◎ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Tessar 50mm/f2.8 王 silver《初期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールがおわって終わって出品するモデルは、旧東ドイツは
Carl Zeiss Jena製標準レンズ・・・・、
Tessar 50mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製標準レンズ「50mm/f2.8」の括りで捉えると累計で135本目にあたりますが、その中でシルバー鏡胴のみでカウントすると40本目さらにレンズ銘板の「zeissの」刻印があるモノコーティングでは28本目 (今回の刻印も含む)、そして同一モデルバリエーションである「刻印付の初期型」だけでカウントすると、僅か10本目ですが「実はM42マウントは12年間で今回が初めて」なのです (今までに扱った個体は全てexaktaマウントばかり)(驚)

試しに今現在海外オークションebayで流通している「Tessar 50mm/f2.8の括り」を検索してみると160本が出品中ですが、その中でモデルバリエーション上の「初期型前期型」のみを探すと「僅か9本だけ」です (無段階式実絞りのタイプ/絞り連動ピンが無いタイプ)。

・・しかしさすがに「刻印」付は1本もありません。

それもそのハズで「刻印」付は海外オークションebayですら、年間で数本レベルでしか流通しない稀少品なのです。

前回exaktaマウントですが、この「刻印」付を扱ったのが2017年でしたから、アッと言う間に5年が経ってしまいました。前回オーバーホール済でヤフオク! 出品した際あまりの人気の無さに「扱い終了宣言」してしまったので、それだけの歳月が経ちました。

・・然し今回「M42マウント」を発見し思わず飛びついたしまった次第です(笑)

5年前にも執拗に述べたと思いますが、今回改めてネット上をチェックすると5年前よりさらに勢いを増して「鷹の目テッサー」と語られてばかりいます(泣) 日本なら確かに猛禽類の頂点に位置するのは「鷹 (hawk)」なのが一般的なのでしょうが、このオールドレンズを製産していたのは「旧東ドイツのCarl Zeiss Jena」でありヨーロッパです。その地域での猛禽類頂点に君臨するのは鷹ではなくて「鷲 (eagle)」ですョね?(笑)

実際には鷹も鷲も唯一の相違は大きさらしいですが、欧米の歴史を紐解けば中世の時代から「権威の象徴」として家紋や称号にも使われ讃えられ続けてきたのは今も昔も「hawkの鷹ではなくてeagleの鷲」なのは、ちょっと考えればすぐに分かるのではないでしょうか?(笑)

それを如何にもの如く「鷹の目テッサー」と連呼するのはちょっと認識が甘すぎるように思いますね。

日本のオールドレンズ界で「鷹の目」を製造メーカー自身がカタログなどに謳って活用していたのはMINOLTAでありMC ROKKOR-PG 58mm/f1.2《前期型》(SR/MD)」だったりします (要は開放f値f1.2のシリーズを指す)。

実際当方もテッサーが「hawk (鷹)」を掲げていた広告やカタログなどを今までに目にした事がありません(笑) 左の広告は1954年当時の旧東ドイツ国内での雑誌広告です。

これを見ると「ZEISS-TESSAR Das Adlerauge Ihrer Kamera」とドイツ語で記載があり、英訳すると「The eagle eye of your camera」になるので、ちゃんと「eagle eye (鷲の目)」とドイツ語で書いてあったことになります。

これで完璧に納得できました(笑) 旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaが「鷲の目テッサー」の異名を (ワザワザ鷲を表すアイキャッチまで用意して) Tessarモデルに与えて広告していたことが判明しました。

・・オールドレンズというのは、このようにロマンが広がるので本当に楽しいですね!(笑)

Tessar (テッサー) と言うモデル銘のクラシックレンズは、戦前ドイツで1902年に登場していますから相当な歴史の古さです。1930年代の戦前から戦後までのいわゆるオールドレンズの範疇で捉えると、戦前の旧ドイツCarl Zeiss Jenaは戦後に旧東西ドイツに分かれて存在することになる為、旧東ドイツのCarl Zeiss Jena製Tessarと、旧西ドイツZeiss-Opton製Tessarといった「同じブランド銘が2つに分かれて存在」していた事になります。

クィックリターン式ミラーを搭載した一眼レフ (フィルム) カメラ用標準レンズとしてのTessar 50mmが登場するのは1936年からになり、総真鍮製のズッシリと重みを感じる造りでした (製造番号20xxxxx〜)。

この時製産されていたのは開放f値「f3.5/f2.8」2タイプですが、初期の時点ではモノコーティングを示す「zeissの」刻印がレンズ銘板にまだありませんでした (シングルコーティングだったから)。

戦中からパープルアンバーの2色の光彩を放つモノコーティングとして「zeissの」が光学硝子レンズに蒸着されるようになると、戦後にはアルミ合金材の筐体で同じく開放f値「f3.5/f2.8」の2つのタイプが発売されます。

【Carl Zeiss Jena (戦前〜戦後) コーティング技術の発展】
1934年ノンコーティング (反射防止塗膜の蒸着無し)
1935年〜:シングルコーティング (反射防止単層膜塗膜の蒸着)
1939年〜:モノコーティング (反射防止複層膜塗膜の蒸着:T)
1972年〜:マルチコーティング (反射防止多層膜塗膜の蒸着:T*)
※ 世界初の複層膜蒸着技術 (世界初の薄膜複層膜蒸着技術開発は1958年のMINOLTAによる
アクロマチックコーティング)

