◎ PENTACON (ペンタコン) PRAKTICAR 50mm/f2.4 MC(PB)

 

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写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じますPR5024レンズ銘板

ず〜ッとオーバーホール/修理のご依頼を頂いたオールドレンズの整備を続けていましたが、ちょっと目先を替えます。今回はヤフオク! にオーバーホール済にて出品するオールドレンズを掲載します。当方での扱いは今回が初めてになりますが、前々からその描写性故に気になっていたモデル「PENTACON PRAKTICAR 50mm/f2.4 MC (PB)」です。

 レンズマウントが「プラクチカ・バヨネットマウント (PB)」なので、なかなかミラーレス一眼に装着したくてもマウントアダプタが存在せずに何年間も憂き目をみていたマイナーなモデルです。しかしこの数年でミラーレス一眼の進歩と共にマウントアダプタもようやく用意され、本領発揮できる日が来ました・・是非ともこのPENTACON独特の描写性を愉しんで頂けたらと思います。

モデル銘の「PRAKTICAR」はネイティブなドイツ人の発音では「プラクティカー」であり、仮に英語で発音しても同じ「プラクティカー」です。それがどう言うワケか日本では昔から「プラクチカール」と呼ばれ、それこそロシア人やポルトガル人の発音になってしまっています (当方も以前米国人に貴方は本当はポルトガル人なのですか?とマジ顔で質問されましたが) (笑)

1983年にPENTACONから発売されたフィルムカメラ「B100」用のセットレンズとして用意された標準レンズです。俗に言う「パンケーキ」レンズなのですが、今回バラしてみると内部は本格的な (と言うよりも普通の) 構造化が成されていました。確かにレンズ銘板の他一部に樹脂製 (硬質プラスティック製) パーツが構成パーツとして使われていますが、だからと言って「チープなオールドレンズ」と烙印してしまうのはあまりにも酷いと思います (それほどネット上の解説ではチープチープと言われてますが)。

特にその描写性に関しては非常に魅力があり愉しめるモデルです・・鋭いエッジのピント面はもとより玉ボケやアウトフォーカス部のクセのある滲み方、或いは画としての立体的な表現性など、それこそ「ひとつで二度美味しい」的な逸本だと評価しています。それがこの薄くコンパクトな「パンケーキ」レンズからはき出されるワケですから、これは堪りません。マウントアダプタ経由装着したとしてもその全長僅か「50mm」と言う、今ドキの標準レンズ並であり、これはお散歩レンズには最適と言わざるを得ません。

強いて言うならば、このモデルから出てくる画のカラーリングに好き嫌いが顕れるかも知れませんね・・少々寒色に偏る傾向の画造りを印象として感じますが、それは当時の西ドイツ側オールドレンズでは結構多い要素のひとつでもあり、旧東ドイツの光学メーカーから発売されたモデルで考えれば、むしろ貴重だとは言えないでしょうか?

マウントがマウントなだけにそうおいそれと手に入れるワケにはいきませんが、今回はお安い価格のマウントアダプタをセットにして (当方がいつもオーバーホール/修理で基準として使っている会社のマウントアダプタ) 出品しますので、そのまますぐにSONY製ミラーレス一眼でしたらお使い頂けます。もしもマウントアダプタが必要なければ、直近のamazon価格で「1,936円」分を差し引いてお支払い頂ければ結構ですので、どうぞこの機会にご検討下さいませ。当方にてPRAKTICARモデルを整備して出品するのは、基本的に珍しいかと思います (次回の予定はありません)。

PR5024(0321)仕様

PR5024レンズ銘板

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。

すべて解体したパーツの全景写真です。

PR5024(0321)11ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。上の写真をご覧頂くと詳しい方にはお分かり頂けますが、いくらパンケーキレンズとは言え、ちゃんとした構成パーツの点数を保持した本格的な (一般的な) オールドレンズの体裁を成しています。例えば、日本製レンズのパンケーキモデルでは、上手く工夫して厚みがあるままで構成パーツを用意していますが、今回のこのモデルではシッカリと「薄くする努力」が行われています・・主要構成パーツがなんと薄いことか(笑) いくら当時のPENTACONとは言え、これだけの薄さの中で精度をキープさせるのはなかなか大変だったのではないでしょうか・・。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

PR5024(0321)12絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルにはパンケーキレンズでありながらもヘリコイド (オス側) が別に用意されておりイッチョ前に独立しています。

