◎ Carl Zeiss (カールツァイス) CONTAREX版 Distagon 25mm/f2.8 (silver)(CRX)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、
旧西ドイツはCarl Zeiss製超広角レンズ・・・・、
CONTAREX版 Distagon 25mm/f2.8 (silver)(CRX)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール/修理ご依頼を賜ったモデルは当方がオーバーホール作業を始めた11年前からの累計でCONTAREX版オールドレンズの括りで捉えると累計で43本目にあたりますが、今回扱った「25mmの超広角レンズ」だけでカウントすると初めての扱いです。

先ず最初にこの場を借りてこのような貴重なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り、お礼申し上げます。

 

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1959年に旧西ドイツのZeiss Ikonから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX (コンタレックス)」は後に「CONTAREX I型」と呼ぶようになり、巷での俗称「Bullseye (ブルズアイ)」の愛称と共に今もなお憧れの的であり続ける僅か約32,000台しか製産されなかったフィルムカメラです。

大きな円形窓が軍艦部に備わりますが、絞り羽根開閉動作とシャッタースピードの両方に連動する世界初のクィックリターン式ミラーを装備した一眼レフ (フィルム) カメラになり、この円形窓を指して「Bullseye」と呼ばれています。

この丸窓はセレン光電池式連動露出計であり俗称の由来「bulls (雄牛) のeye (目) を射貫く」から来ており「射る的」転じて最近では軍用語でもある「攻撃目標地点 (ブルズアイ)」に至っています (攻撃目標を無線などで傍受されても分からないようする暗号として使われた)。

↑1959年の発売と同時に用意されたオプション交換レンズ群は実に多彩で、発売当初は焦点距離21mm〜1,000mmまで揃えており本気度の違いすら感じてしまいます。

上のシステム全景を撮影した写真を観ると望遠レンズ域のオールドレンズに限定して「黒色鏡胴モデル」が並べられているように見えますが、今回扱ったCONTAREX版 Distagon 25mm/f2.8 (silver)(CRX)』モデルについてネット上のwikiを参照すると「1963年発売」とアナウンスされています。

↑ところが1960年に印刷されている/発売されている一眼レフ (フィルム) カメラ「CONTAREX special」の取扱説明書には上図が既に掲載されています。「新しい広角レンズ」との紹介文なのでこの時点では発売されていなかったのかも知れませんが、しかしそのように考えると (wikiの記載どおり1963年発売とすれば) 市場に姿を現すまで3年間もその発売を待たせていた話になります・・いったいいつの登場だったのでしょぅか。

↑さらに付け加えるなら、上の写真は左端だけがネット上ではよく「ブラックバージョン/黒色鏡胴モデル」と紹介されていますが、実は2枚目〜一番右端 (4枚目) までのとおり、同型モデルながらも「距離環のローレット (滑り止め) まで黒色メッキ加工されているタイプ」が極僅かに顕在しているようで、何だか辻褄が合わないような気がします。

Distagon 25mm/f2.8 silver (1960年発売)(?)
Distagon 25mm/f2.8 black (1960年発売)(?)
Distagon 25mm/f2.8 “ALL-BLACK (1963年発売)(?)

このような感じで捉えるならオールブラックモデルまで含めた場合「全部で3つのモデルタイプが出荷されていた」とも受け取れそうですが、然し正直なところよく分かりません。

この話しは以前扱った標準レンズモデルCONTAREX版 Planar 50mm/f2 (silver)《前期型》(CRX):疑似マクロ化セット』のページでもご紹介しましたが、同様に「オールブラックモデル」がやはり流通しているようにも見えます。

・・ウ〜ン、謎です(泣)

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
今回このモデルを初めて扱ってその実写を目の当たりにしましたが、正直に言って開放側の写りには相当な収差の影響が憑き纏いビックリでした(笑) 特に最短撮影距離「17cm」で撮影するとそのピント面から外れた途端に極端なグルグルボケも現れ、このような「収差ボケ」大好き人間としては手放しで興味津々と言った感じでした(笑) 確かにピント面の被写体の写りにはCONTAREX版オールドレンズにある意味共通項的に現れる「緻密さとリアルさを併せ持ちながらも何処か優しさが漂う描写」なのが嬉しいです。

