◆ Kuribayashi (栗林写真工業) C.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (P)《前期型》(M42)

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今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、国産は
栗林写真工業製標準レンズ・・・・、
C.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (P)《前期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で、当時の栗林写真工業製標準レンズ「50mm/f2」の括りで捉えると、40本目にあたります(M42マウント規格のみでカウントした場合)。

既に今まで5回に及び当方のこのブログページ中で、今回扱ったモデルC.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (P)《前期型》(M42)』を掲載してきましたが、今回は少し趣向を変えて「このモデルでしか撮れない、或いはこのモデルが得意とする描写性」にスポットを当てて、ネット上の実写をピックアップして解説してみたいと思います。

先ず何をおいても実装している光学系について押さえておく事が必要です・・4群7枚と言う変形ダブルガウス型構成の光学設計を採っている点を光学系の特徴として把握しておく必要があります・・つまり4群6枚の典型的なダブルガウス型光学系ではないとの意味合いです。

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栗林写真工業」の創業は古く、1907年 (明治40年) まで遡り、創業期は写真用品メーカー「栗林製作所」から始まり、後に「栗林
写真機械製作所
栗林写真工業」そして1962年には最後の社名である「ペトリカメラ」へと変遷しています (1977年倒産)。
(左写真は1959年当時の栗林写真工業、葛飾区梅島工場の様子)

今回扱ったモデルは1959年に栗林写真工業から発売された、自社初の一眼 (レフ) フィルムカメラ「Petri PENTA」セットレンズとして用意された標準レンズです。

発売した翌年1960年にマウント規格をいきなり変更してしまい「独自規格のスピゴット式バヨネットマウント (Petriマウント) 」とした為、僅か1年足らずで消えていった「初期のM42マウント規格標準レンズ」とも言えます。

ちなみに、後に発売される一眼 (レフ) フィルムカメラ「MF-1」の頃に再び登場する「M42
マウント規格
」のオールドレンズには、総金属製 (焦点距離55mm/f1.755mm/f1.8) と樹脂製 (焦点距離50mm/f1.7) の2種類が存在します。

現在の市場でもまるで底値のような安売りでPetri製オールドレンズが流通していますが、その背景は独自マウント (スピゴット式) である事や、当時からPetri自体の格付が低かった点など、
合わせて現在のデジタル一眼レフカメラ/ミラーレス一眼レフカメラで使えるマウントアダプタが、いまだに用意されていない事も一因ではいかと考えられます・・つまりPetri製のフィルムカメラでしかPetriマウントのオールドレンズは使えません。

国内でも販売されていたようなのですが、どう言うワケか距離環の刻印距離指標値はメートル表記ではなく「feet」表記オンリーです・・確かに海外輸出製品のほうはモデル銘を「A.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (M42)」としていたようなので相違があるものの、どうして国内のモデルだけでもメートル表記で刻印しなかったのか分かりません (刻印を変更するくらいは、たいしたコスト増にならないのを、以前の金属加工会社での取材で確認済/業界に於いて、会社規模の大小に関わらず影響しない要素としての話)・・逆に指摘するなら、当時の栗林写真工業での「国内流通品に対する配慮が欠落していた証」とも受け取れそうです(汗) いくら敗戦後に米国の占領統治を体験したのだとは言え、巷で/国内市場で「feet表記での距離感覚が多くの
ニッポン人に認知されていた
」とは考えにくいので(汗)、どう考えても配慮の欠如としか言い
ようがありません。

また当時アメリカでアナウンスされていた広告を見ると「amber-magenta coated (アンバー・マジェンタ・コーテッド)」と案内されているので、コーティング層が放つ光彩も日本国内流通品と全く同じでアンバーマジェンタ色だったようです。

一方で国内流通品の/日本語のほうの取扱説明書を確認すると、レンズ銘板に使われている「C.C.」は「color-corrected coating (色補正コーティング)」を意味する「Combination Coating (複層膜コーティング)」を掛け合わせた略語であることが明記されていました。

従ってそこから捉えられるモデル銘先頭の「蒸着コーティング層表記の相違」は、海外輸出向け製品の「amber-megenta coated」の頭文字「A.C.」になり、一方国内流通品のモデル銘を「C.C.」と分けて製産していた事も見えてきました。

当時の栗林写真工業での呼称「Combination Coating (複層膜コーティング)」は、シングル
コーティング
(単層膜コーティング) に対する複層膜コーティングを意味し、通常のモノコーティングに当てはまります。その後の時代に技術革新により開発されるマルチコーティング (多層膜コーティング) も、例えば本家旧東ドイツのCarl Zeiss Jena DDRでも、1972年に特許出願申請された「zeissのT*」を待たなければなりません。

ちなみに当時の取扱説明書を確認すると、オプション交換レンズ群に紹介されているモデルは全て「ゼブラ柄モデル」ばかりなので (もちろんM42マウント規格品) 一世代前のタイプしか
用意していなかった事になります (つまり発売のタイミング時にはセット用標準レンズだけしか開発していなかったことになる)。

だとすると、この時点で栗林写真工業内では翌年1960年の「スピゴット式の独自マウント規格への移行」が内定していて、或いは既に決まっていて「その様子見/タイミング合わせ/時間凌ぎ」だったのかも知れません(汗)・・詰まる処、この問題で「栗林写真工業はカメラメーカーであり光学メーカーとの自覚ではなかった」との社内の認識、意識感覚が薄っすらと見えてきそうです(笑)

・・限りなくロマンが広がっていきそうな気配(汗)

と言うのも、これはあくまでも当方の持論ですが、例えば戦前から大戦時まで含め「海のニッコー、陸のトーコー」と巷で揶揄され続けてきた事は事実です。これは当時大日本帝国海軍に納品していたのが「日本光学 (後のNikon)」なので「ニッコー」になり、一方大日本帝国陸軍への納品が「東京光学 (後のトプコン) 」で「トーコー」だったワケですが・・実はここに当方は「製品の製造と組み立て工程まで含めた設計概念の対極化が透けて見えている」と確実な捉え方/認識に至っています。

