◎ CARL ZEISS JENA DDR (カールツァイス・イエナ) PANCOLAR 80mm/f1.8 MC (M42)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧西ドイツは
CARL ZEISS JENA DDR製中望遠レンズ・・・・、
『PANCOLAR 80mm/f1.8 MC (M42)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のCarl Zeiss Jena製中望遠レンズ「80㎜/f1.8」だけで捉えると13本目にあたりますが、前回の扱いが2015年なので遥か昔です(笑)
先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り
ました事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!
今となっては市場流通価格帯が6万円台~20万円というとんでもない高騰ですが(驚)、当方が初期に扱っていた2015年辺りは、2万円~4万円台というのが流通相場でした (それで万年金欠病の当方も扱うことがギリギリできていた)(笑)
もっと言うなら、当時の同じCarl Zeiss Jena製準広角レンズ「Flektogon 35mmシリーズ (f2.4かf2.8)」で括ってみると、初期の頃~2014年までで凡そ100本レベル。2015年~2018年で30本/年、ところが2019年~2021年になると激減して3本/年に、そして現在は年間で1本扱うかどうかと言ったところです(笑)
準広角レンズ「Flektogon 35mmシリーズ (f2.4かf2.8)」で激減してしまった理由は以下
です。
❶ 距離環の裏側に直接ヘリコイドメス側のネジ山が切削されている。
❷ 絞り羽根開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) 微調整が神経質な設計。
❸ マウント部に備わる絞り連動ピンからのチカラ伝達に無理がある設計。
・・とこんな感じで、さすがに扱い続けるリスクが高すぎて懲りてしまったのが理由です(汗)
そして今回扱う中望遠レンズ「PANCOLAR 80mm/f1.8 MC」を2015年以来扱いをやめてしまった理由は・・、
❹ 直進キーが樹脂製パーツに変わり、破断と摩耗が多くなってしまったから。
・・要は、一つ前の❶~❸にさらにプラスして❹の与件が増えてしまい、とても扱えるレベルではなくなったからです(涙) 当時せいぜい1万本以下しか製産しなかったモデルだったのに
たかが「直進キー」如きにワザワザ樹脂材を流し込む金型まで用意してコストをかけていた、
理由が全く分かりませんね(笑)
そして❶のヘリコイドメス側ネジ山の切削に関する問題ですが、これは「仮に筐体外装に打痕や凹みが明確に残っている個体は間違いなくトルクムラや重いトルクに堕ちている」リスクに直結する問題です (距離環の裏側がメス側のネジ山だから凹んでいれば、必然的に真円を維持していない)。
何十年も前に製産されていたオールドレンズなので、多少筐体外装に打痕や凹み、キズが残っていても多くの方々は気にならないでしょう(笑)・・ところがそれが大問題の原因になっているのがこの❶の内容です(怖)
するとそのような酷いトルクムラや尋常ではない重さのトルクをどうやって改善させるのかと言えば、当方は個人なので「レーザーで真円度を検査する機械設備がない」以上、叩いて叩いて、ひたすらにアッチコッチ叩き込んで、X軸方向とY軸方向とで可能な限り真円に近づけていく方法しかありません(笑)
確かにレンズ用で真円に戻す工具はありますが、決して万能ではなく、特に長い筒状の部位には、その長さ全体に効力がありません (その工具を当てた箇所だけが変形するだけの話)(涙)
すると当然ながら手にハンマー片手で、イチかバチかで変形していると思われる場所を叩いていくしかありませんが、気づけば却って変形を促していたりすることにもなりかねません(怖)
しかもそれがヘリコイドオスメスのネジ山となれば、既に変形していながら使い続けられてきた経年の中で「ネジ山まで既に削れて摩耗しきっている」状況すら勘案しながら叩き込む必要が起きます(涙)
・・相当なリスクを伴う作業なので、正直まずヤリたくない(怖)
また❷と❸はオールドレンズ内部のチカラ伝達に係る設計概念の拙さから来る微調整の難しさで、特にゼブラ柄ブームが過ぎ去って「鏡筒がオールブラックに変わってから以降」については、何と樹脂製パーツが多用されるようになり、とても経年劣化進行に伴う摩耗に耐えられる状況ではなくなりました(泣)
「樹脂製パーツ」と言っても、一応硬質な配合の素材ですが、当時も今も日本の工業製品に
使う同じ硬質樹脂材とはその硬度に関し雲泥の差で、さすが当時の日本製光学製品の品質の
高さに感じ入る要素の一つでもあります(汗)
ところが幾らコストカットとは言え、さすがに「直進キー」を樹脂材に変更してしまう設計
概念は・・あり得ません(笑)
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
◉ 直進キーガイド
直進キーが直進動でスライドして移動するガイド/溝であり鏡筒の繰り出し量をカバーする
このようにパーツの役目と目的を知れば、自ずと「距離環を回す時の回転するチカラを直進動に変換する変換点に位置するパーツ」であり、それが樹脂材となれば締付ネジが金属ネジである以上「ネジ穴の摩耗度合いは計り知れない」とも指摘でき、要はガタつきや変形/摩耗/破断などが非常に多く、とても対処できる話ではありません(涙)
・・金属材同様、摩耗してしまった樹脂材を復元する方法は無いから。
そんなこんなで、今回凡そ9年ぶりに扱ってみたのは「自分自身の技術スキル認定試験」の
つもりでしたが、イザッ仕上げてみれば「まるで落第点」であり、ハッキリ言って9年前と
何ら技術スキルが進歩していないリアルな現実を、まざまざと見せつけられただけという・・
本当に恥ずかしい結果でしかありませんでした(恥)
・・ブログをご覧の皆様も、当方の技術スキルは超低く、この点重々ご承知おき下さい(涙)
その意味で、どうか皆様もオーバーホール/修理ご依頼は「プロのカメラ店様や修理専門会社様」宛ご依頼頂くのが最善の策と申し上げておきます(笑)
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このモデルが実装している光学系は、確かにネット上の多くの解説のとおり「拡張ダブルガウス型光学系」ですが、そこにはちゃんと変遷が残っています。
