〓 KMZ (クラスノゴルスク機械工廠) ЮПИТЕР−9 (JUPITER−9) 8.5cm/f2 Π (silver)《前期型》(L39)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、
KMZ製中望遠レンズ・・・・、
『ЮПИТЕР-9 (JUPITER-9) 8.5cm/f2 Π (silver)《前期型》 (L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Украине! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
当方でのこのモデル「JUPITER-9シリーズ」扱い数は、今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品個体が累計で44本目にあたりますが、その中で当初から生産し続けていたKMZ (クラスノゴルスク機械工廠) から出荷された個体数だけでカウントすると19本目になります。
当方では『ロシアンレンズ』と呼称していますが、戦後当時のソ連 (ソビエト連邦) で造られていたオールドレンズの総称として呼んでいます。
これらロシアンレンズを語る時にまるで都市伝説みたいに語られ続けている話があります(笑)
先の大戦で旧ドイツ敗戦時に旧ソ連軍はCarl Zeiss Jenaの工場から機械設備や資材に人材や 資料までありとあらゆるモノを接収し本国に移送しています。この時接収された資材の中には大変貴重な「光学硝子材の資料 (材料の事)」も含まれ手に入れた技術陣と設計資料を基に戦後のロシアンレンズ開発に利用しています。
それは特にCarl Zeiss Jenaに在籍していたドイツ人技術者達の多くが1959年の一斉送還にも含まれていてドイツ本国に帰還できている事を研究者の論文から知り得ました。
そこでこの都市伝説の如く語られ続けている「Carl Zeiss Jenaの光学硝子資材が1954年に 枯渇した」と言う話について以前検証した事があります。
当時旧ソ連邦は共産主義体制だったので私企業の概念が存在せず全ての企業が国有であって、且つその生産拠点/工場も国からの指揮命令系統で稼動していました。共産党執行部の直下に 各省庁が配置され「産業工業5カ年計画」に則り計画製産による計画経済を目指していたようです。
さらに経済発展の進捗と共に一つの拠点のみを拡大せず「別工場にも同一製品を並行的に同じタイミングで製産する増産手法」を執った為に複数工場で同一モデルが製産出荷されました。
ここがポイントでその並行生産する工場は新たに新設されるよりも既存の機械設備の有効利用のほうが優先された為に「同一モデルでもその子細な設計は各工場に一任されていた」ことを研究者の論文から掴みました (論文の例では農作業機械の生産工場の話が挙げられていましたがほぼ全ての工業分野で同じ概念が通用していたようです)。その背景はまさに共産主義時代の概念そのもので新しい機械設備だけに囚われず古い時代の設備も使えるモノは全て使い尽くすのが旧ソ連邦時代の理に適っていたのでしょう。
この知識を得た時点でまさに目から鱗状態でしたが(笑)、ロシアンレンズの多くのモデルで複数工場で「設計が異なるモデルが登場していた理由とその背景」が納得できた次第です。
それゆえ「モデル銘が同一なのに筐体から内部構造まで何もかも異なる (或いは複数のモデルバリエーションの存在)」ようなロシアンレンズが現れた背景と受け取れます。
これらの話が戦後〜1960年代の旧ソ連邦時代に於ける計画製産の概念だったようですが、その中でどの製産工場で設計/製産されたのかを確定させる役目として「製産工場のロゴをロシアンレンズのレンズ銘板に刻印していた」ワケです (同じ概念は他の工業分野にもあるようです)。
すると今回扱うモデルについては戦後当初からKMZ (クラスノゴルスク機械工廠) だけで量産化が進み製産/出荷されていましたが、その後1957年にはまさに今問題となっているキーウ (ロシア語でKiev:キエフ) のアーセナル工場にも生産が移管され「CONTAXマウント規格」を模倣したKeivマウント規格品のJUPITER-9が設計/製産されました。
