玉ボケなどの円形ボケは基本的にコマ収差や口径食の影響を受けて真円を維持できない特徴が感じられます。それは他の同じ5群7枚の光学系であるビオター/クセノン型構成と比較しても似たような特徴を見ることができます。しかしアウトフォーカス部の滲み方は独特でピント面のエッジを際立たせながらもイキナシ大幅にボケていってしまうと言う、ある意味締まりの無い溶け方を見せます(笑)
実はこのボケ方にこのモデルの大きな特徴があると今回扱ってみて特徴付けました。
◉ 二段目
この段ではまさにこのモデルの大きな魅力である「ポートレート撮影 (人物撮影)」としてピックアップしてまいす。これらポートレート写真を見る時に「人肌の表現性」だけで捉えてしまうと、このモデルの本当の良さが見えません。問題なのは「人肌の表現性」は当然なのですが、プラスして背景の効果 (ボケ味) に特徴があるとみています。
結果的に被写体たる人物を最大限に惹きつけつつも背景を特殊効果的に自然と使ってしまうところがこのモデルの吐き出す写真の凄いところではないでしょうか。
◉ 三段目
さらに今度はアウトフォーカス部の滲み方に注目して「空気感/距離感」を感じる「立体的な表現性」としてそのリアル感を目一杯感じる写真をピックアップしています。特に「空気まで撮影してしまったのではないか」と言うくらいに(笑)、リアルな写真を残せています。
また紅葉狩りのこの「紅色」をこれだけ被写体色に近い状態で写してしまうところも凄いと感じました。意外と紅葉狩りの撮影はその「現場で実際に感動したハズの色合いの表現性」が難しかったりします。また被写体の素材感や材質感を移し込む質感表現能力の凄さも「開放実写」でこれだけ写し込んでしまうところに光学系のポテンシャルを感じます。
◉ 四段目
左端の紫陽花の写真を見れば明確ですがピント面のエッジは基本的に太目で決して繊細ではないのですが、どう言うワケか「繊細感たっふりな写真」にも仕上げられてしまうからオドロキです(笑) そして意外にも明暗部のダイナミックレンジ (S/N比) は狭く、特に暗部の潰れが一つの欠点とも考えられます。さらに明部に関しても白飛び以前にフレアが出やすい傾向が掴めるのですが、それを効果として使えてしまうのがやはり凄いと感じますね(笑)
とにかく当方にとっては生唾ゴックンのモデルです・・(笑)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。まず以てこのモデルを完全解体してまでオーバーホールしている整備者がいったいどのくらい存在するのかと聞きたいくらいですが(笑)、バラしたはいいもののその組み上げには相当難儀したので、ハッキリ言って「高難度品」です。下位格版の「CONTAREX Planar 50mm/f2」も決して簡単ではなくやはり「高難度品」に入りますが、その比ではありません(泣)
後ほど一番最初の難関工程が出てきます。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、このモデルは絞りユニットを前群側からセットできません (一般的なオールドレンズで多いのは前群側からセットする設計)。
↑上の写真はその鏡筒をひっくり返して今度は後玉側方向から撮影していますが、ご覧のとおり絞りユニットは「後玉側方向からセットする方式」を採っています。
ところが今回一番最初の難関になったのがイキナシこの絞りユニットの設置で(笑)、ご覧のとおり「棒ばね」が1本絞りユニット内部にセットされる設計です。
CONTAREX版オールドレンズのことを知っている方からすれば当然の話なのですが「CONTAREX版オールドレンズには絞り環が存在しない」方式です。従って絞り羽根開閉動作の制御系を握っているのは「カメラボディ側」の話なのですが、どう言うワケかこのオールドレンズ側の絞りユニット内に「棒ばねが存在する」と言うクッション性を持たせています。
と言うのも、当初バラす際にそんな「棒ばね」が内部に隠されて仕込まれている事など知らずにひっくり返した為「アッと言う間に絞り羽根が飛び散った」ワケで、ビックリしたのなんのって・・!(笑)
当方はオールドレンズの「原理原則」を熟知しているので、例え絞り羽根が飛び散ったとしても「ブッ壊した?!」とは決して思わないのですが(笑)、然し説明ができない状況で「え??? 何で飛び散るの???」と暫し唖然とポカンとしてしまいました(笑)
そうですね、CONTAREX版オールドレンズの絞り羽根開閉制御はカメラボディ側と知っているからこそなのですが、それだけに「???」だったワケです。
「ビ〜ン!」と棒ばねが伸びた時に初めて「あッ!」と遅れて焦ったワケで、要はこの「棒ばね」がどのように仕込まれていたのかが「???」なままだったワケです。
従って組み立て工程では知り得る「原理原則」を総動員して考えながら作業しましたが、そう簡単な話ではありませんでした(笑)
