◎ VOIGTLÄNDER (フォクトレンダー) COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》(G)(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、VOIGTLÄNDER製
標準レンズ・・・・、
 『COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》(G) (M42)』です。


特に人気があるワケでもないのについ調達し扱ってしまいます(笑) 今回の扱いが累計で33本目にあたり、且つ光学系が放つコーティング層光彩に「グリーン色」を含む「パープルアンバーグリーン」の個体は、僅か6本目と言う状況です。

市場で圧倒的に多く流れているタイプは、光学系のコーティング層が放つ光彩が「パープル
アンバー
」のみになり「グリーン色」がありません。

【製造番号から捉えた光学系コーティング層の光彩】
前期型 (230xxxx〜):「COLOR-ULTRON」グリーンパープルアンバー
 ※COLOR
オレンジ色刻印ではないタイプ
前期型 (230xxxx〜):「COLOR-ULTRON」グリーンパープルアンバー
 ※COLORオレンジ色刻印のタイプ
前期型 (231xxxx〜):「COLOR-ULTRON」 パープルアンバーグリーン
 ※コーティング層光彩が放つグリーン色が薄いタイプ
前期型 (232xxxx〜):「COLOR-ULTRON」パープルアンバー
 ※コーティング層光彩からグリーン色が消えたタイプ

今までに扱った個体数33本の製造番号から捉えたコーティング層が放つ光彩の変化を調べた結果です。当方が扱った個体に限った話なので、市場流通品まで同じ状況なのか否かは分かりません (コーティング層光彩は写真だと撮影角度で変化するので分かりにくい)。

どうしてコーティング層が放つ光彩に「グリーン色」を含む場合を特に珍重しているのかと言うと、実は当時のMINOLTA製オールドレンズの総合カタログに記載されているある一文からヒントを得ています。当時のMINOLTA製オールドレンズは、巷で「緑のロッコール」と呼ばれたように「グリーン色の光彩を放つアクロマチックコーティング (AC) 層を蒸着」していた からです。

この説明から「グリーン色の光彩」は「人の目で見たより自然な色再現性」の追求である事が分かりますが、もちろんMINOLTA以外の光学メーカーの製品になれば、そのコーティング層の蒸着目的は変わってくると考えられます。

しかしコーティング層の蒸着レベルで言う「グリーン色」とは、要は光学硝子レンズ面での反射を防ぐ意味合いなので「グリーン色の成分入射率を向上させている」話になり、結果的にどの光学メーカーが扱ったにせよ同一の目的を狙った設計と結論づけられると考えます。

つまり当方が特に珍重している理由は、この『人の目で見たより自然な色再現性の追求』と言う部分に惚れ込んでいるワケで(笑)、結果どのような光学メーカーのオールドレンズもやはり「グリーン色の光彩を放つ個体」には魅力を感じ、特に珍重して扱っている次第です。

そんな中でさらにこの「COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》(M42)」にこだわる理由は、たった一つ『どんな写真も艶やかに写るから』です。この『艶やか』と言う要素がポイントで (当方にとっては最大の魅力で)、特に戦前に発売された旧東ドイツの名だたる銘玉、Carl Zeiss Jena製オールドレンズなどに見られる一つの要素/特徴だと受け取っているからなのです。

それは例えばOlympia SonnarNickel Tessarなど、当時のレンジファインダーカメラ「CONTAX IIa/IIIa」用オプション交換レンズ群の写りに『艶やかさ』を感じます (但し特に
グリーン色の光彩を放つワケではない
/時代としてまだシングルコーティングの時代だから)。

この『 (あで) やかさ』はまさにコトバのとおり、艶のある写真に仕上がる要素であり、撮影された写真を見た時の光沢感が全く違います。同時にどう言うワケかそれら『艶やかさ』のある写真は、どのオールドレンズで撮影された写真でもとてもリアル感の高い写り方なので感心します。

そのような経緯がある為に、どうしても「グリーン色の光彩を放つモデル」を見つけると扱ってしまう次第です (もぅほとんど中毒状態ですね)(笑) ちなみに戦前のオールドレンズであるにもかかわらず『艶やかさ/リアル感』が強く出てくると言うのがむしろオドロキであり、逆に言えば戦後に登場したオールドレンズはいったいどうなのョって言う疑念にいつも苛まされているのが正直な気持ちです(笑)

