◎ MINOLTA (ミノルタ) MC ROKKOR-PF 55mm/f1.7《1970年版》(SR/MC)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、国産は
MINOLTA製標準レンズ・・・・、
MC ROKKOR-PF 55mm/f1.7《1970年製》(SR/MC)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のMINOLTA製標準レンズ域「55㎜~50㎜」のクラス、いわゆる「廉価版モデル」の括りだけで捉えると6本目にあたりますが、その中で今回扱った「55㎜/f1.7」は初めての扱いです。

普段からこの当時のMINOLTA製オールドレンズ、巷で『緑のロッコール』とも呼ばれれる『アクロマチックコーティング (AC) 層』たる薄膜蒸着コーティング層が施されているため、清掃しただけで剥がれる、あるいは良くても非常に薄く細い線状剥がれ (ヘアラインキズのように見えてしまう) が起きることから敬遠しています。

さらに今回のモデルは、今現在必ず毎週市場流通している「当時からしても廉価版の位置づけで登場した標準レンズ」との立場から、当方がオーバーホールして仕上げても「その作業代金回収が不可能」というリアルな現実から、未だに手を出せずにいます(泣)

ちなみに当方は1978年に改変されたミノルタ、あるいは2003年来のコニカミノルタ「コーポレート・ロゴ」よりも、冒頭に挙げた
初期のロゴのほうが好きです(笑)

『緑のロッコール』とも呼ばれれる『アクロマチックコーティング (AC) 層』薄膜蒸着コーティング層に関する当時の背景などは、先日このブログにアップしたMC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5《1966年製》(SR/MC)』のページをご参照下さいませ。

《モデルバリエーション》
※発売年度別の時系列で列記 (開放f値が混在しています)
※バリエーションの中で、一番最初に変わった仕様諸元を黒色太文字で表記

1958年発売
AUTO ROKKOR-PF 55mm/f1.8
光学系:5群6枚 モノコーティング
最小絞り値:f22
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀55㎜
プレビューレバー:マウント直前に装備

1962年発売
AUTO ROKKOR-PF 55mm/f1.8
光学系:5群6枚 モノコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀55㎜
プレビューレバー:マウント直前に装備

1965年発売
AUTO ROKKOR-PF 55mm/f1.8
光学系:5群6枚 モノコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀52㎜
プレビューレバー:マウント直前に装備

1965年発売
AUTO ROKKOR-PF 55mm/f1.8 (s)
光学系:5群6枚 マルチコーティング化
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀52㎜
プレビューレバー:マウント直前に装備

1966年発売
MC ROKKOR-PF 55mm/f1.7
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀52㎜
マウント直前のプレビューレバーが省かれている

1967年発売
MC ROKKOR-PF 55mm/f1.7 (s)
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀52㎜
マウント直前にプレビューレバー装備 (SR-1s仕様)

1968年発売
MC ROKKOR-PF 55mm/f1.7 (s)
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀52㎜
SR-1s仕様、ローレット (滑り止め) 意匠変更

1973年発売
MC ROKKOR-PF 50mm/f1.7
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀55㎜
焦点距離を50㎜、フィルター枠径⌀55㎜とした

1977年発売
MD ROKKOR 50mm/f1.7
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:45cm
フィルター枠径:⌀55㎜
初めてMD表記 (-PF無し)、同様ラバー製ローレット

1978年発売
MD ROKKOR 50mm/f1.7
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:45cm
フィルター枠径:⌀55㎜
レンズ銘板からフィルター枠径表記を省いた

1978年発売
MD ROKKOR-X 50mm/f1.7
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:45cm
フィルター枠径:⌀55㎜
サフィックス”-X”を付随する北米仕様

1979年発売
MD ROKKOR 50mm/f1.7
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:45cm
フィルター枠径:⌀49㎜
フィルター枠径が49㎜に変わった

1979年発売
MD ROKKOR-X 50mm/f1.7
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f16
最短撮影距離:45cm
フィルター枠径:⌀49㎜
サフィックス”-X”を付随する北米仕様

1981年発売
MD 50mm/f1.7
光学系:5群6枚 マルチコーティング
最小絞り値:f22
最短撮影距離:45cm
フィルター枠径:⌀49㎜
いわゆるNew MDモデルで最終形態

・・これだけまとめ上げるのに丸一日かかりました (要領悪いから)(笑)

上のモデルバリエーションで「機構上の仕様の相違」について捉える必要があります。

AUTO-ROKKORシリーズ 色表記
自動絞り方式対応ながら、フィルムカメラボディ側への絞り値伝達機能を持たない。

MCシリーズ 色表記
MC」は「Meter-Coupler (メーターカプラー)」の頭文字で本来マルチコーティング蒸着
の意味ではない。
フィルムカメラボディ側に開放絞り値を伝達する爪を有するので「開放測光」が実現する。

