◎ Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) Auto-Quinon 55mm/f1.9 (ツートーン)(exakta)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Steinheil München製標準レンズ・・・・、
Auto-Quinon 55mm/f1.9 (two-tone) (exakta)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

ネット上のサイトなどで語られている内容から日本ではSteinheil München製
オールドレンズの人気がないと事前情報を得ていましたが、ここまで人気がないとは全く以て落胆状態です。確かに29回も組み直ししたのは当方の技術 スキルが低いが故ですが、そうだとしても完璧に仕上げてあると謳っているにもかかわらず人気が無いとなるとさすがにガックリです。

確かに今までもPaxetteモデルでSteinheil München製オールドレンズの人気が今一つだったとの印象なのでもっと早くに気づけば良かったですね。

もう一段値下げして出品しますが、できればそろそろ狙っていらっしゃる方々にはご落札をご検討頂きたくお願い申し上げる状況です。せめて29回の半分くらいまで作業対価を回収できればとの切ない想いです(涙) それほどまるでジャンク品状態だったのでそれを活き返らせるパワーも既に半減に堕ちてます (だからこそ引退するべきなのですがもう少し頑張りたいです)。

やっとの事でご入札が入りました・・うれしいです!
ありがとう御座います!
もぉ〜この開始価格でもご入札なければどうしようかと思っていました。
まさにエンジェルに見えています・・(涙)
この際、背に腹は代えられません!
オーバーホール作業対価などととんでもない金額を上乗せするから皆様
からそっぽ向かれたのだと反省しました。何しろ今月は生活費にも困窮
状態なのでどうか宜しくお願い申し上げます。

ご落札頂きました! ありがとう御座います!
今までにお取引のない方々にもご入札頂きましたが、半分の方々は
リピーターの方々で、もぅそれだけでも感謝極まりないのに、最後まで
競ってご奮闘頂きご落札頂いたのはリピーターの方でした。
そもそもこのようにリピート頂ける事が何よりも励みになりパワーの
源であります。
皆様に心からお礼申し上げます・・ありがとう御座います!

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で1本目にあたり今回の扱いが初めてです!

実は既に扱ったつもりになっていて普段は敬遠していたりしましたが、よ〜く調べたら昨年 扱ったのは今回のモデルとは全く別モノのAuto-Quinon 55mm/f1.9 (silver)《半自動》(M42)』でした。

昨年扱ったモデルはパッと見でマウント規格が「M42マウント」なだけで今回のモデルと同一シリーズのように認識されがちですが、実は昨年のモデルは最短撮影距離が「50cm」に対し、今回扱うモデルは「40cm」なので必然的に光学系の設計が異なります (つまり同一の シリーズとは括れない/描写性が変わるから)。

ちなみにネット上の何処かで読んだ記憶があるのですが、オールドレンズの一つの任意のシリーズで捉えた時、幾つかのマウント規格に対応した製品展開をしていたりします。この時、例えば製品としての対応マウント規格が「M42/exakta/Praktina」と3種類出荷していたと仮定します。

するとこれら3つのマウント規格別に当然ながらフランジバックがそれぞれで異なるのでそれら製品も「3種類の異なる光学設計をそれぞれが実装している」と受け取られがちですが、実はこれら3種類の実装光学系はたったの一つです。

フランジバック
レンズマウント面から撮像面 (フィルムカメラならフィルム面でデジカメ一眼/ミラーレス一眼ならば撮像素子面) までの距離

どうしてそのように明言できるのかと言えば、その前提条件 (と言うか同一光学系である根拠) がちゃんとあって「最短撮影距離が同じ距離」ならばフランジバック距離が変化しても「それらの相違点はヘリコイドのネジ込み位置で相殺できる」からこそマウント規格の相違を以てして光学設計の変更要素には当たらないのです。

ところが今回のモデルのように最短撮影距離自体が異なってしまうとどんなにヘリコイドの ネジ込み位置を変更しようがそもそも画の結像位置がズレているので一致するハズがありません。従って「最短撮影距離が違うから光学系は別の設計だったハズ」との仮説が浮かび上がりそこにマウント規格の相違は一切影響しない要素と言い切れます。

逆に指摘するなら当方のオーバーホール工程の中で毎回必ずヘリコイド (オス側) のネジ込み位置に対し「全部で幾つのネジ込み位置が顕在するのか明記している」要素こそがそれを現しているとも言えます。

但しどんなにヘリコイドのネジ込み位置の数が多くてもそこにネジ山の勾配と鏡筒の繰り出し量/収納量が関わるので、仮に全部で8箇所のネジ込み位置があったとしてもその数がそのまま対応マウント規格の対応の数を示している話にはなりません。8箇所のネジ込み位置があっても対応マウント規格のフランジバックを相殺するのに適したネジ込み位置は4箇所だけなのかも知れないのです。

まぁ〜今まで、3,000本以上オーバーホールしてきた経験値から言えば、マウント種別の相違を相殺するのに僅か2〜3箇所のヘリコイドネジ込み位置の相違だけでキッチリ相殺できていたモデルと言うのは相当少ないイメージがあります。逆に言えば「L39マウント規格」品などは必ず「距離計連動ヘリコイド/機構」が介在する話しなのでさらにマウント種別に対応できる相殺レベルは低減して「ほぼ専用設計」みたいな話しに至らざるを得ないか、多少のマウント種別への対応の道を残すべく「敢えてシム環調整していた時代」もあるので一概に括る事が適いません。

その意味で例えば「鏡胴二分割方式」の設計は当時にしても今から考えても本当によくできた設計概念の一つだったと今さらながらに感心したりします (個別のオールドレンズの設計そのモノよりもそれ以前に設計概念という前段が必ず存在する事も一つの重要な捉え方です)(笑)

・・実際シム環の存在を相当に貶す人達/勢力が顕在する事も事実ですが(泣)

シム環
マウント種別の相違を強制的に解消するために鏡胴「前後」の間に必要とする厚みを持たせた環/リング/輪っかを挟む手法

このシム環などの介在を指して「ごまかした設計思想/安直な設計思想」と貶す人達/勢力は、今一度一歩下がって「ならばどうやって製産時のコスト低減を図れば良かったのか」との造る側/設計者の立場に立った時、一番効率的に/合理的にシンプルにコスト低減を狙える最も単純明快な手法との認識に立てば、あながち貶すばかりが能ではないと当方には思い至ります。

