◎ mamiya (マミヤ光機) AUTO MAMIYA−SEKOR 50mm/f2 (two-tone)《初期型》(M42)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
マミヤ光機製標準レンズ・・・・、
『AUTO MAMIYA−SEKOR 50mm/f2 (two-tone)《初期型》(M42)』
・・・・です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Украине! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当時のマミヤ光機製廉価版モデルたる標準 レンズ「50mm/f2」に限定して捉えると当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で8本目にあたりますが、その中で今回扱った個体「初期型」だけでカウントすると実は1本目にあたり初めての扱いです (後期型に比してそれ程多く出回らない)。
今回この「初期型」を扱う最大の動機が以前ご案内した ミステリアスなオールドレンズ たる巷でRodenstock製と騒がれ続けている「Edixagon 50mm/f2 (M42)」のその真偽を結論 づける最後の企画になります。
何しろ海外オークションebayではEdixagonは何かしら齟齬が残る個体でも3万円〜5万円台大変状態の良い個体だと6万円〜11万円台とまさに驚異的な市場流通価格を近年示しており且ついつの間にか日本国内まで流通が始まり昨今はヤフオク! でも3万円台以上の高値で落札されている始末で・・・・まさに ミステリアスなオールドレンズ です。
さすがに企画として取りあげてその真偽を追求するにもその結論を検証するが為となればポンと3万円出す気持ちになれません(笑) そんな次第で相当気合いが入ったまま調達個体を探し続けていましたが意外にもなかなか出回りませんし、そもそもこの当時のマミヤ光機製オールドレンズの多くの個体が既に限界を迎えており、光学系内の状態まで担保して手に入れるのは困難を極めます (探していたのは今回の初期型ですが)。
それだけに今回扱った個体の光学系はまるで奇跡の如く透明度が高い「スカッとクリア!」な個体でオーバーホールが終わって改めてオドロキに感慨深く浸っているところです。
プラスして今回の個体を扱って初めて知り得た「こんなに鋭かったのか!」と言う全く予想外/想定外だった結果に辿り着き、それもまた改めて新鮮さを覚えた次第です。
その意味ではむしろ今度は別の疑念が湧いてしまい、今回の結果から捉えようと努めるなら「ではどうして初期型が拙かったのか?」「いったい何を後期型に追い求めたのか?」興味津々と言ったところです。
詰まるところオールドレンズ沼に口元まで浸かりきっているとなれば、今まさに呼吸できるか否か問われている瞬間で断末魔としても「求めるモノは求めてしまう沼に沈んでいく身の上」の当然なるワンシ〜ンとも言えそうです(笑)
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1966年にマミヤ光機から初めて発売された「M42マウント」の一眼レフ (フィルム) カメラが「1000TL/500TL」になり、セット用標準レンズとして「AUTO MAMIYA-SEKORシリーズ」が用意されました (右写真は1000TL)。
パッと見で見落としがちですが、実はレンズ銘板のモデル銘が一般的に現在市場に数多く流通しているタイプとは異なります。つまり「MAMIYA-SEKOR」表記であり「mamiya/sekor」ではありません。これがこの当時のマミヤ製オプション交換レンズ群の中で「初期型/後期型」の最も見分けやすい特徴です。「後期型」が「mamiya/
sekor」ですね。
この時の取扱説明書をチェックすると、用意されていたセット用標準レンズ群は「f1.4/f1.8/f2.0」の3種類で「f1.2」が存在しないことになります。
この時の標準レンズ群は全てマミヤ製モデルとしては「初期型」になります。
今回のオーバーホールに際し完全解体した時に光学系の清掃時に当方の手でデジタルノギスを使って各群の光学硝子レンズを逐一計測してトレースした構成図が右図になります。
4群6枚の典型的なダブルガウス型ですが例えば似たような位置付けのRICOH製標準レンズ「XR RIKENON 50mm/f2《前期型/後期型》(PK)」と同じ光学系構成ながら、XR RIKENONの第1群 (前玉) 外径 サイズは「⌀27.5mm」です (いまだに巷で和製ズミクロンと親しまれ人気があるモデル)。
一方今回扱う「初期型」は「⌀30.59mm」ですから、約3mm強も大口径なのだと言えます。
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ここからの解説が冒頭でご案内した ミステリアスなオールドレンズ に対する真偽の追求に入っていきます。実際歴史から観てもRodenstock (ローデンストック) と言えば1877年戦前ドイツ創業の老舗の名門光学メーカーの一つです。そんな光学メーカーの製品が「M42マウント規格」でしかも「Wirgin製フィルムカメラ」のセットレンズとして供給されていた・・などとは半ば信じがたい話で今まで数回目にしながらも正直なところ「下手に関わったらとんでもない事になる」とまるッきしの敬遠状態だったワケです(笑)
右写真はWirgin (ヴィルギン) 社製一眼レフ (フィルム) カメラ「edixa 750」にセットされている問題の ミステリアスなオールドレンズ たる「Edixagon 50mm/f2 (M42)」です。
Rodenstock製Edixagon 50mm/f2 (M42) とは左写真のような何の 変哲もないどちらかと言えば「50mm/f2」と標準レンズながらも
