♦ CARL ZEISS JENA DDR (カールツァイス・イエナ) MC FLEKTOGON 35mm/f2.4《中期型−I》(M42)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧東ドイツは
CARL ZEISS JENA DDR製広角レンズ・・・・、
『MC FLEKTOGON 35mm/f2.4《中期型−I》(M42)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製広角レンズ域モデル「Flektogon 35㎜」全体で捉えると231本目ですが、今回扱った「F2.4モデル」だけでカウントすると93本目、合わせてグリーン色の光彩を放つ蒸着コーティング層のタイプは僅か12本目と言う状況です。
バラすと実際にグリーン色のコーティング層を蒸着しているのは、光学系第1群前玉の表裏面だけなので、他の第2群~第6群までアンバーパープル、或いはプルシアンブル〜の蒸着コーティング層ばかりとなれば、それが意味するのは「光学設計を変更せず、設計の許容範囲内で入射光透過時の色成分に対する反射率の加減を変更しただけ」と受け取れ、その際に特別に
グリーン色成分を加味したのは「可視光の中で中間域に位置する波長のグリーン成分透過率を上げることで、より自然な色再現性を目指した概念」であることが分かり、そのような手法を執っていた時期は日本も含め、世界的にも極短期間でしかありません (市場受けが低かった事から、そのすぐ後に解像度の向上へと舵切りし、パープルアンバーやレッドアンバー系が重用された)。
例えば日本国内でも、MINOLTA製「緑のロッコール」モデルが全盛期だったのも1950年代後半~1960年代前半辺りなので、それほど長くはなかったとみています。
ちなみにネット上の解説で、このようなグリーン色コーティング層を蒸着してきたモデルを指して「植物などのグリーンが映えて写り、風景写真などに有利」などと解説しているプロの写真家が居ましたが(汗)、それは全くの思い込みで「植物のグリーンとは一切関係ない」ので要注意です・・あくまでも「可視光の中での中間域波長に対して透過率の向上を狙ったもの」なので、全く違います(笑)
後ほど解説していきますが、この当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製オールドレンズの内部設計概念の拙さに関し、あまりにもハイリスクな要因が多すぎるので、昨年来オーバーホール済みでのヤフオク!出品をやめました。現在はオーバーホール/修理ご依頼分のみ対応可能な
場合に限り受け付けている状況です。
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今回は先日やはりオーバーホール/修理ご依頼分として扱った中望遠レンズ『PANCOLAR 80mm/f1.8 MC (M42)』同様、実装している光学系の背景を探っていきたいと思います。
←なにはともあれ、非常に多くのオールドレンズの光学設計に影響を与えた発明が左に示した『❶ GB189627635 (1896-12-04)』であり、「Paul Rudolph (パウル・ルドルフ)」氏による1896年発明「4群6枚プラナー型光学系」です。
(特許出願申請書は英国内務省宛の申請でありGBはGreat Briteinの頭文字)
←これはこの特許出願申請書内掲載図面を見れば一目瞭然のとおり、まさに「Alvan Graham Clark (アルバン・グラハム・クラーク)」氏による1889年発明『⓿ US399499A (1889-03-12)』にみられる、凸凹メニスカス2枚の単独ガラスレンズを、絞り羽根を挟んで前後に対象配置することで「平坦性」を確保でき、より鮮明で高い解像度を期待できるとしている案件を参照しています。
←そして時代が進み、より均質で屈折率を担保できるクラウン硝子とフリント硝子による光学ガラスの精製環境が適い、それを基にさらに進化していったZeiss Ikon在籍時の「Willy Walter Merté (ヴィリー・ヴァイター・メルティ)」氏による1927年発明『❷ US1786916 (1927-09-29)』にて、現代向け4群6枚ダブルガウス型光学系へと進みます。
←オールドレンズの光学設計は様々な国のレンズ設計者による発明の黄金期に入り、その一人「Robert Richter (ロバート・リヒター)」氏発明の『❸ US2031792 (1933-07-26)』により、絞り羽根を挟んで僅か4つの凸凹メニスカスレンズを前後に配置するだけで広角レンズ域での均整のとれた描写を実現しました。
もちろん諸収差の改善にはまだまだ課題が残る光学設計であるものの、当方の感覚としては
広角レンズ域に於ける画期的発明の一つとして受け取る「4群4枚トポゴン型光学系」です。
そしていよいよ旧東ドイツはCarl Zeiss Jena在籍の「Harry Zöllner (ハリー・ツェルナー)」氏発明による、具体的な広角レンズ域製品への発展に向かいます。
Harry Zöllner (1912-01-29 ~ 2007-12-30) 氏は、ドイツ中東部に位置するテューリンギア州 Weida (ヴァイダ) 市に生まれ、Jenaの
工科大学で数学と物理学を学び、戦前の1938年までの期間はまさにCarl Zeiss Jenaの勤労学生だったようです。その後戦時中はVOIGTLÄNDER社の光学開発部責任者にまで登用されたものの、Braunschweig (ブラウンシュバイク) 市で爆撃に遭い、生まれ故郷のWeidaに戻りました。戦後は旧東ドイツはCarl Zeiss Jenaの光学設計局責任者として活躍したようです。(詳細はWeida市の800年の歴史を巡る旅に掲示されています)
←4群6枚ダブルガウス型光学系の前群要素を絞りユニットの前に配置し、後群側には4群4枚トポゴン型光学系から後群を配置した画期的な発明をします。
1959年米国特許庁に申請の『❹ US2968221A (1959-03-17)』こそが後に登場するレンジファインダーカメラ「CONTAX IIa」向け発明案件だった「Biometar 35mm/f2.8」の特許出願申請書です。
・・しかしここで何のことなく灯台下暗しで、いつも当方のバイブルになっている大御所様「Willkommen auf zeissikonveb.de!」のサイトで、この問題の真実を含む納得できる情報を見つけてしまいました。
(いつも感じますが、このサイトの説得力の強さは最大値です・・ありがとう御座います)
ドイツ人レンズ設計者/数学者の「Willy Walter Merte (ヴィリー・ヴァルター・メルティ)」氏が既に1941年時点で、この4群5枚ビオメター型光学系の発明案件を実施していたという証拠です。まさにこのページに明示されていますが、1941年5月に実施していることが明記されていますから「そもそもビオメター型光学系の発明はWilly Walter Merteだった」とのサイト掲載主マルコ・クレガー氏のコメントに全く以て賛成です!
