◆ VOIGTLÄNDER (フォクトレンダー) COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》 (G)(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わってご案内するモデルは、旧西ドイツは
VOIGTLÄNDER製標準レンズ・・・・、
COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》() (M42)です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホールでご案内する個体は当方がオーバーホール作業を始めた11年前からの累計で、当時のVOIGTLÄNDER製標準レンズ「COLOR-ULTRON 50mm/f1.8」の括りで捉えると、累計で59本目にあたりますが今回扱った個体「前期型」だけでカウントすると36本目であるものの「反射させる角度によってはグリーンの光彩を放つ光学系の個体」だけでカウントすると僅か10本目です。

今回オーバーホール済でご案内する個体は「オーバーホール/修理ご依頼分」にて承りました。

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なお、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」ここで述べている事柄
/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。

従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。

ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。

そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は御座いません)。

今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。

ご指摘事項は・・・・
   出品者のひとりごと・・・・pakira3kara@pakira3.sakura.ne.jp
までお知らせ下さいませ。

・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。

  ●               

旧西ドイツのRollei社から1970年に発売の一眼レフ (フィルム) カメラ「Rolleiflex SL35」用セットレンズとして用意された標準レンズCarl Zeiss Planar 50mm/f1.8 SL (QBM)」が今回扱ったこのモデルのスタート地点を示すオールドレンズとの認識です。COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》() (M42)はその派生型になりVOIGTLÄNDER向けOEM製品と考えられます。

どうしてRollei製フィルムカメラのセットレンズに当時のZeiss IkonからCarl Zeiss銘のPlanarが供給され、且つVOIGTLÄNDERにもOEM供給されたのか? この3つの会社の繋がりを知るには当時の背景が分からなければ掴めません。

【当時の背景について】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 Voigtländer (フォクトレンダー)

1756年にオーストリアのウィーンで創業したVoigtländer社は、その後1849年にドイツのニーダーザクセン州Braunschweig (ブラウンシュヴァイク) に移転し工場を拡張しています。戦後イギリス統治領となった旧西ドイツのブラウンシュヴァイク市でフィルムカメラなど光学製品の生産を始めますが、日本製光学製品の台頭により業績は振るわず、ついに1969年Zeiss Ikon (ツァイスイコン) に吸収されます。しかし1971年にはそのZeiss Ikonもフィルムカメラから撤退したため1972年にはブラウンシュヴァイク工場の操業が停止しました。その後、商標権はRolleiに譲渡されています。

 Rollei (ローライ)

1920年にドイツのハンブルクで創業したRollei社はフィルムカメラの生産を主として、旧西ドイツのCarl ZeissやSchneider Kreuznach社からレンズの供給を受けていました。1970年にフィルムカメラ「Rolleiflex SL35」を発売し、Carl Zeiss製標準レンズ「Planar 50mm/f1.8 (QBM)」などをセット用レンズとしていましたが、1972年に生産工場が操業停止したため、Voigtländer社の商標権譲渡も含め自社のシンガポール工場へと生産を移管しています。

その結果1974年に発売されたのがVoigtländer製フィルムカメラ「VSL1」から始まるシリーズ (〜VSL3) で、セット用標準レンズとして今回のモデル『COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 (M42)』が発売されました。
従ってマウント種別は従前の「QBM (Quick Bayonet Mount)」の他「M42」マウントのタイプも存在しているワケですね。

時代背景と共に各光学メーカーのポジショニングを踏まえるとこのような流れになります。

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった要素を示しています。
※Rolleiflex SL35用Carl Zeiss製「Planar 50mm/f1.8」からの展開として掲載しています。

前期型

レンズ銘板刻印:Carl Zeiss銘 SL型「Planar 50mm/f1.8
生産工場:旧西ドイツCarl Zeissブラウンシュヴァイク工場
コーティング:アンバーパーブル

中期型

レンズ銘板刻印:Made by Rollei SL型「 Planar 50mm/f1.8
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:アンバー

後期型

レンズ銘板刻印:Made by Rollei「Planar 50mm/f1.8
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:アンバーパープル

COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》」
製造番号:230xxxx〜
レンズ銘板刻印:VOIGTLÄNDER
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:パープルアンバー/パープルアンバーグリーン


COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》」
製造番号:231xxxx〜
レンズ銘板刻印:VOIGTLÄNDER
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:グリーンパープルアンバー

COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》」
製造番号:232xxxx〜
レンズ銘板刻印:VOIGTLÄNDER
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:パープルアンバー
 

COLOR-ULTRONはシンガポール工場での製産が スタート地点のように見えますが実際は旧西ドイツのブラウンシュヴァイク工場で製産された個体が存在しておりVOIGTLÄNDERへのOEM供給は1970年の時点から既にスタートしていたと考えられます。
つまり製産工場を軸として捉えると製産時期が見えてくるワケです。
(右写真は1962年当時のブラウンシュヴァイク工場)

派生型としてIFBAFLEX用セットレンズである「IFBAGON 50mm/
f1.8
(M42)」も存在しますが生産数が非常に少なく稀少品です。

単にレンズ銘板をすげ替えただけのようなので内部構造も構成パーツも全く同一だと推測しています (今まで扱い無し)。

さらに上位格モデルとして開放f値「f1.4」の以下2種類が存在します。

左側のモデルは「Carl Zeiss Planar 50mm/f1.4 (QBM)」で旧西ドイツ製ですが、右側モデルは「VOIGTLÄNDER COLOR-ULTRON 55mm/f1.4 (QBM)」になり日本製です。取り扱いがまだ無いので日本製モデルの製産メーカーは不明ですが、当時「Rolleinarシリーズ」を富岡光学がOEM生産していたので富岡光学製ではないかと踏んでいます。

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
今回久しぶりに扱ったので、改めて実写をチェックすると今さらながらにそのポテンシャルを確認できたので少し多めにピックアップしました。光学系が6群7枚の拡張ガウス型なので真円のシャボン玉ボケを維持するのが難しく、中心部から外周に向けて円形ボケは歪なカタチへと変移していきます・・が然し、十分に繊細なエッジを伴う美しいシャボン玉ボケが表出し、そしてそのエッジが細いからこそ「誇張感が薄れて違和感に繋がらない自然さが好き」との印象が残ります。これが如何にも輪郭的な表現性のエッジになると、表出したシャボン玉ボケや円形ボケの類は「煩い」受け取り方へと変わるので難しいです。