MD ROKKORシリーズ 色表記
MD」は「Meter-Dual (メーターデュアル)」の頭文字で絞り値とシャッタースピードを
フィルムカメラ側と連携できることを意味する。

(New) MDシリーズ 色表記
wikiで解説されるところの「New MD」を表すが、当時MINOLTA内で使われていた呼称
ではなく便宜上巷で使われている呼称。ちなみに筐体外装の多くが樹脂製に変更。

なお上のモデルバリエーションでモデル名に付随させて末尾に「s」を表記させているモデルは、一眼 (レフ) フィルムカメラ「SR-1s」向けにプレビューレバーとして鏡胴横にツマミを装備したタイプを指しており、マウント部内部に専用の機構部と構成パーツを含んでいます。

これは敢えて別年度でワザワザ追加発売しているくらいなので、当時のMINOLTA社内ではこのフィルムカメラ「SR-1s」か゜格別に意味合いに位置づけられていたのではないでしょうか (詳しくないのでよく分かりませんが、相当こだわってオールドレンズ側を製品化しています)???

また上の羅列の中「レンズ銘板のモデル銘にサフィックス “-X” を付随」する「ROKKOR-X」表記は、北米仕様です (米国とカナダ向け輸出品)。さらに他にROKKOR銘ではない「CELTIC銘」モデルも顕在し、こちらは欧州向け輸出仕様であり「ケルティック」と発音します (一部のネット上解説などに見られるセルティック表記は間違いです)。

一般的に「celtic (ケルティック)」は特に欧州のケルト族やケルト文化圏 (ケルト語圏) を指し
1世紀まで遡り当時の北欧~欧州全土に広がるゲルマン民族に属すると言われ、ケルト族との境界には「Роусь (ルース)」とロシア語キリル文字で表記される「ルーシ族」も繁栄し、今のロシア西部やベラルーシ共和国、あるいはウクライナを含む「広大な東スラブ地域の諸民族」をその祖としています。

・・もっと言うなら「Роусь」は、ロシアそのものを指す慈しみと畏敬の念を込めたコトバ。

従ってそれぞれが互いに混血してきた歴史的背景がある為、単に民族や宗教だけで明確に区分できない要素が多分に含まれとても複雑です(汗) そもそも古来より「自分達の領土は待っていても決して増えず、自ら奪い取るべきもの (略奪)」との意識が非常に強い民族だったことが
今も色濃く影響し、現ロシア軍に拠るウクライナ侵攻もまるでロシア国内では正当化されています (何故なら、元々旧ソビエト連邦時代に連邦に属していた国だから)(怖)

要は旧ソ連崩壊時に自分達の都合で勝手に西側陣営に加わろうと試み、独立を主張しても受け入れられないとの「旧ソ連的思考」を尊重する概念が、今も現ロシア国民の多くに残っており
この概念の根底には「個を求めるなら、国と国民の為に尽くすことでのみ充たされる」と言う民族愛、あるいは家族愛を基本とした国家主義的な思想、ひいては現在の全体主義的思想が未だにはびこっているからこそ、ウクライナ侵攻すら「正義」と捉えられ続けているのがリアルな現実です。

互いに隣人のために助け合うことで、厳しい自然環境の中で自分と家族を守り続けてきたとの先祖から延々続く思想こそが総てであり、それはベラルーシもバルト三国、そしてウクライナでさえ「古来からの隣人」との認識が、現ロシア人に確認すると明確なコトバとして出てくるから、まさにオドロキなのです(驚)・・その意味で、今のウクライナ侵攻は決して2014年に始まった話ではなく、数百年前から互いに奪い奪い返してきた長く永い歴史の中のワンシ~ンでしかないのだと指摘されると、本当にいたたまれない気持ちしか残りません(涙)

それはよくよく考えてみると (調べてみると) 永い歴史の中で、ウクライナ人もロシア人も関係なく親族同士も仲が良く付き合いが続き、互いに行き来往来する文化なのに、イザッ戦争状態に入ると互いの「」のためを主張して戦い始めるから、このような思想や概念は、今ドキのニッポン人には全く理解できません(汗)

逆に言うなら「島国日本に住まうニッポン人には分かるまい」と、陸続きの境遇を真正面から指摘され、どのように説明しようとも貴方達には到底理解できない・・とまで語られてしまうと、確かにそうだなと変な納得感を抱いたのを思い出します (十数年前にベラルーシの人と話した時の内容/論破された感ではなく、まるで納得できてしまったから)。