合わせて1958年にもモスクワ近郊のリトカリノ光学硝子工場に移管されLZOS製JUPITER-9が登場しています。
このように当時のロシアンレンズの様々なモデルは必ずその生産拠点/工場との関係性まで汲み取りながら考察を進めないと全体像が掴めませんし、もっと言うならそもそも国としての「産業工業5カ年計画」まで調べないと「どうしてそのタイミングでその工場/地域に製産移管したのか?」さえも見えてきません。
ハッキリ言ってこれこそがロシアンレンズの背景を大変難しくしている要素であり単なる筐体外装の意匠変化に留まらず「光学設計まで変化したのか?」との疑念さえも抱く必要性に迫られます。
するとここに来てようやく流れと言うか辻褄が合ってくるのですがいろいろネット上を調べまくったところ確かに接収したCarl Zeiss Jenaの光学硝子資材は1954年にほぽ完全枯渇しているようです。ところが実際の製産時点まで考察すると「予め事前に光学硝子レンズだけを精製していた (但しモデル銘を限定する話ではない)」ようなので1954年に光学硝子資材が先に枯渇しても精製されていた光学硝子レンズはそのままストックされ続けたと受け取れます。
どうしてそのような仮説が出るのかというと当方で今まで扱った同型モデルのKMZ製個体を 見ていくと「1957年時点の光学系もサイズがほぼ同一 (計測誤差を含む)」なのを検証して いるからです。ところがリトカリノ光学硝子工場移管後に出てきた同型モデルの光学系は計測するとビミョ〜に曲率やカタチにサイズまで変化していました。
逆の角度から調べた要素もあって敗戦時にCarl Zeiss Jenaから接収した光学硝子資材が枯渇するとそのタイミングで旧ソ連邦時代に自国内で手に入る光学硝子資材を使う必要性に至ります。光学硝子材には様々な資材が使われるので一斉に全ての資料が同じタイミングで枯渇する事は考えられません。すると考えられるのは凡そ特定のモデルに限定して「当時のソ連産資料に変更するタイミングで光学系も再設計された」と考えるのが適切のように思います。
今回の「JUPITER-9シリーズ」に限定して捉えるならまさに上の図のとおり生産を移管した タイミングで移管先では当時のソ連産光学硝子資料を使って再設計された光学系がセットされているとの辻褄が合った次第です。
ちなみにKMZ製のJUPITER-9は今まで当方が扱った中でチェックした時「前期型モデルのL39マウントタイプは1960年までしか存在していない」ことが判明しており、その中で前述のとおり1957年までの個体に関しては複数で光学系内の設計がほぼ同一なのを検証済です。
今回の個体は1959年製産ですが計測誤差に含むかどうかがビミョ〜な範疇の計測値であり、合わせてコーティング層蒸着の仕様から判定が難しいところです (つまり1958年〜1960年の光学系実測値は計測値にビミョ〜な違いがある)。然しその後のLZOS製個体 (リトカリノ光学 硝子工場製産品) に至ると明らかに曲率とカタチまで変わっているので再設計された光学系と見なす事ができます (合わせてコーティング層蒸着の仕様も変化してしまっている)。
ちなみに一つの補足的な要素として敢えてムリに考察するなら、KMZからLZOS移管後のソ連産光学硝子資料による光学硝子レンズ精製に伴い「Πコーティング層の蒸着まで変化した」のはほぼ間違いない事実 (当時のLZOSに於ける製産時点の作業指示書のような性格の書類などを 参考に調べた結果の判断) としても、1958年〜1960年時点でKMZから製産/出荷されていた 個体の「Πコーティング層蒸着」の仕様が異なる要素についてはあくまでも仮説に留まりますが (実際に製産時点の指示書の類がまだ発見できていないから)「既に1954年時点で精製されていた光学硝子材にその時点で見合うΠコーティング層が蒸着された」と考察するなら各群のビミョ〜な計測値の近似性は「特に第3群に限定して計測値が異なるハズ」とも指摘できまさにそのような結果とも受け取れます (つまり第1群〜第2群の計測値に相違がほぼ無い点)。
すると見えてくる話は「1957年以降1958年〜1960年に製産/出荷された個体は第3群だけがソ連産光学硝子材資料を使った緊急的な再設計品」などと言う仮説まで浮かび上がりますが 計測値の相違がビミョ〜なので何とも判定できません。