↑上に挙げた4つの特許出願申請書は、いずれも当方の憶測から調べ上げた或る一つの考察からピックアップしています。
❶ 『US1786916A (1927-09-27)』米国特許庁 (発明者:Willy Walter Merté)
❷ 『DE722520C (1938-11-22)』ドイツ特許省 (発明者:Dr. Willy Walter Merté)
❸ 『DE898361C (1940-12-06)』ドイツ特許省 (発明者:Dr. Willy Walter Merté)
❹ 『DE903866C (1942-09-06)』ドイツ特許省 (発明者:Dr. Willy Walter Merté)
・・さすが4つの内、戦前~戦中になると特許出願申請がドイツ特許省向けばかりです(笑)
❶がまさにダブルガウス型光学系に関する発明案件を示しますが、1927年と言う初期段階で既に「後玉を2枚貼り合わせレンズで実施している発明」を考案しており、なんと言うべきか凄いレベルだと感心しました(驚)
そしてこの❶のダブルガウス型光学設計がまさにCarl Zeiss Jenaでの「Biotar 5.8cm/f2
シリーズ」への量産化に漕ぎ着ける一歩に繋がったと言えます。
さらに今回調べていてオモシロイと思ったのは、❶の時点では個人名のままで特許出願申請していたのに、1938年以降になると途端に「博士」を付随させてCarl Zeiss Jenaで申請している点であり、まさに光学開発設計部署の責任者に登りつめたことが一因ではないかと妄想が進みます (発明者の表記一つにも、いろいろ当時の背景が垣間見えてロマンを感じる)(笑)
❷では特殊なモデルとしての開発に挑戦しており、光学系の一部分を交換することで全く別の焦点距離に対応する発明案件にトライしています(驚)
実はこの特許出願申請書記述から「Willy Walter Merté (ヴィリー・ヴァイター・メルティ)」
が、ダブルガウス型光学系の前群と後群とで別々に複数枚の貼り合わせレンズを配置したり、反対に分離させて単独化してみたりと収差改善を狙う考察に傾いてきたことが窺え、まさに
この発想が転嫁して今回扱う・・『PANCOLAR 80mm/f1.8 MC (M42)』の拡張光学系へと導かれていったのではないかと妄想しています。
右の構成図はネット上紹介されている一番最初の発案構成図を、当方の手によりトレースした構成図です。
この構成図が載っている特許出願申請書をついに発見できなかったので、いったいどこからこの構成図を拾ってきたのかが不明です・・
もしかしたら当時のCarl Zeiss Jena社内試作指示書からのコピーで、特許出願申請書はそれ自体が存在しないのかも知れません(汗)
そして右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に、光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子
レンズを計測したトレース図です。
違いは明白で、光学系第1群前玉から最後第5群の後玉まで、その
曲がり率に厚みもサイズも何もかもが微妙に違います (ネット上の掲載図面からの逆算判定なので確証はない)。
特に後群側の光学系第3群が初期段階の構成図では「凹メニスカス」に描かれていたのに対し
現ブツは「凹平レンズ」と言う、明確に屈折率の相違が確認できますし、さらにそこから入射光が透過する次の第4群も「凸メニスカス → 平凸レンズ」との相違がデジタルノギスの計測
から判明しました。
つまり第3群と第4群との空間を挟んで互いの透過面が「曲がり率を計算に入れずとも良い平面である点に於いて、高屈折率の光学硝子材へと変化したことの証拠」ととれるのです (そのように考えないと平面に変化させた流れを説明できないから)(汗)
するとこの変遷を考察する時、おそらくは量産化の中で当時入手できる最新型の硝子材を使えるようになり、僅かに修正として光学系を再設計した可能性が指摘できると思いますし、そもそも後群側で、第3群と第4群の「従来のダブルガウス型光学設計で、2枚貼り合わせていた要素を単独に分割してきた理由」にも、おそらくは空間を配置することで (第3群と第4群との間の距離をとることで) 透過光の各色成分に対する波長の影響を計算に入れて、敢えてワザと故意に仕向けているのではないかと妄想しています(笑)・・これは「光学知識皆無」な当方の妄想の一つですが(笑)、例えば「回折現象」の影響を受けて、絞り羽根を閉じていった時、入射光が「絞り羽根の裏面側に曲がってしまう現象」の逆で、2枚の光学硝子レンズを強制的に接着して貼り合わせ面を用意して、強制的に屈折させてしまわずに「むしろ入射光を開放して空気中に晒すことで極々微細に緩慢さを許容する」目的があのではないかと見ています。
(そうすることで本当に必要とする入射光の色成分だけを容易に制御できるから)(汗)
ちなみに念のために放射線量を測定すると「前玉直上:0.06µSv/h」さらに「後玉直上:0.10µSv/h」なので、おそらく光学硝子材にはランタン材すら配合されていないように考えられます。
↑上の写真は完全解体でバラした後に、当方の手による『磨き研磨』を施し、そのタイミングで撮影している「光学系後群格納筒」であり、後玉側方向から写しています。
すると赤色矢印で指し示している箇所に過去メンテナンス時の着色された「反射防止黒色塗料」が相当シッカリと塗られており、おそらくは塗装のプロによる仕業ではないかとみています (反射防止黒色塗料の定着を促進させる目的で、ブライマーを先に塗布しているから)。
後玉側が格納される位置から下方向に (順番に) 赤色矢印で指し示している箇所の「内壁」部分は「光学系内に透過してきた入射光に対する光路長には影響を来さない」から構いませんが、その一方で致命的なのはブルー色矢印で指し示している箇所に着色した「反射防止黒色塗料」であり、これらはダイレクトに光路長を狂わせる因果に繋がっていきます(泣)
例えば❶は後玉の格納位置を「反射防止黒色塗料の塗膜の厚さ分外側にズラしてしまう」懸念を十分残しますし、❷も同様光学系第4群の格納位置をズラしています (懸念ではなく間違いなく光学系第4群の裏面側と表面側でその入射光透過位置がズレるから)(汗)
↑上の写真は一つ前の❶の部分に着色されていた (プライマー込みの)「反射防止黒色塗料」を引っ掻いて削り取った削り粕の撮影です。これだけの塗膜分の厚みが後玉の光路長を適正値からズラしてしまうと言えないのでしょうか???
