◎ Ernst Leitz Wetzlar (エルンスト・ライツ・ヴェッツラー) Elmar 9cm/f4 (black & chrome)《第2世代:1935年製》(L39)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するもでるは、戦前ドイツは
Ernst Leitz Wetzlar製中望遠レンズ・・・・、
『Elmar 9cm/f4 (black & chrome)《第2世代:1935年製》(L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた14年前からの累計で、当時のErnst Leitz Wetzlar製中望遠レンズ域で括っても初めての扱いです。
先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り、
ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!
当方は『極度のカメラ音痴』でライカ製品について、フィルムカメラやオールドレンズはもとより、その歴史や背景に至るまで凡そ何もかも全くの無知です。仮に多少かじって知り得たとしても「そもそも買える価格帯で一切流通していない」との思い込みから、まるで無関心ヨロシク視界に入ってこない光学製品の一つだったりします(笑)
そんな中で今回扱ったこのモデルは、当方が2016年に初めて・・Carl Zeiss製『CONTAREX版 Planar 50mm/f2 (silver) (CRX)』・・の写りを知って「まさに天と地がひっくり返った」が如く驚愕してしまった時の感動に匹敵するオドロキを、再び体験したと明言できる機会だったことをお知らせ致します。
・・素晴らしいです! 本当に素晴らしい写りです!
ご依頼者様のコメントの中にもありましたが、まさにそのとおりであり「どうして巷で人気がないのか???を通り越して思考回路停止状態に陥る」くらいの勢いで感銘を受けました(涙)
←当時の広告 (左) を見る限り、全部で11種類オプション交換レンズ群が用意されていたことが分かりますが、例えば同じ中望遠レンズ域の中「Hektor 73mm/f1.9 (L39)」があり、その描写性をネット上でチェックしたところ「明らかに今回扱ったElmar 9cm/f4との違い」を明確に認識し、改めてその凄さを認知したと言うか「まさにオドロキしか無い」と言い切れてしまいます(汗)
そもそも当方は「写真スキルすら皆無」なので、そんな人間があ~だこ~だ言っては罪になるかも知れませんが(怖)、この「Elmar 9cm/f4」の写りは (Elmar 90mm/f4のほうではない)
白黒写真のみならずカラー写真、それこそ今ドキのデジタル一眼レフカメラ/ミラーレス一眼レフカメラでの撮影にも十分応えてしまう対処能力を持つ、大変優れたオールドレンズであることを、今回いろいろ探索して知ることができました(涙)
試しに一方の「Hektor 73mm/f1.9 (L39)」もその写り具合を調べましたが、そもそも光学系の設計として「3群3枚トリプレット型光学系の色収差改善を狙ってダブレット化してきた光学系の開発概念:3群6枚ヘクトール型光学系」であることから、予想していた通り「白黒とカラー写真とで色成分の振り分けがバラけてしまい、特にカラー撮影時に滲みの出現が極端化してしまう」印象を強く受けました (当時の対象は白黒フィルムなので、カラー写真でチェックすること自体にムリもあるが)。
それ故に、却って今回扱った「Elmar 9cm/f4」の写り具合に再度惚れ込んでしまったと言うか、どの写真を観ていても「間違いがない」印象の確実性に、改めて感心した次第です(汗)
それは「3群4枚のテッサー型光学系だから」と言ってしまえば、それだけで話が終わりかねませんが、然し実は「白黒写真での階調表現性の素晴らしさ」をテッサー型光学系だけでどれだけ示すことが適うのか考えた時、はたしてそれほど巷で万能と褒め称えられるほどの光学設計ではないように思うのです(汗)
・・ところがこの「Elmar 9cm/f4」は、まるでそれを体現させてしまっています(驚)
いったいどうすれば、どのように光学設計すれば、僅か3群4枚の光学硝子レンズだけでそれだけの表現性を残せてしまうのか、頭が悪い当方にはオドロキしか残らないのです(驚)
さらにその印象はカラー写真でも破綻しません。もちろん階調表現は白黒写真の256階調のグレースケール世界と比較すれば、自ずとカラー成分の振り分けにさすが3群4枚ではムリが来ると予想していたのを、呆気なく裏切りました(笑)・・ヘクトールのような極端さがなくて、
観ていて納得できる範疇でバラけている程度なのが「それがむしろ素直に写っていて好感をもてる」との感想です。
その意味で「間違いがない」との表記は「そつなくこなしてしまう」と言う、無難なさじ加減に或る意味惚れたと言っても良いかも知れません(汗)・・それをこの「全長:僅か8cm弱」という大変コンパクトな鏡胴でヤッてしまうのだから凄いのです(涙)
「まるで最近の自分のようだ」と一番最初に即座に思ったのが正直なところであり(笑)、昨年末のクレームの中で暗黒面に堕ちてしまった自分の心境として「できないモノはできないと言っているのに」と言う想いが込み上げてきた時、この「Elmar 9cm/f4」もできることの中で精一杯ヤッている点に、心ならずも一瞬にしてヤラれてしまったと言うか、共鳴してしまったのだと思います(恥)
要は先日来「3群4枚エルマー型光学系」と「3群4枚テッサー型光学系」の同一性と不同について、それぞれの特許出願申請書内記述から紐解いて自分なりに納得できた・・エルマーはテッサーに非ず・・との結論に立ち返る時、まるで今回の「Elmar 9cm/f4」の写り具合がそのまんまにそれを証明しているように思ったのです(汗)
テッサー型のメリットは「光を集めるだけ集め最後に色収差を改善して解像度に結びつける」である一方、欠点は「大口径化に対応できない」点が、それら発明の記述から挙げられます (標準レンズ域と同格を狙うなら75mm程度の焦点距離が精一杯)。
