◎ CARL ZEISS (カールツァイス) CONTAREX Planar 50mm/f2《all black version》(CRX)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わってご案内するモデルは、旧西ドイツは
CARL ZEISS製標準レンズ・・・・、
CONTAREX版Planar 50mm/f2《all black version》(CRX)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でご案内する個体は「オーバーホール/修理ご依頼分」にて承りました。当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で当時のCARL ZEISS製標準レンズ「50mm/f2.0」の括りで捉えると累計で22本目にあたりますが、今回扱った個体「オールブラックバージョン」だけでカウントすると「初めての扱い」です。

今回のオーバーホール/修理ご依頼者様は、実は2016年来からのお付き合いが続くと共に
陰に日向に当方を支え続けて頂くとても大切な方です。特に医療関係の方なので、そのようなプロ視点から「私達の病理解剖に相通ずる説得力がある」と当方のこのブログ解説に対し
ご評価頂いたのが何よりも今もなお心の支えになっています(涙)・・ありがとう御座います!

毎年数人の方から誹謗中傷メールが着信しますが、このように医療関係の方々や工学 (物理?) 関係の方、或いは金属加工会社の社長さんや工業用光学硝子製造会社様、経済産業省関係の方
東京工業大学や慶應義塾大学の教授などなど、数多くの方々に支えられ今まで頑張ってこられました。当方は精神面でそれほど強くない精神性の持ち主なので、どれだけ助けられてきたのか計り知れません・・(涙)

・・本当に感謝の気持ちしかありません。ありがとう御座います!!!

その中で今回のご依頼者様は遙々アメリカはボストンからのオーバーホール/修理ご依頼になり、誠に恐縮至極と述べるしかありません(涙)

ハッキリ言って、今回扱ったオールドレンズを当方が死ぬまでに手にできるとは全く思っていなかったので、どんなに感激が大きく誉れに思っているのかコトバに表す事ができないほどです・・ありがとう御座います!!!

なお、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」ここで述べている事柄
/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。

従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。

ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。

そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は御座いません)。

今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。

ご指摘事項は・・・・
   出品者のひとりごと・・・・pakira3kara@pakira3.sakura.ne.jp
までお知らせ下さいませ。

・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。

  ●               

今回扱ったモデルバリエーションの存在を知ったのは、海外オークションebayで数年前に売りに出されていた左写真のような「オールブラックバージョン」の存在を知り得たからに他なりません。

但しこの時はこの写真の個体が「本当に製産されたオールブラックモデルなのか?」或いは「後に再塗装された個体なのか?」のどちらなのか確信を持つまでには至りませんでした。

・・しかしまさに個体を手にすれば否応なく確たる証拠を突きつけられます!

↑上の写真 (2枚) は、当方が今までに扱ったこのモデルのバリエーションで一般的なシルバー鏡胴モデル (左側) と「フラッシュマチック」機構を実装したモデル (右側) の2つです。

パッと見で単なる色違いのように見えますが、実は両者は全く別モノであり「最短撮影距離30cm (左側) と38cm (右側) の違いがある」のが現実です。当然ながら最短撮影距離が異なるので「光学系の設計も全く別モノ」と指摘できます (実際にバラして確認済)。

そもそも距離環のローレット (滑り止め) の位置が異なるので単なる色違いとも言えません。

↑実際に今回扱った「オールブラックバージョン」を間に挟んで並べてみるとよ〜く分かります。左端のシルバーと距離環のローレット (滑り止め) 位置が同一なので「まさに色違い」と指摘できます (当然ながら最短撮影距離も同じ30cm)。右端だけが「最短撮影距離38cm」です。

右端のモデルは別名「Blitz (ブリッツ)」と呼び「Flashmatic (フラッシュ・マチック)」機構を実装したモデルで、ストロボ/フラッシュ撮影時に鏡胴のプリセット値環に刻印されているガイドナンバーを合わせてセットすると、自動的に「距離環の駆動範囲と適切な絞り羽根の開閉幅が限定される仕組み」であり、失敗しないフラッシュ撮影を実現してしまった当時としては先進的な仕組みでした。

