◆ EASTMAN KODAK CO. ROCHESTER N.Y. (コダック) Anastigmat EKTAR 50mm/f1.9 (EKTRA)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わってご案内するモデルは、あめアメリカは
EASTMAN KODAK製標準レンズ・・・・、
Anastigmat EKTAR 50mm/f1.9 (EKTRA)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でご案内する個体は、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で当時のニューヨーク州ロチェスター工場製造標準レンズ「50mm/f1.9」の括りで捉えると、累計で11本目にあたりますが、今回扱った個体「Anastigmat刻印」のモデルは初めてです。

さらに驚く事は「製造番号I0xx」と本来数多く見かけてきたこのモデルの製造番号刻印に一切倣っていないのです(驚) 通常製造番号の先頭2桁には英語文字が割り当てられ、そこから製造年度を探る事が叶うのですが今回の個体は「英語の文字が一桁でI(アイ)」だけです!(驚)

Kodakの特にアメリカはニューヨーク州ROCHESTER (ロチェスター) 工場で生産された製品には「換字式暗号 (換字暗号)」に則った製造番号刻印が施されて出荷していたようです。これは平文を1文字単位、或いは複数文字単位で全く別の文字や記号に割り当て変換する古典暗号方式の代表的な存在のようです (既に16世紀には換字式と転置式の分類が成されていた)。

Kodakでは「(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(0)」が変換割り当てされていたようですが、本来「Camera City」としたかったものの、2つ目の「a」と「C」が前出している為に当て字で「o」と「S」を割り振ったとの説が主流のようです(wikiより)。

しかし今回の個体のマウント部に刻印されていた製造番号は「」1文字だけが英語表記と推察できるので「80xx」に当たり、シリアル値自体は「」の次の3桁のみで「100台未満のシリアル値」と相当初期の個体なのが推測できます(驚)

さらにそれを補強してくれるのが前述したレンズ銘板刻印で「Anastigmat EKTAR」表記の50mm/f1.9を今までに見た記憶がありません!(驚)

そこでいろいろ調べると「Kodak lenses」にこのモデル銘に関する記載が示されていて、特に1930年代後半の時期に「Anastigmat EKTAR」表記を執っていた事が分かりました (1940年代以降 anastigmat 光学系は世界的にも広く知れ渡ったので附随させずに単にEKTARと刻印していた)。

この解説から推測するに今回の個体の先頭1文字の英語「 (アイ)」は、まさに「」を表し「1938年」の換字式暗号に倣っているのかも知れませんが、正直よく分かりません(笑)

ちなみに英国のKodak工場での換字式暗号は「(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(0)」のようですし、例えば話が違いますがHasselbladも「VHPICTURES」との事です。

アメリカはニューヨーク州Rochesterに工場を擁するKodak社より、1941年発売のレンジファインダーカメラ「EKTRAシリーズ」向けオプション交換レンズ群として全部で6本の焦点距離モデルが用意されたようです。

当時のライカカメラ3台分の価格帯で発売されたと言うからとんでもない高級カメラです(笑)

同時発売したオプション交換レンズ群は・・・・、

EKTAR 35mm/f3.3 (3群5枚ヘリアー型)
EKTAR 50mm/f3.5 (3群4枚テッサー型)
EKTAR 50mm/f1.9 (4群7枚変形ダブルガウス型)
・EKTAR 90mm/f3.5 (3群3枚トリプレット型)
・EKTAR 135mm/f3.5 (2群4枚テレフォト型)
・EKTAR 153mm/f4.5 (2群4枚テレフォト型)

・・になります。

いつも思いますがこの筐体外観意匠を見ただけで「アメリカ人だなぁ〜」と感じ入ってしまいます(笑)

光学系は4群7枚の拡張ダブルガウス型構成で「ザイデルの5収差」のうち「球面収差コマ収差非点収差」について完全補正した光学の設計として登場したようです。

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

特に後群側は今回の個体が「バルサム切れ」していたので、当初バラす前の時点から「虹色にニュートンリング状が現れていた」為、一旦バルサム剤を剥がして再接着しています。その際デジタルノギスで計測したので、曲率などもより正確性が担保できたのではないでしょうか。

↑・・とコトバだけで済ませると、またSNSなどで当方がウソを拡散していると誹謗中傷の嵐なので(笑)、今回も面倒ですが「証拠写真」をちゃんと撮って掲載します。

第3群の5枚目と6枚目の光学硝子レンズが貼り合わせレンズです。使ったバルサム剤は「高屈折率1.65」のタイプなので十分光学性能を発揮してくれると思います。当初バラした時は「バルサム切れ」と共に後群格納筒にシッカリ格納しておらず、後群を丸ごと小さく振ると「カタコト音」が聞こえてきた次第で(汗)、過去メンテナンス時の整備者の不始末とも言えそうです (もちろん今回は確実に格納させています)(泣)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑・・と言いたいところですが、残念ながら鏡胴「前部」がゴッソリ丸ごと解体できていません(涙) その理由については後ほど解説します。