さらにシャボン玉ボケ (真円/歪の別なく) が溶けて滲んでいくと、その繊細なエッジに合わせて内側も透けていくので (溶けてのッペリするのでは無く透けていく) それが画の被写体や中心的領域に対して悪影響を来しにくいとの判定です・・なかなか上品な溶け方をしていきます。

二段目
ここでは今度は円形ボケがさらに滲んで収差ボケの影響が色濃く表れてきた時の実写をピックアップしました。同様収差ボケの表出も品が良いと言うかギラギラと目立ったりワサワサと誇張感が強かったりしないので、控え目な分収差の影響を大きく受けていても「ヘタするとそのまま/むしろ背景効果的に使えてしまう」的なニュアンスまで現れるからステキです。その意味で「二線ボケ」も一般的な二線ボケとしてよりも「透けたようにズレている」のが使えそうなくらいです(笑)

三段目
この段では敢えて「赤色の発色性」に絞ってピックアップしました。色飽和せずにどの程度の耐性があるのか見たかったのです。どの実写も色飽和しないので、ちゃんと「赤色の違い」を写し込んでいるのが素晴らしいです。おそらく赤色でこれだけ機敏に反応するなら、他の色合いにも細かく対応できるのではないでしょうか。

四段目
ここでは被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さをチェックしています。誰もが認めてやまない兄貴分の凹Ultronの系統/血統を引き継ぐ事からしても当然の如く「質感表現能力が相当高い」のが分かります。当方は猫がダメなのですが、この写真を見ただけで猫の毛が飛んでくるような気持ちになるからヤバいです(笑) 他鳥類の産もう表現も本当によく整っています (ノッペリしていない)。同じ事が今度は金属質やガラス質にも当てはまるので、このモデルの質感表現能力の高さは相当なレベルと評価しています。

五段目
被写界深度の狭さ/薄さ感をピックアップしています。開放f値「f1.8」なのでたいしたことないのですが、それでも前述の滲み方の特性と合わせて「狭くないのに/薄くないのにそのように魅せつつも実はシッカリ被写体を相応な領域で捉えている」のが、あくまでも自然に受け取られるからこそ違和感に繋がりません。確かに開放f値「f1.4」や「f1.2」クラスからみれば全く以て足りないレベルなのでしょうが、被写体を残せている分、画が訴えるチカラは相応に写し込めるのが使い易さに繋がると思っています。その意味でヘタに被写界深度が狭すぎると/薄すぎるとイザッ撮影に臨んだ時に使い辛さ感が頭を過ります。

六段目
ここら辺りからこのモデルのクライマックス/魅力に肉薄していく実写を集めています。まずは何と言ってもダイナミックレンジの広さがハンパないので、ご覧のように暗がりの暗部耐性が相当高く、滅多な暗がりでは黒潰れしません (いわゆる何もかも真っ暗な領域にまとまってしまうとの意味合い)(驚) 夕暮れ時の街並も刻々と暗くなっていく夕焼け方向の街並が (夕焼けの明部に対して) 黒く染まっていかないのがたいしたモノです。また何の花なのか知りませんが、日が暮れた後のライトアップされた「紅色の花」がその場所によってライティングの光の影から「ちゃんとグラデーションを残して写っている」のが凄いのです(驚) 同じ事が3枚目の実写にも当てはまり、朝焼けなのか夕焼けなのか不明ですが、暗がりの中の「丈が短い植物の生い茂りにちゃんとその濃淡が残されている」のです!(驚) 一番右端の写真も玉ボケ状に遠方の光が写りますが、その反射防止黒色塗料のグラデーションさえもちゃんと海面の違いとして残せている始末です!(驚)・・どれも素晴らしいです。

七段目
この段では今度は光源が写真内に入っている場合の「その光源の表現性」についてチェックしました。左端は夕焼けの太陽の明るさが白飛びしていますが、それでも逆光耐性が高いのでメインの娘さんのピント面に対して何の影響も出ていません (太陽の側をスパッと削除しても使えてしまう写真)。他の光源も電球部分が白飛びすれども他の要素に対してはちゃんとグラデーションを残せているので、やはり明部に対する耐性能力が高いのではないかとみています。

八段目
ここでようやく逆光耐性を調べていますが、もぉ〜これは見たがままです!(驚) 当方はここまで逆光に強いオールドレンズをあまり知りませんがキッチリ写し込めているのが素晴らしいです。

九段目
ここでは当方がこのモデルの魅力に憑かれてしまった要素でピックアップしていますが「空気まで写っている」オールドレンズの存在を初めて知ったのがこのモデルでもあります。左から2枚目のビル内の写真を観た途端に当方の琴線に触れてしまい瞬時にこのモデルの虜に堕ちました(涙) 当方のデータベースを調べると、この実写を観た辺りから「COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL」の扱い数が一気に増えています(笑) 他にも数枚品時ビル内の写真がありますが、こういうビル特有の「臭い」まで鼻に憑きそうなくらいに、リアル感タップリな「淀んだ重い空気の感じ」に圧倒されたのを今でも覚えています。そもそも「空気まで写す」と呼ばれたのがライカ製レンズだったのを知らない当方には、このように空気を写し込んでしまうオールドレンズの存在に今ドキのデジタルなレンズには無い何かを感じ取った一瞬でもありました (要はカメラ音痴でレンズ音痴丸出しという話)(笑) 3枚目のスマホも、手前の前ボケしているお皿にナプキンが無造作に乗っているので、既に食事が終わっているのが伝わります。スマホが着信音を鳴らしているのか分かりませんが、その場の雰囲気と共に陽射しさえも感じ入る美しい写真です。最後の右端は水面の緩やかな波紋とは裏腹に何だか意味不明なくらいに緊張感を感じる不思議な写真です(笑)

十段目
この段では人物写真/ポートレートをピックアップしていますが、何も言わず見せたらこれらの写真が標準レンズを使って撮られたとどのくらいの人が言い当てるでしょうか? まるでポートレートレンズを使っているが如く素晴らしい描写です。単にリアルさだけで終わらずに、繊細感も柔らかさもグラデーションの滑らかさまで含むからこう言う安心して観られる人物写真が撮れるのでしょうか・・写真スキル皆無な当方には全く理解できていません(笑)