そもそもだいたい何で「製産時点に濃い紫色にメッキ加工されていた光学系後群格納筒に敢えて反射防止黒色塗料を塗るのか???」と言う、非常に純粋な質問をしてみたいです。
←左写真はその塗られていた「反射防止黒色塗料」を綿棒を使い剥がしていた時に撮った写真ですが「黒色塗料の基本成分がパープル」なのが分かります。
↑上の写真は光学系前群側 (赤色文字を使って前群側の区別にしています) の光学硝子レンズを並べて撮影しています。グリーン色の矢印で指し示している方向が前玉の露出面側方向を意味します。
↑今度はヒックリ返してそれぞれの裏面側を撮影しました。当然ながらグリーン色の矢印は反転します。
↑さらに光学系後群側 (ブルー色文字で表記) を同じように並べて撮影しています。左から順に第3群~第5群後玉です。同様グリーン色の矢印が指し示す方向は前玉の露出面側方向を表すので、絞りユニットから光学系後群は反対向きに格納されるので反転しています。
↑同様ヒックリ返したので、グリーン色の矢印がまた反転します。
上の写真見ると歴然ですが(笑)、第4群と第5群の硝子レンズのコバ端は「マジックを塗って
いる」のが分かります (紫色だから)。
↑上の写真は「反射防止黒色塗料」を剥がしている工程の時に撮影した写真で、途中で撮っています。
するとご覧のように一度塗ってからさらにもう一度塗り足して厚くなっているのが明白です。どうしてこうも厚塗りを続けて光路長を狂わせる所為を行いたがるのでしょうか???(涙)
実際、今回の個体をバラす前実写確認した時の、SONY α7IIでのピーキング反応が明らかにオーバーホール後には増えているのがハッキリしています(驚)
・・それだけピント面の鋭さ感が増したと受け取ってはイケナイのでしょうか???
当方がこのブログで執拗に「反射防止黒色塗料」と指摘しまくると、SNSなどで批判されているらしいです(笑)・・そうは言ってもリアルな現実にバラす前と後ではピーキング反応に変化が現れるので (当然ながら反応量が増大している/減じられることは物理的にない)、当方の認識としては「ピント面の鋭さ感が増した」と受け取っていますが、それが間違いなのでしょうか。
・・光学知識皆無な当方には、よく分かりません(汗)
↑こちらも「反射防止黒色塗料」を1時間掛かりで除去しまくっている (赤色矢印) 時の撮影ですが、フィルター枠の内側です(笑)
↑実はこのモデルの設計では「フィルター枠の内側はそのままダイレクトに光学系前群格納筒の外壁に接触して干渉する」のでヤバイのです(汗)
グリーン色の矢印で指し示している箇所のネジ山が、右側光学系前群格納筒のブルー色の矢印で指し示している箇所のネジ山にネジ込まれる設計です。この時「反射防止黒色塗料の塗膜の厚みが多すぎるとモロ干渉する」為、実は第2群の締付環や第1群前玉締付環を最後まで締め付ける際に抵抗/負荷/摩擦となってしまいます(怖)
・・だからそういう設計上必要外の因果は、全て排除したいと言っている。
↑フィルター枠を仮組みでネジ込むと、こんな感じに組み上がります(笑) しかもこの時、今回の個体は赤色矢印で指し示した箇所に「固着剤」が相当量注入されていたため、普通に回して外せず「加熱処置」でようやく外れたものの、光学系前群格納筒には「第2群の貼り合わせ
レンズが入ったまま」だったので、どんだけ怖かったことか (加熱しすぎるとバルサム剤が溶け始めてバルサム切れを促すから)???