小さいながらも一応シャボン玉ボケ (っぽく) も写り込むようですが基本的に超広角レンズ域に入ると円形ボケの表出そのモノが難しいのかも知れません。背景ボケとして収差ボケの影響を最小限に抑えたければ「なるべく最短撮影距離側で撮らない」のが良いのかも知れません。

ちなみにオーバーホール後に仕上がった個体を使いミニスタジオで撮影したところ「被写体との最短撮影距離は確かに17cmの実測値だった」ことを確認しています (被写体端ミラーレス一眼撮像素子面までの実距離)。

最短撮影距離位置まで繰り出した時の「鏡胴の全長68mm (マウント面端から)」なので、実質その時の被写体までの距離は「フィルター枠端から僅か84mm」と言う計算になり、10cmを切っていますから下手すると被写体に影が及んでしまいそうです (当方所有ミラーレス一眼SONY α7での計算)(笑)

二段目
一番左端も実写でも収差ボケの影響はいまだ残っている印象ですが、少しは大人しめでしょうか(笑) 2枚目の赤色の花の写真を観る限り「色飽和ギリギリで紙一重的な印象」にも受け取れます。また3枚目のピ〜カン撮影では白飛び要素もなくシッカリ熟していてさすがです。人物撮影などまるでポートレートレンズが必要なほどに感じられ・・恐るべしDistagon!

三段目
この段では敢えてパースペクティブのチェックとして実写をピックアップしました。極僅かに「樽形」の歪みが残っている印象でしょうか・・それにしても余すことなく、よくもまぁ〜ここまで緻密にリアルに写し込むものです(驚)

四段目
ここからの段が最後まで当方にはビビッと来てしまった感銘を受ける写り具合です。本来広角レンズではその雰囲気と言うか被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力を期待するのも酷だと思いますが、意外にもこのモデルは相変わらずキッチリ撮ってしまうのでビックリです(驚)

しかも何処か優しさを含んでいるような写り方でどの実写も観られるので、そう言う写り具合が大好きな当方には「さすが!」と何度言ってしまったかと言う話です(笑) いったい何が違うとこのようなリアルな写真が写せるのか光学知識が疎い当方には一切分かりませんが、それにしても金属質やガラス質の雰囲気を本当によく写し込みます・・溜息です。

五段目
この段では今度は「陽射し (太陽光) を含む実写」をピックアップしてみました。このように陽射しの写り込みを写真に残す際に「時間軸まで写し込んでしまう魅力」を持つオールドレンズと言うのは、知識が疎い当方は何本もモデル銘を並べられませんが(笑)、単なる白飛びにも堕ちずに、本当によくもまぁ〜ここまで陽射しが当たっている場所の質感表現能力までキッチリ残してくれます。

陽射しが当たっていない場所の質感表現能力が高いオールドレンズは数多く在るのでしょうが、陽射しが当たって明るいのにその場所の質感をちゃんと写し込めると言うのを自分で説明できません(笑)・・またまた溜息です!

六段目
この段では逆にアンダーなシ〜ンでの描写をチェックする為にな実写をピックアップしました。光量が少ない中でも何の不都合さえ感じずに相変わらずの質感表現能力の高さに、いったいどんなコトバを綴れば良いのかマジッで分かりません!(驚) 木部の手すりの感じや光が当たっている点状の印象、暗い階段の雰囲気等々どんだけでも表現できてしまうオールドレンズなのかとちょっとした恐怖感さえ抱きます(笑)

七段目
いよいよ最後になりましたがこの段のピックアップ実写をチェックすれば光学性能の素晴らしさまで伝わってしまうことでしょう(笑) お日様がこれだけメインの位置に居るのに「当たり前に撮れてしまう」・・って、何と言えば良いのでしょうか・・やはり言葉を失います(笑)

ウソを平気で公然と載せていると批判の嵐なので(笑)、いつものように「証拠写真」をちゃんと撮って載せないとまた誹謗中傷メールが着信します (年間数件着信している)(怖)

上の写真は今回の個体を完全解体した後に溶剤で逐一洗浄後に「当方の手で磨き研磨」施してからの撮影です。光学系前群を格納する「格納筒」を撮っていますが、この格納筒には「光学系第4群の光学硝子レンズが一体モールド成形 (カシメ止め)」されています (左写真)。

さらにこの「光学系第4群の貼り合わせレンズを拡大撮影」したのが右側の写真です。

このモデルの光学系は右構成図のとおり7群8枚のレトロフォーカス型光学系構成です。すると左側から入射光が透過していく時の順番で「4枚目と5枚目が互いに接着されている貼り合わせレンズで一つの群を構成」しているのを現しています。

