♦ MINOLTA (ミノルタ) MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5《1966年製》(SR/MC)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、国産は
MINOLTA製広角レンズ・・・・、
MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5《1966年製》(SR/MC)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時のMINOLTA製広角レンズ域「焦点距離28㎜」だけで括ると8本目にあたりますが、今回扱った「開放f値:f3.5」だけでカウントすると4本目です。

・・その中で、今回扱う「1966年製モデル」の扱いは、実は初めてだったりします(汗)

後のほうで、この広角レンズ域「焦点距離28㎜」に限定したモデルバリエーションを羅列し、合わせて実装光学系の大まかなトレース図まで掲載していきますが、今回の扱いにより「初期の頃の実装光学系で抜けていた構成図をまた一つ埋めることができた」点に関し、当方にとってはむしろこのような真実こそが大変ありがたく、嬉しく、そして励みになる成果とも言え・・ここに改めて今回オーバーホール/修理ご依頼を賜りましたご依頼者様に対し、心からお礼と感謝の念を申し添えておきます

・・ありがとう御座います!(涙)

今回扱うモデルに関し、どうしてそこまで感謝しているのかと言えば、実はこのモデルはいくらでも市場流通しており、且つ数千円で流れているリアルな現実を鑑みた時、当方自身が調達してオーバーホール済でヤフオク!出品するにも「その作業対価分の回収が不可能 (要は完全
なる丸赤字
)」なのが目に見えている為、そもそも普段から扱っていないオールドレンズだったりします(汗)

その意味で市場流通価格帯が低価格なら、いくらでも入手して実装光学系を調べられるではないかとのご指摘もあるでしょうが、調達した以上バラしたまま捨てるワケにもいかず (いわゆるオールドレンズ愛の一種みたいなモノ)(汗)、かと言ってオーバーホールした作業対価を乗せた価格帯で出品したところで、誰も落札しないのは火を見るよりも明らかです(笑)

そのような事情から今まで扱いがないままに、その実装光学系も確認できないまま、とうとう13年が過ぎてしまったというのが本当だったりします(笑)

逆に言うなら、今回のように「オーバーホール/修理依頼してでも長く使える状態にしたい」との願いを込めて、ご依頼なさる方もいらっしゃるワケで、いつもこのブログで述べていますがオールドレンズに身分の差はなく、そこに銘玉/ダメ玉の烙印も (本来は) 存在せず、誰がどんな心持ちでどのように使われようが自由であり、さらにいちばん大切な配慮は「今亡き人の面影を追っている」想いが被さっていることも多く、ひと言に片付けられる工業製品ではない点に於いて、意外にも偏重した思惑が横行していたりするのがリアルな現実だったりします(汗)

はたして、自分の父親が大事に愛用していたオールドレンズが、ネット上でダメ玉の如く扱われ、評価され、貶められているのを快く思う人が、いったいどれだけ居るのかと言う、本当に「人としての無垢で純粋な質問」です(涙)

そういう自分だってこのブログで散々過去メンテナンス時の整備者を貶しまくっているでははないか!!!・・と言われるのがオチですが、それは違います(笑) 当方が貶しているのは「ごまかしの整備をする人達の人格」であり、本来製産時点は正しく適切に機能していたオールドレンズを「製品寿命へと導いている偽善者の所為」を徹底的に貶しているのです。

黙っていても手に触らずとも後50年も経てば、光学硝子レンズに蒸着しているコーティング層の経年劣化進行に伴う致命的なクモリの発生以上に「光学硝子レンズ破壊の進行」は止めることができず、ひたすらに『絶滅へと向かう運命』しか残っていません(涙)

特に近年の研究者論文に習えば、マルチコーティング (多層膜コーティング層蒸着) が光学硝子レンズに対し有効性を高めるものに「TiO2 (二酸化チタン)」や「ZrO2 (ニ酸化ジルコニウム)」或いは多くの場合で「MgF2 (フッ化マグネシウム)」と「CeF3 (セリウムフッ化物によるシンチレーター活用)」そして
当然ながら「SiO (一酸化ケイ素活用の保護膜形成)」など、既にこれら鉱物の蒸着による有効性が既知になっている。

たまたま新型コロナウイルスが猛威を振るったが為に厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」など詳しい情報を知る機会を得ましたが、特にシングルコーティング/モノコーティング時代のオールドレンズになれば「MgF2 (フッ化マグネシウム)」活用は周知の事実なので、はたしてその耐性を鑑みた時、光学硝子レンズに蒸着してあるコーティング層とは「いったい何年が耐性なのか???」との非常に純粋、且つ根本的な疑問が湧いてきます(汗)