こうやっていろいろ考察を進めていくとなかなかオールドレンズと言うのは当時の時代背景を知る必要もあり、且つその中にあって単なる製品としての特徴や描写性のみならず「製産工程」或いは組み立て工程など凡そ設計者の意図をどんだけ汲み取れるのかも「また一つの側面を構成してくれてオールドレンズの愉しみ方に深淵をより深めてくれる」とそのロマンに尽きる事がありません(笑)

余談のような話しの内容で解説しましたが、実は今回のモデルには対応マウント規格の中に「Paxette」があるので、するとたいていのレンジファインダーカメラたるPaxette向けの当時の標準レンズはほぼ全てが「最短撮影距離1m」なので今回のモデルと同一の光学設計で 済むハズがありませんから、そのマウント規格の製品だけは別の光学系を設計してきているとの仮説に至ります (現実的には開放f値もf2に変わったので必然的に再設計した光学系が実装されている→Quinon 50mm/f2モデル)。

  ●               

このモデルが衝撃的に世界に発表されたのは1956年に旧西ドイツはケルンのケルンメッセ内ブースで開催中の「photokina (フォトキナ)」 でのSteinheil München社ブースでした。

当時世界の主流は無段階式 (実絞り) かせいぜい先進的でも一旦チャージレバーを引き回してチャージ後 (それでようやく完全開放状態になり) 撮影する「半自動絞り方式」でした。

その中にあって突然完全開放状態を維持しながらシャッターボタン押し下げで瞬時に設定絞り値まで絞り羽根が閉じる「完全自動絞り方式」の製品を発表したからです。

そのような「自動絞り方式/手動絞り方式」の切替をたった一つのツマミの操作だけで容易に実現できたそのスマートな操作性が注目を浴びたようです (都度毎回必ずチャージさせるセミオートの煩わしさがない)。

左上カタログに写っている「初期型モデル」には筐体右横マウント面の直前に「円形ツマミ」が用意され左に回すと完全開放状態を維持した「自動絞り」になり右に回すと「手動絞り」で絞り羽根が閉じていく操作方法なのでこのツマミの存在が「初期型」判定の根拠になります。

また当然ながら当時主流だった「開放f値f2」を極僅かに下回ってきた高速性の要素も意外にも脚光を浴びたようです。しかも本体筐体の左横シャッターボタンにはレリーズソケットまで備えピントを合わせてから絞り環操作してボケ味を確認する際にツマミ操作だけで絞り羽根が瞬時に「シャコン!」と設定絞り値まで閉じるので「撮影する際のカラダの動きに自然にマッチした操作方法」だった点が相当な魅力だったようです (当時の写真雑誌での評価記事)。するとまさにこの大衆の受け取り方は今の撮影スタイルにも相通じる印象であり今も昔も人の感じ方と言うのは何も変わらないと感じました (当たり前ですが)。

すると実はこのような部分にどんな製品にも相通ずる「人の感じ方/受け取り方のヒント製品としての差別化」が隠れており注目を浴びるのか否かを左右する重要なファクターの一つ とも受け取れます。

つまりこれらの事柄から当時の時代背景として少しばかり垣間見えたのは1950年代まではまだまだ旧東西ドイツ側の (特に旧西ドイツの) 光学メーカーの牽引力は世界のトップを走っていたのだと感慨深くなりました(笑) やがての次の1960年代に入るとあっと言う間に日本製光学製品が世界中を席巻してしまい、その性能も操作性も個性までも製品化の武器としてどんどん送り出されたから堪ったものではありません。彼の有名な旧西ドイツのZeiss Ikonでさえ1971年には耐えきれずに採算性が見えなくなってしまったカメラ事業から撤退してしまいました。今でこそ光学製品に関し日本のメーカー以外に牽引するだけの技術力と魅力を併せ持つカメラ製品を送り出す会社はありませんから、いくらスマホの写真撮影の画質が向上してきたからと言って諦めずに「今一度回帰」を頑なに追求すれば生き残れると確信しています。

そんな中で当方がこだわり追求し追い求めるのは一にも二にもやはりオールドレンズ達です。今ドキなデジタルなレンズには到底及ばない「収差だらけの低レベルな性能/画質だからこそ 愉しめる」ワケで、そこに画の隅々までの均整を追求する想いは存在しません(笑) そういう画は今ドキのデジタルなレンズに任せれば良い事ですが、はたして詰まるところ仕事で使わないならその画質に大きな差を見出せません。するときっとスマホでもいいや!・・と言う潮流もあながち人情だと理解できるので、逆にそれを武器とするなら日本の光学メーカーは特にカメラボディ側機能として「フィルムシミュレーション」をもっと真剣に駆使して追求してもらいたいです。まずは少しでもカメラボディの売り上げを上げるべきであり、そこをチャンスの一つと認識するならオールドレンズ達を装着して楽しむ事にももっと配慮するべきであり、メーカー自身の方向性自体が「自ら首が絞まるばかりの流れ」に頑なにこだわっているように しか見えません。

例えば当時のフィルム印画紙の種類など詳しくないですが、日本の光学メーカーが全体でまとまり数多くの印画紙商標メーカーに対しその技術/性質の違いを提携して採り入れれば、それらフィルムシミュレーションをオプションでシステムソフトとして単体で発売しネット配信だけで組み込めるようにすればカメラボディ側メーカーの違いにかかわらず互いがウインウインで愉しめると思います。するとオールドレンズ達の有効活用の幅が増えてとても魅力的に感じます。富士フイルムやKodakの他、幾つも在るフィルム印画紙フォーマットやランクの違いを 愉しめたらと妄想しただけでもワクワクしてしまいますね(笑)

逆に言うなら今流通しているデジカメ一眼/ミラーレス一眼で真にオールドレンズ達を愉しめる要素の魅力を感じ得ないので相変わらず初期の頃のSONY製α7IIのままでOKなのです(笑)
それがもしもオールドレンズ達にとても配慮した新機能を備えたボディが登場したらあっと言う間に貯金をスタートする気持ちになるでしょう!(笑) オールドレンズ沼に首までドップリ 浸かり後もうちょっとで口も鼻も沈んで窒息しそうなくらいでも求めるべきは求めてしまう 性 (サガ) こそが奈落に堕ちていく快感/満足感とも言えます・・(笑)

