◆ KMZ (クラスノゴルスク機械工廠) ЮПИТЕР-3 (JUPITER-3) 5cm/f1.5 Π《1955年製》(L39)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回オーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧ソビエト連邦時代
KMZが製産していた標準レンズ・・・・、
『ЮПИТЕР-3 (JUPITER-3) 5cm/f1.5 Π《1955年製》(L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回ご案内する個体はオーバーホール/修理ご依頼分として承りました。当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時のロシアンレンズ「JUPITER-3 5cm/f2」の括りで捉えると24本目の扱いですが、その中でモデルバリエーション上のKMZ (クラスノゴルスク機械工廠) 製だけでカウントすると12本目にあたります。
このモデルの詳しいモデルバリエーションについては、時系列的に調査が進んでいるサイト「Soviet cams.com」が詳しいので興味がある方はご参照下さいませ。
また当方でも昨年ようやく入手できた「まんまコピー」モデルたる『ZORKI ZK 5cm/f1.5 Π《初期型:耳付》(L39)』があるので、そちらの解説ページも参考になるかも知れません。
今回オーバーホール/修理をご依頼頂いた個体は、当方にとり大変ありがたい事に「1955年製」の個体でした。どうしてその製造年度の個体がありがたいのかと言えば、巷でまるで都市伝説の如く語られ続けている「ドイツ敗戦時にCarl Zeiss Jenaから接収した光学硝子資材が枯渇してしまったのは1954年」との伝聞があるからです。
さらに前述のとおり、接収した設計図面や光学硝子資材を使い、且つCarl Zeiss Jenaに在籍していた主だった技師まで揃えて (同様接収され旧ソビエト連邦に連れてこられたから) 光学硝子精製含め、まるで「再製産」の如く造られた『耳付きまんまコピーモデル』を完全解体している為・・はたして接収した光学硝子資材を使って製産された個体だったのか否か・・について検証できるまたとない機会を得たからこそ、当方にとりこの上なくありがたい話なのです。
・・この場を借りてご依頼者様にこのような機会に恵まれ感謝の意を表します。
結論から申し上げると・・特に光学系の光学硝子レンズについて「光学系前群は明らかに接収した光学硝子材を使用」との判定に至り、合わせて「内部構造の一部の設計もまんまコピーを踏襲していた」事実が判明しました。
↑上の写真は今回扱った「1955年製」の個体から取り出した光学系第1群 (前玉) 〜第3群 (後玉) を順に並べています (赤色文字)。
当方の写真撮影スキルがド下手なので(笑)、ちゃんと写せていませんが、実はこれら光学硝子レンズを取り出して見ただけで「光学系前群側の第1群〜第2群について間違いなく接収した光学硝子材を使い精製しているのが分かる」次第です。
それは「硝子材の色合いが薄いグリーンを帯びている」のが『まんまコピー』の特徴の一つで同じだからです。その一方で、右端に並べた光学系第3群の貼り合わせレンズは「無色透明の光学硝子材に変わっている」ので、硝子材の色合いを見ただけで判断を下す事が適います。
当然ながら、このような光学硝子材の色合いで判定を下す手法を述べているのは「当方だけ」の話なので、その信憑性が皆無なのはいつものとおりです (ネット上何処にもそのような判断の方法は載っていない)(笑)
あくまでも当方が様々なモデルのロシアンレンズで「1954年までに製産されていた個体」をバラしてきた経緯から、そのような判定手法を見出しているだけの話です(笑) 但しその光学硝子材の色合いの相違と共に、実は光学設計もビミョ〜に異なることも逐一デジタルノギスで計測して掴んでいる為、当方自身は至極納得できている判定手法だったりします(笑)
↑上の写真はさらに第1群前玉を拡大撮影しています。『まんまコピー』と全く同一ですが、前玉のコバ端 (グリーンの矢印) に対して、その直上に「締付環が当たる箇所の面取りをちゃんと施しているのを赤色矢印で指し示している」次第です。
これが後の1956年以降の個体になると「無色透明な硝子材」に変化すると同時に、このようなコバ端直上の面取り加工が消えます。従って、この要素も当方では「Carl Zeiss Jenaから接収した光学硝子材を使って精製した光学硝子レンズ」の根拠としています。
↑同様光学系第2群の3枚貼り合わせレンズも「まんまコピー」と同じ要素を持ち、貼り合わせ面の凹み部分 (赤色矢印) や、3枚目の凹メニスカス硝子レンズのコバ端処理 (グリーンの矢印) など、大変細かい話ですが、ちゃんとデジタルノギスを使い計測すると「まんまコピー」の光学系第2群貼り合わせレンズと同一な計測値を弾き出すので曲げようがない事実です(笑)
↑ところが、不思議な事にこの第3群貼り合わせレンズだけが光学設計は当然ながら「無色透明の硝子材」に変化しています。唯一「まんまコピー」と同一な計測値を弾き出したのが上の写真グリーンの矢印で指し示している箇所だけです。
従って、はたして高屈折率の新種硝子材を使い再設計した光学系で用意した第3群貼り合わせレンズなのかも知れませんが、その根拠になる資料が何一つネット上にありません。しかし間違いなくこの第3群のサイズは、曲率含めガラッと変わっているのが計測で判明しています。
↑こちらは今回扱った「1955年製」個体から取り出した「基台 (ヘリコイドメス側)」ですが、このパーツの仕様 (と言うか設計) も驚いたことに「まんまコピー」をそのまま踏襲していました(驚)
