◆ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Biometar 80mm/f2.8 T silver《初期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理がおわってご終わってご案内するモデルは、旧東ドイツは
Carl Zeiss Jena製中望遠レンズ・・・・、
Biometar 80mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製中望遠レンズ「80mm/
f2.8
」の括りで捉えると累計でちょうど50本目にあたりますが、今回扱ったシルバー鏡胴の「初期型」だけでカウントすると22本目にあたり、後に登場したGutta Percha巻「前期型−1前期型−II」では各2本目のまま、或いはさらに後に登場したゼブラ柄たる「中期型」では10本目のまま、最後のMCタイプ後期型」では14本目のままと言う状況です。

最近は飽きてしまったのもありますが(笑)、市場流通品の劣化が酷い傾向なのでなかなか旧東ドイツ製オールドレンズ達を積極的に扱う気持ちになりません(笑)・・但し、ネット上のサイトを観ると「如何にも旧東ドイツ製オールドレンズは造りがワルイ/粗雑」的に語られている事が多いのですが、それを指摘するなら「ロシアンレンズのほうだろ?」と言いたくなります(笑)

当方の捉え方としては、決して旧東ドイツ製オールドレンズ達の造りが悪くて粗雑など質の問題を指摘する印象を抱いていません。Carl Zeiss Jena製オールドレンズも当然ながら当時のレベルで考えても品質に優劣を感じません。下手すれば旧西ドイツ製オールドレンズの中にでさえ、似たような造りのモデルだって顕在します。

しかし歴然と指摘できるのは「ロシアンレンズだけは設計に対する概念が別世界」と明言できハッキリ言って「まさに質が悪い」としか言いようがありません。但しその背景の中には、当時の工業品技術として国柄と言うか地政学的にも摂氏40度以下と言う極寒の地域を内包するが為に、金属凍結の対策が必須で、特に内部に塗布するグリースはヘリコイドグリースに限らず「特異な油成分の配合」とも言える特殊グリースを使わざるを得ず、合わせて内部構造面でも複雑化が進めにくい問題もあったのだと考えています (つまり単なる設計の問題や工業技術面の問題として一括りに片付けられない)。

その一方で2000年代まで相変わらず1950年代頃の設計を引き継ぎつつ、何ら改善に挑戦しない思考回路と言うのは「ロシア人気質」的な感覚を覚えるものであります(笑)

それは話の方向性が少々違いますが(笑)、1976年9月6日に北海道の函館空港に当時の旧ソ連空軍戦闘機「MiG-25P」が強行着陸し、登場していたヴィクトル・ベレンコ中尉が亡命した事件があった時から既に認識していました(笑)

当時強行着陸したミグ戦闘機が解体されて米軍に引き渡された時、何かの番組で解体された機体や操縦席の画を観ていて「モロにボルトやナットが丸出し状態」と言うとても粗雑な造りにオドロキと共に呆れたのを覚えているからです(笑)

何かの記事で読んだ記憶がありますが、当時の旧ソ連軍戦闘車両なども登場していて注意せずに素手で触っていると、フツ〜にケガをするくらい鋭利だったりするようです(怖) そんな記憶があったので、ミグ戦闘機の解体した画像を見ていてミョ〜に納得できてしまったのです(笑)

そう言う意味で当方にとり「ロシアンレンズは粗雑」との認識が拭えないワケです(笑) 従ってそれに比べれば旧東ドイツ製オールドレンズ達の造りなどは「むしろ良さげでない?」とか、ミョ〜に感じ入ってしまうほどです (全て実際にバラした時の自身の感想)(笑)

  ●               

今回の解説では少々趣向を変えて、今回扱ったモデルの実装光学系の原型についていろいろ
調べてみたいと思います。と言うのも、昨年来久しぶりにBiometar 80mmを扱いましたが、相変わらず素晴らしい画を吐き出すオールドレンズだと、改めて感心したからです(笑)