・・まさにホラ〜映画以上に恐怖の時間です!(怖)
皆さんは単に溶剤を使って「反射防止黒色塗料」を溶かせば良いと言いますが、それにプラスして至る箇所に「固着剤」が塗布されているので、人力だけでは回して外せないことが多いのです(涙)
↑一方こちらはマウント部内部の写真で、当初バラして溶剤洗浄した直後に撮影しています。
すると赤色矢印で指し示している箇所には「絞り環の駆動域を限定するパーツが締め付け固定されていた」ものの、そのパーツの場所だけ「反射防止黒色塗料」が残っていないのです。
この事実から過去メンテナンス時の整備者の考えが明白になり「見てくれの良さだけを追求して反射防止黒色塗料を着しまくっていた」その所為が露わになります(笑)
そのように指摘できる根拠がちゃんとあり(笑)「グリーン色の矢印で指し示している箇所の
パーツだけを取り外して、反射防止黒色塗料 (おそらく高圧スプレー) を塗っていた」事が判明したからです。
何故なら、このグリーン色の矢印で指し示している箇所のパーツは一部が「樹脂材」なので「反射防止黒色塗料」を着色すると拙いのは、誰が考えても自明の理です(笑)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。
今回のオーバーホール/修理ご依頼内容は「絞り羽根が完全開放したまま閉じない」問題と共に「距離環を回すトルクを軽くしてほしい」の2点です。
バラしていくとこれら瑕疵内容が残った背景の他に隠れた要因が明らかになり、且つ「ごまかしの整備」まで判ってしまい、なかなかです(涙)
《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
❶ オーバーインフ量が酷く/多く、無限遠合焦は凡そ2目盛り半手前位置 (5.5m) まで戻る。
❷ 無限遠合焦を調べるとピント面の鋭さ感があまりにも少ない印象が残る。
❸ 距離環を回すトルク感はツーツー状態で「白色系グリース」なのが分かる印象。
❹ 距離環のネジ込み回数が適切ではない。
❺ 絞り羽根が完全開放したまま全く動く気配がない。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❻ 距離環が真円を維持しておらず、極僅かに変形している。
❼ その影響からトルクムラが起きている (トルクも重くなる)。
❽ 直進キーが両サイドに2本必要なのに片側の1本しか残っていない。
❾ ヘリコイドオス側の締め付け固定位置がズレている。
❿ 絞りユニット内部のベース環が極僅かに変形している。
⓫ 絞り羽根開閉制御の上下カムが水平を維持しておらず、極僅かに制御がズレる。
⓬ 光学系第2群貼り合わせレンズに反射防止黒色塗料が厚塗されている。
・・とまぁ~こんな感じです(汗)
最初に結論から申し上げますが、今回の個体はおそらく過去メンテナンス時に「ニコイチ」していて、ヘリコイドオス側か距離環 (ヘリコイドメス側) のいずれかが転用されているパーツだと考えます(涙)
その理由は「ズレていたヘリコイドオス側をどの位置にセットしてもオーバーインフ量が変化しない」ので、それをごまかす為に「距離環を最後までネジ込まずに一周分手前でネジ込みをやめて仕上げている」ことが判明しています。
さらに「絞りユニット、或いは鏡筒付随の構成パーツの一部も転用されている」とみており、マウント部を組み付けた際、マウント部内部の伝達パーツのフチが「鏡筒の上カムのフチに
干渉してしまい距離環を最後までネジ込むと組み上がらない」ことも判明しました(汗)
これらの判明内容から上に列挙した問題点のうち、❶、❹、❾、⓫の与件に影響していると推察できます。
また❽の1本しか残っていなかった「直進キー」はもちろん樹脂製ですが、締付ネジも最後まで締め付け固定されておらず、かろうじて位置を確定していただけなので「当初バラす前時点でツーツーのトルク感になっていた」次第です。
当初バラしていく途中にこの締付ネジが緩いことを発見し、そのまま締め付けてみたところ「それまでツーツーだった距離環を回すトルク感が、異常に重く変わりトルクムラまで生じた」状況です(汗)
試しにもう一度緩く仕上げると、再び距離環を回すトルク感がツーツーに戻るものの、その
一方でそもそも鏡筒付随の「上下カム」と言うパーツと、マウント部からの伝達パーツの互い
の接触に問題を来し、上手くチカラが伝達されないので「上下カムが既に水平を維持できなく
なっている (摩耗が進行してしまっている)」のが確認できました(涙)
これらの内容は上の列挙❸、❻、❼、❽が影響していると考えられます(汗)
最後に残っている問題点の❷、❺、❿、⓬については、光学系の光学硝子レンズやフィルター
枠内壁に着色された「反射防止黒色塗料」の影響、及び絞りユニット内の一部パーツの変形が影響しています。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。アルミ合金材削り出しで用意されているものの、この当時のCarl Zeiss Jenaに於ける「陽極アルマイト仕上げの質が悪すぎる」ことが手で触るだけでも容易に確認できます (同時代でも日本の光学メーカーの処理のほうが圧倒的に品質が良かったと指摘できるレベルの違い)(笑)
↑鏡筒最深部にセットされるべき「絞りユニット」を構成するパーツ群を並べて撮影しました。
❶ 開閉環
❷ 位置決め環
❸ 制御環
❹ 絞りユニット用締付固定環
❺ 制御環用ベース環
・・こんな感じですが、全てアルミ合金材削り出しで用意されているパーツです。特に❶だけが「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」でメッキ加工が施され、反対に❹は光沢メッキ加工です。他のパーツはアルマイト仕上げになっています。
❶が回ることで絞り羽根が開閉動作して、❷が絞り羽根が刺さる位置を確定させ、❸によって絞り羽根の角度が決まり、❺がその格納先であり、最後に❹で丸ごと締め付け固定する設計です。
単に順番にこれらのパーツを組み合わせて鏡筒最深部にセットするだけで終わりそうに考えますが、とんでもなく(笑)、リアルな現実は「これらパーツの磨き研磨レベルと共に組み上げ時に微調整が最も重要なポイントになる」当時のCarl Zeiss Jena製オールドレンズに多く採用されている神経質な設計の一つであり、当方も含め数多くの整備者を泣かせ続けている要素の
