〓 Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Biotar 58mm/f2 T《中期型−II》(exakta)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール/修理を承って扱った個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で69本目にあたりますがその中で「中期型」だけでカウントすると31本目です。1年ぶりに扱うような感じです。

↑今回のオーバーホール/修理ご依頼の内容は・・・・、

《ご依頼の内容と当初バラす前のチェック時内容》
距離環を回すと回転のトルクムラを強く感じる (トルクも重い)。
光学系内に薄いクモリと糸くずや塵/埃多め。
 無限遠位置∞が詰まった印象で停止する。
プリセット絞り環/絞り環操作が重い。

《バラした後に新たに確認できた内容》
 直進キーの変形。
潤滑油の注入 (おそらく呉工業製CRC 5-56)。
反射防止黒色塗料の厚塗り。
鏡筒の変形 (因果関係:フィルター枠変形)。

・・・・とこんな感じです。

上の写真はバラした後に溶剤で洗浄後に撮影したマウント部です。距離環がネジ込まれるネジ山が内側に備わりますが両サイドに「直進キー」と言う板状パーツが直接切削で用意されて いる設計です (赤色矢印)。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

するとその直進キーにグリーン色の垂線を脇に示しましたが明らかに垂直を維持していない ほど傾いて変形しています。

これが距離環を回すトルクひいてはヘリコイド (オスメス) の回転トルクを重くし同時にトルクムラを起こしている因果関係です。

・・どうしてこんなことになってしまったのでしょうか???

その答えは明白でたった一つの所為しかありません(笑) 過去メンテナンス時の整備者がバラしてヘリコイド (オスメス) を解体した後 (おそらくヘリコイドグリースを入れ替えた時) 組み 戻す際に「直進キーの存在を忘れていたかそもそも組み上げ方法を知らなかった」為にその ままヘリコイド (オス側) をネジ込んでしまい直進キーに当たって変形させてしまったのです。

この直進キーの突出はご覧のように丸見えなのでたいていの整備者は作業中にこの存在を忘れる事がありませんから、おそらくは「ヘリコイドオス側のネジ込み方法を知らない人の仕業」と言い切れそうです(笑)

ではどうしてヘリコイドオス側 (メス側は関係なく必ずオス側) のネジ込み方法が分からなかったのかと言えば、それは経験不足だからではなく「原理原則」を理解していない単にバラしてグリースを入れ替えて戻す整備をし続けている人だからです。

つまりバラした時の逆手順で組み戻せば元の通り組み上がるのだと「信じて疑わない整備者」の類であり、間違いなくず〜ッとその概念のまま整備を繰り返し続けている整備者のレベル です(笑)

ヘリコイド (オスメス) の事も直進キーの事も、或いはマウント部の事も何もかも「原理原則」があるのにそれを気にしない人なので単にバラした時の逆の手順を踏めば間違いなく組み上げられるとしか思考回路がない整備者であり、そんな整備者は今ドキのヤフオク! などで「分解清掃済」を謳って整備して出品している整備者がたくさん居ますからザラな話です(笑)

残念ながら今回の個体はこの問題となる「直進キー」がそもそも製産時点の切削時に用意された一体であるが故に既に根元が変形に拠り弱っています。そもそもこのように大きなチカラが垂直状に切削された直進キーに架かる事を想定していないのでこのような横方向に向かうチカラが及ぶと根元への負荷は相当に増大するので怖い話なのです。

・・さらに注意すべき事柄があります!!!

上の写真でブルーの矢印オレンジ色矢印で指し示した箇所をパッと見てすぐに気がついた 整備者は「原理原則」を少なからず知っている整備者ですが、もしも全く分からなければそもそも整備者としての資質が欠如していると反省すべきですね(笑)

この2つの矢印で指し示した箇所をちゃんと「観察と考察」できていれば自ずとその理由が 明白に至り「原理原則」まで導き出されて自然にヘリコイド (オス側) のネジ込み方法が見えてきます (しつこいですがメス側は関係ありません)。

もっと言うなら上の写真でどうしてブルーの矢印オレンジ色矢印とで同じ直進キーの一部を指し示しているもののビミョ〜にその位置が違うのかまでちゃんと理由があるので、そこまで明確に答えを述べられた整備者はそれ相応の技術スキルを既に持つ整備者なのだと自信を持つべきですね(笑)

逆にもしもこれら前述と後述の2つの要素について明確な答えを述べられなかった整備者は 決してプロではありません(笑) プロなら間違いなく伝統的な伝承技術スキルとして伝授されているからです。