焦点距離が80mmなので間違いなく中望遠レンズ域に入るオールドレンズだとは思いますがその用途はポートレートレンズだけに留めるにはもったいないほどに「さすが中判サイズ向けだけはある (イメージサークル)」とミョ〜に納得できたからです (そんなオールドレンズを35mm判で使ってるからの話ですが)(笑)

今回扱ったモデルBiometar 80mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』は筐体がシルバー鏡胴なので「初期型」になります。4群5枚と言う簡素な構成枚数の光学系が実装されていますが、巷では「ビオメター型」とか「クセノター型」と呼称されているようです。当方は歴としたニッポン人なので、ボルトガル語やロシア語 (キリル語) 圏のような「ビオメタール/クセノタール」と語尾のR発音を強調/誇張した発音では呼びません(笑)

昔に、ディーラーと英語で会話していた際に、光学系構成名をRを誇張的に発音したコトバで話していたら、相手は当方がポルトガル語圏に住んでいた日本人だと信じ込んでいたらしく、そんな話を数人から聞いて「◉◉◉ール」との発音を一切やめてしまいました (恥ずかしい話なので/人によっては東部系ロシア人だと思い込んでいた場合もあった)。それ以来このモデルの光学系を指して「クセノタール型」構成と呼んだり書いたりしなくなりましたね(笑)

今でも不思議に思いますが、例えば日々凄惨な前戦の戦況が伝わる「Ukrain」を指して「ウクライナ」とニッポン人は平気で言いますが、ラテン語/英語圏では「ユークレイン」と発音しているように思います。「ウクレイン」とも発音しないように思いますが・・どうしてニッポン人は何事も「ローマ字読み/表記」したがると言うか、平気でそれで相手と会話しようとするのでしょうか (場によっては相手に失礼になる)?(笑)・・と言いながら、実はこのブログページでも平気で冒頭に掲げていますが、きっと皆さんにちゃんと伝わらないのである意味仕方なく的な感じだったりします(笑)

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い、逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

ビオメター型/クセノター型光学系構成と近年は呼ぶそうですが、この光学系設計の原型は、実は旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaではない英国の発案を引き継いでいるとみたほうが良さそうです。。

今回気になって、初めていろいろ調べてみましたが、何とも複雑と言うか紆余曲折がバックにあるストーリーなのが見えてきました(泣)

この光学系設計の原型は英国は「Wray Optical Works Ltd. (レイ光学研究所)」の登録パテントで「4群5枚ユニライト型構成」のようです。ガウス型 (後のダブルガウス型構成) の光学系前群に対し、トポゴン型構成の基本成分の特徴を多分に有する光学系後群の合体作とも言えるような、ある意味良い処取りしたような光学系らしいです。
(右構成図はパテント登録申請図よりトレース/Unilite)

そもそものパテント登録は、実はドイツではなくて英国で終戦直前たる1944年にWray Optical Works Ltd. (レイ光学系研究所) の「Charles Gorrie Wynne (チャールズ・ゴーリー・ウィン)」氏の開発として英国でパテント登録申請され、翌年1945年2月7日に許諾されています。今回トレースした上の右構成図は左申請書のFIG2.から採っています (左パテント登録は米国パテント登録内容から転載)。

チャールズ・G・ウィン氏は英国のイングランド島レスターシャー州の生まれで、オックスフォードのエクセター大学に在籍中に肺結核に遭い中退後、同じく英国はTaylor, Taylor & Hobson of Leicester (テイラー・テイラー&ホブソン・レスター) に入社し、1943年にはロンドン南方に位置するケントの「Wray Optical Works Ltd. (レイ光学研究所)」に移ります (〜1960年まで在籍)。

入社後僅か1年足らずで数多くの光学設計を手掛けパテント登録申請しています。

この原型たる「Unilite型構成 (ユニライト)」を基に継承したのが旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaによる設計で今回のモデルの光学系として開発されているようです。