PR5024(0321)136枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させますが、このモデルの絞り羽根には表裏に「3本」のキー (絞り羽根の位置決めや制御をする上で必要になる金属製の突起/棒) が備わっています。普通多いのは表裏に1本ずつの合計「2本」であり、中には片方が「穴」で1本しかキーが存在しないモデルもありますが、3本用意されているのはヒジョ〜に珍しいです。

PENTACON独特な「絞り羽根の制御方法」なのですが、上の写真のように三角形状の「開口部」が用意された「制御環」が絞り羽根の角度を変えています。三角形の「2辺」をキーが移動することで各絞り羽根の向きが変わって設定絞り値になる仕組みです。普通のオールドレンズでは絞りユニットの裏側やマウント部の内部に用意されている仕組みを、このモデルでは絞りユニットの「内部」で済ませてしまっています。

これはこれで「設計上の問題」があるのですが、制御環を回している場所は「1箇所だけ」であり (上の写真では11時の場所にアームが写っています)、そこにチカラが集中的に加わるので、各絞り羽根の開き方に「バラツキ」が生じてしまいます・・結果、キレイな「正六角形にならない」現象が発生してしまいますので、このモデルでは必ずしも上の写真のようなキレイな六角形で絞り羽根が閉じたり開いたりはしてくれません (その都度極僅かに開口部の形状が変わります)。まぁ、これがPENTACONらしいと言われれば否定はしませんが(笑)

PR5024(0321)14ヘリコイド (オス側) の内部に先の完成した絞りユニットを組み付けます。

PR5024(0321)15こちらは距離環やマウント部を組み付けるための基台です。なんと薄いことか・・!

PR5024(0321)16ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。このモデルには「無限遠位置調整機能」が備わっているので、ここでのアタリ付けは大凡で構いません。

PR5024(0321)17ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず)、再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

PR5024(0321)18最後に距離環を仮止めしても良いのですが、位置決めが面倒なので (基台が薄すぎて指で持ちきれない) ここで距離環を仮止めしてしまいます。プクプクとした距離環のラバー製ローレットが感触いいですよ(笑) 意外とこの形状のラバー製ローレットはホールディング性がいいです。

PR5024(0321)19ひっくり返して「鋼球ボール+マイクロ・スプリング」を組み込んでから絞り環をセットします。フツ〜のオールドレンズと同じ「絞り環連係アーム」がちゃんと用意された本格的な絞り環です(笑)

PR5024(0321)20絞り環用の固定環 (マウントベース) をネジ止め固定します。この時に「電気接点端子基板」なども組み付けることになります。

PR5024(0321)21「シャンパンゴールド」の梨地仕上げマウント部をセットします。なかなか高品位なイメージです・・マウント部なのでマウントアダプタに装着してしまうと (カメラに装着してしまうと) 一切見えなくなるのがもったいないくらいです(笑)

これで鏡胴のほとんどが完成したので、ここからは光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行って、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすればいよいよ完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

PR5024(0321)1今回の出品には「K&F Concept」と言う中国の会社のマウントアダプタを一緒にセットにしました。「プラクチカ・バヨネットマウント→ SONY NEX Eマウント」に変換するマウントアダプタです。当方がメインとして基準マウントアダプタで普段から整備で使っているマウントアダプタと同じ商品です。マウントアダプタ自体は「未開封新品」ですので、当方で使っているマウントアダプタを上の写真では撮影用として一緒に横に置いています。なお、念のためこの出品するレンズとの相性を確認するために、一度だけ開封してマウントアダプタを装着確認しています。シッカリと装着でき、SONY製ミラーレス一眼にも確実にセットできたことを確認済ですので、どうぞご安心下さいませ (他のマウントアダプタでも同様ですが極僅かなガタつきはあります)。

PR5024(0321)2光学系内はヒジョ〜に透明度が高い状態をキープしています。LED光照射では第1群 (前玉) と第3群 (中玉) に極薄い微細なクモリがコーティング層の経年劣化として浮き上がりますが、写真への影響を懸念する必要性も一切無いレベルです。

PR5024(0321)2-1

PR5024(0321)2-2

PR5024(0321)2-3上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。1枚目〜2枚目は極微細な点キズを、また3枚目は前玉外周附近に位置しているコーティング層の経年劣化に拠る汚れ状を撮っています。

PR5024(0321)9光学系後群もとても透明度が高くキレイな部類です。

PR5024(0321)9-1上の写真は光学系後群のキズの状態を拡大撮影していますが、極微細な点キズと非常に薄い微細なヘアラインキズがあるだけでとてもキレイな状態を維持しています。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:18点、目立つ点キズ:10点
後群内:12点、目立つ点キズ:8点
コーティング経年劣化:前後群あり
カビ除去痕:なし、カビ:なし
ヘアラインキズ:あり
・その他:バルサム切れなし。順光目視で前群内に光に反射させると浮き上がるコーティング層の劣化 (汚れ状) が僅かにあります。
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れ、クモリもありますがいずれもすべて写真への影響はありませんでした。

