◎ Tokyo Kogaku (東京光学) R. Topcor 13.5cm/f2(RE/exakta)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わってご案内するモデルは、国産の
東京光学製中望遠レンズ・・・・、
『R. Topcor 13.5cm/f2 (RE/exakta)です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール/修理を賜りご案内するモデルは当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で初めての扱いになります。

1957年に東京光学から発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「TOPCON R」向けのオプション交換レンズ群として発売した中望遠レンズです。中望遠レンズ域は他に9cm/f3.5や13.5cm/f3.5を同時発売したようですが、そもそもこれら「TOPCON R」発売と同時に用意されたオプション交換レンズ群は「プリセット絞り機構装備」のタイプでした。

その一方で同じ1957年に半自動絞り方式で設計された「Auto Topcorシリーズ」も数種類ですが発売しているので、それらのオールドレンズを装着すると半自動絞りで撮影する事ができるようです。

オーバーホール/修理が終わりこのブログの下調べを始めた時点でようやく「このモデルが1964年の東京オリンピック公式記録レンズに採用されていた」ことを知りましたが (トプ・ガバチョさんのページ)、実はオーバーホールしている最中に内部構造面でいろいろ思うところがあり、フッと1936年に開催された戦前ドイツのベルリンオリンピックの際、やはり公式記録用レンズとして採用された (国威発揚の映画まで製作された) 戦前Carl Zeiss Jena製望遠レンズOlympia Sonnar180mm/f2.8《前期型》(exakta)」をそのまま思い出していたので、オリンピック繋がりでオドロキでした(笑)

と言うのもこの戦前Carl Zeiss Jena製Olympia Sonnarのオーバーホール/修理ご依頼を賜り扱ったところ、その描写能力と言ったらとんでもないレベルなのを思い知り (焦点距離180mmですから!)、1936年時点でこの光学技術力を普通に発揮できていた戦前ドイツの国威に今さらながらに恐れを成した次第です(驚)

もちろん1936年当時は世界的にも白黒写真ですが、実は日本で国産のカラーテレビが発売されたのがまさに1957年だったようです。その後1960年にはカラーテレビ放送を開始するので、1964年の東京オリンピック開催時はカラー放送で流されていました。

しかしそれらの時系列で捉えると、今回扱ったこのモデルが登場した1957年の時点では「まだカラー写真の撮影と普及率は相当低い時期」とも言え、このモデルの光学系は「おそらく白黒フィルムを使った撮影を主体として光学設計していたのではないか」など妄想を巡らせつつ、オーバーホール作業を進めていた次第です(笑)

そんな経緯から前述した戦前ドイツが誇ったCarl Zeiss Jena製望遠レンズOlympia Sonnarの凄まじい写りを思い出していましたが、如何せんオーバーホールが終わって実写確認すると
・・いやいやどうして、このモデルの描写性能もとんでもないではないか!・・と改めて驚いた次第です(驚) 確かに1936年のベルリンオリンピックから20年以上が経ちドイツも日本もともに戦争を乗り越えていたものの、特に日本は高度経済成長の真っ直中 (1953年1973年の19年間) であることも含むと、やりたい事を一心不乱にやりたいだけ追求できていた時代だったのではないかと何とも懐かしく感じたりします(笑)

そう言えば日曜の夜8時に1975年〜1976年まで放送されたドラマ「俺たちの旅」を毎週楽しみにしていたのを思い出しました(笑) 中村雅俊 (カースケ) や秋野大作 (グズ六) に田中健 (オメダ) 達の青春群像にちょっと前の自分達世代を重ね合わせて何だか親近感があって楽しく視聴していました(笑) きっと巷では高度経済成長の反動で特に団塊世代の背中を見てきた団塊ジュニア世代へと移行する中、当方のような新人類世代の先駆け的存在はおそらく世間からも異端児扱いで、いまもなおそれが何だか続いているように思えます(笑)

今回初めて扱いましたが、バラしてみれば何となく当時臭さが感じられ(笑)、意外にも親近感を覚えたのでちょこっとブログに書いてみました・・(笑)

なお、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」ここで述べている事柄
/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。

従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。

ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。

そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は御座いません)。

今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。

ご指摘事項は・・・・
   出品者のひとりごと・・・・pakira3kara@pakira3.sakura.ne.jp
までお知らせ下さいませ。

・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。

  ●               

↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

このモデルの実写を観たいと思いいろいろ検索しましたが「写真が・・無い!」(涙) 今ドキなデジカメ一眼/ミラーレス一眼で撮れば左側2枚の如く (可愛い猫の写真) 素晴らしい質感表現能力の高さを誇りますが、当時のフィルム印画紙での撮影を観ると、やはり右端の白黒写真で初めてこのモデルのポテンシャルを感じ入った次第です(驚) このような写りをフツ〜にやってしまうからこその「東京オリンピック公式記録レンズ」の称号だったのでしょう・・(涙)

・・とにかく素晴らしいオールドレンズです!!!