そこで謎多きストーリーが露わになりますが、それはこの光学系「Unilite型構成」の話ではなく、この光学系の設計を実装した標準レンズ「London Wray Unilite 50mm/f2 (M37)」の装着先である
一眼レフ (フィルム) カメラ「WRAYFELX I型 (レイフレックス)」に
於ける開発/登場ストーリーです。

1947年に英国でパテント登録された「WRAYFLEX I型」は、アイレベルのペンタプリズムビューファインダーを装備し、インスタントリターンミラー、TTL測光方式を採り入れた内蔵式ゼンマイ式モータードライブを実現した非常に斬新なフィルムカメラだったのです。
(1950年7月10日米国登録)

ところがこのフィルムカメラのパテント登録時に記載があった人物の名前が物議を醸しています。「Maurice Eyre Persse Studdert (モーリス・エア・パレス・スタッダート)」氏による申請名になっていますが、この人は終戦後もベルリンに駐在し続けていた (旧西ベルリンの英国統治区域内の話) 英国海軍砲術欧州軍司令官なのです。

スタッダート司令官はドイツ語にも堪能で、特に戦後すぐの旧東西ベルリンに於けるドイツ系難民とのコネクションにも積極的に参画していたようで、実は彼の有名な「ハリー & ワーナー
・ゲーベル兄弟
」(ネット上では時々ナチス政権の高官だったJoseph Goebbels/ヨゼフ・ゲッペルスの姓と混同されがちに語られている) と繋がりがあったようなのです・・と言うのも、スタッダート司令官は英国はデボン州キーハムの王立海軍工科大学に19歳で入学し中尉として海軍に所属しています。後の1949年までに自らの砲術経験を活かし2つの兵器開発を行っていますが、少なくとも斬新な機構を内包した前述のフィルムカメラを開発する能力は無かったと指摘されています。

そこで登場するのが当時のZeiss Ikon製一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAX Dシリーズ」の機構部にも引けを取らない設計/開発が可能だったと揶揄され続ける若き「ハリー & ワーナー・ゲーベル兄弟」が登場し、彼らとの繋がりでパテント申請など表舞台にはこの兄弟名が一つも現れないものの、旧東ベルリンではない旧西ベルリンで生活できていた側面に、ネット上で騒がれている裏のストーリーがあるのではないかといろいろ囁かれているようです(笑) ちなみにスタッダート司令官は1951年3月7日に亡くなり、英国キロッテランの聖ピーターズ教会墓地に葬られています。元々アイルランドの家系だったスタッダート家は17世紀まで遡り、イングランド島カンバーランドの地主の家柄で、バンラッティ城まで所有していたと言うから相当な名家の生まれですね(笑)

なかなか背景を調べるだけでも大騒ぎでしたが(笑)、光学系構成の話から一眼レフ (フィルム) カメラにまで飛び火してしまい、しかも申請者名が英国海軍の欧州軍司令官の1人となれば「???」になり、とうとうこんな事になりました(笑) そもそも終戦後すぐに戦前ドイツの特許権が連合国軍に剥奪されたのが複雑な背景を生む元凶で、旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaも当時すぐのBiometar光学系のパテント登録申請に紆余曲折があったようです (英国だけで当時戦前ドイツ特許を17万件も戦時賠償の一環として得ていた)(泣)

最後に、この「4群5枚のユニライト型光学系構成」の中で、後群側第3群の凹メニスカスの厚みがあると中判〜大判向けになり、反面今回のBiometarのうよに薄くなると35㎜判あたりに適する設計に容易にすげ替えできる優れモノらしいですね(驚) そう言う解説をしてくれると当方のような光学系ドシロウト人間にもス〜ッと入り易くて助かります (もちろん光学系はその都度再設計になるが)!(笑)