一つだったりします(涙)
↑上の写真は❺のベース感ですが、そこには赤色矢印で指し示している箇所に「非常に細い線径の引張式スプリング」が付随します。
しかしグリーン色の矢印で指し示している箇所が極僅かに変形していて、当初バラして溶剤
洗浄した直後には「平らな面に置くとカタカタ水平を維持していなかった」為に、その変形を確認できました(汗)
前述して問題内容の❿にあたります。
なおこの赤色矢印で指し示している箇所の「細い線径の引張式スプリング」のチカラだけで「絞り羽根を常時閉じさせている」為に、この引張式スプリングが伸びたりして適切なチカラを及ぼせなくなった時点で「絞り羽根開閉異常が起きて、多くの場合で改善できない」ので、今回のオーバーホール作業でもご覧のように一切外さずに触りません(怖)
↑一つ前の「ベース環」にセットされる「制御環」で、グリーン色のラインで囲った領域の「なだらかなカーブ」の坂を上り詰めた頂上部分が「開放側 (❶)」になり、反対元和の麓部分が「最小絞り値側 (❷)」を決定づける設計です。
ここに鏡筒の外側に用意される「下カム (樹脂製)」が突き当たることで、その時の坂の勾配を基に絞り羽根の移動量が決まって、絞り羽根が具体的に閉じる角度が変わりる原理です。
さらに赤色矢印で指し示している箇所の円弧を描いた細長い穴に「制御アーム」と言う板状の金属パーツが締付ネジで締め付け固定され、このアームが絞り環に付随する、やはり樹脂製
パーツ「ガイド (溝)」に入るので、絞り環を回した時の設定絞り値がここに伝達される仕組み
です(笑)
すると前出の「ベース環」が極僅かに変形しているだけで、そもそも絞り羽根に対して圧力が加わり、適切な移動量を担保できず、絞り羽根が閉じる時の開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) が歪になるか、下手すれば「絞り羽根が動かなくなる」因果の一因に至ります(怖)
従って今回のオーバーホール工程の中で、一つ前の変形してしまった「ベース環」をちゃんと水平に戻す必要が起きたのです(汗)
↑「ベース環」は鏡筒内部にセットされますが、どうやら今回の個体は過去メンテナンス時にミスッて「ベース環が斜めったままムリに組み込もうとして押し込んだ痕跡が残っていた」のを赤色矢印で指し示しています。
残念ながらこのキズが就くほどに鋭角な角を持つパーツが他に存在しないので(笑)「ベース環をちゃんと水平をキープしながら組み込まなかった」或いは下手すると適当に入れ込んだ為に
鏡筒内壁に引っ掻かってしまいキズが付いた可能性も捨てきれません(笑)
おそらくシマッタと思ったのか、相当慌ててチカラを込めて取り外そうとしたことが思い浮かび、その引っ張る時のチカラで、もしかしたら極僅かに変形したのかも知れません(汗)
・・当方がチェックすると、総ての所為が白日の下に晒されます!(笑)
↑絞りユニットと鏡筒に関係する構成パーツは上の写真の3つだけです(笑) 赤色文字が「樹脂製パーツ」になり、一方ブルー色文字が「金属製パーツ」です。
左から順に「下カム」と「上カム」に「制御アーム」です。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
↑鏡筒の内外 (赤色矢印) はアルミ合金材削り出しそのままの陽極アルマイト仕上なのげですが
1箇所だけグリーン色の矢印で指し示している箇所のみ「平滑仕上げ」である点を、過去メンテナンス時の整備者は全く蔑ろにしており、当初バラした溶剤洗浄した時は「経年劣化進行に伴い酸化/腐食/サビだらけ」でした(汗)
この面がツルツルになっていないと絞り羽根開閉動作に抵抗/負荷/摩擦が生じてしまい、適切な開閉角度に制御できなくなります(汗)
要は単なる絞り羽根の油染みだけではなく「観察と考察」にプラスして「原理原則」から設計者の意図を探る注意深さが求められるのが、オールドレンズの整備作業だったりします(笑)
↑実際、6枚の絞り羽根はこのように単に並べて置くだけで組立工程を進めます (実際組み上がって絞り羽根が開閉動作している最中も、このように単に並んでいるだけなので、平滑性が担保される必要性がある)(笑)
↑さらに付随する他の制御系パーツも締付ネジを使いキッチリ締め付け固定して、適切な絞り羽根の開閉動作と「開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量)」を見越した位置で既に微調整が終わっています。
↑完成した鏡筒をヒックリ返して裏側を撮影しました。「下カム (❶)」と「上カム (❷)」に「制御アーム (❸)」ですね(笑)
ここでの最大のポイントがグリーン色の矢印で指し示している箇所にある「相応に線径が太めの引張式スプリングの存在」です(汗)
ちょっと前のほうの工程写真を思い出してください。このグリーン色の矢印で指し示している箇所の引張式スプリングは「常時絞り羽根を開くチカラを及ぼす」目的だけで使っている設計です。
その一方で絞りユニット内部にあった「非常に細い線径の小さな引張式スプリング」は、常に絞り羽根を閉じる為にだけに備わっており、互いに相反する方向性で絞り羽根を制御しようとしていますが「そもそもその引張式スプリングの線径の太さに違いがあり、互いに同じチカラを及ぼしていない」点に於いて、この当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製オールドレンズの多くのモデルでの「整備スキルが試される」要素の一つがこのような話だったりします(笑)
・・いったいどれだけの整備者がちゃんと理解しつつ、適切に整備できているのでしょうか。
しかも今回の個体のように「樹脂製の上下カムが水平を維持できずにチカラ加減が変わって
しまう」場合など、いったいどうやって改善処置を講じれば良いのでしょうか???(笑)
・・単にバラした時の逆手順でしか組み立てられない低俗な整備者には100%不可能な話。
↑解説ようにワザと故意に引張式スプリングを外して「上下カムが互いに接触する範囲」を
グリーン色の矢印で囲って明示しました。