特に戦前ドイツの威信をかけた『Olympia Sonnar 180mm/f2.8《前期型》(exakta)』の 写真を見た時に「全身鳥肌状態」だった事をお伝えしておきます (風邪ひきそうでした)(笑)

何故なら焦点距離が180mmですから、最短撮影距離も1.5mからであり、それだけ被写体から離れているにもかかわらず『艶やかでリアルで生々しい写り』なのが寒かった、いえ鳥肌状態だったワケです(笑)

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旧西ドイツRollei社から1970年発売のフィルムカメラ「Rolleiflex SL35」用セットレンズとして用意された標準レンズ「Carl Zeiss Planar 50mm/f1.8 SL (QBM)」の派生型になりVOIGTLÄNDER向けのOEM製品と考えられます。

どうしてRollei製フィルムカメラのセットレンズに当時のZeiss IkonからCarl Zeiss銘のPlanarが供給され、且つVOIGTLÄNDERにもOEM供給されたのか? この3つの会社の繋がりを知るには当時の背景が分からなければ掴めません。

【当時の背景について】
 Voigtländer (フォクトレンダー)

1756年にオーストリアのウィーンで創業したVoigtländer社は、その後1849年ドイツのニーダーザクセン州Braunschweig (ブラウンシュヴァイク) に移転し工場を拡張しています。戦後イギリス統治領となった旧西ドイツのブラウンシュヴァイク市でフィルムカメラなど光学製品の生産を始めますが、日本製光学製品の台頭により業績は振るわずついに1969年Zeiss Ikon (ツァイスイコン) に吸収されます。しかし1971年にはZeiss Ikonもフィルムカメラから撤退したため1972年にはブラウンシュヴァイク工場の操業が停止しました。その後、商標権はRolleiに譲渡されています。

 Rollei (ローライ)

1920年にドイツのハンブルクで創業したRollei社はフィルムカメラの生産を主として、旧西 ドイツのCarl ZeissやSchneider Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) 社からレンズの供給を受けていました。1970年にフィルムカメラ「Rolleiflex SL35」を発売しCarl Zeiss製の標準レンズ「Planar 50mm/f1.8 (QBM)」などをセット用レンズとしていましたが、1972年に生産工場が操業停止したため、Voigtländer社の商標権譲渡も含め自社のシンガポール工場へと生産を移管しています。

その結果1974年に発売されたのがVoigtländer製フィルムカメラ「VSL1」から始まるシリーズ (〜VSL3) でセット用標準レンズとして今回のモデル『COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 (M42)』が発売されました。
従ってマウント種別は従前の「QBM (Quick Bayonet Mount)」の他「M42」マウントのタイプも存在しているワケですね。

時代背景と共に各光学メーカーのポジショニングを踏まえるとこのような流れになります。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった要素を示しています。
※Rolleiflex SL35用Carl Zeiss製「Planar 50mm/f1.8」からの展開として掲載しています。

前期型

レンズ銘板刻印:Carl Zeiss銘 SL型
生産工場:旧西ドイツCarl Zeissブラウンシュヴァイク工場
コーティング:アンバーパーブル

中期型

レンズ銘板刻印:Made by Rollei SL型
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:アンバー

後期型

レンズ銘板刻印:Made by Rollei
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:アンバーパープル

COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》」
製造番号:230xxxx〜
レンズ銘板刻印:VOIGTLÄNDER
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:パープルアンバー/パープルアンバーグリーン


COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》」
製造番号:231xxxx〜
レンズ銘板刻印:VOIGTLÄNDER
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:グリーンパープルアンバー

COLOR-ULTRON 50mm/f1.8 SL《前期型》」
製造番号:232xxxx〜
レンズ銘板刻印:VOIGTLÄNDER
生産工場:Rolleiシンガポール工場
コーティング:パープルアンバー
 

COLOR-ULTRONはシンガポール工場での製産が スタート地点のように見えますが実際は旧西ドイツのブラウンシュヴァイク工場で製産された個体が存在しておりVOIGTLÄNDERへのOEM供給は1970年の時点から既にスタートしていたと考えられます。
つまり製産工場を軸として捉えると製産時期が見えてくるワケです。
(右写真は1962年当時のブラウンシュヴァイク工場)