十一段目
なかなかこの段まで数が増えませんが(笑)、さすが大のお気にレンズなので気合い入りでピックアップしています(笑) 前述の「空気まで撮る」要素と合わせて、いえむしろこちらの「グラデーションの滑らかさ」のほうがこのモデルを気に入った本当の要素だったのかも知れません。

当方は基本的に今ドキのデジタルなレンズで「これでもかと緻密で情報量いっぱい!」の写真を観ていると目が痛く感じますが(笑)、このモデルで撮った実写を観ていると情報量がどんなに多いと感じても「瞳に優しい」が故に、素直になれて魅入ってしまうのが堪らないのです。

グラデーションが滑らか」と言うのは色や階調の濃淡の中で、その境界が目立たずに大変滑らかに表現できるからこそ「美しく見える」のだと自分なりに評価していますが、このモデルはその意味でとても安心して眺めていられます。余計な事柄を一切考えずに済むので「観たがままに瞬時に没入できる」のが当方が大好きな映画鑑賞に通じていて、きっと楽なのでしょう(笑) 一番右端の写真ではそのグラデーションは「硝子のツボのガラス質のグラデーション」なので、まるで白飛びしてしまっている箇所で表現できている「硝子の感じ」に感銘を受けた次第です(笑)

・・おそらくこの撮影者の撮影感覚は当方の琴線とほぼ同じ感性と受け取っています(涙)

ちょっとこの撮影者のファンになってしまいました・・。ニックネームも「Slowhand」なので、まるで当方の技術スキルと同じで (一日に1本仕上げるのがやっとと言うスキルレベルだから) 何だか共感さえ沸いてきます(笑)・・などと言うとありがた迷惑ですね、失礼しました(泣)

十一段目
このモデルは巷では「コントラストが高い」とよくネット上で語られますが、当方の判定では真逆で特にコントラストの高さを感じません。それは今までに解説してきた流れからも同じですが、いろいろな要素でナチュラル的な指向を向くオールドレンズだと捉えているので、そのようなモデルに対してコントラストが高いとは受け取りません。例えばこれが旧東ドイツのCARL ZEISS JENA DDR製オールドレンズ達 (黒色鏡胴の最終モデル辺りの製品群) 空いてならコッテリ系の代表格とも言えそうですが(笑)、このモデルにはそう言うレッテルを貼りたくはありません(笑)

・・あくまでも当方の感性からみた決して参考にならない話ばかりです(笑)

確かに兄貴分たる格付の同じ旧西ドイツはCarl Zeiss製標準レンズ「凹Ultron 50mm/f1.8《oberkochen》」からみれば、廉価版格付でしかもシンガポール製の時代の波に消えていったモデルなのかも知れませんが、上記のような実写を観るにつけ当方には「まるで銘玉」にしか映っていません(涙) もちろん凹Ultronは素晴らしいですが、然し逆にこの発色性や逆光耐性にグラデーションの柔らかさなどはコントラストが高いと巷の評価まで組み入れてもなかなか素晴らしいオールドレンズだと評価しています。

光学系は先日「何でもかんでもウルトロン型と謳う」と酷評頂いた為、ちゃんと正しいと思しき表記たる「6群7枚の拡張ガウス型光学系」です(笑) このように表記すると光学系のカタチまで思い浮かばないので、頭が悪い当方は諸先生方から批判されるべく「ウルトロン型」と書くほうが分かり易かったのですが(笑)、ケチョンケチョンに指摘されるとなるとどうにもなりません(涙)

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

従って当方が自分の手で計測してトレースしているためネット上に掲載されている多くの構成図とは基本的に異なります (その意味でも信憑性が低い)。

今回扱った個体は滅多に手にできない「製造番号231xxxx」なので、光学系内の各群の蒸着コーティング層が放つ光彩をチェックしました。

右図はその各群が放つ光彩の印象をイメージ的に各群に着色していますが、実際は光学硝子の表裏で放つ光彩が違うのでまるっきり右図が正しい話ではありません(笑) 外から角度を変えたりしつつ眺めると「グリーンの光彩を含む」珍しいコーティング層の蒸着なのですが (製造番号233xxxx以降はグリーンの光彩は消滅)、意外にも第1群前玉の表裏は「ブル〜のコーティング層」だったりします。またその後の第3群〜第5群も実際にはパープルアンバーの光彩なので表裏でその放つ光彩の強さが多少変わる程度の話です (一部の群はグリーン色僅かにも含んでいた)。

するとこの「製造番号231xxxx」に集中的にグリーン色の光彩を放つコーティング層を蒸着してきた理由を知りたいのですが、なかなかそれを明確に記載している資料やサイトに出逢えません(涙) 例えば前玉がブル〜の光彩なのは、実装する光学硝子レンズの枚数が多いので一番最初に減衰していく「入射光の青色成分」の透過率を維持したいが為とも考えられます。またアンバーの光彩は透過していく中で暗く落ちていく明るさの低減を防ぐと共に、パープルの光彩は一番波長が長い赤色成分の透過率向上に努める意味合いがあると考えます。

例えばその気になるグリーン色の光彩の意味について思考を巡らせると、日本国内でも当時の一時期流行ったタイミングがあり、国産オールドレンズの多くがマルチコーティング化された中で次にグリーン色の光彩を放つモデルが投入されたと時系列で捉えると見えてきます。

右の解説は当時のMINOLTAのレンズカタログからの抜粋ですが、これを読むと「単層コーティングでは得られないグリーン領域に僅かに膨らみのある反射特性や紫外線のカット」とあるので、当時のMINOLTAが世界に先駆けて開発した「アクロマチックコーティング (AC) 」技術が大きな意味を含んでいると受け取れます。

実際この複層膜コーティング (モノコーティング) 層蒸着技術は既に1939年に戦前ドイツのCarl Zeiss Jenaにより開発されていましたが、MINOLTAのアクロマチックコーティング (AC) はそれら複層膜コーティング (モノコーティング) 層蒸着を指す技術ではなく、複層膜のさらに上に薬味の如く被せる「薄膜蒸着技術」なので世界初との肩書きが附随するのです。