その中で非常に印象として強く残っているのは「陸続きであるのは境が在っても無く、互いに隙を見せただけでそれは相手側の落ち度になるから悪いのだ」と言う考え方です(汗)・・つまり隙を見せたら最後、攻め入られても文句は言えず、お互いが同じ目線で見合っている中で、親族同士親交を深めていると言うのは、或る意味現在の中東情勢にも相通じる思考回路であり「昨日の友は、今日の敵」が至極 (まるで空気の如く) 自然に受け入れられている概念とも言えその点をしっかり踏まえて現地に臨まないと痛い目をみます(怖)

要は自分の持ち物ですら、暗黙のうちに (何一つ考えずに) 確実に確保したまま普段行動するのに「取った盗られた」的思考は一切働いておらず、そこには「眼の前に放置されているなら、欲しいと思うのは人間の至極本質的な所有欲の現れであり、それを罪としてはイケナイ」みたいな内容の話であり、このような感覚は確かに今ドキニッポン人には全く理解できないと感じ入った次第です(笑)

そう言われれば、間違いなく香港に住んでいた2年半は至極当たり前に同じ行動をしていた (確実に確保していた) ことを思い出し、その時「取った盗られた」は考えていなかったなぁ~と、無性に納得できた記憶があります(笑)

この概念の本質を語る上で最も分かり易い例を挙げるなら「DIYでノコギリを挽く時、どちらに動かすのか???」を考えるとよ~く違いが分かります(笑)・・ニッポン人は「自分の方に向かってノコギリを挽く」のに対し、外国人は「自分の外に向かって押して挽く」であり、これは自分を取り巻く周囲の意識概念の相違とも指摘でき「自分が円の中心・・であり、その周囲に多くの人が居る」外国人に対し、ニッポン人だけは「円に囲まれた周囲の多くの人の中に、その中心に自分が居るだけ・・・・」との捉え方をするらしく(笑)、その時「主体自分、の外国人」なのか「主体周囲、のニッポン人」と言う相違が明確にみてとれます。

・・周囲に気配りし協調性の中で、自身の生活と人生を自由に謳歌できる。

そういう意味でも幼稚園レベルから徹底して教え込まれてきたのが大人になって社会環境に到達した時、至極当たり前に考えていても、それは外国人からすれば「あまりにも信じられないレベルで無防備すぎる民族 (驚愕レベル)」とニッポン人を評価されるのは、まるで理に適っているとすら思えます(汗)

・・平和ボケニッポン人の本質部分には、そういう一面があるのかも知れません。

  ●               

話が少し逸れましたが、今回扱った標準レンズMC ROKKOR-PF 55mm/f1.7《1970年製》(SR/MC)』も、先日このブログにアップした広角レンズMC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5《1966年製》(SR/MC)』も、両方とも同一のご依頼者様からのオーバーホール/修理受付分です。

実はご依頼者様は、大学生の頃に叔父様から借りられたライカ製レンジファインダーカメラ「M3」と、たった1本「M-ROKKOR 28mm/f2.8」だけを片手にメキシコを1ヶ月半旅行した経験があり、その時の写真撮影から彼等の見た光景を追って、、、メキシコ1988 (井上喜雄著)』を出版していらっしゃるプロの写真家です (左)。

他にも以下のような出版写真集があります。

↑当方の琴線にビンビンと触れまくって煩いほどに感銘を受ける、大変素晴らしいお写真ばかりがたくさん載っています。是非お勧めですから、一度見てみて下さいませ。

特に白黒写真でのライトト~ンや陰影の表現性の素晴らしさには目を瞠るばかりで、さすがプロの写真家だと本当に納得して安心して鑑賞できます。その井上氏が今回、この当時のMINOLTA製オールドレンズに写真表現性の魅力の一つを感じられたようで、なんともステキなストーリーではありませんか!

・・こんな光栄なことはありません。ありがとう御座います!!!(涙)

巷では (特にネット上では) 低コントラストな、まるでハイキ〜に偏重した写真や、ゴースト或いは光輪ばかりを掲載しまくる「これが如何にもオールドレンズの写り」とふれまくる低俗な写真家が多いですが(笑)、まさしく真髄を魅せられた思いで改めて写真って素晴らしいなぁ~と感心した次第です(涙)

これら撮影に供したレンズは分かりませんが、MINOLTA製オールドレンズの写り具合が少なくともご自身の琴線に触れたのは間違いなさそうで、誠に以てオーバーホール冥利に尽きるばかりで・・感謝申し上げます(祝)

↑冒頭に羅列したモデルバリエーションの中で実装光学系の変遷を辿ると上のようになります。それぞれ附した番号がモデルバリエーション上の番号に一致します。また今回扱ったモデルも光学系はこの一貫した5群6枚拡張ダブルガウス型構成を採ります。

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い、逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑今回のオーバーホール/修理個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。やはり今回の個体もマウント部内部のトーションバネ (捻りバネ) 2本を互いに「固着剤」を使い固めてしまい、本来のその効力が反転した結果、設計とは全く別のチカラが絞り羽根開閉動作に働いている状況でした(汗)