そもそもこれらのオールドレンズは、1959年に旧西ドイツのZeiss Ikonから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX (コンタレックス)」向けの交換レンズ群であり、後に「CONTAREX I型」と呼ぶようになり巷での俗称「Bullseye (ブルズアイ)」の愛称と共に今もなお憧れの的であり続ける僅か約32,000台しか製産されなかったフィルムカメラです。

大きな円形窓が軍艦部に備わりますが、絞り羽根開閉動作とシャッタースピードの両方に連動する世界初のクィックリターン式ミラーを装備した一眼レフ (フィルム) カメラになり、この円形窓を指して「Bullseye」と呼ばれています。

この丸窓はセレン光電池式連動露出計であり俗称の由来「bulls (雄牛) のeye (目) を射貫く」から来ており「射る的」転じて最近では軍用語でもある「攻撃目標地点 (ブルズアイ)」に至っています (攻撃目標を無線などで傍受されても分からないようする暗号として使われた)。

↑1959年の発売と同時に用意されたオプション交換レンズ群は実に多彩で、発売当初は
焦点距離21mm〜1,000mmまで揃えており本気度の違いすら感じてしまいます。

では実際に「どうやって再着色ではないと断言できる確たる証拠を見つけたのか?」の問題について解説します。

左写真は海外オークションebayから引用した写真ですが、別の焦点距離モデルで「CONTAREX版Sonnar 85mm/f2《all black》」になり、当然ながらシルバー鏡胴モデルもちゃんと存在しますが、その色違いとして中望遠レンズ域でもモデルバリエーションが顕在することが分かります。

実はこの写真をチェックするだけで「確たる証拠」を掴めたのです。

左写真は同じ個体の引用写真ですが赤色矢印の箇所をよ〜く観察して下さいませ。ワザと拡大処理したので赤色矢印で指し示している箇所の「金属材の質感を確認できる」と思います。

ネット上ではアルミ合金材のアルマイト仕上げと数多くのサイトでアナウンスされていますが「正しくはアルマイトのヘアライン仕上げ」と表記するのが適切なのです。

単なるアルミ合金材のアルマイト仕上げなら赤色矢印で指し示しているような「横方向のヘアライン状の質感を伴わない」と指摘でき、これは製産時点で「敢えてCARL ZEISSがそのように仕上げていた」事の証と言えます (単なるアルマイト仕上げならノッペリした平面的な質感だから)。このヘアライン状の質感は鏡胴の全ての部位で同一です。

↑上の写真 (3枚) は、右端だけが今回扱った個体写真で左端と中央は共に海外オークションebayからの引用写真です。これをチェックすれば「再着色/repaintなのか否かが100%判別できる」と明言できます。

左端のフィルムカメラに装着されている個体写真は「ノッペリした仕上がり」なので再着色と断言できますし、中央も「マットで微細な凹凸を伴う梨地焼付塗装」したのが明白です。

↑今回扱った個体の写真ですが、赤色矢印で指し示している箇所のアルミ合金材ヘアライン仕上げの状況が分かるよう拡大撮影しました。先に例として挙げた中望遠レンズ「CONTAREX Sonnar 85mm/f2」同様、鏡胴の全ての部位で同じ金属材の仕上げ方です。さらによ〜く観察すると85mmも同じなのですが「ローレット (滑り止め) のジャギー部分だけはアルマイト仕上げのまま」なのでヘアライン状の横方向の質感がありません。

従ってこれらの事実から「製産時点にCARL ZEISSが故意にそのように仕上げて高級感を演出していた」のが明白になり、一方で再着色/repaintした個体は「ヘアライン状の質感を残したままメッキ加工/焼付塗装ができない」とも言い替えられるので「これをチェックするだけでホンモノか否か判別できる」ワケです(笑)