よくこの点を指してモノコーティング技術は既に戦前に開発されていてMINOLTAの「世界初」の三文字はあたらないと解説しているサイトがありますが・・違います(笑) モノコーティング層そのモノではなく、その上に被せる薄膜の蒸着技術なので、被せる先は後にはマルチコーティング層の上にまで広げておりシングルコーティング (単層膜)/モノコーティング (複層膜)/マルチコーティング (多層膜) の別なく自在に被せられる「薄膜蒸着技術」なのです。

だからこそ彼のライカでさえその蒸着技術に着目し時のMINOLTAと技術提携したワケで「緑のロッコール」と巷で揶揄され続けたMINOLTA製オールドレンズ達も、当時の最先端技術だったのだと何とも誇らしげに感じます(涙)

しかし時代の潮流は「クッキリ、ハッキリ、コッテリ」とパキパキした描写が好まれ、次第にグリーン色の光彩を放つ蒸着層は消えていったようにみえます。実際このモデルでも「製造番号233xxxx〜」以降はどんなに角度を変えてもグリーン色の光彩は見えなくなりました(涙) 完全解体して各群が放つ光彩をチェックしているので、扱った個体の中では「製造番号241xxxx」に至るまで調査済です。

当時のMINOLTAのレンズカタログに記載されていた「グリーン領域に僅かに膨らみのある反射特性」との一文が頭の中でグルグル回っています(笑)

↑今回ご案内の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はCOLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》() (M42)のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ここからはオーバーホール/修理のご依頼内容について、或いは具体的なオーバーホール作業時の解説をしていきます。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
※オーバーホール/修理ご依頼の内容を含みます。
 鏡胴の絞り環〜基台〜マウント部に至るまでに大幅なガタつきがある。
距離環を回すと重めのトルクを感じる/僅かにトルクムラあり。
 絞り環操作にクリック感がほとんど感じられない。
絞り羽根を閉じていく時f11〜f16が動かない (f8で停止したまま)。
光学系内に薄いクモリや汚れ状が残っている。
絞り環操作の開放「f1.8」が詰まって停止する。
開放時の絞り羽根の駆動に微かな擦れる感触が指に伝わってくる。

《バラした後に新たに確認できた内容》
 内部の一部に赤サビが出ている。
塗布されているグリース種別が不適合 (潤滑油系統の注入か?)。
絞り羽根の制御系の一部パーツが変形している
各部にムリに微調整しようと試みた痕跡が残っている。
開放時に絞り羽根の数枚が極僅かに顔出ししている。
設定絞り値の伝達環 (樹脂製) が相当摩耗/削れている。

・・こんな感じでした。現在既にオーバーホール/修理が終わっており明日発送予定ですが、上記記載問題点の全てが改善でき、何らお知らせすべき不具合が残っていません (つまり完璧にオーバーホールが完了しています)。

ひいて申し上げるなら上記一覧 設定絞り値の伝達環 (樹脂製) が相当摩耗/削れている の「削れてしまった樹脂製の環/リング/輪っか」の削れた箇所は復元できないのでそのまま残っています。しかしその影響を受けた部位やパーツなどの駆動については対処したので、その残っている削れた部分が直接因果関係になり今後将来に渡りトラブルを招く事はありません。

完全解体しオーバーホールしていく事で、このように逐一問題点や不具合、摩耗箇所、或いは今後将来の懸念事項モロモロを都度細かくご案内できるのが、何より当方自身の「心の健康」に貢献して、合わせて今回のオーバーホール/修理ご依頼に際し作業させて頂いた『達成感』の賜物として間違いなく明言でき、本当に感謝しています・・ありがとう御座います!(涙)

上の写真のように見る角度によっては「グリーン色の光彩を放つ」のが「製造番号231xxxx」の特徴です。ではその放つグリーン色の光彩が具体的に撮影した写真にどのように貢献しているのか言ってみよ・・と問われても、申し訳御座いません。残念ながら光学知識も写真を観るスキルも持たない当方には・・具体的なその影響を示すことができません。

以前旧西ドイツはSchneider-Kreuznach製のオールドレンズで「シュナイダーブル〜ってどんな色なのかどうして説明しないのですか?」との指摘がメール着信しましたが、まさしく仰るとおり「指摘できないクセに誇らしげに語るのは如何なものか」と受け取られる内容文に、心底真摯に反省した次第です(涙) しかし現実的にネット上の何処を探してもその「シュナイダーブル〜」がはたしてどんな色合いを指すのか、根拠を以て解説しているサイトはついに見つけられませんでした。

このように巷で語られ続けている、それこそ都市伝説的な内容やストーリーをネット上から仕入れて、如何にも的にブログで語る/謳う事に「極度の不満/反応/嫌悪」を示す方々が居り、ご指摘のメールを頂戴する次第ですが、当方の生業たる『転売屋/転売ヤー』故に煽っている気持ちは少しもありませんので、どうかご勘弁下さいませ(涙)

↑上の写真は当初完全解体でバラした後に溶剤で洗浄してから撮影した「鏡筒 (ヘリコイドオス側) とヘリコイドメス側に基台」です (赤色矢印)。すると左端の「鏡筒」の外廻りに切削されている「ヘリコイドオス側のネジ山」が黒っぽくなっているのが一つのポイントです。

↑こちらの写真は一つ前の写真を撮影してから当方の作業たるDOHに入り「磨き研磨」が終わってから再び溶剤で洗浄して並べた写真です。

するとご覧のように中央の「ヘリコイドメス側」のネジ山や他の部分が「当初と同じ黒色のまま」なのに対し、左側の「鏡筒」だけが「外廻りのネジ山の黒っぽいのが除去できている」のが明白です。

つまり一つ前の写真でヘリコイドのオス側ネジ山に残っていたのは「溶剤でも溶けて除去できなかったアルミ合金材に浸透してしまった経年に於ける摩耗粉」と言えます。実際よ〜く観察すると上から下までのヘリコイドオス側ネジ山のうち、一部は黒っぽく変質しないまま上の写真と同じようにキレイなシルバーの輝きが残っていました。