なお派生型としてIFBAFLEX用セットレンズである「IFBAGON 50mm
/f1.8 (M42)」も存在しますが生産数が非常に少なく稀少品です。

単にレンズ銘板をすげ替えただけのようなので内部構造も構成パーツも全く同一だと推測しています (今まで扱い無し)。

さらに上位格モデルとして開放f値「f1.4」の以下2種類が存在します。

左側のモデルは「Carl Zeiss Planar 50mm/f1.4 (QBM)」で旧西ドイツ製ですが、右側モデルは「VOIGTLÄNDER COLOR-ULTRON 55mm/f1.4 (QBM)」になり日本製です。取り扱いがまだ無いので日本製モデルの製産メーカーは不明ですが、当時「Rolleinarシリーズ」を富岡光学がOEM生産していたので富岡光学製ではないかと踏んでいます。

  ●                

光学系は6群7枚のウルトロン型です。本来の4群6枚ダブルガウス型構成の前群成分で貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) 部分を分割してしまった拡張ダブルガウス型構成に、バックフォーカスを稼ぐ意味から1枚第1群 (前玉) として追加した設計です。

この光学系構成図を見てすぐに思い浮かぶのが彼の有名な銘玉として巷で俗に「凹Ultron」と呼ばれている同じく旧西ドイツのCarl Zeissから1966年に発売された「Ultron 50mm/f1.8」です。

まさに操業を停止してしまう直前のブラウンシュヴァイク工場で製産されていたであろうモデルですが、その名のとおり本当に第1群 (前玉) が中心部に向かって凹んでいます。

単にバックフォーカスを稼ぐ目的で追加された第1群 (前玉) なのでこのような独創的な発想に至ったのかも知れませんが、凹メニスカスにした為に前玉で一旦入射光を拡散させて第2群へと進めています。
特に第2群と後群側成分の第5群貼り合わせレンズを見ると性格の違いが分かります。

今回のモデルではその概念をやめてしまったが為に描写性には大きな相違が表れてしまい、時代背景とも相まり (シンガポール工場に移管される/Rolleiへの売却という背景も加味して) 何かしら戦略的な要素が含まれていたのかも知れませんが、当のRolleiにしてみれば凹Ultron同様にメインの格付として用意したつもりの標準レンズだったのではないかと考えます。

それは今でこそ凹Ultronが銘玉と揶揄されていますが、発売された1966年当時から既にそのような評価だったのでしょうか (当方は当時のことは全く知りません)?

つまりある一部の描写特性は凹Ultronから受け継いでいるものの、当時の潮流に倣いコントラストと解像度を向上させることに主眼が置かれ、ビミョ〜な表現性を犠牲にして (見切って) しまった為に今現在になって凹Ultronとの描写性の相違を指摘されているようにも受け取れます
・・ロマンが広がりますね。

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から明確なエッジを伴うシャボン玉ボケが破綻して、滲みながら溶けて円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。光学系が5群6枚のウルトロン型構成なので、そもそも真円を維持したシャボン玉ボケの表出自体が苦手なハズなのですが、ちゃんと表現できているところがさすがです。

二段目
さらに背景に収差の影響が現れて乱れた汚いボケ方になる収差ボケをピックアップしました。むしろこの乱れ方を逆手に利用してしまい「背景の効果」としてピント面/被写体を強調させる撮影手法もありますね。

三段目
一番左端の写真で鳥肌でした(笑)この『艶やかさ』が堪りません(笑) また赤色の発色性も色飽和寸前まで持ち上げていますから、相当な光学系のポテンシャルではないでしょうか。基本的にピント面のエッジ/輪郭は骨太なのですが、それでいて強調されすぎず、且つ違和感にまで堕ちない適度なバランスの良さが相当な魅力です (枯葉もシッカリしたエッジながら煩く感じないから素晴らしい)。

四段目
左端の写真はこのモデルの特徴を良く表していますが、決してピント面が鋭すぎて誇張感に到達してしまい緻密感を通り越して「ゴチャゴチャした写り」になっていないところが特筆モノなのです。今ドキのデジタルなレンズならこのような写真は簡単に撮れるでしょうが、この当時のオールドレンズだとノッペリした立体感を感じない写真か煩い写真になったりするシ〜ンだと思います。