逆に指摘するならそれほど後のLZOS移管後の光学系計測値は明らかに別モノとも言い切れそうです。
そんなワケで少々ムリな仮説にまで話が及びましたが戦後〜1957年までのCarl Zeiss Jenaから接収した光学硝子材資料を基に製産/出荷していた個体に対する「Πコーティング層蒸着」とそれ以降1958年〜1960年の製産/出荷個体に蒸着された「Πコーティング層蒸着」が放つ光彩の相違の説明が適うと言う結論さえも見えてきます。
その意味で「同じΠコーティング層蒸着」が放つ光彩の色合いの変化が一つの仮説を強化する要素に成り得ますが残念ながらその仮説を補完できる証拠たる製産時点の作業指示書の類などがまだありません(泣)
しかし1958年〜1960年の期間にKMZから出てきた製産/出荷個体 (JUPITER-9の話) が放つ 光彩の色合い (今回扱った個体で言うならプリシアンブル〜の光彩) はそもそもそれ以前の戦後
〜1957年の間にKMZから製産/出荷されてきた個体が放つ光彩とは異なりますし、もっと言うなら当然ながらもちろんLZOS製の製産/出荷個体が放つ色合いとも異なる点に於いて何かしらの仮説が必要に思います(泣)
このような仮説に到達してしまうと同じ「Πコーティング層蒸着」ながらもその放つ光彩の色合いの相違が3種類顕在している事実に至り何とも消化不良的な思いばかりが残り釈然としません(泣)
プラスして (余計な話ですが) この当時にこのモデル「JUPITER-9シリーズ」の一部の個体は「旧ソ連軍の射爆観測器 (戦車用なのか火砲向けなのかまでは不明) にも相当数が転用されて いた」事実が残っておりさらに話が複雑化してしまいます (その意味でキリル文字のレンズ銘板はなかなか厄介な存在)(笑) 何故なら西側諸国向け輸出品だけが当時の国際輸出管理法に則り「ラテン語/英語表記」が義務づけられていたため単純にキリル文字表記のレンズ銘板だからと「国内/東欧圏向け流通品」に括る事が適わない要素が残ったままと指摘できてしまい考えて しまいます(泣)
残念ながらせっかくバラしても確かな事は判明しませんでしたが・・ロマンを酒の肴にする には十分なくらいですね(笑)
ちなみに前述した「Πコーティング層蒸着」の ロシア語キリル文字「Π」はラテン語/英語にすると「P」なので巷では「Pコーティング」とも呼ばれています。するとモデルバリエーション上の「前期型」で捉えても「KMZ製:2種」と共に「LZOS製:1種」と合計3種類顕在します。
左の写真は当方で今まで扱った同型モデル「KMZ製の前期型」の写真から転載していますが、ちゃんと前述の2種類顕在する事を示しています。さらに補強する解説として現在ロシア系 サイトで確認できるZENIT系レンズ研究サイト「ZENIT CAMERA」の「JUPITER-9」ページの下のほうに技術仕様の項目「Тип просветления: многослойное」がありそのまま和訳すると「啓発のタイプ:多層」と訳されます。どのような経緯でこのコトバを使うのか不明ですが、ロシア人が技術諸元値の一つを表すコトバとして「コーティング:просветления」を使っている事は間違いない事実ですね。ちなみに発音記号は「prosvetleniya」なので頭文字が英語の「P」にあたる事も事実です。
↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『ЮПИТЕР-9 (JUPITER-9) 8.5cm/f2 Π (silver)《前期型》 (L39)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。今回の個体は僅かに光学系内に経年並みの拭きキズなどが残りますが (特に前玉中心に円形状の極微かなヘアラインキズあり) むしろ「微細な気泡が多い」個体と指摘できます。
◉ 気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「証」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。
写真に影響がないと言っても例えば「円形ボケや玉ボケ」を表出させた時にその内側にポツ ポツと微細な点状の影が浮かび上がるのはまさにこの「気泡」の影響だったりするのでその点は留意が必要です。