光学系がまたオドロキもので、中望遠レンズなのに何と4群6枚の
ダブルガウス型構成です!(驚) これが焦点距離:85mm辺りのポートレートレンズならまだサクッと納得できるものの、135mmの焦点距離までこの構成をやってしまうのですか?!(驚)

どうりで光学系第1群前玉の巨大さが (あくまでも135mmとして括るとバカデカイ!) 否応なしに納得できてしまいます・・前玉は外径サイズ69.97mmなので、如何にデカいのか分かると思います。

しかも鏡胴外装パーツはもとより内部パーツのほとんどがアルミ合金材なので、このモデルの「総重量1115.5g」と1kg越えなのは「まさに硝子の塊状態!」と言えます(驚)

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

ネット上で拾えるこのモデルの光学系構成図の中でたった一つのサイトだけが「ほぼ99%の正確なこのモデルの光学系構成図を掲示していた」のでオドロキです (むしろ某有名処には未掲載でガックシ)。そのさんざん探して見つけた正しい構成図と前述の当方が現物を計測してトレースした構成図との相違点は「光学系第3群の貼り合わせレンズのカタチだけ」だったので驚異的な正確さです (こちらのサイトです/貴重な情報をありがとう御座いました)。

↑当方が光学系のカタチの相違や計測サイズの違いを指摘すると「ウソを拡散している」と批判する人達/勢力があるようなので(笑)、いちいち面倒ですが『証拠写真』を載せないとヘタすれば誹謗中傷メールが着信します(怖)

上の写真は今回の個体を完全解体してオーバーホールする際に取り出した光学系第3群の貼り合わせレンズです (横方向からの撮影/写真左方向が後玉側方向にあたる)。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

↑同じ光学系第3群貼り合わせレンズですが拡大撮影しました。すると赤色矢印で指し示したように極僅かですが貼り合わせレンズの接着面に「段差が在る」のが分かります。たまたま貼り合わせレンズを接着する際にズレてしまったのではなく(笑)、ちゃんと外径サイズも計測し、且つこの光学系第3群貼り合わせレンズが格納される先の「格納筒内壁にも同じ位置に段差が在る」のを確認済です。

冒頭でご案内した「唯一発見したネット上の正確な光学系構成図との相違点がまさにこの段差部分/貼り合わせレンズの両方で外径サイズの相違」と言えます。

・・これで少しは信憑性が上がったでしょうか?(笑)

ちなみに上の写真で左側の光学硝子レンズ面に虹色の光彩が見えるのはバルサム切れのニュートンリングではなく、単に撮影に使うミニスタジオのライティングの影響です。

↑さらに今回扱ったこの個体の光学系の事実を示す写真をもう1枚。上の写真は光学系第2群の巨大な貼り合わせレンズです。こちらの貼り合わせレンズには段差が無く一般的な貼り合わせレンズと同じ形状ですが、その直径たるや「64.97mm」です(驚)

上の写真で赤色矢印/赤色ラインで囲った領域は、実は過去メンテナンス時に厚塗りで着色された「反射防止黒色塗料を剥がした領域」を囲っています。

溶剤を使って溶かして除去した領域を、その隣接域で「反射防止黒色塗料がまだ塗ったまま」なのを比較できるようワザと故意に残したまま撮影しています(笑)

ご覧のように溶剤を使って溶かして除去したにもかかわらず「着色していた反射防止黒色塗料の下からさらに黒色の部分が現れた」のを赤色矢印/赤色ラインで囲っています。

・・何を言いたいのか???

つまり製産時点でこの貼り合わせレンズの側面はちゃんと「反射防止黒色塗料」で焼き付け塗装していた事が分かります (溶剤で溶けないから/剥がれないから)。

それなのに・・どうしてその上から敢えてワザワザ過去メンテナンス時の整備者は「反射防止黒色塗料」を厚塗りするのですか???

今回の個体で言うと、この厚塗りの分だけ格納位置がズレてしまい、特に無限遠位置側で少々甘い印象の写りに変化していました。今回のオーバーホール作業が総て終わり実写してみると、無限遠位置でも十分鋭いピント面を吐き出す事を確認できましたが、当初バラす前の実写チェック時点では「僅かに甘めの印象」だったのです。

・・どうして必要ない箇所にまで反射防止黒色塗料を塗りたがるのか???

マジッで毎回の作業で本当に腹が立つのですが (これら必要外の反射防止黒色塗料を溶剤を除去する作業だけで1時間は最低かかるから)、このような「反射防止黒色塗料」を着色したくなる理由は・・たったの一つ!(笑)

・・光学系内が真っ黒クロスケで見栄えが良いから!(笑)

たったそれだけの理由で、或いは「迷光を気にするから」との憶測にも繋がりますが、そういう「迷光信者」の人達や勢力が現実に数多く存在する事を知っています。もっと言うなら未だにネット上で「迷光」と煽り続けている始末で、本当に煮ても焼いても食えません。

・・反射防止黒色塗料を塗りまくる整備者がイケナイなら顧客もたいがいにしてほしい。

マジッでそう思いますね・・(涙)

ちなみにこれら必要外の「反射防止黒色塗料」のせいでさらにもう一つの問題が発生しています。この点については後ほど解説します。

なお上の写真では上手く色濃く写せていませんが(汗)、現物の蒸着コーティング層は「濃い色合いのパープルアンバーの光彩を放っている」状況です (光に反射させると視認できる)。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。オーバーホールのために完全解体してバラしてみればご覧のように「ひたすらに環/リング/輪っかの集合体」です(笑)