←トーションバネ (捻りバネ) の代表例は左写真のようなカタチです。

左右に「ハの字型」の鋼線が飛び出し、その左右に引っ掛けられた
パーツが互いに動く際、このバネ材のチカラが働いて適切な反発力
(戻ろうとするチカラ) を効します (水平のカタチの種類もあり)。

ところが左右の「ハの字型の先端部分を固着剤で固められる」と、反発するチカラは左右端から中心部の巻かれている箇所に集中します。結果、本来の性能を発揮できなくなり「中心部の巻かれた位置の浮き上がるチカラの応力分として構成パーツが反応する動き方に変わってしまう」ワケで、要はチカラの向きが反転しており正しく適切に反応しないことになります(汗)

過去メンテナンス時の整備者の思考回路をここで曝け出すなら「トーションバネ (捻りバネ) が外れないよう気を利かせて固着剤で固めてあげよう」程度なのでしょうが、本当にロクなとをしません(汗)

トーションバネ (捻りバネ) の飛び出している左右端は「引っかかるだけで駆動時はスライドして動いている」原理であり、スライドして引っかかっていた当初位置からズレても「発揮すべきチカラの伝達が適う」点で効力を発揮します(笑)・・それを左右端で固められてしまうと、パーツが駆動した際にそのチカラを受けて (スライドして動けないから) 巻かれている中心方向にチカラが伝わります(汗)

反射防止黒色塗料」は組み上がった後の筐体で、光学系内を覗き込んだ時「見栄えの良さ」だけを追求して処置され (ちゃんと検査して低コントラスト化を改善する目的で一切着色していない) 合わせてトーションバネ (捻りバネ) の使い方まで間違え、自分の思い込みだけで「固着剤」を塗りまくる本当にどうしようもない低俗で低能な整備者ばかりです!(怒)

↑上の写真は当初バラし始めた時の撮影です。フィルター枠を取り外して光学系前群を取り出したところで「鏡筒を見ている角度の写真」です。赤色矢印で指し示している箇所、鏡筒のフチがヒタヒタ状に液化した揮発油成分で濡れていますし、距離環の底部分も湿っています(汗)

↑今度は鏡筒を抜いてヘリコイドオス側の内側 (ブルー色の矢印) に備わる「直進キーガイド」の溝部分を拡大撮影しています (グリーン色の矢印)。「直進キー」と言う板状パーツが刺さっていますが、、そこにウレアグリース (赤色矢印) が使われないまま溜まっているのが分かります。

この「直進キーガイド (溝)」と「板状直進キー」との間には隙間が在るので、ここにグリースを塗っても何の意味もありません(笑) 未使用のまま残っていたグリースを確認して「過去メンテナンス時に塗布したのがウリアグリースと判明」する次第です(笑)

↑こちらはマウント部を取り外した時の写真です。やはり赤色矢印で指し示している箇所、フチ部分に液化した揮発油成分がヒタヒタ状に残っています。

↑前述した「トーションバネ (捻りバネ) の左右端を固着剤で固めていた部分」を証拠写真として撮影しました (赤色矢印)(笑)

↑取り出した直後の (まだ溶剤洗浄していない時の) ヘリコイド群・・ヘリコイドオス側 (左) にヘリコイドメス側 (中) とヘリコイド用ベース環 (右) です。

ウレアグリースが塗られているものの、すでに経年劣化進行に伴い「濃いグレー状」に変質しています。

↑溶剤洗浄した後に当方により『磨き研磨』を施すと、こんな感じになります。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。内外全ての面を「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」で仕上げられています。

↑鏡筒最深部に組み込まれる絞りユニットの構成パーツ「開閉環 (左)」と「位置決め環 (右)」で、同様「微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

←左写真はこの当時の全てのMINOLTA製オールドレンズで使う「C型環 (留め具)」てすが、赤色矢印で指し示している箇所に山があり膨らんでいます。

単に回転するパーツが外れないよう保持しておくだけの役目ですが、一般的に水平/平なC型環が多い中、MINOLTAライカ製オールドレンズなどは、このように山谷状に極僅かに折り曲げられています。

クッション性をもたせることで回転パーツの「浮き上がり現象」を耐えさせ、その時のチカラを相殺させる目的で用意されています (相当細かく配慮した製品設計なのが分かる)。

↑鏡筒最深部に絞りユニットをセットしました。位置決め環 (赤色矢印) を締め付け固定しているのが「シルバーの締付環 (ブルー色の矢印)」であり、且つ3本のイモネジを使い締め付け固定しています (グリーン色の矢印)。

いったい何故に鏡筒の内部にこのようなキラキラと光り輝く「シルバーな締付環」を用意するのかと、皆さんはどうして思わないのでしょうか???(笑)