↑事は複雑怪奇な話であり、このモデルは何と「位置決め環も開閉環も両方とも回る」と言う難しい部類の設計を採っていました。上の写真のように「位置決め環側がブルーの矢印のように回転する」ワケですから、この時の絞り羽根の状況を掴まない限り「正しい絞り羽根の開閉動作に至らない」ので、結果的に最後まで組み立ててはまたバラしてここまで戻る作業を延々と5時間も続けた次第です(笑)
自らの技術スキルの低さをこれでもかと思い知らされた一時でした(笑)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑今度は「開閉環」がセットされるのでこんな感じで絞りユニットが組み上がります。すると「位置決め環/開閉環」両方が回るので、結局絞り環がセットされる状況まで「これが正しいのかどうか不明なまま後の工程に進まなければイケナイ」のが5時間を費やした最大の因果関係です(笑)
そもそもセットされる (組み込まれる) 絞り羽根の表裏と向きは見れば自ずと確定するのですが、問題なのは前述のように「位置決め環側が回る」ために、いったいどの位置で「位置決め環を組み込めば良いのか」が不確定のまま工程を進めなければイケナイと言うジレンマです。
「開閉環」から伸びるアームがこの絞りユニット (鏡筒) から飛び出てくる箇所 (切り欠き/スリット) が用意されているのですが、いったいそのスリットの領域内で「幾つの絞り羽根が刺さっていれば良いのか???」が確定しない限り、絞り環操作時の絞り羽根の傾きが狂ってしまいます。
要は「設定絞り値とチグハグな絞り値のままで絞り羽根が閉じてしまう/或いは開いたまま」と言う問題を引き起こす事が、既にこの段階で当方には目に見えて分かっているからです(笑)
それ故に「棒ばね」の反発力と「位置決め環の組み込み位置」が確定していないのが、後々 大問題になっていくワケで、何とも絞り羽根が飛び散ったのが恨めしいのなんのって・・!(笑) ハッキリ言ってこれを正しく組み上げられる整備者と言うのは過去にも居なかったのではないでしょうか? と言うのも当初バラした時点でヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」が相当経年劣化進行を伴って残っていたからです。しかも「直進キー」が刺さるヘリコイド (オス側) の溝にもグリースが塗られていません。
おそらく今回の個体は、製産時点から完全解体された事が一度も無かったのではないでしょうか・・。
↑前玉側方向から見るとこんな感じで極フツ〜に絞り羽根が閉じていますが、何とも恨めしい写真です(笑)
↑実は絞りユニットに組み込まれた9枚の絞り羽根がバラけないよう「蓋を被せる」役目を兼務しているのが「光学系後群の格納筒」だったりします(笑) すると最も鋭いピント面に至る光路長を確保する必要もあるのに「絞りユニットの組み立てが正しいのかどうか不明なまま」と言う状況です。
これではラチがあかないので何度も工夫を考えましたがどうにもなりません (都度組み立てて実写撮影していては何日もかかってしまうから)。
正面突破しかないと腹をくくった次第です・・(笑)
↑取り敢えず工程を進めて最後まで組み上げて実写確認しなければイケマセン。上の写真は距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。
↑この基台内部に「絞り開閉環 (グリーンの矢印)」なるカメラボディ側の絞り羽根制御機構と連係する環 (リング/輪っか) が存在します。
実はこの環 (リング/輪っか) は「全部で72個の鋼球ボール」を使って滑らかに回転する機構の設計です。左写真は下位格版の「CONTAREX Planar 50mm/f2」の同じ部位写真を転載しています。すると鋼球ボールは「シルバーな大きめの鋼球:24個」と「褐色な小さめの鋼球:48個」に分かれ、それが互いに1:2の比率で並ぶことで「最もシームレスに抵抗/負荷/摩擦が生じない組み込み方」として設計されている事が判明します。
逆に言うとその事に気が付いたのかどうかが最終的な「絞り羽根制御の操作性」を決定づける話に至ります。
と言うのもこの内側にある「絞り開閉環」は内径よりもさらに小さいので「ストンと落下して貫通してしまう」からです。つまり「鋼球ボールの半径だけで保持されている」為、ここを バラすと組み上げるのにそれなりの時間がかかります(笑) 何故なら、鋼球ボールを入れ込んでいく途中で極僅かでも「絞り開閉環の位置がズレる」と、途端に入れ込んだ鋼球ボールが バラバラと落下してしまうからです(笑) ある意味「忍耐力テスト」を受けているような気持ちになりますね(笑)
↑「忍耐力テスト」合格者だけが次のこの工程に進めます(笑) すると距離環 (ヘリコイド:メス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しい場所までネジ込みますが、最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
ここでのポイントはグリーンの矢印で指し示した「メス側のネジ山の少なさ」です。