が然し、実はこのモデルが登場したのは冒頭解説のとおり1957年であるにも関わらず「内部構造の設計はさらに遡る相当以前のオールドレンズを倣っているように見える」と言うのが今回の当方の結論です。この点についても解説していきます。

↑何しろ筐体サイズがデカイので (全長141mm/最大径:76.62mm) 総てが並びきりません(笑) 手前側に並べている環/リング/輪っかは「絞りユニット」の構成パーツで、左から「位置決め環」に中央の「メクラ環」そして右端の「開閉環」です。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。この鏡筒を観てすぐに思い浮かんだのが旧ソ連時代に設計/生産されたロシアンレンズのHELIOS-40 8.5cm/f1.5 Πです(笑) 同じようにチョ〜巨大な筐体の中望遠レンズです。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根1枚1枚のサイズも大型ですが、このモデルは国産品でしかも1957年発売です。

ところが左写真の赤色矢印の箇所をよ〜く観察してみて下さいませ。赤色矢印の箇所で製産時点でニッパーか何かで「カットしていた痕跡が残っている」のが分かるのです。

つまり製産時点、これら絞り羽根は「まるで枝豆の房のようにブラブラとブラ下がってプレッシング工程から出てきていた」のが目に浮かんできます(笑)

何故なら、絞り羽根の1箇所にこのように切断面が残っているからで「プレッシングで一気に切断していなかった」そう言う時代のオールドレンズなのが分かるのです(笑)

左側の絞り羽根の赤色矢印の箇所には切断面が少し残っています (平坦にキレイに切断できていない)(笑)、一方右側の絞り羽根には切断面が白っぽく金属材が露わになっています。

こういう「観察と考察」も別にオーバーホール工程で微調整などを楽にする要素には決して繋がりませんが、それでも当時の生産状況や設計が垣間見え、何となくオモシロイ気分になります(笑)

ちなみに戦前ドイツのCarl Zeiss Jena製オールドレンズはもとより、戦後旧東ドイツのCarl Zeiss Jena時代からして、特にシルバー鏡胴モデルが主流だった時代は「絞り羽根は枝豆の房状態だった」ワケで(笑)、全く同じように切断面が残っています。

実はこの絞り羽根を切断していた製産工程なのが分かったからこそ見えてきた、このモデルのもう一つの事実も露わになります。

↑8枚の絞り羽根を組み込んで鏡筒最深部に絞りユニットをセットしたところです。しかしご覧のように皆さんが非常に嫌う「ピッカピカの迷光しまくり状態」に仕上げてあります(笑)

別にピッカピカにしたくて当方の『DOH』たる「磨き研磨」を施したワケではありません(笑)

実は今回の個体をバラす前のチェック時点で「絞り羽根の開閉動作を速めに動かしていると時々絞り羽根が重なり合ったまま中央が膨らむ」現象が20回に1回程度で発生しました。

必ずそういうチェック (絞り羽根開閉異常のチェック) もバラす前に実施しているので確認できるのです。今までの12年間で3千本以上のオールドレンズを捌いていると、バラす前のチェック時点の操作で絞り環と絞り羽根との連係動作に違和感を感じたり、或いは抵抗/負荷/摩擦が伝わったりと少しでも正常駆動が疑われる場合は、自分が「不具合が出ている?」と納得できるまで何回も同じ操作を試してみます(笑)

もちろんご依頼内容にも実際に当方の目で確認しても「絞り羽根に油じみの痕跡は無い」ものの、現実に絞り羽根が膨れあがるのは「表裏にプレッシングされているキー脱落の懸念が高くなる」ので放置できません!(怖)

そこで完全解体した後にいろいろ調べていくと「観察と考察」に合わせて「原理原則」から「絞りユニットに遊びが在る設計」なのが判明します。

ご依頼者様はご存知だと思いますが、実際にこのオールドレンズを (大きくて大変ですが) 少し振ると「カシャカシャ音」が何処かから聞こえてくるのです。その音がまさにこの絞りユニットの「遊びの音」だったのです。

ところが、今度は逆の質問が沸いてきます。「遊びが在るなら/隙間が在るなら挟まれている絞り羽根に圧が加わって重なり合う時に膨れる減少に繋がらない」との推察に至ります。

・・全く以て正しく適切な推察なのですが、残念ながらこのモデルは別の意味だったのです。

↑ちなみに上の写真は冒頭の完全解体した時の撮影写真ですが、赤色矢印で指し示している「メクラ環」が一つ前のピッカピカの「開閉環」の上に被さるので、皆さんが嫌う「迷光」の防御策はちゃんと設計時点で配慮されている事が明白です。

・・しかし、ここでも別の問題でこの「メクラ環」がトラブルのヒントになりました(泣)

↑工程を進めます。絞りユニットを最深部に組み込んで完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上側が前玉側方向にあたります。赤色矢印で指し示している箇所に「削った擦れがシルバーに残っている」のは当方の所為ではありません(笑)