話が反れましたが右写真は旧東ドイツの「Ihagee Dresden (イハ
ゲー・ドレスデン)」社が1951年から発売していたフィルムカメラ「Exakta Varexシリーズ」の一つで「Exakta VX」です。

初期型モデル」のAuto-Quinonが装着されています。ちなみにモデル銘たる「Quinon」はヤフオク! の一部出品者が「クイノン」と明記していますがドイツ語なので「キノン」が正しいモデル銘です。

↑モデルバリエーションで括ろうにもマウント規格の相違で最短撮影距離まで仕様が変わって しまうのでモデルバリエーションとして括れません。左端から「初期型」と2枚目写真今回のタイプに3枚目が半自動絞り方式の「M42マウント規格」で最後右端がゼブラ柄の「Auto-D-Quinon」です (M42)。

すると右端のゼブラ柄モデルは「Auto-D-Quinon 55mm
/f1.9
」ですが、実はこの「Auto-D」の「D」については某有名処サイトの解説で「Diaphragm (絞り)」でありマルチコーティングの事ではないと案内されていますが、当方の 考察は全く違います。

Diaphragm (絞り)」が自動化されたのは1956年に登場したシルバー鏡胴時代で既に完結済です。シャッターボタンも兼ねるレリーズボタンを装備し同時に「A/M切替ツマミ」も合わせて装備していたワケですから、自動化を今さらながらに「赤色文字で強調までさせて」発売する理由がありません。まして旧西ドイツの製造メーカーとなれば、モデル銘を選定する際はラテン語/英語表記ではなくまずはドイツ語で相応しいモデル銘を選んでいたハズなので、ラテン語/英語表記の「Diaphragm (絞り)」を シリーズ銘に据える事は考えられません (ドイツ語の頭文字を採ってくるハズ)。

この当時の旧東西ドイツの光学メーカーの慣わしとして「コーティングについて赤色表記させる事が多かった」と言えます。例えば旧東ドイツはCarl Zeiss Jenaの「zeissのT」はモノコーティングであり、その後に登場したコンタックスブランドでのマルチコーティングが「T*」ですね。他にも「V」刻印を採用していたMeyer-Optik Görlitz (旧東ドイツ) やSchneider-Kreuznach (旧西ドイツ) では「」だったりします。

いずれも当時の最先端技術の一つとしてコーティング層の蒸着を「赤色表記」していたワケですが、前述の広告を見る限り「光強度」つまりは「透過率」を向上させたとドイツ語で説明しています。これを読み解くと「Das einfallende Licht Durchlässigkeit」と言う「入射光透過率」の頭文字を採った「Auto-D」シリーズとの当方考察に至ります。

要はマルチコーティングではなくてモノコーティングを指しますが、光の三原色に対してより反射率を低減させる事によって透過率が上がり「解像度の向上に寄与した」事を指す「D」と言うのが当方にとっては自ら納得できる考えです。

すると例えば同じ頃に存在した「MACRO S」の「S」はいったい何を指すのかと言う疑問が湧きます(笑)

実はこの「S」シリーズには「S」を附随しないモデルがあったりするので (内部構造同一) まさに米国向けにアメリカに於ける独占販売権を有する「Seymour (シーモア)」製モデルたる意味づけの「S」でありこちらこそまさしくコーティングなどの意味ではありません(笑)

ちなみにこの「Macro-Quinon 55mm/f1.9 zebra」は相当優れた描写性と発売当初から絶賛され続けている銘玉中の銘玉です。
(原型モデルはモデル銘にを含まない)


さらに左は1957年当時のレンズカタログ抜粋で今回扱うAuto-Quinon 55mm/f1.9 (two-tone) (exakta)』がちゃんと載って
います。

A/M切替スイッチの位置がレリーズボタンの場所に移動し「ツマミの引き上げ/押し込み操作のみで手動/自動切替を実現」しています。

  ●               





上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変遷していく様をピックアップしています。標準レンズの焦点域なのでシャボン玉ボケが大きく表出できずこぢんまりした印象です。光学系が典型的な4群6枚構成のダブルガウス型なのに意外にも頑張っていてキレイな真円に近いシャボン玉ボケや円形ボケを表出させられます。

実はモデルバリエーションで言う処の後のモデルAuto-D-Quinon 55mm/f1.9 zebra (M42)」ですが、蒸着コーティング層技術が進歩してより厳格に制御できるようになった結果描写性が変化しました。よりピント面のエッジが繊細に細くなり、且つアウトフォーカス部の滲み方がより増大してトロットロにボケていくので被写界深度の狭さ感が近いのにゼブラ柄のほうが圧倒的に溶け感が増します。

つまりその一方で収差ボケの表現性を魅力として捉えるならゼブラ柄モデルのほうが整いすぎた感に至ります (決して貶しているワケではない)。その意味で好みによりどちらのモデルに 魅力を感じるのかは違うと思っています。収差ボケの影響度合いを期待するなら今回扱うタイプのほうがお薦めですし、ピント面の繊細感とトロットロボケをひたすらに求めたいならゼブラ柄のほうがお勧めです (円形ボケの表出は逆に苦手になる/背景ボケの収差もより低減し溶けて消えてしまう)。

二段目
左端はその収差ボケの一例としてピックアップしていますが反射を背景にすることで上手く効果を効かせています。また2枚目は後もう少し背景の植物が手前方向に近ければ「背景の収差ボケがもっとエッジ強調されて油絵の如く写る」とも言えそうで素晴らしい写真です。全体的に背景ボケはゼブラ柄モデルほどキレイに溶けて消えていきませんからそれこそまるでゴッホの絵画のように、或いは印象派的な絵画の効果をそれら収差のエッジ強調と言う (本来当時はデメリットと受け取られていた) 要素を逆手に取り、今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼で撮ってしまえばまさに「インスタ映え」以上の希少写真が残せたりします。

その意味で何でもかんでもそれこそ等倍鑑賞してチェックしまくりでオールドレンズ達の画の隅々まで批判する概念には当方は賛同できず、どうしてそこまでして厳密な検証にこだわるのか理解できません。元来当時からして光学系の設計段階で「何を採り何を捨てるのか」との葛藤と闘いつつ仕上げてきたオールドレンズ達に対し、そのような背景まで汲んで慈しみ愛しめば人情の面から捉えた時、どれだけ日々の情緒に豊かさを増すのかと思います。