むしろ格付的に下位格の下手すればまるで廉価版的な印象です(笑)
しかしこのオールドレンズはレンズ銘板はもとより筐体の何処にも 製造国が刻印されておらず、且つレンズ銘板にはそもそも製造メー カーたる「Rodenstock銘」がありません(笑)
そして実際にこのオールドレンズがRodenstock社製と言い始めたのは日本人でもヨーロッパ人でもなく実は中国人が凡そ2008年頃から騒ぎ始めたようだとの認識に至りました。別に卑下する気持ちはありませんが2008年辺りともなれば、まさに世界中のオークションで中国人が片っ端に流通しているオールドレンズを買い漁っていた時期とも一致しており、当時金に糸目を付けず状態の良い個体が飛ぶように消えていった時代でもありましたから、あながち単なる噂話とも捨てきれません (実際今現在もこのモデルに関するネット上での解説サイト数は圧倒的に中国人サイトが多い)。
そこに目を付けて今も海外オークションebayで流しているのがヨーロッパ勢の『転売屋/転売ヤー』なので3万円〜5万円台、或いは6万円〜11万円台の価格帯も今も中国人狙いなの かも知れませんね(笑) そのようにターゲットにされると言うのは何だかんだ言ってもお金をいっぱい持っている民族なのでマジッで羨ましい限りです (どちらかと言うと今のニッポン人高齢者はチマチマと質素倹約に徹して慎ましく年金生活)。
↑上の写真 (4枚) のうち左からの3枚は「Edixagon 50mm/f2 (M42)」ですが、一番右端だけは前回扱った時の「後期型」たる『AUTO mamiya/sekor 50mm/f2 (black)《後期型》(M42)』です。
この4枚の写真から当方は一つの仮説を導き出し問題のEdixagonがRodenstock製ではない事を確信しました。
左側の2枚は同一個体を前玉側方向と後玉側方向とで撮影している写真ですが、3枚目は別の個体写真で「マウント部の絞り連動ピン周りのメクラ環/カバーが脱落」して内部が顕わになっていた大変貴重な写真です。つまり絞り連動ピンの周囲にワザワザ敢えて薄いアルミ材削り 出しのカバー環/リング/輪っか、いわゆる「メクラ環」を接着していたのが明白です。
その一方右端の「後期型」写真は絞り連動ピン周りは「マウント部と一体のアルミ合金材削り出し加工」で作られている仕様です (メクラ環が存在しない)。
これらの相違は実は当時の日本製オールドレンズYASHICA製モデルの中に多く顕在する仕様の相違なので、基本的に『富岡光学製』たる根拠を備えるものの実のところ絞り連動ピン周りの状況をチェックすれば大きく2つの設計パターンがあったとの判定が適います。
今回扱うモデルも最終的には『富岡光学製』と当方は捉えていますが、そのように解説すると「何でもかんでも総て富岡光学製にしてしまう」とSNSで批判対象になるようです(笑)
その根拠の基になるモデル「AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」をご覧頂ければそのオーバーホール工程を逐一確認できますが、そこから判明した『富岡光学製たるその根拠を 示す共通項目』を以下にちゃんと示します(笑)
以下の3項目だけが当時流通していたオールド レンズの中で他社に同一の設計をみないまさに『証』そのものです。
具体的には『富岡光学製』の構造的な要素 (特徴) として大きく3点あり、いずれか1点、或いは複数合致した時に判定しています。
❶ M42マウントの場合に特異なマウント面の設計をしている (外観だけで判断できる)。
❷ 内部構造の設計として特異な絞り環のクリック方式を採っている (外観だけでは不明)。
❸ 内部構造の設計として特異な絞り羽根開閉幅調整方式を採っている (外観だけでは不明)。
上記3点は今までに3,000本以上のオールドレンズを扱ってきて富岡光学以外の光学メーカーで採っていない設計なので『富岡光学製』判定の基準としています (2022年8月1日現在まだ覆されていない)。
そしてこれら3点の要素はその総てが「これらの要素の為に組み立て工程が増えてしまう非効率的で非合理的な意味不明な設計概念」とも断言できてしまう程に厄介な仕様なのです(笑) 逆に言えばこんな設計仕様は全く以て企業利益/利潤をドブに捨てているような話で他社光学メーカーが真似するハズがないのです (その意味では富岡光学が1968年に経営破綻してヤシカに吸収されたのも当然な成り行き)。
もっと言うならこれらの解説内容はそもそも以前取材させて頂いた金属加工会社の社長さんから懇切丁寧にご教授頂き納得できた話ばかりだからです。光学メーカーに限らず金属加工を知っている会社ならその設計まで任されている場合「自社工場の機械設備に最も見合う合理的で効率の良い製産工程で必ず思考がスタートするハズだから」であり、当方も含めネット上の数多くの解説サイトでまさにド素人感覚で考察されますが、金属加工会社にとってその使うべき金属材の多い少ないはたいして製産時点のコスト削減に寄与しません。
最も金食い虫なのはそれら製産され用意された各構成パーツを検査しながら組み上げていく「組み立て工程の多い少ない」であり、詰まるところたいていの場合で「それは一にも二にも人件費」なのだと断言できると教えて頂いたからです。すると敢えて他社の設計概念を真似て図面を起こす意味がそもそも出発時点で一切皆無なのが明白であり、よほど真似て造って何かの発見を期待するにしても実のところいちいち図面を起こさずとも容易に推量できる事が多いとの事でした。
例えば前述の『富岡光学製の根拠たる項目3点』について知りたいと仰りお話したところ、どうしてイモネジで締め付ける必要があるのか? どうしてクリック感を実現するのを1箇所で済まさなかったのか? どうして絞り羽根開閉の微調整機能をもっと簡素化しなかったのか?