このようにオールドレンズには様々な根拠があってちゃんと設計されているので逐一それら 根拠を基に微調整なり施していけば必ずや適切な仕上がりに至るのが自明の理ですが、残念ながら今回の個体のこの直進キーの状態は設計時点で想定外なのでどうにも対処できません。

・・と言ってしまったらそれでオシマイなので当方はこだわります!(笑)

この変形した直進キーを元の通り垂直状に戻せば良いじゃないかとこのブログをご覧頂いている多くの方々は考えるでしょうが、話はそんな簡単ではありません(笑) 前述の2つの矢印の 問題があるからこそ単に垂直に戻せば元に戻るとは限らないのです。

オーバーホール工程の中で8回垂直状に戻しつつ2つの矢印の問題を対処しながらヘリコイド (オス側) をネジ込みましたが結局9回目の挑戦で諦めました。当初バラす前の時点で距離環 刻印距離指標値「∞」の3目盛分前辺りから詰まっていきましたが、オーバーホール後の状態ではその程度がだいぶ改善されて∞刻印位置でも難なく微動できるように良くなりました。

つまり無限遠位置附近でのピント合わせができるようになったと言う意味です。

当初マウント規格たる「exakta」のマウントアダプタに装着した際、フックをわざと掛けずにおくと無限遠位置でのピント合わせですぐにオールドレンズ筐体が回ってしまい外れていたほどに硬いトルク感でしたが、現状同じ条件下で無限遠位置附近でピント合わせの微動を試みても外れなくなりました (つまりそれだけトルクが軽くなったという意味)。

但し前述で「9回目で諦めた」と言うのはそもそも2つの矢印の問題の改善を狙うと「直進 キーの根元はどんどん弱っていく」為下手すれば亀裂が入ってしまい「ジャンク品に堕ちる」との恐怖感から9回のトライでやめたという次第です。

弱ったりしないなら何回でも挑戦を続けるのが当方のポリシ〜ですが何しろ怖いので必要以上触らないほうが無難です。

残念ながらこの程度まで軽く改善できたと言う事でお許し下さいませ。もちろんもしもご納得頂けないならご請求金額までをMAXとして「必要額を減額」下さいませ。最大値は「無償 扱い」とし当方での弁償などは対応できません。

・・申し訳御座いません。

↑こちらの写真もバラしてから溶剤で洗浄した後に撮影した鏡筒です (前玉側方向から撮った 写真)。すると過去に落下させたのかぶつけたのか不明ですが「当初バラす前の時点で内側方向に変形していた」のが赤色矢印の箇所です。上のほうの箇所が最も目立つ印象で内側に凹んでおり下側の2箇所はレンズ銘板を外して初めて擦れ痕が残っていたので判明しました。

要は当初レンズ銘板を回して外していくと途中で噛んでしまい固着して外れなかったのです。しかも上側の位置だけ広げても二度三度固着していくのでここのフィルター枠からレンズ銘板を取り外す作業だけで丸っと3時間を要したので、その結果ご覧のとおり広げてレンズ銘板を外した次第です。

レンズ銘板を取り出さないと光学系前群にアクセスできませんし、光学系前群が外れなければ当然ながら絞りユニットにもアクセスできません。

もちろん最後はちゃんと叩き込んで見栄え良くフィルター枠の変形を戻しています。

↑今回扱った個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は「Biotar  58mm/f2 T《中期型−I》(M42)」のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。赤色矢印で指し示した箇所が前述の変形箇所ですが当初内側に凹んでいた箇所を広げてレンズ銘板を撮りだした後の組み上げ工程で再び叩き込んで戻しています。

現状もちろんフィルター着脱に支障ありませんがフィルター装着時のネジ込みは少し注意深くネジ山が合うのを確認してからネジ込んでいって下さい。

また残念ながらこのフィルター枠打痕 (当初の内側方向への打痕のこと) により既にプリセット絞り環/絞り環のネジ山が真円を維持しておらず残念ながら回すトルクがこのモデルにしては少々重めの印象です。

さすがに鏡筒全体の話なのでいったい何処が真円を維持していないのかは機械設備で検査しない限り発見できません (当方ではムリです)。

現状当初と同じトルク感と重さでプリセット絞り環/絞り環をセットしてあります。

また当初はプリセット絞り環の設定時に特に開放f値「f2」に他の絞り値から戻す際一発でガチッと上手く開放f値にハマらなかったので、やはりフィルター枠の変形が影響していたとみています。

現状オーバーホール後は確実に一発で入るように戻ったのでどのプリセット絞り値でも確実にハマります。

さて、ここからはちょっとした発見の解説をしていきます(笑)

・・一つ前の完全解体全景写真をご覧下さいませ!