そもそも東京光学は服部時計店精工舎の計測部門から独立した計測機器メーカーから戦前にスタートしていますが、一方日本光学は歴とした光学メーカー (光学軍需品の設計開発からスタート) です。

このスタート時点の相違を「単なる畑の違い」と受け取ると全くの思い違いであり、実は計測機械メーカーは「機械が主体」であるのに対し、光学メーカーは「光学が主体」なのは当然な話です(笑) この種の話は以前取材した金属加工会社の社長さんとの昼食時余談で知り得ました (ありがとう御座いました!いつもこのブログを観て頂き本当に嬉しいです!)。

するとここで大きな差が現れる要素が必ず介在します・・陸は「砂塵」が厄介ですが、海は「塩害」です(泣) 実は「砂塵」は解体して洗浄し油を注し直せば性能機能/諸元値をある程度維持継続が期待できますが、一方の「塩害」はバラして洗浄したところで必ずしも回復を期待できるとは限りません(怖)

つまり光学系の「塩害対策」は、機械としての対策以前に「何処まで経年への配慮を進めていくか」が問われるので、洗浄して注油すれば済む話には到底至りません(汗)

ここに大きな要素が隠されていて、機械屋は注油で賄えるものの光学屋はひたすらに「光学を守る算段に明け暮れる」故に、至る箇所への配慮が欠かせないのだと聞き及びました(涙)・・それこそが「細かい部分や要素にまで限りない配慮を施した設計概念」であり、ペンキを塗ったくッて塩害対策できているとの憶測は、全く以て大きな間違いである事を知るべきです。
(どんなに外装を密閉しても必ず光学系内にまで塩害は及ぶから)(汗)

それはいったいどうなれば光学硝子レンズの破壊が進むのか知れば納得できます・・金属材に囲まれている以上、外気温や湿度/水分/塩分などの脅威から逃げられないのです (下手に完全密閉すると気圧差への対処が相当厳しく変わるから)(怖)

実はここに栗林写真工業も同じ「機械屋」の側に立っているとの受け取り方が及ぶので、光学系に対する配慮が欠如していても仕方ない面が隠れています(泣) それはアルミ合金材の面取り加工ひとつをチェックしてみても、まるで東京光学製オールドレンズと同じ話で、とてもNikonCanonの仕上げレベルとは雲泥の差を感じるからです(涙)

話が長くなりましたが、これらの (当方持論から) 当時も倒産時点も栗林写真工業は「フィルムカメラが主体」であって、セット用レンズとして用意した今回扱ったモデルC.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (P)《前期型》(M42)』の存在はその場凌ぎ的な役割しか与えられていなかったように感じるのです (だからオプション交換レンズ群が新規開発されず、合わせて翌年にサクッとマウント規格を変更されてしまう)(涙)

・・従って「feet表記だけ」でも全く気にならなかったのでしょう(笑)

もっと言えばオールドレンズが売れる事をたいして期待していなかったとも受け取られ、重要なのはフィルムカメラ本体の拡販体制強化だったとも考えられ、いの一番に海外輸出に目を
向け、海外拠点の確保を最大限に優先事項と据えていたのも納得できてしまうのです(汗)
(つまり国内市場は端から眼中になかった)(泣)

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冒頭でも述べたように、今回はネット上の実写からピックアップする際にこのモデルでしか撮れない、或いはこのモデルが得意とする描写性」にスポットを当てていきたいと思います。その際に避けて通れない話として、冒頭で「光学メーカーの立場になく、あくまでもフィルムカメラメーカーなのが栗林写真工業」との捉え方にこだわって、述べていきたいと思っているのです。

それはそもそも今回扱ったモデルC.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (P)《前期型》(M42)』の光学設計が、右構成図のとおり「光学系後群側に3枚貼り合わせレンズを内包している特異性」に考慮しなければイケナイと思うからです。

右構成図は以前のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

一方、翌年1960年になるとマウント規格を変更してしまい「スピゴット式Petriマウント規格」へと変異すると同時に、光学系まで設計変更し右構成図のとおり「一般的な4群6枚のダブルガウス型構成に変わってしまった」点を認識するべきです(涙)

右構成図も別個体のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時に当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型:1959年発売
光学系:4群7枚変形ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:10枚
A/Mスイッチ:無
フィルター枠径:⌀ 49mm
マウント種別:M42

後期型:1960年発売
光学系:4群6枚ダブルガウス型構成
絞り羽根枚数:5枚
A/Mスイッチ:
フィルター枠径:⌀ 52mm
マウント種別:Petriマウン

するとここで湧き上がる疑念「???」は・・どうして1959年時点で後群側を3枚の貼り合わせレンズとして光学設計してきたのか???・・しかありません!

これは何も4群6枚の典型的なダブルガウス型光学系の設計が、未だ未開発段階だった時代の話をしているのではないからです。いったいどうしてこのタイミングで「敢えて3枚の貼り合わせで後群側を設計してきたのか???」を誰か光学系に詳しい方に解説してほしいのです。

3枚の貼り合わせ面に設計する事で、反射面が増えるので、例えば色消し効果が期待できるかも知れませんし、何某かの収差改善が期待できるのかも知れませんが「光学知識が皆無」な
当方には全く分かりません(汗)

逆に指摘するなら、穿った憶測として、もしも仮にセットレンズとしての描写性能に期待値を高めて光学設計してきた結果が「後群側貼り合わせレンズの3枚接着」なのだとすれば、ではどうしてその翌年の「後期型」でいとも簡単にサクッと普通な4群6枚ダブルガウス型光学系に変更してしまったのでしょうか???(泣)

・・はたして何か狙っていたのか、そうではないのか? 全く以て消化不良極まりない!(泣)