このコーティング層の蒸着技術の中で、よく間違われているのがシングルコーティングモノコーティングの違いで、戦前戦中のシングルコーティングは「ブル〜系」になりますが、戦中戦後のモノコーティングは「パープルアンバー」です。それは真空状態でコーティング層の塗膜蒸着時に「2つの資料 (ここで言う資料とは基になる材料を表す)」を使っているから2色の光彩を見る角度によって放つワケです。

例えば2色の光彩を放つとしても、仮に任意領域で別々の色合いに光彩を放っていたらそれは「斑模様」に見えてしまいますね(笑) つまり「見る角度によって異なる光彩を放つ」から複数のコーティング層が蒸着されていると言えるワケで、同時に「見る角度によって違う」のは「光の成分として波長が異なるから」とも言えます。

そもそも光学硝子レンズに入射光が透過する際、片面の反射で4%が失われます (硝子レンズは必ず表裏面があるので合計8%消失)。それ故、反射防止技術がまだ開発されていなかった (つまりノンコーティング時代) の光学系は、できるだけ光学硝子レンズの枚数を減らして開発/設計していました。

入射光は自然光ですから「色の三原色」として「」の成分として当時はフィルム印画紙に感光させていました (白黒フィルムでも256階調に近い成分でカラー成分を分光する必要がある為)。つまり光を「3つの成分として分光管理」させることで光学硝子レンズ面での反射防止が叶います。そこで最初に考え出されたのが、波長が短くて先に減衰してしまう「青色成分」の透過率を上げることで波長が長い「色成分」と対等に制御することを考えたのだと思います (つまりシングルコーティングの登場)。

次に解像度とコントラストを向上させる目的から「赤色成分」の透過率まで向上させ、同時に明るさを維持させるために「黄色成分」まで透過率向上を狙います。すると「パープル (青色成分)」と「アンバー (黄色成分)」の両方で全体の透過率向上を狙えるのでモノコーティングの必要性が増したと考えられます。結果、光学系内の幾つかの群でそれぞれ単独でシングルコーティング層を用意して「青色成分」或いは「黄色成分」をコントロールしてあげれば、最終的な後玉から射出する光の制御が叶うというものです。

ちなみに現在のデジタル技術ではRGB ()、或いはRGBY ()が色成分の三原色/四原色になり、特に4K/8K技術の黄色成分は輝度/明るさの向上として使われているので、まさに昔の概念と同じ発想と言えるのがオモシロイ
(白色を輝度とし強くすると彩度が下がりコントラスト低下を招く為使えない)

また1960年代に入るとさらに「緑色の成分」制御まで考え出されたようで、まさにMINOLTAの「アクロマチックコーティング (AC) 」技術が当時世界初の「薄膜蒸着技術」として登場し当時のライカにまで注目されました (後に技術提携に至る)。この薄膜蒸着技術が優れているのは既存の単層膜/複層膜/多層膜いずれの蒸着面に対しても薄膜で任意の量で追加できる点です。従って「まるで薬味のような味付け」としてカラー (色成分) コントロールができるようになったのが革新的だったと言えます (光学硝子レンズの群の別で制御せずに済むからより適切で細かい制御が適う)。

話が長くなりましたが、このような経緯を経てモノコーティングの「zeissの」が当たり前になり、1966年にはレンズ銘板から刻印を省いたゼブラ柄モデルが発売されます (実際はそれ以前の1955年からに既にシルバー鏡胴モデルでも刻印を省略していた)。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

1936年〜:シルバー鏡胴時代「戦前型」
コーティング層:シングルコーティング/モノコーティング
レンズ銘板:T刻印無し/有り混在
開放f値:f3.5/f2.8混在、絞り羽根枚数:14枚
筐体材質:真鍮製/アルミ合金製混在
絞り制御:手動絞り (実絞り)

1948年〜:シルバー鏡胴時代「初期型」
コーティング層:モノコーティング
レンズ銘板:T刻印無し/有り混在、絞り環にライン刻印有/無混在
開放f値:f3.5/f2.8混在、絞り羽根枚数:14枚
筐体材質:アルミ合金製のみ
絞り制御:プリセット絞り

1950年〜:シルバー鏡胴時代「前期型」
コーティング層:モノコーティング
レンズ銘板:T刻印無し/有り混在、絞り環にライン刻印無し
開放f値:f2.8のみ、絞り羽根枚数:14枚→12枚
筐体材質:アルミ合金製のみ
絞り制御:プリセット絞り

1955年〜:シルバー鏡胴時代「後期型」
コーティング層:モノコーティング
レンズ銘板:T刻印無し
開放f値:f2.8のみ、絞り羽根枚数:10枚8枚
筐体材質:アルミ合金製のみ
絞り制御:半自動絞り

1958年〜:グッタペルカ巻時代
コーティング層:モノコーティング
レンズ銘板:T刻印無し
開放f値:f2.8のみ、絞り羽根枚数:6枚5枚
筐体材質:アルミ合金製のみ
絞り制御:自動絞り