何と久しぶりでおそらく5〜6年ぶりだと思いますが「全ての構成パーツがブル〜のメッキ 加工塗色で仕上げられている個体」だったのです!(驚)

ちなみにオーバーホール工程のご案内として過去に整備した「中期型−I」モデルの参照URLを完全解体全景写真の項で掲示していますがその時の個体は「オリープ色のメッキ加工塗色」でありさらに希少なタイプです。「中期型−I」なのでプリセット絞り環にラインが刻印されているタイプですが、そのタイプでも内部のメッキ加工塗色は「オリーブ色/ブルー色/パープル色」と3色顕在し、且つ内部構成パーツの仕様が細かく異なります。

逆に言えば今回のブル〜のメッキ加工塗色の個体と参照ページで掲示したオリーブ色メッキ 加工塗色の個体とでは同様一部構成パーツの設計が異なるので「一部パーツの転用や使い回しのようなニコイチ/サンコイチができない」次第です。

これらメッキ加工塗色の相違と共に一部パーツの設計仕様が異なる点から当方では当時全部で3つの製産工場でこれら同一モデルの増産体制を組んでいたとみています。その根拠の一つがメッキ加工塗色と設計仕様の相違ですが、合わせて当方では当時Carl Zeiss Jenaでは「製造番号事前割当制」を執っていたと考察しており、それぞれの3つの工場で別の製造番号帯を付番して出荷していたとみています。

それは過去にメッキ加工塗色から捉えて検証したことがあるのでそのような考察に至っています (メッキ加工塗色別に製造番号が集約されてくる)。

一番最初に消滅していった製産工場は「オリーブ色のメッキ加工塗色の工場」でシルバー鏡胴を最後にゼブラ柄鏡胴時代にはこのメッキ加工塗色の個体が消えました。

さらに今回扱った個体のように「ブルー色のメッキ加工塗色の工場」もゼブラ柄までを最後に消滅し以降黒色鏡胴時代に入ると1989年に勃発した「ベルリンの壁崩壊事件」翌年に東西ドイツ再統一が成されるまで残っていたのはまさに「パープル色のメッキ加工塗色の工場」たるCarl Zeiss Jenaの母体工場のみと言うお話です。

もちろん製造番号の符番もそれらに連動 (集約) していましたしこのメッキ加工塗色で捉える 手法というのはなかなか有意義だと当方では認識しています。そもそもメッキ加工塗色の変更は容易いですがその時点で設計まで変更する必要性が一切ありません。

これは以前金属加工会社にお邪魔して社長さんからいろいろご教授頂いた際に確認しましたが、製産ラインを分ける目的で分かり易いよう構成パーツのメッキ加工塗色を変更するのはあり得るかも知れないが (その費用対効果の恩恵はほぼ見通せいないが) その時点で設計まで変更してくる必要性は皆無だとの事でした。

例えばメッキ加工塗色の相違で供給先マウント規格の種別を管理するのも一つの手ですが、 その時にマウント規格以外の構成パーツにまで設計変更を及ぼす理由がありません。なぜなら全てのモデルでマウント規格の違いに関係なく鏡胴「前部」側の操作方法が同じだからです。

その時にプリセット絞り環の位置や絞り環のネジ山数、或いは鏡筒の設計仕様までいちいち 変更する必要性が見出せません。ところがメッキ加工塗色の相違と共にそれら細かい設計変更を伴うとなれば製産工場自体が別だったとも考えられると社長さんに背中を押して頂き考察が進んだ次第です (感謝してます!)。

ちなみに当時ゼブラ柄で登場した唯一の存在で「幻の銘玉」と揶揄 され続けている「Pancolar 55mm/f1.4 zebra」が左写真ですが、後にも先にもCarl Zeiss Jenaで「55mm/f1.4」はこのモデルだけの孤高の存在であり、しかもこのモデルの内部構成パーツこそがまさに「ブルーのメッキ加工塗色」であり確かに一部構成パーツの設計仕様がシルバー鏡胴時代に製産していた「Biotar 58mm/f2 Tシリーズ」と被り継承していた事を伺わせるのです。

そんなワケで実はこのモデル「Pancolar 55mm/f1.4 zebra」をバラした時に初めて「もしかしたら製産工場が別にあってメッキ加工塗色が違う?」と気づく機会を得たのです。