さらに憶測を深めて(笑)、例えば光学系の設計に自信と時間がなく「外注していた」のだとすれば、その外注先ですら特段4群6枚のダブルガウス型光学系を出してくるのは、いくら戦後としても1950年代後半のタイミングとなれば、決して難しい話ではなかったと推測でき
ます(笑)

要はここに何かしら当時の栗林写真工業の「自社初の一眼 (レフ) フィルムカメラ発売!」に
賭けた思惑が隠されているのではないかと、興味津々なワケです(笑)

・・それが光学系後群側に実装した3枚貼り合わせレンズへの熱い視線なのです!(笑)

するとここに或る一つの仮説が湧き上がります(笑)・・「光学系の前群と後群とで何かやっていたのか???」との疑惑が当時の栗林写真工業に対して湧いてきます(笑)

ちょっとしたミステリーみたいな話になってしまいますが(笑)、もしも仮説の範疇に留まらなければ「まさに後群の貼り合わせレンズを3枚構成にしてきた理由がそこに在るのではない
のか
???
」との憶測が、憶測の領域を超越してきます(驚)

その点についてここから先ずは描写の傾向から探ってみたいと思います・・。

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻してリングボケを経て玉ボケへと変異する様をピックアップしています。これが例えば一般的な4群6枚ダブルガウス型光学系を載せていたら、おそらくは「真円を維持したシャボン玉ボケの表出は相当難しかったハズ???」との憶測が湧きます(笑)・・実際、玉ボケへと変異する間際で収差の影響を受けて真円は維持できなくなり「歪なカタチ」へと変わります。

さらに指摘するなら「何故にこんなにも繊細で細いエッジでシャボン玉ボケ表出できるの
と、それこそダブルガウス型光学系の要素をふんだんに含んでいる事を忘れがちなくらいです(笑)・・それはダブルガウス型光学系によく現れる「グルグルボケ」の少なさも感じずには居れません (決して皆無ではない/3枚目の実写を観れば分かる)(汗)

しかし何だかあまりにも正統的に整いすぎたようなシャボン玉ボケの表出に、説明が追いついていないような感じがします(笑)

二段目
その話の続き (一段目のシャボン玉ボケの話の続き) が、まさにこの段の要素になり得ますが、もしも正統的な美しく真円を維持できるシャボン玉ボケが表出されるのを「当然な話」と受け取るなら・・ではどうしてここまで乱れきった収差ボケが、被写体ピント面のすぐ背景に憑き纏うのか???・・なのです(汗)

それこそ本格的な二線ボケの影響を色濃く受けまくっているではないか?!と言いたくなるほどな乱れ具合なのに、実は被写体として合焦させているピント面の鋭さ感と「整っている様」はあからさまに明白なのです(怖)

このピント面と背後との「次元の違い」説明に、どうしてもコトバが浮かんできません(汗)

ちなみに、今回のこれら複数段での実写ピックアップは「今までの手法とは異なり考察の進度に合わせて段を増やしている」ので、最後のほうの 十段目に向かって説明の根拠を積み重ねていっています・・つまり単にピックアップした実写を並べる順番が段別にバラバラになっていません(汗)

従ってこの 二段目も、一段目のシャボン玉ボケの表出具合、特徴あっての話なので、真円を維持できていたシャボン玉ボケを表出できているのに「どうしてこんなに乱れまくりのアウトフォーカス部を構成できるの???」との想いが強いのです(汗)

三段目
今度は「暗部の耐性」についてピックアップしています。それは 一段目 二段目の画
の中に介在している「暗部」についての耐性を見極める事で、被写体たるピント面との違いを観られるかも知れないとの思惑が働いていますが、これら4枚の実写を観る限り「暗部の耐性が高く/良く、そう簡単にはストンと堕ちて黒潰れしない」描写性なのが理解できそうです(驚)

ピント面の鋭さ感を残しつつ (然し決して誇張的ではない) 繊細感まで漂わせつつも何処か画
全体に「優しさ感」を感じる独特な表現性です(涙)

この要素は 一段目のシャボン玉ボケのエッジ表現とも共通性が在る/高いのかも知れませんが、確かな事が分かりません(汗)

四段目
この段では敢えてワザと「違和感」たる要素を解説する為に実写をピックアップしました。一番左端の1枚目は、被写体たるピント面を観ても特に違和感には至らず、普通の印象を残しますが、コトバで表現するなら「やはり優しさ感が強調されている画になるのか???」的なイメージです。

さて左からの2枚目に進みます。前段で述べた「暗部の耐性が高い」点からもこの2枚目のピント面が強調されているのは納得できますが、その一方で「ウン?優しさ感が減じられている???」との印象に変化してきています (然し取り敢えず自然な範疇に収まっている)。

それが右側の2枚になると激変します!(驚)・・ピント面の花弁が「目いっぱいの違和感に
至るほどに強調され過ぎたエッジ表現
」なのです。

敢えてこのような写り具合のオールドレンズを例として挙げるなら、旧東ドイツはMeyer-Optik Görlitz製モデルの多くで、このような画造りを観ることができます(汗)・・もしも悪く言うなら「平面的でノッペリしていて立体感を感じない写り」です(汗)

一段目であれだけ整った美しいシャボン玉ボケと繊細感漂うエッジ表現を残せていたのに、或いは 二段目で、どんだけピント面の被写体背後が乱れまくっても観られないくらい汚く映っていなていのに、この右側2枚の実写は相当厳しいレベルで「エッジの誇張感が凄い」と受け取れます。

・・はたしてこの差って、何なのでしょうか??? どうして起きるのでしょうか???

