◆ tamron (タムロン) BBAR MULTI C. 24mm/f2.5《初期型:アメリカ向け輸出仕様》(ADAPTALL)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産は
tamron製超広角レンズ・・・・、
BBAR MULTI C. 24mm/f2.5《初期型:アメリカ向け輸出仕様》(ADAPTALL)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた11年前からの累計で当時のtamron製超広角レンズ「24mm/f2.5」の括りで捉えると累計で5本目にあたりますが、今回扱った個体「初期型:アメリカ向け輸出仕様」だけでカウントすると僅か2本目です。前回の出品は昨年でしたが特に広角レンズ域のオールドレンズになると近年光学系内の第3群〜第5群辺りに「薄いクモリ」を帯びた個体が多い傾向にあり、なかなか手放しで即調達できない難しさを感じています。

例えば最もその傾向を強く感じるオールドレンズに旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製Flektogon 35mm/f2.8、或いはさらに遡ればフランスはP. ANGÈNIEUX PARIS製のRETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5など、凡そ光学系内をチェックした時LED光照射で視認できる「薄いクモリ」を生じている個体が多く、たいていの場合それら「薄いクモリ」は光学系の清掃でも一切除去できません (コーティング層の経年劣化に伴う蒸着コーティング層変質のため清掃では全く歯が立たない/一旦コーティング層を剥がしてからの再蒸着が必要)。

するとどのような写真が撮れるのかと言えば「薄らと霧がかかったような写り/画全体的にフレアを感じる写り」など、いわゆる俗に「甘い描写」或いは「オールドレンズらしい写り」との印象を抱く描写に堕ちてしまいどうにもなりません。

仮にそのような「LED光照射でようやく視認できる薄いクモリ」が光学系内の中心部〜後玉ではなく「前玉」のほうであれば、まだ写真への影響は限定され、ほとんど写真の画質を落とす要因には繋がりません。

そのような背景から捉えるなら例えばオークション出品ページの掲載写真などに「光学系内をLED光照射した写真を載せられても凡そ判断できる人はとても少ない」と指摘できます。それはそれら点キズや薄いクモリ/ヘアラインキズ/カビなど、具体的に光学系内のどの群に生じているのかの判定を下せる人はとても少ないのではないかとの意味合いです。

実際にオールドレンズを完全解体してオーバーホールしている当方がそれら掲載写真を見れば「光学系内のどの群の状況なのか」との判定が叶い、その結果から来る写真への影響度合いも容易に察する事ができます。

・・従って当方では光学系内をLED光照射した写真を敢えて恣意的に掲載していません。

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話しが少々脱線しますが、例えば以前オーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズで実際に起きた話しとして、旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製広角レンズFlektogon 35mm/f2.8 zebra (M42)」での写真撮影に於いて被写体との距離が変化している中での実写なのに、撮影された写真に「円形状の紫色の影が写る」と言う現象がありました。その「紫色の影」は大きかったり小さかったり、或いは円形状だったり半円だったりと一定しません (右写真はその時の個体写真)。

そして何よりも光学系内を覗き込んでもLED光照射しても一切そのような要素が視認できなかったのです。確かに光学系内の第3群に位置する貼り合わせレンズに「僅かなバルサム切れ」を確認できるものの、そのような円形状の紫色の点キズや汚れが全く発見できません。

ところが完全解体して光学系の各群の光学硝子レンズを撮りだして逐一細かく調べていくとようやく「真犯人」を突き止めました。第3群の貼り合わせレンズに起きていたバルサム切れのうち「バルサム切れの影響で薄いクモリを帯びていながらもドーナツ状で中心部はワリと透明だった」のが因果関係に至り、且つ「光学系内の締付環などに着色されていた反射防止黒色塗料のインク成分が経年で飛んでいてコーティング層に頑固に附着していた」のが「紫色の影」に至る主因だったのです。

従って当初バラす前の確認時点でどんなにLED光照射してもそのような経年のインク成分附着は目視できず (何故なら明確に紫色に色付いている箇所が皆無だったから)、光学硝子レンズをシルボン紙で清掃していく過程の中で「シルボン紙に薄く紫色が附着した」時点で初めて全ての繋がりが見えたのです。