このように指摘すると等倍鑑賞派の人達/勢力からご批判を頂きますが、等倍鑑賞派の言い分も十分理解できるもののそこまで精緻な検証を行ったのなら却ってそれがそのオールドレンズ達の写りのどの部分に現実的な結果として反映するのかをキッチリ説明するのが礼儀ではないかと感じます。隅々まで検証し良し悪しを特定して自慢話に終わらずにその検証結果からどのような画が生み出されるのかを明確化する事で、貶されてしまい落胆するしかないモデルでもその所有者にとり愉しめる要素をシッカリ認めてあげるのが「オールドレンズの画が人に与える印象」の補強に至り互いがウインウインの関係性を築けるのではないでしょうか。

ネット上のサイトを観ているとそのように感じますね・・貶すだけ貶しまくってもその貶されてしまった内容を有意義と受け入れているオールドレンズ沼の住人だって居るのです。当方がオーバーホールに於いて過去メンテナンス時の整備者を徹底的に貶しまくるのとは全く別次元の話で、それは一にも二にも「オールドレンズの延命処置に繋がっていない」と言う大局からそこに千差万別の人の受け取り方などあり得ずその行き着く先は「製品寿命を迎える」たった一つの結末だけです。

オールドレンズ達が残す画の良し悪しにこだわらずその背景やロマンまでリスペクトするなら詰まるところそれはその画を観て一喜一憂する人達の想いにまで配慮するべきが人情であり、まさにそのオールドレンズ達の役目 (さらに50年後までの) を終わらせる方向性に仕向けて しまう過去メンテナンス時の整備者による所為は徹底的に貶しまくる以外ありません。

三段目
まずオドロキなのは一番左端の「紅色飽和しない発色性」であって花弁の材質感や素材感を 写し込む質感表現能力に長けているのが理解できる写真です。当方などはこのように「赤色の発色性」にこだわり、赤色が織り成す一つの結果的要素に「紺碧の表現性」まで見据えると このようなこの当時の旧西ドイツ製オールドレンズにある意味共通項的に採り入れられ続けていた「シアンに振れる描写性の特徴」はある意味自然な人間の瞳で観たままの発色性を保証しながらもピント面のエッジ表現に「繊細感/骨太感」を与える事で表現の域を押し広げていたと正直感銘を受けたりします (例としていわゆる俗に今も語られ続けるシュナイダーブル〜などがその良い例)。「赤色をイジる」とはそのような派生も促されるのだと認識できます。

次の2枚目と3枚目の実写はともにダイナミックレンジの確認としてピックアップしています。この当時のオールドレンズはだいたい何処のモデルも似たような傾向ですが暗部の耐性はそれほど良くなくストンと黒潰れしてしまいます。その一方でやはり明部のグラデーションは相当耐性が高く細かな階調表現が得意なように感じます。そして最後右端の実写が秀逸で、黒潰れで暗部が潰れまくっている中、バックの反射板 (オレンジ色の縦長) 或いはシルバーな買物カートとシッカリ浮かび上がっているのが素晴らしい写真です。しかしよ〜くチェックすると潰れまくりの暗部もちゃんと路面のアスファルト感や金属質の鈍い光沢感まで写し込んでいてさすがと唸ってしまいます。

四段目
左端の人物写真ではとても幻想的な世界を上手く表現していて素晴らしい撮影スキルです。こんな写真を親御さんに撮られてしまったら被写体の娘さんは一生の想い出写真になりますョね?(涙) ステキ極まりない写真です。標準レンズなので人物撮影やポートレートには少し難しい焦点距離です。また2枚目の写真を観ると動物毛の感じがとてもよく写っています。光っているカップラーメンの写真も右端の落ち葉もそれぞれ鋭いピント面と共に質感表現能力の高さが納得できます。逆に言うならこの後に登場するゼブラ柄モデル「Auto-D-Quinonシリーズ」ではこれ程までの質感表現能力の高さは逆に苦手かも知れません。それはピント面のエッジがもっと細く出てくるので、合わせてアウトフォーカス部が滲む事から写界面を残しづらいとみていますから、このように「初期型や今回の第二世代をむしろ狙う」のもアリと感じて 今回の調達を決心した次第です。

五段目
被写界深度の狭さ感としてピックアップしていますがやはりゼブラ柄モデルに比べると広めの印象です、且つピント面のエッジは骨太傾向です。また光源に対する反応が素晴らしくゴースト撮影に楽しみを抱く方にはお勧めのモデルとも言えそうです。

光学系は「初期型今回の第二世代」或いは「後期型」たるゼブラ柄も含め全てが典型的な4群6枚のダブルガウス型構成です。

右構成図は今回のオーバーホールに際し完全解体した際に当方の手でデジタルノギスを使い逐一各群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

一方こちらの右構成図は「M42マウント規格」のシルバー鏡胴モデルのほうで「最短撮影距離50cm」から光学系の設計が変わったのを実際に調べた時のトレース図です。

前回のオーバーホールに際し完全解体した際に当方の手でデジタル ノギスを使い逐一各群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

ちゃんと光学系後群側で特に入射光の集束度合いをイジッているのが顕著に伺えるサイズ/曲率などの相違を表しています。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

だいたいいつも同じですがこの当時の特に旧西ドイツ側に顕在していた光学メーカー・・・、

・Schneider-Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ)
・Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン)
・ISCO-GÖTTINGEN (イスコ・ゲッチンゲン)
・A.Schacht Ulm (シャハト・ウルム)

・・・・辺りのオールドレンズ達は何処も似たり寄ったりで「超高難度モデル」だったり します。

まだそれでもSchneider-KreuznachISCO-GÖTTINGEN、或いはA.Schacht Ulm辺りは互いに構成パーツの一部を使い回したりして協力し合っていたようなのでまだ合理的に整合性が強化されていく傾向がありましたが、ハッキリ言って独自路線ひた走り中だったSteinheil Münchenは、それはもぉ〜霧中行軍を強いられているような気持ちになるほどに前が見えず掴めず行き当たりばったりで臨むしかないこれでもかと言わんばかりの難しさです。

その難しさが単に複雑なだけであればそれこそズームレンズの如く臨めばクリアしていけますが、Steinheil München製オールドレンズの難しさはそのような複雑怪奇ではなく「超神経質な微調整」であり、オーバーホール工程を進めながらもいったいどこの構成パーツが影響して問題が起きているのかそれぞれの工程の度に認識を改めない限り「本来あるべき姿」に到達し得ません。

ではその最後に到達したい「本来あるべき姿」とは何かと言えば不具合/違和感/齟齬など凡そクレームを付ける箇所/部位/場所が発見できない状況を指し、まさに今回仕上がった個体こそがそれに匹敵し得ると明言できます (但し筐体外装は経年並みの様相)!