さらなる発見として、マルコ・クレガー氏の「レトロフォーカス型光学系の発明は、実はCarl Zeiss Jenaが先だった!」との説得力ある説明に、まるで喝采です!
←今度は今回扱うモデルの原型にあたる「Flektogon 35mm/f2.8開発実施指示書」による証拠であり、まさに1949年8月13日付けで残されているエビデンスになります。
この実施が後に「Harry Zöllner (ハリー・ツェルナー)」氏による、英国内務省向けの特許出願申請書『❺ GB766975 (1955-03-16)』で日の目を見る経緯に至りました。
まさにこの特許出願申請書掲載図の中「Fig.2」こそがこの時の実施案件あり、発明者に「Solisch Rudolf (ゾーリッシュ・ルドルフ)」氏が連名記載なのもようやく繋がりました(汗)
当方自身全く思い込んでいましたが(汗)、これらの経緯から巷で語られ続けている、フランスは老舗の光学メーカーP. ANGENIEUX PARIS社による、クィックリターンミラーを内蔵する、
一眼 (レフ) フィルムカメラ向け世界初の広角レンズ「レトロフォーカス型光学系」実装モデル「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」よりも先に発明されていたことを確信しました(涙)
・・当方にはこういう発見が本当にロマンいっぱいで、楽しくて仕方ありません!(笑)
←ちなみに今回扱う最後のモデルバリエーションたる黒色鏡胴モデル『MC FLEKTOGON 35mm/f2.4《中期型−I》(M42)』を示す特許
出願申請書が左図で、やはり英国内務省宛申請の『❻ GB1473966 (1974-09-23)』です。
(特許出願申請書の2ページめに構成図の掲載あり)
↑上の写真は全て同一モデルですが、現在の海外オークションebayからピックアップしている「Flektogon 35mm/f2.8 T (silver)《初期型》」の写真です。
旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製「Flektogon 35mmシリーズ」の中にあって「zeissのT」刻印をレンズ銘板に付随する唯一無二のモデルです (zeissのTなので、モノコーティングです)。
製造番号から読み取れるのは「3419xxxx ~ 3966xxxx」とまさに1950年~1954年辺りに製産されていた個体であり、逆に当方の1953年発売との認識を更新せざるを得ません(汗)・・一部モデルはプリセット絞り環側にラインの刻印を伴います。
また上の右端のとおり「Flektogon 35mmシリーズの中で、やはり唯一無二の14枚絞り」と言う真円を維持し続けながら閉じていく円形絞りを実装している点も希少です。
右構成図は前出の特許出願申請書に掲載の実施例「Fig.2」からの
当方によるトレース図です。おそらくこのモデルの実装光学系を表しているのではないかとみていますが、なにしろこの個体自体が流通しないので未だ確認できていません。
←1953年に発売されたレンズ銘板に「T刻印が無い」ものの当然ながら同じモノコーティングのままのシルバー鏡胴モデルが左の写真です。
上に挙げた「初期型」とはレンズ銘板以外にパッと見で判別できませんが、実はあまりネット上でも指摘されず、問題視されないものの「最短撮影距離が違う」為に、必然的に光学系の設計が個別に異なる道理にしかなりません。
「zeissのT」刻印付きで、絞り羽根14枚実装の「初期型」の最短撮影距離:32cmに対し
1953年登場シルバー鏡胴モデルは極小数「最短撮影距離:35cm」が居ます (もちろんT刻印無し)、さらにその後の多くのシルバー鏡胴モデルは「最短撮影距離:36cm」です(汗)
・・最短撮影距離の相違は光学設計を同一にできない為、少なくとも3つ設計が在ります(汗)
右上の構成図が「初期型」のトレース図なら、当方が整備を始めた
最初の頃にブッ壊してしまったシルバー鏡胴モデルの中に「光学系
が全く別モノの個体があった」のを軽くメモに計測していました。
(まだデジタルノギスを使っていなかった頃)(汗)
カタチこそ「初期型」以降のフォームを執りますが、曲がり率も厚みも別モノです。
←19661年にはシルバー鏡胴モデルの製産がストップし「Gutta Percha (グッタペルカ/イタリア語)」或いは「ガタパーチャ (ラテン語/英語圏)」とも呼称しますが、この当時に流行っていた「アカテツ科樹木から採取できる樹液を使う樹脂材」で固まると硬質化するローレット (滑り止め) を施したモデルが登場します。
(巷ではラバーと言いますが、硬質化後はほぼ伸縮しません)
左写真のような突起状のタイプの他にもう1種類だけ「本革風にランダムな凹凸エンボス加工が施されたタイプ」もあります。
この時の最短撮影距離がみたび更新されて「18cm」と驚異的に近接撮影を可能にしたので、必然的に光学系も再設計されています。
但しこの「18cm」にはカラクリがあり、絞り環を開放「f2.8」に設定し、距離環を無限遠位置「∞」から回し始めると、すぐ絞り環が勝手に動きf4手前までズレていく仕組みで設計しています。
(つまり絞り環が勝手に動くので、絞り環を保持したまま操作していると内部が壊れる)
従って最短撮影距離:18cmの実距離では「f4近くでしか撮影できない」ことになるので、当方ではこの仕様を「見なし開放f値:f2.8」と呼んでいます・・距離環指標値の全域で「f2.8」を維持しません/∞位置の時だけです。
←1965年になるといっときですが「ゼブラ柄」が世界規模で流行ります。左の写真は距離環を回して最短撮影距離:18cmまで回し、突き当て停止した時の絞り環が示す絞り値を撮影しています(笑)
ご覧のように既に開放f値:f2.8を維持せず、f4手前辺り (簡易検査具で調べると凡そf3.6の印象) までズレてしまいます(笑)