五段目
同じように被写体のピント面が強調されている実写をピックアップしましたが、今度は違和感を感じません・・エッジの誇張感が行き過ぎていないのです(汗)

それは被写体との実距離が影響していない事も、これらの実写で確認できます・・何故なのでしょうか???(汗)

六段目
ここから徐々にクライマックスに入りますが(笑)、被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さについて、この段ではピックアップしています。すると左側2枚の実写は「ガラス質と金属質の表現性」を比較できますが、左端1枚目のカラー撮影の後に、もう一度今度は白黒撮影で撮り直しているのが画角の相違から明白です。

するとカラー写真では前述の「エッジの違和感」を僅かに残す写りだったのに対し、白黒写真なった途端にそれが消滅しています!(驚)・・特に金属のフック/固定具部分の写り方を比較すると分かるでしょうか。

これはカラー成分がグレースケール世界の254階調に振り分けられたが為に「エッジ表現の違和感/誇張感レベルが変化した」とも受け取れます・・もっと言えば、白黒でグレースケール化された際に「ガラスの表現性まで変わったが為に固定具の (エッジの) 違和感が薄れた」とも指摘できそうです(驚)

3枚目では被写体たる金属部分のそもそもカリカリ感が最初から少ないので誇張感/違和感に至りませんが、右端の実写ではカリカリ感が増大していながら「開放f値F2.0撮影」から来る「被写界深度の狭さ感/薄さ感」が功を奏して自然な写りに見えています。

・・ここに何かヒントが隠れていそうです?!(涙)

七段目
この段では中間調、特にグラデーションの表現性について確認しています。コントラストが高くても、低くてもそれに影響を受けずに中間調のグラデーションが大変滑らかに出て、シッカリとその階調の相違を写し込んでいます(驚)・・それは白黒写真もカラー写真も関係なさそうです。

カラー成分の明部と暗部、そして中間調がいったい何処を境界としてコロッとひっくり返って「白黒写真で明部に入るのか、暗部に振り分けられるのか、はたして中間調なのか???」にもしも違いが明確に残る光学設計なら、白黒写真とカラー写真とでグラデーションの差が如実に現れるのですが、このモデルではいずれも美しくグラデーションを成します!(驚)

つまり暗部の耐性が高いだけでなく、中間調のグラデーション表現すら滑らかなのが明白なのです!(驚)

八段目
ようやく人肌表現にまで到達できますが、 一段目  六段目までを経て「初めて人肌表現のチェックができる」事を述べています。白黒写真でもカラー写真でも変わらずに「人肌の表現が上手い/自然に見える」点に於いて、エッジ表現や撮影時のf値、或いは被写体との実距離など含め、何某かの影響が現れていると受け取っています。

つまり「このモデルだから標準レンズでありながらここまでリアルな人肌感を残せている」との印象としてピックアップしています・・それは右端の写真を観てもちゃんと感じられていて
決してコントラストの影響だけに頼っていないのが分かります。

・・この描写性って、どうして起きるのでしょうか???

九段目
いよいよクライマックスに入っていきます(涙) なかなかこのような実写を確認できなかったので、特定の撮影者の実写だけに集中してしまっていますが、撮影スキルが高いです!(驚)

日中の多少露出オーバー気味になりそうなシ~ンも、或いは夕方に近づき暗がりが増えていく時間帯も、陽が落ちた夕焼けも関係なく「暗部の耐性は相変わらずどんなシ~ンも高いまま」にプラスして「グラデーションも残ったまま」つまりは白飛びが少ないのまで納得できます。

こんなオールドレンズのモデルが頭に浮かんできません(汗)・・似たような写りを残すモデルを挙げたくても、浮かばないのです。例えば現場のリアルな緊迫感を残すモデルは確かに在りますし、繊細感を強調したような写りの表現性モデルだって在ります。

ところが同時に「優しさ感」を画全体に漂わせつつも、メチャクチャな収差ボケを背景に写し込んでしまうオールドレンズを挙げられないのです (当方の光学知識が皆無なのがイケナイ)(汗)

十段目
いよいよ最後です。この段では逆光耐性や光源を含んだ実写、或いは光輪やゴーストの表現性を全く観ていません(笑)・・チェックしているのはただ一つ!「 一段目 〜 九段目までの全部残し」なのです!(驚)

つまり明暗部程度の輝度の相違を通り越した「光源/太陽光」と言う極端で徹底的な光度の入射光が入ってきているのに、このように被写体の残し方が今まで述べてきた特徴そのままなのです!(驚)

このモデルは光の加減で大きく影響を受けずに、それこそ一番右端の写真の如く、どんだけ逆光撮影でも「シッカリと暗部耐性を明示しつつ壁面の素性を写し込めてしまう」ところが・・凄い!・・と言っているのです。

・・当方にとり、オールドレンズの嗜好の中でこのモデルは間違いなく『銘玉』です!(涙)

従って、いきなし最初に「人肌感」の人物撮影を持って来れませんし、エッジの表現性との関係性が強いので「誇張感/違和感」との兼ね合いから質感表現能力の高さまでチェックする必要があります。ピ〜カンでの日中撮影から夕方までを同じように写してしまうのに、グラデーションの表現性もシッカリ高いのです!(驚)

・・こんな何でもアリのオールドレンズを、当方はあまり知りません(汗)

そして何を隠そう、リアルに現実にこの「何でもアリ」の理由を掴んだような根拠を解説していくのが今回のブログ掲載の目的です(怖)・・何故ならその根拠を掴んだ上で、把握した上でネット上に氾濫している実写をチェックできないからです (要は今回のブログ掲載の目的を達して答えが分かっても、それとネット上の実写とを結びつける手法が100%存在しないとの意味合い)(涙)

↑今回ご案内の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はC.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (P)《前期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。ご依頼内容の一つであった「トルクが重い」との現状は、確かにこのモデルの市場流通品にも多い現状で、重すぎる為にピント合わせしているうちにマウントが回ってしまうほどです(汗)

特にこの当時の栗林写真工業製オールドレンズについて「同じ設計概念でそれぞれのモデルが設計開発され製産されていた」点を以て、現在の市場流通品を手に入れて操作する上で「特に注意を要する内容/留意するべき内容」をここからご案内していきます。