実測すると「僅か1.3㎜」でしか互いに接触しないものの、今回の個体は既に上下カムが水平を維持していない為、その操作のタイミングによっては互いに接触する領域が凡そ0.7㎜くらいに減ります(汗)
・・微調整するとは、そういう世界の中でのたうち回ることを意味します(笑)
世の中の整備者の方々、この「1.3㎜の世界」をちゃんとコントロールできる自信がありますか??? 残念ながら技術スキルが超低い当方にはありません(笑)
・・だから今まで敬遠しまくってきたワケです(笑)
↑上の写真はヘリコイドオス用のベース環で、両サイドの「直進キーガイド」と言う溝が削られ
ています (グリーン色の矢印)。
このパーツもアルミ合金材削り出しなるも、陽極アルマイト仕上げです(汗)
↑実際にヘリコイドオス側 (赤色矢印) をセットしたところです。
実はこのベース環に鏡筒が締付ネジ3本で固定されるので、鏡筒固定箇所がズレることはあり得ません。ところがその時の「鏡筒を格納/収納している位置」はこのヘリコイドオス側のネジ山位置に従い、距離環裏側のヘリコイドメス側ネジ山とともに影響を受けるので、このヘリコイドオス側を何処ても好きな位置で固定できる話にはなりません(笑)
要は冒頭で述べた❾ ヘリコイドオス側の締め付け固定位置がズレている・・と言う話がこの
問題を指しています。
↑この基台には上の写真のように距離環とヘリコイドオス側が順番にセットされます。
赤色矢印で指し示している箇所のネジ山が互いにネジ込まれ、距離環裏側のヘリコイドメス側ネジ山 (グリーン色の矢印) に、ブルー色の矢印で指し示しているヘリコイドオス側がネジ込まれます。
このモデルのヘリコイドオスメスは、全部で12箇所のネジ込み位置があるので、さすがに
ここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
また距離環を回す時のトルクを決める一因もこれらのネジ山が影響大ですが、そもそも絞り環からのチカラの伝達もあり (絞り羽根を常時開くチカラと絞り連動ピンから伝達されるチカラ)
単に塗布するヘリコイドグリースの粘性を軽いグリースに変えるだけでは、その改善を期待できません(笑)
・・非常に多く人達ガヘリコイドグリースだけに頼りますが大きな間違いです(笑)
↑ヘリコイドオスメス、要は距離環をネジ込んだところです。上の写真はこのモデルでの一般的な「適切な無限遠位置としてネジ込みしている」状況ですが、残念ながら今回の個体はこの
ネジ込み位置ではまともに動きませんでした(涙)
↑その理由の一つで、ヒックリ返して裏側を撮影しています。グリーン色の矢印で指し示している箇所に「樹脂製の直進キー」が締め付け固定されていますが反対側の赤色矢印側にありません(汗)・・正しくは (製産時点は) 両サイドに1本ずつ締め付け固定されます。
・・この影響が大きく現れているのが今回の個体です(泣)
↑このように前述ヘリコイドオス用ベース環に備わる「直進キーガイド (溝)」に「樹脂製の直進キーが刺さる」状態のまま、最短撮影距離まで距離環を回した時の内側を撮っています。
ご覧のように「樹脂製直進キーの先だけで保持されている状況」なのが一目瞭然であり、このモデルも含め、この当時の旧東ドイツ側Carl Zeiss Jena製オールドレンズの多くのモデルで「解体する際にムリなチカラで回して外そうとすると直進キーが変形するか、下手すれば破断する」恐れが非常に高いのです(怖)
さらに今回の個体はそもそも距離環が真円を維持していなかった為に「おそらくは酷いトルクムラとトルクの重さから、直進キーの反対側を1つ取り外して組み立ててしまった」と言う、これらのモデルで頻繁に執られる常套手段だったりします (他のモデル含め数えきれいなほど体験済)(笑)
外から見えないことを良いことに、こういう「ごまかしの整備」が横行しているのです(涙)
↑絞り環ですが、付随するやはり樹脂製パーツの「制御アーム用ガイド (赤色矢印)」を取り
外して、正しく垂直を維持しているか、擦り減って摩耗していないかなどをチェックして
います。
仮に何か瑕疵が起きていても、それを改善できる手立ては相当少ないですが(涙)、ここでちゃんと自分の目で見て確認しておけば、他の部位との関係性で別の瑕疵内容が発生した際に、どのように対処すれば良いのかが掴めます。
・・当方は技術スキルが低いので、単に確認しながら進めるしかできない(恥)
逆に指摘するなら、当方は何一つ高い技術スキルを有しておらず、当然ながらプロの整備者に師事したこともないので、伝統的な整備技術すら一つも習得していません(笑)
↑こんな感じで絞り環が完成します。そもそもこのガイドに入るパーツたる相手が「金属製」なのに、いったいどうして当時のCarl Zeiss Jena設計陣は樹脂製で用意してしまったのでしょうか???(汗)
↑さらに絞り環も「ベース環」にセットされて、この時鋼球ボール+スプリングが組み込まれて、赤色矢印で指し示している箇所の「絞り値キー」と言う溝部分に鋼球ボールがハマって、カチカチとクリック感を実現する原理です。
↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外してから当方の手による『磨き研磨』を終わらせた状態で撮っています。
するとなんとも酷い話だったワケですが、赤色矢印で指し示している箇所の遮光環部分を真っ黒に「反射防止黒色塗料」に着色したかったが為に、おそらくこの角度で高圧コンプレッサーによる着色をしたのだと思います。その際、樹脂製パーツだけ取り外していたのがその証拠
です(笑)
・・ロクなことをしません(笑)
元来、製産時点から赤色矢印で指し示している箇所の遮光環部分は「濃いパープルの微細な
凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」なのに、どうして設計者がそれで十分と判断したのに
「さらに反射防止黒色塗料で着色する必要があるのか」誰か当方に教えてほしてです(笑)
要は単なる見てくれの良さだけでそのように処置しているのでしょうが、もっと言うなら「今このブログをご覧になっている皆さんの中にですら、その見てくれの良さにこだわってプロのカメラ店様や修理専門会社様の店頭に並べられている個体を一生懸命買っている」人達が意外にも多いのが、リアルな現実ではないのでしょうか???