それでも良ければ確かに最短撮影距離:18cmはちょっとしたマクロレンズのような近接撮影を実現するので、それはそれでソッチの方向性を期待していた人には価値を見出だせますが、下手するとネット上の解説でも全くこの点を説明せずに「マクロレンズにも使える」などと良い事ばかり述べていたりもするので、全く以て世知辛い世の中です(涙) 右図は以前ゼブラ柄をバラした際に計測したトレース図です。
←そして1972年になると繋ぎ的な意味合いだったのか「???」ですが、謎の内部構造を持つタイプが発売になります。
確かに「後期型」にあたる黒色鏡胴に入りますが、内部構造の一部にゼブラ柄時代の設計が残り、且つ最大の注目箇所は「最短撮影距離:19cm」でありながら「開放f値:f2.4」と言う、全く以て美味しいフレクトゴンです(笑)
マウント規格には「exaktaがメインの一方、稀にM42とM42+electric端子付がある」ので
当然ながらマルチコーティング化されたMCタイプで、しかも最短撮影距離の19cmまで開放
f値:f2.4をちゃんと維持する (本当は当たり前の話) 唯一の黒色鏡胴だったりします。
滅多に市場に出現しないモデルなので見つけたら即ポチるべきですが、当方の立場からすると「関わりたくないモデルの一つ」です・・ゼブラ柄時代の構造を持ちながら、その一方で無理やり自動絞り方式を変更している「いわゆる後のモデルへの過渡期の設計」の為、ただでさえ神経質な微調整なのに、とても太刀打ちできるシロモノではありません(涙)
逆に言うなら、このモデルの内部構造で金属製パーツに限界を感じ、いよいよさらに問題となる「樹脂製パーツへと変更していった」まさにその根拠のような存在なのかも知れません(汗)
「ベルリンの壁崩壊事件」まで10年ちょっとと差し迫ったタイミングなので、当のCARL ZEISS JENA DDRも既に直下だったPENTACONまで合併してしまい、旧東ドイツ国内でも稀なる総従業員数44,000人規模という巨大企業に成り果てていたものの、薄利多売には既に程遠い利益率によって、例えば旧東西ベルリンの操車場で、貨車ごと入れ替えるくらい本格的な「闇流し」がオールドレンズにさえも横行していたようで (以前ドイツ人ディーラーから聞いた話)、その結果本来欧米市場に流通するハズだった「C.Z.Jena表記」の個体や、商標権問題の制約からモデル銘をフルで刻印できなかった「B (Biotar)」や「T (Tessar)」などが多くなるどころか、むしろ今現在の市場流通品を見ても、それら制約表記の個体のほうが希少だったりします(笑)
←1975年に登場する最終形態ながら、実はモデルバリエーションが多く「Type0 ~ Type6」まである始末で、困ったものです(笑)
・・当方ではそれぞれ「初期型 ~ 後期型−II」とバリエーションを
分けて管理しています。
最短撮影距離:20cmに固定するものの、筐体意匠の変遷が極僅かに認められ、且つ蒸着コーティング層にも違いが確認できています。
右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い、逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
右構成図で最も判別し易いのは光学系第1群前玉の曲がり率で、前のほうで掲示の特許出願申請書掲載の光学設計は、おそらく「初期型」に採用したのではないかとみています (前玉露出面側に曲がり率があるから)。
逆に言うなら最短撮影距離:20cmのタイプの光学系は前玉は平坦です・・何度も指摘しますが、最短撮影距離が異なれば同一光学設計を採ることは物理的に不可能です。
《 モデルバリエーション 》
※オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
初期型:1972年発売
最短撮影距離:19cm
最小絞り値:f16
MC刻印:MC
前玉固定環:薄枠
銀枠飾り環:距離環
製造番号:9,800,000〜10,000,000の前で消滅
前期型-Ⅰ
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:MC
前玉固定環:薄枠
銀枠飾り環:距離環
製造番号:混在 (10,000,000〜、リセット後0700〜30,000)
前期型-Ⅱ
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:MC (マウント面に電気接点端子装備)
前玉固定環:薄枠
銀枠飾り環:距離環
製造番号:混在 (10,000,000〜、リセット後0700〜15,000)
中期型-Ⅰ:1980年代
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:MC
前玉固定環:幅広枠
銀枠飾り環:距離環
製造番号:リセット後0700〜70,000
中期型-Ⅱ
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:MC
前玉固定環:幅広枠
銀枠飾り環:無
製造番号:混在 (リセット後47,000〜70,000)
後期型-Ⅰ
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:白MC (auto表記附随)
前玉固定環:幅広枠
銀枠飾り環:フィルター枠
製造番号:混在 (リセット後30,000〜)
後期型-Ⅱ:〜1990年まで生産され終焉
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:白MC (auto表記附随)
前玉固定環:幅広枠
銀枠飾り環:無
製造番号:リセット後14,000〜,70,000〜220,000サンプル取得終了
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『MC FLEKTOGON 35mm/f2.4《前期型−I》(M42)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑まず最初に当初バラす前え時点に確認した問題箇所など、以下ご報告申し上げます(汗)