・・はい、これ以上ないほどに本来あるべき姿として復活したAuto-Quinonです!

ちなみに海外オークションebayの流通個体の価格帯をチェックすると、4万円台6万円台の流通個体は凡そ絞り羽根開閉異常 (A/M切替スイッチ操作の挙動含む) 距離環を回すトルクの 問題、或いは光学系の問題など何かしら懸念が高いワケですが、それが6万円台8万円台になると相当それら懸念が低下します。しかしそうだとしても決して整備済の個体ではないワケで今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する即決価格はそれを目安にしています。

実際のところ冒頭解説のとおり半自動絞り方式の「M42マウント規格」だった個体を昨年扱った際は (その時も同じく初めての扱いだった) 確かに最終的に丸っと2日掛かりの作業に及び、その組み直し回数たるや「31回」という当方にとり前代未聞の回数だったものの、約1年ぶりに今回オーバーホールに臨んだところ「丸っと2日掛かりで29回の組み直し回数」の結果になり落胆した次第です(涙)

・・1年前の技術スキルから全く向上しておらず相変わらず低いレベル止まり。

そんなワケでやはり来年の夏で引退するのは自らの身から出たサビの如くもはや成るべくして向かえた必然とも考えられました。

本当にこんな当方のような低い技術スキルでも懲りずにいろいろ助けて頂ける方々がいらっしゃる事に感謝の念を抱きつつ今回のオーバーホール作業を進めていた次第です。

・・本当にありがとう御座います!!!

そんな極一握りの皆様方への感謝の想いを込め一切妥協せず徹底的に追求して仕上がったAuto-Quinon 55mm/f1.9 (two-tone) (exakta)』に至り・・まさに逸品・・と明言できる次第で今夜の晩酌が進むと言うものです(笑)

・・これ以上処置するべき内容がないと納得できた仕上がりこそがお酒が美味しいですね!

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
距離環が0.7m〜1.5m間しか駆動せず機能していない。
そもそもピントがどの位置に回しても全く合焦しないボケボケ状態。
 距離環を回すと重めのトルク感で全体的にトルクムラを感じる。
絞り環を回しても絞り羽根が一切反応しない。
調達時完全開放したままの記載だったが届いた個体はf22に閉じきったまま開かない。
絞り環が開放f値「f1.9」の先2cmほどまで回ってしまう。
レリーズレバーによる内部反応がとても緩慢で機能していない。
光学系内に薄いクモリが全面に渡り視認できる。

《バラした後に新たに確認できた内容》
 内部パーツに日本人が書くマーキングが残っている。
白色系グリースが塗布されている。
絞りユニットの開閉キー欠品。
ヘリコイド (オスメス) ネジ込み位置が違う。
レリーズ機構機能していない。
各締付環の固定が金属材に適合していない。
ネジ種の使い方が正しくない。

・・・・とまぁ〜こんな感じで、正直な話ある程度の技術スキルを有する整備者でない限り そもそもヘリコイド (オスメス) 解体まで漕ぎ着けないのが自明の理なので (このモデルはそう言うレベルのオールドレンズ) シロウト整備は適わず先ず以てプロの仕業と見てとれますが、 如何せん全く以てデタラメな組み戻し方でおそらく諦めて単にそれらしく組んで処分したような印象です。

さすがにこれだけ問題点や疑念が湧き出るともはや完全解体したままでそこから手を付ける 気概が失せていきます (つまりパワーを吸い取られてしまう)。

従ってプロの整備者ならプロらしく相応にちゃんとリスペクトした組み戻しを行って市場放出して処分するべきで、こんな仕打ちはハッキリ言ってこの個体に対し大変失礼で礼儀を感じませんね (そういう整備者が今も整備会社に在籍している!)。

正直、オールドレンズ達に慈しみを覚えないのにどうして整備会社に在籍して整備し続けて いるのか当方には「???」です(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、標準レンズとは言いつつも、また開放f値「f1.9」と当時にしては高速モデルとしても意外にこぢんまりしたコンパクトな鏡筒です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑上の写真は今回初めて気づいた (10年間オーバーホールしてきて今まで見過ごしていた!) 当方自身の思い込みを解説しています。

SNSなどで当方が自信過剰で他の整備者の批判ばかりしていながら自らは技術スキルが低いと逃げ根性なヤツだと批判されまくりですが、まさにそのとおりだと思いますね(笑) もっと言うなら格好良くいつも言っている「観察と考察」はいったい何処に消えたのか?と言うレベルの話です(笑)

・・10年間思い込んだまま処置してきた点に大いに猛省状態です!!!

何と絞りユニット内の構成パーツの一つである「開閉環」の外枠の厚みが違ったのです・・!

こんなオールドレンズは初めて観たというか前述のとおりまさにちゃんとした適切な「観察と考察」ができていなかった証拠みたいな話で(笑)、穴が幾つあっても隠れきれないほどに恥ずかしくて顔が火照りました (タダでさえ暑いのに気持ち悪い汗がジリジリと)(笑)

上の写真赤色矢印の箇所が外枠部分の厚みがあり凡そ2/3の領域で厚みを採っている反面、残りのグリーンの矢印の部分は一般的なオールドレンズと同じ設計仕様を採っています (つまり厚くない)。

どうしてこんな特殊な「開閉環」として設計してきたのかと言えば、まさにこのモデルに於ける「絞り羽根開閉制御の仕組みの影響から配慮されている仕様」と明言できます。

そしておそらく過去メンテナンス時の整備者もバカなヤツたる当方と同じレベルで誰一人この仕様に気づいていません (ちゃんとその根拠がある)。

↑7枚のシッカリした厚みを採った立派な絞り羽根を組み込んで絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところです。鏡筒も開閉環も共にアルミ合金材であるのに対し「絞りユニットの 締付環だけが黄鋼製」である点もちゃんと理由があり、そこに附随する締付固定用の「イモ ネジ」の締め付け方にもちゃんとコツがあってそれを執り切れていなかったのが過去メンテ ナンス時の整備者です。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っている ジ種