逆ににそれこそが差別化との慣例に従い、プロのカメラ店様や修理専門会社様に在籍する整備者の行動を決定づけ、このような「不必要な反射防止黒色塗料の着色」を横行させている因果に至っていませんか???
・・まるで悪循環です(涙)
↑取り外していた各構成パーツも『磨き研磨』が終わりセットしました。赤色矢印で指し示している箇所の2つのパーツが、絞り環の駆動域を決めています・・開放「f1.8」と最小絞り値「f16」で絞り環が確実に停止するのは、ここの締め付け固定で微調整が済んでいるからです(笑)
マウント面から飛び出ている絞り連動ピン (ブルー色の矢印) が押し込まれると、その押し込まれた時のチカラそのままが、グリーン色の矢印で指し示している樹脂製箇所のパーツに伝達されていきます。
逆に言うなら、絞り連動ピンを押し込んだ時のチカラが弱ければ (押し込みが足りずに最後まで押し込まれなければ)、絞り羽根が設定絞り値まで閉じてくれない「絞り羽根開閉異常」が
起きるのは、当然な話だと分かりませんか???(笑)
↑拡大撮影して解説しています。絞り連動ピン (❶) が押し込まれると (ブルー色の矢印❶) そのチカラの分だけ樹脂製の伝達板 (❷) が押し上げられ (ブルー色の矢印❷) そのチカラが伝わって、同じく樹脂製の伝達カム (❸) が押し広げられ (ブルー色の矢印❸) て、ようやく鏡筒最深部にセットさている「鏡筒付随の上下カムの上カムだけに伝達される (下カムには直接伝達されない)」仕組みです。
ここがポイントで「下カムには伝達されないので (下カムは上カムに付随する太めの引張式スプリングで操作されるから) 冒頭で出てきた細い線径の小さな引張式スプリングだけで絞り羽根を常時開く状態にセットできる」原理なのです。
従って重要なのは「絞り連動ピンを押し込んだチカラが本当にちゃんと正しく伝達されているのか???」ではありませんか???・・と、当方はこのブログで何度も何度も執拗に述べ
続けています(笑)
だかこそオールドレンズの内部は「総てはチカラの伝達だけが命題」なのです(笑)
↑マウント部が完成しました。絞り環はこのマウント部の構成パーツである点がポイントなのです(笑)
↑光学系後群格納筒を撮影していますが、絞りユニット側のほうを撮っています。やはり赤色
矢印で指し示している箇所の内壁にも「反射防止黒色塗料」が着色され、特に光学系第4群のコバ端の着色と相俟り、当初バラしている時になかなか抜けなかった状況です。
↑こちらは光学系前群格納筒です。同様赤色矢印箇所に「反射防止黒色塗料」で、一部はモロに光路長を狂わせていました(汗)
そしてここでの指摘事項は「ちゃんと設計者が必要だと考えた場所には、製産時点から微細な凹凸を伴うマットな黒色梨地メッキ加工でグリーン色の矢印箇所にメッキ加工されていた」ワケで、なんと過去メンテナンス時には、この場所にすら「反射防止黒色塗料」を塗る徹底ぶりでした(笑)
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。残念ながら幾つかの瑕疵内容が残ってしまいました(汗)
冒頭問題点の中から以下の内容が瑕疵として残っています(汗)
❶ オーバーインフ量が酷く/多く、無限遠合焦は凡そ2目盛り半手前位置 (5.5m) まで戻る。
→ オーバーインフ量を減じて∞刻印左横にまで合わせられた。
❷ 無限遠合焦を調べるとピント面の鋭さ感があまりにも少ない印象が残る。
→ 光路長が適正化され、ピント面の鋭さ感が増したことをピーキング反応で確認した。
❸ 距離環を回すトルク感はツーツー状態で「白色系グリース」なのが分かる印象。
→ 黄褐色系グリースを塗るも、トルクムラと思いトルク感が残る。
❹ 距離環のネジ込み回数が適切ではない。
→ 上下カムとマウント部内部伝達カムの干渉度合いからそう仕上げざるを得ない。
❺ 絞り羽根が完全開放したまま全く動く気配がない。
→ 完全開放~最小絞り値まで正しく駆動するよう改善済。
《バラした後に新たに確認できた内容》
❻ 距離環が真円を維持しておらず、極僅かに変形している。
→ 最終的に33回距離環を叩き込んで真円に近づけたが改善度合いは低い。
❼ その影響からトルクムラが起きている (トルクも重くなる)。
→ トルクムラも重めのトルクも残った (但し共にその程度はだいぶ低下した)。
❽ 直進キーが両サイドに2本必要なのに片側の1本しか残っていない。
→ 1本だけでご希望の軽めのトルク感を目指して仕上げた。
❾ ヘリコイドオス側の締め付け固定位置がズレている。
→ おそらく転用されており、何処で固定しても症状に変化なし。
❿ 絞りユニット内部のベース環が極僅かに変形している。
→ 変形を正し、水平に戻した。
⓫ 絞り羽根開閉制御の上下カムが水平を維持しておらず、極僅かに制御がズレる。
→ 変形した樹脂材は戻せない為、それを別の部位で相殺させ改善した。
⓬ 光学系第2群貼り合わせレンズに反射防止黒色塗料が厚塗されている。
→ 必要最低限の反射防止黒色塗料着色に限定して仕上げた。
・・とまぁ~、当方の技術スキル低さゆえに❶~⓬の問題内容について、5つの瑕疵内容がリアルな現実に残ってしまいました・・申し訳ございません!!!(涙)
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。
一部の蒸着コーティング層に経年劣化進行に伴う劣化が認められ、その箇所だけは光に翳して反射させると、コーティングムラのように見えてしまいます(汗)
↑6枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環やA/M切替スイッチ、或いはマウント面から飛び
出ている絞り連動ピンの押し込み動作に従う追従まで含め「全て完璧に絞り羽根開閉動作が
正常」に戻っています (当たり前ですが)。
↑実は一つ前の写真撮影は「最小絞り値:f16」で撮影した時の絞り羽根が閉じる開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) ですが、上の写真は「さらに絞り環を回せるように工夫して、f22まで閉じるように仕上げた」時の閉じ具合を撮っています(笑)
別にここまで閉じる必要ないのでしょうが、ちゃんと絞り環に刻印してある絞り値との整合性を簡易検査具でチェックしながら微調整して仕上げたので、まぁ~ちょっとしたオマケみたいな話でしかありません(汗)