ハードディスクがクラッシュした際にオーバーホール工程から何まで消失してしまい何とも 惜しい限りです(涙)

↑話が長くなってしまいましたが、そんなワケで今回扱ったこのBiotar 58mm/f2 T《中期型−II》(exakta)」は希少な個体なので是非ともご愛用頂ければとの想いです。

光学系内に薄いクモリと糸くずや塵/埃多め。
反射防止黒色塗料の厚塗り。

この2点についてはそもそもの光学系内で使う締付環が全て反射防止黒色塗料で厚塗りされていたのが因果関係で光学硝子レンズのコーティング層にインク成分が附着していたのがクモリの原因です。

一旦光学硝子レンズのコバ端と締付環両方の反射防止黒色塗料を全て溶剤で落としてから再び必要箇所のみ着色して組み込んでいます。

光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑同様後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。

↑12枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環/絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

当初バラした直後にチェックしたところ絞り羽根に油染みが起きており、且つ赤サビまで生じていたので12枚全て清掃し除去しています。何しろペラッペラで薄い絞り羽根なのでこの 当時のオールドレンズで「油染みは赤サビを誘いキー脱落の因果関係に及ぶ」のでとても恐ろしいです(怖)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

なおおそらく今回の個体は過去メンテナンス時に「コンパウンド」を使って光沢処置が施されているとみています。今回は当方にそのような薬剤が無いので処置しておらず当方での「磨きいれ」による光沢感処置だけ施しています (もちろん合わせて指標値着色も処置)。

↑当初バラしてから溶剤で洗浄した際に鼻に憑く異臭があったので過去メンテナンス時に潤滑油「呉工業製CRC 5-56」をプシュッとやっているかもしもオークションなどで手に入れた 場合はその出品者が処置しているのかも知れません。

但しヘリコイドグリースに「白色系グリース」が塗布されていなかったので運良くヘリコイドの固着を免れています。もしも「白色系グリース」が塗布されていれば間違いなく1〜2年でヘリコイド固着に至り「製品寿命」の運命を辿った事でしょう(怖)

冒頭解説のとおり変形していた直進キーの回復を9回のトライで諦めたので残念ながら当方 自身が納得できる「軽いトルク感」まで改善できていません。

・・申し訳御座いません。

しかしそうは言っても当初の詰まった印象で停止していた無限遠位置のトルクに比べたらだいぶ改善できたと思っています。納得できていませんが仕方ありません。それほど直進キーに 亀裂が入るのが怖いのです!(怖)

例によって当方の独特な感触のトルク感に至っていますが特に途中〜最短撮影距離までのトルク感は相当軽くなりました。無限遠位置はこのモデルの設計仕様上変更できないので当初位置のままです。

↑附属品を全てセットしたところです。フィルター枠の変形もちゃんと叩き込んで戻してある ので当初より改善できていないものの悪化もしていません。

また冒頭解説のとおりプリセット絞り環/絞り環の操作性/トルク感も当初バラす前の状態と同じままです。鏡筒のいったいどこが真円を維持できていないのか皆目見当が付けられません。

・・申し訳御座いません。

光学系内の透明度もスカッとクリアに戻り不必要な余計な反射防止黒色塗料の着色を極力やめて仕上げているので、今後光学硝子レンズに再びインク成分が固着する懸念は相当低いと思います。

ちなみにそのような根拠がちゃんとあって「前玉締付環」と「後群貼り合わせレンズ締付環」の2つの締付環だけは「製産時点からちゃんと艶消しの反射防止黒色メッキ加工」が施されているので、どうしてここにワザワザ敢えて反射防止黒色塗料を塗りまくるのか当方にはその 理由が分かりません。

そもそも光学系前群側の光学硝子レンズ格納筒内壁にまで反射防止黒色塗料が厚塗りされて いたので当初バラした直後のチェック時点で前玉裏面側に既にインク成分が頑固に附着して いました。

以上にてご依頼内容の全てに対し改善処置を施し、且つ当方の範疇にて必要な全ての処置まで講じてあります。これでまた10年以上使えるように戻ったと思います。次回の整備は是非とも近い将来の別の整備者に託して頂くようお願い申し上げます (当方はもぅ居ませんから)(笑)

久しぶりに「ブルー色のメッキ加工塗色の工場」出荷品を扱うことができて逆にお礼申し上げたい気持ちです・・ありがとう御座いました!

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっているので「回折現象」の影響が現れています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。引き続き次のモデルのオーバーホール作業に入ります。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。