1966年〜:ゼブラ柄鏡胴時代
コーティング層:モノコーティング
レンズ銘板:T刻印無し
開放f値:f2.8のみ、絞り羽根枚数:5枚
筐体材質:アルミ合金製のみ
絞り制御:自動絞り

1978年1989年黒色鏡胴時代
コーティング層:モノコーティング
レンズ銘板:T刻印無し
開放f値:f2.8のみ、絞り羽根枚数:5枚
筐体材質:アルミ合金製のみ
絞り制御:自動絞り

【番外編】
※様々なフィルムカメラ用に供給されたモデルが他にも複数あります (以下一例)。

番外編:1952年〜:シルバー鏡胴時代
コーティング層:モノコーティング
レンズ銘板:T刻印有無混在
開放f値:f2.8のみ、絞り羽根枚数:8枚
筐体材質:アルミ合金製のみ
絞り制御:プリセット絞り

なお、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」ここで述べている事柄
/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。

従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。

ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。

そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は御座いません)。

今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。

ご指摘事項は・・・・
   出品者のひとりごと・・・・pakira3kara@pakira3.sakura.ne.jp
までお知らせ下さいませ。

・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。

  ●               







↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
今さらテッサーの描写性を確認する為に実写をピックアップするのも意味がなさそうですが(笑)、それでも一応ちゃんとモデルバリエーションで言う処の「初期型前期型」辺りでその写り具合をチェックしてみるのも良さそうです。モデルバリエーション上の「初期型前期型」とは、言い替えれば「レンズ銘板にzeissの刻印が在る」のを一つの目安としてピックアップしていますから、同時代に登場した「絞り連動ピンをマウント面に装備した半自動絞り方式のテッサー」以降のモデルを排除しています (従ってゼブラ柄や黒色鏡胴の実写も除外しています)。

すると一つだけ明確に指摘できるのは「開放時の撮影では相当収差ボケが増大する」との印象を受けました(笑) 当方はむしろオールドレンズの魅力の一つとしてそれら「収差ボケ」もその酷さに影響されず楽しんでいるので大歓迎ですが、受け入れられない人も居るのでしょう。

たかがテッサー如きですが、ご覧のようにキレイな円形ボケが表出しますし、開放時はちょっとした光の反射も円形ボケで現れます。それら円形ボケが破綻して滲み始めると (ここからが堪らないのですが)(笑)、3枚目4枚目の写真のように収差の影響を絶大に受けた乱れた滲み方をし、それが当方にとっては「ステキな背景ボケ効果」として背景を飾ってくれていると受け取っています。

後の時代のゼブラ柄や黒色鏡胴になると、これらの収差ボケはむしろ端正に調整されてしまうので当方には却ってつまらなかったりします(笑)

二段目
この段ではさすがのピント面の鋭さをピックアップしました。時代背景としてもおそらくは主体的に想定していたフィルム印画紙は白黒フィルムだったと推測できるので、やはり白黒撮影になると「明暗部のダイナミックレンジが極端に広がる」ので、たかが256階調のグレースケール世界と罵られようとも、カラーならばつまらないグラデーションに堕ちてしまうシ〜ンも美しく仕上げてくれるので堪りません!(涙)

特に白黒写真が好きな方にはこの時代のテッサーは、手に入れるべきオールドレンズの一つではないでしょうか。

被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さは、さすが折紙付きですが、後の時代に (特にゼブラ柄や黒色鏡胴モデルに) 比較すると明らかにコントラストの付き方や明暗部の表現性に違いを感じられ、どちらかと言うとコッテリ系があまり好きになれない当方はこのシルバー鏡胴時代のテッサーのほうが好みだったりします(笑)

三段目
ゼブラ柄や黒色鏡胴モデルと明確にその写りの違いを指摘できるのが、これら人物撮影 (ポートレート写真) や動物毛などの表現性です。「美肌効果」ではありませんが(笑)、まるでそのくらいにまでギラギラ感を低減させてくれるこのシルバー鏡胴時代のテッサーに、ある意味「標準レンズのクセにイッパシなポートレート撮りやがって!」と妬み心が湧き上がりそうです(笑) 逆に言うなら、そのくらいに人物撮影には標準レンズは敷居が高いのだと受け取っていますが如何せんシルバー鏡胴時代 (しかも今回の個体はアポクロマートだし) のテッサーは、ちゃんとヤルべきことをやってくれる信頼感が高いです。

四段目
この段辺りからむしろシルバー鏡胴自体のテッサーには少々厳しい描写シ〜ンが増してきます。暗部から明部までのダイナミックレンジを含めたグラデーション/階調表現と共に、黒潰れや白潰れの耐性も気になるところです。

階調表現がやはり後の時代のゼブラ柄や黒色鏡胴に比べると滑かと言うかなだらかと言うか、そのように見えますが、実は本当は光学レベルで捉えるなら、ちゃんと表現できていないのだとも言い替えられそうです(笑) 先の「美肌効果」ではありませんが(笑)、人の目に見えすぎず写りすぎずのほうが断然美しさが増すのも自分なりに納得してしまいます。

壁材による違いもありますが自然なグラデーション表現がとても美しく、また雪原のビミョ〜なト〜ンの違いもちゃんと写し込めているのがさすがだと思います。また右側2枚ではピ〜カン時の明部の耐性をチェックしていますが、なかなかどうして頑張っているように見えてしまいます(笑)