別に再着色/repaintを貶しているワケではありませんが、再着色/repaintしているのにそれを告知せずに「ブラックバージョンで希少性が高い」と謳って高額で捌いている出品者も中には居るので/隠れているので気をつける必要があるのです。

↑一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX I型」の取扱説明書に掲載されている「CONTAREX版B-Planar 50mm/f2」の光学系解説ですが、今回改めてよ〜く見ていたら不可解な事実を見つけてしまいました。光学系構成図に添えてモデル銘がちゃんと記されているのにその最短撮影距離が「30cm」のままなのです!(驚)

11 3/4 in」との記載なので「11インチ27.94cm」でさらに「3/4インチ1.905cm」ですから、足せば「29.845cm」で凡そ30cmの最短撮影距離になってしまいます。ところがCONTAREX版B-Planar 50mm/f2《Blitz》(CRX)の解説ページのとおりBlitzモデルは「最短撮影距離38cm」なので、距離環刻印距離指標値は「18”」で
ちゃんと終わっています (実際の距離環突き当て停止位置は18”の刻印位置からだいぶ回った位置)。ちなみに18”は45cmになります。もちろんシルバー鏡胴モデルのほうも距離環刻印距離指標値は「最短撮影距離30cm」として刻印しています (メートル表記だから)。

前述した「Flashmatic (フラッシュ・マチック)」機構の写真も、実は同じ取扱説明書からの抜粋なので、一つの取扱説明書の中で辻褄が合わない記載をしていることになります。

↑さらに上の光学系構成図も同じ取扱説明書からの抜粋です。2つとも「CONTAREX版Planar 50mm/f2」の光学系構成図である事をちゃんと謳っているのに、肝心な光学系のカタチが別モノなのです!(驚)

左側の光学系構成図は取扱説明書の中に載っている「標準レンズを装着したフィルムカメラのカット図線画」からのトレース図になり、一方右側はオプション交換レンズ群の解説の中にて掲載されている構成図からトレースしたものです (いずれも当方にてトレースしています)。

しかもこれら2つの構成図をよ〜く観察すると「そもそもあり得ない構成図なのは右側」だと明言できてしまいます(笑) その理由は「光学系第3群と第4群後玉との間の距離が長すぎる」点で、さすがに「光学知識皆無なド素人」の当方でさえ、この後玉の格納位置では標準レンズに成り得ないのが分かってしまいます(笑)

↑上に並べた3つの光学系構成図は左端が「CONTAREX版Planar 50mm/f2《シルバー鏡胴》」で、中央と右端が「CONTAREX版B-Planr 50mm/f2《Blitz」モデルです。同じ「Blitz」モデルなので「最短撮影距離38cm」なのに光学系の設計が異なるのです(驚)

この点については当方ブログのCONTAREX版B-Planar 50mm/f2《Blitz》(CRX)の解説ページで説明しています。

もちろんこれら3つの構成図は、それぞれの個体を扱ったオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

さらに指摘するなら「光学系第3群と第4群は単独で格納している」ので、いわゆる貼り合わせレンズではありません。第3群と第4群の間には隙間が生まれるように「厚さ0.2mmのシム環を挟む格納方法」なので (実際のオーバーホール工程で当然ながら確認済) 接着していないワケです (左端と中央の構成に限定)。

ちなみに右端の構成図は同じ「Blitz」モデルですが「製造番号494xxxx」なので、おそらく最後期に生産されていた個体ではないかとみています。

このように指摘するとまたSNSなどで当方がウソを拡散していると批判されますが(笑)、前述の解説ページでちゃんと「証拠写真」を載せているのでウソではありません(笑)

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

フレア
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

いずれにしても「極度のカメラ音痴」で「光学知識も疎く」整備者とも言えない存在なのが当方ですが、そうは言ってもこの一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX I型」と共に揃えられたオプション交換レンズ群は、どの焦点距離もその造りの素晴らしさに驚かされますし、何よりも吐き出す写真の描写能力の高さが秀逸です。