《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
❶ 距離環を回す時トルクムラを感じ、全域で重いものの最短撮影距離位置はさらに重い。
❷ A/M切替スイッチのAの時、f2.8~f22で絞り羽根が顔出しする。
❸ 鏡胴に極僅かな前後方向のガタつきが残っておりピント面の鋭さが変化してしまう。
❹ 絞り環の駆動域が開放側、最小絞り値側共に先まで回ってしまう。
❺ 光学系内の塵/埃に微かな汚れ状も視認できる。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❻ 白色系グリースが塗られているものの、既に揮発油成分で液化している。
❼ 反射防止黒色塗料を執拗に着色し、且つ一部にはプライマーも使っている。
❽ 鏡筒付随の上下カムが既に摩耗しており、適切に水平を維持していない。
❾ 基台側、距離環側共に、打痕/凹みが残っているのを確認。
❿ 鏡筒の締め付け固定ネジを転用し、且つその影響で絞りユニット内パーツが摩耗。
・・とまぁ~、こんな感じです(涙)
上記羅列の中で❶だけが今回のオーバーホール/修理ご依頼内容ですが、ハッキリ言って今回の個体は、特に最短撮影距離付近では「ピント合わせしているだけで、マウントが回ってしまい外れる」ほどの重いトルクに激変する荒々しい性格の持ち主です(汗)
上の写真は❷ A/M切替スイッチのAの時、f2.8~f22で絞り羽根が顔出しする、問題について当初バラす前の段階で撮影した「証拠写真」です。
A/M切替スイッチを「A自動絞り」に設定している時、絞り環の設定絞り値を「f2.4」なら正しく完全開放したままを維持できますが、絞り環を操作して「f2.8 ~ f22」間では
マウント面から飛び出ている絞り連動ピン押し込みの有無に関わらず「絞り環を回した途端に上の写真状態まで絞り羽根が顔出しする」為、要は完全開放してくれません (赤色矢印)(汗)
逆にA/M切替スイッチを「M手動」側に切り替えて絞り環操作すると、全ての絞り値で正しく絞り羽根が開閉動作するので問題ありません (マウント面から飛び出ている絞り連動ピンの挙動も正常)。
ちなみに皆さんも、或いはネット上でもほぼ指摘されているのを見た記憶がありませんが(笑)
このモデルの絞り環は「f2.4 ~ f4」の間だけが「2段クリック」なので、順番に絞り環操作した時の設定絞り値を明示すると「f2.4→f2.8→半段→f4→半段→f5.6→半段→f8→半段→f11→半段→f16→半段→f22」と言うクリック感を掴んでいる指が感じているハズです(笑)
・・そんな細かいこと、どうでもいいじゃないか! いちいち指摘するな!
と言われるのがオチですが(笑)、完全解体して整備する身の上からすると、こう言う細かい要素についてもキッチリ「観察と考察」が重要だったりします (そのように内部構造で設計され
そのようにチカラが伝達されているハズだから)(笑)
↑上の写真はバラし始めた時にその途中を撮影しており、❻ 白色系グリースが塗られているものの、既に揮発油成分で液化している、点の「証拠写真」です。左半分を既に綿棒で拭き取ってしまいましたが、少々液化が酷かったので右側半分を撮影しました (赤色矢印)(汗)
「黄褐色系グリース」が塗られていれば、凡そ8年以降辺りでこのような揮発油成分の液化が始まるようですが (あくまでも当方が過去に整備した個体を自ら回収して再びバラし確認した実地検証を根拠とした話)「白色系グリース」の場合は、下手すれば1年~長くても5年内にはこのような液化状態に陥り、ヒタヒタに広がります(怖)
↑やはりバラしている最中のマウント部内部を撮りました。既に各構成パーツを取り外してい
ますが赤色矢印で指し示している箇所に「極々僅かな塗膜分の粒子が固形化して盛り上がっている状態」を確認でき、それは指の腹で触っても間違いなく「凸状」に確認できるので、この赤色矢印で指し示している箇所は全周に渡り「マウント部を締め付け固定する筐体 (基台) との接触面」であることから「少なからず光路長への影響度がゼロとは言えない」を以て、このような整備時の所為は如何なものかと・・当方では問題視しています(汗)
・・確かに、たかが塗膜分の厚みなら、せいぜい0.02㎜くらいの話なのに大げさに騒ぐな!
と言われれば、もちろん返すコトバがありません(怖) ちなみにこのような塗膜塗装している根拠を明示しているのがグリーン色の矢印で指し示している箇所の着色で、要は高圧コンプレッサーによる着色なのが分かります(汗)
そもそもこれらの箇所は製産時点で微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工が施されているのに、どうして製産時の「濃いめのパープルでのメッキ加工」ではダメで、ワザワザさらに「反射防止黒色塗料」を塗ったくる必要があるのでしょうか???(汗)
逆に言うなら、設計者自らがヨシとOKサインを出したメッキ加工を敢えて認めないと言う、その根拠と理由を「世の中の整備者」はちゃんと明示すべきだと強く、本当に強く申し上げ
たい気持ちでいっぱいです(涙)
・・そのくらい毎回毎回、本当に「反射防止黒色塗料」の剥がし作業が面倒くさい!(涙)
もっと言うなら、たかが「反射防止黒色塗料」の塗膜分の厚みでと言いますが、このマウント部を締め付け固定する際には「間違いなくその厚み分の締め付け強度が締め付ける先の基台側に応力としてかかってしまう」ことに関し、どうして基台側に影響が絶対に起きないと明言できるのか、ぜひ教えて頂きたいです(汗)
このモデルでの部位別での影響度合いは、非常に神経質な瑕疵内容を起こしますが(涙)、このマウント部内部にも「樹脂製パーツ」が2点介在する為、特にマウント面から飛び出ている
絞り連動ピンの押し込み動作に係るチカラの伝達に少なからず影響が現れる・・と言うのが、当方の今までの13年間の経験値です!