また次の風景写真はこの「空の色合い」がなかなか出せません。いわゆる当方が『ヨーロピアンテイスト』と呼んでいるビミョ〜なブル〜の表現性です。そしてダイナミックレンジが相当広く明暗部がギリギリまで凌いでいるので階調豊かなグラデーションです。地面の濡れた感じなどもちゃんと表現できており (写し込んでおり) さすがです (撮影スキルが高いからですが)。

五段目
左端の被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さ。標準レンズでありながらここまで人肌を生々しく表現できる部分など、このモデルはなかなか使い出のあるオールドレンズではないかと当方はむしろ「凹Ultron 50mm/f1.8」よりも評価しています。

然し現実は、なかなか評価されずにいつも底値でしか落札されないモデルなので、当方にとってはオーバーホールの作業対価が回収できない問題のあるモデルでもあります (それでも懲りずに扱ってしまう)(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

実はこのモデルは「絞り羽根の開閉異常」が発生し易い設計/構造をしており、且つ特異な設計の「絞り連動ピン」がマウント面から飛び出ているので「マウントアダプタとの相性問題」から開放されない問題児でもあります。マウントアダプタについては最後のほうで解説したいと思います。

【問題点になる要素】
絞り羽根が正しく開閉しない個体が多い
装着するマウントアダプタによって絞り羽根が正しく機能しない
光学系のコーティング層経年劣化が限界に到達している
過去メンテナンス時のテキト〜整備
ヘリコイド (オスメス) ネジ山の設計から来る重いトルク感
鏡胴の仕上がりに影響し易い設計/構造

・・等々、挙げたらキリが無いくらい問題点が出てきますが(笑)、ハッキリ言ってこのモデルを完璧な微調整でキッチリ仕上げられる技術スキルを有する整備者と言うのは、実はそれほど多く居ません(笑)

その意味で、このモデルは「超高難度モデル」だと断言できますね。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

↑鏡筒の最深部の「底部分」に絞り羽根の「位置決めキー」が刺さる穴が用意されているので、上の写真は「開閉環」になります。

すると純粋に1枚の板金 (真鍮 (黄鋼) 板) をプレッシングしただけで用意してしまった2本の板状アーム「開閉アーム/制御アーム」が、様々なトラブルの因果関係に結びつきます (つまり設計が悪すぎる)。

グリーンの矢印で指し示した箇所が「プレッシングで単に曲げられているだけ」なのが問題なのです。この長いほうの板状アームは「開閉アーム」ですから、常に絞り羽根の開閉駆動で「左右方向のチカラが掛かり続ける」部位でもあります。

つまり単にプレッシングだけで折り曲げただけの板状パーツに、常に左右から横方向からのチカラが及ぶのが問題なのです。逆に言うなら、この「開閉アームが斜めに曲がっただけで絞り羽根開閉異常に陥る」と言えます (実際そのような個体が非常に多い)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚のフッ素加工が施された絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を立てて撮影しましたが、上の写真下方向が前玉側です。「開閉アーム/制御アーム」が鏡筒から飛び出ています。

ここで伝えたかったのは「ヘリコイド (オス側) のネジ山の多さ」です。つまり「繰り出し量/収納量がハンパなく多い」事をチェックする必要があります。ちなみにこのモデルの最短撮影距離は「45cm」なので、当時標準レンズとすれば特に近接できる話でもありません。要はそれなのに「ネジ山数を増やしてしまった設計」なのが問題だと言っているワケです (重いトルクに至る因果関係をはらんでいる)。

↑こちらは距離環やマウント部が組み付けられる基台です。やはりグリーンの矢印で指し示したネジ山がとても細かいのが問題なのです。

↑こちらはヘリコイド (メス側) ですが、ご覧のように「微細なネジ山」で設計してしまったので、必然的に繰り出し量が求められ、然しトルクが重くなる問題がある次第です。

↑基台に無限遠位置のアタリをつけた場所までヘリコイド (メス側) をネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ませんし (合焦しません)、もっと言えばどんどんネジ込んでいくと最後は基台を貫通してしまい「ヘリコイド (メス側) が抜けてしまう」設計です。

つまりこのモデルの無限遠位置を確定させる事がとても難しいと言えますね (当方はパッチリ一度で適合させてしまいますが)(笑)

↑やはり無限遠位置のアタリをつけた正しいポジションで鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をネジ込みます。このモデルは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑ここでひっくり返して鏡筒 (ヘリコイド:オス側) の裏側、つまり後玉側方向から撮影しました。すると「制御系パーツ」がビッシリ組み込まれています。