・・溜息しか出ませんね(涙) 本当に素晴らしいシリーズでありシステムです。

1960年頃の広告ですが「If you love perfection CONTAREX is the camera for you」のキャッチコピーそのままで、完璧を求めるならCONTAREXしかあり得ないと言う話です(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。まさかこのモデルの「ブラックバージョン」をバラす日が来るとは思いもしませんでした・・(涙) 頑張っていれば何か良いことが訪れるものなのですね(涙)

・・改めてご依頼者様に心からお礼申し上げます。感謝の念しかありません!(涙)

↑こちらは合わせて一緒に送られてきた「シルバー鏡胴モデル」のほうで、一部の構成パーツを転用する「ドナーレンズの立場」です。

《当初のオーバーホール/修理ご依頼内容》
マウントベース部分に刻み入れがあるのでドナーレンズから転用し交換する。
光学系第1群前玉のカビ除去痕/クモリが酷いのでドナーレンズから転用し交換する。
 後群格納筒の縁が銀色にハゲているのでドナーレンズから転用し交換する

《オーバーホール工程の中で別途生じた内容》
絞り羽根1枚のプレッシングキー劣化が酷くドナーレンズから転用し交換。
光学桂台5群の後玉のコーティング層劣化が酷くドナーレンズから転用し交換。
鏡開閉環に封入の鋼球ボール2個にサビが出ておりドナーレンズから転用し交換。

しかしこれだけでは終わらず、特にこの個体「ブラックバージョン」はとても貴重なのに過去メンテナンス時の整備者の手により「希少価値を台無しにする所為が加えられていた」のがマジッで哀しい事実です(涙)

↑取り敢えずご依頼内容のほうから詰めていきます。左側が本来「ブラックバージョン」個体に使われていたマウント部のベース環ですが、写真が下手くそなので明確に写せませんでしたがグリーンの矢印の箇所に「刻み入れ」で掘られており、特に海外では盗まれたり紛失した際に自分の所有物である事を示す証拠として「名前や電話番号などを刻み込んでいた」ので、このような個体が意外に多いです(涙)

シルバー鏡胴のベース環にはそのような刻み入れがないので入れ替えて転用します。

↑光学系第1群前玉ですが、互いの製造番号がとても近いのでちゃんと計測したところ「同一の光学設計」なのが確認できました。キズやカビ除去痕が酷いので同様シルバー鏡胴モデルから転用します。

↑3つめのご依頼内容で「光学系後群格納筒の縁の剥がれ」で要は銀色にメッキが剥がれているのを入れ替えるワケですが、ここで問題が起きました(汗)

左側が「ブラックバージョン」の光学系後群格納筒であり、右側が「シルバー鏡胴のほう」の格納筒です。グリーンの矢印で指し示した箇所のメッキ加工の有無が違っています!(驚)

確かに製造番号を見る限り「僅か1,250本の違い」とも推測できそうなほどに近いシリアル値を執っていますが、然しご覧のように設計が違います。「ブラックバージョン」のほうは光学系第3群〜第4群格納箇所が「アルミ合金材の無垢 (平滑仕上げ)」に対しシルバー鏡胴モデルのほうは「メッキ加工」されています。

この違いが何を意味するのかと言えば、ここに格納する光学系第3群と第4群の「光学硝子レンズのコバ端処理」に相違が在り、実際「ブラックバージョン」のほうでは黒色着色が製産時点で執られています (つまり溶剤でも溶けて剥がれない)。

逆に指摘するならシルバー鏡胴モデルのほうでコバ端着色している個体がとても多いですが、その多くが「過去メンテナンス時の整備者の手による着色」であり、溶剤で容易に溶かして剥がせます(笑)

単に光学硝子レンズのコバ端が黒色に着色されているか否かの問題ではなく「適切な位置で格納されているか?」が問題なのです。特にシルバー鏡胴モデルのほうで格納箇所がメッキ加工されているのに「反射防止黒色塗料で厚塗り」されていると、ちゃんと最後まで格納されずに光路長オーバーを生じて「甘いピント面」に落ちてしまっている個体が多かったりします。

・・それが問題なのです!!!