なお某有名処ではレンズ銘板などに含まれる「zeissの」刻印をシングルコーティングと案内していますが、当方での認識では戦前Carl Zeiss Jenaが当時開発した単層膜コーティング層蒸着パテントは1935年で、戦争突入直前の1939年時点では複層膜コーティングたるモノコーティングとして「zeissの」が特許登録されていると認識しています。ちなみにCARL ZEISS JENA DDR時代を越えてレンズ銘板に刻印している「T*」は多層膜コーティング層蒸着を意味しマルチコーティングですね (1972年特許登録)(笑)

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型:1950年〜1958年
コーティング:モノコーティング (後に刻印省略)
絞り羽根枚数:12枚 (最小絞り値:f16)
絞り方式:プリセット絞り機構装備
最短撮影距離:80cm
筐体:クロームメッキ (シルバー鏡胴)

前期型−Ⅰ:1958年〜1963年
コーティング:モノコーティング (刻印省略)
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:クロームメッキ+Gutta Percha 凹凸エンボス

前期型−Ⅱ:1962年〜1965年
コーティング:モノコーティング (刻印省略)
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:ブラックGutta Percha 凹凸エンボス

前期型−Ⅱ:1962年〜1965年
コーティング:モノコーティング (刻印省略)
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:ブラックGutta Percha 凸突起

中期型:1965年〜1970年
コーティング:モノコーティング (刻印省略)
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:ブラックゼブラ柄

後期型:1971年〜1981年
コーティング:マルチコーティング
絞り羽根枚数:8枚 (最小絞り値:f22)
絞り方式:自動絞り
最短撮影距離:1m
筐体:ブラック鏡胴

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はBiometar 80mm/f2.8 silver《初期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。

上の完全解体した全景パーツ写真をチェックすればすぐに分かりますが、内部の構成パーツはそのほとんどが「ブル〜系のメッキ加工塗色」です。このようなブル〜系のメッキ加工塗色で造っていた当時の製産工場は、実はCarl Zeiss Jenaの母体工場ではなく、外部の製産工場になり吸収合併してきたいずれかの光学メーカーの工場を引き継いで利用していたとみています。

逆に言えば、当時のCarl Zeiss Jena母体工場が最終的に1989年11月の「ベルリンの壁崩壊事件」まで稼動し続けていた唯一の工場ですが、そのメッキ塗色は同じ「Biometarシリーズ」でも、モデルバリエーションの相違を越えて「常にパープル色のメッキ加工塗色」だったので、バラすと本体の母体工場での生産出荷品なのか、外部工場の生産品なのかが判明し、合わせて当時の増産体制と共に一部パーツの独自設計が一任されていたのも納得できると考察しています (外見上は同一品に見えてもバラして完全解体すると一部構成パーツの設計が違うのが分かる/当然ながらメッキ加工塗色の色が違う/但し鏡筒周りの構成パーツに限っては母体工場から供給されていたモデルが一部に顕在)。

それは「製造番号の事前割当制」を執っていた為に (その根底は当時の旧ソビエト連邦からの指導による産業工業5カ年計画に基づく概念による) 各工場での製産後の出荷タイミングで事前に割り当てられていた製造番号をシリアル値で付番させていた為に、後になって「製造番号を基に一列に並べると、何と新旧モデルが入り乱れて混在してしまった」その理由が説明付けられます。

それに合わせて内部構成パーツのメッキ加工塗色を手繰っていくと「オリーブ色メッキ加工塗色の外部製産工場 (シルバー鏡胴モデルの製産を最後に消滅)」の他、今回のような「ブル〜系メッキ加工塗色の外部製産工場 (ゼブラ柄までのモデル製産の後に消滅)」そして最後まで生産し続けた巨大なCarl Zeiss Jenaの母体工場「パープル色のメッキ加工塗色の本体工場 (黒色鏡胴時代まで続けて製産)」との「3色のメッキ加工塗色に分かれると同時に、それら外部工場の消滅時期が見えてきた」のが、当時の旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製オールドレンズを完全解体してきた各モデルの変遷を辿った時の「当方に於ける最終考察」です。