多くの方々が「迷光迷光」と光学系内、或いは鏡筒内部での不必要な反射を問題視しますが、当の製造メーカーたるMINOLTAでさえ、こんな状況です(笑) この締付環をチェックすると「平滑メッキ加工」が施されていて、イモネジで3方向から均等締め付けした時にシッカリと「位置決め環」を上から押さえ込んで微動しないよう仕向けています。

と言うのも、絞り羽根は最小絞り値側に到達する直前に膨れ上がるチカラが働くので、その時にちゃんと押さえ込んで絞り羽根の開閉角度がズレないよう仕向けているのです。

・・しかし、シルバーな光彩を放つ環/リング/輪っかなのです(笑)

詰まるところ、皆様が騒がれるほど鏡筒内部の反射は入射光の制御に際し大きな問題ではないことが窺い知れます(笑)・・如何でしょうか???

↑ヒックリ返して組み上がった鏡筒の裏側を撮影しました。制御機構がセットされています。「連携ガイド (左)」は絞り環と連結して設定絞り値を鏡筒内部の絞りユニット (正しくは開閉環) に伝達する役目です。一方「開閉アーム (右)」は、マウント面から飛び出ている絞り連動レバーの操作によって、やはり絞りユニット内部「開閉環」を操作する役目です。

前者の「連携ガイド (左)」は制御感に繋がっていて、その途中に「なだらかなカーブ」が備わり、坂を登った頂上部分が「開放側」反対側の麓部分が「最小絞り値側」として「開閉アーム (右)」の途中に垂直状に立つ金属棒 (カムの役目) が突き当たることで、その時の坂の勾配に従い「絞り羽根が閉じる角度が決まる」原理です。

すると問題になるのは「完全開放時にいったい何処に突き当たるのが適正なのか???」になり、絞り環~連携ガイドまでの適切な微調整が必須になるので、完全解体すると言うことは必然的にここの微調整も行うことになりますね(笑)

・・過去メンテナンス時の微調整を信用しない為、完全解体してしまう (自分で微調整する)

↑この当時のMINOLTA製オールドレンズの凄いところは「徹底的なサービスレベルの完成」を設計の根本としており、ヘリコイド群や絞り鮮魚機構、或いはマウント部と、それぞれの部位を単体で取り出せるように設計してある点です(驚)

さすがにここまでコストをかけて徹底的にサービスレベルに真正面から立ち向かった製品設計をしていた光学メーカーは、他にありません (この点に関して指摘するならCanonNikonOLYMPUSですら格下でしかない)。

ヘリコイド群の要たるベース環です。

↑これにヘリコイドメス側 (黄銅材) とヘリコイドオス側 (アルミ合金材) がネジ込まれ、ヘリコイド群という単独の構成で完結する製品設計です。

↑こんな感じでそれぞれがネジ込まれます。間に黄銅材を配している理由は、アルミ合金材削り出しだけで全て用意すると「カジリ付」対策まで必要になることを懸念して想定の製品設計だからです。この後の時代になると、条ネジ山の微細な処置がさらに進歩して、アルミ合金材削り出し同士でもカジリつかないヘリコイドの時代が到来します。

・・従って重要なのは決してヘリコイドグリースではありませんね(笑)

上の写真ではすでに「黄褐色系グリース」を塗布しています(笑)

↑無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で12箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

基台をセットしたところです。基台を簡単に取り外せる製品設計なので、一つ前のヘリコイド群を単独にできる素晴らしいサービスレベルです。

↑期待をヒックリ返して裏側を撮影しています。ヘリコイドオス側の「直進キーガイド (溝)」に刺さる「直進キー」が締付ネジ3本を使い締め付け固定されています。

この「3本も用意して締め付け固定する手法」にもちゃんと意味があり、しかもここにはマチ (隙間) すら備わりません。これが意味するのは「厳格にヘリコイドのネジ山が設計され、そのとおりに切削されている」ことを意味し、一般的に多い「ヘリコイド駆動を均質に保つ為に、直進キーを両サイドに用意する」のとは異なり、たったの1本です (しかもマウント部の爪と同じ真鍮製/ブラス製です)(笑)

・・これこそが当時MINOLTAの自信の現れです!(涙)

従って冒頭写真のように、この「直進キー直進キーガイド」にグリースなど塗る必要が一切存在しない道理がとおります (もちろん当方のオーバーホール工程でもグリースなど、上の写真のとおり塗りません)(笑)

↑距離環を仮止めします。

↑この状態でヒックリ返して、ここから絞り環とマウント部の組付け工程に入ります。

↑「僅か⌀1㎜径の鋼球ボール反発式スプリング」をセットしてから絞り環を組み込みます。この時合わせて鏡筒もセットします。

鏡筒の裏側から突出する「連携ガイド」に、絞り環から内側に突出する「連携爪」が互いに噛み合い (グリーン色の矢印)、距離環の回転に従い鏡筒を繰り出し/収納する際、確実に設定絞り値を伝達していきます。