製産時点に焼き付け塗装していないのに、どうして過去メンテナンス時の整備者は「反射防止黒色塗料の着色」にこだわるのでしょうか? 着色してもちゃんと適切な位置で格納されているなら良いですが、その際着色した「反射防止黒色塗料」は格納時の圧力に耐えられずに大概剥がれ落ちていたりします(笑) すると斑模様に白っぽく浮いていたりするので、はたしてそれが良い事なのか否か当方には「???」だったりします(笑)

今回使う光学系第3群〜第4群は製産時点でちゃんと塗装されているので溶剤で剥がせません。そのままシルバー鏡胴から転用した上の写真で言う処の右側の格納筒に「ストンと落とし込みができない」のです(泣) 単に格納するだけの話なのに、これがなかなか大変でこの処理だけで2時間を要しました(涙)

↑さらにヤバかったのが上の写真です。そもそも当初バラす前の時点でネジ込まれていた「ヘリコイドオスメスのネジ込み位置」がデタラメ状態だったので、適切な/正しい位置でヘリコイドオスメスをネジ込むとご覧のように「無限遠位置の∞刻印 (グリーンの矢印) が基準 マーカーに合致しない (赤色矢印)」のです!(驚)

そもそもヘリコイドが固着していたので確かめる術がありませんでしたが(泣)、おそらく過去メンテナンス時に「やってはイケナイ所為をやってしまった!」が為にこのような現実に至っています(涙)

↑さらに不思議な事にヘリコイドオスメスの間から上の写真のようなネジ向けのワッシャーが出てきました。こんなのがヘリコイドのネジ山に入ってしまったら大変なことになります!(怖) よ〜く観察すると「固着剤」が付いているので、数十年前の「赤色固着剤」時代ではないので (製産時点なら褐色系固着剤) 近年混入したものと推察できます(怖)

↑上の写真は前出の距離環をひっくり返してマウント側方向から覗き込んだ写真です。赤色矢印のちょうど隙間の中に例のワッシャーが入っていたようです (ここから出てきた)。グリーンの矢印で指し示しているネジ山は、距離環を回転させる為に備わるネジ山で基台側ネジ山にネジ込まれます。

一方ブルーの矢印で指し示しているネジ山がヘリコイドの「メス側」で鏡筒の繰り出し/収納時に使うネジ山 (ヘリコイド) ですね。

↑従って距離環はこのヘリコイド (メス側) に締め付け固定されているので「無限遠位置∞刻印がズレている」と言うことはイコール「ヘリコイドメス側のネジ山位置がズレている」と言えるので、だからこそ適切な無限遠位置にヘリコイドのオスメスをネジ込んだのに「∞刻印が到達していない」話に至ります(泣)

上の写真は同じようにマウント側方向から距離環の内側を覗き込んで撮影しています。

すると距離環を締め付け固定している「締付環」が「距離環とヘリコイドの間に存在する」のが分かります (赤色矢印)。その「締付環」の両サイドには「カニ目溝」が備わるのでカニ目レンチで締め付けて距離環を固定している話です。

ところがほぼ98%の個体でこの締付環をカニ目レンチで外す事ができないほど硬締めされているのが現実で(涙)、今回の個体も2時間掛かりでいろいろ試しましたが全く歯が立ちませんでした(涙)

手の甲を痛めてしまったので一晩湿布を貼って作業を中止し休みました・・(涙) カニ目レンチを持ちながら、外そうとして目一杯のチカラを加えるので手の甲を痛めてしまうと言うか、もうクセになっていてヤバい (傷めてしまう) チカラの強さがだいたい分かっています(笑)