従って今回のこの「Biometar 80mm/f2.8」を製産していた外部工場は、そのすぐ後の時代に世界規模で流行った「ゼブラ柄モデル」でも数多くのモデルを製産出荷していましたが、黒色鏡胴時代に入ると一つのモデルも現れないので消滅したとみています・・それ故「ベルリンの壁崩壊事件」勃発時点でのCARL ZEISS JENA DDRが抱えていた従業員数が,4万4千人と言う旧東ドイツの中で唯一たる巨大光学メーカーにまで膨れあがっていたのだとみています (既に1961年から深刻化し始めていた旧東西ドイツの経済格差を鑑みれば相当に厳しい経営だった事が伺えます/人民所有企業体系たるVEB体制←旧ソビエト連邦が誘導した国家体制とその概念)。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。当初バラす前の実写チェック時点よりも僅かですが鋭いピントに改善しています (ちゃんと改善した根拠と言うか理由が在る)。その反面で距離環を回すトルク感は正直なところ当初のバラす前とはほとんど変化していないような印象です・・トルク感のヌメヌメッとしたシットリ感漂うトルクの印象は大きく違いますが、基本的なトルクの重さについては、残念流れ等ヘリコイドのオスメスネジ山の長さに起因する為、これ以上軽めに仕上げるにはグリースを相当選ぶ必要があると言うのが、現状の当方判定です
・・申し訳御座いません。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

当初バラす前にちゃんと実写確認して、且つ無限遠位置もチェック済ですが、オーバーホール/修理が完了した組み上がり後は「光学系内に着色されていた反射防止黒色塗料を徹底的に除去した」のが功を奏して「本来の光路長に戻った」が故に、ピント面の鋭さ感が (本当に僅かですが) 鋭く変わった感を抱きます。

無限遠位置の実写確認時は、遠方に建っている住宅の「外壁タイル」の細かさをチェックする事でピント面の鋭さ感を調べているので、バラす前後で多少の変化だけでも違いが見てとれます。

今回の個体では特に光学系内の第1群前玉と第2群の貼り合わせレンズの間に挟んでいる「シム環」の光路長に影響を来す直進方向に反射防止黒色塗料の塗布による厚みがあったのを溶剤で落としているからです。

同様後群側の第3群と第4群後玉との間に挟んでいる「シム環」も全く同じで直進方向での塗膜の厚み分が減った分、影響が現れてピント面が鋭く変わりました・・その意味では何か手を加えた話では一切なくて(笑)、単に溶剤で塗膜を溶かして除去しただけですから「たいした事をヤッている話ではないのに大袈裟に書くな」とのお叱りを頂戴するのも致し方ないところです (時々そう言う内容のメールが着信しているので)(笑)

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

↑後群側も薄いクモリが皆無です。当初のご依頼内容が「後群側の薄いクモリ」との事でしたが、残念ながら当方が視認チェックした範疇では (ちゃんとLED光照射して確認してますが)「薄いクモリ」と判定を下すほどの本格的なクモリは全く帯びていないと思います。

その反面、確かに光学系前群/後群共に「気泡」は大小微細なモノまで含めて少々多めの印象なので、その分の影響もあるのかも知れませんね・・しかし写真に影響が残るとすれば、むしろこの「気泡」が玉ボケなどの場合に写り込むので、中心までキレイにトッロトロボケするような玉ボケを期待するとその時に引っかかる要素かも知れません(泣)

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

↑12枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環や絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。当初バラす前よりも多少はプリセット絞り機構部のガチャガチャ感と言うか、硬さを改善させています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑「黄褐色系グリース」を塗布していますが、そもそもヘリコイドのオスメスネジ山長がとても長いので、根本的なトルク感の重さが改善しようがありません(泣)・・申し訳御座いません。

但し当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う操作性はちゃんと最大限残してあるつもりです。また筐体外装のシルバー鏡胴は全て「ピッカピカ」に磨き上げてあるので、ハッキリ言って触った時の指の指紋の痕すら気になるレベルです(笑)