ここにはイモネジと言う左写真のようにネジがネジ込まれています。

 イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種でネジ先端が尖っているタイプと平坦なタイプの2種類が存在する

ここではイモネジの締め付けで鏡筒内部の絞りユニットの構成パーツ「位置決め環」が締め付け固定されるのです。

従ってそのイモネジが少しでも飛び出ているとこの後の工程で拙いので「製産時点で研磨していた」と推測できます (だから当方の所為ではありません)。

↑鏡筒に「絞り環用基準マーカー環/リング/輪っか」や「絞り環」を組み付けます (グリーンの矢印)。その直下に今度は「プリセット絞り環 (ベース環)」も組み込みました (赤色矢印)。

↑いよいよ最初の問題「絞り羽根の開閉動作時に膨らんだ現象」の因果関係を突き止め、その改善に入ります。

上の写真は一つ前の「プリセット絞り環 (ベース環)」を拡大撮影していますが、問題だったのは「開閉キー」と言う絞り環と連携する金属棒の「角度」なのです!(驚)

一般的なオールドレンズはこのような「絞り環と連係する開閉キー」のネジ込み角度はブルーの矢印のような「水平位置でネジ込まれるのが一般的」に対し、今回のモデルは「グリーンの矢印のように斜め状にネジ込まれる設計」だったのです(驚) 赤色ラインは斜めに刺さっているのを分かり易く見せるガイドとして附随させています。

つまり前述した「内部からカシャカシャ音が聞こえる/絞りユニットに遊びがある」の原因がこのような設計であり、開閉キーを斜めにネジ込むのが拙いのです。

実際ネジ込む際に中を覗き込むと「開閉環がちゃんと見えているもののそこに用意されているネジ穴の位置は少々上にある」ワケですが、もしもそのまま水平にネジ込むなら開閉キーが上に擦れてしまい絞り環操作が異常に硬くなります。

・・しかし現実は斜め状に開閉キーがネジ込まれるので抵抗/負荷/摩擦が全く発生しない。

そういう設計だったのです。たまたま過去メンテナンス時の整備者がそういう向きでネジ込んでしまったのかとも考えましたが、内部を覗き込んで穴の位置が上に在るとなれば「設計時の問題」と断言せざるを得ません(泣)

↑再び前のほうで解説した絞りユニット内の構成パーツの一つ「メクラ環」の写真ですが、実は前のほうでお盆に載せて撮影していた時の「メクラ環」には「薄く白っぽい汚れ状が全体に帯びていた」状況です (当初はパッと見で上の写真よりも全体が僅かに濃いグレーのように見えていた/こんなに黒々していなかった)。

・・ここがポイントです!(泣)

当初バラして溶剤で洗浄しただけの時点で視認できていた「薄く白っぽい汚れ状」はカビだったのです!(驚) そこでこれは・・!とすぐ勘付いて溶剤でゴシゴシすると「やはり予測したとおり反射防止黒色塗料」だったのです(泣)

・・つまり反射防止黒色塗料の表層面にカビが繁殖していた状況。

だったのです・・結果今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つ「光学系内にチラチラと光る微細なモノが一面に在る」のは正真正銘の「カビ菌」であり、光学系第2群貼り合わせレンズ裏面側光学硝子レンズにポチポチと生じていたのです(泣)

上の写真は既に当方の手でゴシゴシと溶剤で着色されていた「反射防止黒色塗料」を除去した後の撮影ですから「もともと製産時点からしてマットな黒色」だったのに (マットで微細な凹凸を伴う梨地メッキ加工仕上げ) どうしてそこに敢えて再び「反射防止黒色塗料」を塗るのでしょうか???(怒)

結果的にこのインク成分を糧にしていたのか何なのか分かりませんが、この「メクラ環」にも直上の光学硝子レンズにもカビ菌が生じていたのです。

・・全く以てロクな事をしません!!!!!(怒)

このように「観察と考察」そして「原理原則」から製産時点の状況まで推測が進み、ちゃんとそのとおりに事実として露わになります。この「反射防止黒色塗料」のせいでどうしてカビが繁盛していたと断言できるのかと言われれば、昔勤めていた家具専門店で家具職人から直接伝授された「塗膜面に生じるカビ」の一種だと当方には分かるからです (プロの職人から直接伝授された内容を第三者からどうのこうの言われる筋合いは無い)。

確かに当方はこのような光学製品関係のプロでは決してありませんが、然し家具に関わる点はちゃんと師事していたので別の話です。

↑工程を進めます。このモデルは「プリセット絞り機構装備」なので、その機構部を組み上げていくところです。プリセット絞り値キーと言うギザギザの溝に制限環の突出がカチッと入るので「プリセット絞り値がセットできる仕組み」です。

さて、ここでの最大のポイントはブルーの矢印で指し示している窪みです。実はこの窪みはこのグリーンの矢印で指し示しているプリセット絞り環 (制限環) の全周に均等配置で4箇所用意されています。

この窪みに「スプリングが4個入る」のでこのオールドレンズのプリセット絞り機能をイジる際にクッションを与えているのがこの部位だと分かるのですが、問題なのは「この仕組みと設計自体は既に戦後Carl Zeiss JenaのBiotarシリーズで開発されていたもの」なのです!(驚)

・・ハッキリ言ってまるでまんまコピー状態です!(驚)

旧東ドイツのCarl Zeiss Jena製標準レンズ、或いは中望遠レンズなどシルバー鏡胴の「Biotarシリーズ」に採用されていたプリセット絞り機構の構造と比較した時に「唯一違うのはプリセット絞り環と絞り環の配置だけ」で、プリセット絞り機構の設計概念はまさに100%同一なのです。

これが意味するところは・・同じ先の大戦での敗戦国ながら「ドイツだけは総ての特許兼が剥奪された」からこそ、このように模倣してまんまコピーしても問題にはならなかったのです!