↑仕方ないので/カニ目レンチでは外せないので、別の方法で5mmずつ距離環を回しながら (もちろん目一杯のチカラを加えて/但しカニ目レンチは使わず) 何とか適切な位置に近づけられました。「締付環が締め付けられている方向」にしか回せないので、一発勝負であり行きすぎたからと戻す事ができません。従って無限遠位置の僅か先まで回して止める「見当付け」が大変で、それをミスればさらに悪化します(怖)

今回の作業ではピタリと合わせられなかったので (何しろ光学系を格納して無限遠位置を確認しながらチカラを入れて回しているワケではないから) いちいち5mmずつズラして組み上げては光学系を入れ込んで、実際に無限遠位置を確認している始末です(笑)

そんな事をしているから2時間3時間がアッと言う間に過ぎていきます(笑) どんだけ技術スキルが低いのか皆様にもよ〜くご理解頂けると思います(笑)

距離環の固定位置がオーバーインフ状態ですが適切に近づいたところで、過去メンテナンス時の整備者の所為が明白になりました(笑)

上の写真では既に鏡筒が完成していて「絞りユニット」と合わせて「光学系前後群」が鏡筒に組み込まれています。すると鏡筒の側面から「開閉アーム」が斜め状に飛び出ていて絞り羽根の開閉動作ができるようになっています。この「開閉アーム」が入るべき先の「制御環」側のガイドがヘリコイドメス側の内側に備わります (赤色矢印)。

ここがポイントで「どうしてその開閉アームは斜め状のカタチをしているのか?」或いは「どうしてガイドは斜め状の溝になっているのか?」のこの2つの点に過去メンテナンス時の整備者は全く気づいていない・・と言うか「観察と考察」が全くできておらず、合わせて「原理原則」すら理解していない低俗な整備者だったようです(笑)

やってはイケナイ所為とは「ヘリコイドのネジ込み位置をミスっているのに鏡筒の組み込み位置が合わずにムリヤリ距離環の位置をズラ送料とチカラを加えて回した」からこそ∞刻印の位置があんだけズレてしまったのです(涙)

ヘリコイドメス側を締め付け固定している「締付環」が同じアルミ合金材なので、一度製産時点に締め付けるとネジ山が咬んで緩められなくなるのを見越した設計です。従って距離環を目一杯回してズラしても、一方向にしか回らないので元の∞刻印に戻せなくなってしまったのです(笑)

従って当方がどんだけカニ目レンチでチカラを目一杯入れて頑張ったところで回せないのは分かっていましたが、もしかしたらとの一念で頑張った次第です・・ダメでしたが(笑) 最初からカニ目レンチを使わない手法で回していれば良かったのですが、そうすると「1回しか回せない一発勝負」になるので、できれば締付環を外せたほうが良いのです(涙) それが手の甲を痛めるのを覚悟してでも試す価値があったと言うクダラナイお話しです(笑)

↑鏡筒を実際にヘリコイド (オス側) をネジ込んでから鏡筒を格納した時の写真です。ヘリコイド (オス側) の内側には両サイドに「直進キーガイド」と言う溝が備わり、その溝を直進キーが行ったり来たりスライドするので「その時に鏡筒の繰り出し/収納が実現する」原理です。

ここがポイントで鏡筒が直進動している中で「どうして開閉アームもガイドも斜め状なのか?」が理解できていません(笑)

↑それが上の写真で、このヘリコイド (オス側) の内側にストンと落とし込んだ鏡筒を締め付け固定している環/リング/輪っかが3種類あります。左から「鏡筒押さえ環」に「鏡筒締付環」そして最後にフィルター枠をセットしてから固定する「フィルター枠締付環」の3つです (赤色矢印)。

↑上の写真はヘリコイド (オス側) の内側に鏡筒を落とし込んだ後、さらに「押さえ環」を鏡筒の上に被せたところです (赤色矢印)。

↑さらにその上から「締付環」をネジ込んで鏡筒を締め付け固定したところです。「締付環」の下に「押さえ環」が薄く入っているのが分かります。ブルーの矢印で指し示しているのがヘリコイド (オス側) なので、その内壁に備わるネジ山に「締付環がネジ込まれる」ことが分かりますが・・ではここでどうしてワザワザ押さえ環を挟むのでしょうか?