開閉アーム
マウント面から飛び出ている絞り連動ピンの押し込み動作で瞬時に操作される (絞り羽根開閉用)

制御アーム
カムの突き当たりに連係して絞り羽根の閉じる際の角度を伝達する (絞り羽根開閉用)

カム
なだらかなカーブに突き当たる事で絞り羽根の開閉角度を決めている

連係アーム
絞り環と連係/接続する事で設定絞り値が伝達される

直進キーガイド
板状パーツの直進キーが行ったり来たりスライドする箇所

すると「なだらかなカーブ」に用意されている坂/勾配にカムが突き当たる事で、その時の設定絞り値に見合う絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。坂/勾配の麓部分が最小絞り値側になり、坂/勾配を登りつめた頂上部分が開放側です (ブルーの矢印)。

↑絞り環をセットしますが、ここではまだベアリングがセットされていません。

この時、内部に左写真の環 (リング/輪っか) をセットしますが「設定絞り値伝達環」であり、何とプラスティック製です。

従って過去メンテナンス時に組み込みを失敗すると簡単にこのプラスティック製パーツが折れますから要注意です。

↑マウント部の内側を撮影していますが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。1枚目の写真が当初バラして洗浄しただけの状態なので「経年で酸化/腐食/錆びしている状態」なのが分かると思います。

普通一般的なメンテナンスではこのまま酸化/腐食/錆びしたままで組み込んでいきますね(笑)

↑マウント面から飛び出る「絞り連動ピン」とその機構部があり、また「直進キー」と絞り環のクリック感を実現するベアリング用の穴も用意されています。

↑このモデルでの「絞り羽根開閉異常」が多い要素の一つに、実は「異常ではなく正常」の場合があります。それを説明するにはどうしても避けて通れないこの「絞り連動ピン機構部」の構造と機能を知る必要があります。

まずマウント面から飛び出る「絞り連動ピン」ですが、その飛び出る突出量は一定で「2.8mm」と決まっています (グリーンの矢印)。

オーバーホール/修理を承っているとこの「絞り連動ピンの突出量微調整」の依頼が来る場合がありますが、残念ながら「絞り連動ピンにアームが附随するので微調整不可能」です。

従ってグリーンのラインから飛び出る「絞り連動ピンの突出量は2.8mmで固定」と言う話になりますね。

さらにそのマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれる量 (ブルー矢印①) の分だけ左隣の「操作爪 (機構部)」が動きますから (ブルーの矢印②) その結果左右に首振る「操作爪の移動量も比例」しています ()。

つまり押し込まれる「絞り連動ピンの押し込み量から独立して操作爪の動き/移動量を変えられない」設計である点を上の写真で解説しています。何故なら「絞り連動ピンのアームが機構部に刺さるから」です (オレンジ色矢印)。

↑さらに「絞り連動ピン機構部」を拡大撮影しました。するとご覧のとおり「絞り連動ピンに附随する停止板」が内部で突き当たって止まるので

そもそも「絞り連動ピンの突出量は一切変更できない」設計なのが分かると思います。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①)、その押し込まれた量の分だけしか隣の「操作爪」が左右に首振りしません (ブルーの矢印②)。

すると例えば「停止板のL字の長さを変えてしまう」荒療治が施されていた個体がありましたが(笑)、結局今度は絞り連動ピンの軸が外れるので停止板のカタチ自体が変更できません

何を言いたいのか???

つまりこのモデルでの「絞り羽根開閉異常」の因果関係を作っているのはこの「絞り連動ピンの突出量」ではなく、もちろん「絞り連動ピン機構部」の問題でもない事が明白なのです (別の原因で絞り羽根が正しく動かない)。