↑いつもこのブログで執拗に述べまくっていますが(笑)、今回の個体も上の写真のとおり「光学系内の光学硝子レンズ締付環に反射防止黒色塗料を厚塗している」状況であり、それを剥がしている時の撮影です (赤色矢印)。光学硝子レンズの締付環なので、下手すれば光路長へのダイレクトな影響になりかねません(怖)
↑上の写真は全て完全解体が終わり、当方の手による『磨き研磨』も終わって、オーバーホールの一環として組立工程を経ている最中の撮影です。
左側面から飛び出ている「制御アーム」がスッと立ち上がりますが、目前には「樹脂材で造られている上下カム」が組み合わさっています。
グリーン色の矢印で指し示すように「上カムを太めの引張式スプリングが引っ張り続ける」のがこの「樹脂製上下カムの水平を維持できなくする一因」です・・まさに冒頭の❽ 鏡筒付随の上下カムが既に摩耗しており、適切に水平を維持していない、内容をここで明示しています。
↑同じ鏡筒を別の角度から撮影しています。「制御アーム」は絞り環から突出する「絞り値伝達ガイド」をスライドすることで、絞り環と連結し設定絞り値がこのアームを経て絞りユニット内部に伝達される仕組みです (従って絞り環駆動域としてブルー色の矢印のように移動する)。
問題の「樹脂製上下カム」が互いに組み合わさって接触するタイミングは、上の写真グリーン色のラインで囲っている「僅か2㎜弱の範囲だけ」なので、この上下カムが水平を維持しなくなるだけで「マウント面から飛び出ている絞り連動ピン押し込み動作に係る、伝達されてきた
チカラが正しく伝わらなくなる (この上下カムの駆動時に消滅していくから)」ことを問題視しており、リアルな現実に今回の個体も既に摩耗が進行し「上下カムを締め付け固定している
金属製締付ネジとの間で摩耗が進み水平を極僅かに維持できなくなっている」状況です(涙)
結果、冒頭の問題点の中で絞り羽根の開閉以上を引き起こしています。
↑同じようにオーバーホール工程の途中撮影です。基台に距離環をネジ込んで適切な無限遠位置をセットした状態を撮っています。距離環の裏側が丸ごと上から下まで「ヘリコイドメス側のネジ山」なのが分かると思います。
今回のオーバーホール/修理ご依頼内容である❶ 距離環を回す時トルクムラを感じ、全域で重いものの最短撮影距離位置はさらに重い、を確認する、或いは改善する作業として、先ず一番最初に取り掛からなければならないのは、上の写真で明示する「基台と距離環での回転時トルク制御」です。
これは❶の問題に関し、いったい何処に/どの部位に/どの構成パーツにどんな瑕疵が発生しているのかを明確に掴まない限り、その改善などできるハズがありません。
すると今回の個体は「既にここの段階でトルクムラが起きているのが分かった」次第です(汗)
↑その真犯人の写真を明示しましょう(笑) 赤色矢印で指し示している箇所に「基台側面の極々微かな凹み」で、おそらくは「軽くコツンとぶつけてしまった時の打痕程度」と受け取りますが、実はこの裏側には距離環とのネジ山が切削されており「そのネジ山の第一列~第二列」の位置なのがこの凹み箇所です。
それが意味するのは「距離環がネジ込まれる時の全てのネジ山に対し、この凹みの影響がダイレクトに伝わり瑕疵内容を発生させている」故に、トルクムラに至っています。
例えばこの基台側面の凹みが「もう少し下の位置だったらどうなっていたか???」と問われれば、それは「裏側ネジ山の最後の方のネジ山の列辺り」に影響が起きるので、この距離環をネジ込んでいった時に最初のうちはトルクムラが現れず、最後の∞刻印に近づくに従ってトルクムラが起きる・・と言う現象が現れます。
・・たかがちょっとぶつけただけなのに、あたかも原因の如く大騒ぎして煽っている!
と、今このブログをご覧頂いている皆様から言われるのがオチですが、リアルな現実として、既にこの2つの構成パーツだけでトルクムラを生じているので、どうにも逃げられません(笑)
全てこのように「原理原則」に則りあらゆる現象が起きますから、あ~だこ~だ文句つけられても当方にはどうしようもありません(汗)
従って今回の個体は既にこの工程段階で「距離環の全てのネジ山に対してトルクムラが起きるのは至極当然な話」と言う結論に到達します(涙)
・・であれば、問題はここからどのように対処して、どれだけ改善できるのか???