↑さらに同様ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
ところが上の写真のとおりヘリコイド (オス側) のネジ山数はグリーンの矢印で指し示した相当な長さを持っています。つまりこれが「距離環を回す時のトルクを決めてしまう要素」なのでこのモデルは単純にヘリコイドグリースの粘性だけで距離環を回すトルクを微調整しようと 考えると「不可能」と言い切れます(泣)
これが逆だったらまだマシなのですが、距離環を回すチカラで「ヘリコイド:オス側を繰り出して鏡筒を繰り出す動作」に繋げているワケですから、必然的に距離環を回すトルクは「どんどん重くなっていく」話です。そこで仮に粘性の緩い (軽い) ヘリコイドグリースを塗布するとどう言う現象が起きるのか???
答は「スリップ現象」です。ピント合わせの際にククッと微動しながら距離環がビミョ〜に動くので「ピント合わせし辛い」話に繋がりますね(泣)
つまりはここが第2の難関と言えます・・(泣)
↑もう既に相当な時間が経過していますが(笑)、ようやくトルク調整が済んでマウント部の組み立て工程に入ります。ご覧のとおり「絞り開閉環」のベースが剥き出しです。
↑正しくマウント部の爪などを組み込むと、このように「絞り開閉環」がセットされます。「コの字型切り欠き」が途中に用意されている回る環 (リング/輪っか) です。この環 (リング/輪っか) がカメラボディ側絞り羽根制御機構と連結するので絞り羽根が開閉する仕組みです。
この後は完成している光学系前後群をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。このモデルでここまで距離環を回すトルクが「軽め」に仕上がっている個体も少ないのではないでしょうか。
と言っても他のオールドレンズと比較すると決して「軽め」ではなくどちらかと言うと「重め」ですが、このモデルに関しては意外と市場流通している個体はさらに重いトルク感だったりします(笑)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。当初オーバーホールする前の段階で、実はカビの発生が少々多めでした。その関係で光学系内を清掃し終わっていますが、後群側の第3群貼り合わせレンズには「中央付近に極薄いクモリを伴うカビ除去痕がある」ので、LED光照射でチェックすると視認できます。その他コーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリは皆無です。
同時に前玉外周にもカビ除去痕が残っており、一部は菌糸状に光に反射させると視認できますが、極薄いクモリは生じていません。
また光学系前群側には2点ほど微細な点キズが残っています。パッと見で「塵/埃」に見えますがコーティング矧がれも伴うので見る角度によっては明白な点キズです。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑極微細な点キズはこちらの光学系後群側のほうがワリと多めですが、パッと見で「塵/埃」にしか見えません。前述の極薄いクモリを伴うカビ除去痕は残っていますが、それ以外はスカッとクリアです。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:12点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い13ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
(後群貼り合わせレンズ中央に1箇カビ除去痕が残っておりLED光照射で極薄いクモリを伴って浮かび上がります/写真に影響なし)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑絞り羽根が閉じる時に覗いて見ていると吸い込まれるような錯覚に襲われる独特な閉じ方の絞り羽根です(笑) 9枚ありますが清掃したのでキレイになり絞り環による操作でも確実に駆動しています。もちろん前述のとおり「72個の鋼球ボールの赤サビもチェック済」なので、当然ながら一切抵抗/負荷/摩擦を感じません。
つまりマウントアダプタ側に装備の絞り環操作で「快適に使える」ワケです。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡りほぼ均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
(グリースのせいで僅かにトルクムラを感じます)
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せますが、マウントアダプタ側にクリック式絞り環を装備しています。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属の中古フィルターは清掃済ですが微かな拭きキズなどが残っています(実用レベルでキレイ)。