逆に言えば、それほど「絞り連動ピンが悪い」と思い込んでいらっしゃる方が多いのが実情だったりしますが、本当は違うワケです。

↑ここで完成したマウント部を基台にセットするワケですが、その時に各部位の噛み合わせ/接続を適切に行わないとこのモデルは一切組み上げる事ができません。

逆に言えば、ここの組み込み工程でミスっているが為にいろいろなトラブルが発生している個体が非常に多いとも言えます。

それを説明する為に番号を附しましたが、までの箇所で微調整まで含めて確実に適切な状態にセットされているまま「で噛み合う/連結する」必要があります。

【各噛み合わせ/連結の場所について】
ヘリコイド (オスメス) のトルク微調整と無限遠位置の判定
マウント部噛み合わせ位置を確定させるリリースキー
開閉アームと操作爪の噛み合わせ
絞り環と連係アーム/ガイドの噛み合わせ
カムのなだらかなカーブ突き当たり箇所が適切である
直進キーと直進キーガイドが抵抗/負荷/摩擦などない状態でスライド
絞り環クリック感実現の為にベアリング+スプリングをセット

↑完成したマウント部を基台にセットしたところを撮影していますが、前述のまで全ての噛み合わせ/連結が適切であり、且つ各部位の微調整が正しく行われているから「シッカリとセットできている」ワケです。

逆に言えば、鏡胴がガチャガチャしていたり (ガタつきの発生) 或いは距離環を回す時にトルクムラが発生している場合など、その原因はたいていの場合で前述のの何処かが適切ではない話になります。

全てが適切な微調整が済んでいて確実に正しい位置で噛み合わせ/連結している場合に限り、このモデルは正しく各部位が機能するよう設計されているので、このマウント部セットの工程でミスったらアウトと言う話ですね(笑)

もちろんマウント部を被せる際は、これら全てを一瞬で同時にその位置を決めて(決断して) ハメ込む作業ですから、マウント部をセットして上手く行くまで何度でも繰り返す必要があります。

これがこのモデルの「超高難度」の由縁ですね・・(笑)

↑マウント部を被せた/セットした状態を後玉側方向から撮影しました。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) その押し込まれた量の分だけ「操作爪」が首振りするので「開閉アームが移動する」仕組みです (ブルーの矢印②)。

しかもその「開閉アーム」が動いている場所はグリーンのラインで示した極僅かなスペース (約1.5mm) ですから、ここで「開閉アームが引っ掛かる/擦れる」と「絞り羽根開閉異常」に繋がりますね(笑)

異常の原因箇所は機構部でも何でもなくて (絞り連動ピンの突出量ではなくて) 実は擦れている事が問題だったりします (グリーンのライン)(笑)

さらにこのマウント部はオレンジ色矢印で指し示した3本の「締付固定ネジ」で締め付け固定されるので、その位置も重要だと言うワケです (ガタつきの原因だったりする)。

今までに33本の整備をしてきて多い不具合の原因を解説しました・・。

↑全ての部位の微調整が適切に施され全く問題無く確実に駆動するように仕上がったので、ここでようやくマウント部をセットできます。

↑距離感を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑大変貴重な (流通個体数が少ない) グリーン色の光彩を放つVOIGTLÄNDERが旧西ドイツのブラウンシュバイク工場からシンガポール工場へと製産移管した直後に製産された「製造番号231xxx」の個体です。

よく旧西ドイツの「MADE IN GERMANY」刻印の個体がもて囃されていますが(笑)、実はマウント規格が「QBM (Quick Bayonet Mount)」がほとんどであり、フィルムカメラ「SL35」用の標準レンズばかりですから「M42マウント」はさらに少ないと思いますね。

逆に言えば、マウント規格が「QBM」の場合内部構造も違うので、さらにトラブルが多くなりますから、まだ「M42マウント」のほうが無難です。その意味では「MADE IN SINGAPORE」だとしても特にそれで卑下する意味はありません。

↑大変貴重なグリーン色の光彩を放つ光学系を実装しているのですが、残念な事に特に前玉の経年によるカビ除去痕が相当酷い状態です。

いろいろな角度で前玉を覗き込むとコーティング層がカビの浸食で剥がれている箇所が相当な範囲で視認できます。ところが、実際は単に「コーティング層がカビで浸食されて剥がれただけ」でLED光照射してもカビ除去痕を確認する/視認する事がまずできません。

つまり今回出品する個体は「光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体」であり、その前玉の酷い状況とは裏腹に「光学系内は全ての群でスカッと超絶にクリア!」だったりするので (極薄いクモリすら皆無)、本当にオールドレンズはメンテナンスしてみないと分かりませんね(笑)

当方が皆無と言えば・・本当に皆無です(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

ご覧のように前玉コーティング層のカビ除去痕に附随する「剥がれ」が酷く、且つ一部にヘアラインキズが何本も写っていますが、実はこのヘアラインキズにみえる線状も「極微細な線状ハガレ」であり、LED光照射で光学系前群を確認するとこのヘアラインキズが全く視認できません。