グリーンのラインは、その直下の「直進キーガイド」なる切り欠き/スリットとの位置関係を表す目的で表示しています。つまり上の写真で解説している「制限壁 (赤色矢印)」と「直進キーガイド」との位置関係がとても重要なポイントになるからです。
この設計が変わると「結果的に鏡筒の繰り出しと距離環の駆動域が変わる」ので、例えば後の時代の個体からのパーツ転用など「ニコイチ/サンコイチ」ができない以前に、そもそも制御系の設計が異なる最大の要素なのです。
↑ちなみに解説用として以前扱った「JUPITER-3」モデルからの転載写真を掲示しました。ご覧のように「制限壁と直進キーガイドの位置関係が違う設計」なので、距離環の設計も異なり、同時に鏡筒の繰り出し/収納位置まで変わる為に「設計が根本から異なる」次第です。
↑そして今回扱った個体の「光学系第3群だけが変化した唯一の根拠」が上の写真で、ヘリコイドメス側のネジ山数が後の時代の「JUPITER-3」と同一の仕様に設計変更していました・・要は「まんまコピー」の5列ネジ山に対し6列のネジ山に変化した設計なのです。
また合わせてグリーンの矢印で指し示している要素 (囲った箇所の高さが低い点) も「まんまコピー」から変わった要素の中で大きなポイントです。ここの高さが変わると鏡筒の繰り出し量が変化しない限り「詰まってしまい最短撮影距離位置まで繰り出せなくなる」からです(泣)
このように内部構造の変化と共に「そもそもの制御内容自体が変化した設計に変わっている」点を掴んでしまったので、当方自身としては曲げようがない事実に至っている次第です。
すると今回の個体で考えられる推察は、何かの理由で光学系第3群の光学硝子材を変更せざるを得なくなり、特に屈折率を向上させる目的から「敢えて第3群の光学設計を変更してきた」と受け取れそうなのです。
従って、仮に巷の都市伝説の如く1954年で接収したCarl Zeiss Jenaの光学硝子資材が枯渇していたとしても、光学硝子材をいちいち生産のラインに載せる時点で精製していなかったハズなので (以前の工業用光学硝子製造会社での取材で確認済)、先に必要となる光学硝子材だけ事前に精製が終わっていたと推測できます。
すると第1群前玉〜第2群貼り合わせレンズまでをCarl Zeiss Jenaから接収した光学硝子資材を使い精製しつつ、その一方で入射光を集束させる光学系第3群の貼り合わせレンズだけを改めて設計し直していた事が浮かび上がりました。
そのような仮定はあくまでも仮定として、戦後すぐにお試し製産したプロトタイプの設計諸元書からトレースした光学系構成図が右図に
なります。
そもそも光学系第1群前玉が凸平レンズとして当初は設計していた
のが分かりますし、第3群もご覧のような曲率で設計していました。
そして次に登場したのが1949年製造の『まんまコピーモデル』たる絞り環にツマミが附随する、俗に「耳付モデル」と呼ばれるタイプの光学系構成図です。
この構成図は以前扱った時に、オーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。
最後に今回扱った「1955年製個体」のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図が右構成図です。
光学系第1群前玉と第2群の3枚貼り合わせレンズだけは一つ前の『まんまコピーモデル』と計測値がそもそも100%同一でした。
これらの事実から推測の域を出ませんが、おそらくは「1954年で枯渇したCarl Zeiss Jenaから接収した光学硝子資材」は、必要となるモデルの分だけ事前に精製が済んでおり、その一部は1955年までは使われ続けていたことが今回の個体をバラして判明したと、当方では受け取っています。
なお、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」ここで述べている事柄
/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。
従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。
ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。
そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は御座いません)。
今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。
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・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『ZORKI ZK 5cm/f1.5 Π《初期型:耳付》(L39)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。もうこの光学系が放つ光彩を見ただけでもCarl Zeiss Jenaから接収した光学硝子材の資料を使っていると予測できそうなくらいです (硝子の色合いの違いの分だけ放つ光彩の色付き方も違うから)(笑)
なお、当初バラした後に溶剤で各構成パーツを洗浄していたところ、レンズ銘板の黒色塗膜が一部剥がれたので「過去メンテナンス時に黒色着色している」のがバレました・・(笑)
従って、レンズ銘板の着色を全て完全除去し「本来の製産時点のレンズ銘板に戻した」ので、ご依頼者様お一人様だけですが、その質感の違いをきっとご理解頂けるでしょう・・こういう要素も実は人により「所有欲を充足する」内容になったりします(笑)
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。
パッと見で「微細な塵/埃」に見えてしまいますが、実は「気泡」が大小複数光学硝子材に混入しています。