そこで冒頭の「問題点列記」の中での 塗布されているグリース種別が不適合 (潤滑油系統の注入か?) との推測が成り立った次第です。例えば今流行りの「白色系グリース」は、その添加剤や基剤など種類にも拠りますが、多くの場合で「数年で白色がアルミ合金材に浸透してしまい白っぽく変質する」のを確認済です。いったいどのような因果でそのように白色がアルミ合金材に浸透するのかまで研究できていません(汗)

いずれにしても塗布するヘリコイドグリースが不適切だとこのような感じで具体的な影響を視認できますし、実際今回の仕上がった個体を手にして距離環を回して頂ければ「当方の特徴たるヌメヌメッとしたトルク感でほんの微かなピント合わせ時の微動がまた凄いレベル」です(笑)

と言うのもこのモデルのピントの山のピークは「少しずつ上がる」タイプなので、スパッと合焦しない分ピントのピーク前後で行ったり来たりが起きると思います。するとその時の微動に指のチカラが必要になると「ピント合わせが疲れる」印象に繋がるので、かと言ってスカスカのトルク感では気持ち良さなどに至るハズがないので(笑)「重要なのは手に入れて良かったと思う所有欲の充足感」とのポリシ〜です。

従って今回のご依頼者様お一人様だけしかその感触をご堪能できませんが(汗)、ピント合わせ時の前後微動は「指にチカラを入れるのではなくて感覚だけで十分微動する (そう念じた/感じた時に既に指の腹からチカラが伝わり微動するからチョ〜気持ち良く合焦する)」次第です(笑)

・・当方のトルク感は早く回す時は多少抵抗あるもののピント合わせ時はヌルヌル感!

↑上の写真もバラした後の溶剤洗浄後に撮影していますが、実は光学系前群用の格納筒 (上の写真の左側シルバー色に光り輝くアルミ合金材の格納筒) の赤色矢印グリーンの矢印の箇所に過去メンテナンス時に塗布されていた「反射防止黒色塗料」がありました。そしてグリーンの矢印の箇所は指し示した位置に「アルミ合金材の腐食」が白っぽく菌糸状に/斑模様に浸透している状況でした。

これに気づいた理由は「着色されていた反射防止黒色塗料の表面に白っぽく斑模様が現れていた」ために地の金属材たるアルミ合金材に酸化/腐食/錆びが起きていると判断した次第です。すべて「反射防止黒色塗料」を剥がして、且つ「磨き研磨」を施し経年の酸化/腐食/錆びを除去して「光学硝子レンズの格納最優先」としました。

・・何故ならこのモデルは光学硝子が落とし込みで格納する設計だからです。

つまりこの格納筒の内壁に経年の酸化/腐食/錆びが残っている限り「光学硝子レンズの格納位置が適切に至らない懸念が残る」ので完全除去してから必要な箇所のみ着色しているワケです。

↑こちらは多くの同型モデルの個体で毎度問題になる絞りユニット内部で使う「開閉環」と言う構成パーツです。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

当初バラした直後はこの開閉環にまで赤サビが出ていたのでちょっと慌てました・・(怖)

↑そして溶剤で洗浄したり「磨き研磨」しているうちに何だか気になり始めてチェックしたところ、案の定「開閉環自体が平坦を保っていない」のが判明しました(怖)

上の写真で赤色矢印で指し示しているのは「開閉アーム (左) と制御アーム (右) の根元部分」ですが、ここが変形している個体がとても多いのが現状です。どうして変形してしまうのかと言えば、その理由はたったの一つ「過去メンテナンス時の整備者がムリにチカラを加えて絞り羽根の開閉駆動を強制的に閉じさせよう/開かせようと試みたから」と120%の勢いで断言できます(笑)

少なくともこのモデルは赤色矢印で指し示している根元部分が変形したら「絞り羽根は正しい角度で開閉動作しない」運命を辿るしかなく、いわゆる「製品寿命の一歩手前」みたいな話につながりとてもコワイのです(怖)

今回の個体で問題になったのはグリーンの矢印で指し示した部分です。当方の写真撮影スキルがド下手なので上手く写せていませんが「開閉環が平らな状態にない」のを指し示しているのです。

この影響から「絞り羽根の開閉動作に誤差が生じ角度が適切にならないので開放時に2枚の絞り羽根で僅かな顔出しに至っていた」と言う次第です。

・・様々な不具合には必ずその因果関係が顕在するのでそれを見つければ良いだけの話(笑)

もちろん現在のオーバーホール/修理完了後はバッチリ完全開放しますし、もちろん最小絞り値「f16」までキレイに閉じていきます (当たり前の話なので特に偉ぶる内容ではないのは百も承知です/ご依頼者様にお知らせしているだけです)(笑)

↑こちらのほうがヤバかったです(涙) このせいで何回組み立て直しするハメに陥ったのか・・何とも恨めしい写真です。上の写真のパーツは絞り羽根の開閉角度を微調整する機能として用意されている「制御機構部の微調整環」なのですが、やはり水平を維持していません(泣)

特にグリーンの矢印で指し示した箇所がグニャグニャと変形しています。写真左端に「カム」が写っていますが (赤色矢印) そのカムの動きを適切に正しく絞りユニット内部の開閉環に伝達する必要があるのに、そもそもこの「微調整環」自体が曲がっていたらどうにもなりません(泣)

過去メンテナンス時の整備者はワケも分からずアッチコッチ手を入れてなんとか絞り羽根の開閉異常を改善しようと試みたようですが、そのいずれの処置も正しくなく「ただただどんどん悪化させていっただけ」と明言できてしまいます(笑)

・・このモデルをバラすとそう言う整備者のレベルがすぐに分かる(笑)

↑こちらは千枚通しに刺して写していますが(笑)、絞り羽根の開閉環から飛び出ている長い方の「開閉アームを掴んで操作する操作爪の機構部」です。左側に目安として大きな赤色矢印を添えましたが、この向きで絞りユニットから「開閉アームが飛び出ている」のをこの操作爪がガシッと掴みます。赤色矢印の上側が後玉側方向にあたり写真下側が前玉側方向を意味します。