つまり光学硝子面が削れてしまった「ヘアラインキズ」ではなく、単なる「コーティング層の線状ハガレ」と言い切れます。

↑光学系後群のほうがまだ見た目でキレイに見えますが、光学系後群内もLED光照射でもちろん極薄いクモリすら皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

一部は拭き残しのように見える箇所がありますが、コーティング層の経年劣化部分なので何度清掃しても落ちません。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:11点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い20ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
 (前玉外周寄りに1箇所過去メンテナンス時の当てキズが残っています)
(後玉外周附近にヘアラインキズが数本あります)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は見る角度により拭き残しのように見えてしまうコーティング層の経年劣化に伴う汚れ状などが残っていますが清掃しても除去できません。
また見る角度によりコーティング層が斑模様状に汚れてみえますがコーティング層のカビ除去痕の一種です(写真に影響なし)。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。クロームメッキ部分も「光沢研磨」を施したので当時のような艶めかしい光彩を放っています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
(開放側f1.8で僅かに抵抗感じます)

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ハッキリ言ってこのモデルをここまで確実に/適切に微調整済で組み上げられる整備者と言うのは、それほど多く居ません。そう断言できてしまうくらいに「軽い操作性で各部がキッチリ動いている」自信の表れでもありますね(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑光学系の特に前玉の状況はご覧のとおり、見る角度によっては「雲のように斑なカビ除去痕」と「ヘアラインキズに見える線状ハガレ」確実に視認できますが、このままLED光照射で光学系内をチェックすると何処にもこれらが確認/視認できません(笑)

つまりキズではないからです (コーティング層のハガレだから)。

その意味でオールドレンズはキレイだと思って調達しても清掃してみないと本当にクリアなのか分かりませんね (写真だけで判定できない)(笑)


↑上の写真は、開放f値「f1.8」から順に絞り環操作して各絞り値で閉じていく絞り羽根の状況を撮影しています。当方の解説がウソだとSNSで評判らしいので証拠写真を載せないと信じてもらえません(笑)

↑さらに出品に際し「マウントアダプタとの相性問題がある」と解説していますが、それも当方の整備が上手く仕上がっていない言いワケを「相性問題にすり替えて弁明している」と批判されているらしいので(笑)、ここからはそれを解説していきたいと思います。

当方が全く以て信用/信頼が皆無ゆえの話なので仕方ないのですが(笑)、当方がどうしてマウントアダプタとの相性問題まで責任を被らなければイケナイのか、甚だこのような状況を「不条理」だと受け取っていますね(泣)

解説に取りあげるのは上の写真のマウントアダプタです。
K&F CONCEPT製M42マウントアダプタ (中国製)
RAYQUAL製M42マウントアダプタ (日本製)

特にの日本製マウントアダプタで何かしら不具合が発生するなど、そんな事を言っても誰 一人信用してくれませんね(笑)

それが現実であり「日本製第一主義の日本製信者」がたくさんいらっしゃるワケです(笑)

そのような方々からすれば、当方などは胡散臭い『転売屋/転売ヤー』にしか見えていないのでしょう・・。

↑この2つのマウントアダプタは「M42マウント用」ですが「ピン押し底面」を備えるタイプです。「ピン押し底面」とは「M42マウント」規格で自動絞り方式を採っているオールドレンズに、マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」があるタイプを装着する際、強制的にその「絞り連動ピン」を最後まで押し込みきってしまう役目として「ピン押し底面」を備えています。

するとそれぞれで「ピン押し底面の深さ」がビミョ〜に異なり 5.8㍉ 6.0㍉です。

↑一方上の写真は今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体のマウント面の突出値を実測しています。

するとマウント面からの「ネジ部の突出5.4㍉」であり、さらに「絞り連動ピンの突出2.8㍉」ですから、のマウントアダプタ共にその「ピン押し底面の深さが5.4㍉以上ある」為に「絞り羽根が最小絞り値まで閉じきらない不具合が発生する」事が容易に推測できます。

試しに上の写真では「ピン押し底面の深さ5.8㍉」をラインで一緒に示しましたから、ほんの少しだけ「絞り連動ピン」が最後まで押し込まれ切らずに残ってしまう原理がご理解頂けると思います。