ヤフオク! の出品ページを観ていると「気泡は問題なし」と指摘している出品者が圧倒的多数ですがちゃんと自分で実証検証していないから単に言葉尻を捕って明言している始末です(笑)
円形ボケや玉ボケなどの内側にはこれら光学系内のキズや気泡などの要素が影として浮かび上がる懸念がありますが、そこで問題視しなければイケナイのは「焦点距離」であり標準レンズ域のオールドレンズで表出される例えば玉ボケの内側に明確にポツポツを視認して汚いとの 印象を本当に抱くのかと言うとなかなか難しいですね (本当はポツポツ写っているが小さすぎて視認できないレベル)(笑)
ところが今回の個体は中望遠レンズなので相応に大きめに玉ボケが表出されるシ〜ンも当然ながら想定できるので事前にこのような話を指摘事項として述べています。
要は「ちゃんと考えて明記していないバカな転売屋/転売ヤーの類」が問題無しと明言している話です(笑)・・ちなみに当方も同じ『転売屋/転売ヤー』であり同類です(笑)
↑前玉表面側には相応に微かな経年並みの微細なキズが残っていますし前述のとおり8mm大の円形状ヘアラインキズがコーティング層を反射させると視認できると思いますが、ほとんどの写真撮影で一切影響しません (前述の玉ボケは別)。
それよりも光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体なのでLED光照射でも極薄い クモリすら皆無です。
但し出品ページ記載のとおり「コーティング焼け」が特に第2群と第3群の貼り合わせレンズに生じているのでパッと見で「光学硝子レンズがレモンイエローに見える」のは仕方ありません。これは酸化トリウムを含有したいわゆる「アトムレンズ (放射線レンズ)」の話とは全く別モノで(笑)、黄変化していると何でもかんでもアトムレンズと騒ぐ勢力が居ますがコーティング層の質が高くないので経年で焼けてしまった (つまり変質してしまった) 話です(笑)
↑そのコーティング層蒸着レベルの質が低い事例を上の写真で示しています(笑) 今回出品個体の前玉を光に反射させてワザと故意に蒸着コーティング層「Πコーティング」を明確に撮っています。
すると赤色矢印で示したように目視できる箇所だけで5点ありますが「まるで彗星のように 尾を引いたカタチのコーティングムラが見えてしまう」のを明示しています。
これはコーティング層蒸着時に資料に含有していた不純物の影響で蒸着ムラが生じている箇所なので一旦剥がして再蒸着しない限り清掃などでは一切解消できません。
同様にグリーンの矢印で指し示した前玉外周部分の「ピンク色に光彩を放つ領域」が顕在し おそらく「Πコーティング」蒸着時の対象領域のズレと受け取っていますがどうしてこうなるのか「???」です(笑)
さすがにコーティング層の蒸着レベルの話なのでこれらの要素は前述の玉ボケの内側にさえも一切写り込みません(笑)
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側も貼り合わせレンズなので同様「コーティング焼け」が進行しており本当に微かですが黄色っぽく見えます。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:17点、目立つ点キズ:14点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前玉表面に微かなカビ除去痕数点あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(特に前玉中央に極微細な薄い8mm大円形状のヘアラインキズあり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません。
・前玉を光に反射させて覗き込むと裏面側のコーティング層にまるで彗星のようなカタチに見えるコーティングムラが最大で5点視認できます。これは製産時点のコーティング層蒸着時に不純物が混じっていた影響なので改善不能です。また前玉外周に全周に渡り色合いが異なる光彩を放つ(ピンク色に見える)領域がありますがこれも製産時点のコーティング層蒸着による結果なので改善不可能です。