光学硝子レンズの清掃に際し、当方では「4つの洗浄液と4つの工程」を経て、たった1枚の光学硝子レンズの片面に対してのみ作業しますが (全群の表裏面となれば相当な時間になる)(汗)
それは一発でキレイに仕上がった時の話であり(笑)、技術スキルが低い当方の場合には、これらセットを2~3回繰り返すこと屡々といったところです(恥)

特に今回扱う広角レンズのモデルとなれば、実装光学系の光学設計は「レトロフォーカス型」なのは歴然で、枚数は多いは後玉は小さいは、ちょっとした気の緩みだけで光学清掃のセットは追加になっていきます (気づけば1時間などあっという間に過ぎ去っている)(笑)

  ●               

そんな中で、今回扱うMINOLTA製オールドレンズの光学系に使われている、特徴的な蒸着コーティング層と言えば『緑のロッコール』たる所以の『アクロマチックコーティング (AC)』です(涙)

これは1958年にMINOLTAが世界初開発した「薄膜蒸着コーティング技術」を指し、いわゆる硝子研磨が終わった後の光学硝子レンズへの「入射光の反射防止 (透過率低減抑制)」に係るコーティング層の蒸着自体を指さず、さらに説明するなら「シングルコーティング (単層膜)/モノコーティング (複層膜)/マルチコーティング (多層膜)」の括りで言うところの「モノコーティング (複層膜)」を意味する開発技術でもなく「既存の蒸着済コーティング層の上に、追加で薄膜に処置する蒸着コーティング層技術」であり、全くその開発概念が別モノです。

すると既に蒸着コーティング層が完成している上に、さらに追加で
被せる薄膜蒸着コーティング層とのイメージの中「まるで薬味の如く入射光の透過成分/波長に対する、より厳密で厳格な制御を可能にする試み」との意味合いに繋がり、それが目指す目的と狙いは「より自然な色再現性の追求」であると、当時のMINOLTAのカタログで語っています (左は1960年時点のMINOLTAレンズカタログより抜粋)。

そして実際これらの研究論文抜粋「写真レンズに対するAchromatic Coatingについて (西野久著)」を読むと、特にカラーフィルム印画紙を使う条件下に於いて、光学硝子レンズの屈折率が低い面に対して薄膜蒸着すると効果が期待でき、特にシングルコーティング層に被せるとより有効であることが述べられています。

そもそもどうして『緑のロッコール』なのかと言えば、その原点は1811年1817年まで遡り、後のドイツ人物理学者/光学レンズ製造技術者たる「Joseph Ritter von Fraunhofer (ヨーゼフ・リッター・フォン=フラウンホーファー)」氏が、スイス人のピエール=ルイス・ギナンに師事して光学ガラスレンズ製造を学び、1811年に「フリントガラス製造術」を発見した時代まで語る必要があります。

これは当時先進的と評されていた英国製クラウンガラスに対する「光学硝子精製に係る不均質性」を改善しない限り、真の研究に資さないとのフラウンホーファー自身の決心からスタートしています。

後に英国製クラウンガラスの不規則な屈折を抑えた、より優れたクラウンガラスの製造に到達し、1814年までに世界で初めて「分光器を発明」し、太陽光スペクトルの分光に570を超える暗線の存在を確認した「フラウンホーファー線」発見者でもあります (右図はその
記念切手
)・・現在では数万のフラウンホーファー線 (暗線) が確認できています。

後の1817年に、このスペクトル内の暗線を活用する事で、光学ガラスレンズの屈折率を
調べる術
を世界で初めて発案した
功績は、光学ガラスレンズ史上特記すべき功績とも考えられています。

するとこの記念切手がまさにヒントなのですが(笑)、太陽光の分光スペクトル (可視光) の中で波長の長い方向性が赤色領域になり、その反対側は波長が短く減衰するのが早い紫色領域になります。この時、波長のサイクルの影響/強度を加味して均一に認識すると「スペクトルの中間域は緑色領域になる」ので、グリーンの反射率を低減させ透過率を向上させると、その先の (早く減衰してしまう) ブル~成分にまで透過率の向上を期待できることから「自然な色の再現性を狙った時、グリーン色の蒸着コーティング層の効果が透過率とともに期待できる」話になるようです。

例を挙げるなら今ドキのデジタルな光の世界では「 ()」を「光の三原色」と捉え、総天然色を表現しています。そしてそれら3つの基本色を混ぜ合わせて得られる混色は、右のとおり「ホワイト (白色)」に必ず到達します (中心部分)。