するとここから一つの原理が分かります。「連携ガイドの長さ自体がそもそも繰り出し量/収納量を意味する」ことになります、合わせて距離環を回している最中のトルクには「これら噛み合いながらの抵抗/負荷/摩擦が必然的に加味されている」のが道理であり、単に塗布するヘリコイドグリースだけの問題ではないことが歴然です(笑)

この時「連携ガイドの長さ」は無限遠位置と最短撮影距離位置の「駆動域を内包する」ものの、もしも仮にその駆動域にピタリの長さしか有していなければ、経年の中で鏡筒が脱落する懸念すら残ることになり、ここから明示されるのは「駆動域よりも極僅かに長めなのが連携ガイドの長さ」との結論に到達します・・その範囲内になければ、今までの工程の中で組み立ててきた何かがおかしいと気づく必要があるワケですね(笑)

・・これが「原理原則」に則ったオーバーホール作業時の考察です(笑)

↑マウント部内部の写真ですが、すでに各構成パーツを取り外して、当方の手による『磨き研磨』を終わらせて撮っています。

↑当初経年の揮発油成分がヒタヒタ状態だった中で生じていた、各構成パーツの酸化/腐食/錆びも完全除去して『磨き研磨』後に組み付けました。

するとグリーン色の矢印で指し示している箇所のトーションバネ (捻りバネ) 2本も、冒頭解説の通り「固着剤」などで固めず (当たり前の話)(笑) ブルー色の矢印で指し示している箇所の「操作爪」も、トーションバネ (捻りバネ) の反発力を受けて確実に反応して駆動することを確認済です。

そしてこのモデルは冒頭で列挙したモデルバリエーションで言う処の「 1968年発売
MC ROKKOR-PF 55mm/f1.7 (s)」の為、フィルムカメラ「SR-1s」用に「プレビューレバー」のツマミを有しており、鏡胴から飛び出ています (写真右横)。

実はこのマウント部の構造自体は最初期の「 1958年発売AUTO ROKKOR-PF 55mm/f1.8」から設計概念が受け継がれたままであり、鏡胴横に「プレビューレバー」を持たないモデルの場合は「単に押さえ金具が締め付け固定されるだけ」で同じマウント部をそのまま転用し続けていた事実が判明しています(笑)

その意味で指摘するなら「1958年の発売に際し、相当時間をかけて熟考を重ねて設計されていたマウント規格と一眼 (レフ) フィルムカメラの製品設計」との思いに到達せざるを得ません(驚)・・オールドレンズのほうすら、それこそ毎年の如く設計変更を繰り返しながらも「シッカリ基本設計は既に完成の域に到達していた」ことが分かり、今さらながらにこの光学メーカーの凄さに感じ入ります(涙)

↑完成したマウント部をセットします。

↑この後は光学系前後群を清掃して組み込むだけですが、実は光学系第1群前玉の表面には、上の写真のような「ナイロン環/リング/輪っか」が1枚締付環との間に挟まれます。

そしてこのように締付環の間に環/リング/輪っかを挟んでいた当時の光学メーカーが存在し「Ernst Leitz Wetzlar/Leitz/Leica」だったりします (ライカでは紙製の厚みのある環/リング/輪っかを使う)(笑)

要は外部からの水分や湿気、或いは砂の侵入を防御する概念ですが、その根本に位置する設計がちゃんとあり「格納筒への光学硝子レンズの落とし込み方式」と指摘できます。

光学系の各群を締付環でいちいち固定せず、むしろサクッとストンと格納筒に落とし込んで「空気の移動を許す」原理で、外気温の変化や気圧差に対処しようとしていた考え方だったのが、たったこの1枚の環/リング/輪っかの存在だけで裏打ちされます(笑)

↑そしてたまたま今回の個体をオーバーホールしていてトラブルに見舞われ、別に用意した「 1966年発売MC ROKKOR-PF 55mm/f1.7」から取り出した光学系前群用格納筒を上の写真では撮影しています。

すると赤色矢印で指し示している箇所両サイドに「空気の抜け穴が備わる」のが分かり、まさに一つ前の工程で解説した話の内容がここでも「証拠」として明示されます(笑)

詰まるところ、今回扱ったモデルのタイミングでは、この空気抜け孔は消失するので、使っているアルミ合金材の成分/配合などに変化が訪れていたことが窺えます (より柔軟に膨張/収縮できる素材へと進歩していった)。

逆に指摘するなら、それほど内部に実装する/格納する光学硝子材にとっての天敵は「熱ではなく気圧差」なのだと自覚するべきですね(笑)