それに反してエルマー型は「潔く集められた光だけに限定しつつも色収差以外の収差まで対応して解像度に結びつけた」点がメリットです。欠点は収差改善に課題が残るものの、テッサー型より改善度合いが優れているとも受け取れます。
↑上の図は・・・・、
左:Ernst Leitz Wetzlar製「Elmar 50mm/f2.8《第1世代:1960年製》(LM)」
→ 3群4枚エルマー型光学系
中:Ernst Leitz Wetzlar製「Elmar 9cm/f4《第2世代:1935年製》(L39)」
→ 3群4枚テッサー型光学系
右:『DE767287C (1939-07-12)』ドイツ特許省宛て出願
→ 3群4枚テッサー型光学系に対するガレリオ式望遠鏡方式の接眼レンズ発明
・・・・です。左と中央の光学系構成図は、オーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図になります。
エルマー型が「前玉の次に絞りユニットが配置される」設計に対し、テッサー型は「第2群の次に絞りユニット」である点に着目し、まさに特許出願申請書内の記述にも「前後群のパワー配分を違えていることに着目」している内容が記されていました(汗)
そもそも入射光に対する概念の違い、或いは今度は透過してくる入射光に対する「収差の改善内容」の違いも明確にその記述に記されており、まさにテッサー型の開口面積の欠点についてさえ明記していました(汗)
するとではどうして今回扱った「Elmar 9cm/f4」では「エルマー銘なのにテッサー型光学系を採用したのか???」との純粋な疑問に突き当たります(汗)
そこで参考になたのが右端の特許出願申請書で、ここで記されている発明概要は「中望遠レンズ域のレンズにキャップ式の接眼レンズを組み合わせることでガレリオ式望遠鏡として使える」案件であり、その発想自体は別の内容なるものの、ここの掲載されている中望遠レンズの光学設計がテッサー型なのを目にして、特に第3群後玉のトレースで明確に捉えることが適いました(汗)
・・後玉たる2枚貼り合わせレンズの第3群は、厚みが薄いのです。
それは中望遠レンズだからこその理由になりますが、左の光学系構成図が標準レンズだったが故のバックフォーカスに対し、中望遠レンズのバックフォーカスを考えた時、自ずと長距離になるのは自明の理であり、後玉の厚みは薄くせざるを得ません。
この時、1933年時点の光学硝子材のレベルで考察すると、おそらくこの光学設計が精一杯だったのではないでしょうか・・テッサー型の欠点から開口面積の大型化を敢えて狙わずに、小径のまま然しバックフォーカスを稼ぐ理由からテッサー型を採ってきたのが窺えます (あくまでも光学知識皆無な当方の妄想範疇を超えません)(汗)
後で掲示しますが、後の時代には何と「今さらの3群3枚トリプレット型光学系」すらも新種硝子を活用して実装してしまうのがライカなので(汗)、そこに光学設計の古い新しいは一切関係ないのだと言う企業理念が垣間見え、改めて今回いろいろ探索していて素晴らしさを堪能できました(涙)
ちなみにこのように特許出願申請書内記述ですら、光学系の前後群に於ける
パワー配分を重視していることから、光学系は必ずしも全体の構成だけを
捉えて判定するべきではないことが明らか・・と理解しています。
その意味でもテッサー型光学系とエルマー型光学系との対比は (特許出願申請書内記述を観る限り)、非常に光学の勉強になりました(汗)
↑上の羅列は、ネット上のwikiや海外オークションなどの掲載写真からピックアップしてきたモデルバリエーションを示す写真です。
❶ 第1世代:1930年〜1931年、巷でファット型/ダルマ型と呼ぶ
❷ 第2世代:1933年〜1945年 (black)、
❸ 第2世代:1933年〜1947年 (silver)
❹ 第2世代:1947年〜1954年 (silver)、マウント直前皮革貼り
❺ 第2世代:1947年〜1952年 (?) (silver)、マウント直前の皮革貼りが無い
❻ 第2世代:1954年製 (silver)、マウント直前の皮革貼りなるも、前群格納筒が長い
❼ 第3世代:1954年〜1968年 (silver)、collapsible (沈胴式)、Walter Mandler氏
❽ 第3世代:1954年〜1964年 (silver)、新種硝子による再製産品
❾ 第3世代:1954年〜1963年 (silver)、Walter Mandler氏による光学設計
❿ 第3世代:1964年〜1968年 (silver)、マウント直前皮革貼り、唯一トリプレット型
⓫ OUAGO (#16467) オプションパーツ:VISO FLEXで近接撮影可能 (レンズヘッド装着)
⓬ 第4世代:1973年〜1978年 (black)、ライカCL用「ELMAR-C」銘
・・と調べまくりましたが、世代の括りは細かい種類が多くてよく分かっていません(汗)
参考にしたのは「The Leica and Leitz Lens Compendium by Thorsten Overgaard」
です。
また「L39マウント規格品」の3群3枚トリプレット型光学系実装モデルも顕在するようですが、個体写真を発見できませんでした (上の羅列❿はLMマウントです)。トリプレット型の描写を観ると、さすが3枚玉の感じが色濃く現れている繊細感を全面に打ち出している印象を受けますが、やはりその反面シ~ンとしての緊迫感/臨場感/リアル感の表現性に限界を感じるところです(汗)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑今回のオーバーホール/修理個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。
そもそも上のモデルバリエーション一覧「⓫ OUAGO (#16467) オプションパーツ:VISO FLEXで近接撮影可能 (レンズヘッド装着)」のとおり取り外したレンズヘッド・・鏡胴「前部」のこと・・をネジ込んで近接撮影用としてVISO FLEXで使えるワケで、鏡胴二分割方式で設計されています。