要は光学系第3群が貼り合わせレンズで入射光を集光している中、バルサム切れにより薄いクモリが帯びている箇所を透過した入射光はフレアの発生になりつつも、実は中心部のバルサム切れが起きていない箇所を透過した入射光だけが「紫色に結像していた」のがその因果関係でした。

右図は以前そのモデルを完全解体した際に光学系の清掃時、各群の光学硝子レンズを逐一当方の手でデジタルノギスを使って計測したトレース図です。 色着色箇所が貼り合わせレンズになり、且つそこに「紫色の影」に至る要素があったのです。

だからこそ被写体との距離が変化しているのに様々なカタチで姿を変えつつも、然し「紫色の影」は写真に残っていたワケです。

それ以来当方では全てのオールドレンズを完全解体した際、必ず過去メンテナンス時に厚塗りされた「反射防止黒色塗料」を溶剤を使って全て完全除去しています。何故なら製産時点にメッキ加工で施されている「反射防止黒色塗料」なら溶剤で一切溶けないからです。

すると製産時点からのメッキ処理なのか、過去メンテナンス時に整備者によって塗布された「反射防止黒色塗料」なのかの判定が適うと言う次第です。製産時点なら設計者の意図として必要だった「反射防止黒色メッキ加工」であるものの、溶剤で溶けるのは「過去メンテナンス時に塗布された反射防止黒色塗料」であり、今までに数多くのオールドレンズでインク成分が飛んでいた事実に遭遇しているからです。

従って光学系内を覗き込んだ時に「真っ黒」のほうが見栄えが良いと過去メンテナンス時の整備者の手によって「反射防止黒色塗料」が塗布されますが、はたして製産時点に設計者自身が「必要ないからメッキ処理していない」のにどうして過去メンテナンス時にその必要性が表れるのか、頭が悪い当方には皆目見当が着きません(笑)

特に「光学系内の迷光に極度に神経質になって気にする人達/勢力」が現実に相当数居るのを知っていますが、以前取材させて頂いた工業用光学硝子精製会社でのお話によると「そこまで言うならどうして絞り羽根が漆黒の黒色ではないのですか?」とご担当者様に逆質されてしまい返答できなかったことがあります(汗)

まさに目から鱗状態で、確かに当方が今までオーバーホールを続けてきた11年間に「真っ黒な絞り羽根を実装したオールドレンズを見た記憶がない」と断言できるからです。100%で確実に断言できますが「黒色のメッキ加工が施されている絞り羽根は存在しない」のです。

もっと言うなら彼のライカ製オールドレンズですら絞り羽根は「メタリックグレー」であり、決してマットなブラックではないのです。それでいて光学硝子レンズの締付環や前玉直前に配される遮光環などは「マットブラックのメッキ加工が施されている」次第で、ちゃんと設計者が必要とするからそのような処置が講じられていると容易に納得できるのです。

従って当方のオーバーホール工程では基本的に溶剤で全ての「反射防止黒色塗料」を完全除去して仕上げています。それにより光学硝子レンズに蒸着されているコーティング層との化学反応を未然に防ぎ、詰まるところ「製品寿命」を少しでも延命処置したいからです。

ちなみに前述のオーバーホール/修理ご依頼分オールドレンズは、ちゃんと貼り合わせレンズを一旦剥がしてから当方にて再接着しましたから、スカッとクリアに戻りました(笑)

特にFlektogonやAngenieuxなどを筆頭に広角レンズ域のオールドレンズはコーティング層の経年劣化も進んでおり、貼り合わせレンズの状況と共に要注意です。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

迷光
光学系内で必要外の反射により適正な入射光に対して悪影響を及ぼす乱れた反射光

偏心
光学系内で上下左右で同じように収差の影響が現れない傾いた入射光の収束状態を指す

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話しが反れました。そのような背景から特に光学設計として「レトロフォーカス型」を実装してきている広角レンズ域のオールドレンズに於いて「光学系内のクモリの場所」がまさしく問われる話になり、それは標準レンズ域のモデルに比してもさらにトラブルに繋がるので決して蔑ろにできないチェック/確認項目なのです。