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した後、光学系の清掃時に当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測してトレースした構成図です。

するとネット上では一部サイトで「8群8枚のレトロフォーカス型構成」との紹介も見受けますが、右側写真のとおり「光学系第4群の4枚目の光学硝子レンズだけが格納筒からカシメ止めされて一体モールド成形されている」のが明白です (ブルーの矢印)。

さらに次の「光学系第4群の5枚目の光学硝子レンズは丸ごと格納筒のカシメ止めから突出しきっている状態」であること、合わせて互いが接着されていることの、この2点を表す説明としてグリーンの矢印で示しています。

もしも仮にこの4枚目と5枚目の光学硝子レンズが「単独で貼り合わせレンズではない」と言い切るなら、この状態のままひっくり返したら「保持されていない5枚目の光学硝子レンズが落下してしまう」と言う話になりますが、現実はもちろん落下しません (何故なら接着されているから)(笑)

そのような話しをする為にワザワザ「証拠写真」として撮影した次第です(笑)

ちなみに右側写真のブルーの矢印箇所はカシメ止めされているので格納筒の金属材が窄まっていますが、その部分も含めて当初完全解体した直後は「反射防止黒色塗料で着色されていた」ことを明かしておきます (上の写真は当方の手でそれら反射防止黒色塗料を完全除去してからの撮影です)。

実はこの光学系第4群の絞りユニット側光学硝子レンズ面が「全体的にクモリを帯びている」ためにその清掃をしたくて「締付環」を外したのですが「締付環全周のネジ山を接着剤で固めていた」ので当初全く歯が立たず大変だったのです・・メチャクチャ恨めしいです(笑)

結果的に締付環をやっとの事で外しても「貼り合わせレンズだった」ので意味がなく、しかも片側がカシメ止め状態なので露出面だけしか清掃できない状況です(泣) さなみに「反射防止黒色塗料」で着色されていたのは上の右側写真の「5枚目」と赤色矢印で指し示している箇所までが着色されていました (つまり5枚目光学硝子レンズのコバ端までがブルーの矢印のカシメ止め箇所も含めて着色されていた)。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回の扱いが初めてなのでオーバーホール/修理の工程の中で「構造検討」の料金がご請求額に加算されますが、実は内部構造のほとんどは今までにバラした経験があるCONTAREX版 Sonnar 85mm/f2 silver (CRX)』とほぼ近似していました。

・・という事で鼻歌混じりでバラしていったところ内部構造よりももっともっと大変な要素を掴み「慌ててもう一度組み戻してから位置を確認」した次第です。

このモデルの特異な要素が在り・・それは「光路長確保」だったのです!(驚)

内部構造が中望遠レンズのSonnar 85mm/f2と似ているなどと、いい調子でバラしてしまっていたらとんでもないところでした!(怖)

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
制御環を回すと回転のトルクムラを僅かに感じる。
鏡胴かマウント部に極僅かなガタつきが残っている。
 距離環を回すと擦れ感が伝わる箇所がある。
光学系内に結構本格的なクモリがある。

《バラした後に新たに確認できた内容》
過去にメンテナンスされている痕跡を確認。
白色系グリースが塗布されている。
特に光学系に係る箇所は反射防止黒色塗料が塗られている。
一部の固定箇所が不適切。
の影響からムリに無限遠位置を合わせた痕跡を確認。

・・とまぁ〜こんな感じです。

↑ちなみにオーバーホール/修理ご依頼分2本目のCONTAREX版Sonnar 85mm/f2 (silver) (CRX)」もオーバーホール/修理作業が終わっています。上の写真は完全解体した時に撮影した全景写真です。

特に大きなトラブル無く作業完了しています。古いグリースは「黄褐色系グリース」が入っていましたが、どちらかと言うと「潤滑油」分類のほうではないかとみていますが確かなことは分かりません。

従ってオーバーホール完了後のトルク感も当初のトルクとほぼ似たような印象で仕上がっていますが、当方のグリースの特徴である「ピント合わせ時の微動が軽い」点についてはそのように仕上がっていますので問題ないと思います。