↑上の写真は過去に扱った個体からの転載写真ですが、写真で見ると相応の大きさを持つような印象を抱くものの、全幅が僅か52.4mm」なのでコンパクトな筐体です。

そして一番下の「M42マウント規格」のマウント面から計測しても「プリセット絞り環/絞り環両方の高さは合計で僅か14mmしかない」ので、大人の男性の手の指の大きさからしても
個別に掴んで操作するにはあまりにも薄すぎます。

この時、市場流通品を手に入れ撮影時の操作として「重いトルク」の現状品を操作する時に「距離環を掴んで強いチカラを加えて回そうとする」のが人情だと思います・・するとこれら当時の栗林写真工業製オールドレンズに於いて「いったい何が拙いのか???」を知らなければ、どんどん「製品寿命を短くする操作を加え続けている」事に至る内容を、以下にご案内
していきます。

↑同様過去扱い個体からの転載写真で解説していますが、黄銅製のヘリコイド (オス側) の厚みに対して、アルミ合金材のヘリコイド (メス側) の肉厚が極端に薄い設計なのが問題なのです。

グリーンのラインでそれぞれの肉厚イメージを現していますが、極端に薄い肉厚のアルミ合金材ヘリコイド (メス側) を回す時「必要以上に圧が加わると容易に撓ってしまう」にも関わらず、ブルーの矢印で指し示した箇所に均等配置で3つの「距離環固定用ネジ穴がある」のが
その因果関係になります。

現実に市場流通品の個体の多くが (実際にバラしてみると) 塗布されていた古いグリースの経年劣化進行に伴い「グリースの粘性が異常に上がっている (粘りが増している) 状況」に至っていますが、実は当時の栗林写真工業の設計では「塗布する潤滑剤系グリースに頼ったヘリコイド駆動の設計」を採っていたので、経年劣化進行に伴う黄銅材に対するアルミ合金材の「撓り具合」にまで配慮していないと思うのです。

これこそが冒頭でさんざん解説した「カメラメーカー的視点での捉え方」詰まる処、機械メーカー的な視点なので、例えば当時の東京光学製オールドレンズでも非常に近似した設計概念で内部構造が設計されていました。

逆に指摘するなら、当時のオールドレンズで数多くの会社が「黄銅材のヘリコイドオス側に対してアルミ合金材のヘリコイドメス側で対応していた設計」だったのは、至極一般的でした。NikonCanon含め、当時の光学メーカーの多くが似たような金属材の組み合わせによる設計です。アルミ合金材の切削精度が向上したタイミングと言うよりも、むしろ「アルミ合金材の金属成分と配合により技術革新が進んだ」時点でようやく「互いにアルミ合金材同士でのヘリコイドオスメスに拠るヘリコイド駆動の設計に変わっていった」と受け取るほうが自然な流れではないかと考えます。

すると上の写真のような「異常に肉厚が薄いメス側距離環が固定されている状況下で、肉厚が厚い黄銅材の鏡筒繰り出し/収納操作」は、掴んで加えた強いチカラの殆どが薄い肉厚のメス側に集中している状況なのがご理解頂けると思います。

つまり距離環を強く保持していたり、或いは距離環を強く回そうとすると「たったそれだけでアルミ合金材のヘリコイド (メス側) が撓ってしまい突然重いトルクに変化する」次第です(泣)

その結果、撓ってしまったアルミ合金材のメス側は次第にその撓り具合が増していくので「変形を応力として受け止められなくなる」結果、復元する事なく「撓ったままのカタチ」で操作され続ける事になり「重いトルクに至ってしまった個体へと変化していく」詰まる処「製品寿命に限りなく突き進んでいく」状況になります(怖)

従ってアルミ合金材同士でヘリコイドのオスメスを設計していた当時の東京光学のほうが、まだマシではありますが (東京光学の問題点はまた別の内容ですが)、この当時の栗林写真工業製オールドレンズで「トルクが重いからと強いチカラを加えてムリに回そうとする行為は致命的」である事にご留意頂きたいのです。

・・ではどうすれば良いのか???

ひたすらに忍耐強く「ゆっくり、ゆっくりチカラを加えつつ回す」操作方法で対処するしか手がありません(汗) 重いトルクを馴染ませるつもりで「グリグリ」回してしまう所為は厳禁なのです (メス側の撓りが変形として落ち着いてしまうので、重いトルクの改善が不可能になるから)(怖)

このように「内部構造を知る事で対策を考えられる一つの対処にも至る」からこそ、このブログでも執拗に何度も何度も警告を続けている次第であり、決して当時の栗林写真工業の設計概念や東京光学を貶すだけのつもりで解説を続けているワケではありませんね(笑)

逆に言うなら、もしもそのような立場で述べているなら、冒頭解説のように「銘玉扱い」していませんね(笑)・・当方は本当にこのモデルが大好きなので、少しでも数多く改善の余地を残した個体として温存させつつ、機会が訪れればきっとまた整備も施されて「製品寿命の延命化へと繋がっていく」との期待感が込められているからでもあります(泣)

・・どうか短気を起こして強く回してしまわないようくれぐれもお願い申し上げます!(涙)

↑上の写真は今回扱った個体をバラしている最中に撮影した写真ですが、ご依頼内容の一つ「重いトルク」の因果は、ご覧のとおり「古いグリースの経年劣化進行」なのが分かります。

肉厚が薄いアルミ合金材のメス側ヘリコイドの周囲を観れば分かりますが「古い基のグリースは黄褐色系グリース (つまり純正グリース)」だったものの、その上から潤滑油が注入され続けた事が判明します。「黄褐色系グリース」なので、潤滑油の注入に対する適応能力が元々あるので、まだ「白色系グリース」に比べたらマシな状況です(怖)