その意味で鏡胴「前部」は何かと言えば、鏡筒だけなので光学系前後群と絞りユニットに絞り環と言う構成ですから、誰にでも整備できる話になります。しかし整備すると言っても、せいぜい光学硝子レンズの清掃くらいしかできないでしょう(笑) 絞り環は位置決め環を外さなければ整備できるかも知れません・・確かにプロの整備者の中には、外さずに綿棒で拭いて清掃しているくらい・・徹底的に経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びを完全排除したい当方にとり、それは受け入れられない大前提です(笑)
↑上の写真は取り外した光学系第1群前玉〜第3群後玉までを順に並べて撮影しています。これによって初めて「3群4枚テッサー型光学系」実装していることが『証拠』として明言できます(汗)・・光学系前群の要素を赤色文字で表記し、光学系後群をブルー色文字で記しています。またグリーン色の矢印で指し示している方向は、前玉の露出面側の方向を意味します。
いずれもご覧のように黄銅材のモールド一体成型のように見えますが、実は前玉にだけ締付環が存在し、本来前玉は外せるようです。
ところが今回の個体はバルサム剤でコバ端を接着しているのが裏から見え、溶剤を注入しても「レンズ銘板の裏側の為に一切溶けず」外れません(汗)・・それもそうで、レンズ銘板を見れば一目瞭然ですが、前玉との境界をキッチリ面取りしている設計なので、このバルサム剤による接着は「製産時点」との憶測が確実性を帯びてきます(汗)
実際黄褐色のバルサム剤が裏から丸見えとなれば、ワザワザ「加熱処置」までして溶かす必要もなく、特に表裏面で清掃にも困らないので「製産時点」を尊重しました。その意味で、今回のようにバラせないほどに固着していた場合「加熱処置」を施すと間違いなく溶けてしまうと考えられ、下手に溶かして動くようになると、光学清掃時の着脱で「コバ端を欠いてしまう」懸念も高くなり、それもあって今回イジっていません(汗)
逆に言うなら「レンズ銘板の縁がそれほどまで前玉に密着する設計」を意味しており、少々珍しいこだわりの設計です (普通一般的な面取りならレンズ銘板と前玉との間に段差を備える)。
・・然し、それだからこそレンズ銘板からの見栄えが素晴らしい印象なのは、褒めすぎか(笑)
↑同様表記のままヒックリ返して裏側を上に向けて撮影しています。当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話なので(笑)、「公然と平気でウソを拡散し続けている」と某有名処のコメント欄に誹謗中傷され続けている始末で(泣)、仕方ないのでちゃんと『証拠写真』を載せて解説しなければイケナイみたいです。
(面倒くさい)(笑) 後で引退してから当該被疑者2人を営業妨害と慰謝料請求で告訴する為に、その被害を被っている事実として2022年以来記載し続けています。
(しつこくてスミマセン)
↑実は当初バラす前の実写確認などで無限遠位置をチェックしている際、装着していたRICOH製GXRマウント内撮像素子面の保護硝子面に「黒い微細な粒子が付着した」為、その真犯人を突き止めるべく調べている時の撮影です(汗)
上の写真は取り外した後玉・・2枚の貼り合わせレンズ・・をひっくり返している写真です。赤色矢印で指し示している箇所に既に一部剥がれ落ちている「反射防止黒色塗料」が残っているのを確認できます(汗)
上の記載内容はその「反射防止黒色塗料」を溶剤を使い溶かしつつ剥がしている時に思いつき慌てて写真撮影しています。従って後玉裏面側の「反射防止黒色塗料」は既に剥がし終わっています (レンズコバ端着色のこと)・・なにしろいちいち『証拠写真』が必要なので、マジッで面倒くさいです(涙)
↑撮像素子面の汚れを知って、最初は後玉を疑いましたが、むしろ「距離計連動ヘリコイドの外周を着色した反射防止黒色塗料」のほうが、より真犯人っぽいです(汗)
ご覧のように既にバシバシと一部の「反射防止黒色塗料」が粒状になって剥がれているのを確認できました (赤色矢印)(怖)
ネット上を観ていると「ヘリコイド付マウントアダプタ」或いは「マクロヘリコイド付マウントアダプタ」など、凡そサードパーティ製品に対し「造りが粗悪品なのでヘリコイドグリースが滲み出てきて撮像素子面を汚すのではないかと怖い」と語っている人が居ますが・・ならば距離計連動ヘリコイドのグリースはどうして大丈夫なの???・・と指摘したいです(汗)
工業製品としての融通性、互換性を継承したいが故に、未だに同じ方式の概念を取り入れ続けるライカの企業姿勢は、確かに素晴らしいと感嘆しか残りませんが(涙)、その一方で「はたしてこの距離計連動ヘリコイド方式の設計概念、ひいては発明概念は正しかったのか???」とすら当方にはフツフツと疑念ばかりが募ります(涙)
フィルム面、或いは撮像素子面に対する保護耐性面から捉えるなら、そもそもこの設計概念/発明概念「距離計連動ヘリコイド方式」には相当なムリがあったのではないかと、強く、本当に強く感じます(汗)
ホンネを言ってしまえば、その「距離計連動ヘリコイド方式」の概念の中で、ヘリコイドのネジ山が露出している考え方自体に当方は相当な懸念を抱いており、実際これら「L39マウント規格品」の整備時に、或いはその対象となるオールドレンズの構造面で「ダブルヘリコイド方式」を採らざるを得ない時点で、抵抗感がとても強いです(泣)
しかしリアルな現実には「もっと言うなら、そもそも砂の侵入のほうが当たり前に考えられる脅威」として捉えてしまうなら、このような内容の話の懸念度はだいぶ低下してしまいます(笑)
・・要は何処に脅威の基準を置くのかが問われる話になりかねませんが(汗)、もっと足元を見据えるなら「反射防止黒色塗料」ですら、まるで撮像素子面に対する『脅威』になっているリアルな現実を、皆さんはもっと認知すべきなのではないでしょうか???(汗)
実際ライカ製デジタル一眼カメラ/ミラーレス一眼カメラを使っていても、そもそも撮像素子面の保護硝子自体が帯電防止策を講じているが為に、或いはクリーニング機能を装備しているが故に、これら微細な塵/埃/汚れは撮像素子面を脅かすことなく使用が適いますが「いつ侵入してくるか分からない砂よりも、むし怖い存在」と認知しているのは、どうして当方だけなのでしょうか???!!!