それでは以下、今回扱い品のオーバーホール工程について再び解説していきます。

↑本来なら (フツ〜の一般的なオールドレンズなら) 絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒から撮影スタートしますが、今回のモデルは「そもそも鏡筒を持たない設計」と言うとんでもない造りです!(驚)

上の写真は光学系後群用の格納筒なのですが (赤色矢印) やはり光学桂台5群の光学硝子レンズが一体モールド成形でカシメ止めされています (外して取り出せない/グリーンの矢印)。

この光学系第5群も「表裏で全面に渡る薄いクモリ」との状況ですが、表裏面がこれで顕わになるので取り敢えず清掃が可能です。

さて、当方が問題視したのはその「薄いクモリ」ですがその因果関係をブルーの矢印で指し示しています。上の写真はない買い全てを当方の手で既に溶剤洗浄済ませてあるのでキレイですが、当初バラした–>供御はブルーの矢印の箇所 (内側) には「反射防止黒色塗料が全体的に着色」されていました。

・・どうして製産時点にアルミ合金材なのに着色したがるのか???

マジッでいつもそう思います。ブルーの矢印で指し示した箇所が「どうしてアルミ合金材のままなのか?」の理由がちゃんとあるので問題視しているのです。

↑上の写真は大変珍しい設計ですが (このような設計のオールドレンズは数本しか思い浮かばない) 絞り羽根を表裏から挟んで格納する「本来絞りユニットの役目」の場所に入るべき「開閉環位置決め環」がこのモデルでは絞りユニットが存在しないのでそのまま使う設計です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑今回のオーバーホールでこの部位の名前を付けました・・「フライパンと鍋のキッチンセット」・・ですです!(笑)

位置決め環に絞り羽根の「位置決めキー」が刺さると、それを軸として「開閉環側に刺さる開閉キーが溝部分を行ったり来たりするのでその動きにより絞り羽根の角度が変化して閉じていく/開いていく仕組み」です (赤色矢印)。

上の写真で解説すれば「開閉アーム」が操作されると (ブルーの矢印❶) それに合わせて開閉環が回るので「開閉環に刺さっている絞り羽根の開閉キーが溝部分を行ったり来たり移動する (ブルーの矢印❷)」ので、その溝のカタチを倣い絞り羽根の閉じる角度が大きく変化していく原理です。

そしてこのような仕組みの概念で設計されているオールドレンズが、やはりこのCarl Zeiss製標準レンズ凹 Ultron 50mm/f1.8《Oberkochenモデル》(M42)』で絞りユニットを観た時の印象は「まるでこのまま同じイメージ」だったりします(笑)

↑6枚の絞り羽根を組み込むとこんな感じにセットされますが、セットする先は「光学系後群用格納筒」なので鏡筒を兼ねている設計です(笑)

↑ここから見間違う工程を進んでいきますので気をつけてご覧下さいませ。上の写真は「光学系前群用格納筒」なので、この格納筒の中に「光学系第1群〜第3群」までがセットされる設計です。

上の写真では下側が前玉側方向として撮影していますが、冒頭でご案内した「貼り合わせレンズたる光学系第4群」が締付環で締め付け固定されている状態です。

↑さらに左側に黄鋼製の「光学系第1群第3群までを格納する格納筒」を並べて撮影しました。黄鋼製なので当初バラした直後はこんなピッカピカではなくて「茶褐色に酸化/腐食/錆び」と言う状態でした。当方の手で「磨き研磨」したのでキレイに光っていますがピッカピカにするのが目的ではありません(笑)

ネット上では「どうせ中に入ってしまうのでピカピカに磨いても意味がない」などと安直に批判している人達が居ますが(笑)「磨き研磨」は経年の酸化/腐食/錆びによる抵抗/負荷/摩擦の除去だけを目的としていますから、別にピッカピカに磨いているワケではありませんね(笑)

左横に並べた「光学系前群 (第1群〜第3群)」はグリーンの矢印で指し示したように「光学系前群格納筒の中にネジ込まれる」設計です。

ところがここでもやはり当初バラした直後は黄鋼製の格納筒や前群格納筒の内側まで「反射防止黒色塗料」が塗られまくり状態でした。

そしてイキナシここから「最大の難関」に入ってしまうのですが(泣)、ブルーの矢印で指し示している箇所には「ネジ山」が用意されていて、確かに当初バラした直後もさすがにこのネジ山部分には一切「反射防止黒色塗料」が着色されていなかったのですが、問題なのは「直色によって他の部分で抵抗/負荷/摩擦が増大してしまい取り外す際に「キ〜キ〜音」だったのです(泣)