五段目
この段では敢えてこの頃のシルバー鏡胴にとって相当厳しい「コントラストの極度な差」について実写をチェックしてみました。カラー写真だとどうしても違和感が増しますが、これが白黒写真だと落ち着いてくるのが素晴らしいです。そう言う面で捉えようとするなら、やはり総天然色に拘るよりも、スパッと割り切って256階調のグレースケールの世界にズッポリ浸かるのもありかなと思います(笑)

外灯の下で夜道の坂をチャリで漕いで行くシ〜ンもステキですし、最後の右端の写真はまるで圧巻です!(驚)

六段目
最後この段では被写界深度を確認しています。開放f値「f2.8」ですが、意外に被写界深度が狭く紙一枚分くらいの処でスパッとピントが鋭く変わる部分にテッサーの凄みを感じ得ます。

光学系は言わずと知れた3群4枚テッサー型ですが、前記したモデルバリエーションで言う処の「戦前型 (1936年発売)」光学系構成図が右図になります。

以前扱った事があるので、その時のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。この時のモデルの最短撮影距離は「76cm」でした。

次に登場したのが今回扱うモデル「初期型 (1948年発売)」です。プリセット絞り機構を採用したが為に鏡胴内部の設計が大きく変わりました。

合わせて最短撮影距離は「50cm」と短縮化したので、その分光学設計が激変します。右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

さらに1950年から登場してきた「絞り環にラインの刻印が無いモデル」の登場により実装絞り羽根枚数は「14枚→12枚絞り」へと遷移しますが、巷では/ネット上では光学設計に変更が無かったかのように語られ続けていますが、確かに最短撮影距離が同一の「50cm」であるものの、アポクロマートレンズなのにはたして光学設計を変更せずとも「キッチリ色収差を抑えられたのか?」との疑念がフツフツと沸き起こります(笑)

そこで今回徹底的に計測したところ「光学系第1群前玉だけは100%同一設計」なのが判明するものの、その一方で「第2群→第3群へと外径サイズと共に曲率が変わっていく度合いが増している」のが判明しました。

右構成図は以前扱った「前期型」モデルをオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

一つ前の今回の「初期型」たるアポクロマートレンズとの比較では、明確に実測値/計測値に変化が現れ、第2群と第3群の貼り合わせレンズまでもガラッと変化していたのです。

詰まるところ蒸着するコーティング層の資料を変更するだけでは対処できず、或いは新種硝子の配合を変更してきた事も考えられますが、最も納得できるのはやはり何と言っても「サイズが違う」ことと合わせて「曲率が違う」点です。これによって屈折率をイジッて色収差を大きく改善させてきた事を補完する説明に説得力が増しました。

・・一つ前の光学系構成図がたった3つの製造番号だけに採用されていた!(驚)

↑上の一覧表は今回改めて調査してまとめたものですが、現在確認できるネット上、及び当方の記録データベースの中からシルバー鏡胴の「Tessar 50mm/f2.8」についてモデルバリエーションで言う処の「初期型後期型」に於ける「製造番号を基にした相違点」です。

但し、上の一覧を細かくチェックしていくと分かりますが、純粋に「初期型後期型」へと遷移しておらず、合わせて「製造番号帯の重複甚だしい」状況です。

例えば「zeissの」刻印を伴うシルバー鏡胴テッサーは、製造番号帯を跨いで「最小絞り値f22とf16が混在」なのが分かります。さらにその中で今度は「絞り羽根枚数の相違まで混在」しており、必ずしも特定の方向性/法則性を伴って変移していったワケではない事がこの調査で明白です。

もっと言うなら「最短撮影距離が変われば光学系の再設計は必須」とも指摘でき (上の一覧 色着色部分)、或いは「製造番号548xxx」の突然現れる実装絞り羽根枚数「10枚」の妙です。

標準レンズのテッサーがシルバー鏡胴を卒業してゼブラ柄へと変遷したのはこれら製造番号帯の後の時代ですから、当然ながら「自動絞り方式」を採用したゼブラ柄モデルとなれば内部構造は新規で開発/設計しています。

このように製造番号帯を跨いで混在してしまった仮説として、穿った見方をするなら「レンズ銘板を含む遮光環を丸ごとニコイチ/転用したのではないか?」との憶測さえ現れます(笑) ところがそれらの混在レベルが全くバラバラに出現しているならそのような解釈も捨てきれませんが、調査した製造番号帯の中では相当な本数でまとまって集積しているのです。

するとたまたま近い製造番号帯で一部の整備者が集中的にニコイチしていたとは考えられず、どう考えても「計画製産で製造番号を事前に割り当てていた」が為に新旧で入り乱れている結果に至ったとしか考察できませんし、もっと言うなら当方の持論である「複数工場での並行生産体制」を執っていたが為に、同時期に異なる仕様のテッサーが同じタイミングで市場流通していたとも考えられます。

例えば既にマウント面から「絞り連動ピン」が飛び出ている「製造番号475xxxx〜」モデルが出荷し始めているタイミングで「同じ工場で敢えて製産ラインを総入れ替えしてまで旧型モデルの製造番号帯:〜481xxxxまでを造っていた」とは考えられず (製造番号を跨いでいる)、それら異なる仕様のモデルは別の製産工場から出荷されていたものの、製造番号帯は事前割り当てされていたからこそ「互いに番号帯を跨いで混在してしまった」と捉えるのが自然でではないでしょうか?