このような話も歴史や経緯などを知るにつけ具体的なリアルさを伴ってこのような構造面の把握に有用なのがご理解頂けたでしょうか。

↑さらにその上からプリセット絞り環の「制限環」を組み込んでいます。もう既にスプリング (4個) は内部にセットしてあり、クッション性を実現できています。

↑ようやくプリセット絞り環 (滑り止めローレット含む) をセットできました(笑) ブルーの矢印で指し示したように絞り環側とプリセット絞り環側の互いの基準「◆ と●」マーカーが合致しているので、現在の/上の写真の設定では「プリセット絞り値は開放状態にセットされており動かない」ので、絞り羽根は完全開放を維持している状態です。

結局、どうしてこんなに大型にならざるを得なかったのかが「???」ですが、プリセット絞り機構部のために赤色矢印で囲った領域分を使っている設計です。こんなに大袈裟にせずとももう少し簡素な設計にできなかったのか当方には「???」です(笑)

↑鏡胴の「前部」が完成したので、ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程に移りますが、実際はこのモデルは鏡胴「前部/後部の二分割式」と言い切れる設計を採っていません。

鏡胴「後部」はヘリコイドオスメスだけの世界なのでご覧のようなパーツだけで構成されています。

ここでも幾つかのポイントが顕在しており、それにちゃんと気づいて整備したのか否かが最終的な操作性に大きく関わっていきます。

先ずはよ〜く観察します。すると左端の「ヘリコイド (オス側) のネジ山だけに黒っぽい螺旋状のラインが写っている」のが分かります。中央と右端のヘリコイドにはそのようなラインがネジ山にありません。

上の写真の構成パーツ4点は総てがアルミ合金材だけで用意されています。そこが泣き所です・・(涙)

手前に在る「直進キー環/リング/輪っか」からそびえ立つ両サイドの「直進キー (グリーンの矢印)」がヘリコイド (オス側) に用意されている「直進キーガイド」の溝部分に刺さるので (グリーンの矢印)、ヘリコイド (オスメス) が回転すると同時に繰り出し/収納動作に至るのが分かりますね(笑)

↑今回のオーバーホール/修理ご依頼内容にあった「トルクムラ/トルクが重い」の因果関係の一つがこのパーツです。因果関係は幾つかが影響し合って、結果的に「トルクムラ/トルクが重い」に至っています。

前述のとおりこの「直進キー環/リング/輪っか」もアルミ合金材です。

どうしてとても重い鏡筒を繰り出し/収納するのに「こんな柔らかいアルミ合金材」を使ったのでしょうか? この板状パーツである「直進キー」はせいぜい8mm幅しかなく、しかも薄いので親指と人差し指で摘まんだだけで (たいしてチカラを入れずとも) 容易にグニャッと曲げられます(怖)

↑鏡胴「後部」を構成するパーツはこんな順番で組み込まれていきます。

マウント部 (アルミ合金材)
直進キー環/リング/輪っか (アルミ合金材)
ヘリコイド (メス側:アルミ合金材)
ヘリコイド (オス側:アルミ合金材) 

すると、の「直進キー環」はマウント部内部に4本の締付ネジで固定されますが、そこから突出する「板状の直進キー」は直前の ヘリコイドメス側を越えて先頭の「 ヘリコイドオス側」の溝部分に刺さります (グリーンの矢印)。

マウント部内部でネジ止めされて、一方とても重たい鏡筒を支えるヘリコイド (オス側) にはオレンジ色矢印で指し示している相応の長さを持つ「直進キー」が刺さる次第です。

・・如何ですか? この設計が理に適っていると思いますか?(泣)

少なくとも直進キーの板状パーツ、ひいては「直進キー環/リング/輪っか」を同じアルミ合金材で設計してしまった時点で納得いきません。

↑実際にヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。ご覧のようにヘリコイド (メス側) ネジ山は単なるアルミ材削り出しです(泣)

↑さらに鏡筒を支えるべき役目と繰り出し/収納動作を実現するヘリコイド (オス側) を、同様無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

すると赤色矢印で指し示したように「ヘリコイドオス側のネジ山の頂上が黒っぽくメッキ加工されている」のが分かり、要は製産時点で平滑メッキ加工処理されたヘリコイドにオス側ネジ山を切削し、その際ネジ山頂上に平滑面を残した設計なのが分かります。