もしも例を挙げるなら、上の写真 (4枚) で筐体外装のアルミ合金材の「金属質は決して縦方向ではない水平方向にヘアライン状に視認できる」点に於いて、製産時のアルミ合金材の切削手法/材の使い方がちゃんとこれだけでも伺える話に至ります(笑)・・そう言う話を知ると、またそれはそれで「所有欲がさらに充たされる」のがオールドレンズ沼にドップリ浸かっている人達の愉しみだったりしますね (楽しいです)!(笑)

筐体外装のアルミ合金材はちゃんとアルマイトではない「光沢研磨」で、且つプラスして最後にもう一度仕上げ工程の「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。このような輝きを残す処置がちゃんとあるので (昔家具専門店に勤務していた頃に職人直伝で教わったからできる) 光沢研磨剤などの薬剤を使ったり、或いは電解質により電極を介在させて溶かしたりなどヤバい事柄は処置していませんから大丈夫です (特にアルミ合金材の構成パーツに対して、自動車関係の研磨手法も頻繁にネット上に案内が出てきますが、人が直接手に触れて使う工業製品の筐体外装には向いていないメッキ加工塗色に於ける話なので、それらを混同し同一視すると痛い目を見ます)(笑)

そう書くと、今度は「ウソを書くな! どうして家具屋で金属の磨き方を教えているのだ?」とある意味誹謗中傷にも取れそうなヤバい内容のメールが着信しますが(笑)、そもそも「家具木材」との思考回路になっている時点でドシロウト感覚丸出しです!(笑) 材質が木材だろうが金属だろうが本革だろうが関係なく、それぞれの材質に対する「磨き処置の工程」と言うのはいろいろたくさんある為、それら材の違いに従い適切な処置を施しているだけの話です(笑)

例えば同じ金属でも旧西ドイツ側のオールドレンズなどに多くみられる「薄い塗膜のメッキ加工 (黒色鏡胴の話)」は、そのメッキが光沢だろうが鈍い艶有りだろうが関係なく、配合成分の問題で相当研磨に弱いので、ちゃんと注意して専門の磨き入れをしないとヤバいワケです(怖)

・・従って「家具=木材」との認識は全く以てナンセンスな話ですョねぇ〜(笑)

なおフィルター枠周りの外壁部分が当初バラす前の時点では「過去メンテナンス時に黒色着色していた」為、その塗膜が一部剥がれてきていて汚かったので (あばた状に凹凸がある) 全て剥がして「磨きいれ」が済んでいます (それでキレイになって写っている)。

その着色の塗膜厚み分が影響して、当初バラす前時点で心持ちプリセット絞り環の動きと共に絞り環操作で抵抗/負荷/摩擦を感じていましたが、全て剥がしたので現在はとても素晴らしい操作性に仕上がっています (むしろワザと故意にトルクを与えてシッカリ操作できるように仕上げてあります)(笑)・・どうと言う話ではありませんが、こう言う一つ一つの仕上がりが最終的な撮影時の「純粋に撮った写真に対する期待値に胸を膨らませられる要素にも大きく影響」していたりするので、あながち決して蔑ろにはできない要素でもあり、詰まるところ「どんなに一生懸命整備してもその有難味/甲斐は撮影時にはいとも簡単に忘れ去られる要素に代わってしまう」のが整備者の運命/宿命だったりしますね(泣)

せいぜい良く見積もっても、撮影が終わり帰宅してからの晩酌で、整備したオールドレンズ達が酒の肴になって初めて「あぁ〜きっと甲斐があったんだなぁ〜」(涙)と感じ入られる程度で
・・そういうとっても心お優しい方々だけが (本当に有難くも) 当方宛にオーバーホール/修理ご依頼を賜って頂いている流れであり、それに対し毎日毎日感謝の念しか無いに決まっています!(涙)

現役時代は本当にいろいろパワハラやイジメに遭いましたが(涙)、いまは皆様のおかげで本当に平和で心穏やかで幸せな日々を過ごさせて頂いています・・ありがとう御座います(涙)