黄銅材のヘリコイドオス側のフチ部分に「経年で摩耗した黄銅材の金属粉とアルミ合金材の摩耗粉が混ざっている」のが見てとれます。

↑黄銅材のヘリコイドオス側を抜き取って、実際にアルミ合金材の肉厚が薄いヘリコイドメス側を外したところを撮影しています。するとオス側のネジ山部分が「僅かに褐色づいている」ので黄銅材の摩耗粉が混じっているのは間違いなさそうですし、その一方でメス側のネジ山は「アルミ合金材だけの摩耗粉なのでグレー状に変質している」のが分かりますね???(笑)

もしもこれが「白色系グリース」が塗られていれば、もっと粘性が増してネチネチした、ドロドロした塊となって「アルミ合金材の摩耗粉が濃いグレー状に固まって溜まっている」状況に至るので「塗布されたのが白色系グリースだったのか、潤滑油だったのかの相違がちゃんと
判定として下せる
」次第です。

このようにバラしてみれば過去にどのような因果を経て現状に至っているのかが判明するので
今回のオーバーホール工程ではそれを見越した対処を施しつつ・・当方のオーバーホール工程で言えばDOHになる・・作業を進めれば良いだけです(笑)

実際今回のオーバーホール/修理の工程で作業を進めていくと、一番の懸念であった「肉厚が薄いアルミ合金材のヘリコイドメス側の撓り具合」は変形にまで至っておらず、おそらく潤滑油が注入されていただけだったのが不幸中の幸いだったと受け取れます・・これがもしも「白色系グリース」だったら、粘性が増して完全な変形へと至っていたと推測できます(怖)

逆に「変形していた」のはむしろ距離環側の話で、距離環を取り外してヘリコイドにあてがうと「全周で均等の隙間になっていない」事が判明し、どうやら過去に落下なのか極度の圧力が加わったのか分かりませんが、距離環側が極僅かに変形していました。

従って「叩き込み処置」を施したのは、何と肉厚が薄いアルミ合金材のヘリコイドメス側ではなく、筐体外装の距離環のほうでした (黄銅材のヘリコイドオス側ではありません。筐体外装の黒色のローレット (滑り止め) が切削されている距離環の事です)(笑)・・逆に言うなら、その筐体外装の距離環が締め付け固定されるのが、今まで何度も解説している「肉厚が薄いアルミ合金材のヘリコイドメス側」なので、3箇所に均等配置されている締付ネジで締め付け固定された時「極僅かな距離環の変形だけでもこのように重いトルクに堕ちる」との意味合いを表しており、結果として忠告できる話は「距離環のローレット (滑り止め) に大きな凹みや削れが
在る個体に手を出すのはリスクが高すぎる
」とも『 警 告 』できる事を明示しています(怖)

・・このような話が内部構造から捉えた時の注意事項なのです!(怖)

  ●               

さて、実はここからの解説がまさに冒頭で述べた「憶測/仮説/疑念」への検証に繋がっていくのですが(笑)、そもそも何故に海外輸出向け製品に「A.C.銘を与えたのか???」或いは何故「国内はC.C.なのか???」のモデル銘相違にこだわりたくなってしまいました(汗)

別に海外輸出機と同じ、そのままで国内流通させたほうが面倒臭さが減ると思うのです(笑)

それを敢えて区分けしてきた意味合いに、何だかミステリー的な要素を感じたのがそもそもの発端でした!(汗)

つまりレンズ銘板に使われている「C.C.」は「color-corrected coating (色補正コーティング)」を意味する「Combination Coating (複層膜コーティング)」との掛け合わせで創出された略語である点です(笑)

どっちがどっちなのか「???」ですが、レンズ銘板刻印に限っては「C.C.」に一貫統一させているものの、現地米国での広告は「A.C.」銘を謳ったりと「アンバーパープル」が一番最初の時期の勢いづけだったのは明白です(汗)

・・さてさて、ここからが穿った憶測/仮説/疑念の真髄です!(笑)

↑せっかくとてもキレイな光学系の個体だったので、滅多にないチャンスなので使わせて頂きこのモデルC.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (P)《前期型》(M42)』の蒸着コーティング層が放つ光彩の違いを明示したいと思います。

上の写真4枚は左側2枚が前玉側方向からの撮影になり、右側2枚が後玉です。さらに左端の1枚目と3枚目が今回扱った個体の光学系を光に反射させて、放っている蒸着コーティング層光彩を写しています。

同じように2枚目と一番右端4枚目が過去に扱った個体からの転載写真で、同じ「前期型」のモデルバリエーションですが、異なる光彩を放つ蒸着コーティング層の写真です。

するとご覧のとおり、例えば前玉側が放つ光彩も「パープルアンバー」なのか「アンバーパープル」なのかの相違が見てとれますし、後玉側も同様に「アンバーパープル」なのか「プルシアンブル〜」なのかの違いが明白です。

これら蒸着コーティング層が放つ光彩の色合いの違いは、リアルな現実には「個体別での経年劣化進行に伴い放つ光彩の色合いの濃さが違ってくる」と言う、そもそも発売時点から65年も経過している点を加味して受け入れなければならない状況なのが、今現在の市場流通品個体の現状なのは認知するべきです (その色合いの濃さの相違を以て蒸着コーティング層のレベルが違う話ではない/大きくは上の状況にしか分別されない)。

ではこれらモデルバリエーションの相違からどのような違いが導き出されるのかと言えば、あくまでも「光学知識が皆無」な当方の憶測ですが(笑)、前玉側 (つまり光学系前群側) の蒸着
コーティング層の相違により「パープルの光彩が増している分、解像度の向上が期待できる」と指摘できそうです。これが仮に「アンバーパープル」のほうなのであれば、吐き出す写真は「どちらかと言うと優しさ感が増した写りが期待できる」話に推測が及び、たったこれだけの違いだけで「何だかとても楽しい!」話に至ります(笑)