どうして「締付環」でいきなり鏡筒を締め付け固定しないのでしょうか? 何故「押さえ環」の介在が必要なのでしょうか? この点について過去メンテナンス時の整備者は全く理解できていませんでした(笑)

そこで距離環の∞刻印位置ズレの問題から鏡筒の固定位置がズレるので、それをムリに正そうとしたのが「目一杯チカラを加えて距離環を回してしまった」ので、その時に「開閉アームまで変形してガイドから外れた」結果、絞り羽根の2枚に打ち込まれているキーの劣化に繋がっていたのです。

下手すれば最悪の場合「開閉アームが破断」してちぎれてしまい「製品寿命」を迎えかねない所為です(怖)

このように全ての構成パーツのカタチにはちゃんと理由があり、合わせてどうしてそのパーツが存在するのかの根拠もちゃんとありますから、そのような設計者の意図を汲み取りつつ工程を進めなければ適切な仕上がりには至りません(笑)

逆に言うなら「締付環だけで鏡筒を固定したくなかった理由」が設計者にあるからこそ「押さえ環の介在」が必要だったとも考えられるのに、そのような「観察と考察」すらできておらず・・単にバラして逆手順で組み立てれば良いと考えている浅はかで低俗な整備者ばかりが多いのが現実だったりします(笑)

ここまでの解説で述べてきた「???」部分の理由なり根拠が分からない整備者は・・既にその時点で「低俗な整備者の仲間入り」とも言えますね (恥ずかしい)(笑)

↑この後はフィルター枠をセットした後「フィルター枠締付環」で固定すれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ご依頼の転用パーツもちゃんと使いつつ「いわゆるニコイチ」が終了し、光学系の透明感が増してピント合わせも軽い操作性でできるように復活を遂げました!(涙)

・・素晴らしいです!(涙)

↑キズやカビ除去痕が酷かった前玉を交換したのでご覧のように光学系内の透明度が非常に高い状態の個体に変わりました。前述のコバ端問題もそのまま組み込みが終わっているので、鋭いピント面に至っています。

↑ご依頼内容にはありませんでしたが、後玉もコーティング層の劣化が酷かったので転用しています。

↑当初バラす前の時点で絞り羽根の開閉制御が適切ではなかったので (閉じすぎていた) 適切な位置で微調整が終わっています。さらに前述のとおり絞り羽根2枚のキーは劣化が酷かったので (おそらく距離環を回した際にチカラが集中した為に変形) 開閉環と共に合わせて転用していますから、ご覧のようにキレイな円形絞りに閉じてくれます(涙)

↑当初バラす前の時点でヘリコイドが完全固着していましたが、ネジ山が咬んでいた箇所があり、その箇所のみ「さらなる磨き研磨」と「ネジ山の再生」処置で復活させました。

しかし残念ながらネジ山の再生は完全にできないので、その箇所でトルクムラが起きます(泣) さらに塗布したヘリコイドグリースも普段いつも使っているグリース種別とは異なる「最も軽い粘性のグリース」を使っているため、当方の特徴たるヌメヌメッとした「シットリ感漂うトルク感」には仕上げられていません(泣)

あくまでも「トルクムラの低減」と「ピント合わせ時の操作性/軽さ」を重要視しつつヘリコイドグリースをチョイスしたので、シルバー鏡胴のほうの仕上がりと比べれば明白ですが「トルク感が別モノ」です・・申し訳御座いません。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑無限遠位置は2目盛弱 (凡そ1目盛半) ほどのオーバーインフです。マウントアダプタとの兼ね合いや、そもそも距離環を回す時に戻せない点から無限遠位置の前後で微動できず一方通行なのでオーバーインフを選択しました・・申し訳御座いません。