その脅威としての存在を自覚できない (侵入する瞬間を自覚できない)「砂」よりも、まるで見てくれの良さ狙いだけで着色され続けている「反射防止黒色塗料」が塗布されたまま、プロカメラ店のガラスケースに陳列されているオールドレンズを、喜び勇んでお金を払って買っているリアルな現実に・・当方はマジッで呆れてしまいますね(笑)
・・そういう要素がまるでニッポン人らしく見え、外国人との意識面での大きな違いです(笑)
どうして皆さんはそれほどまでに「反射防止黒色塗料」が大好きなのでしょうか???
・・全く以て理解できません(汗)
↑上の写真は、工業用サビ取り布を使い清掃して除去した「絞り羽根の赤サビ」状況を撮影しました(汗)・・そもそも製産時点で絞り羽根がカーボン仕上げだったワケで、或る意味経年の中で仕方ない事実ではありますが、空気と触れ合うことで起きる酸化/腐食/錆びよりも「揮発油成分」による「絞り羽根の油染み」が水分を誘引し留めてしまい、具体的な「赤サビ」と言う酸化/腐食/錆びの状況に陥ります。
実際やがてこのまま放置プレイが進むと「物理的に絞り羽根の弱い部分から順次朽ちていく」のは、紛れもない真実です (実際絞り羽根がボロボロに朽ちている個体がそろそろ現れ始めている)(怖)
・・それほど巷では「絞り羽根の油染み」はまるで放置プレイばかり(涙)
50年後に絶滅して消滅していく運命なのは、工業製品たるオールドレンズと言えども避けて通れない宿命なのでしょう(笑) その時、当方はもう居ないので気になりませんが(笑)
特にこの数年、コロナ禍辺りからになりますが、市場流通品のオールドレンズの実装光学系の悪化状況、或いは絞り羽根の油染み状況、ヘリコイドグリースの変質状況などなど、凡そその劣化度合いがだいぶ進行しているように見えてなりません(怖)
特に光学系内の薄いクモリの因果は「蒸着コーティング層の劣化、反射防止黒色塗料のインク成分による化学反応、白色系グリースによる揮発油成分」と本来製産時点に「製品寿命の耐性」懸念材料として想定していた要素を大きく上回る状況なのが明白であり、それでもなお「それら脅威をまるで放置プレイし続ける」態度に、ほとほと嫌気を覚えているところです(涙)
星の数ほど流通する中で、当方が手にできる数などたかが知れており、そこにいったい何の意義が在ると言うのでしょうか???(笑)・・そう思いますね、まるで焼け石に水ですョ(笑)
↑今度は当方の手による『磨き研磨』が終わった状態で、採りた下光学系を順次並べて撮影しました。これでようやく黄銅材のモールド一体成型だったのがより明確に分かるのではないでしょうか(笑)
もちろん溶剤で溶ける「反射防止黒色塗料」は完全除去済です。
↑上の写真は光学硝子レンズの清掃作業が全て終わり、ネジ込んだ状態の光学系第1群前玉と第2群の状況です (写真下側が前玉露出面側方向)。
すると赤色矢印で指し示している箇所に過去メンテナンス時の整備者がマーキングして残していた刻み込み「2本線」が確認できますが、その位置が互いに合致していたハズなのに「整備が終わってネジ込むと僅かにズレている」のが一目瞭然です(汗)
これが意味するのは「着色していた反射防止黒色塗料の厚み分が消滅した結果、ネジ込みが進んだ」ことを表し、この位置が「製産時点」との憶測に到達せざるを得ません (カニ目レンチを使いネジ込んでいますが、これ以上入りません)(汗)・・もちろん当初バラした直後はマーキングが合致していたのは、言うまでもありません(笑)
・・そして実際組み上がり後に実写確認すれば、まるで解像感が増しているのが分かる。
から堪らないのです(笑)・・これほどオーバーホールしていて「チョ〜気持ちいい!!!」感覚は言葉に言い表せないほどです(涙) 確かに操作性が良くなって撮影時の使い易さ感が増すのも醍醐味ですが、なによりも「写真を残す為の工業製品」なのだから、オールドレンズ整備の最優先事項は「一にも二にも三にも描写性の結果」しかあり得ません!!!