《モデルバリエーション》
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

1976年発売欧米向け輸出専用機

型番:BBAR MULTI C. tamron 24mm/f2.5 CW-24
マウント規格:ADAPTALL (1)
光学系:9群10枚レトロフォーカス型
最短撮影距離:25cm
A/M切替スイッチ:装備

前期型1979年発売

型番:SP 24mm/f2.5 01B
マウント規格:ADAPTALL2
光学系:9群10枚レトロフォーカス型
最短撮影距離:25cm
A/M切替スイッチ:なし

後期型1989年発売

型番:SP 24mm/f2.5 01BB
マウント規格:ADAPTALL2
光学系:9群10枚レトロフォーカス型再設計
最短撮影距離:25cm
A/M切替スイッチ:なし

↑上図はTAMRONが掲示している仕様のページです。

ちなみに欧米輸出専用機モデルのモデル銘にも含まれる「BBAR MULTI C. (Broad Band Anti-Reflection)」の略で和訳するなら「広帯域反射防止」の意になるマルチコーティングを現すようです。

なおタムロンのサイトで確認できる資料カタログによると「最小絞り値f22」としていますが、現実の製品では絞り環に刻印されている絞り値は「f16」までです。そして「f16」の次の「AE」で追加一段分絞り羽根が閉じて「f22」に至るようです (f22が必要な場合はAE位置まで絞り環を回す必要がある/AEにセットするとさらに絞り羽根が一段分実際に閉じるから/極僅かに微動して閉じる)。

以下にこのモデルで撮影した実写をピックアップしますが、今回はちょっと趣向を変えてこのモデルの魅力として「優しさとナチュラル感」について見ていきたいと思います。





↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端から背景にシャボン玉ボケが表出しながら徐々に滲んでいって円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。然しそもそも9群10枚もあるレトロフォーカス型構成の光学硝子レンズを通してこれだけの円形ボケを表出できるのはたいしたものだとの評価です。意外と広角レンズ域の特に「焦点距離24mm」になると、背景に現れる円形ボケは煩くなりがちの印象に写る事が多いように思いますが如何でしょうか。このモデルの円形ボケの表現はなかなか素直と言うか違和感に繋がりにくく好ましいと思います。

二段目
左側2枚ではパースペクティブをチェックしていますが、歪みがとても抑制されているので「焦点距離24mm」ながらも自然な印象で安心して見ていられると感じます。特に頭上に向かって違和感に至るほどに詰まっていく/そびえ立つようなイメージにならないので「ある意味標準レンズ並に自分の眼で見ているがままに然し広角域まで広がる」との印象で、相当素晴らしい性能だと思います。

また右側2枚では被写界深度をチェックする意味で実写をピックアップしましたが、こちらも意外に狭く/薄くなくてビミョ〜に明確に残る背景ボケがむしろ「やはり見たがままの印象」として記憶に残りそうです。

三段目
2つの段の印象を踏まえてこの段ではダイナミックレンジの広さをチェックする目的で実写をピックアップしました。明暗部での偏り幅がワリと均等なのでダイナミックレンジが広い印象を覚えます。明部の白飛び、或いは暗部の黒潰れに極端に堕ちずよく頑張って写していると思います。

特に左端の夕闇迫る中 (或いは夜が明けようとする中) での実写ではよくもこれだけの階調表現をちゃんと留めていると感じます。さらに3枚目は相応にピ〜カンでの撮影なのに露出オーバー気味な写りに堕ちずやはり頑張ってグラデーションを残してくれています。右端の白黒写真などは影との対比でシッカリと壁の質感が写っていて素晴らしいです。

四段目
いよいよクライマックスです。被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に大変優れており、金属質や繊維質、或いは動物毛など含めてそれら違いを明確に残してくれるのが素晴らしいです。然し今回はそれにプラスして「画全体に及ぶ優しさ感」合わせて決してコッテリ系に堕ちないコントラストをイジする「ナチュラル感」が観ていてとても安心していられます・・意外とこれって重要な要素だと思いますが。

五段目
この段では敢えて逆光耐性をチェックしています。「焦点距離24mm」なので当然ながら風景写真や自然を主体とした撮影が多くなるものの、逆光耐性も良いのでフレア気味に堕ちずによく表現していると思います。