・光学系内の第2群〜第3群貼り合わせレンズには経年相応のコーティング焼けが起きており透過して覗くと僅かに黄変化して見えます。コーティング層の経年劣化に伴う変質なので改善不能です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑後玉側方向から覗き込んで光学系内の「気泡」を撮影しましたがほとんど写りません(笑) 特に前玉の「非常に微細な気泡」が多くどう見ても微細なチリ/埃か、或いは経年に拠る微細な点キズにしか見えないのですがちゃんと拡大撮影すると「気泡」です(笑)
↑15枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。
そもそもこの当時のロシアンレンズの絞り羽根は「カーボン仕上げ」が主流の時代なので経年に伴う酸化/腐食/錆びの箇所は洗浄すると「白っぽくポツポツと浮き上がる」状況ですがもちろん既に酸化/腐食/錆びしているので黒っぽく戻す事ができません。
そんな「絞り羽根の擦れや汚れ」よりも当方では絞り羽根が膨らんだりする「キー変形と将来的な脱落の懸念」のほうが最優先なので可能な限り絞り羽根を平坦に戻してから組み込んでいます。
この「絞り羽根の膨らみ」は経年の中で絞り羽根に油じみが起きて放置していると「粘性を帯び始めて絞り値を閉じていく時に界面原理が働きその応力から絞り羽根が中心を頂点にして膨れあがる現象」が発生します。
本来各絞り羽根にプレッシングされている「キー (金属製の微細な円柱)」は垂直を維持しているのが製産時点ですが、経年で絞り羽根が膨張すると「キー打ち込み箇所が変形して絞り羽根の開閉角度が変わる」ので、その結果「絞り羽根の開口部が歪なカタチに変化する」因果関係に到達します。
・・いったいこれかせどうな不都合なのか???(笑)
例えば円形ボケを表出させたりした際に「キレイな真円に至らない歪なカタチ」そのままに表出しますし、仮にそのオールドレンズの実装絞り羽根枚数が6枚だったら「正六角形のボケが表出しない」ワケで気にする人は気になると思います(笑)
こういう事柄をちゃんと自分で確認したり検証したり、或いはちゃんと事細かく「観察と考察」しないのでもしも落札者サイドに立って可能な限り細かく配慮するなら「光学系のキズのレベル同様/筐体外装のキズ同様その感覚は千差万別」である事を見据えてちゃんと告知したり明記するのが筋でしょう(笑)
・・それを当方とご同業たるたいていの『転売屋/転売ヤー』は単なる謳い文句だけなので当方と同じようにアホな輩の類ですね(笑)
そもそもオールドレンズは撮影する道具なので実際使った時の気持ちに立ってチェックしていけば良いだけなのにそれすらしません!(笑)
ヤフオク! でも頻繁に明記されている「動作未確認」とか「素人なので詳細不明」などの謳い文句は「総てクレーム回避の為の逃げ口上」でしかないので、そのような文言を述べている出品者の頭のレベルが分かります(笑)
逆に指摘するなら「当方はLED光照射した光学系内の写真を掲載しない主義」です。その根本理由は整備者がその写真を観れば光学系内のどの群のどの構成位置に残っているキズや汚れなのかが伝わりますが、整備した経験が無い人が観ると「光学系内の全体のキズや汚れにしか受け取られない」ので写真にどのように影響してくるのかが掴めません。
もっと言うならオールドレンズで過去メンテナンスされてから1年以上時間が経っているなら必ず「微細な塵/埃」も侵入しているのでその区別もつきません。
そのような背景から当方では敢えてLED光照射した光学系内の写真を撮らずに載せません。その意味で何でもかんでもLED光照射して写真掲載すれば良いとの指摘は当方からすれば「その写真を観ている人達の観察眼レベルはどうなのか???」と逆質問したいですね(笑) どう考えても光学系なの「塵/埃の多さ」にしか印象を得られずまるで負の要素ばかりです(笑) それで低価格で落札されても納得できるならそれも一理あるかも知れませんが、少なくとも高い価格で落札される方が嬉しいです!(笑)
・・そういうのが人情なのではありませんか???(笑)