この時、光は「波長」なので、前述のスペクトルに於いて「長い波長の赤色の領域」に対し、その対極に位置する「短い波長の青色領域」に必ず分光します (可視光領域での話)。

するとその中間層に位置するのが「緑色の領域」で両側に「水色黄色の領域に囲まれる」のが原理です。

つまり「グリーン色の光彩を放つコーティング層を蒸着させる事で中間層たる光の領域自然な発色性の追求」を狙えるとした概念が、一時期流行ったのではないかとみています (植物のグリーンを指す話ではありません/スペクトルの分光に於けるグリーン領域を指します)。

逆に言うなら「赤色の領域青色の領域も互いに対極に位置する波長」なので、それらを追求すると「解像度の向上を狙えるものの発色性の忠実な再現性にはむしろ遠のく」事から「敢えてこだわりを以てグリーン色のコーティング層を蒸着して補強する狙い」とみています(涙)

これがMINOLTAの「アクロマチックコーティング (AC)」で言う処の「緑のロッコール」であり、カタログ記載のとおり「より自然な色再現性の追求」から、競合他社光学メーカーまで含めまるで伝染病の如く一時期流行りました(笑)

結果的に当時、色再現性よりも「解像度の向上」のほうが民生受けが良く、合わせてフィルム印画紙への記録とフィルムカメラの工業製品としての限界からデジタル一眼カメラ/ミラーレス一眼カメラへと、大きく流れがうねりを挙げて変化していきます。

ちなみに「光の世界では上の右図のとおり、総天然色の中での混色はホワイト」であるものの思い込みで最も間違い易い現象として「コントラストの低下」が起きていた時に、まるで1枚レースカーテン越しに観ているかのように「色が透けて薄くなった色の描写 (ハイキ〜な撮影とも言う)」を「フレアや光加減含めた、オールドレンズの収差の世界」として印象づけするプロの写真家やネット上解説が多いですが(汗)、これは上の右図のとおり「各色成分が重なった時に色味が消えてホワイトに収束する」原理から捉えるなら「フレアや光のせいだけではなく、光学設計から来る入射光制御の結果」なので、或るオールドレンズのモデルでハイキ〜な写りに記録されるからと言って、その同じシ~ンを別モデルで撮影しても同一写真が記録できないことを意味しています。

要は光の入射角度や光量などの環境が同一でも、設計される光学硝子レンズ群の制御に拠っては、必ずしも同一の結像を確保できないことの現れであり、至極当然な話です。それをハイキ〜やフレアにゴーストなどの傾向へと、オールドレンズの描写性を偏重させてイメージさせようとするから話が変になります(笑) もっとフラットなイメージで受け取るほうが、より
個別のモデルの特性を生々しく感じられ、或る意味より新鮮にイメージできるのではないかと思いますね(笑)

《モデルバリエーション》
※発売年度別の時系列で列記 (開放f値が混在しています)

1963年発売
AUTO-ROKKOR-SG 28mm/f3.5
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:60cm
フィルター枠径:⌀67㎜

1966年発売
MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:60cm
フィルター枠径:⌀67㎜

1968年発売
MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:60cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※ローレット (滑り止め) の縁が平型のカタチ

1969年発売
MC W.ROKKOR-SI 28mm/f2.5
光学系:7群9枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※ローレット (滑り止め) 縁が平型で長い

1970年発売
MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:60cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※ローレット (滑り止め) の縁が波型のカタチ

1970年発売
MC W.ROKKOR-SI 28mm/f2.5
光学系:7群9枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※ローレット (滑り止め) が波型で短い長さに変更

1973年発売
MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:60cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※ローレット (滑り止め) がラバー製に変更

1973年発売
MC W.ROKKOR-SI 28mm/f2.5
光学系:7群9枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※ローレット (滑り止め) がラバー製に変更

1974年発売
MC MINOLTA CELTIC 28mm/f3.5
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:60cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※北米向け輸出仕様で「CELTIC (セルティック)」銘

1974年発売
MC W.ROKKOR 28mm/f2.8
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜

1974年発売
MC W.ROOKOR-X 28mm/f2.8
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※北米向け輸出仕様「-X」のサフィックス付随

1975年発売
MC W.ROKKOR 28mm/f3.5
光学系:5群5枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※光学系設計変更、最短撮影距離短縮化

1975年発売
MC MINOLTA CELTIC 28mm/f2.8
光学系:7群7枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※北米向け輸出仕様で「CELTIC (セルティック)」銘

1975年発売
MC W.ROKKOR 28mm/f2
光学系:9群10枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜

1977年発売
MD W.ROKKOR 28mm/f3.5
光学系:5群5枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜

1977年発売
MD W.ROKKOR 28mm/f2.8
光学系:7群7枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜

1977年発売
MD MINOLTA CELTIC 28mm/f2.8
光学系:7群7枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※北米向け輸出仕様で「CELTIC (セルティック)」銘

1977年発売
MD W.ROKKOR 28mm/f2
光学系:9群10枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜

 1978年発売
MD W.ROKKOR 28mm/f3.5
光学系:5群5枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:50cm
フィルター枠径:⌀49㎜
※フィルター枠径が⌀49㎜に変更

1978年発売
MD W.ROKKOR-X 28mm/f2.8
光学系:7群7枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀49㎜
※フィルター枠径が⌀49㎜に変更/北米仕様

1978年発売
MD MINOLTA CELTIC 28mm/f2.8
光学系:7群7枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀49㎜
※北米向け輸出仕様

1978年発売
MD W.ROKKOR-X 28mm/f2
光学系:9群10枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀55㎜
※北米向け輸出仕様

1981年発売
MD 28mm/f3.5
光学系:5群5枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀49㎜

1981年発売
MD 28mm/f2.8
光学系:7群7枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀49㎜
※前玉の締付環が見えないタイプ (レンズ銘板の下に隠れているから)

1981年発売
MD 28mm/f2
光学系:9群9枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀49㎜

1983年発売
MD 28mm/f2.8
光学系:5群5枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
フィルター枠径:⌀49㎜
※光学設計変更/前玉外周に締付環が見えているので判定できる

・・これだけまとめ上げるのに丸一日かかりました (要領悪いから)(笑)

上のモデルバリエーションで「機構上の仕様の相違」について捉える必要があります。

AUTO-ROKKORシリーズ
自動絞り方式対応ながら、フィルムカメラボディ側への絞り値伝達機能を持たない。

MCシリーズ 色表記 色表記 色表記
MC」は「Meter-Coupler (メーターカプラー)」の頭文字でマルチコーティング蒸着の意
ではない。
フィルムカメラボディ側に開放絞り値を伝達する爪を有するので「開放測光」が実現する。

MDシリーズ 色表記 色表記 色表記
MD」は「Meter-Dual (メーターデュアル)」の頭文字で絞り値とシャッタースピードを
フィルムカメラ側と連携できることを意味する。

NMDシリーズ 色表記
NMD」は「New MD」を表すが、当時MINOLTA内で使われていた呼称ではなく、便宜上
巷で使われている呼称。ちなみに筐体外装の多くが樹脂製に変更されている。

このように見ていくと、各開放f値をバリエーション上の格付ランクとして捉えていた戦略も見えてきますが、如何せん時勢とともに/時流とともにこれだけ多くのモデルバリエーションを設計し生産してきた事が仇となり、その需要と供給の狭間で勢いを失っていった背景まで伺えます(涙)

最後は1981年に各開放f値で1種類ずつしか発売せず、且つその後数年間に渡り新型を発売できなかったのが伝わってきます・・これらマニュアルフォーカスモデルは、New MDシリーズ最後のモデルとして「㉕ MD 28mm/f2.8」を1983年に発売し終演を迎えます (このモデルの筐体設計はその後オートフォーカスモデルへと継承されます)。

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今度は、上記で列挙したモデルバリエーションに伴う光学系構成の変遷をご紹介していきます (すべて当方の手でトレースした構成図です)。

AUTO-ROKKOR-SG 28mm/f3.5
1963年発売の7群7枚構成です。光学系前群が筐体も外側に突出している大玉設計を採っています。

また当時の他社製品と比較しても光学系第3群~第4群の距離は長大に採っており、光学硝子レンズの質の高さが伺えます。

 MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5:
1966年時点でボディ側フィルムカメラのMINOLTA初TTL測光導入を契機にマウント面に突出する「MC爪の装備」により開放f値を伝達できるようになり、大幅に筐体設計が変更される中、光学設計も変わり筐体外装のコンパクト化まで試みています。

MC W.ROKKOR-SI 28mm/f2.5
1969年発売ですが、開放f値をf2.5に採ってきたこだわりの設計で、
7群9枚構成ととても贅沢な使い方です。

特に第3群と最後の後玉第7群に貼り合わせレンズを配置してくるこだわりようで、ここでもMINOLTAの意地を見せているのをとても強く感じます (色消し効果絶大)。

MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5:
1973年発売で開放f値:f3.5ながらも筐体をコンパクトに抑えつつも光学設計は決して手を抜かないMINOLTAの一貫した設計概念を感じ入るモデルです。