周りでは「それをあたかも反射防止黒色塗料のせいにしてウソを拡散し続けている」とまるで貶され続けていますが(笑)、では他に一体何が在るのかと言いたいですね(笑)・・それほど光学硝子レンズ清掃には限界があり、相手が蒸着コーティング層の背後に保護されている物理的な存在となれば、自分が執れる要素は限られてしまいます(涙)
当方がちゃんと『証拠』と『根拠』を挙げて解説している以上、貶すならそれ相応に『証拠』と『根拠』を明示するのが「大人の会話」ではないかと思いますね (だから低俗だと言っている)(笑)
・・聞いてますか??? 世の整備者の方々(笑)
↑同様、1枚目が当初バラして溶剤洗浄した直後の撮影で、2枚目が当方の手による『磨き研磨』後の撮影です。
黄銅材パーツなのが分かりますが、当方では「グリースのチカラでトルク感を軽く仕上げる」のではなく「グリースの粘性を活用してトルクを与える」オーバーホール作業なので、オーバーホール工程内での課題は「ご依頼者様のトルクの好みを把握し追求すること」であるのは、言うまでもありません(笑)
当方が執拗に何度も何度もこのブログで貶し続けている過去メンテナンス時整備者の所為による「グリースに頼った整備」が、当方のスタンスとはまるで正反対であるのがご理解頂けるでしょうか???(笑)
仮に、もしも一番軽いトルク感でこれらヘリコイド群のネジ込みを行うなら「グリースなど塗布せずにそのまま素のままにネジ込んでしまえば、まるでスルスルとツルツルと回転しながら回転運動を続ける」であり、そこに介在させているグリースの役目とは「ご依頼者のお好み」以外存在し得ないのは、自明の理ではありませんか???(笑)
是非とも「グリースに頼った整備」が大好きな世の中の整備者の皆さんには、この根拠に対する反論をお願いしたいところですね(笑) ましてやオールドレンズの耐用年数に大きく影響を与えてしまう「白色系グリース」塗布など、以ての外です。
何度も何度も執拗に述べますが「当方では一切金属用研磨剤を使わない」ので、金属材が黄銅材だろうがアルミ合金材だろうが関係なく「金属質に浸透する成分が顕在しない」為、これら表層面の輝きを実際に目の当たりにすれば、その違いを如実に感じ取れます(笑)・・金属用の研磨剤を使った場合、よほど本格的に洗浄工程を経ない限り、金属質に研磨剤の成分の一部が浸透してしまい、表層面の質感がまるで変化してしまいます(怖)
逆に言うなら、金属加工会社様で切削研磨した後、必ず洗浄会社に受け渡し徹底的な洗浄工程を経てから、次のメッキ加工へと進む手間をかけている根拠がそこには在り、必ずしも「水」ばかりを使わず、水性溶剤や油性溶剤を使いつつ洗浄工程を経て初めてメッキを被せられるのが、これらパーツが用意される手順です。
外に転がっている石でさえ、内部に水分を含有してるワケで、金属材だから水分が存在しないと思い込んでいるなら大きな間違いです。その意味で「水」の浸透力の驚愕性能は計り知れないと認知するべきですね(笑)
↑ここからは完全解体して後に、当方の手により『磨き研磨』を施した各構成パーツを使いオーバーホールの組立工程を進めていきます。
絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒でアルミ合金材削り出しです。
↑同じ鏡筒ですが、横向きに置いて撮影しています。今回扱った個体は「1935年の製造品」であることを、その製造番号から調べられますが、その当時戦前ドイツに於ける工業製品の品質の高さがこの鏡筒だけで探れます!(驚)
赤色矢印:切削技術の精巧さに合わせて切削後の面取り加工の技術レベルが窺える品質の高さ
ブルー色の矢印:アルミ合金材の陽極アルマイト仕上げの質の高さを見て触って確認できる
グリーン色の矢印:アルミ合金材削り出しによる平滑面加工の旋盤技術の素晴らしさ
日本でも戦前まで遡ると、確かに黄銅材や真鍮材/ブラス材などの加工レベルは非常に高かったと思いますが、残念ながら戦後を待たなければアルミ合金材の工業技術はここまで追いつきませんでした(涙) それだけ戦前ドイツの産業工業技術の素晴らしさは秀逸だったことの表れではないかと、本当にいつも感心してしまいます(涙)
凡そ戦前〜戦後で工業製品の品質の良し悪しを問うなら、黄銅材よりもアルミ合金材削り出し加工品を自分の手に取り確認してみると良いと思いますね。するとドイツのみならず、当時のフランスや英国に米国など、様々な国々の工業製品の違いを明白に掴み取ることができるからオドロキなのです!(驚)
それは金属加工のみならず、メッキ加工まで含めそれぞれで違いが明らかなのがオドロキなのであって、お国柄や民族性も加味しつつ何処の何にこだわりを魅せるのかがまるで違うことに今さらながらオールドレンズを扱っていると知ることになります(驚)
例えば米国の当時のアルミ合金材精製の概念や、フランスのメッキ加工に対する概念、英国のアルミ合金材への取り組み、或いはもちろん日本の旋盤技術の諸外国との大きな違いなど、様々な面で探索できるのがまた楽しかったりします(笑)・・その意味で、やはりオールドレンズは「時代を背景とする工業製品の一つ」なのだと、改めて感じ入りますね(涙)
↑絞りユニットの構成パーツはこの2つだけです(笑) 「位置決め環 (左) と開閉環 (右)」です。「開閉環 (右)」の両サイド側面にはブルー色の矢印で指し示している箇所にネジ穴が1つずつ備わり、ここで絞り環と締付ネジで連結する設計です・・このことをちょっと覚えていて下さいませ。後で解説します。