同様後玉側も (つまり光学系後群側も) 「アンバーパープル」のほうであれば、吐き出す写真は「どちらかと言うと優しさ感が増した写りが期待できる」一方「プルシアンブル〜」であればカラー成分に於けるブルー域の波長が強化される (透過率が上がる) ので「おそらく白黒写真でのグラデーションがより滑らかにキレイに写る」と期待できそうです(笑)

従って、このモデルが大好きな当方などは、これら前玉側と後玉側の相違点から「全部で3種類 (できれば4種類) 揃えても良いくらい」と、マジッで受け取っているほどです(笑)

・・如何ですか??? こんな事を考えるだけでも楽しく思いませんか???(笑)

単なる憶測の域を出ることが叶いませんが(泣)、しかし例えば光学系の前群と後群とで「その時々の需要を見ながら蒸着コーティング層の相違を前もって用意しつつ取っ替え引っ替えしていた???」と穿った憶測にまで到達すると、何だかもっともらしく聞こえてきます(笑)

逆に言えば、輸出指向先の米国で一般的な民衆レベルでの流通拡大を期待して、敢えて白黒写真をメインターゲットとしていたのが仮に初期段階とすれば「A.C.」銘のままでも後群をプルシアンブル〜にすれば対応できそうな気がします (だから初期の輸出個体/製造番号にプルシアンブル〜の個体が数多く居る/何故なら製造番号はレンズ銘板への刻印だから)(笑)

いや、そうではなくて、あくまでもカラー写真での需要を狙うなら「パープルアンバー」に
こだわり、なんとしても解像度とコントラストの向上に繋げたかったのかも知れません(汗)
(国内流通向けは当時のニッポン人風潮を見越しパープルアンバー中心に出荷していた???)

つまり「蒸着コーティング層の範疇だけでコントロールする手法を採っていた光学設計が大前提だった」ともしも仮に捉えたら、光学設計をイジらずとも「あくまでも蒸着コーティング層レベルの相違内に留められる」のは光学設計面から歴然なので、少々営業サイドの思考回路が大きいキライが残るにしても、あながちウソではないような気にもなります(笑)

まさにその点こそが「敢えて3枚構成で接着して貼り合わせレンズ化させてきた後群側の光学設計の目論見だった」と穿った捉え方としか言いようがありませんが、そうは言ってもなかなか捨てきれない要素でもありませんか???(汗)

3枚の接着にする事で反射面が増えるので、その透過率で蒸着コーティング層の偏向は効果が期待できますし、何よりも色消し効果も上がり、前群側での蒸着コーティング層の相違を以て「基礎的な性格付け」も適いそうです・・そのような思考回路に到達すると何とも疑念がより増大してしまって楽しくて仕方ありませんが (何しろ光学知識が皆無なので、真実/原理を知らないうちがあ~だこ~だ楽しい)(笑)、端から「蒸着コーティング層の相違を武器にして取っ替え引っ替えする」つもりで光学設計するなら、別に普通の典型的な4群6枚ダブルガウス型光学系で良かったのに「敢えてコストを増大させても自社内初の一眼 (レフ) フィルムカメラ発売を大成功裏に終わらせたかった」のだとすれば、3枚貼り合わせレンズは「作戦のうち」だったのかも知れません・・!!!(驚)

あくまでも「カメラメーカー」だからこその、まるで当時の光学メーカーサイドの陣営から
すれば「何とも意思薄弱な陳腐なポリシ〜」との批判しか残らないでしょうが、それでも営業サイドの意志力が強ければそんな隠し玉も「アリ」ではないかと疑ってしまいます(笑)・・
その基本的概念の相違点が、まさに「海のニッコー、陸のトーコー」に端を発します(汗)

残念ながら、その結果は翌年の「スピゴットマウント化」のタイミングで、典型的な4群6枚ダブルガウス型構成として答えを得たのかも知れませんが・・(汗)

だから冒頭で述べたように、ネット上で氾濫している実写が「いったいどちらの蒸着コーティング層の組み合わせで撮影された写真なのか???」掴み所がないので、結果的に「何でもアリ」の描写性を持つかの如く映ります(笑)・・全て辻褄合わせしているに過ぎない酷い論説だ
と言われれば返すコトバがありませんが、然しそうは言っても現実に今まで40本扱ってきて
リアルに実際に光学系の前群と後群とで蒸着コーティング層が放つ光彩の相違を自分の目で
見て確認できているので、何とも覆すことができません(汗)

何と言えば当てはまるのか「???」ですが、それこそ営業サイドの立場からこうやって写り具合を偏向できてしまう要素をオールドレンズに持たせてしまった「着想」と言うのは、数多いオールドレンズの中でも非常に珍しい存在ではないかとさえ見えてくるから堪りません(笑)

それこそがまさに「光学系後群の3枚貼り合わせレンズへの熱い視線」とも当方には指摘できます(笑)

当時の栗林写真工業の設計陣の技術が劣っていたのだと (だから純粋な普通の4群6枚で設計を起こせなかったのだと) 指摘するネット上の解説もありますが、当方はそう受け取っては
いません(笑)・・詰まる処、栗林写真工業の動機が不純だったのです!(笑)

例えば当時の旧東西ドイツの光学メーカーが投入してきた数多くのオールドレンズ達、或いは他国の光学メーカーの多くのモデルなど、それらどのオールドレンズを思い浮かべても「光学系の前群/後群の蒸着コーティング層相違だけで製品の需給を制御していた/応じていた」などと言う、或る意味とても思いつきそうもないような発想の所業は、見たことも聞いたことも
ありません(笑)

・・既に4群6枚が当たり前なのに敢えてヤッちゃったんですョ、栗林写真工業は!(笑)

然しもっとさらに穿った言い方をすれば(笑)、すぐ後の時代のマルチコーティング化に「グリーン色の光彩を蒸着コーティング層に採り入れてきた」のは、何を隠そう光学メーカーが先にヤッたのではないかと、目を細めて言いたくなります(笑)

・・だからこそミステリーなのですが、ロマンもあり当方にはとても楽しい内容です!(笑)