種類が複数あり金属材の相違の他マイナス切り込みと反対側の尖り具合に相違があるので、それに従い適切な締め付け固定を施さないと材の応力が働き本来求められる製産時点と同一の締付固定が適わない。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しています。写真上方向が前玉側にあたります。するとグリーンの矢印で囲っている箇所に光学系前群 (上のほう) と光学系後群 (下のほう) が格納されるスペースなので「絞りユニットの領域はとても狭い」のが分かります。

さて赤色矢印で指し示しているイモネジ用の下穴はいったいどうして備わるのでしょうか。

ちなみに鏡筒の右側面に備わる切り欠き部分 (スリット) が絞り羽根をダイレクトに開閉操作するために用意されている操作孔である事が分かりますね。

↑ここからの工程がまず一番最初に過去メンテナンス時の整備者が完全に見落としていた問題箇所になります。当方はもちろん今回完全解体する前時点のチェック段階でここの問題が一つあると既に分かっていました。

上の写真は完成している鏡筒をひっくり返して光学系後群用の格納筒の周りに「開閉ピニオン環」と言う一部にギザギザの歯が備わる環/リング/輪っかをベアリングを使って組み込んだ ところを撮っています。

右横にはベアリングを封入する「封入環」が並べて置いてありますが、実はこの環/リング/輪っかの裏面は「一部が平滑仕上げ」であり、その仕上げ方の目的は「ベアリングの平滑性を 担保する」必要性からとも言い替えられますが、それを過去メンテナンス時の整備者は理解しておらず「この箇所に潤滑油を流し込んでしまった」からこそベアリングと内部に経年の酸化/腐食/錆びが生じて既に平滑性を失っていたのです。

またその一方で「開閉ピニオン環」の途中に備わるグリーンの矢印の凹み部分の役目も理解していません(笑)

↑調べたら過去メンテナンス時にどう言うワケか鏡筒内の絞りユニットから飛び出てくるハズの「開閉キー」が欠品していたので仕方なく代替パーツを用意しました (グリーンの矢印)。「開閉ピニオン環」にはコの字型の大きめなパーツが締め付け固定されそのコの字型が「開閉
キー
」をガシッと掴んで離しません。

するとここの構成パーツ「開閉キーとコの字型のパーツ」が互いに接触している時の抵抗/
負荷/摩擦もソックリそのまま最終的には距離環を回した時の「トルクに影響を及ぼす要素の 一つ」との認識が「原理原則」です。

従ってどんなにヘリコイドグリースにこだわって軽めの粘性を塗ったところで、既にここの 工程で「開閉キーとコの字型パーツ」で抵抗/負荷/摩擦が増大していたら最終的に仕上がった時の距離環を回すトルクは「決して軽めに仕上がらない」点を以て「原理原則」と指摘しているのです。

当方のこのブログでそれこそ今までに何度も何度も執拗に述べている/解説している「距離環を回すトルクを決定づける要素は決して塗布するヘリコイドグリースの粘性ではない」点について、まさに今回扱うオールドレンズの内部構造はお手本のような構造化と超神経質な微調整が求められるワケで、ハッキリ言ってこのモデルを本当に文句の付けようがないくらいまで完璧に仕上げられる整備者と言うのはそれほど多くないと思いますね(笑) このように指摘するからまたSNSで自信過剰なヤツと批判されまくるのですが、現実的な話として真に完璧に仕上げられたのかどうかは仕上がった個体を触って操作してみれば誰にでも分かる話ですから、それを以て批判しまくっても意味の無い話です (つまりどんなに大袈裟に煽っても個体を触れば 全てがバレるのが自明の理)(笑)

↑前述のベアリングの問題 (平滑性の話) を解説するために再び完成した鏡筒をひっくり返して「開閉ピニオン環」を写しています。

前述のとおりこの「開閉ピニオン環」は絞り羽根の開閉動作を司る環/リング/輪っかですが グリーンの矢印で指し示した分の長さを有します。上の写真では反対側を敢えて撮影している為「ちゃんとギザギザの歯が見えている」のが分かると思います。しかも「開閉ピニオン環」の歯の部分が極一部の領域である事が明白です (全周に渡り歯が備わるワケではない)。つまり後の工程で出てきますがこの「開閉ピニオン環の歯」のどの歯の位置にマウント部内部にある「歯車」が噛み合うのかが相当重要な要素に至ると既にこの時点で整備者は気づく必要があるのです。逆に言うならどうして「開閉ピニオン環の歯」が全周に備わらなかったのかと考察をするべきだったのです。

まさにこれこそが過去メンテナンス時の整備者が気づかなかった問題点、或いは大きなミスであり「歯の存在領域が限定されている点」が最終的に「距離環を回す時の重いトルク感やトルクムラに大きく影響を来す」点を全く気にしていないのです。

だからこそこのベアリングが封入される箇所に「潤滑油」を注入してしまい経年の酸化/腐食/錆びを促す結果に至りました。

・・では「潤滑油」の注入がどうして拙いのでしょうか???

その理由/根拠は「開閉ピニオン環」の内側の上下に備わる「鏡面仕上げ部分」と合わせて「封入環の裏側の平滑面」と言う2つの仕上げ加工です。つまり製産時点にSteinheil Münchenではこのベアリングの封入時に「潤滑油を一切注入していなかった」事が明白だからです (その為にワザワザ敢えて鏡面仕上げと平滑仕上げに設計している)。

さらにグリーンの矢印で指し示した領域/長さは距離環を回した時に必ずヘリコイド (オスメス) が回っていくのと同時に「常に密着しながら開閉ピニオン環からの抵抗/負荷/摩擦が伝わっている状況」だからこそ距離環を回す時のトルクを軽くしたけければ、或いはトルクムラなく 均整のトルク感のまま無限遠位置〜最短撮影距離位置までスムーズに回せるようにしたいと 考えるなら「一にも二にもこの開閉ピニオン環の平滑性担保が最も重要な話」である事を理解していなかったのです。

逆に言うならグリーンの矢印で指し示した長さ分だけ鏡筒が繰り出し/収納されると受け取っても構いません。どんなにヘリコイド (オスメス) に軽めの「白色系グリース」を塗布しようが 結果的にこの「開閉ピニオン環」の平滑性が担保されなければ距離環を回すトルクはこの歯が存在する領域に限定してトルクムラを生じ重めのトルク感にも至ります。