ですね(笑) もちろんシッカリ改善処置を講じて「トルクムラを解消させた」次第です。
・・言うだけ言い放って煽りっ放しで、後は経年劣化だから仕方ないではありません(笑)
有言実行ではありませんが、ちゃんと指摘した以上、改善する努力は惜しみませんし、そこに妥協もごまかしもありません。ヤレルことヤルべきことは可能な限り追求して、最後まで諦めずに果敢に挑戦し続けますが「低い技術スキルであるが故に信用/信頼に値しない」のは正直仕方ありませんね(笑)
↑さらに冒頭瑕疵内容の❶ 距離環を回す時トルクムラを感じ、全域で重いものの最短撮影距離位置はさらに重い、問題の「異常に重く激変するトルク」へと突き進みます(怖)
さんざん1時間近くあ~だこ~だイジり回し「観察と考察」を続けてようやく発見しました。
(技術スキルが低いからサクッと発見できない)(笑)
赤色矢印で指し示している箇所にやはり打痕による変形を確認しました・・これは指し示している箇所が極々僅かに内側方向に平らに凹んでいます(汗)
前の方で解説した基台側の微かな凹みは「確かにコツンとぶつけただけ」のようですが、こちら距離環の凹みは、このような僅かな凹みでも「アルミ合金材の肉厚がある分、相応に大きなチカラでガツンと瞬間的にぶつけた (或いは落下したか)」凹み方だと推察しています。
妄想するに、カメラボディにこの個体を装着したまま肩から下げていた時、何処かを通り抜ける際に「コツンとぶつけてしまった」その時に最初に当たったのが距離環の先端部分で凹んだ (基台側の凹みは二次的なモノ???) とみています(汗)
さらに指摘するなら、基台側の微かな凹みには「メッキ剥がれが確認できない」ことからも「外出時の岩や壁ではなく、何処か建物室内の木部ではないか???」とも言えそうです(汗)
まさに赤色矢印の位置その場所なので、裏側のヘリコイドメス側ネジ山にすると「鏡筒を繰り出した終端近くの位置 (つまりメス側ネジ山の終端近く)」なので、最短撮影距離:20cmに
近づくと途端に激変して異常に重くなるのが説明できます(汗)
↑距離環と基台を横方向から該当箇所を確認すると、こんな感じです(汗) 赤色矢印が指し示している箇所グリーン色のラインで囲っている範囲が打痕域で平坦に凹んでいますが、上の写真では凝視しても確認できないほど極々僅かな凹みです(汗)
すると例えばブルー色の矢印で指し示している箇所のローレット (滑り止め) の削れなどは、
本格的にシルバー剥き出しなのに対し、赤色矢印の箇所は意外にもキレイなので「ぶつけたのは屋内の柱か何か」ではないかとのと憶測が生まれます(汗)
↑ここからは冒頭問題内容の以下について順に解説していきます。
❸ 鏡胴に極僅かな前後方向のガタつきが残っておりピント面の鋭さが変化してしまう。
❽ 鏡筒付随の上下カムが既に摩耗しており、適切に水平を維持していない。
❿ 鏡筒の締め付け固定ネジを転用し、且つその影響で絞りユニット内パーツが摩耗。
上の写真はA/M切替スイッチを「A自動絞り」に仮に設定したと仮定した時に、絞り環操作すると絞り羽根が顔出ししてしまう現象 (赤色矢印) について、擬似的にその環境を揃えて撮影しています。
「A自動絞り」設定時に完全開放するのは開放f値:f2.4設定時のみなので、設定絞り値「f2.8 ~ f22」の間全てで上のように凡そf2.8レベルまで顔出しします。これは「A自動絞り」なので、マウント面から飛び出ている絞り連動ピンが押し込まれなければ完全開放するべきですが、このような現状です(汗)
一方「M手動絞り」設定時は絞り環全域で正常動作します。
↑上の写真はオーバーホール工程の途中の撮影ですが、既に絞り羽根が顔出しする問題について改善処置を講じてチェックしている時の撮影です。
それでもまだ赤色矢印の如く絞り羽根が顔出しします (多少はその量が減ってきてはいる)。当然ながらね完全解体して、絞りユニットも全てバラした上で、個別に問題になる構成パーツを逐一処置した結果の写真です (直せていない)(汗)
ところが今度は「A自動絞り」で上の写真のように改善できても「M手動絞り」にA/M切替スイッチをセットしただけで、再び絞り羽根が顔出ししてしまい、しかもその量が当初のレベルに戻ってしまうものの「それが今度はM手動絞り時に完全開放しない問題」に変わってしまい、まるで意味がありません(汗)
・・要はA自動絞りもM手動絞りも、どちらも完全開放しない(涙)
問題の側面を持つ現象であることが判明し、これは単なる微調整レベルでは改善が難しいと判定を下し、別の角度から再び (って言うか、もう既に3回調査していたが)「観察と考察」の
モードに入りました。
↑その結果突き止めた原因が上の写真です (1時間半かかりました)(涙)
上の写真の締付ネジは「鏡筒」をヘリコイドオス側のベース環に締め付け固定する時に使う
ネジです。3本使い、3方向から鏡筒を締め付け固定しますが、今まで扱ってきた同型モデル全てで「3本とも同じ長さで同じ径の締付ネジ」なのに、ご覧のとおり1本だけ長いのです。
(グリーン色のライン分長い)(汗)
要はネジ込んだ後にキッチリ硬締めで締め付けると1本だけ抵抗/負荷/摩擦を感じるものの、そのままネジ込んでいたのだと思います。結果鏡筒が極僅かに浮いてしまい、❸の極僅かな
ガタつきの確認に至りました (グリーン色ライン部分を切削/研磨して改善)(汗)
↑前述締付ネジで締め付ける対象の鏡筒を後玉側方向から見た時の向きで撮影しています。3本の締付ネジは、当初バラしている時に赤色矢印2本とグリーン色の矢印の1本にネジ込まれていたものの、問題の長い締付ネジはグリーン色の矢印の箇所に入っていました(汗)
・・よりによって、運が悪いことに上下カムが位置する場所です(涙)
どうして締付ネジの長さの問題が「上下カムの水平維持を阻害させたのか???」は、そもそも上カムがマウント面から飛び出ている絞り連動ピンの押し込み動作に連動して開いたり閉じたりするからです。
その時「上カムを操作する位置が鏡筒の浮きにより極僅かでもズレると下カムとの接触領域:2㎜弱に影響が現れる」点を以て、この位置の鏡筒の浮きは上下カムに対し意外にも影響力が大きかったと言わざるを得ません(涙)
・・たかがネジの長さが1㎜少々長いだけの話で大げさに騒ぐな!