・・と凡そオールドレンズ内部の事を知らないハズなのにアッと言う間に適確にご指摘頂きました! もっと言うなら具体的な改善策をその場で示されまさにそれが容易に適う設計の話 (実際に他社光学メーカーで既に当時から採られていた設計概念) としてズバリ100%的中させてしまったからオドロキだったのです (相応にオールドレンズの技術スキルを有する整備者でない限り知り得ない内容)!(驚) この時今さらながらに「どの業界もプロ/匠って本当にマジッで凄い!」と眼がウルウルしてしまうくらい感激してしまい、まるでクレヨンしんちゃん状態でした!(笑) この時ほど「プロ/匠になりたかったなぁ〜」と思った事はありませんね (人生踏み外してます)(涙)
・・もぉ〜眼から鱗状態でしたね!(笑)
すると凡そ旧ドイツ敗戦時に本国に工場の機械設備から資材〜人間までありとあらゆるモノを接収して一度造らせた旧ソ連邦/ソ連軍の手法はまさにそのような技術の到達が適っていなかったと考えられ、近代では珍しいヤリ方だったのが伺えます。今ドキの話で指摘するならそれこそサイバー戦で対象国 (の企業) からいくらでも盗ってくればアッと言う間に核心的最先端技術が手に入るワケで、さすがそういうお国柄が何処ぞ幾つか思い浮かびますね(笑)
ちなみにRodenstockではなくてWirgin社のレンズカタログにちゃんと問題の「Edixagon 50mm/f2 (M42)」が載っているワケで、いったいどうやってこのモデルがRodenstock製との話に向かったのか全く想像すらできません(笑) なお一部ネット上サイトで「Wirgin」を ウィルジンと載せていますがドイツ語なので「w」はラテン語/英語で言う処の「v」にあたるので「ヴィルギン」が正しい社名表現です。
なお一部のネット上サイトで語られているEdixagonのレンズ銘板に刻印されている製造番号「先頭:660」をとって1966年製産という断定は適しません。何故なら今回扱ったモデルは「先頭:690」でありそもそも当時の「富岡光学製」の数多くのオールドレンズがOEMにて市場供給されましたが、製造番号先頭1桁〜3桁は指向先メーカー向けの暗号だからです。 この先頭の数値に具体的な西暦などの該当性は一切存在しません。
そして当方のこのブログ内で製造光学メーカーが国内/輸出の別なく他社向けへの供給を指して「OEM」と一括表現しているには理由があり、そもそも「指向先メーカーのブランドで製産する事 (Original Equipment Manufacturer)」の略ですが、他に「OES (Original Equipment Supplier)」や「PB (Private Brand)」他にもありますが、これらの内容/意味 合いは厳密に言うと業界を跨ぐとまた変化してしまいます (コトバ自体が変わるのではなく 捉え方の範囲が変わるという意味)。
例えば昔当方が属していた小売業界で特に民生向け電気製品の業界ではそれこそ数百を超えて研修に参加しましたが、先ず以て講師を務める電気メーカー側ひいては配付資料の何処を見ても「OEM」以外の表現を目にした記憶がありません。この点についてある時に確かにこれら複数の用語が存在しそれぞれ内容/主旨が異なると解説を聞いた記憶がありますが (Panasonicの研修時)、現実的な話で何処を捉えて判断すべきかが相当複雑すぎて判定が難しい、或いは 企業秘密にも抵触しかねないので (部品調達先など) 抽象的表現として「OEM」と一つに括るのが最も意思疎通が適うと聞いた記憶があります。それは例えば一般的な電気製品のような 弱電業界で述べる内容がソックリそのまま自動車業界に当てはめられなかったりするので広く「OEM」と呼称するのが伝達し易いとの解説で至極納得したのを覚えています。
従って何処ぞのネット上サイトで述べられていた意見を見た記憶がありますが、当方は敢えて「OEM」以外使用しませんし、そもそも他のコトバを使うべき根拠を調べるのが不毛な話です(笑) 敢えてオールドレンズの世界で言うならオールドレンズ内部の一部部位の構成パーツが下請けに出されていた場合、或いは自社内でまさにその下請的なパーツを共用的に広く製産していた場合、それらを以て「OEMなのか否か」と設計図面1本にまとめるのは不可能と考えられるからです。そんな事柄にこだわって膨大な時間を割くにはあまりにも得るモノが少ないように感じます(笑) 伝われば良い事柄は「自社製品ではない他社向け供給品」との認識でありそれを強調したいなら「OEM」と一括りにして表現したほうが/使ったほうが相手に伝わり易いとの、確かPanasonicでとても有名だった講師の方のお話だったと記憶しています。
ましてや部外者たるユーザーサイド側の話として語り合うならそれだけで十分なのではないでしょうか? 守秘義務がある以上そう容易く時間を経ても外部に出て来ない話だって星の数ほどあるでしょうから、はたしてどうしてそんなにこだわるのか当方には理解できませんね(笑)
冒頭解説の最後になりましたが、今回のモデルに関してはそもそも実写を特定できない・・AUTO mamiya/sekorなのかAUTO MAIYA−SEKORなのか・・と言う問題が憑き纏うので敢えて掲載しません。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ハッキリ言って 調達した個体の光学系内の状況は「50%の確立でジャンク品レベル」と言うほどにクモリでコントラスト低下を招くは解像度不足でピーキング反応しないわ、もぉ〜最悪でした。
たった一つヤル気を維持できた要素は「Edixagonの真偽を示す!」と言う覚悟だけでした(笑)
何しろ調達資金が既に手元から消えているので (3年も続く新型コロナウイルスの影響とカラダの状態)、もう高額品をゲットする事は適いません。ましてや今出品しているSteinheil München製モデルのように二束三文の価格でしか推移しないと言う現実こそが自らの立場を 現しており、もはや自身の「技術スキルのあらゆる所以はまささに雲散霧消の如く消ゆ」なのが自明の理です。
・・10年間何をやってきたのかと恥ずかしい想いしか残りませんね。