もっと指摘するならご落札者様お一人様だけですが「どんだけ今回仕上げったこの個体の距離環を回すトルクが軽いのか信じられないくらいだ」との感想を抱かれるハズです(笑) いえ、自慢話なのではなく現実に実際に軽いトルク感に仕上がっています。

当方自身も10年間まるで思い込みしていましたが(恥)、こういう事柄が「観察と考察」であり、まさに絞りユニット内の「開閉環の外枠の厚みが異なる理由」もこの「開閉ピニオン環」の平滑性を担保するための一工夫だったのです (その根拠は開閉キーが一部領域だけに出て くるから応力を考慮したらそのような設計にならざるを得ない)。

もちろん一般的なオールドレンズもその多くが鏡筒の一部領域に限定して「開閉キー」が飛び出てくる仕様なのが一般的で同一であり、何も今回のモデルに限定した話ではありません。
しかし今回のこのモデルにはそれにも増して「開閉ピニオン環の歯」がさらにその反対側に 存在するとなればその駆動 (絞り羽根開閉のチカラ) の平滑性に影響を与えない配慮が設計時点から必要だったのだと容易に察する事ができます。

・・如何ですか? 全て一つ一つが納得できていきませんか?(笑)

ちなみに「開閉ピニオン環」の内側は2つの部屋に分かれていてベアリングが上下に2つの 部屋に組み込まれる設計を採っています。上の写真で言うところの上部のベアリング組み込みは単にベアリングを落とし込んでから最後に封入環で締付固定すれば完了ですが、然し下側の部屋に入るべきベアリングはいったいどうやって組み込むのでしょうか?

逆に言うなら「開閉ピニオン環」の内側が2つの部屋に分かれるなら下側の部屋には丸穴か 何か用意されていないとベアリングを入れる方法がありません(笑)

パラパラと入れる端からベアリングが外に飛び出てきて転がるのではなくちゃんとセットする方法がある事を一切探求せず、安直にも過去メンテナンス時の整備者は「潤滑油」の注入で逃げた/ごまかしたのです。さらに指摘するなら上下2つの部屋に組み込まれるベアリングの数が違います。全部で104個の同一径のベアリングが入りますが、そのうち上部には「58個」入り下部の部屋には「46個」しか入らないよう肉厚の相違があります。その理由すらきっと思い至らないのでしょう(笑)

過去メンテナンス時の整備者の全ての不始末は純粋にこの部位「開閉ピニオン環の平滑性を担保できなかった」一点に集中してそこから他の部位へとその影響が及びどんどん不具合が増えていったのです。

このような話しは当時の日本製オールドレンズのモデルにも数多く顕在しています。何も今回のオールドレンズに限った話ではありません。例えば当時のOLYMPUS製単焦点のオールドレンズの中で特に開放f値が明るい「f2モデル」あります。するとこれらのモデルには必ず鏡筒背後の後群側との間に「昇降筒」を有する設計を採っていて、まさにその「昇降筒の内側に鏡面 仕上げ領域と平滑面領域が備わる」のです。

昇降筒
光学系内に配置された場合距離環操作に連携して昇降筒内光学硝子レンズの位置を可変 (上下動) させる仕組み (実際は上下動と共に回転する)

ところがたいていの個体でバラすと過去メンテナンス時にその「昇降筒」内部に潤滑油、或いは下手すると「白色系グリース」を塗っている始末で何も理解していません(笑) 何故なら前述のとおり鏡面仕上げと平滑面の存在に「潤滑剤の類は必要ない/むしろ排除している概念」だからこそ設計時点で敢えてそのような処置を講じているのです。

もっと言うならそれらOLYMPUS製「f2モデル」の昇降筒内外には「マットな微細梨地仕上げのメッキ加工」が施され、それら鏡面仕上げ領域や平滑面領域以前にそもそも「経年の揮発油成分侵入すら嫌っている処置を講じて製産されている」のをバラしている整備者なら100%知っているハズなのです。どうしてそのように設計者がこだわって製産している箇所に「白色系グリースを塗る」のでしょうか???

潤滑剤なら平滑性を高める目的だから問題ない」と勝手に思い込みそのような処置を講じるから早くて1年、長くても数年で経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びの影響が広がります。ちゃんと平滑性を担保したままに整備していればまるで製産時点の如くもっと長い期間に渡り経年 劣化に伴う酸化/腐食/錆びの影響を受けずに品質が保たれたのに余計な所為をするのは、むしろそういう整備者の類なのです (決してオールドレンズ側の設計が拙いのではありません)。こう言う部分にも設計者の意図を汲み取ろうと努めていない整備者の姿勢がまるで顕わになりますね(笑) ましてやOLYMPUSともなれば今でこそ世界に於いて医療分野の機材シェア70%以上を独占する企業に変貌していますが、かつての光学製品に対する徹底的なこだわりがあったからこそ今のオリンパスがあるのだと当方は信じてやみません!

まるで何十年も前に製産されたオールドレンズだから仕方ないと言わんばかりに自分が整備したオールドレンズを貶める言い訳に、当方は相当な違和感をいつも覚えます。

↑黄鋼製のヘリコイド (オス側) の内側に完成した鏡筒を落とし込んで締付固定しますが、その際イモネジで締め付ける箇所がグリーンの矢印で指し示した下穴で分かります。

↑こんな感じで鏡筒が黄鋼製のヘリコイド (オス側) の内側にストンと落とし込まれて両サイドからイモネジで締付固定されます (グリーンの矢印の箇所にイモネジが既に入っている)。

一方そのイモネジが入る箇所は「直進キーガイド」と言って前に置いてある「直進キー」と 言う板状パーツが刺さって行ったり来たりスライドするので距離環を回すと鏡筒が繰り出されたり/収納する仕組みです。

するとたいていの整備者が思い込みしていますがこの「直進キーと直進キーガイド」の両方にグリースをタップリ塗布してスムーズに鏡筒が繰り出し/収納するよう配慮します。

つまりこの部位にも平滑性が必要なようにパッと見て考えますが「ならばどうしてその箇所にイモネジが刺さるのか?」と言えませんか? 何しろヘリコイド (オス側) は黄鋼製なのでイモネジを強く締めつけすぎるとその応力がすぐに生じてネジ山の真円度が変化します (つまり トルクムラが起きる)。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