↑本来ならご報告する瑕疵内容無し・・になるところですが、それはあくまでも当方の最終的な (自ら納得した上での) 根拠がちゃんとある仕上がり状況なので、例えば「いや、このトルクはダメでしょう!」とか「いや、これは薄クモリでしょ?!」とかご不満/ご納得頂けない要素が在れば、以下の手法でご請求額から減額下さいませ。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

当方にご依頼頂ける皆様は、本当にお心お優しい方々ばかりなので(涙)、今までの12年間で「無償扱い」したご依頼者様は数人レベルに留まり、しかもそれら「無償扱い」した全ての人達が某国人と思しき (普通の口語調での日本語を正しく語れない人達) 方々だったので、いつも皆様には本当に感謝の想いしか御座いません!(涙)・・ありがとう御座います!!!

↑一応いつもの事で申し訳御座いませんが、日本製マウントアダプタに装着して一切問題が起きない事を確認済です。上の写真赤色矢印で指し示している箇所の隙間は「マウントアダプタ側にオールドレンズのマウント面の開放測光用突出を避ける1㎜ていどの出っ張りがある」為で製品の仕様で・・つまりちゃんと最後まで「M42マウント規格のネジ込みが終わっている」事を示しています。

↑さらに同様今度は中国製K&F CONCEPT製マウントアダプタでもチェックしました。同じようにマウントアダプタ側の仕様として赤色矢印の箇所に隙間が空きますが、ちゃんと最後までネジ込みが終わっています。

この状態で日本製マウントアダプタも含め共に無限遠位置は「僅かなオーバーインフ状態で目盛∞手前の20の右横辺り」としてセットしています (つまり1目盛分もオーバーインフにはなっていない)。

↑さらに今回のご依頼で合わせて同梱頂きましたK&F CONCEPT製「M42-LMマウントアダプタ」のほうも、ご指示に従い「ピン押し底面無しでも正常使用できるよう処置済」です。上の写真右横に並べて撮っているのが「製品の仕様上で内側に本来入っているピン押し底面の凹面側」で、この凹んでいる深さ「0.4㎜分」で自動絞り方式のマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」の押し込み操作時のトラブルを回避できます(泣)

・・マジッでこれだけの話ですがメチャクチャこのピン押し底面の凹みがありがたい!(涙)

↑マウントアダプタのほうは一つ前の写真と何一つ変わりませんが、右横に並べた取り外している「ピン押し底面」をひっくり返して、今度は平面側で撮影しただけです(笑) オールドレンズのマウント面から飛び出ている絞り連動ピンの押し込み量が足りない場合に、例えば「絞り羽根が最小絞り値までちゃんと閉じない!(泣)」なんて言う時は、ピン押し底面をこちらの「平面側」に入れ替えてあげると正常に絞り羽根が開閉してくれるかも知れません (結構意外とこれだけでちゃんと動いたりするから堪らない!)(笑)

今回の処置はこれらピン押し底面を取り外した状態でも使えるよう処置しており、特に古い (シルバー鏡胴モデルの)「M42マウント規格」品で、ネジ部の先にまだ突出が在るモデルなんかの時に、これが涙が出るくらいありがたかったりします (あくまでも当方だけの感想です)。

・・削ったりとかするのがヤフオク! で流行ってますがちゃんとピン押し底面を戻せます(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離80cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

簡易のフード代用品を前玉直前に当てがって撮影しているので引き締まっていますが(笑)、フード未装着だとフレアが相当出てくると思います (フードの長さは凡そ30㎜ほど)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」になりました。まだまだ「回折現象」の兆しすら見えません・・素晴らしい描写性能です!(涙)・・改めて惚れ直しましたね!(笑)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。ご依頼分の3本全ての作業が完了し、本日まとめて梱包し発送させて頂きました。どうぞよろしくお願い申し上げます。