・・オレンジ色矢印で指し示している箇所も真っ黒に塗られていたのです。

↑一方こちらは「光学系後群用格納筒」になり光学系の「第5群第7群」までを収めますが、同様過去メンテナンス時にやはり「反射防止黒色塗料」で着色されていました (ブルーの矢印の場所)。

この光学系後群用格納筒は「光学系第6群を落とし込みで収納し、その上から後玉を入れて締付環固定」と言う格納方法を採り (グリーンの矢印)、本来の光学系を固定するのは「後玉の締付環1個だけ」と言う設計なのが見れば誰でも (整備者なら) 分かります(笑)

ところが「反射防止黒色塗料」で着色したり、或いは光学系第6群も黄鋼製が酸化/腐食/錆びているままなので「適切な光路長を確保できない」話しにつながり「甘い印象の写り具合」に堕ちてしまうのです。

↑「フライパンと鍋のキッチンセット」を入れ込んで絞りユニットが完成したところです (前玉側方向から撮っている写真)(笑)

↑再び解説で出てきましたが黄鋼製の「光学系第1群〜第3群までの格納筒」がグリーンの矢印のように「光学系前群格納筒」内部にネジ込まれます (赤色矢印)。一方既に「光学系後群用格納筒」も後にセット済です (赤色矢印)。

するとここでこのモデルの「最大の難関」はブルーの矢印で指し示した「固定箇所」が用意されている問題です(泣)

↑実際に光学系第1群 (前玉) を入れ込んでから撮影しました。「光学系前群用格納筒」の側面にはネジ山が上下で用意されています (赤色矢印)。その途中の「ネジ山が無い場所がイモネジで締め付け固定する固定箇所」でありブルーのラインの長さ分が「そっくりそのまま丸ごと光路長微調整範囲 (凡そ2mmほど)」と言うワケで、このモデルは「組み上げただけでは鋭いピント面に至らない設計」だったのです!(驚)

↑こんな感じで「光学系前群格納筒」に光学系前群が組み込まれて・・やっと絞りユニットからの一連が完成した次第です(泣)

すると「開閉アーム」の移動する長さもハンパなく長い距離である点も過去メンテナンス時の整備者は全く理解していませんでした (ブルーの矢印)(泣)

逆に言うならこれだけの長さを「開閉アームが行ったり来たりするから絞りユニット内の開閉環の溝のカタチがああなっている」とも指摘でき、詰まるところ絞り羽根の傾き角度が或る一つの箇所から極端に鋭角に閉じる/開く仕組みです。

・・これが当時のCarl Zeiss (oberkochen) が好んで採った設計概念なのです。

↑ようやく鏡胴「後部」のヘリコイド群の組み立て工程に入れます。距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑右横に「制御環」を並べました (赤色矢印)。制御環には「制御ガイド」と言うふと目の溝/ガイドに備わり、ここを前述の「開閉アーム」が行ったり来たりするので「その時に自動的に/強制的に勾配が増減されて絞り羽根の開閉角度が急激な変化する仕組み」です。

実は他のCONTAREX版モデルにはこのような「勾配が備わるガイドが存在しない」ワケで、多くの場合で「溝/ガイドは垂直状」なのです。

従ってこのモデルでの「絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) を理解していないと適切な開閉角度をセットできない」と言う組み立て工程の問題が現れます。

・・だからこそ単に組み立てれば済むモデルではないと言っている。

ちなみにこの「制御ガイド」の長さ分が別の捉え方として「鏡筒の繰り出し量/収納量に一致」する次第です (ブルーの矢印)。従って繰り出し量/収納量が一定 (つまりヘリコイドオスメスのネジ山勾配が一定だから) なので、だからこそ絞りユニット内の「開閉環の溝でカタチを用意しないと絞り羽根の開閉角度が急激に変更できない」話になるのも・・当然な話でね。

・・要はそれを見越して光学設計しているモデルなのです。

↑「制御環」は基台の内側にこんな感じでセットされます (ひっくり返してマウント側方向からの撮影)。

この「制御環」事態の外径サイズは上の写真基台の内径サイズよりも「小さい」ので、このままでは「制御環」を保持できません(笑)