と言われるのは分かりますが(笑)、然しそうは言っても「上下カムの接触範囲2㎜弱に対する鏡筒の浮き1㎜少々は致命的」との当方判定は覆せません・・それが「原理原則」です。
↑もう5回めになりますが、さらに絞りユニット内部の微調整に入っています。絞りユニットの構成パーツについて以下に示します。
❶ 位置決め環 (アルミ合金材)
❷ 開閉環 (アルミ合金材)
❸ 押さえ環 (樹脂製)
❹ 下カム (樹脂製)
・・こんな感じです。この他に関わるのは上の写真に写っている「非常に細い線径の引張式スプリング1本だけ」なるも、この引張式スプリングの役目はおそらくこのモデルの中で最も重要な価値を持つパーツであり「常に絞り羽根を開き続けるチカラを及ぼす役目」です。
この絞りユニットの問題だけで凡そ2時間を費やしていますが、未だに「A自動絞り」設定時の顔出しが解消できません(汗)
↑❶ 開閉環の「開閉アーム」が下カムで操作されるので絞り羽根が開いたり閉じたりします。また❷ 位置決め環には絞り羽根にプレッシングされている「位置決めキーと言う金属棒」が入って、溝をスライドするので「絞り羽根にもう1本プレッシングされている開閉キーの金属棒を軸にして絞り羽根が角度を変える」原理です。
するとこの説明から明確になるのは「回転しているのは❶ 開閉環」であり「❷ 位置決め環は固定したまま」なのがご理解頂けると思います (開閉環も位置決め環も両方とも回ってしまうと、絞り羽根は角度を変えられない)。
ところが「開閉アーム」が下カムで左右に操作されると絞り羽根が角度を変えるのは分かると思いますが、然しその一方で「固定しているままの❷ 位置決め環に空いている操作孔とは、一体何の為に存在するのか???」これをちゃんと理解している整備者が本当に少ないです(汗) この「操作孔」にしたカムの一部がはいるワケでもなく、何一つパーツはこの孔/穴/開口部に関わりません(笑)
・・いったいどうして穴が必要なのか???
こういう事柄についても、ちゃんと「観察と考察」ができ、且つ「原理原則」に照らし合わせる真摯で謙虚な心構えが必須です(笑)・・とは言っても、単に当方の技術スキルが低いが故に
それらが必要なだけの話でもあります(笑)
↑❶ 開閉環と❷ 位置決め環は、互いにこんな感じで組み合わさって❶ 開閉環側が回ります。ところが上の写真のとおり、グリーン色の矢印で指し示している箇所の❷ 位置決め環側に微かな擦れ痕が残っているのが判明します(汗)
つまりこれこそが「僅か1㎜少々長かった締付ネジの最終的な影響箇所の証拠」です(涙)
この因果から絞り羽根が「A自動絞り」の時、或いは「M手動絞り」の時、いずれの方向性でチカラが伝わってきても必ず顔出し現象を起こす理由が判明しました(涙)
・・残念ながら、一度削れて摩耗してしまった金属材は元に戻せません(涙)
申し訳ございません。
↑上の写真は、既に光学系前群の光学硝子レンズ清掃が終わり、ちゃんと格納が済んでいる状態での撮影です。光学系前群格納筒 (左) 保持環 (右) ですが、グリーン色の矢印で指し示している箇所にイモネジが3本均等配置で側面方向からネジ込まれ、左側光学系前群格納筒の赤色矢印で指し示している箇所の「くの字型の凹み部分」に一定量のチカラ加減とネジ込み量で、イモネジを締め付け固定する必要があります。
◉ イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイス切り込みが入るネジ種で
ネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する。
大きく2種類の役目に分かれ、締め付け固定位置を微調整する役目を兼ねる場合、或いは純粋に締め付け固定するだけの場合がある。
ところが当初バラしている時にチェックすると、3本のうち1本のイモネジのネジ込み量が足りずに「突出量が僅かに長かった」のです (3本ともに極僅かに突出するものの、そのうちの1本だけ長かったという意味)(汗)
それが意味するのは「他の2本のネジ込み量が逆に多すぎる=光軸の中心が極々僅かにズレていた懸念が表明した」と指摘でき、当初バラす前時点の実写確認で視認できていませんが、その懸念は残ります (過去の撮影写真などでピント面に極僅かな色ズレが現れている写真があるのかも知れない)。
逆に指摘するなら「イモネジ3本が均等配置でネジ込み」なるも、そのイモネジのネジ込みの方法をちゃんと理解していない整備者が居るので堪ったものではありません(泣)
このようにこのモデルは内部構造に限らず、光学系ですらその格納や微調整は相当に神経質なレベルであり、とてもシロウト整備でどうにかなるモデルではありません(怖)
整備済みを謳うヤフオク!の出品者が跡を絶ちませんが(笑)、はたして本当に「整備済」と言えるほどにまで適切に仕上げられているのか、疑わしいところだったりします(笑) 少なくとも技術スキルが低い当方には、だいぶ厄介極まりないモデルの一つです(怖)
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
❶ 距離環を回す時トルクムラを感じ、全域で重いものの最短撮影距離位置はさらに重い。
→トルクムラはほぼ解消 (僅かに残る)、重いトルクもほぼ改善 (重めの印象ではある)。
❷ A/M切替スイッチのAの時、f2.8~f22で絞り羽根が顔出しする。
→多少改善したが、現象は残ったまま。M手動時に正常作動するよう優先した。
❸ 鏡胴に極僅かな前後方向のガタつきが残っておりピント面の鋭さが変化してしまう。
→長かった締付ネジを切削し適合化させたので解消済。
❹ 絞り環の駆動域が開放側、最小絞り値側共に先まで回ってしまう。
→キッチリ開放側と最小絞り値側の両端で突き当て停止するよう改善済。
❺ 光学系内の塵/埃に微かな汚れ状も視認できる。
→経年の極微細な点キズのみ残り、塵/埃/汚れ状はキレイに清掃完了。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❻ 白色系グリースが塗られているものの、既に揮発油成分で液化している。
→黄褐色系グリース塗布に変更し、経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びも完全除去済。
❼ 反射防止黒色塗料を執拗に着色し、且つ一部にはプライマーも使っている。
→全ての反射防止黒色塗料を一旦完全除去し、最低限必要箇所のみ再着色。
❽ 鏡筒付随の上下カムが既に摩耗しており、適切に水平を維持していない。
→樹脂製パーツの為、一度摩耗して削れたり変形してしまった部分は復元できない。
❾ 基台側、距離環側共に、打痕/凹みが残っているのを確認。
→共に叩き込みなど行い、改善に努力したが完全には復元できていない。
❿ 鏡筒の締め付け固定ネジを転用し、且つその影響で絞りユニット内パーツが摩耗。
→長さが長い分を切削して改善したので、現状問題なし。
・・とこんな感じで、全10項目 ❶ ~ ❿ 瑕疵内容のうち、改善できたブルー色の文字の与件 (❸ ❹ ❺ ❻ ❼ ❿) は6項目しかなく、残り4項目 (❶ ❷ ❽ ❾) に関して改善できず、相応の瑕疵内容がそのまま残っています。
・・申し訳ございません!!!(涙)