それでも執拗にこうやって (来年夏までと言わずサッサと引退すれば良いモノを) ブログに載せつつオーバーホール済でヤフオク! 出品しているのは、偏に応援頂ける方々がほんの一握りでもいらっしゃるからです。それら皆様がきっと読んで下さる (実際は超長文なので圧倒的多数の人達にとり苦痛を伴う) との想いからです。例え1人だけだとしても必ず頻繁にこのブログを開いて興味を抱くオールドレンズを楽しみにしていらっしゃる人が居るだけでも、まるでウルトラマンの如く「たったの3分でいい」くらいの気持ちです(笑) ウルトラマンの前のウルトラQも好きでしたが (歳バレますね)(笑)
左写真は前回扱ったこのモデルの「後期型」たる「AUTO mamiya
/sekor 50mm/f2 (black)《後期型》(M42)」の同じ鏡筒です。
絞りユニットを配置する基本的な設計の概念は同一としても「鏡筒の固定方法を変更した」点が分かります。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑鏡筒最深部に絞りユニットをセットしたところです。この絞りユニットの構造自体は「後期型」で固定方法が変更されますが、そもそも絞り羽根制御の概念が同一のままなので特に組み上げ工程での工程数削減には一切寄与していません。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真の上側方向が前玉側にあたります。
「絞り羽根開閉幅微調整キー」と言う小さな黄銅製の円板がネジで締め付け固定されていますが、よ〜くその円板と締付ネジを観察すると「締付ネジの位置が円板の中心ではない」のが 分かります。
すると締付ネジを極僅かに緩めた時この円板を360度回していくと「左右と上下に大きく ブレる」のが自明の理です。この時、仮に上下方向で考察した時、この小さな黄銅製の円板が上側に固定されようとも下側に固定されようとも垂直状に同じ幅を有する時「鏡筒の左右方向位置はブレない」点がポイントになります。
当然ながらこの鏡筒の上側と下側には光学系前後群がネジ込まれますからこの鏡筒の固定位置が「上下方向でブレたら解像度が変わってしまう」もっと言うならピントが合わなくなる事が整備をしない人でも100%分かると思います。
詰まるところ設計時にこの円板の上下方向の位置で「鏡筒がブレないよう配慮すれば左右の ブレ幅だけを使う事が適う」との設計概念に至り、まさにそれをやったのが『富岡光学』な ので冒頭解説『富岡光学製の根拠3点の❸』の内容です。
ところがこのような設計概念には最大の問題点があって「絞り羽根の設定開閉幅が適切か否かは光学系前後群を組み込まないと判定できない」ワケです。それは当然ですョね? 何故なら各絞り値でのボケ具合が適切な範囲に収まるのかどうかは光学系を組み込まない限り調べられませんが、実際はおそらく当時の富岡光学内で製産工程には専用治具が用意されていて光学系前後群をセットせずとも容易にチェックできたのだと思います。
しかし今となってはそんな治具など用意するだけで大変なので光学系前後群を組み込んで現実的な絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) を簡易検査具を使って検査しない 限り確定できず「たったこれだけでとんでもなく大変」なのが『富岡光学製のイヤらしさ』 です。
その意味で簡易検査具でしかチェックしていないとSNSで批判の的ですが(笑)、そうはいっても電子機械設備などとても個人レベルで備えられる話ではなく簡易検査具で時間を掛けて検査 して次に進むしかありません。だから一日に1本しか仕上げられないのです。
それを卑下されるとなればまさに電子機械設備を手に入れずしてどうしてプロ/匠と言えるのかとのご指摘も的を射ていて真にご尤もです。そもそも当方はプロ/匠に値しない低俗な『転売屋
/転売ヤー』なので、どう言われようとも逃げようがありませが(笑)
↑完成した鏡筒をひっくり返して今度は後玉側方向を撮影しています。鏡筒からはたったの一つだけ「開閉アーム」と言う板状パーツだけが絞りユニット内の「開閉環」と連結して飛び出てきます (赤色矢印)。そしてグリーンの矢印で指し示したように1本のスプリングで引っぱられている状況です。この時、絞り羽根は「常に完全開放した状態を維持」するチカラが及んで いるのが鏡筒の絞りユニットの現実です。
つまりこのスプリングよりもさらに強いチカラが及ばない限り絞り羽根は全く閉じないのが ご理解頂けるでしょうか。
そして同様に左写真は前回扱った「後期型」での鏡筒の裏側を写真で同じようにスプリングのチカラで絞り羽根が常時完全開放状態なのがちゃんと写っています。
すると前述で「後期型」では鏡筒の固定方法が変わったにしても設計概念の本質は何一つ変わらなかったのが自明の理です。
↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。グリーンの矢印で指し示していますが「距離環の駆動域を決めるネジ穴が1つしかない」のがこのモデル「初期型」の厄介な要素です。
左写真は前回扱った「後期型」の基台ですが、穴が幾つも空いていて「無限遠位置の微調整ができる仕様」になっています。
逆に言うなら今回扱った「初期型」は無限遠位置の微調整機能が備わっていません。つまりヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置でしか 微調整できません。
ちなみに下に位置するネジ穴は「マウント部を締め付け固定する時のネジ穴」なので全周に 渡り合計3箇所備わります。
↑黄銅製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後 までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
すると黄銅製のヘリコイド (メス側) には一部に「制限壁」と言う壁が出っ張っていて、それが基台側に締め付け固定されている「制限キー」にカチンと突き当たる事で無限遠位置で停止します。一方一周回って反対側の制限壁でカチンとやはり制限キーが突き当たると「最短撮影 距離位置で突き当て停止」と言う原理ですね (グリーンの矢印)。