7群7枚構成で光学系第2群を凹面を全面に持ってきた凸メニスカスで配置することで、第1群前玉と第2群との間に空気レンズの効果を狙っていると考えられ、色ズレを抑えた鋭いピント面の構成に一躍買っているのではないでしょうか。

MC W.ROKKOR 28mm/f2.8:
1974年の発売で7群7枚構成です。このモデルの光学系をバラしていて感心したのは、光学系後群側の設計で第4群を黄銅製格納筒にモールド一体成型させつつも、その後ろに配置される第5群~第7群まで全てを「落とし込み方式」の格納とした設計なのが凄いのです。光路長が狂わない確信がない限りなかなかできない話です (コスト削減を多角的に捉えていた証拠とも言える)(驚)

なお、光学系第2群の凹メニスカスは表裏面で非常に強力な (とても濃い) グリーン色の『アクロマチックコーティング (AC)層を纏っていました(驚)・・さらに何と何と最後の第7群後ろ玉さえ露出面に同様グリーン色の光彩を微かに採り入れていますから、1974年と言う時期でありながらも、まだまだ挫けずに「自然な色再現性への飽くなきこだわり」を続けていたのが判明しました(涙) 素晴らしい!(驚)

MC W.ROKKOR 28mm/f3.5:
1975年発売の5群5枚構成へと、従前の7群7枚から大きく設計変更してきています。

合わせて最短撮影距離を30cmまで縮めてきたところが凄いワケで、開放f値:f3.5でここまでこだわるのかと、少々驚きを隠せません(笑)

MC W.ROKKOR 28mm/f2:
同じく1975年にはまるでフラッグシップモデルの如く開放f値:f2を発売してしまい、MINOLTAの威信をかけた光学設計に驚きます。

筐体サイズが巨大化 (長い) してしまいますが、最短撮影距離30cmのままで9群10枚と贅沢三昧に注ぎ込んだ設計で、相当強力な屈折率で出してきているのが分かります。

なお、実はこの後の1977年に最小絞り値:f22モデルを発売してきているので、例え同一の解放f値としても最小絞り値が変われば、光学系は最設計を余儀なくされます。しかし残念ながらネット上の何処にも構成図が発見できません(泣)

逆に指摘するなら、1977年時点で開放f値:f2.5モデルを発売してきていないので、当初の目論見に反して市場受けしなかった/評価が悪かったとも考えられ、f値f2.5モデルは事実上
1973年発売モデルを最後に撤収したと受け取れます(涙)

MD W.ROKKOR 28mm/f2.8:
1977年発売の7群7枚構成で従前と構成枚数は同一ですが、最小絞り値:f22に採ってきたので必然的に再設計しています。

また構成図を見る限り、後群側第5群の両凹レンズが驚異的な屈折率で設計してきているのが分かります。

MD 28mm/f3.5:
いよいよMINOLTAと言えども企業収益の圧迫改善は難しくなり、マニュアルフォーカスの終焉へと突き進んでいきます(涙)・・1981年に発売された「New MDシリーズ」の一環としながらも、とても残念なことに各開放f値のモデル1機種の投入のみと言う非常に寂しくも厳しい状況です。

そんな中、他社光学メーカーや弱小メーカーが開放f値:f3.5から撤退していく中、MINOLTAはここでも最後の意地を見せつけ発売してきます。5群5枚と簡素化しつつも、ちゃんとヤルべきことを正直に真正面から取り組むからこそ「最短撮影距離30cm」の短縮化までやってきます(涙)・・こう言う「背水の陣の真っ只中なのに、決して甘んずることなく打って出る企業努力を怠らない姿勢」と言うのを、今ドキの大企業は少しは見習って「今一度企業回帰」に
努めてほしいととても強く思いますね(涙)

・・真逆の不正のほうに企業努力の舵切りをしている、為体な大企業の多いこと多いこと(涙)

㉔ MD 28mm/f2:
最後の断末魔と言うかあがきなのでしょうか? フラッグシップモデルの更新までやっています。意地を見せつけるには良い機会ですが、光学系を再設計してきているので相応にコストが掛かっているワケで、合わせてフィルター枠径まで小さくコンパクト化してきたので、筐体外装まで設計変更です。