この点については、実は以前取材した金属加工会社の社長さんにもご意見を伺っており「製造番号の事前割当制」はそもそも「計画製産」に則っており、市場と流通の「需要と供給に即座に対処できない」話しに至るのは、何も今の時代の話ではなく既に産業革命の時代から始まっていた概念で、その体制を執らない限り製産時の合理化が進まず非効率的なのは自明の理・・と解説頂きました。合わせて最も最たる理由は「そうしないと企業利益が確保できない」との結論であり、説得力が増します。

従って以前にも解説しましたが、当方は基本的に「製造番号のシリアル値に対しての時系列的な信用を担保しない」主義です。製造番号の前後で新旧モデルが入り乱れているとなれば、そこに「シリアル値の推移と共に新型モデルへと変わっていく」根拠を見出せないからです。

ちなみに今回扱った「刻印」付モデルに関しては上の一覧で 色付けして表しています。但し「製造番号303xxxx」だけは1本しか発見できておらずまだ検証が確定していません (製造番号が少々不鮮明)。他の2つの番号帯については相当数が集中しています。

さらに指摘すると、以下に掲載する完全解体の全景写真を見ると確認できますが、内部構成パーツの一部に「ライトブル〜のメッキ加工」が施されたパーツが多いので、この個体を製産していた工場は「Carl Zeiss Jenaの本体工場とは別の工場」と当方ではみています。

Carl Zeiss Jenaの本体工場は巨大ですが、そこで生産される構成パーツのメッキ塗色は「パープル色」だからです。一方「ライトブル〜色のメッキ塗色」を施していた工場では、後のゼブラ柄時代に入って彼の幻の銘玉と揶揄されている、同じCarl Zeiss Jena製標準レンズ「Pancolar 55mm/f1.4 zebra」を造っていたとみています。その根拠が「ライトブル〜のメッキ加工」であり、他に存在していた「オリーブ色メッキ塗色」の製産工場はシルバー鏡胴モデルを最後に消えています (つまり後のゼブラ柄時代に入って出荷されていた個体の中にオリーブ色メッキ塗色の構成ハーツが一つも存在しないから)。もちろんCarl Zeiss Jena本体工場の「パープル色メッキ塗色」の構成パーツを使ったモデルは、最後の黒色鏡胴モデルまで続き終焉を迎えています (1989年のベルリンの壁崩壊事件に至り翌年旧西ドイツ側だったOberkochenと統合されZEISSとなる)。

なお、上の一覧は今回の作成に及んで「111本のサンプルからまとめた」事を併記しておきます。もちろんそれぞれの諸元を確認できた個体数/サンプル数だけで数えた話なので、確認できなかった写真まで含めれば調査した時の個体数はもっと多くなります。

・・こんな調査を真面目に2時間も費やしてヤッているのも物好きすぎるか?(笑)

それは重々理解しているのですが(笑)、然しオールドレンズ相手ではロマンの追及のほうが勝ってしまい、気がつけば夕方になっていたりします(笑)

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は、少々古い解説ですがTessar 50mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑5年ダリに扱いましたが、完璧なオーバーホールが終わっています。今回の個体は「製造番号363xxxx」なので1952年の製産出荷品と推定できます・・71年前に造られたオールドレンズとは思えないほどにピッカピカに磨き上げ、もちろんの事距離環を回すトルクも軽く、当方独特の (皆様が喜ばれる) ヌメヌメッとしたシットリ感が残るピント合わせが適うよう仕上げてあります。

当方がこのレンズ銘板に刻印されている「刻印」を以てアポクロマートレンズだと主張し始めたのも5年前からでしたが(笑)、当時は誰一人相手にせず「こじつけでデタラメを言っている」と当時から誹謗中傷の嵐でした。今ではネット上を散策するとアポクロマートレンズである事を謳っているサイトがだいぶ増えたように見えますが・・どうなのでしょうか(笑)

zeissの」刻印すら認められずに旧西ドイツ側OberkochenのZeiss-Optonから制限を受け、仕方なく「」刻印を「刻印」に替えてあしらっていた時期もありました。当然ながら「Carl Zeiss銘の使用も禁止」されたので、一時期は「C.Z.」或いは「CZ Jena」の他「aus JENA」など相当苦心していたようです。しまいにはモデル銘まで禁止され「T (Tessar)」や「B (Biotar)」或いは「P (Pancolar)」など無残な状況に追い込まれました。

これらの制限/禁止事項は特に欧米地域向けの輸出品に対して厳しく管理されていたようですが、今回の出品個体は距離環刻印距離指標値が「feet表記」なので、旧東ドイツ国内向けの流通品ではなかった事が推測できます。

考えられるのは「西ベルリン向け出荷品」だったのか、或いは本当に欧米向け輸出品だったのかも知れませんが、どう言うワケかこの当時に数多くの個体でそのような制限が掛けられていたにもかかわらず「刻印」付モデルだけはそれら制約から逃れていたことが明白なので不思議です (刻印を伴いながらT一文字だったりaus JENA表記の個体を見た記憶がないから)。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。但し前玉表面には経年のカビ除去痕が菌糸状を伴っていくつも残っていますが、クモリには至っていません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。ご覧のように前玉表面側の菌糸状を伴うカビ除去痕も光に反射させたくらいでは浮かび上がりません。