↑上の写真はその黄銅製ヘリコイド (メス側) に備わるネジ穴部分を拡大撮影しています。距離環を締め付け固定する為のネジ穴が用意されています (赤色矢印)。ところが合わせてオレンジ色矢印で指し示している箇所に注目して下さいませ。
実はこの黄銅製ヘリコイド (メス側) に距離環が締付ネジで締め付け固定されるのは間違いないとしても「そこに無限遠位置を微調整する機能が附加されていない設計」なのをオレンジ色の矢印が示しています。
↑全周の中に合計で3箇所備わる締付根城の穴の1箇所だけを拡大撮影しました。すると赤色矢印で指し示した箇所に締付ネジ用の穴がちゃんと空いていますが距離環の固定位置を微調整できるような「マチ幅/隙間」が穴には想定されておらず「1箇所でしか締め付け固定でき ない」のが明白です。
すると今までに10年間で3,000本以上オーバーホールしてきましたが、そんな中には過去 メンテナンス時にムリに/強制的にドリルで「マチ幅/隙間」を切削し距離環に刻印されている無限遠位置「∞」刻印の位置を微調整できるよう加工した個体がありましたが、実はそんな事をしても「そもそもヘリコイドの停止位置が変化していないので無限遠位置は適合しないまま単に∞刻印にピタリと合っただけの話」だった個体が幾つもあります(笑)
つまり「原理原則」を全く理解できていません(笑)
本当に距離環に刻印されている「∞」刻印位置がピタリと合致するよう設計するなら上の写真の赤丸のように締付ネジが締め付け固定できるよう設計するのが筋です (グリーンの矢印)。 そうすれば「∞」刻印がどんだけズレてしまってもピタリと合致されられます。しかしその 前提は「ヘリコイドの停止位置まで変更できなければ単に刻印位置だけがピタリと合っただけの話」なのだと言う点に考えが及びません(笑)
・・要はバラした逆手順で組み上げている整備者レベルの話です(笑)
↑黄銅製のヘリコイド (メス側) に対し今度はアルミ合金材の削り出しヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます (赤色矢印)。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
するとヘリコイド (オス側) の内側には垂直状に溝が切削されそこに板状パーツが刺さっています (グリーンの矢印)。
↑上の写真は前回扱った「後期型」から同じオーバーホール工程のシ〜ンで写真を転用しました。同様黄銅製のヘリコイド (メス側) に対してアルミ合金材のヘリコイド (オス側) がネジ込まれている状況です。
基台側には「無限遠位置を微調整できるようヘリコイドメス側の突き当て停止位置を変更できる設計が採り入れられている」のが分かります (締付ネジ3本で締め付け固定されている)。
さらにオレンジ色矢印で指し示した箇所に「段差がある」のが分かります。これがポイントで距離環の締付固定位置をズラせられる設計なのでピタリと「∞」刻印位置でカチンと停止させられる原理です (グリーンの矢印の位置に全周に渡り合計3箇所締付用のネジ穴が備わる)。
つまり締付ネジで距離環を締め付け固定する時、この段差と距離環の内側の突出を互いに締付ネジで締め付け固定すれば自在に距離環の固定位置が変更できるからこそ「ピタリと∞刻印 位置で合致できる」仕組みなのです。
このように「観察と考察」を必ず行い、且つ「原理原則」に則り考えていけば自ずと「どのように処置すれば良いのか」が見えてくるワケで、その際特別に設計図面もサービスマニュアルなども手元に無くても何ら支障を来しません。
そのようにサービスマニュアルが無いくせに知ったかぶりを解説していると指摘するほうが「よほどド素人レベルの考察」と敢えて断言しますね(笑)
逆に言うならそんな技術スキルレベルでは「今までに扱った事が一度もない初めてのオールドレンズ」を完全解体してちゃんと本来あるべき姿に組み上げていくオーバーホール工程などできるハズがありません。オールドレンズのオーバーホールをそんな簡単なレベルと受け取られるなら、是非ともご自分でバラして組み戻してみて下さいませ(笑)
ちなみに上の写真では黄銅製のヘリコイド (メス側) が一周回りきって制限壁が反対側の「制限キーに突き当て停止している状態」であり最短撮影距離位置までヘリコイド (オス側) を繰り 出している時の写真とすぐに分かります。
だからこそ実際にバラしていなくても現状の症状を知っただけで大凡の問題部位や構成パーツの微調整など改善すべき箇所が思い浮かんでくるワケで、それこそが「ごまかしていない証 そのモノ」なのです(笑)
↑完成したヘリコイド (オスメス) を基台含めひっくり返して後玉側方向から撮った写真です。「直進キー」と言う板状パーツがヘリコイド (オス側) に用意されている「直進キーガイド」と言う溝に刺さり、黄銅製のヘリコイド (メス側) を回すことで回転するチカラが瞬時に直進動に変換されて鏡筒を繰り出す/収納する動きに変わる原理が分かります (赤色矢印)。
すると今回の個体も全くいつもと同じですが過去メンテナンス時にタップリと「白色系グリース」が塗られていましたが今回のオーバーホールではグリースなど一切塗らずに組み上げています。
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
逆に指摘するならこの「直進キー」の位置に距離環を回すチカラが伝わり蓄えられてしまったら「たったそれだけで距離環を回すトルクは相当な重さになってしまう」結果に至ります。
何故なら鏡筒まで含めて繰り出し/収納する必要があり、且つその時絞り環と鏡筒から飛び出ている「開閉アーム」はガッツリ掴まれたままであり、それら部位からの抵抗/負荷/摩擦を総て込み込みで距離環を回すトルクが決まるからです。
もっと言うならヘリコイドグリースの粘性だけで軽くできると考えている限りオールドレンズの内部構造の基本中の基本を全く理解できていません(笑)