↑また「位置決め環 (左)」の側面にも締付ネジ用のネジ穴が用意されており、ご覧のとおり「他に締め付け痕が残っていない」ことから「製産時点の絞り羽根開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量)」だったことが証明されます (赤色矢印)。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
↑鏡筒最深部に絞りユニットをセットしましたが、この状態はまだ絞りユニットが固定されておらず、ひっくり返すと絞り羽根がバラけてしまう状態です(汗)
↑同じ状態のまま鏡筒を立てて撮影しました。側面両サイドに切り欠き/スリット/開口部が備わり、そこに「内部絞りユニットの開閉環が見えている」のが分かります (ブルー色の矢印)。一方その開口部をグルっと囲むようにネジ山が切削されていて「ここに絞り環がネジ込まれる設計」なのが明白です (赤色矢印)。
つまり「グリースを絞り環内側に多く塗りつけると、それらの一部が絞りユニットの絞り羽根のほうに侵入していく」道理なのがご理解頂けるでしょうか???(怖)
ちなみに上の写真は「絞り羽根を最小絞り値まで閉じきっている状態で撮影」している為、ブルー色の矢印で指し示している箇所に「開閉環の側面に用意されているネジ穴が全く見えない」を明示しています。
↑そしてやはり当方が何度も何度も執拗にこのブログで述べ続けている「絞り羽根は最小絞り値側が最も重なり免責が増大し膨れ上がる現象が起きている」ことをブルー色の矢印が指し示している箇所を確認することで分かります(汗)
一つ前の写真で見えていなかった「開閉環の側面に備わる絞り環との連結用ネジ穴」が、上の写真のように光学系前群格納筒 (グリーン色の矢印) をネジ込むと「ネジ穴が現れた」のが明白です(汗)
つまり最小絞り値側で閉じきっていた絞り羽根が互いに膨れ上がっていた為、見えていなかった「ネジ穴」が、光学系前群格納筒のネジ込みで押さえつけられて「開閉環が下に下がってきた」からネジ穴が見え始めています。
従って「絞り羽根は最小絞り値側方向に向かうに従い、前玉の露出面側方向に向けて互いに膨れ上がるチカラが作用し、水平を維持できなくなりヘの字型に曲がる」ことを脅威と捉え述べているのです(怖)
つまりこの結果「絞り羽根の表裏にプレッシングされている金属棒が垂直状態を維持できなくなり、結果として絞り羽根の開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) が歪なカタチに変形する」ことを説明しているのです。
逆に言うなら「絞り環操作した時、最小絞り値側に向かうに従ってトルクが重くなる」のは道理だと言っているのです。開放位置と最小絞り値位置とでは、絞り環に伝わってくる抵抗/負荷/摩擦のチカラは違うことを認識するべきですね(汗)
・・だからこそ絞り羽根が油染みしたままの絞り環操作は製品寿命を短命化させている(怖)
と捉えるべきなのです(泣)
↑光学系後群 (ブルー色の矢印) を鏡筒にネジ込んで前玉側方向から内部を覗き込んだ時の写真です。すると後玉の内側に円形状の痕跡が見えているのが分かります (赤色矢印)。
・・この跡が何なのか、分かりますか???(泣)
実は後玉に着色されていた「反射防止黒色塗料」であり、光学硝子レンズの内側方向に「凡そ2.5㎜ほど塗られていた」そのフチ部分が痕跡として見えているのです(涙)
しかもその「反射防止黒色塗料」は溶剤で溶けたので剥がせた為に、このような痕跡が視認できるようになりました。上の写真の如く「完全開放した時の絞り羽根の収納位置/飛び出し具合/格納具合」を確認すれば一目瞭然ですが、どうしてさらにその内側「凡そ2.5㎜」も塗られなければイケナイのでしょうか???
・・頭が悪い当方は、その根拠を思いつきません(泣)
光学系内に透過してくる入射光は、どれだけでも重要なのではありませんか???
たかが2.5㎜程度遮蔽しても関係ありませんか・・残念ながら、当方はイヤです!(怒)
絞り羽根の縁から明確に入射光を取り入れてほしいです・・そう願ってどうしてイケナイのですか???
確かに実際は開放f値「f4」の先まで絞り環が回るので、仕様上の完全開放位置は僅かに内側なの間違いありませんが、だからと言ってさらにそこから内側にまで「反射防止黒色塗料」を塗って遮蔽してしまう所為が、信じられないと言っているのです(怒)
↑絞り環をネジ込んだところです。ギリギリまでネジ込んでしまうと絞り環操作が固くなりますし、手前すぎるとスカスカ感に陥ります。
なお赤色矢印で指し示している箇所の「絞り値刻印やマーカー」は、何と「銀象嵌 (ぎんぞうがん)」であり、ワザワザ溝を彫りつけた後に象嵌を銀で埋め込んでいるワケで「こんなこだわりの製造をあまり目にしない」ことを説明しています(驚)
ご依頼者様の言たる「工芸品として美しい筐体に、撮影した写真の特徴があり、色や個性ある描写が魅力的」とは、まさに的を射た表現であり、全く以て当方も強く同意します(涙)
ましてや、恥ずかしながら、当方は今までの14年間で今回初めて「銀象嵌入の彫り」を目にし、触ってその芸術性を堪能できた喜びは、なかなかコトバだけでは表現しきれません(涙)
・・オールドレンズには、そういう楽しみもあるのですね!