実はこの当時、旭光学工業やtamron、或いはNikonなどの多くのオールドレンズでも同じ手法で「ネジ山同士のカジリ付き防止策」として採用されていました。

従って設計時点で繰り出し/収納量の多い製品であることを鑑み「可能な限り軽い操作性を実現する努力をしていた」のが判明します。

↑前述しましたが上の写真でグリーンの矢印で示した領域の重さがハンパありません(泣) 一番上に「直進キー環/リング/輪っか」がセットされていて、且つヘリコイド (オス側) の「直進キーガイド」に刺さっています。

するとトルクが重くなってしまう、或いはトルクムラが生じる総ての根源がここの設計です。オレンジ色矢印で指し示した箇所には「ヘリコイド (オス側) を固定する締付環が黄鋼材で用意されている」ものの、ちょうどオレンジ色矢印で指し示している箇所に「イモネジがある」のが大問題なのです。

↑さらに拡大撮影しました。オレンジ色矢印で指し示した箇所にイモネジが締め付けられていますが、反対側にもあります。つまりこの黄鋼材の締付環の「両サイド/直径位置にイモネジでの締め付けが行われる設計」が問題なのです。

ヘリコイド (オス側) が回転して鏡筒を繰り出し/収納している時、この2つのイモネジにより黄鋼材が反発します (イモネジの締め付けに比例して黄鋼材には膨れるチカラが生じるから)。

これこそが「距離環を回している時に保持している手に感じるゴリゴリ感」であり、或いはトルクムラの一因にも繋がっています(涙)

では、イモネジの締め付けを弱くすればゴリゴリ感が防げますが、実はヘリコイド (オス側) の固定が心配になります。従って本当はちゃんと下穴を用意してイモネジをネジ込むよう設計すれば良かったものの、そこまで配慮しなかったのでこういう話しに至っています(涙)

さらにマウント部内部に4本の締付ネジで締め付け固定されている「直進キー環/リング/輪っか」も柔らかいアルミ合金材なのが拙いのです。

これらの幾つかの問題から当方では「このモデルの不都合を誘発している因果関係は設計の拙さ」と判定を下しました。しかしもっと他の影響が顕在していたのも後ほど解説します (つまり複合的に因果関係が顕在し不都合が発生している)。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。マジッで素晴らしい描写能力を持つオールドレンズでいささか驚いているところです(驚) 上の写真を見ると光学系が放つ蒸着コーティング層の光彩は、スッキリした薄いパープルに見えがちです。が然し、例えば光学系第2群の大きな貼り合わせレンズ裏面側 (つまり絞りユニット直前側) は「濃いめのパープルアンバー」だったりするので、決して一世代前のオールドレンズのようなコーティング層ではありません。

上の写真で前玉の中心付近にポツポツと少々目立つ白点が写っているのは、これは前玉ではなく「第2群の貼り合わせレンズのバルサム剤内部の不純物」です。「バルサム切れ」が起きているのではなく、単純にバルサム剤に不純物が混入していたために、そこが浮いているだけと受け取っています。

話が少々逸脱しますが、東京光学とNikonは共に先の大戦でそれぞれ大日本帝国陸軍大日本帝国海軍の御用達光学メーカーとして製品を納入していたハズです。当時はそれを以て「陸のトーコーに海のニッコー」などと呼ばれていたくらいですが、実は当方が今までの12年間に3千本を超すオールドレンズをオーバーホールしていった中で、特に東京光学製とペトリカメラ製、或いはその他幾つかの光学メーカー製品は「如何にもカメラメーカーが作った製品」との印象が強いのです。

その一方Nikonのオールドレンズは当時のモデルでも「細かい部分に配慮が残る設計」と言う印象が大きく、それがどんな話なのかと言えば、先の大戦でNikonの供給先が海軍だった事が大きく影響しており、常に光学製品は「塩害」に曝され続ける事から細かい配慮が欠かせなかったと考えます。

ところが東京光学は先の大戦で陸軍向けだったので、必要な箇所の配慮は欠かさずとも製品の隅々までの配慮はNikonに比べると相当低いレベルだったと結論しています。それが前述した「柔らかいアルミ合金材による直進キー環の設計」や「黄鋼材の直径上にイモネジの締め付けを与えてしまい応力の問題を抱えたまま平気で生産していた (つまり塗布するヘリコイドグリースの性能に頼りすぎていた)」現実だったのではないかとみています。

同じ事が長年銘玉として続いた「RE,Auto-Topcorシリーズ」にも該当し、相変わらず柔らかなアルミ合金材で直進キーを用意していた設計を最後まで続けています。それはそもそもヘリコイドのネジ山切削レベルにもそういう大雑把な性格が表れ、例えばNikon製オールドレンズはバラして溶剤で洗浄した直後にティッシュペーパーでヘリコイドのネジ山部分を一周拭ってもほとんど切れて裂けないのに対し、東京光学製のオールドレンズの多くはティッシュペーパーがボロボロに引っ掛かり裂けてしまいます(涙)

最後に民生向けカメラ製品群から撤退した東京光学は、その後結局「計測器メーカー」の性格を相当強く残していったのだと受け取っていますが、当時のオールドレンズ内部にNikonのような繊細な設計配慮は残念ながら欠いていたと申し上げるしかありません(涙) MINOLTAも然り、OLYMPUSも同様、歴とした光学メーカーの設計配慮が随所に散見されるものの、意外とカメラメーカーの製品は「大雑把な造り」との印象がどうしても拭えません (あくまでも当方の印象です)。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