従ってこの「直進キーとそのガイド/溝部分にグリースを塗らずともどうして軽いトルク感を 実現できているのか?」がポイントだと気づかない時点で整備者の資格など在りませんね(笑) 距離環を回す時に指で加えたチカラはその総てが瞬時に (何処にも蓄えられずに) 鏡筒の繰り出し/収納、及びマウント部内部の各構成パーツのチカラ伝達へと伝わっていくのが「原理原則」です。だからグリースなど「直進キー」に塗らずとも軽いトルクなのです(笑)
時々当方にメールを寄こして使っているグリースの種別を根掘り葉掘り聞いてくる人が居ますが、そもそもそういう質問をしている時点で何も見えていません (当方にすれば恥ずかしい人だなぁ〜との印象を受けながら着信メールを見ています)(笑)
当方にすれば塗布するヘリコイドグリースの種別など、ライカレンズのトルク感に少しでも 近づけられるほどに特徴のある感触になれば良いとの想いから選択しているに過ぎず、ヘリコイドグリースの種別を気にするなど千差万別でそもそもトルク制御に於ける重要な要素を全く以て見誤っていますね(笑)
ちなみにライカレンズの新品に適うハズがないのでせめて「特徴的な印象を植え付ける為」に特異なグリースをチョイスして、且つ敢えてこだわって「黄褐色系グリース」にしているだけの話です。そこにトルクを軽くする要素など顕在しません (感触の話だけです)(笑)
「黄褐色系グリース」をチョイスしている根拠はたったの一つ・・それらオールドレンズが 製産されていた当時には「白色系グリース」を使っていなかっただろうから・・と言うだけです。厳密には前出の金属加工会社社長さんのご教授と共にグリース会社にも赴きご相談して チョイスしたグリース種別なので少なくとも今ドキの人気な「白色系グリース」は使用していなかったといずれでも明確なご案内を受けた次第です。それまでウソだと言い張るなら業界を跨いで貶しているワケで、そこに論説の有意義など担保されません(笑)
ある人はツーツーのトルク感を好むかも知れませんし、ある人は多少の抵抗/負荷/摩擦を感じるほうが「回している事実を感じられる」点で印象が良くなります。ハッキリ言って動画撮影には抵抗/負荷/摩擦が無いツーツーの無機質な滑り感が好まれるでしょうが、普通一般的に ピント合わせするオールドレンズの使い方となれば「撮影に没頭している時はトルク感よりも回してピント合わせしている現実の実感」のほうが楽しいハズで、然しそのように指摘すると今度は「重いトルク感でそんなのは苦痛にしかならない」とメールしてきますが(笑)、当方ではあくまでもピント面のピーク/山の状況を以て「軽く仕上げる前提」なのでピント合わせに 没頭できると述べています。
まるで人の揚げ足取りみたいな話ですが(笑)、実際重いトルク感でしか仕上げられなかった時はちゃんと「判定チャート」で「重め」を謳っているので「重め/普通/軽め」の3つもトルク感の印象を用意すれば多くの方々には伝わり易いのではないでしょうか?
そのような努力/配慮すら認めずにひたすらに貶し続けているのがSNSの人達/勢力で全く以て心の器の狭いヤツらです(笑) いったいどれだけのヤフオク! 出品者がそのようにトルク感に こだわって出品しているのでしょうか???
↑マウント部内部の写真です。当初バラした直後は過去メンテナンス時に塗られた「白色系 グリース」のせいで経年の揮発油成分がヒタヒタ状態でした。一部構成パーツは「緑青」が 出ていたくらいです。当方の手で「磨き研磨」してから撮影しています。
当オーバーホール工程解説の冒頭部分で説明した「鏡筒のスプリングで常に絞り羽根を完全開放状態にチカラが及んでいる」と述べていたのに対し、右写真のようにマウント部内部では「スプリングではなく捻りバネで常に絞り羽根が閉じるチカラを及ぼす」ので、絞り羽根の開閉はこれら「相反する2つのチカラバランスの中で絞り羽根が正常に開閉動作する」原理です。
従ってスプリングなり捻りバネなりその一方だけをペンチを使って強制的に曲げて/変形させてチカラを増大させた「ごまかしの整備」が過去メンテナンス時に横行しているのが現実です。それで改善されるなら良いではないかと言いますが、ところが製産時点にそのようなムリな チカラが及んでいなかった分、それら処置されたスプリングや捻りバネはサッサと経年劣化が進行しパーツの寿命に至ります (つまりやがて絞り羽根開閉異常を改善できなくなる)。
・・はたしてそんな製品寿命を短くしてしまう所為が正しいのでしょうか???
↑取り外していた各構成パーツも全て「磨き研磨」を施し組み付けます。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) そのチカラが「カム」伝達されて「連動アームに対し捻りバネのチカラが作用して」金属棒が「なだらかなカーブ」に突き当たり、その時の絞り環による設定絞り値に見合う「勾配でカチンと突き当たり」設定絞り値が具体的な絞り羽根の閉じる移動量日本冠されて決まります (ブルーの矢印②)。それがそのまま具体的な絞り羽根の開閉動作として「操作爪を動かし」設定絞り値まで絞り羽根が瞬時に閉じる原理です (ブルーの矢印③)。
この「原理原則」を正しく適確に解説できる整備者が本当に少ないです。
もっと言うなら同じ「M42マウント規格」ならフィルムカメラ装着時もマウントアダプタ経由でも同じと頑なにクレームしてくる人達/勢力がいまだに多いので堪ったものではありません(涙) どうかそのような方々はプロのカメラ店様や修理専門会社様などにご相談なさるのが 良いと思いますね。当方のような何処のウマの骨か分からない整備者相手に真っ当な話を振らないほうが良いと思います(笑)
↑ちなみに上の写真は前回扱った「後期型」のマウント部内部の状況なので100%同一設計なのがご理解頂けるのではないでしょうか (上の写真ではなだらかなカーブの開放側に突き 当たっているので絞り羽根は完全開放したままの動き方になる)。
すると鏡筒の設計仕様が変わったとしても「開閉アームで常に完全開放したままを維持」との設計概念が同一なままだと冒頭で指摘した話がこれで納得できるのではありませんか???