これが「絞り羽根がf11で閉じるのをやめてしまう (f16まで閉じきらない)」原因の解説です

・・と言っても、当方の整備の問題だとSNSでは批判の嵐です(笑)

↑2つのマウントアダプタにそれぞれ今回の出品個体をネジ込んだところを撮影しました。ご覧のとおり当方がウソをついているのではなく、ちゃんと最後までネジ込めていますね (ブルーの矢印)(笑)

ブルーの矢印の箇所に極僅かに隙間が残っているのは、それぞれのマウントアダプタで互いにレンズマウント面側に「突出がある」設計だからです (従ってネジ込み自体はちゃんと最後までネジ込めている)。

但し、ネジ込んでいく時に最後の段階で少々抵抗感を感じます。それが前述の「ピン押し底面の深さの問題」なのです。

↑実は中国製である K&F CONCPET製M42マウントアダプタには、ネジ部の外側に「ヘックスネジ」が均等配置で3箇所用意されています (ブルーの矢印)。使うドライバーは「ヘックスネジ/ビット1.3㍉」を使います。

こんな感じでヘックスドライバー/ビットを使って3箇所にある「ヘックスネジ」を緩めます (外しきってしまうと面倒なので緩めるだけのほうが良い)。

↑すると「M42マウントのネジ部」だけが環 (リング/輪っか) で外せて、さらにその下にやはり薄い環 (リング/輪っか) が入っています。

これが「ピン押し底面」であり、実は「凹凸で両面使いできる仕様」になっているのがこの中国製たる K&F CONCEPT製M42マウントアダプタだったりします(笑)

ピン押し底面の環/リング/輪っか」だけを拡大撮影しましたが、エンジニアリング・プラスティック製で作られている環 (リング/輪っか) です。
すると反対側は「平面」ですが、裏側は「約0.4㍉の凹面」で設計されている為、この凹んでいる側を上に向けて外した「M42マウントネジ部」を戻して「トルクかネジ」を締め付け固定すると「正常の絞り羽根が開閉する」マウントアダプタに変わってしまうワケです(笑)

確かに皆さんが仰るとおり「日本製のほうが工作精度が高く正確な製品」なのは間違いないと思いますが、残念ながらRAYQUAL製は「ピン押し底面の深さが一定6.0㍉」です。

だからこそ当方はこの K&F CONCEPT製M42マウントアダプタをお勧めしています (オーバーホール作業もこのマウントアダプタで検査している)。

特に中国と繋がっているワケでも何でもありません・・(笑)

↑なお、当方はマウントアダプタのレンズ側マウント面に「縦線のマーキング」を刻み込んであって (ブルーの矢印) オールドレンズを装着した時に指標値が真上に来るよう目安にしています。こうすると何回「ピン押し底面」を入れ替えても、ちゃんとオールドレンズの指標値が真上に来てくれるのでありがたいですね(笑)

以上、2種類のM42マウントアダプタについてその整合性の可否を解説してきましたが、 K&F CONCEPT製M42マウントアダプタのみ「ピン押し底面の平面を使う」よう仕上げて頂ければ、今回のモデルでも何ら問題なく適切に/確実に絞り羽根が最小絞り値まで閉じる事を確認済です。

逆に言うと、残念ながら日本製の RAYQUAL製M42マウントアダプタに装着した場合は「絞り羽根はf11で閉じるのを停止する」状況に陥ります。当方所有RAYQUAL製M42マウントアダプタで装着確認済です。

その原因は今まで解説してきた話になりますが、どうしてもご落札した方がご納得頂けないなら「返品/キャンセル」を申し出て下さいませ。送料や振込手数料等一切合切含めて、ご落札者様が損をしないよう「全額返金」にてご指定銀行お口座宛ご返金申し上げます (もちろん商品は送料着払いで当方宛返送可能です)

信用/信頼が無いと、こう言う時に不利ですね・・ (仕方ありません)(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値は「f8」に上がりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影ですが、ここまで絞り羽根を閉じきってもギリギリ「回折現象」の影響を耐え凌いでいるように見えますから相当な光学系のポテンシャルだと当方は評価しています。

もちろん今までの絞り値で「艶やかさ」がちゃんと写っていましたね(笑)
本当に素晴らしいモデルです・・!

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。