㉕ MD 28mm/f2.8:
ついに最終モデルになりこのモデルの後にマニュアルフォーカスから撤退してしまいます(涙) それでも申しわけ程度に発売するのではなく
ちゃんと光学設計を再設計してできる限りのコスト改善を真っ当に
狙っています。こう言う姿勢こそがMINOLTAがいまだに素晴らしいと感じる要素の一つですが、最大の魅力は「後の時代のサービスレベルにまで配慮した内部構造の徹底意識」であり、その構造設計には「必然性と合理性しか現れていない」とても素晴らしい設計です。それにプラスしてそれぞれのモデルバリエーションでステキな光学系が実装されるので、本当に魅力タップリなオールドレンズ達です!(涙)

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↑冒頭解説のとおり、抜けていて判明した光学系 MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5 (左) MC W.ROKKOR-SG 28mm/f3.5 (右) との比較で完全解体し取り出した光学系各群を計測すると、特に「の光学系第2群 色付部分が両凸レンズだった」ことが分かり、前玉側方向が「ほぼ平坦に近い両凸レンズ」と計測でき、1973年に再設計されたと思しきの同じ
7群7枚と同一構成ながら、各群の曲がり率や厚みに外形サイズまで違いが確認できました。

「光学知識が皆無」ながらも(笑)、パッと見で比べるとのほうが「素直に光学硝子レンズの性能に頼った設計」のように窺え (本当かどうか知りませんが)、のほうではより薄く屈折率が高くなった光学硝子材を採用し、さらなる小型化へとトライしているように見えます(汗)

・・こういう真実が嬉しいです。改めてお礼申し上げます!(涙)

ちなみに今回バラして初めて知りましたが「光学系第2群の蒸着コーティング層がアクロマチックコーティング層 (AC) なるも、極僅かに褐色を帯びた色合いに白紙の上に置くと見えた」為、念のために放射線量を計測すると「第3群0.06µSv/h第5群0.07µSv/h第7群0.08µSv/h」の計測値をとり、他の「第1群/第2群/第4群/第6群0.05≦µSv
/h
」から、特に放射線量の高い資料を光学硝子材に含有していないことが分かります。

なおいつもどおり特許出願申請書を探索すると、1970年代以降の特に、或いは辺りの「開放f値f2モデル」ばかりヒットするものの、肝心な今回扱ったモデルを含む大多数の特許出願申請書が全く現れませんでした(泣) ネット上でも数名名前が上がっているレンズ設計者名でも検索しましたがダメです(汗)

もっと言うなら、各光学メーカーももっと積極的に、過去の自分達の資産を公開するくらいの気概があっても良いと思うのですが、守秘義務を負わせて情報公開を防いでいるとの解説も
ネット上に散見するものの、実は特許権は20年で失効し公共の扱いになる為、それこそオールドレンズの楽しみの一つにも値するくらいの要素なので、その点をもっと考慮してほしいと思いますね (J-PlatPatの使い方がよく分からない)(笑)

↑今回のオーバーホール/修理個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。具体的なオーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はMC W.ROKKOR 28mm/f2.8《1974年版》(SR/MD)』のページをご参照下さいませ。内部構造や各構成パーツがとても
近似しており、設計概念が今回扱ったモデルに近いです。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
前玉コバ端の浮き (まだら状の白い点状) は、改善の必要性あるなら処置してほしい。
距離環を回すトルク感をもう少し重めに調整してほしい。
絞り環のクリック感をもう少し重くしてほしい。
絞り羽根の開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) を正六角形にしてほしい。

 マウント部絞り値伝達レバーが戻る際の絞り羽根の動きがいっとき鈍い。
光学系内に塵/埃/一部に汚れ状 (???) が確認できた。

《バラした後に新たに確認できた内容》
過去メンテナンス時に白色系グリースを塗布しており、既に劣化が進んでいる。
絞り羽根の1枚の傾きがほんの微かに変形している。
マウント部内部のパーツの使い方をミスっており、その影響が現れている。
固着剤が新旧2種類使われている。

・・とまぁ~こんな感じです。総じて大切に使われていたことがダイレクトに伝わってくる
良い状態を維持した個体との印象です。

↑上の写真は光学系第1群前玉を締め付け固定している締付環です。赤色矢印の箇所に相当古い時代の「固着剤」が固まったまま残っています。

本来製産時点なら「固着剤は嫌気性なのでネジ山に塗布される」であるものの、ご覧のように締付環の隙間に流し込んであるので、後から注入したことが分かります。

↑今度は光学系第1群~第2群専用の格納環です。やはり赤色矢印で指し示している箇所が相応の長さでメッキが剥がれているので、一つ前の締付環のカニ目溝の削れと合わせて、おそらく締付環を外そうと試みつつも外せずに削れてしまったのが窺えます(汗)