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「重め」に感じ「全域に渡りほぼ均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・内部パーツの経年劣化に伴う摩耗が影響し距離環を回した時やピント合わせ時に刻印距離指標値の1.8m〜3.5m辺りで重く感じる事があります。原因は摩耗したパーツが擦り減ってしまった事で極僅かな隙間が影響しヘリコイドグリース溜まりに合わせて応力から抵抗/負荷/摩擦増大を招いている為で擦り減ってしまった金属材は元に戻せず改善不可能です(グリースの粘性に頼っても改善できません)。事前告知済なのでクレーム対象としません。
・距離計連動機構部の設定は当初バラす前の位置のまま仕上げています。距離計連動機構の精度を確認できる環境が無い為クレーム対象に含みません。特にライカボディなどに装着時の精度の狂いは対応できません(クレーム対象とせず)。
・その関係で無限遠位置も当初位置のままでありオーバーインフ状態です。刻印距離指標値では1目盛手前の25m辺りで合焦します。事前告知済なのでクレーム対象としません。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
① marumi製MC-Nフィルター (新品)
② 本体『ЮПИТЕР-9 (JUPITER-9) 8.5cm/f2 Π (silver)《前期型》 (L39)』
③ 汎用樹脂製ネジ込み式M39後キャップ (新品)
④ 社外品樹脂製被せ式前キャップ (中古品)
今回出品個体は残念ながら距離環を回すトルクが「重め」です。さらに刻印されている距離指標値の「3.5m〜1.5m辺りまで急に重くなる事がある」状況です。特にトルクムラ (急に重くなる) のは再現性が都度変わるので「内部パーツ (直進キー) の経年摩耗」の影響が濃いです。
これはシリンダーネジという円柱ネジの接触箇所が擦り減ってしまった為に極僅かなマチが生じ (実際に距離環にも微細なガタつきを感じる状況) そのガタつきの移動でグリース溜まりが生じて抵抗/負荷/摩擦を増長させていると考察できますが、ハッキリ言ってその箇所を探す手立てがありません(笑)
おそらく「0.1〜0.2mm」くらいのマチなのでしょうが調べても分かりません。そもそもダブルヘリコイド方式で距離環を回すことで「2組のヘリコイド (オスメス) を繰り出したり収納したりさせている」ので仮にトルクが軽いヘリコイドグリースに入れ替えても「今度はネジ山が互いにカジリ付きする」ので却ってトルクが悪化していきます。
その意味で指摘するなら皆さんがこだわる処の「距離環を回す時のトルクの重さ/軽さ」とはそもそもヘリコイド (オスメス) だけに限定した話ではなくこのように鏡筒などまで含めた部位を引率する (引きずる) チカラの伝達なのだとご認識頂くのが本当です。だからこそ単純にヘリコイドグリースだけを入れ替えてもはたしてそのトルク感が5年後10年後まで継続的に維持されるのか否かはまた別の話になります。
特にこの当時の日本製オールドレンズのようにサービス耐用年数まで考慮した設計をしていないのでどうにもなりません(笑)
なお無限遠位置も当方には距離計連動機構を確認できる環境が無いので当初バラす前の位置のまま仕上げています。従ってライカカメラ等に装着して使う時の二重ファインダー画像でのチェックなどは実施していません (精度保証できません)。
出品ページ記載のとおり「マウントアダプタ経由での使用を前提」としているのでフィルムカメラやライカカメラで使ってのクレームはご容赦下さいませ。当方のスキルは低いので落札されない方が良いと思います(笑)
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離1.15m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値は「f5.6」に上がっています。光学系内にコーティング焼けがある分コントラストの僅かに強調される傾向です。
↑f値「f16」での撮影です。そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めておりコントラスト以前にピント面の解像度のほうが低下し始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。