ここで鏡筒を組み込みますが解説のとおり赤色矢印で指し示している「絞り羽根開閉幅微調整キー」と言う小さな黄銅製円板がヘリコイドオス側 (内側の縦方向の溝部分) に入るので、やはり冒頭で解説したとおり「上下方向での円板/キーの位置は同一として扱われ鏡筒固定位置が変化しない原理」と言う話です。
↑上の写真ではひっくり返してマウント側方向から撮っていますが絞り環を組み込んだところです。すると絞り環裏側に「絞り値キー」と言う各絞り値に見合う溝が切削されていて (赤色矢印)、そこに隣に並ぶ「スイッチ環」に備わるスプリング+鋼球ボールがカチカチとハマるからクリック感が実現される仕組みです (グリーンの矢印)。
このようにワザワザ敢えて鋼球ボールの場所を別の構成パーツに用意する考え方がまさに冒頭『富岡光学製の証の❷』にあたります。
↑上の写真も同様前回扱った「後期型」からの同じ工程での転用写真です。同じ仕組みである事を解説していますから「初期型/後期型で変化無し」の要素です・・冒頭『富岡光学製の証 の❷』です。
↑スプリングと鋼球ボールを組み込んでから「スイッチ環」をセットしたところです (赤色矢印)。するとこの「スイッチ環」を横方向からイモネジ (グリーンの矢印) で締め付け固定する 方式を採っているのがこの当時の数多くのオールドレンズの中で『富岡光学だけだった』からこそ冒頭『富岡光学製の証の❶』であり、唯一この要素だけが外から外観のチェックだけで『富岡光学製』の判定が適う要素です。
左写真はやはり「後期型」の同一工程ですが100%同じ仕様です。
するとこのイモネジで締め付け固定する工程で「必ず微調整が発生 する」からこそ意味不明と指摘しているワケで、もっと言うなら金属加工会社社長さんさえもムダだと指摘した要素です。
何故なら「スイッチ環側に鋼球ボールが居るから締め付け固定した位置がズレるとクリック感が絞り環の刻印数値とチグハグになる」と言う具体的な違和感が生じます。
例えば絞り環の設定絞り値を「f5.6」にセットしたつもりなのにクリック感を感じる箇所が ズレているので「f4のクリック感なのかf5.6なのか判別がつかない」わけで、結局開放側に もう一度回してから数えるか、或いは最小絞り値側にしてから戻すのかと言う話になります。
・・これを違和感と感じない人は相当に少ないでしょう(笑)
従ってどんなに専用の治具が製産時点に備わっていても「工程として1工程分の微調整が必ず発生する」のが意味不明と指摘しているのです。普通に他社光学メーカーと同じように絞り環の壁面部分 (マウント部外壁) に鋼球ボールを埋めてしまえばそれだけでカチカチクリック感が実現できたのにどうしていちいち敢えて微調整させたのか「???」なのです。
↑指標値環をセットしてやはりイモネジで締め付け固定します。ここも「イモネジ」を使うので (グリーンの矢印) 当然ながら微調整機能になっていて「指標値環の「●」マーカーと絞り環刻印絞り値とのズレ」が問題視されます。
◉ イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っている ネジ種
するとネジの先が尖っているので (尖っていないイモネジも一部にある) 締め付け固定する対象の構成パーツは基本的に360度どの位置でも締め付けが適うという概念ですが、そもそも 固定する場所はほぼ限定されるので「ほんの僅かに1mm前後の幅でズラせられるかどうかの微調整機能」と指摘できます。
↑こんな感じで距離環がセットされますが、前述のとおり無限遠位置たる「∞」刻印の位置は微調整できないのがこの「初期型」なのでご覧のように指標値環の「●」マーカーの位置に 対して極僅かに「∞」刻印がズレています (中心に来ていない)。
もちろんこれをピタリと合わせられるのですが (イモネジなので固定位置は自由自在) すると 今度は絞り環の刻印絞り値と指で感じるクリック感がチグハグになりどっちでクリック感を 感じているのかが心配になります。
・・これほど面倒くさい違和感はありません(泣)
従ってメインでピタリと位置合わせするなら「クリック感と絞り値の刻印と指標値環」なので距離環の「∞」刻印の僅かなズレは諦めるしかありません。これをピタリと合致させるには もぅ一部パーツを切削しない限り不可能ですが、すると今度は鏡筒が沈みすぎるのでピント面の解像度にまで影響があられます。アッチ良ければこっちダメみたいな話ですね(笑)
だからこそ「後期型」では設計変更して無限遠位置の微調整機能を装備してきたワケですが、その為に変更するべき箇所はとても多かったワケです。このような話こそが「富岡光学の意味不明な設計」であって、詰まるところ当方では経営破綻する因果関係の一つの要因とも受け 取っています。
この後は光学系前後群を組み込んでから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれ ぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。距離環を回すトルク感は軽いですし絞り環操作は
小気味良いクリック感でもちろん絞り羽根の開閉動作は確実です。当然ながら装備しているA/M切替スイッチに伴う挙動もシャコンシャコンと気持ちいいです。
たった一つだけ指摘するなら「A/M切替スイッチのツマミが割れたりヒビが入ったりして
モロイ状態」なのでエポキシ系接着剤で接着したものの完璧ではありませんからご留意
下さいませ。
さて、それでは少しずつ冒頭の仮説の検証たる ミステリアスなオールドレンズ について解説 していきます。
↑上の写真は最後組み上げる寸前で撮影したマウント部の絞り連動ピン周りの状況です。冒頭解説で掲示した写真のとおり「Edixagon 50mm/f2 (M42)」のマウントカバー (メクラ) が 脱落してしまった個体写真と近似した角度で見えるよう撮りました。特にグリーンの矢印で 指し示している箇所が切削されていて、実はそこに鏡筒から飛び出ている「開閉アーム」が 位置するのが分かります。
まずこの写真によりマウント部にメクラが接着される設計を採っていたのが確実で、それは 詰まるところ「後期型」のアルミ合金材の一体削り出しではないのが明白です。
↑さらに決定的な証拠を上の写真で解説しています。上の写真はネット上で見つけた個体写真の一つですが「Edixagon 50mm/f2 (M42)」が今回扱った「初期型」と光学系が100%同一である点を示しています。
赤色矢印の位置に前玉用の締付環が備わります。後の「後期型」では遮光環と一体になるのでこのように二段階で遮光部分が顕わになりません。さらにグリーンの矢印で指し示したとおり今度は光学系第2群の貼り合わせレンズの上にセットされるやはり第1群 (前玉) との間の空間を埋める役目 (実際は前玉の光路長を確定する役目) のシム環仕様がやはり100%同一です。