実は一つ前の締付環はアルミ合金材削り出しのとても弱い環/リング/輪っかなので、それこそ掴んでいる親指と人差指に僅かなチカラを加えただけでグシャッといきますから、カニ目レンチを使うにも注意が必要です(怖)

↑上の写真は光学系第2群のコバ端を拡大撮影しています。ご覧のようにやはり「反射防止黒色塗料の厚塗り」が確認でき、そもそも取り出す際「光学硝子レンズが全く回せなかった」ことから、適切に最後まで本当に格納できていたのか確認できていません。

↑バラしている途中の撮影ですが、マウント部内部を撮っています。赤色矢印で指し示している箇所に「経年劣化進行に伴う、グリースの揮発油成分がヒタヒタに内部全体に対し付着している状況」です(汗)

↑一つ前のマウント部の直上に被さるのが上の写真のヘリコイド群です。写真撮影がド下手の為、ちゃんと撮れていませんが(汗)、こちらのヘリコイドオスメスもやはりビチョビチョ状態です (赤色矢印)。

↑そのヘリコイド群を取り外して溶剤洗浄しないまま並べて撮影しています。左から順にヘリコイドオス側 (アルミ合金材)、ヘリコイドメス側 (黄銅材)、基台 (アルミ合金材) の順です。

先のマウント部内部に液体状にヒタヒタと廻っていたモノが、上の写真「白色系グリース」経年劣化進行に伴う揮発油成分であり、既に「濃いグレー状」に変質しています。その一方で右端の基台側は「黄褐色系グリース」が塗られていた為、ご覧のように酷く劣化していません。

そもそも内部に「2種類の固着剤」が使われているのも確認できている為、過去に最低でも
2回はメンテナンスされているように推察できます。

↑さらに上の写真はヘリコイドオス側の内側を拡大撮影していますが、赤色矢印箇所に「アルミ合金材の経年劣化進行に伴う酸化/腐食/サビ進行が白サビとして視認できる」のが分かると思います。これらは「サビ」なので溶剤洗浄しても全く除去できません (上の写真は溶剤洗浄後に撮影)。

実際ヘリコイドオス側内側のこの空間には「光学系前群格納筒が収まっていた」場所であり、空間であった分、酸化/腐食/サビし易い状況だったのも分かります。

↑ここからは完全解体後に当方の手による『磨き研磨』処置後の撮影と解説です。マウント部内部の写真ですが、各構成パーツを取り外しています。

↑取り外していた各構成パーツも全て『磨き研磨』してから組み込みました。当初バラした際に「内部構成パーツの一部の使い方をミスっていた」ことが影響して、絞り値伝達レバーの動きに平滑性が消えており、その結果絞り羽根が戻る時の動きが緩慢に至っていました。

また合わせて筐体横から飛び出ている「プレビューレバー」のツマミの動きもぎこちなく、やはり酸化/腐食/サビの影響で擦れていた分、どちらからも伝達されてくるチカラが適切ではなかったことが窺えます(汗)

話は変わりますが、今現在「MINOLTA」で検索するとヒットするwikiの解説ページに「初期のAUTO ROKKORレンズの一部は、絞り連動ピンのストロークが異なることから最小絞り値まで絞り羽根が閉じないことがある」と解説されていますが、この解説は「整備していない人が述べている」にすぎず、最小絞り値まで閉じない原因を作っているのは「過去メンテナンス時の整備者の調整が適切ではなかったから」なのに、製品のせいにしています(汗)

今回の個体も他のオールドレンズ同様「パーツの使い方を理解していない整備者の仕業」と指摘でき、本当に困ったものです(涙)

↑距離環を撮影していますが、製産時点からだいぶズラした位置で無限遠位置をセットしていたのがバレます(笑)

↑距離環は内側を均等配置の4本の締付ネジを使い締め付け固定しますが、ご覧のように製産時点の締め付け痕の他に「もう1本だいぶ離れた位置で距離環を締め付け固定していた」のがバレてしまい、実は当初バラす前の実写確認で「∞刻印から1目盛以上ズレていた5m刻印の左横で無限遠合焦」と、オーバーインフにしても広角レンズである分、だいぶ距離環を回している印象になます (当初バラした際にこのズレた位置で締め付けられていたから)(汗)

↑このモデルの後に登場した1973年製タイプでは、鏡筒の締め付け固定を「環/リング/輪っかをハメて、その上から締付ネジで締め付け固定」と締め付け効力をより確実に変更していますが、今回のモデルは締付ネジ3本によるダイレクトな固定手法だけです。