↑このモデルの距離環操作としては「市場流通品に比べると十分軽め」ですが、一般的な当方が仕上げた (オーバーホールした) オールドレンズのトルク感で比較すると「重め」の印象です。
原因は特に無く、ヘリコイド (オス側) のネジ山の距離が長い分、どうしてもトルクに影響が出るので僅かなトルクムラ感が残っています。
↑上の写真 (2枚) は、今回のヤフオク! 出品に際し揃えた附属品を一式並べたり装着したりして撮影しています。オリジナルで存在する「S-Planarシリーズ」が距離指標値で「60cm〜24cm」で接写に特化した光学設計を採っているとの事。どのようなレベルなのかが不明瞭な話ですが、ネット上の実写などを見ると特に「接写だからってどうなのョ?!」みたいな印象です(笑)
そこで当方としてはこだわりを以て特に「疑似マクロ撮影」を狙って組み合わせて使う事を条件としてオーバーホールしました。従って例えば「絞り環操作時の快適さ」は当然ながら附属しているマウントアダプタを装着した状態で「どう?ねぇ〜どうなのョ?!」と言う話です(笑)
【マウントアダプタ装着時の最短撮影距離】
実測値になりますが最短撮影距離:35cmまで短縮化できています。
(ヘリコイド付マウントアダプタ側を最大限まで繰り出した時)
もちろんそのマウントアダプタ側ヘリコイド自体はシームレスなので
途中でピント合わせしても構いません。
同様、ピント面の鋭さ感などもヘリコイド付マウントアダプタまで装着した状態でどうなのかと言う微調整を施しています。すべてはちゃんと実使用時での問題として捉え、オーバーホール工程を進めています。
【附属品】
① オールドレンズ本体『CONTAREX Planar 55mm/f1.4 silver (CRX)』
② SONY Eマウント樹脂製汎用後キャップ
③ 純正フィルター (B56) 専用保護ケース
④ 純正バヨネット式UVフィルター (B56)
⑤ haoPe製LM→SONY Eヘリコイド付マウントアダプタ
⑥ CRX→LMマウントアダプタ (絞り環装備)
⑦ 汎用CRXマウント用樹脂製後キャップ (黒色)
例えば附属の純正UVフィルターなどもちゃんと硝子面を清掃しているので、中古品であるが故に僅かにキズが残っていますが基本的にキレイです (実用品として十分)。またヘリコイド付マウントアダプタのほうは、ヘリコイドの繰り出し操作が決して軽くないので (どちらかと言うと少々重め) 不用意に繰り出したりする事がありません。一方絞り環の操作性は「軽くて快適」に仕上げています。
なお、絞り環装備のマウントアダプタについては装着するオールドレンズ側の開放f値に関係なく、絞り環側「f1.4」が最初の絞り値として機能します。例えば開放f値「f2」のオールドレンズ (今回出品のモデルなど) を装着しても、絞り環がカチッとハマるのは絞り環の刻印絞り値「f1.4」の箇所なので「絞り環側:f1.4→オールドレンズ側:f2」と言う意味合いです。単純に最初の位置で填まってしまうので、絞り環側の絞り値とオールドレンズ側絞り値とは一致しません (それがマウントアダプタ側の設計上の仕様なので改善できません)。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑上の写真 (2枚) は、1枚目が当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。
また2枚目は同様開放実写ですが「ヘリコイド付マウントアダプタのヘリコイドを最大限繰り出した状態」で、やはり最短撮影距離位置まで距離環を回している状態で撮影しています (つまり距離環は45cm位置のまま)。
この時実測すると「実測値:35cm」なので、オリジナルの仕様から「約10cm最短撮影距離が短縮化」と言う話になります。もちろん冒頭での説明のとおり「本来の光学系設計から逸脱した写り方」なので、必然的に収差の影響も色濃く表れると考えられます。しかしむしろ当方の気持的には「それを敢えて狙っているのがオールドレンズの愉しいところ」とも言い替えられますね(笑)
↑同様1枚目が絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影したオリジナルの状態です。また2枚目はヘリコイド付マウントアダプタを最大限まで繰り出した時の「f2」撮影です。
パッと見でと言うか、ジックリ見ても「ピンボケ状態」に見えてしまいますが、撮影する瞬間はちゃんと手前側ヘッドライドの電球部分にキレイにピントを合わせて撮っています。
実は1枚目も2枚目も共にフレアが表れ始めており、おそらく光学系の設計上から来るフレアなので、できればフードまで手に入れた方が良いかも知れません。
特に2枚目に関してはフレアの他におそらく「回折現象」の影響も現れていると考えられます (写真中央部)。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。