この赤色矢印たる「開閉アーム」を操作爪が掴んでブルーの矢印❶方向に動くと絞り羽根が閉じ、逆にブルーの矢印❷方向に動くと絞り羽根が開きます。従って完全開放しなかったり最小絞り値まで閉じなかったりした時 (そういう絞り羽根開閉異常が起きている時) たいていの整備者はここの操作爪をイジッてムリに絞り羽根の開閉動作を変更しようと試みますが、そもそも設計段階でそのような対処方法を想定して作っていません(笑)

・・整備者たる者、そういう設計概念まで思惑広げるべきなのに怠る整備者が多い。

上の写真をご覧頂くとその証拠が写っていますが、ブルーの矢印で指し示した奥のほうの爪が製産時点の正しいカタチを維持しています。一方手前のグリーンの矢印で指し示した爪は「故意にペンチか何かで向きを変形させている」ワケです。

これは例えば赤色矢印を「開閉アーム」と仮定すると、ブルーの矢印❶方向に操作爪が傾いた時、その右側面方向の少し上の位置から開閉アーム (上の写真の赤色矢印) をより強くチカラを及ぼすよう「操作爪の手前側の爪を上方向に曲げた」のが分かるからこのように指摘できるのです。

例えば逆に奥のほうの爪 (ブルーの矢印) を傾けていたら「絞り羽根が開く時のチカラを強めようと試みている」のが判るので、このように「観察と考察」を行い「原理原則」に照らせば、自ずと過去メンテナンス時の整備者が何を考えこのようなムリな所為に及んだのかまで明白になります(笑)

しかし一番コワイのは前述したとおり「開閉アームの根元が変形したらアウト!」なので、このような所為のはその全てが決して許されません!(怒) ちゃんと絞り羽根の開閉微調整機能がこのモデルには備わるので、それを処置するだけで十分正常に戻せるのです。

・・先ず以て製産時点に於いてどのようなパーツも曲げたり変形させたりして微調整しない。

この点だけをシッカリ肝に銘じて整備頂きたいですね(笑)

↑当初バラして溶剤で洗浄後にセットされていた各構成パーツを取り外した状態で撮影しています。金属材がアルミ合金材ですが、ご覧のように赤褐色色に錆びています (金属材の事はよく知りませんが配合成分の関係でこのように経年で酸化/腐食/錆びが出るようです)。

↑マウント部内部なのですが、チェックしていくと「赤褐色に酸化/腐食/錆びが酷い箇所とそうではない箇所に分かれている」状況です。その経年の酸化/腐食/錆びで赤褐色化していない箇所も同じように剥き出し状態で長年曝されていたハズなのに何故変色しないのでしょうか?

このマウント部はアルミ合金材削り出しだと思うので、全てが同一の金属成分や配合と推測できます。しかし剥き出しなのにどうして変質しないのか当方には分かりません。

ところが今回の個体は上の写真のようにグリーンの矢印/グリーンのラインで指し示している領域の赤褐色化している箇所 (グリーンの矢印で指し示している下の段の箇所) だけに何か接着剤で固めたのか圧が加わるように僅かな厚みで帯状に処置されていました。

今まで扱ってきた58本でそのような処置が施されていた個体は1つもありません。赤色矢印で指し示しているように「スプリング+ベアリング」が入る穴が備わり、ここに絞り環がセットされてカチカチとクリック感を実現しています。

するとその絞り環の縁が行ったり来たりする場所に摩擦を与えるが如く/圧が加わるように肉厚がある「何か」を塗り固めています。試しにマイナスドライバーでこじいてみたらパリパリと剥がれたので、おそらくエポキシ系接着剤か何かを塗り固めたのだと思います。

この状況を知ってようやく「絞り環操作にまでトラブルを抱えていた過去メンテナンス時の状況」が見えてきました。冒頭の問題点  絞り環操作にクリック感がほとんど感じられない 鏡胴の絞り環〜基台〜マウント部に至るまでに大幅なガタつきがある の因果関係がどうやら見えてきました(笑) このマウント部も含めて鏡胴をガッチリ締め付け固定できない理由があり「絞り環が浮いてしまいベアリングとスプリングが飛び出てしまう」のを防ぐ意味合いから、このように塗り固めて絞り環に対して圧が加わるように施したのだと推測できます。

・・が然し、絞り環はそんな理由で浮いていたのではないのが後に判明(笑)

↑こちらの写真は当方の手で前に出てきたマウント部を「磨き研磨」してから組み立てている途中を撮影しています。ご覧のように赤褐色化していたアルミ合金材はシルバー色にピッカピカに戻りました(笑) 塗り固められていた「何か」も全て剥がして本来の状態に戻しています。

そこに「絞り連動ピン機構部」を組み込んだところです。上の写真の向きは「写真下側が後玉側方向」なので、現状絞り連動ピンが右下に飛び出ています (赤色矢印)。合わせて絞りユニットから飛び出ている「開閉アーム」を操作する操作爪 (赤色矢印) も附随します。

前の工程で解説したようにブルーの矢印❶、或いはブルーの矢印❷のように操作爪が回る事で/動く事で開閉アームが左右に振られて、結果的に絞り羽根が閉じたり開いたりをしています。

ちゃんと操作爪の機構部が組み込まれる「軸部分をグリーンの矢印で指し示している」ワケですが、実は過去メンテナンス時の整備者はどうやらここにグリースを塗ったのか潤滑油を注入していたのか分かりませんが、経年で赤サビが出ていました。当然ながらこの操作爪の左右の首振り運動に抵抗/負荷/摩擦が増大してしまい、絞り羽根の開閉動作に大きく影響してしまいました(泣)

なお、絞り連動ピンに附随する上の写真の状況をよ〜く観察すると誰でも分かりますが(笑)、絞り連動ピンが必要以上に「マウント面から飛び出ないようにストッパーが備わる」のがブルーの矢印で指し示した箇所で確実になります。

絞り連動ピンの押し込み量は当然ながら押し込みすぎると内部に外れて落下しますが、実は左横に位置する操作爪の機構部に絞り連動ピンの一部が刺さるので、それが制限の役目になって「絞り連動ピンは必要以上に押し込まれず、且つ飛び出る事もない」その駆動域を限定した設計を採っています。