現状軽いトルクですが「距離指標値2.5m〜∞」間でトルクが重く変わります。ネジ山を再生した分もありますがこれ以上改善できません (そもそもネジ山の形状を確認できないので)。そういう専門の機械設備があれば上手く再生できるのかも知れません。

↑当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑装着した「CRX→LMマウントアダプタ」の絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。このモデルの開放f値は「f2.0」ですが、そもそも絞り環を有さないオールドレンズなので、絞り環機構部はマウントアダプタ側に備わっています。

ところがよく勘違いしている人が居ますが、この「CONTAREXシリーズ」のオプション交換レンズ群は全てのモデルで「f値伝達機構が無い」ので、今回のように例え開放f値が「f2.0モデル」でも、マウントアダプタに装着した時点でマウントアダプタ側の絞り環に刻印されている「f1.4」にセットされてしまいます。

例えばちゃんとマウントアダプタ側絞り環を「f2.0」に動かしてからオールドレンズを装着すれば正しく合致しますが、その一方で一度でもマウントアダプタ側絞り環を「f1.4」まで回してしまうと「バチン!」と言う音が聞こえてきて、今度は「オールドレンズ側完全開放 (つまりf2.0)」だとしてもマウントアダプタ側絞り環の絞り値は「f1.4に合っている」状況に変わります。

従ってそれ以降はオールドレンズ側絞り値とマウントアダプタ側絞り環刻印との関係は「f2.0→f1.4」からスタートし「f2.8→f2」さらに「f4→f2.8」・・・・・・以降最小絞り値まで同じ関係のまま続きます。

しかもこのモデルの最小絞り値は「f22」が仕様なのに、マウントアダプタ側の絞り環はさらに網一段分回ってしまうので (マウントアダプタ側の絞り環刻印上はf22だが) 実測すると「ほぼf32レベルの閉じ具合」までオールドレンズ側の絞り羽根は閉じている話に至ります。

これがこのモデルの愉しい処で(笑)、仮に過去メンテナンス時の整備者が適切な組み上げを施していなかった場合「絞り羽根がf32まで閉じる前に咬みあってしまう」現象が起きます。この場合、逆に指摘するなら「そもそも開放f2.0の時に完全開放していなかった」から閉じすぎてしまう話になるのです(怖)

当善男柄東宝では確実に絞り羽根の閉じ具合を簡易検査具ですが使用してチェック済なので、このようにマウントアダプタ側の絞り環が回ってしまい、結果的に「最小絞り値f32」まで閉じたとしても対応できているワケですね(笑)

こんな話はちゃんと「観察と考察」ができていて「原理原則」を理解している整備者なら、何ら難しい話ではなく適切に仕上げてしまいます(笑)

t懇意のとても希少な「オールブラックモデル」は残念ながら過去メンテナンス時の整備者の手によって「台無し寸前状態 (製品寿命) まで追い詰められていた」ワケで・・本当にコワイです!(怖)

・・単にバラして逆手順で組み立てる脳しかない低俗な整備者にかかると全て台無しです(怖)

↑f値は「f5.6」に上がっています。いつも思いますがこのモデルで撮影すると写真の画に「艶が現れる」から本当に不思議です・・おかげでスッカリ虜に堕ちています(笑)

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」まで絞り羽根が閉じていますが、ご覧のようにまだまだ背景にボケがいっぱいです!(涙)・・あぁ〜なんて素晴らしいモデルなんだ!(涙)

↑f値「f22」です。

↑仕様を超えた最小絞り値「f32」での撮影ですが、さんざん見比べても「回折現象」の影響を視認できません・・スゴイ描写能力です!(驚)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。