保持する役目と合わせて「スルスルと滑らかにほぼ無抵抗に近いと感じられるほどに平滑な動きをさせる目的」として大小2種類の径のベアリングを組み込む設計です。

左写真は別のモデルからの転載写真ですが、こんな感じで大小2種類のベアリング (金属材の材質も異なる) が組み込まれます。

シルバー色の大きい方のベアリングが「24個」に褐色色が「48個」なので左写真の順番でセットされます。

↑「制御環」にベアリングを組み込んで基台底面にセットしたところです。「制御ガイド」がちゃんと見えていますね (ブルーの矢印)(笑)

↑いよいよ最後の工程に近づきつつあります。ヘリコイド (メス側) の距離環を組み立てていきます。「距離指標値環」にローレット (滑り止め) が挟まれてヘリコイド (メス側) を組み込んでから「締付環 (ブルーの矢印)」でガッチリ締め付け固定して最後に「飾り環」で封入します。

実はこのヘリコイド (メス側) をいったいどの位置で固定すれば良いのかの判定も過去メンテナンス時の整備者はできていなかったようです(笑)

逆に指摘するならもしも固定位置がどうでも良い話しなら「これらの環/リング/輪っかの多くが一体で切削されていたハズ」であり(笑)、ワザワザパーツを分けて用意してきたという事は「ヘリコイド (メス側) の固定位置に微調整機能が備わっている」設計ですね(笑)

↑たかが距離環のローレット (滑り止め) 部分ですが、この中に「ヘリコイド (メス側)」が入っている以上、ちゃんと「観察と考察」して適切な微調整位置でシッカリ固定しないとダメですね(笑)

↑無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑内側を覗いて撮影しました。両サイドに「直進キー」と言うパーツが垂直状に飛び出ているのを説明しています (赤色矢印)。

↑この両サイドに位置する「直進キー」は上の写真のとおりヘリコイド (オス側) の両サイドに切削されている「直進キーガイド (溝)」部分に刺さります (グリーンの矢印)。

するとこのヘリコイド (オス側) の「直進キーガイド (溝)」(赤色矢印) の途中を見るとキズが付いていて削れています。ヘリコイド (オス側) のネジ山の途中からキズが付いているのが「距離環を回した時のトルクムラの結果のキズ」と言う話しですね(泣)

↑同様無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で5箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

この後は完成している鏡胴「前部」を組み込んでから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりましたが、さすがに「光路長の確保が必須」なモデルとは露知らず難儀してしまいました(泣)

・・正直、このモデルのオーバーホールは今回が最初で最後にしたい感じです(笑)

当然ながら無限遠位置を適合させただけではピント面の鋭さは変化せず、必然的に解説してきた「光学系前群格納筒」への「黄鋼製格納筒 (第1群〜第3群)」のネジ込み量/固定位置次第で全く変化してしまうワケですから、こればかりはいちいち組み立ててはチェックしていかなければどうにもなりません(泣)

取り敢えずは簡易検査具しか無いので仕方なく無限遠位置にて光路長の適正化を調べつつもアタリ付けが良かったのか「8回の組み直し」だけで鋭いピント面に至りました (技術スキル低いから8回も組み直ししている)(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持している個体ですが、残念ながらカシメ止めされている前群側の光学系第4群、或いは後群側第5群は共にクモリが100%除去できていません。

何しろ過去メンテナンス時に塗布されてしまった「反射防止黒色塗料」のインク正分の影響でコーティング層が白濁しているため、ひたすらにゴシゴシゴシゴシやりましたが中心部分だけ何とかクリアに戻しました (外周部分は何度トライしてもダメ)。

しかしそれでも中心が透過するように戻ったのでこのページ在郷のオーバーホール後の実写のとおり鋭いピント面とともにコントラストも「霧中撮影からの開放」と喜ばしい限りです。

また光学系第4群の貼り合わせレンズは「バルサム切れが現れる寸前の状態」なので、おそらく今回の整備がこの個体の最後の機会だったのではないでしょうか・・(涙)

・・願わくばご活用頂き最後の花道を是非とも飾ってほしいとお願い申し上げます(涙)

結局必要がないから「製産時点でメッキ加工していない」設計なのに、それをあたかも光学系内を真っ黒状態にする為だけに「反射防止黒色塗料」塗りまくるからこう言う話に至ります。

・・世の整備者はマジッで考え直してほしいです!