↑光学系前群格納筒 (第1群第4群) の格納筒の写真で、微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工が施されています。「94E」とマーキングされていますが製造番号の一部ではありません。

↑また光学系第4群の格納筒裏側には、今度は「82S」の刻印があり、やはり製造番号の一部ではありません。何を意味するのか「???」です。

↑この当時のMINOLTA製オールドレンズの全てのモデルに使われている「⌀ 1㎜径の鋼球ボールと反発式スプリング」ですが、スプリングを見ると両端がちゃんと1周分余計に巻かれていて「鋼球ボールが当たる際に (スプリング格納穴の底に当たる際に) 垂直を維持できるようちゃんと配慮がなされている」気配りの凄さをご紹介する為に撮影しました(笑)

ここまでちゃんと2週分シッカリ巻いて、スプリングと鋼球ボールが正しく水平に当たるよう仕向けている設計概念も、本当にたいしたものだと感心してしまいます(驚)

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
前玉コバ端の浮き (まだら状の白い点状) は、改善の必要性あるなら処置してほしい。
→ 第1群と第2群のコバ端を一旦剥がして再着色し、確実に格納をチェックしました
距離環を回すトルク感をもう少し重めに調整してほしい。
→ 当方の認識で「重め」になるよう塗布するヘリコイドグリースの粘性を選択しました
絞り環のクリック感をもう少し重くしてほしい。
→ 残念ながら反発式スプリングを伸ばしても元に戻る為、改善できていません
絞り羽根の開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) を正六角形にしてほしい。
→ 絞り羽根の傾きを正すのは「キー脱落原因」にもなる為、処置できません
 マウント部絞り値伝達レバーが戻る際の絞り羽根の動きがいっとき鈍い。
→ マウント部内部パーツを正しい使い方で組み上げ、適切な駆動に戻しました
光学系内に塵/埃/一部に汚れ状 (???) が確認できた。
→ 第2群のアクロマチックコーティング (AC) 層に微細なヘアラインキズが複数残っています

《バラした後に新たに確認できた内容》
過去メンテナンス時に白色系グリースを塗布しており、既に劣化が進んでいる。
→ 黄褐色系グリースに変更し、重めのトルク感に調整完了しています
絞り羽根の1枚の傾きがほんの微かに変形している。
→ 絞り羽根の傾きを正すのは「キー脱落原因」にもなる為、処置できません
マウント部内部のパーツの使い方をミスっており、その影響が現れている。
→ 影響を受けていた絞りユニットの描写調整を行い絞り羽根の動きを適切化しました
固着剤が新旧2種類使われている。
→ 今回のオーバーホールでは固着剤を塗布していません

・・以上改善した内容 (ブルー色文字) と共に、改善できず残っている瑕疵内容 (赤色文字) です。10項目のうち4項目で改善できず瑕疵内容として残ってしまいました・・申し訳ございません。

↑前玉のコバ端の浮きは、特に写真に影響を来すレベルにはならないものの、一旦剥がしてみて真っ黒に仕上げられるならそのほうが「心の健康維持には欠かせない」為、今回作業して浮きを解消させています。

↑光学系は前群同様後群側も、透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

光学系第2群のアクロマチックコーティング (AC) (表裏面両側) は、清掃時に極々微細な線状剥がれが1/3強の領域で複数残っています。但し光学ガラス面への物理的なキズではないので、透過させて覗き込んでも視認できません (あくまでもコーティング層の微細線状剥がれです)。

↑1枚だけ絞り羽根が傾く時の角度が微妙に違っており、おそらくプレッシングされている金属棒の「位置決めキー」だと推測しますが、垂直を100%維持できていないようです。レーザー光で検査する機械設備がないので確認のしようもなく、微調整もできません・・申し訳ございません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが、ご依頼に従い「重め」のトルクに仕上げています。

しかしそうは言っても「ピント合わせ時のピーク/山の前後動には、軽く微動する心地良さ」をちゃんと維持したまま「距離環を回す時のトルクだけ重めに仕上げてある」いわゆる当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)

・・この辺がオーバーホールの醍醐味でしょうか(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離28㎜開放F値f3.5被写体までの距離9m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度4.5m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、5m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の10m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

当初バラす前の実写確認時に比べ、極僅かですがカメラ側ライブビュー確認でのピーキング反応がだいぶ増えている印象に合焦していますから、やはり光学系第2群がガシッとハマっていた与件が影響していたのかも知れません (分かりませんが)。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離60cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f5.6」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f8」での撮影です。

↑f値は「f11」に上がっています。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況なので「回折現象」の影響を視認できます。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座います。引き続き次のオールドレンズの作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。