オーバーホール/修理ご依頼内容にあった「チラチラと光る微細な点」はバラしてみれば前述のとおり「光学系第2群の絞りユニット直前 (つまり第2群貼り合わせレンズの裏面側)」に生じていたカビでしたから、キレイに完全除去できています。

もちろんその因果関係であった (と当方ではみている) 絞りユニットの外側に露出する「マットで微細な凹凸を伴う黒色梨地メッキ加工仕上げのメクラ環」に、さらに厚塗りされていた過去メンテナンス時の「反射防止黒色塗料」表層面の白っぽいカビの繁殖が根本原因だと判定を下しています。

また光学系後群側の第3群貼り合わせレンズも接着面のバルサム剤に不純物の混入が視認でき「パッと見で少々目立つ塵/埃が残っているように見える」ものの、4回の光学系清掃でも一切除去できなかったバルサム剤内部の問題です (但し当方の現状判定としてはバルサム切れが進行しているとは結論していません)。

かと言って剥がしてチェックしたような判定ではありませんから、一応念のために盛夏での車内放置や冬の屋外から暖かな室内への移動に伴う「結露」など十分にご留意下さいませ。特に「気圧の変化」はバルサム剤には天敵ですからご配慮頂くのがヨロシイかと思います(怖)

↑光学系後群側もスカッとクリアですが、同様に光学系第3群の貼り合わせレンズ内バルサム剤に混入する不純物が微細な点状の塵/埃の如く視認できてしまいます (清掃で除去できる類のモノではありません)(涙)

それよりも問題なのはこのマウント部で、ご覧のように4個の締付ネジ (マイナスの切り込みがある皿頭ネジ) で、何と同じアルミ合金材のネジを使っているのです。この締付ネジが締め付けている対象がさんざん解説してきた「マウント部内部の直進キー環/リング/輪っか」なので、このマウント部にこのモデルの製品重量「凡そ1kg強」が一極集中的にかかるとすれば「あまりにも配慮が無さ過ぎる設計ではないか?!」と思ってしまいます(泣)

そしてこの因果関係こそがオーバーホール/修理ご依頼内容にあった「トルクムラ/重いトルク」の根本原因で、そこに合わせて前述の黄鋼材の締付固定方法 (実際はヘリコイドオス側を締め付け固定する役目) であり、距離環を手で掴みグルグル回した時に手の平に伝わってくる「一部の箇所のゴリゴリ感」の原因とも言えます。

トルクムラはこの2つの理由から発生しているため、残念ながら今回のオーバーホールでも改善できませんでした・・申し訳御座いません。

また重いトルクも改善できておらず。その因果関係はまた別の影響からとみています。

↑8枚の大きな絞り羽根もキレイになり絞り環→プリセット絞り環共々確実に機能し駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正八角形を維持したまま」閉じていきます。

前述のとおり絞りユニットには設計時点から絞り環やプリセット絞り環との連携を執る「開閉キー (シリンダーネジ)」が斜め上方向きにネジ込まれるために「必然的に遊びが残ってしまう」設計を採り、逆に言うならだからこそ抵抗/負荷/摩擦が減じられた駆動に落ち着いているとも言える手法です。

従ってオーバーホール完了後も相変わらずオールドレンズ筐体を振るとカチャカチャと音が内部から聞こえてきますが、何かのパーツが外れていたり緩んでいるがために聞こえてくる音では御座いません (つまり将来に渡り心配する必要はありません)。

また上の写真を見ると写っていますが、皆様が神経質に気になさる「迷光を促す」かの如く光り輝く輪っかが視認できますが、過去メンテナンス時に着色されていた「ありとあらゆる箇所の反射防止黒色塗料を完全除去」したのでこのように至っています(涙)

これは「反射防止黒色塗料」の表層面に生じる経年でのカビの繁殖がコワイのもありますが、実は既にこの個体が実装している8枚の絞り羽根には、よ〜く観察すると「プレッシングされている金属製のキーに赤サビが残っている」状況なので、今後将来に渡り少しでも製品寿命を存える対処として「敢えてワザと故意に反射防止黒色塗料の類は100%取り去った」のをご報告しておきます。

・・このような処置に及び大変申し訳御座いません。

当方が「光学系内の迷光を一切気にしない」のは先の取材で工業用光学硝子レンズ製造会社に伺い聞き及んだ話からの結論です(涙)・・申し訳御座いません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使ったものの、オーバーホール/修理ご依頼内容だった「トルクムラ/重いトルク」は何ら改善できていません(涙)

しかしもっと言うなら、当初バラす前のチェック時点で「当方の感覚では十分軽いトルク感」と受け取っており、それ以上に軽く仕上げるヘリコイドグリースは当方には無いと即座に感じたほどです(涙)

バラしてみると過去メンテナンス時に塗布されていたヘリコイドグリースは「いつものように白色系グリース」だったので軽いトルクに至っていましたが、一部のアルミ合金材には白っぽく浸透していたことをご報告しておきます (それに伴いおそらくアルミ合金材の酸化/腐食/錆びも起きていると推察しています)。