例えばこのモデルでよく皆様から問い合わせ頂く内容の一つに「絞り連動ピンをもっと飛び出させたい」と言うご要望があります。これは絞り連動ピンの飛び出し量が足りないので「絞り羽根が最小絞り値側までキッチリ閉じてくれない」との思い込みでそのような要求が出てきます。

現実には/設計上ではそんな話になっておらず、絞り連動ピンは必要な範囲内でしか動かないよう予め設計されている次第です。

従って上の写真オレンジ色矢印のようにこの絞り連動ピンの治具部分を保持している「L形金具 (黄鋼材)」は絞り連動ピンの軸がほぼ面一でギリギリ状態ですから、これ以上絞り連動ピンがマウント面から突出してしまうと「このL字金具から軸が外れて脱落する」のが容易に推測できます。

これらの事柄から絞り連動ピンはブルーの矢印で必要以上に飛び出ず、合わせてオレンジ色矢印でこれ以上飛び出る微調整範囲自体が備わっていないのが明白なのです (いずれも絞り連動ピンを飛び出させるほうの話)。

詰まるところ「絞り羽根の開閉制御の微調整機能は全く別の箇所で執り行っている」ことを皆様は当然ながら何と過去メンテナンス時の整備者さえも全く理解できていなかったと言わざるを得ません(笑)

・・当方が大袈裟に解説しているのではなく上の写真を見れば一目瞭然!(笑)

↑試しにドライバーでこのマウント部を押して「強制的に絞り連動ピンを押し込んだ状態で撮影」しました(笑) 操作爪が動いて (一つ前の写真と見比べると位置が変化しているのが分かります) ❶の位置まで傾き、同時に絞り連動ピンが押し込まれたので軸が「L字金具の穴から飛び出て (オレンジ色矢印)」さらに右横のストッパーまで浮き上がっているのが分かります (ブルーの矢印)。

当方が嘘偽りを申し上げていたのではなく、また煽っていたのでもなく、決して大袈裟に解説していた話でもありません(笑) 当方が解説を進めるとウソを拡散しているとか煽って高く売れるように仕向けているとか誹謗中傷メールが着信しますが(笑)、決してそのような操作をしているのではなく、ちゃんと証拠写真を載せつつ解説しています(笑)

操作爪の傾きは限界まで左側に傾いてしまったので ()、この後絞り連動ピンの押し込みが解除されると「再びブルーの矢印❷の方向に傾いて正常位置に戻る (つまり絞り羽根が完全開放状態に戻る)」次第です(笑)

・・これがこのモデルの絞り羽根開閉動作の基本中の基本です!(笑)

前の工程で解説したペンチか何かでムリヤリ曲げられていた操作爪の「」そのモノも、ちゃんと隣同士おなぢ位置まで水平に戻しました(笑)

重要なのは曲げたり削ったり切ったりして如何に不具合を改善させるのかではなく「観察と考察」と「原理原則」に則り因果関係を突き止め、製産時点に限りなく戻す事で本来の正しい動き方に戻すのが本筋なのだと・・当方は頑なに信じています(笑)

・・皆様からケチョンケチョンに貶されますが然し今回の個体は素晴らしい仕上がりです(笑)

その事実を身を以て手にして (当方が嘘偽りを申し上げていないと) 確認できるのは、残念ながらオーバーホール/修理ご依頼者様お一人様だけですが、当方はそのお一人様だけで十分に大満足なのです・・何故なら、この個体は再びまた何年も先まで活躍の場を得られるワケで、それほど嬉しい話はなく、整備者にとってこれ以上の誉れはありません!(涙)

・・だから改造したりせずありのままの姿で佇み活躍の場を得るのが整備冥利なのです!(涙)

↑オーバーホール工程の一部解説や問題点の話などについてはここまでで終わります。オーバーホール/修理が終わって仕上がった個体は、それはそれはとても素晴らしい操作性と共に「再びの所有欲の高揚」すら保証致します!(涙)

光学系内に帯びていた薄いクモリはいつものとおり「締め付け環などに着色されていた反射防止黒色塗料のインク成分とその化学反応」だったりしたので、しつこい汚れは少々強めに清掃したもののスカッとクリアに戻りました。

但し残念ながら光学系後群側第5群の貼り合わせレンズだけは、バルサム切れの兆候が極僅かに見てとれます。一見すると汚れや経年の点キズのように見えますが (後群側の外周寄りの汚れ状箇所)、おそらくバルサム剤の浮きが始まっているように見えるので、できれば特に冬の結露やもちろんまもなく訪れる盛夏の「車内放置」など高温多湿にはご留意下さいませ。

重要なのは「温度変化」ではなくそれに準じて起こる「僅かな光学系格納筒内部の気圧変化」がコワイのです(怖) 多くの場合でバルサム切れの因果関係は温度変化に伴う「気圧差」ですから、ご留意下さいませ。

例えば当方にも時々クレームが届きますが(笑)「M42マウント規格」或いは「L39マウント規格」などで品物が届いて喜び勇んで後キャップを外さずに距離環を回すと「話していた内容と違っていてトルクが異常に重いからキャンセルしたい」と言ってきます(笑) 失礼ながらもしも後キャップ装着のまま操作しているなら是非外してからもう一度操作してみて下さいませ・・と丁重にお願いしています(笑)

するとあら不思議・・クレームはまるでウソのように消え去り、ヘタすればベタ褒め状態の評価がついていたりします(笑) 全く以て恐縮至極ですが「たかが後キャップの装着だけでそれほどの気圧差を指が感じる」のがウソのようなホントの話なワケで(笑)、試しに皆様もお試し下さいませ。

・・要は光学硝子レンズの天敵は気圧差である事をご認識あれ!(怖)

高温多湿や結露などの気温の変化はその因果の途中経過であり、あくまでも気温により変化を促されているのは「光学硝子材よりもいの一番に金属材ではないのか?!」と言いたいのです(怖) その金属材の変化に従いムリなチカラが加わって光学硝子が破壊するのではなく「気圧の変化で破壊する」ことをご認識下さいませ。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

↑光学系後群側もスカッとクリアに戻りました。前述の貼り合わせレンズ外周附近に僅かに見える汚れ状の箇所は都合4回清掃しましたが、一切変化無しです (結果バルサム切れの兆候と判定)。それはその箇所の光学硝子レンズを凝視して表層面の汚れ状でなければバルサム剤としか考えようがないからです・・申し訳御座いません(泣)