↑完璧に光学硝子レンズの清掃が終わり (各群あたり都合4回実施)、当初バラす前に確認できていた「各群に残る薄い全面に渡るクモリ」が、まるでウソのように消えて「硝子の塊であることを如実に感じさせる素晴らしい透明感とノンコーティングの美しさを体現した」ことを、ここにご報告させて頂きます(涙)
・・マジッで素晴らしいオールドレンズです!(涙)
↑前玉のほうから観るとこんな感じですが、ノンコーティングなので薄く曇っているように写るのは反射のせいです(笑) 確かに露出面の一部領域にはまだまだ薄いクモリが残りますが、それは言われて「ヨシ、必ず在るぞ!」と探せば発見できるレベルを意味します(笑)
↑同様後玉が方向から覗き込んでいる撮影ですが、製品として組み上がってからはこのように明白に後玉をあからさまに眺めることはできません(汗)
光学系第2群も第3群の後玉も、もちろん後玉は2枚貼り合わせレンズなのですが、それすら忘れさせてしまうくらいに秀逸な透明感を誇り、こんな光学硝子レンズが1935年時点に精製されていたのかと考えると、オドロキを通り越しまるで奇蹟を見ているようです(笑)
・・その意味で、何回もオドロキや感銘に感嘆を覚え、どんなに楽しかったことか!(涙)
ありがとう御座います!(涙)
↑後玉には1箇所だけ、ご覧のようなカビ除去痕が残ります (赤色矢印)。ノンコーティングなのは理解できますが、はたしてこのような痕跡がいったい光学硝子材のどの層に生じているのか、まだまだ研究不足でよく理解できていません(汗)
従ってこの痕跡は光に透過させても視認できず、光に翳して反射させた時に初めて視認できます。
もしかしたらノンコーティングと言えども、素のままの光学硝子材を露出したままには済ませないハズなので、保護層が蒸着されているのかも知りませんが、それを示す特許出願申請書をまだ発見できていません(汗)
↑鏡胴「前部」はこれで完成したので、鏡胴「後部」のヘリコイド群の組立工程に移ります。
❶ ヘリコイドオス側 (黄銅材)
❷ ヘリコイドメス側 (黄銅材)
❸ 距離計連動ヘリコイド (黄銅材)
❹ マウント部 (真鍮材/ブラス材)
❺ 指標値環 (アルミ合金材)
❻ 距離環用ローレット (滑り止め) (黄銅材)
❼ 距離指標値環 (真鍮材/ブラス材)
❽ 距離環用ローレット (滑り止め) カバー (黄銅材)
❾ 無限遠位置設定環 (黄銅材)
・・こんな感じです。
特に一般的なオールドレンズの構造設計と比較した時「今回のモデルが特異でユニークすぎる理由」を示すのが「❾ 無限遠位置設定環 (黄銅材)」の存在です。
この環は❶ ヘリコイドオス側にネジ込まれてセットで運用し、且つ無限遠位置の合焦位置にピタリと合致させる構造設計を採っている素晴らしい要素です。
逆に言うなら「無限遠位置を微調整する厚みがあるシム環 (リング/輪っか) を鏡胴の前後に挟んで適合させる」手法が一般的だった中で、このように構造として無限遠位置の微調整機能を備えていた「先見性と将来的なサービスレベルの担保」にライカに対する畏敬の念を忘れるワケには参りません(涙)
・・こういう外から決して見えない場所に手を抜かない理念が1935年時点に既にあった!