光学系は9群10枚と言うこれ以上無いほどに贅沢を極めたレトロフォーカス型構成で、今回オーバーホール済で出品する「アメリカ向け輸出仕様」の製品発売が1976年である事を加味すると、よくもまぁ〜拘り抜いたものだと感心してしまいます。このモデルのバリエーション状は「初期型」としています。

1979年に製産を終わり次の後継機「SP 24mm/f2.5 (01B)」へとバトンタッチしますがモデルバリエーションで「前期型」としました。

光学系の設計はこの2つのモデルで共通になりますが最後の「後期型」たる「SP 24mm/f2.5 (01BB)」では光学系を再設計しているようで、以前扱った際に計測してトレースすると各群の実測値がビミョ〜に違いました (右構成図はその時計測したトレース図)。

特に光学系第4群の貼り合わせレンズと第5群に後群側第6群〜第9群まで凡そ計測値が違いました。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はBBAR MULTI C. 24mm/f2.5《初期型:アメリカ向け輸出仕様》(ADAPTALL)』のページをご参照下さいませ。

正直に言ってこのモデルを完全解体するには相応のスキルを既に養っていないと「ネジ一つに至るまで完全解体できない」と明言できます。

さらに各部位の設計上から来る「非常に神経質な微調整機能/範囲」はだいぶ厄介で、先ず以て整備者でも相当な熟練工ではない限りキッチリ最後まで微調整機能を活用しまくって仕上げる事はできないと思います。

特に当初の完全解体でバラした時とは全く異なる組み立て手順で仕上げていく事に気づくか否かで、相当微調整の適正さが変わります。当然ながら一つの部位での微調整が適合しないと他の部位に影響を及ぼすので意外とこのモデルで「絞り羽根の開閉異常」或いは本来適切に開閉していないのに正常扱いされている個体など、よくみかけます(笑)

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。今回の個体には滅多にお目にかかれませんが「当時のFUJICA製フィルムカメラ向け開放測光用機能を備えたADAPTALLマウントが附属」していました(驚) 正直、今回初めて目にした/手に取ったと言って良いです。

当然ながら「M42マウント規格」なのでフツ〜のマウントアダプタに装着可能ですが、一つだけ「マウント面に開放測光用の爪が在る」事からできればK&F CONCEPT製マウントアダプタを使うのが適しています (そうしないと爪が突き当たってしまい最後までネジ込めない)。

これは同じタムロン製の「ADAPTALL」マウントとして「M42タイプ」を手に入れればその爪が存在しないのでベストですが、やはり滅多に市場流通していません(泣)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う「極薄いクモリが皆無」と言いたいところですが、残念ながら「光学系第1群 (前玉) の表面側に非常に薄いクモリが残っている」状況で、その他の第2群〜第9群までがスカッとクリアなだけに悔しいです(泣)

但し「薄いクモリ」と言っても光に翳して確認しない限り視認できないレベルなので写真への影響は最小限と判定しています (おそらく光源を含む撮影時でも影響を受けない)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

よ〜くチェックすると前玉に細いヘアラインキズが数本視認できますが、もちろん写真には影響しません (微細すぎて玉ボケの内側にも写り込まない)。

↑後群側は後玉含めLED光照射でコーティング層経年劣化に伴う「極薄いクモリが皆無」です。このモデルとしては後玉がベストな状態を維持しているのは多少珍しいでしょうか。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

何しろ冒頭解説のとおり「BBAR MULTI C. (Broad Band Anti-Reflection)」のマルチコーティングですから、光学系を翳す時に角度を変えるとエメラルドグリーンの光彩が大変美しく輝きます。おそらくはナチュラル感を増幅してくれているのはこのコーティング層のおかげのようにも感じますが、光学知識が疎いので確かな事は分かりません(笑)

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
後群内:18点、目立つ点キズ:13点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大12mm長複数あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・前玉表面はコーティング層経年劣化により順光目視では視認できない非常に薄いクモリが中心部から外周方向に渡り残っています。但し入射光の透過が適うので普通の写真撮影時は影響が少ないと推測できます(当方でのオーバーホール後実写では写真への影響なし)。一方光源を含むシ〜ンや逆光時は相応にフレア発生率が高くなります。事前告知済なのでクレーム対象としません。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環→A/M切替スイッチ共々確実に駆動しています。特にこのモデルはマウント面から飛び出ている「絞り連動レバー (小さな車輪)」の反応、及びチカラの伝達が経年劣化に伴い悪化している個体が多く、最終的に「絞り羽根開閉異常」が起きている事があります (f11〜f16やAEでも絞り羽根が微動しない)。