↑光学系後群側も透明度が高くLED光照射で極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大2mm長複数あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前玉に菌糸状カビ除去痕数点残っています)
(前後玉に極微細な経年の拭きキズ数箇所あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
※但し前玉には菌糸状のカビ除去痕複数あります。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑後玉側方向から光学系内を覗き込んだ時に視認できる「微細な気泡」を撮影しています。パッと見では「微細な塵/」に見えますが、LED光照射で拡大撮影すると「気泡」なのが分かります。

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

↑シルバー鏡胴のみならず、後に登場したゼブラ柄や黒色鏡胴含め「テッサーシリーズの中で唯一の14枚絞り」の絞り羽根が閉じる様は吸い込まれそうで見ているだけでも魅力的です(笑) 絞り羽根が閉じる際は「完璧な円形絞り」で閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(神経質な人には擦れ感強め)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体『Tessar 50mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製ネジ込み式M39後キャップ (新品)
K&F CONCEPT製「M42→SONY Eマウントアダプタ」 (新品)
ピン押し底面 (凹面と平麺の表裏で使い分け可能:附属品)
マウントアダプタのネジ部着脱用ヘックスレンチ (1.3㍉:新品)

↑このモデルは「M42マウント規格」なのでマウント部はネジ込み式ですが、ご覧のようにM42ネジ部の先にさら突出があります。ネジ部から先に「4.18mm」ですが (赤色矢印)、マウント面から計測すると (ネジ部まで含めて)「8.4mm」です (グリーンの矢印)。

従ってこのネジ部から先に突出している部分がちゃんとマウントアダプタ内部の「ピン押し底面まで収納」しないかぎり、最後までネジ込めなくなり無限遠が出ません (ちゃんと鋭いピントで無限遠合焦しない)。

すると問題になるのは「マウントアダプタ内側のピン押し底面の深さその迫り出しの内径」と言う話です。深さが大丈夫でもピン押し底面の迫り出し寸法が大きいと途中で干渉してしまい最後までネジ込めません。

↑今回の検証で用意したマウントアダプタです。

🅰 RAYQUAL製M42−SαEマウントアダプタ」(ピン押し底面タイプ:日本製)
🅱 K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ」(ピン押し底面タイプ:中国製)
🅲 FOTGA製M42−NEXマウントアダプタ」(非ピン押し底面タイプ:中国製)
🅳 K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ」(非ピン押し底面タイプ:中国製)

この中で最後の🅳 K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ」(中国製) だけが当方で用意した特別仕様のマウントアダプタで、内側のピン押し底面を取り外しています。

🅰🅱にはマウントアダプタ内側に「ピン押し底面 (赤色矢印) が迫り出ている」タイプなので、M42マウント規格のオールドレンズをネジ込んでいくとマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」を強制的に最後まで押し込んでくれます。

処が今回出品するモデルは「絞り連動ピンを装備しない手動絞り (実絞り) のオールドレンズ」なので、ピン押し底面が必要ありません。

ブルーの矢印で解説しているように実測するとそれぞれ🅰5.92mmに、🅱5.99mmの深さです。さらにオールドレンズ側マウント面にはそれぞれ「1mm弱の突出が備わる」マウントアダプタです。

↑一方こちらの🅲🅳は内側に「ピン押し底面が備わらない」タイプのマウントアダプタです (赤色矢印)。従って今回のオールドレンズをネジ込んでも干渉せずに最後までネジ込める話になります。グリーンの矢印で指し示していますが🅲のマウントアダプタだけオールドレンズ側マウント面に「1mm弱の突出が無い」タイプです。

↑当方で用意した/附属させた🅳のマウントアダプタを拡大撮影していますが、ご覧のように内側に「ピン押し底面が存在しない (赤色矢印)」マウントアダプタとして用意しました。グリーンの矢印はオールドレンズ側マウント面にある「1mm弱の突出」です。

↑ちなみに今回の出品個体を当時の旭光学工業製フィルムカメラ「SPOTMATIC II」にネジ込んでみたところを撮影しました。当たり前の話ですが(笑)、ちゃんと最後までネジ込めて (赤色矢印)、且つ基準「」マーカーもほほ真上に来ています。後で解説しますが、このようにブルーの矢印で指し示している基準「」マーカーが必ずしもピタリと真上に一致しないオールドレンズが数多く存在します。

その理由は「そもそもM42マウント規格はネジ山内径⌀ 42mm x ピッチ1mmを決めただけの規格」なので、そこから先の必要となる諸元は各メーカーに一任されているからです。例えばネジ山のスタート位置と終端位置が適合しなければ、このように基準「」マーカーがズレるのも当然な話ですね(笑)

↑ではここから用意した各マウントアダプタに実際に出品個体をネジ込んでどうなるのか検証していきます。先ずは🅰のRAYQUAL製M42−SαEマウントアダプタ」(ピン押し底面タイプ:日本製) ですが、ご覧のように最後までネジ込めずに残り僅かのギリギリのところで (内側のピン押し底面と) 干渉してしまい詰まった感じで停止してしまいます。