例えば例を挙げるなら、この当時に流通していた富岡光学製オールドレンズの光学系格納筒には「朱色の強い粘性を持つ固着剤が塗布されていた」ことをワンオーナー品の扱いから調べています (ワンオーナー品の扱いは今までに富岡光学製品では3例あり)。

すると同じ「固着剤」なのに、どうして硬質化せず強い粘性を維持し続けていたのかと言えば「気温差や気圧差で締付環含め格納筒自体が熱膨張/収縮を繰り返すから」と指摘でき、その環境下で確実に所定位置を維持し続けたまま光学硝子レンズの締め付け固定を担っていたと考えられ、ここに整備者が思い込む落ち度が隠されており「締付環の締め付け固定は、必ずしも硬締めだけが総てではない」ことの左証とも言い替えられます(汗)

まさにこの概念こそが「光学硝子レンズの破壊」を防ぐ根本的な考え方であり、徹底的に「固着剤」で固めて固定するだけが適切ではないことを明示しているのではないでしょうか???

これは逆に言うなら、以前取材させて頂いた工業用光学硝子レンズ精製会社様でのご教授の中でも似たような話があり、そのような専用の「粘性を持つ嫌気性ではない固着剤」使う根拠にもなっていました。空気との一定の親和性が保たれているので決して硬質化しませんが、かと言って経年劣化進行に伴い粘度が緩くなる性質のモノでもなく、至極考え尽くされている「固着剤の一種」とも言えます。

・・こういうのが「観察と考察」「原理原則」ですね(笑)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

実は上の写真を撮影したのは2日後であり、光学系の清掃に入り、特に第1群前玉をチェックした再「裏面側に3点の点状カビ菌糸繁殖」を確認したものの、その裏面側はまさに『アクロマチックコーティング (AC) 層』だったりします(怖)

当然ながら「グリーンの光彩を放つ」蒸着コーティング層ですが、裏面側のコバ端付近直前を見ると「明確に薄膜で蒸着されているのが分かる境界面を有する」ことを確認でき、これは清掃したら剥がれるかも知れないと一抹の恐怖心を覚えますが、かと言ってこのまま発見した3点の点状カビ菌糸を放置すれば、いずれ数年で繁殖が広がります(怖)

仕方なく清掃をスタートしましたが・・ものの見事にアクロマチックコーティング (AC) 層が剥がれました(涙) 実際の工程ではカビ菌糸の除去薬を垂らしただけですぐにアクロマチックコーティング (AC) 層が剥がれてしまった為、もうその時点で「裏面側全面剥がし」が決定的になります(涙)

従って、そのタイミングと即「転用するトレード用個体の調達」に駆られ、急遽調達して2日後に届き、即座に前玉を転用した次第です (転用した前玉裏面側にはカビ菌糸が無かった)。

とは言っても目で見ただけで本当にカビ菌糸の繁殖が皆無だと分かるハズもないのですが、再び除去薬を垂らせば同じ運命しか待っておらず(涙)、とにかく『アクロマチックコーティング (AC) 層』だけは手を付けたくありません(怖)

その意味でもこの当時のMINOLTA製オールドレンズは、オーバーホール/修理ご依頼を受けたくないのがホンネです。先ず間違いなく『アクロマチックコーティング (AC) 層』は剥がれるか、良くても細線状剥がれのヘアラインキズ状にしか見えない結末しか残りません(怖)

皆様にはプロのカメラ店様や修理専門会社様宛整備依頼されるのが最善と申し上げておきます。当方宛オーバーホール/修理をご依頼頂く方々は、ほんの数えるだけなので、どうか買い被らぬよう切にお願い申し上げます。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。とは言っても、前の解説の通り、前玉を転用している為、都合2本の個体を完全解体して組み上げている始末で、本当に何をヤッているのか分かりません(恥)

当方の技術スキルはこのように低いので、どうか今このブログをご高覧頂いている皆様方も、重々ご承知おき下さいませ(涙)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑後群側もスカッとクリアで極薄いクモリが皆無ですが、そもそも届いたご依頼品の後玉には「1/3の領域に斑点状に蒸着コーティング層の劣化が汚れ状に視認できる (但し光に翳して透過させた時にしか見えないレベル)」状況だった為、多少ヘアラインキズが残るものの転用として緊急調達したドナーレンズから後群側も転用し、最終的に「光学系全群を全て転用した」結末です(涙)

↑6枚の絞り羽根もきれいになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ご依頼内容の一つだった「正六角形」の各辺が本当に直線上の「真の正六角形」は、さすがに絞り羽根を切り取らなければ実現できず、その一方で切り取ってしまえば隙間が空いてしまうのは間違いなく、そんな処置はできません(汗)