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し「製品寿命の短命化を促す」結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない『磨き研磨』により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる『完全解体を前提とした製品寿命の延命化』が最終目的です(笑)
もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)
実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)
その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施す『DOH』そのものなのです(笑)
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが、いつも使うヘリコイドグリースではなく、特別に用意したタイプを使っています。それは「さらに軽くしてほしい」とのご依頼内容であるものの、当初の当方認識では「十分に軽めのトルク感」であり、当方の個人的な好みから言えば「ツーツーのトルク感であまり好きではない」ような印象でした(汗)
そうは言ってもご依頼者様のご指示に従いたいのですが、残念ながら「直進キーが片側しか残っていない」点や距離環の変形、或いはヘリコイドオス側とメス側の整合性が確認できなかった点など、幾つかの問題から最終的に「トルクムラが残り、重く変わってしまった」のは間違いありません。
しかしそれに伴い「緩く締め付けられていた直進キーは硬締めできた」ので、今後将来的にこれ以上トルクムラや距離環を回すトルクが重く変わることは起きません。
・・ご納得頂けない要素について減額下さいませ。申し訳ございません!(涙)
↑今回9年ぶりに扱いましたが、ご期待に添えず申し訳ございませんでした。
お詫び申し上げます(涙)
このようなスキル検定の結果でしたので、残念ながら今後このモデルは当方の技術スキルでは太刀打ちできず歯が立たないので、扱いを最後にします(涙)
無限遠位置 (当初バラす前の位置から改善/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:80㎜、開放F値:f1.8、被写体までの距離:137m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:68m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、70m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の140m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)
↑いつもどおり当方所有のマウントアダプタではありますが、ちゃんと事前に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 上の写真は中国製のK&F CONCEPT製「M42 → SONY Eマウントアダプタ」に装着し、合わせてマウントアダプタ内側のピン押し
底面を「平面」にセットした状態で全く問題がない正常動作である事を確認しています。
赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合にそれが干渉しないよう、約1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後までネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。
ちなみに「ピン押し底面」は両面使いできますが「平面側/凹面側」どちらでも絞り環操作、或いは絞り羽根の開閉角度など「凡そ当方が気になって確認するべき事柄は全て逐一チェックし微調整が終了している状態」での、オーバーホール済ヤフオク!出品になっています (当たり前の話ですが)(笑)
この「K&F CONCEPT製M42マウントアダプタ」に関する解説は、ちゃんと補足解説として『◎ 解説:M42マウント規格用マウントアダプタピン押し底面について』で詳しく説明して
いるので、気になる方はご参照下さいませ。
↑同様今度は日本製のRayqual製「M42 → SαE マウントアダプタ」に装着して「操作性の確認と共に各部位の駆動をチェック」しています(笑) 赤色矢印で指し示している隙間がオールドレンズとマウントアダプタ側の互いのマウント面に生じているのは、オールドレンズ側マウント面に「開放測光用の突起」があるモデルの場合に、それが干渉しないよう約1mmほど突出させた設計で造られているからで、製品上の仕様になります (隙間があってもちゃんと最後まで
ネジ込めて指標値も真上に来ているのが分かる)。
↑当レンズによる最短撮影距離83cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。また付属品のフードを装着済みです。
このモデルでは絞り環操作した時「開放f値:f1.8~f2.8」の間が3つのクリック感なので、途中2つめに「f2」のクリックがあるのが分かります (他は全て2つのクリック位置で
次の絞り値だから)。従って上の写真はその途中の位置 (2つめのクリック位置) での撮影です。
↑仕様上の最小絞り値「f16」での撮影です。オーバーホール工程の中での説明のとおり、今回は最小絞り値の駆動範囲を拡張して「f22」まで絞り環が回るように設定しました。但し絞り環には「f22」刻印が無いので「単なる空白位置」でクリック感を感じて突き当て停止します(笑)
その時の撮影が上の写真であり、もう絞り羽根が閉じきっているので「回折現象」の影響を
視認できます。
世界に1本しか無い、珍しい個体に変わったかも知れません(汗)
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。明日厳重梱包してクロネコヤマト宅急便にて発送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。