マウントアダプタの真上位置にグリーンの矢印を附しましたが、オールドレンズ側基準「」マーカーはブルーの矢印位置ですし、互いのマウント面は (最後までネジ込めていないので) 僅かに隙間が空いています (赤色矢印)。

・・この状態では残念ながら無限遠合焦しません。

↑今度は🅱のK&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ」(ピン押し底面タイプ:中国製) にネジ込んだところです (真上位置がグリーンの矢印)。内側のピン押し底面が「平面側をオールドレンズ側に向けてセット」してあるので、ご覧のように最後までネジ込めず (赤色矢印)、且つ基準「」マーカーが真上に位置するように見えますが (ブルーの矢印)、約一周分ネジ込みが足りないので空いてしまう隙間もさらに増大しています。

↑同じ🅱のK&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ」(ピン押し底面タイプ:中国製) ですが (真上位置がグリーンの矢印)、今度は内側のピン押し底面を「凹面側」に表裏をひっくり返してセットしたので「0.4mm分深さが増えた分ネジ込み量が増えた」為に一つ前の検証写真とは変わり、空いてしまうマウント面の隙間が減っています (赤色矢印)。つまりネジ込み量が増えたものの、やはり詰まって停止するのでご覧のように反対向きになってしまいます (基準マーカーが反対側に居る)。

↑さらに🅲FOTGA製M42−NEXマウントアダプタ」(非ピン押し底面タイプ:中国製) に装着してみたところです (真上位置がグリーンの矢印)。ちゃんと最後までネジ込めて隙間が一切空かず (赤色矢印)、且つ基準「」マーカーまでちゃんと真上位置に到達しています (ブルーの矢印)。

パッと見でこのマウントアダプタで十分じゃないかと思いますが、実はこのマウントアダプタは「製品全高が不適切なのでアンダーインフ状態に陥り無限遠合焦が甘くなる」ので問題なのです (つまりフランジバック計算が合っていない)(泣)

そもそも皆さんが信じてやまない「M42マウント規格」ですが、そのフランジバックが2種類存在するのをご存知でしょうか?(笑) wikiをチェックすればちゃんと解説していますが「45.74mmに対し45.46mm」なので、そのどちらの寸法を採って製品化したのかで当然ながら無限遠合焦の状況が変わります。

ちなみに🅰 RAYQUAL製M42−SαEマウントアダプタ」(ピン押し底面タイプ:日本製) も、🅱 K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ」(ピン押し底面タイプ:中国製) も、共に設計上のフランジバックは「45.5mm」なので、小数点以下2桁目を丸めている分、僅かな誤差が現れます。特にK&F CONCEPT製マウントアダプタについては、中国本社の設計部署副責任者の方に直接確認できているので間違いありません。

↑最後の🅳 K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ」(非ピン押し底面タイプ:中国製) で、当方が用意した附属品のマウントアダプタです (真上位置がグリーンの矢印)。当然ながら内側のピン押し底面を取り外しているので、最後までネジ込めて (赤色矢印)、且つ基準「」マーカーもほぼ真上に来ます (ブルーの矢印)。

極僅かにグリーンの矢印に対してズレが生じている理由は (ピタリと真上に来ていない理由は)、このマウントアダプタのネジ部固定箇所を決める際に「手持ちの複数のM42マウント規格オールドレンズをネジ込んでチェックしたから」です。

平均的なM42マウント規格のオールドレンズをネジ込んで真上位置になった場所で「このマウントアダプタのM42ネジ部を固定してある」から、先に掲載した当時の旭光学工業製フィルムカメラ「SPOTMATIC II」にネジ込んだ時と同じ位置でネジ込みが終わっている話になります。

従って何度も指摘しますが「M42マウント規格と崇めるが、いったい規格の何をどのように採用しているのかがポイントなのに、それを認めようとしない人達/勢力が居る」と言うお話しです(笑)

・・そう言う人達/勢力からすると、当方の整備作業は非常に粗悪らしいです(笑)

確かに技術スキルが低すぎるのは認めますが「粗悪」と言われるほど手を抜いたり、ごまかしている気持ちはありませんね(笑)

↑さらに附属品として専用の「ヘックスレンチ棒 (サイズ1.3mm)」もちゃんとご用意したので、ピン押し底面を入れ込んで普通の「ピン押し底面タイプ」として使う事も可能です。マウントアダプタの側面3箇所に備わる「ヘックスネジ」を緩めればM42マウントネジ部だけが取り外せるので、その内側に別添の「ピン押し底面」を入れ込んでネジ部を戻せばOKです (赤色矢印)。

↑附属するピン押し底面は表裏で両面使いできるので (メーカーのK&F CONCEPTすらそのように解説していませんが)(笑)、上の写真では「凹面」を上に向けて写しているので「0.4mm分ピン押し底面の深さが増える」為、装着するM42マウント規格のオールドレンズによっては「絞り羽根開閉異常が収まる/改善できる」と言う意味になります (マウント面に絞り連動ピンを装備している場合の話)。

この点についても当方が一番最初にこのブログで解説を始めましたが、それでも貶される始末なので相当嫌われています(笑)

↑こちらは同じ製品ですが、今度はピン押し底面の「平面側」を上に向けたまま撮影していますから、この向きでセットすると自動絞り方式のM42マウント規格オールドレンズは、ネジ込んだ時により強めに絞り連動ピンを押し込むようになります。従って前述同様「絞り羽根の開閉異常」の改善策として有効と言えます。