従って単にそのままのカタチで組み上げただけです。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使ったものの、ご依頼内容の一つであった「トルクを重くしてほしい」とのご指摘に従い、当方で用意するグリースの中で最も粘性が高いグリースを使う・・のが一般的な考え方なのでしょうが(笑)、当方ではそのように処置しません。

使ったヘリコイドグリースはいつも使っているグリースであるものの、その粘性を微調整する工夫をして塗布し、最終的に組み上げています。その根拠が途中の工程で解説した「この当時のMINOLTA製の製品設計」に隠されており、単にそれに従っただけの話で「相当なレベルに重めのトルクに仕上げられた」ものの、その一方でいつものとおり「ピント合わせ時の前後微動は実に軽く極僅かなチカラを掴んでいる指の腹に伝えるだけで実現する」操作性の良さは、そのまま受け継いでいます (当たり前ですが)(笑)

従って、当方のオーバーホール作業の中でのトルク管理の根本が「決してグリースの粘性だけに左右されない」のが明白ではないでしょうか(笑) あくまでも距離環を回すトルクを、ご依頼者様のご指摘に従い、その好みに適合させているだけの話です(笑)

↑結局、前玉裏面側のカビ菌糸3点の為に、左横に並べた転用専用ドナーレンズが必要になってしまい、2本のオーバーホール作業を強いられてしまい、本当に何をヤッているのか分からない結末でした (右側がご依頼の個体)(笑)

当然ながら、決して当方のミスではないにしても、結果的に『アクロマチックコーティング (AC) 層』を剥がした事実だけは隠しようがない真実なので、左横の個体をオーバーホールした作業代金も、当然ながら調達費用も含めた何もかもが「無償扱い」であり、同梱します(笑)

ちなみに附している番号は冒頭のモデルバリエーション上に従い、且つその外見上の判定基準はブルー色の矢印で指し示している箇所のローレット (滑り止め) のカタチだったりします(笑)

↑上の写真はご依頼の個体の絞り羽根が最小絞り値f16まで閉じている時の写真です。絞り羽根自体に微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工が施される徹底ぶりなので、ご覧のようにメタリックグレーに留まります。

一部の絞り羽根の先端部分に残る銀色の擦れ痕は、この絞り羽根が過去メンテナンス時に閉じすぎてしまったことを如実に物語っており、その時に6枚全てが噛んでしまった証拠です (その時に擦れてしまった痕跡)(汗)

逆に言うなら、経年の中でここまで6枚全てが一度に閉じきることは「設定上有り得ない/起き得ない」ので、過去メンテナンス時の整備者の仕業との判定を決定づけできます(笑)

↑一方こちらの絞り羽根は同じ6枚ですが、世代的に2つ前のタイミングにあたるモデルなので (緊急調達したドナー個体)、ご覧のようにメタリックな輝きが残ったままです (微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工されていません)。

はたしてこの何処に「迷光迷光」と騒ぐ根拠を光学メーカー自信が持つのでしょうか???(笑)

逆に指摘するなら、後のタイミングで (今回扱った個体で) 微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工を絞り羽根の表裏に施してきたではないかと、まるで鬼の首を取ったが如く指摘するのでしょうが(笑)、それは当てはまりません。

それは特に後玉の蒸着コーティング層をチェックすれば判明し、2つ前の世代では「グリーンの光彩」に加えて、後群内の他の群で明確に「パープルブル~」の蒸着コーティング層を付加させている為、そこから透けて見えてくるのは「光学系の再設計を執らずに蒸着コーティング層の変更だけで対処していたレベルの入射光制御」と受け取れ、まさにその時々の市場需要 (要望) に従い変更していた融通性の強さを垣間見たような話です(笑)

すると今回のモデルの世代では「より入射光制御への負担を軽減させただけの処置」として、絞り羽根表裏面に微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工を施したのが推察できます (つまり蒸着コーティング層の指向を変更させているから)。

・・こういう部分で俯瞰的に捉えていかないとなかなか見えてこないですね(汗)

なお、このような今回の状況から「同梱するドナー個体は、フレアの状況やコントラストの加減に変化が起きている個体と受け取れるので、両方使いで撮影に臨まれると、より厳密にシ~ン撮影が適う」のではないかとの思惑が働いての同梱決定です。

・・もしも良ければ合わせて両方使いでご活用下さいませ。

その意味では組み上がった個体で実写確認すると「ドナー個体のほうがむしろ解像度が上がっているものの、入射光の加減に弱い傾向」が感じられ、これはこれで白黒撮影には有効なのかも知れないと考えたりしました (よく分かりませんが)(汗)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離55㎜開放F値f1.7被写体までの距離69m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度34m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、40m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の70m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」での撮影です。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっているので「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。先に整備して仕上げた広角レンズとも共々、ドナー個体も含めた3本をまとめてご返却申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。