迷光」と大騒ぎしますが、その対策を講じる必要があるのは「人工衛星に搭載する光学製品の類」とのニュース記事すら顕在するので、過去に取材させて頂いた工業用光学硝子精製会社でのお話も然り「そこまで言うならどうして絞り羽根が漆黒の黒色にメッキされていないのですか?」と逆質されて答えられなかった当方が居たりします(恥)

・・全く以て恥ずかしい限りですがまさしくそのとおりなのだと反省至極と言う感じです(笑)

ちなみに今回の個体の光学系内各群は「光学硝子レンズのコバ端の中で必要な箇所のみ着色」を施しているので上の写真のとおりアルミ合金材や黄鋼材が剥き出しになっているワケではありません(笑)

↑光学系後群側も問題のカシメ止めされている第5群が表裏面で露出していたので無事にゴシゴシ完了しクリアに戻りました。

問題なのは上の写真「マウント部の爪 (バヨネットマ部分)」で、おそらく過去メンテナンス時に締付ネジが全て外れていないのに外そうとチカラを加えてしまったのだと思いますが、水平を維持していません。さらに真円にもなっていないようで、よく分かりませんが上の写真グリーンの矢印のように「何となく内外周に歪なカタチ」なのが結果的にガタつきに至る因果関係のようです。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり「制御環」共々確実に駆動しています。このモデルで問題となる「制御ガイド (溝)」の斜め状の勾配と共に絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) もちゃんと微調整済なのでバッチリです(笑) もちろん絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが、前述の「直進キーガイドのキズ痕」のとおり、本来の経年でそのようなキズ痕が残る謂れが無いので「キズが付く因果関係が別にある」話しに至ります (使っていて経年で擦り減ったから勝手にキズが付くなどと言う話は120%の勢いでありません)。

↑結局距離環を回した時のトルクムラや「擦れ音とその感触」が極僅かに指に伝わる最大の原因は上の写真マウント部直前の「基台が変形しているから」です(泣) ちょうどグリーンの矢印で指し示している箇所がほんの僅かにマウント部のダイキャスト・ベース環から「凡そ0.2mm〜0.3mmくらい」ハミ出ているので、過去に落下したのか何なのか不明ですが「基台が変形している/真円を維持していない」とみています。

従って基台側にヘリコイド (メス側) 用のネジ山が備わる関係でどうしてもその影響が現れてしまいます。当方には真円度を計測できる機械設備が無いので残念ながらどの場所が真円を維持していないのかは不明です。

従って距離環を回すトルクムラは極僅かに残っています。またトルク自体は当方の特徴たるシットリ感/ヌメヌメ感が残るトルクに仕上げてありますがさほど軽めに仕上がっていません。

擦れ感」だけは指に伝わりにくく改善できていると思いますが、いつも皆様にお話しているとおりご納得頂けない要素が御座いましたらご納得頂ける分の代金をご請求額より減額下さいませ。減額頂ける金額の最大値は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)とさせて頂き、申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません。

・・スミマセン(涙)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離17cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

ちなみに光路長が合致しておらず無限遠位置で「8回組み直し」で調べつつ光学系前群のネジ込み量を変化させていた時は「全くのピンボケ状態で何処にピント合わせしているのかさえ見失うほどの状況」です(笑)

冒頭の実写ピックアップ時には「被写界深度は意外に広い」と受け取っていましたが・・とんでもない(笑) 上の写真で言うならミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球の中心部にだけしかピントが合っていないので、相当な被写界深度の狭さです。また背景の収差ボケも円心状にグルグルボケしている感じが逆に光学性能の良さなのかキレイに崩れているように/流れているように見えてしまうから不思議です(笑)

・・要は惚れ込んでしまうと何でもありの世界というお話です(笑)

最短撮影距離位置で開放撮影するとこんな感じですから、凡そ設定f値「f5.6」くらいまではこんな写り具合まで楽しめる分、被写体との距離次第でなかなか使いでのある超広角レンズです。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。

↑もう絞り羽根がほとんど閉じきっているようにしか見えませんが(汗)、f値「f16」での撮影です。

↑f値「f22」です。まだ背景にほんの少しだけボケが残っています。

↑f値「f32」での撮影です。

↑最小絞り値「f45」での撮影ですが、このモデルの仕様上は最小絞り値「f22」です。マウントアダプタ側に絞り環が備わっている関係から勝手に先まで閉じているだけの話しです。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。