◉ 貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤/バルサム剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す
この2つの要素はいずれも「後期型」では変更されてしまうので当然ながら以前扱った際の 説明のとおり光学系の設計が極僅かに違います。
このEdixagonを実際に手に入れてバラしていないので内部の設計は知りませんが、少なくとも『富岡光学製の証たる根拠の❶』は確実で、プラスして光学系の仕様が同一となればこれは。
Rodenstock製ではなく富岡光学製で歴然たる日本製と断言できると考えます。ではどうして「MADE IN JAPAN刻印が何処にも無いのか?」は一部ネット上サイトで旧西ドイツの現地で組み立てられたと指摘されていますが、もしもそれを実現するなら「ほぼ半完成品くらいまで組み上げ完了している状態で輸出」しないと適いません。何故なら専用の治具まで輸出でき ないからです。
すると組み立て工程で治具が必要となる、或いは検査が必要な部位のみ事前に組み立て工程を経て半完成品の状態で「パーツ扱いでまとめて全数で輸出」していたのなら製造国刻印は当時の国際輸出法に倣えば免れていたと思います。少なくともゼロから組み立て工程を進める状態での輸出はどう考えてもあり得ません (それこそ富岡光学が消滅して工場設備含め輸出したの なら話は別)。
この辺りのミステリー部分はまだ仮説が不明瞭な状況ですが、仮に半完成品にしてもほとんど部位別に組み上がっている状態でなければ意味がありませんから、最後の光学面での検査に ついてその正常をいったいどのように担保したのか/担保できたのかどう考えても納得できません。何故ならそんないい加減な組み上げ工程の完了を採らないハズなので半完成品での輸出もどうかと思います。特に指向先メーカーが「Wirgin社」ともなればどちらかと言うとレンズメーカーではなくフィルムカメラメーカーなので、その辺り計測設備も富岡光学が輸出しない限り作る必要が生じたのではないでしょうか? だとすればたった1種類のしかも廉価版のモデルの為にそんな機械設備を用意しないと考えます。
ちょっと分かりませんが唯一残る仮説と敢えて示すなら「シールでMADE IN JAPANやっていた」のも一部のオールドレンズで実際にあったのであながちそんないい加減な対策でも先方は輸入OKだったのかも知れません (分かりませんが)(笑)
少なくとも箱単位で製造国表記は許されていなかったようなので、個別に単品にシールベタ ベタ貼っていたりするのも考えられます(笑)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。いわゆる「スカッとクリア!」なレベルで正直マミヤ光機製の『富岡光学製オールドレンズ』となるとここまでクリアなのはそう多くないです。但し後群側/後玉には経年並みのカビ除去痕が微細な点状で無数に残っています。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群も極薄いクモリが皆無ですがパッと見で「塵/埃」に見えがちな実は極微細な点状カビ除去痕なのか、CO2溶解なのか不明ですが無数に残っています (写真に一切影響なし)。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:10点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後群内に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大4mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環やA/M切替スイッチ共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。またA/M切替スイッチによる切り替え動作も確実でシャコンシャコンと小気味良く反応します。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感強め)。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・A/M切替スイッチのツマミか経年劣化に伴い弱くなっています。既に1箇所割れ1箇所ヒビが入った状態で接着などしていますが折れる懸念が残っていますのでご留意下さいませ(クレーム対象としません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
① HAKUBA製MCレンズガード (新品)
② 本体『AUTO MAMIYA−SEKOR 50mm/f2 (two-tone)《初期型》(M42)』
③ 汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
④ 汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)
↑完成した出品個体を撮っていますが「A/M切替スイッチのツマミ部分」に割れをエポキシ系接着剤で接着した箇所と (赤色矢印右側) とヒビ (赤色矢印左側) があり、既にツマミの樹脂材自体が経年劣化で相当弱っています。操作時にはご留意下さいませ。
特に他に指摘する事がないくらいに完璧な仕上がりです (このツマミを除いて)。距離環を回すトルクは軽めですしクリック感も小気味良くちゃんと絞り羽根も反応しています。A/M切替スイッチとの挙動も適正です。
そして何よりも驚いたのは冒頭解説のとおり「こんなに鋭かったのか?」と言うピント面の鋭さで、しかもそれはエッジ部分も含めて明確にピーキング反応を示すのでちょっと「後期型」っていったい何が気に入らなくて光学系を再設計してしまったの???・・と思ったくらいです。
ハッキリ言って光学系イジらなければ良かったのにと素直な第一印象/感想です。そのくらい素晴らしい鋭さです。まぁ〜当方がそもそも焦点距離「50mm/f2に敏感」なのも影響してますが、だとすれば「後期型」も相応に画の鋭さを感じるハズですが、別次元です。
・・この描写性 (と言ってもピント合わせ時の話だが) は全く以て想定外のオドロキでした。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」に設定して撮影しています。
↑f値「f11」です。ちょっとビックリしたのはこのf値でミニカーの真っ黒な窓部分にちゃんと光沢感が残っている写り方にハッとしました。正直f11でこのような艶のある光沢感はあまり見ません。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっているのでさすがに「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。