つまり「絞り羽根開閉異常」の一因がマウント面から飛び出ている絞り連動ピンの押し込み量の問題なので、押し込む量を増やしたほうが改善できるのか、或いは逆に押し込まないほうが良いのか「その微調整をこのピン押し底面の深さの違いでひっくり返しつつ試せる」のが、このK&F CONCEPT製マウントアダプタの素晴らしさです。

・・現状、同じ機能を持ったマウントアダプタは市場に存在しません。

と解説していたら、今度はK&F CONCEPTと関係があるのかと来るので、マジッでウザいです(笑) まさにあぁ〜言えばこう言うレベルの話ですね(笑) 何にしても当方の事が気に入らないのでしょう・・。

結局使う人の立場になって考え、事細かく解説すると「ひたすらに超長文にすれば詳しく解説している気持ちになっている」とか「顧客本位の素振りを見せつつ実は高く売りたいだけのこと」とか、まぁ〜ある事無い事言いたい放題です(笑)

なお「M42マウント規格」のオールドレンズで、特に「自動絞り方式」を採用している (つまりマウント面から絞り連動ピンが突出している) モデルの場合に、前述した「絞り連動ピンの押し込み量の問題で絞り羽根開閉異常が起きる」以外にもう一つの因果関係があります。

そればかりは絞り連動ピンの押し込みだけで判定できず解体しない限り真偽は不明です。その因果関係とは「絞り連動ピンを押し込んだ時の内部パーツの動き方」であり、モデルによっては必要以上に絞り連動ピンが押し込まれ続けると「内部パーツの一部がマウント部内壁に干渉してしまい、或いは絞り環機構部と干渉してしまい絞り羽根開閉異常を誘発する」場合があるのです。

その根本的な設計概念の相違を皆さんがちゃんと理解できていないから「不良品」或いは当方の整備なら「整備が悪い」と決めつけられてしまいます(笑)

・・ではその根本的な設計概念とは何なのでしょうか?

答えは簡単な話です。当時は「フィルムカメラへの装着しか想定していない設計」だからです(笑) 今でこそマウントアダプタ経由様々なデジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着できる時代ですが「当時は絞り連動ピンはシャッターボタン押し下げ時に瞬時に押し込む状況しか想定していなかった」点について、認知を深める気概が全く無い人達/勢力が顕在するのです。

どんなに解説しても「M42マウント規格ならフィルムカメラもオールドレンズ側も全て同じだから、アンタの説明はまるでウソ!」と貶されます(笑)

しかし実際に完全解体して、特にマウント部内部パーツの動き方や設計を知れば、どう考えても「絞り連動ピンが押し込まれ続けた時のそのチカラの逃がし方に限界がある設計」なのが明白なのです(笑) もちろん捻りバネを備えて、必要以上に絞り連動ピンが押し込まれてもちゃんと対応できるよう処置している/設計している自動絞り方式のオールドレンズはたくさん在りますが、然しその対処しているハズのオールドレンズでさえ「対応できる許容量には限界がある」為に、結果的に内部パーツが内壁に突き当たってしまい戻らなくなり、絞り羽根が開放状態まで開かない (或いは絞り環操作で開放に一度戻さない限り自動絞りに復帰しない) などの具体的な不具合が起きるのを当方は知っています。

・・決して憶測だけでこのような話を言っているのではありません(笑)

当時フィルムカメラに装着して絞り込み測光するにも「フィルムカメラのマウント部内部の絞り連動ピン押し込み板にすらクッション性を持たせてある」フィルムカメラがちゃんと存在する他、実はクッション性が無いフィルムカメラも確かに顕在するので、当時からして「絞り羽根開閉異常」がM42マウントのオールドレンズで少なからず起きていたのではないかと言えます。

そういう説明や検証をちゃんと添えて貶すならともかく、ただひたすらに貶すだけ貶すのは・・人としてどうなのかと思いますね(笑)

↑今回附属させている🅳 K&F CONCEPT製M42−NEXマウントアダプタ」(非ピン押し底面タイプ:中国製) には、複数のM42マウント規格のオールドレンズをネジ込んで確認した「オールドレンズ側の基準マーカー真上に来る位置にマーキングを施した」のを上の写真で説明しています (赤色矢印)。

ここまでご落札者様のことを考えて処置していますが、中には「自分でマーキングしたい」と言ってきて、マーキングしていない新品と交換するよう要請してきた人まで居ました(笑) ご指示どおりにもう一つ新品を買い入れて送りましたが・・正直ビックリです(笑)

・・本当に世知辛い世の中でマジッで人間嫌いです!(涙)

以上いろいろ解説してきましたが、今回のヤフオク! 出品に際し附属させたこのマウントアダプタは「ピン押し底面の深さを2通りで変更できる (本来の製品上の仕様)」にプラスして「ネジ部からさらに突出が在るM42マウント規格のオールドレンズさえ最後までネジ込める」と言う「三つ巴の使い方ができるマウントアダプタ」としてご用意したつもりです。その意味で装着できるM42マウント規格のオールドレンズへの対応能力が高いマウントアダプタではないかとも言えそうです。

  ●               

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。そろそろピント面の解像度が低下し始めているので「回折現象」が現れています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。