最後のポイントですが、上の写真の2枚目と3枚目にハッキリ写っている「三脚座」の問題です。この三脚座を締め付け固定しているのも「アルミ合金材の締付ネジ4本」なのですが(泣)、そのうちの1本にネジ込む時違和感が残ります。おそらくネジ山が既に摩耗していて緩くなってきていると推察しますが、余計な処置は講じていません。

そこで推察される問題が一つ浮かび上がりました。この三脚座はマウント部に締め付け固定されますが、そのマウント部さえもアルミ合金材です。さらにマウント最深部にやはり締付ネジで締め付け固定されている「直進キー環/リング/輪っか」もアルミ合金材であり(泣)、このオールドレンズの製品重量の総てがこれらパーツに一極集中するとの憶測から「経年の扱いでアルミ合金材が耐えられなかった」とみています(涙)

おそらくはアルミ合金材の「直進キー環/リング/輪っか」は極僅かに変形していると考えられますし (申し訳ございませんが当方には電子検査設備が御座いません)、合わせて三脚座からのテコの原理で経年で受け続けたチカラの作用により「マウント部自体も真円を維持できていない」とみています(涙)

その根拠は何度か写真撮影したものの、当方の写真撮影スキルがあまりにも低すぎて上手く撮れず掲載を諦めましたが、マウント部のネジ山にはその1/3の領域で微細な削れ/摩耗/変質が起きているのを確認済です。おそらくその領域分がオーバーホール/修理ご依頼内容に記載があった具体的なトルクが重くなる領域と一致していると考えられ、距離環の刻印距離指標値で言うところの「7m〜∞辺り」に合致すると思います (但しこれも電子検査設備でチェックした話ではありません/あくまでも当方の目で見てネジ山の終端方向で起きていたネジ山の状況だったので∞近く辺りと受け取った次第です)。

・・具体的で確実な内容を一切ご報告できず申し訳御座いません!(涙)

↑総てのオーバーホールが終わり撮影した写真です。特に前述の「トルクムラ/重いトルク」に関しては、その因果関係を突き止めるために何度も何度もヘリコイドグリースを塗布し直し確認作業を執り、最終的な組み直し回数は「17回の総時間6時間」を費やしたにもかかわらず「改善できていない状況」です(涙)

・・これが当方の技術スキルの低さを物語る要因です!

このブログをご覧頂く皆様も重々ご承知おき下さいませ。当方の技術スキルは相当低いレベルです(涙)

結果、以下のような指摘事項が残ったまま仕上がっています(涙)

光学系内の2つの貼り合わせレンズバルサム剤内部に不純物混入の痕跡が残ったまま仕上げている。

過去メンテナンス時に着色していた反射防止黒色塗料に繁殖していたカビの状況から反射防止黒色塗料の類を完全除去している。

過去メンテナンス時に塗布された白色系グリースに適うトルク感の黄褐色系グリースが当方には無い。

結果内部構造の問題も影響してトルクムラ/重いトルク感が一切改善できていない。

・・このような状況です。大変申し訳御座いません。

特にに関しては、オーバーホール完了後の現状は当方の受け取り方として「当初よりは極僅かに軽く仕上げられている」と受け取っていますが、如何せんご依頼者様の一般的な期待値を十分満足させるような改善度にまで到達していません!(涙)

これは多くの場合で皆様方が当方宛オーバーホール/修理ご依頼を賜る際、様々な問題点が改善されると大きな期待を抱かれご依頼頂く事を鑑みれば、とても納得いくレベルに仕上がっていないとの真摯な想いで御座います・・本当に申し訳御座いません。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

とても貴重なオールドレンズをオーバーホール/修理ご依頼頂いたにもかかわらず、このような結果に至り何とも顔を上げる事ができません(涙) 平に附してお詫び申し上げます。

当方を誹謗中傷している人達/勢力からすれば今回のこのような話も格好の標的ですが(笑)「如何にも内部構造に問題があるが如く表現して、実のところ自分の整備が拙かった点を隠そうとしている/逃げている」との酷評を受けても仕方ないのだと反省しています。

↑このモデルのプリセット絞り環の操作方法をご存知ない方の為に解説していますが、プリセット絞り環が丸ごとご覧のようにクッション性を持っているので、赤色矢印のように操作して設定プリセット絞り値に合わせます。上の写真では「f5.6にプリセット絞り値をセットする」想定で解説しています。

またプリセット絞り値をセット/未セットに関係なくこの部分は「絞り環の役目も兼務」している為、指を離してクッション性が解除された時/プリセット絞り値が設定された後、ブルーの矢印❶方向に回せば「絞り羽根は閉じ」或いはブルーの矢印❷方向なら「絞り羽根は開く」動作なのは他の数多くのプリセット絞り機構を装備したオールドレンズ達と同じです。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

いつもならオーバーホール後の実写を各絞り値で撮影し掲載するのですが、何しろ大型で重くて最短撮影距離:1.8mと長大なので室内で確認できず今回は実写していません。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。お詫び申し上げます。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。