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。イモネジの締め付け問題も確実に締め付けが終わっているので、色ズレなども起きていません。
↑6枚の絞り羽根もキレイになり、A/M切替スイッチや絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。
但し前述のとおり「M手動絞り」を優先した為「A自動絞り」の設定時は「f2.8 ~ f22間で絞り羽根が顔出しする」瑕疵内容は、そのまま残っています・・申し訳ございません。
なお、今現在も非常に多くの個体で「絞り羽根が閉じすぎている設定のまま仕上がっている」状況ですが、上の写真の閉じ具合が簡易検査具でのチェックで微調整を行い、その整合性を確認済です。
↑上の写真はその一例としてネット上の掲載写真からピックアップしました。❶ ~ ❸ までが「閉じすぎ」であり、おそらく最小絞り値側:f22は「f32辺りまで閉じている状況」ではないかと推察できる閉じ具合です(笑)
要はちゃんと検査具を使って調べずに、適当に閉じさせて組み上げているだけの整備で仕上がった個体が、公然と平気で今も市場流通し続けていると指摘
できます(汗)
また❹ はその逆で「開きすぎている状態」てあり、見た限りでは「f8くらいで閉じるのを
停止している」ように見えます(汗) もちろん電子検査機械設備で検査している話ではなく、
あくまでも目視によるチャート確認レベルなので、当方の所為である以上「信用信頼が皆無」
と言われても返すコトバがありません(汗)
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し「製品寿命の短命化を促す」結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない『磨き研磨』により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる『完全解体を前提とした製品寿命の延命化』が最終目的です(笑)
もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)
実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)
その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施す『DOH』そのものなのです(笑)
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクを目指して工程を進めましたが、前述のとおり「打痕を完全に真円に戻せていない」ことから、残念ながら「重めのトルク感の印象 (或いは普通程度か)」であり、合わせて極僅かにトルクムラや擦れ感も強い印象が残っています(涙)
・・申し訳ございません。
なお、当初の最短撮影距離側でマウント部が回ってしまうほどの異常な重さは解消できていますが、一般的な「当方基準のトルク感からはほど遠い」状況です。
↑ご期待に添えず、本当に申し訳ございません。お詫び申し上げます。
↑いつもどおり当方所有のマウントアダプタではありますが、ちゃんと事前に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 上の写真は中国製のK&F CONCEPT製「M42 → SONY Eマウントアダプタ」に装着し、合わせてマウントアダプタ内側のピン押し
底面を「平面」にセットした状態で全く問題がない正常動作である事を確認しています。
赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合にそれが干渉しないよう、約1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後までネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。
ちなみに「ピン押し底面」は両面使いできますが「平面側/凹面側」どちらでも絞り環操作、或いは絞り羽根の開閉角度など「凡そ当方が気になって確認するべき事柄は全て逐一チェックし微調整が終了している状態」での、オーバーホール済ヤフオク!出品になっています (当たり前の話ですが)(笑)
この「K&F CONCEPT製M42マウントアダプタ」に関する解説は、ちゃんと補足解説として『◎ 解説:M42マウント規格用マウントアダプタピン押し底面について』で詳しく説明して
いるので、気になる方はご参照下さいませ。
↑同様今度は日本製のRayqual製「M42 → SαE マウントアダプタ」に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合に、それが干渉しないよう約1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後まで
ネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。
マウントアダプタ装着状態なら「A自動絞り/M手動絞り」の別なく絞り羽根開閉動作は適切で正しい駆動をしますが、内部構造の関係から「M手動絞り」位置にA/M切替スイッチをセットしたままご使用頂くことをお薦めします (上下カムの摩耗がこれ以上進行すると製品寿命に到達します)。もちろん現状様々な判明した与件は全て改善処置を講じてあるので、勝手に摩耗が進行する懸念は低いです。
↑「A自動絞り」時のf28 ~ f22間での絞り羽根顔出し量は、上の写真のとおり当初バラす前時点からは多少改善した程度のレベル止まりで、完全解消していません (赤色矢印)(涙)
・・お詫び申し上げます。申し訳ございません。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:35㎜、開放F値:f2.4、被写体までの距離:20m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:10m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、10m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の20m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)
↑当レンズによる最短撮影距離20cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影していますが、半段分回しただけで絞り環には刻印絞り値が存在しません。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。まだまだ背景もボケ量があるので、余裕で「回折現象」の影響も微塵も感じません。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。ご期待に添えず、本当に申し訳ございませんでした。お詫び申し上げます。オールドレンズは明日完全梱包の上、クロネコヤマト宅急便にてご発送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。