光学系の状態を撮影した写真は、そのキズなどの状態を分かり易くご覧頂くために、すべて光に反射させてワザと誇張的に撮影しています。実際の現物を順光目視すると、これらすべてのキズは容易にはなかなか発見できないレベルです。

これらの極微細な点キズは「塵や埃」と言っている方が非常に多いですが、実際にはカビが発生していた箇所の「芯」や「枝」だったり、或いはコーティングの劣 化で浮き上がっているコーティング層の点だったりします。当方の整備では、光学系はLED光照射の下で清掃しているので「塵や埃」の類はそれほど多くは残留していません (クリーンルームではないので皆無ではありませんが)

光学系内については、何でもかんでも「カビや塵・埃、拭き残しと決めつける方」或いは「LED光照射した状態をクレームしてくる人」は、当方ではなくプロのカメラ店様や修理専門会社様などでオールドレンズのお買い求めをお勧めします。当方のヤフオク! 出品オールドレンズの入札/落札や、オールドレンズ/修理のご依頼などは、御遠慮頂くよう切にお願い申し上げます。
当方には光学系のガラス研磨設備やコーティング再蒸着設備が無く、キズやコーティングの劣化が全く無い状態に整備することは不可能です。

PR5024(0321)3絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。

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PR5024(0321)7使用したヘリコイド・グリースは「粘性:中程度」を塗布しています。距離環のトルク感はとても滑らかで、印象としては少々軽めの傾向ですが、最短撮影距離「0.6m〜0.7m」辺りで一度重くなる箇所があります。撮影時に支障になるイメージではないと判断しています。

【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドのグリースは「粘性:中程度」を使用。
・距離環のトルク感は滑らかに感じほぼ均一です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。トルクは少々軽めの感触になります。
・距離環を回していくと最短撮影距離「0.6m〜0.7m」辺りで僅かに重みを感じますが支障には感じないレベルです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

「磨き研磨」は極力グリースの類の塗布を少なくして、今後の経年使用に於いても「揮発油成分」が光学系まで回らないよう配慮した処置です。それは既に光学系、特にコーティングの劣化が相応に進行しており、さすがに硝子材だけはいくらメンテナンスと言えども、おいそれと何度も研磨することはできません (せいぜい当初生産時諸元値の1%以下程度までしか研磨できません)。それを考えるとグリースを塗ったくったり、或いは液化の早い滑らかな (粘性が軽めな) グリースばかりを好んで使うのもどうかと思いますが・・。

その意味では、使い倒すつもりならば整備する必要は無いでしょうし (スルスル回るのは既にグリースの限界が来て液化が始まっているからです)、少しでも長く使うならば整備したほうが良いコトになります (グリースを入れ替えるワケですから、トルクはそれなりに変化します)。その辺のリスクが分からない (気がつかない) 方が最近は多くなってきました・・当然ながら、当方のスキルレベルは低いですから、完璧な整備を望まれる方は「プロのカメラ店様/修理会社様」に整備をご依頼されるのが最善かと思いますヤフオク! に出品しているオールドレンズの入札/落札も、このブログをご覧頂き「オールドレンズ/修理」のご依頼をされるのも、すべてスルーして頂くようお願い申し上げます

それでもヤフオク! の当方評価に「非常に良い/良い」をお付け頂ける方がいらっしゃるのは、或いは「オーバーホール/修理」のご依頼を頂けるのは、市場に出回っているオールドレンズの状態を既にご存知だからです。問題なのは、このブログが検索でヒットして「オーバーホール/修理」のご依頼をされる方々の中で「認識」「感覚」が「プロのカメラ店様で販売しているオールドレンズしか知らない」と言う方々です。そのような方々からのご依頼では、トラブルになることが最近は多くなってきました・・ご勘弁下さいませ。何度も言いますが、当方の技術レベルは低いです・・

PR5024(0321)8マイナーなイメージが払拭できない「プラクチカ・バヨネットマウント」のモデルですが、その画はなかなかどうしてドイツ製レンズの素晴らしさを感じられる個性豊かな描写性です。パンケーキレンズでもあり、普段使いにはもったいないほどの素晴らしいモデルです。

PR5024(0321)10当レンズによる最短撮影距離60cm附近での開放実写です。一段絞って「f4」で撮影すると「おッ」と声が出ると思いますよ(笑)