◉ 気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「証」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。
この「気泡」については以前取材した工業用光学硝子製造会社様ではなく、全く別の方からもっと昔にご教授頂いています (某大学の研究グループの助教授)。さらに「点キズ」が残る過程などまでお話しを伺ったので、CO2によるコーティング層溶解で光学硝子レンズ面に除去できない点キズが残るのも知り得ました。これらの内容は当方がオーバーホール済でヤフオク! 出品する際の出品ページなどにも明記し続けています(笑)
↑問題の後群側ですが、こうやって写真撮影すると (光に反射させて眺めると) 確かに『まんまコピーモデル』とは異なる光彩を放っているのが納得できます。
↑13枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り環はスカスカ感にならないようグリースをチョイスして塗布していますが、それでも残念ながら少々軽めでスカスカ感に限りなく近い印象のトルク感です。ネジ山数が少ないのでこれ以上トルクを与えられません。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
この「エイジング処理」はちゃんと処置しており、例えばヤフオク! などで流行っている「光沢仕上げ剤」などを塗ったりしていません(笑) ちゃんと被膜を作っているので数年で酸化/腐食/錆びが起きないと明言できている次第です (光沢仕上げ剤を使うと場合により酸化/腐食/錆びが促されてしまう)。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、トルクは「普通」人により「軽め」の印象になり、合わせてピント合わせ時の前後動で指の腹に伝わるビミョ〜なチカラ加減だけでもピントの鋭さが変化するよう「絶妙なトルク感」に仕上げています。
・・このトルク感は皆様から「ヌメヌメッとしたシットリ感」との表現を頂いています(笑)
また或る人には「ライカレンズのトルク感にとても近い」ともご好評を頂き、真に誉れ極まりないお話しで御座います(涙)
なお上の写真 (4枚) で指し示していますが、赤色矢印のイモネジだけが当初バラす前の時点で締め付けられていました。本来全周に渡り3本のイモネジで距離環が締め付け固定されますが、今回の個体は「たったの1本だけ」で締め付けられていました。
さすがに1本だけでは今後そのイモネジのネジ山がバカになってしまえば「距離環を接着するしか手がなくなる」ので心許なく、残り2本のイモネジについて調達しています (グリーンの矢印の箇所のイモネジ/計2本)。
イモネジの長さは当然ながらネジ山のピッチも合致しなければネジ込めませんし、もちろんネジ径が合わなければ使えません(泣) 意外とこのイモネジの調達は至極大変だったりします(涙)
なお、当初バラした直後はヘリコイドグリースに「白色系グリース」が塗られていました。既にアルミ合金材の摩耗に伴い「濃いグレー状」に変質していましたが、実は過去メンテナンス時の「古い黄褐色系グリースを取り除かないまま上から塗り足している」俗に整備者界隈で言う処の「グリースの補充」が施されていました。
当方としては基剤も添加剤も全く異質な「白色系グリースと黄褐色系グリースを混ぜてしまう所為」はどう考えても納得できず、そのようなグリースの塗布は一切行いません(笑)
・・グリースは潤滑剤だから何でも同じと言う信じられない所為が今も行われています(笑)
↑総じて問題や不都合となる要素が何一つ残っていない「完璧なオーバーホールが終わり仕上がっている」状況です。ライカカメラでもお使いになるとのお話しでしたので、当方にはそのような高価なカメラは無いので(笑)「当初位置のまま無限遠位置をセットしている」為、例えばマウントアダプタに装着経由で当方のミラーレス一眼に付けると、オーバーインフ状態に見えます。
また当初バラす前の確認時点で「絞り環絞り値のf16のラインで停止していた」為、ちゃんと最小絞り値「f22」まで回るよう変更しています。その因果関係は過去メンテナンス時に間違った位置で絞り環を組み込んでいたのでズレが生じていましたし、その分絞り環を回した時に擦れ感が多く違和感に至っていましたが、現在は解消しています (トルクは軽め)。
さらに、これはロシアンレンズだけの話ですが、この当時のシルバー鏡胴で「経年劣化から褐色にアルミ合金材が変質している」個体が非常に多いのが現実です。しかしこの「褐色の変質」はアルミ合金材の色が変色したのではなく「経年の手垢/手の脂の蓄積」なので、正直当方自身はキモくて触りたくないです(笑)
これをアルミ合金材の経年劣化に伴う変質と捉えている人が居ますが、それは間違いです(笑) もっと言うなら今回のご依頼者様お一人様だけですが、この個体を手にすれば「距離環のローレット (滑り止め) すら汚れが除去されている」のを実感頂けますから(笑)、アルミ合金材のサビは仕方ないにしても褐色に色付いた手垢はゴメンですョねぇ〜。
・・とてもキレイになりました!(涙)
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑棟による最短撮影距離1m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値「f16」です。もう絞り羽根がほとんど閉じきっている状態なので「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。このたびのオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き次のオールドレンズの作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。