これをオドロキと感銘を受けずして何が残るでしょうか???(涙)
↑その解説が上の写真です。「❶ ヘリコイドオス側 (黄銅材)」のグリーン色の矢印で指し示している箇所に用意されているネジ山に「❾ 無限遠位置設定環 (黄銅材)」がネジ込まれます。
実際「製産時点」を明示させる下穴の切削がブルー色の矢印で指し示している箇所に残ります (全周に3箇所均等配置)。
↑こんな感じで「❾ 無限遠位置設定環 (黄銅材)」がネジ込まれ、且つ左側に相応の隙間を残しつつも「その位置が無限遠位置で合焦する場所」である事を明示するが如く、赤色矢印で指し示している箇所/環の裏側にヘリコイドメス側がカツンと接種くして詰まって停止することで「無限遠合焦が確実になる」仕組みです。
・・いったいどうしてここまて無限遠合焦にこだわるのか、ライカよ!(涙)
マジッで本当にこのような構造設計を今回知り得て、ホロっと来ましたね(涙)・・こんな要素にこだわり抜いた光学メーカーを、当方は未だ14年間知りませんでした!(涙)
↑無限遠位置がピタリと合致した (ッて言うか、製産時点の位置ですが)(笑)「❶ ヘリコイドオス側 (黄銅材)」上から、隣に並べた「❻ 距離環用ローレット (滑り止め) (黄銅材)」が被さり、側面から3本のイモネジに拠って締め付け固定されます (赤色矢印で指し示している箇所の穴がイモネジ用のネジ穴)。
一方、そのイモネジが刺さる先もちゃんとくの字型の溝として用意してあり、ブルー色の矢印で指し示している箇所に「まさに製産時点しかあり得ない、たった1箇所のイモネジ締付痕
(全周3箇所)」が残ったままであり、他のイモネジ締付痕が見当たらない以上「今回の個体はまさに1935年時点を89年間もひたすらに維持し続けていた」と言う真実を、ここに告知する次第です(涙)
・・こんなオドロキを堪能できるなんて、本当にオーバーホールしていて良かったです!(涙)
改めて、ありがとう御座います!(涙)
↑「銀象嵌」施されている (赤色矢印) 大変美しい指標値環をセットします。
↑完成したヘリコイドオス側を無限遠位置の当たりをつけた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で8箇所のネジ込み位置がある為、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります
↑「❹ マウント部 (真鍮材/ブラス材)」に「❸ 距離計連動ヘリコイド (黄銅材)」をネジ込んだ上で、ちゃんと先に組み上げられたヘリコイドオスメスと合致させて仕上げます。
当然ながら赤色矢印で指し示している箇所の「❾ 無限遠位置設定環 (黄銅材)」の裏側がカツンと接触して詰まって停止した時の「その一瞬の停止位置=無限遠合焦の位置」という駆動原理で設計されている製品なのが分かります。
これが意味するのは「無限遠位置と最短撮影距離位置の両端で、このモデルは金属材が互いに接触して詰まって停止する方式の設計」であることを明示しており、当然ながら一般的なオールドレンズに見られる「カツンと音が聞こえて、勢いよく突き当て停止する」感触とはまた別次元の停止方法であることを認知するべきです。
何故なら、それこそが「黄褐色系グリース」を塗布した由縁であり、もしも仮に「白色系グリース」を塗布した場合は「詰まる程度がさらにもっと明確にハッキリとググっと伝わり、指が感じ取る」のが人間の指の感性の素晴らしさでもあります(怖)
それが当方が何度も何度も執拗にこのブログで述べ続けている「当時はシリコーングリースがまだ普及していなかった時代だ」との話であり、それがリアルな現実として操作性の違和感として繋がるのを・・誰も認めてくれません(涙)
・・白色系グリース大好き人間は、当方宛オーバーホール/修理をご依頼されぬよう願います!
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。「まさに工芸品」たる佇まいを魅せています(涙) 光学系が曇っているように写っていますが、それは「当方の写真スキルが皆無」だからであり、現物は当然ながらスカッとクリアです(涙)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。前玉露出面の一部領域に光に反射させて辛うじて視認できるレベルの薄いクモリが斑状に残っていますが、清掃で除去できませんし、外周付近には3㎜長の線キズも残っています。
↑光学系後群側もスカッとクリアで、極薄いクモリすら皆無です。
↑15枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に真円の円形絞りを維持」しながら閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」で当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)
ご依頼に従い「当初より軽めの操作性」に仕上げてあります。特にこのモデルの描写性からピント面のピーク/山の立ち上がりが鋭いので、その時に括っと微動するトルク感では使い辛くて堪りません(涙)・・そういうことまで勘案してトルク制御を微調整しているので、或る意味完全解体によるオーバーホールの醍醐味とも言いましょうか(笑)
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
↑改めて組み上がると、この「銀象嵌」の美しさをイヤでも知ることになり、ホンネを言うなら「当時もっと多くのオールドレンズに施されていれば良かったのに」と思ったりもします(笑)・・ちなみ筐体外装のに「磨き入れ」に伴い、これら「銀象嵌」も最低限の光彩が復活しています(涙)
・・本当に美しいです!(涙)
↑例によって当方所有RICOH製GXRにLMマウント規格のA12レンズユニットを装着し、ライブビューで無限遠位置の確認等行い、微調整の上仕上げています。その際使っているのは「Rayqual製変換リング (赤色矢印)」です。無限遠位置は「∞」刻印ピタリの位置でセットしています。
ブルー色の矢印で指し示している箇所のとおり「距離計連動ヘリコイドの反射防止黒色塗料も完全完全除去し磨き研磨済」ですから、今後撮像素子面やフィルム面を汚す心配をする必要がありません(涙)
・・最低限のエチケットではないでしょうか(汗)、と当方は思います。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:90㎜、開放F値:f4.0、被写体までの距離:78m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:39m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、40m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の80m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)
ハッキリ言って、極僅かですが「ピント面の立ち上がりがよりスキッと変化した」印象に仕上がっており、特に無限遠位置はもしかしたら当初バラす前時点で「極々ほんの僅かにアンダーインフ状態だったのかも???」との逆印象を覚えるくらい改善しました!(驚)
・・それがたかが「反射防止黒色塗料」如きにと、皆さんが当方を貶すリアルな現実です(笑)
↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
※純正フードが同梱してあったのをすっかり失念しています(汗)
↑絞り環を回して設定絞り値「f4.5」での撮影です。このモデルは大陸絞りなので、一般的なオールドレンズのような絞り値のステップとは異なります。
↑f値「f12.5」での撮影です。おそらくこのモデルではこの絞り値がピークの写りに見えます。そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めます。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
↑f値「f18」です。ピント面は解像度の低下が現れています。
今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き次のオールドレンズの作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。