取り敢えず当初時点で「ヘリコイドが完全固着」していて何とも微動だにしなかったので、ここまでヘリコイド部だけでも解体できて良かったです。

Ektar 50mm/f1.9」は2018年以来なので、だいぶ久しぶりです。バラしてみると、取り敢えず「絞りユニット」や「光学系前群格納筒」を含む鏡胴「前部」はこの後の時期に出荷されていた「いわゆる製造番号先頭Eから始まる個体達」と同じとみるものの、実はヘリコイド部側に当たる鏡胴「後部」の設計が違っていました。

よりスマートな設計と言うか、理に適った金属材の使い方をちゃんとしていた事が今回のオーバーホールで判明しました。

以前扱った時のブログページKodak EKTRA EKTAR 50mm/f1.9のページをご覧頂ければちょうど再修理で説明していますが「直進キーとして使うネジ」の材質がアルミ合金材なのに対し、今回の個体は「ちゃんと真鍮製/ブラス製のネジ部と受け部として互いに備わっていた」次第です。

当然ながら耐用年数から考えても摩耗度は相当低く、後の時代のアルミ合金製直進キーで締め付ける設計とは比べものになりません (経年摩耗でアルミ合金材のネジ山が削れてバカになってしまうから/製品寿命が短い)。

オーバーホール工程については今回も載せません(笑) 聞いてくる人が居るので、おそらく同業者ではないかとみていますが、敢えて載せません。

今回の個体については前述のとおり「ヘリコイドの完全固着」だったワケですが、その原因は「白色系グリースに潤滑油を注入してしまった」のがバラしてみれば明白になりました。特定の白色系グリースに限った話なのかも知れませんが、グリースを指で触ると「ヘリコイドが指にくっついて、そのまま持ち上げられるほどの粘着性」と言うか、まるで接着剤状態です。

・・そんな状態に変質するのでヘリコイドオスメスが固着するのは当然の話です(怖)

しかもこのモデルの内部構造は厄介極まりないので、それが固着したままではバラすにもバラせず、解体するだけでほぼ丸一日がかりと言う状況でした(涙)

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑鏡胴「前部」が一切バラせていないので、残念ながら前玉の経年劣化や汚れ状は全く除去できていません。内部を覗き込むと「僅かにクモリを帯びている」のがバルサム切れなのか否か、バラせていない以上確認できていません(涙)

おそらく写真撮影では「僅かに低コントラスト化した描写性」に堕ちると思いますが、おそらくは画像加工アプリなどでコントラストの補強をしてあげれば自然な写真写りのまま残せる思われる範疇です。

↑光学系内には「気泡」が残っています。一方光学系後群側でバルサム切れしていたのは冒頭解説のとおり一旦剥がして再接着したので「スカッとクリア」に戻りました(笑)

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

↑ご覧のとおり後群側は美しく仕上がっています(笑) 当初バラす前は虹色に光っていたので内反射でやはり相当コントラスト低下を招いていたと思います。

↑距離環を回すトルクは「相当重い状態」です(涙) ピント合わせももちろんできる範疇ですが「相当気合いを入れて回す覚悟が必要」と言うレベルであり、お世辞にも「重め〜普通」とは言えないほどに「まるッきし重い状態」です。

これの一因はこのモデルがダブルヘリコイド方式を採った設計なのですが、肝心な鏡筒側の直進キーガイドが極僅かにズレたままなので、その分の抵抗/負荷/摩擦が距離環側ヘリコイドに伝わってしまいどうにも改善できません(涙)

ハッキリ言って鏡筒を抜いてしまい「距離環〜マウント部までの鏡胴後部だけ」で距離環を回す操作をすれば「どんだけ軽いのか!」と涙が出るくらいに軽い操作性なのです。ところが鏡胴「前部」を組み込むと重くなります。

また距離環を回した時に「擦れ感が相当伝わってくる」のも、鏡胴「後部」だけにすればヌメヌメッとした当方独特なトルク感を味わえるのですが(笑)、鏡胴「前部」が組み付けられると前述の極僅かなズレの分だけ「ダイレクトに擦れ感が伝わってくる」から堪ったものではありません(涙)

↑上の写真は、当初バラす前の時点では「刻印距離指標値の3.5ftから最短撮影距離方向まで全てが赤色だった」のですが、バラして溶剤で洗浄したところ赤色塗膜が全て流れ落ちてしまい黒色に戻りました。もしかしたら当初製産出荷時点は「距離環刻印距離指標値は全て黒色だった」のかも知れませんが・・不明です。取り敢えず他の個体同様「3ftから1.5ftまでを赤色着色」しました。

また特にこの「3ft以降」からトルクが重くなります。合わせて時々ググッと詰まった感じで動かなくなりますが、焦ってチカラを入れずに少し戻したりしながら「グリースを馴染ませるような感じで前後動」させるとすんなり回ったりします。