↑完全開放せずに極僅かに2枚顔出ししていた絞り羽根もキレイに整いご覧のように「正六角形を維持したまま閉じていく」状況に戻っています。もちろん簡易検査具を使い絞り環の絞り値との整合性もチェック済ですから、上の写真の閉じ具合が適切です (上の写真は最小絞り値f16の閉じ具合です)。

当然ながら当初バラす前のチェック時点で「f8停止」していた絞り羽根の開閉不具合も解消し「完全開放最小絞り値f16まで心地良いくらいに開いたり閉じたりどんだけイジッても大丈夫です!」なんて当たり前の話ですが(笑)

絞り環操作時のクリック感は確かに当初バラす前の時点でほぼ感覚無しに近かった状況ですが、鏡胴をキッチリ硬締めで固定したにもかかわらず絞り環の遊びは半減程度までしか改善していません・・って言うか、そもそも「凹Ultron 50mm/f1.8」同様絞り環には極僅かな遊びが残る設計なのと、もう一つ今回の個体で致命的な問題が起きていたのが影響してこれ以上遊びを縮められません。

それは「設定絞り値の伝達環たる樹脂製環/リング/輪っかの削れ」です。この:ズレは金属棒が樹脂環を行ったり来たりするので、必要以上に圧が加わると金属棒のせいで削れてしまうからです。

ではその金属棒は何処に入っているのかと言えば「マウント面に備わる楕円状の金属板 (押し込むとスプリングのチカラで凹むがすぐに戻る)」を押し出している金属棒なので、マウント部を本締めで硬締め付け固定しなかった根本的な理由もその問題が影響しています。

おそらく「樹脂環の組み込み位置をミスったまま本気で本締め/硬締めして組み上げてしまい、絞り環操作で絞り羽根の開閉をチェックしてしまった」から削れたのだと推察します。

例えばそれが影響して開放f値「f1.8」の箇所で詰まった印象で停止する絞り環操作に悩まされました。

・・はい、技術スキルが低い分すぐに気づけず何回もあ〜だこ〜だ組み直したのです!(恥)

因果関係は一つずつ調べて消去法でチェックしていきましたが、まさか金属棒が影響して削れていたとは気づきませんでした(泣) もちろん当方が組み上げる時は適切に正しい手順で組み上げていくので「樹脂環の配置をミスる事はない」ッて言うか、そもそも樹脂環の組み込みをミスると簡単に折れるので、そんなミスは犯しません(怖)

もう少し絞り環操作時のクリック感を強めたかったですが、樹脂環の削れている分を加味して (肉厚が薄くなっているので) その箇所で破断したらアウトなので「敢えてムリせずあるがままに仕上げた」状況です。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑塗布したヘリコイドグリースはもちろん「黄褐色系グリース」を使い前述のように距離環を回す時のトルク感は「普通軽め」程度ですが、ピント時の前後微動は「極軽いチカラだけで微動」しますから、ちょうどピントのピークがなだらかなこのモデルにはピッタリです。

ヘリコイドが僅かに擦れる感触が指に伝わりますが「むしろツルツルした感触のトルク感よりは相応の擦れ感が伝わる方がピント合わせしている感覚を愉しめる」との思いが強いが為に、敢えてそのように仕上げています。

もちろん鏡胴にガタつきは一切ありません(笑)

↑事前にお話したとおり同梱頂いたマウントアダプタには基準マーカー位置に「縦線のマーキング」を刻んであります (グリーンの矢印)。また内部の「ピン押し底面」はこのモデルの絞り連動ピンが微調整できない関係から (前述の解説) 平らな面を向けてセットしてあります (現状裏側が凹面)。従って別のオールドレンズ装着などで再びネジ部を取り外して「ピン押し底面の表裏をひっくり返す」時には、指標値の目安としてマーキングを合わせて頂ければ楽です。その際に使うレンチ棒も一緒に附属させておきます (赤色矢印)。

・・絞り環操作時のクリック感が足りない分のお詫びです (スミマセン)(泣)

なお、マウントアダプタ装着時最後までネジ込んでいくと「少し詰まった印象でネジ込みが終わる」と言うか、最後までネジ込む際に少々強めにネジ込まないと指標値が真上に来ません。これはこのマウントアダプタ内部にセットされている「ピン押し底面」の厚みにバラツキがある、或いは使っているうちに絞り連動ピンが当たる場所が摩耗して熟れてくる・・のか分かりませんが、このマウントアダプタではそう言う印象です。

・・この件もご納得頂けなければ減額下さいませ、申し訳御座いません(泣)

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
※オーバーホール/修理ご依頼の内容を含みます。
 鏡胴の絞り環〜基台〜マウント部に至るまでに大幅なガタつきがある。←解消済
距離環を回すと重めのトルクを感じる/僅かにトルクムラあり。←解消済
 絞り環操作にクリック感がほとんど感じられない。←半減程度
絞り羽根を閉じていく時f11〜f16が動かない (f8で停止したまま)。←解消済/正常に改善済
光学系内に薄いクモリや汚れ状が残っている。←解消済/クリア
絞り環操作の開放「f1.8」が詰まって停止する。←解消済
開放時の絞り羽根の駆動に微かな擦れる感触が指に伝わってくる。←解消済

《バラした後に新たに確認できた内容》
 内部の一部に赤サビが出ている。←除去済
塗布されているグリース種別が不適合 (潤滑油系統の注入か?)。←黄褐色系グリースを塗布
絞り羽根の制御系の一部パーツが変形している←修復済
各部にムリに微調整しようと試みた痕跡が残っている。←修復済
開放時に絞り羽根の数枚が極僅かに顔出ししている。←解消済
設定絞り値の伝達環 (樹脂製) が相当摩耗/削れている。←そのまま残っている/変化無し

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮影しました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。上の写真を見ると他のオールドレンズとの大きな違いが分かりますが「背景のお城の模型左下部の穴内部が明るく写っている」のがどんだけダイナミックレンジが広いのか (暗部の潰れ耐性/明部の白飛び耐性) が分かります・・素晴らしいオールドレンズです!(涙) まだまだ「回折現象」の影響も視認できません。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。