なおこのモデルの評価について、確かに「ダメ玉」などと決定的に決めつけてしてしまっているネット上の解説なども見受けられますが、こう言う部分で/要素で大好きなモデルであればあるほど「その思い入れが増すのが人情」ではないのかと強く申し上げたい気持ちです(泣)

いつも述べていますが、気に入って手放さずに持っているオールドレンズには「父親の背中を追っている」モデルだって在るのです(涙) そのモデルにどんな思い出が重なるのかは、人それぞれなのであって、その想いを台無しにしかねない「ダメ玉」或いは「描写性能が劣っている/悪い/低い」などの決定打的な性能評価を決めつけてしまう行為は、少なくとも不特定多数が閲覧するネット上解説の中では、より注意を以て配慮すべき事柄ではないかと強く思いますね
本当にそう思ってやみません(笑)

確かに「等倍鑑賞する」事で各絞り値ごとでの、中心領域〜周辺領域まで含めた良し悪しが
如実に確認できるのでしょうが、だからといってそれだけを根拠に「モデルの良し悪しを評価付けてしまう行為」には、人として極度の違和感を覚えざるを得ません(涙)

・・オールドレンズにどんな思い入れが在るのか人それぞれで良いのではありませんか???

検証する事で評価を加えて自慢したい気持ちは分かりますが、それはそれで「自分の思い」としてちゃんと解説を付け加えるくらいは、他人への配慮として、大人ならできるのではないかと・・思いますね。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

前玉の中心付近に1点少々目立つ「カビ除去痕としてのコーティングハガレ」が残っていますし、前玉外周付近には菌糸を伴うカビ除去痕も薄く残っています。

↑後群側もスカッとクリア極薄いクモリすら皆無です。総じてこのモデルの「前期型」にしては状態が良い光学系を維持していると考えられ、近年の市場流通品の中では素晴らしい部類です。

↑10枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。当初バラす前の実写確認で、簡易検査具でチェックしたところ「絞り羽根が閉じすぎていた」ので適正値を執るよう微調整して仕上げています (開放f値f2.0をギリギリ超えそうな印象の閉じ具合)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し製品寿命の短命化を促す結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない磨き研磨により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる完全解体を前提とした製品寿命の延命化が最終目的です(笑)

もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)

実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)

その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施すDOHそのものなのです(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが、前述のとおり極僅かに撓って変形していたのは「ヘリコイドメス側ではなくて外装の距離環のほう」だったので、それが影響して「重いトルク」の一因に至っていました(泣)

叩き込み処置を執ったので現状「全域に渡り均質なトルク感で軽い操作性に改善できた」次第です。ピント合わせの際はピントのピーク/山の前後で、掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで微動が適い「特にこの個体の蒸着コーティングの光彩から、ピント面の鋭さ感が高い印象」を受けたので、やはり前述のとおり「パープルアンバー」の光彩を放つ光学系前群の仕様である分、解像度の向上に貢献している印象を受けます。

それはピントのピーク/山の前後動の「訪れ方が極僅かだがより明確化されている要素からも他の光彩の個体との違いを感じられる」との結論に達しました・・従ってあながち蒸着コーティング層の相違は「単なる楽しみ感だけの話」ではないような気もしますが、使い込んでみて下さいませ。

もっと言うなら前述したように、このモデルが大好きな当方などは、これら前玉側と後玉側の相違点から「全部で3種類 (できれば4種類) 揃えても良いくらい」と真剣に考えていると述べた根拠が「このピントのピーク/山の訪れ方の違い」と指摘できます。

実は当方の手元には「アンバーパープル」の前群後群に「プルシアンブル〜」の後群が転がっていますが (共にジャンク箱の中)(笑)、要は既に3種類をちゃんと所有していると言えます。そこで今回扱った個体で「パープルアンバー」な前群を扱ったワケですが、久しぶりに扱ってようやく「ピントのピーク/山の訪れ方の違い」にその実写チェックから確信を得た次第です。

前群が「アンバーパープル」の場合はもう少しピントのピーク/山の訪れが緩やかと言うか、
曖昧さを伴うのですが、今回の個体のピントのピーク/山は相当劇的に訪れます(驚)

実は記録データベースを確認したところ、過去にもう1本だけ同じ「パープルアンバー」な
前群を実装していた個体を扱っており、その際にも解像度の向上をそのデータベースに記載
していました (すっかり失念状態)(驚)

今まで13年間に40本扱った中の「たったの2本」ですから、如何に「パープルアンバー」な前群が希少なのか理解できると思います(涙)・・すると欲が出てきて「ジャンク箱に転がす個体ではない、立派な個体を4種類手に入れたい」との欲求がフツフツと湧き上がったと言うワケです(笑)

今回のオーバーホール/修理ご依頼者様も、是非ともこの点をご留意頂き、末永く愛でてあげて頂きたく思うところで御座います(笑)

ちなみに一つ付け加えておくなら、この「パープルアンバー」な前群を実装する個体の製造番号は「73xxx75xxx」辺りに集中していると推測しているので (気づく前の記録データベースには蒸着コーティング層が放つ光彩を記録していなかったから40本全てを対象としていない限定的な情報と言える)、一つのヒントになるかも知れませんね(汗)・・逆に言うなら、このモデルの製造番号で捉えるなら「本当に最後辺りの符番番号」とも指摘できそうなので、何とも断末魔間際の出荷個体とも言い替えられそうで複雑な心境にならざるを得ませんが(涙)
最後にちゃんとピントのピーク/山の訪れ方を調整して「少しでも (フィルムカメラ本体側の)
拡販に繋げたかった」想いが伝わってきそうで・・涙ぐみそうです (ウゥッ)(笑)

↑特にお伝えすべき瑕疵内容は残っていません・・完璧なオーバーホールが終わっています(笑)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況ですが「回折現象」の影響をさほど感じない素晴らしい写りです!(涙)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き次のモデルの作業に入りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。