要は前述の鏡胴「前部」の直進キーガイドの位置が僅かにズレて抵抗/負荷/摩擦を増大させているので、その影響からそのような現象が時々起きます・・ご留意下さいませ。

↑Ektarシリーズを扱うといつも必ず処置していますが「近接撮影用切替ツマミ」をフリー状態にセットして無効化しています (赤色矢印)。従って無限遠位置「」から最短撮影距離「1.5ft」までノンストップで繰り出し/収納ができるので操作性はより向上したと思います。もちろんご要望があればいつでも当初のオリジナルな状態に戻せます (つまり改造などしていない)(笑)

グリーンの矢印でカツンと音が聞こえて突き当て停止する位置を指し示していますが、最短撮影距離「1.5ft」の先まで到達するので、ほぼ350度回っている印象です(笑)

↑絞り環側に基準「」マーカーが汚く在るように見えますが (赤色矢印)、これは残念ながら過去メンテナンス時の整備者の手によって刻み込まれた「フェイクマーキング」です(涙)

↑ホンモノの正しい基準「|」マーカーは反対側にちゃんと刻印されています (赤色矢印)。

この事実から、過去メンテナンス時の整備者がミスッて絞り環を入れ込んでしまった・・と言うよりも、どうやら「ヘリコイド内筒のネジ込み位置をミスッたまま/失敗したまま仕上げてしまった」のが最大の因果関係ではないかとみています(涙)

↑ここからこの個体に起きてしまった問題を解説します。絞り環を真横から撮影していますが、ご覧のとおり「光学系前群格納筒」と絞り環の縁との間にある隙間が「広い箇所と狭い箇所がある」のを赤色矢印ブルーの矢印グリーンの矢印で指し示しています。

ここで一つ疑念が湧き上がります。もしかしたら「光学系前群格納筒のネジ込みをミスったのか?」・・つまり前群格納筒が斜めッたままネジ込んでしまいネジ山が咬んでしまったのか?・・と言う話です(涙)

上の写真の隙間を見る限りそのようにも見えます。

ところが、もしも前群が斜めッているのだとすれば「絞り環側は関係ないので絞り環は解体できたハズ」なのです。ところが今回の個体は絞り環自体が完全固着していて全く微動だにしません (全ての処置を講じましたが全滅でした)。

つまり当方の見たてでは「絞り環が撓っているように見えるので (一部に微かに膨れている箇所がある) 斜めッているのは絞り環側」なので完全固着して解体できないと判定を下しています。

その根拠は両端のツマミや3つある締付ネジ (この3本の締付ネジは内側で絞りユニットの開閉環に刺さっている) などをちゃんと一度外して確認済だからです。締付ネジを外しても微動だにしないほど絞り環が完全固着しています。

高温加熱」すれば何とかなるかも知れませんが、残念ながら「前玉も第2群も共に貼り合わせレンズ」なのがこのモデルの光学系なので、下手に加熱すると「バルサム切れを誘発してしまう」ので今回試していません。

↑同じように絞り環を真横からさらに3方向分撮影しました。少なくとも「前群格納筒の一部の縁だけがめくれ上がる」事は想定しにくいので、もしもネジ込みをミスって斜めッているならそのようなカーブが確認できるハズなのですが・・ありません。

従って斜めッているのは、撓ってしまったのは「絞り環」ではないかとみています。

おそらくはヘリコイド内筒のネジ込み位置をミスッた事に気づいてチカラ任せに回そうとしたのではないでしょうか? ロクなことをしません(涙)

いずれにしてもマウントアダプタが手元に無いのでいろいろ確認できませんが、当初バラす前の位置と同一位置で無限遠位置も仕上げています。

なお、絞り羽根が僅かに顔出ししていて「完全開放していなかった」ので、今回のオーバーホールで絞り羽根を動かして完全開放状態に変更しました (おそらくf2.8辺りまで閉じていた)。

従ってこの個体は残念ながら「開放撮影でしか使えない」個体と言う結末ですが、何とかピント合わせだけはできるように改善させています (但しトルクは相当重い)。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

また、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」ここで述べている事柄
/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。

従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。

ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。

そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は御座いません)。

今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。

ご指摘事項は・・・・
   出品者のひとりごと・・・・pakira3kara@pakira3.sakura.ne.jp
までお知らせ下さいませ。

・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。

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以上、先日このブログにアップしたCONTAREX版Planar 50mm/f2《all black》(CRX)」及びドナーレンズだったシルバー鏡胴モデル、今回扱った「Anastigmat EKTAR 50mm/f1.9」、さらに当方のミスでアンダーインフ状態に陥っていた「CONTAX Planar 50mm/f1.7 T* (C/Y)」含め4本をオーバーホール完了したので、明日全て梱包して発送申し上げます。

いろいろとご期待に応えられる結果に至らず申し訳御座いませんでした・・お詫びします。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。