絞り羽根は「f8」でもほとんど閉じきっているようにしか見えませんが、それはあくまでも光学系前群の6枚の光学硝子レンズを通しての話しですから、実際の絞りユニットとしては相応にまだ絞り羽根が開いています。

従ってf11〜f16或いはAEでも微動をしないのは光源を含む撮影時に特に影響が出ますから、逆光耐性が良いレベルのこのモデルにはもったいない話になります。そのようにオールドレンズの描写性までも加味して手に入れるモデルを考えるのも重要です。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・<B>距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります</B>(神経質な人には擦れ感強め)。
・このモデルは「初期型」なのでADAPTALLマウントになりますが、附属品としてFUJICA向けのM42マウント変換リングが装着されています。
・マウント面に「開放測光用の爪」が1mm程突出しています。一般的なM42マウントのフィルムカメラやマウントアダプタ経由デジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着する際は、ご落札者様
ご自身でK&F CONCEPT製マウントアダプタを入手頂ければ爪を避けて使えるので切削の必要がありません(爪自体は金属製です)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・フィルター枠に打痕/変形があったため当方にて修復しています。現状問題なくフィルターなどのネジ込みができるよう完全修復済です。ネジ込みの際はネジ山が咬み合うのを確認してからネジ込んでいってください。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体BBAR MULTI C. 24mm/f2.5《初期型:アメリカ向け輸出仕様》(ADAPTALL)』
ADAPTALL FUJICA向けM42変換マウント (中古品)
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

距離環の駆動域が意外と短いのですぐに∞〜25cmまで回ってしまいますがトルクは「重め」です。ピント合わせ時の微動は「軽い操作性」に仕上げてあります。またA/M切替スイッチと絞りユニットとの連係動作/伝達も適正に微調整が済んでおり、確実に絞り羽根の開閉動作が行われます。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑マウント規格が「ADAPTALL規格」なのでマウントを交換できる仕組みですからご覧のように「ロック解除ボタン」が備わります (赤色矢印)。

↑マウント部には「」の緑色リリースマーカーがあるので、ADAPTALL変換リングの「」と合致させて時計方向に回せばロックしますし、外す際は前述の「ロック解除ボタン」を押しながら/保持しながらそのまま反時計方向に回すと外せます。

↑こんな感じで「開放測光用の爪」がマウント部に備わるので、当時のFUJICA製一眼レフ (フィルム) カメラ「ST801/ST901/AZ-1」などのモデルで開放測光機能を活用して撮影できます。

↑今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着するならご覧のようなK&F CONCEPT製マウントアダプタをご用意頂ければ、そもそもマウントアダプタのオールドレンズ側マウント面が「約1mm突出」しているので前述の「開放測光用の爪」が当たらず/干渉せずちゃんと最後までネジ込めます。

↑K&F CONCEPT製マウントアダプタに装着した状態で「開放測光用の爪が全く干渉していない」のを撮影しています。グリーンのラインのように隙間が空いているのでちゃんと最後までネジ込めます。一般的なマウントアダプタだとマウントアダプタ側に突出が無い場合が多いので要注意です。

↑フィルター枠に打痕が残っており当初オーバーホールする前の時点では全くフィルターの装着ができませんでしたが、修復したのでフィルター装着が可能です。ネジ込む際はネジ山が咬み合うのを確認してから回して下さい。

↑当レンズによる最短撮影距離25cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。この後に絞り環を「AE」刻印まで回すとさらに絞り羽根が微動して閉じ「f22」になります。絞り環は一切ロックがかかりませんから自在に回して大丈夫です。

またこのモデルのピントのピークが瞬時なので「ピントの山のピークがとても把握し易い」のが特筆モノで、且つご覧のように鋭いピント面を構成してくるので堪りません(笑) ある意味人の瞳で観たがままの印象として写真を残してくれるので「焦点距離24mm」でも意外と使い出を感じると思います。

・・是非ご検討下さいませ。