ところがこの問題をよ〜く考えたら自明の理なのですが(笑)、距離環を回した時の指が加えたそのチカラが仮にこの直進キーに蓄えられてしまったらそれだけで距離環を回すトルクは非常に重く変わります。逆に指摘するなら「距離環を回すチカラはこの直進キーを経て瞬時に方向性が変換されて伝わっていくからこそトルクが重くならずに/チカラが留まらずに鏡筒の直進動に変化する」のが「原理原則」なのだと気づきませんか???(笑)

要はこの直進キーにも直進キーガイドの溝部分にも当方のオーバーホールでは一切グリースの類を塗りません(笑) 塗らずともご落札者様お一人様だけはこの軽い操作性を知る事が叶いますね(笑)

ちなみにブルーの矢印で指し示した箇所にも同じような溝が備わりますが直進キーはこの位置には刺さりませんし全く使われません・・どうしてなのでしょうか?

なお冒頭のほうでこの「鏡筒が宙吊り状態になっている設計概念」と明言したのがまさにこれらの話しで、基本的に鏡筒は黄鋼製のヘリコイド (オス側) の両サイドにある「イモネジ」だけで保持されています。それ以外に鏡筒を保持する締付ネジは存在しません。

その一方で鏡筒の上には「格納用締付環」が締め付けられますが (上の写真では既に締め付け固定している) その締付環をネジ込んでいくとある特定の位置までネジ込んだ途端にその箇所で「カクンと停止して締め付けが停止する」と言う一般的な整備者なら疑念を抱くべき締め付け時の印象の違和感が残ります。

通常例えば光学硝子レンズの締付環などはその多くが少しずつ締め付けの抵抗が増えていってそれ以上締め付けできない処までネジ込めますが、この「鏡筒締付環」の設計は別なのです。まさにこの違和感こそが「鏡筒を締め付けのチカラで押さえていないと言う根拠」であって、基本的に鏡筒はたった2本のイモネジだけで締め付け固定されているとの認識に至ります。

・・だから「宙吊り状態」と明言していたのです。

↑今一度解説を続けますが、ご覧のように直進キーガイドにイモネジが入ります (グリーンの矢印) し、当然ながら反対側にも同じように直進キーガイドが存在しそこにもイモネジが刺さります。するとこの黄鋼製のヘリコイド (オス側) の内側は僅かに鏡筒外径よりも大きめの内径を採っており隙間が空くようになっています。

つまり鏡筒はこの黄鋼製ヘリコイド (オス側) 内側に両サイドのたったの2本のイモネジだけで「まさに宙吊り状態」と言う設計概念なのです。

これこそがこの当時のSteinheil München製オールドレンズの難しさで鏡筒をぶら下げる強度というか確実性を追い求めてイモネジを強めに締め付け過ぎるとそもそも材たる黄鋼製のヘリコイド (オス側) の応力が働き膨張するので「距離環を回すトルクムラが生じるのは必然!」なのがご理解頂けませんか???(笑)

その応力を少しでも相殺させたいと願うならヘリコイド (オス側) の円周の一部分に僅かに発生した応力を逃がす役目を備えれば多少イモネジの締付強度が増しても対応できそうです。

・・そうですね、それこそが前の工程で指し示したブルーの矢印の溝の理由です。

合わせて前述したとおり「直進キー」に伝わった距離環を回す時のチカラは一切蓄えられずに瞬時に「直進動」に変換されるべきだからこそ、全く同一の「直進キーガイド」を切削しただけでこの90度ズレた位置に「直進キー」が入る別のモデルが存在したワケではないのです。

要は黄鋼製の応力を逃がすためだけに90度位置に同一の切削を施すだけで製産時点の工程は単純化され (90度向きを変えるだけだから) 別の仕様の溝を切削する必要がありません。

このようにオールドレンズ内部はほぼ全ての部位/箇所で必要ない切削など処置しませんから、逆に考えるなら他のモデルとの共用パーツなのか否か考察を進める必要があったりします。

↑相当深く設計されていますが距離環やマウント部を組み付けるための基台です。「」とか「」のマーキングは当方が刻んだのではなく、この書き方はニッポン人の仕業ですね(笑)

↑無限遠位置のアタリを付けた場所までヘリコイド (メス側) をネジ込みます。最後までネジ 込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑完成した鏡筒に一旦光学系前後群を組み込んでから黄鋼製のヘリコイド (オス側) をやはり 無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションにネジ込みます。このモデルには全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑ここでも取り敢えずですが距離環やレンズ銘板までセットしてしまいます。その理由はそれぞれ工程を進めていく段階で距離環を回すトルクを確認しているからですが、すでにこの時点でもう9回組み直ししています(笑)

↑チェックしたところ距離環を回すトルクムラを感じ、相応に重めのトルクだったので何かが拙いと判断し再びバラして最初の工程からやり直しているところを撮りました(笑)

ヘリコイド (メス側) には「距離環用ベース環」と言うアルミ合金材の環/リング/輪っかがネジ止めされ、そこの途中に用意される「制限壁 (ブルーの矢印)」と言う壁がヘリコイド (メス側) のやはり壁部分に突き当たるので無限遠位置と最短撮影距離位置を特定する原理です。

すると上の写真「制限壁」のグリーンの矢印の箇所が無限遠位置にあたり、一方反対側のグルッとほぼ一周回ったところでオレンジ色矢印のように再び「制限壁の反対側の部分」がカチンと突き当て停止するので最短撮影距離位置になります。

逆に言うならどれだけヘリコイドがグルグルと回転して鏡筒を繰り出し/収納するのかご理解 頂けると思います。

そもそも前述の解説のとおり「開閉ピニオン環」の長さ分が鏡筒の繰り出し/収納域なので、 同様にヘリコイド (オスメス) のネジ山の長さもそれに一致するのが納得できます。

↑ベアリングとスプリングを組み込んでから絞り環をセットしたところです。

↑ここまで来てようやく距離環を再びセットしてレンズ銘板まで組み込みました。もちろん光学系前後群も既に格納されています。

要はここの工程でマウント部がまだセットされる前ですがとても軽い操作性に仕上がっているのが確かめられたワケですが、実は既に16回組み直しています(笑) その都度イモネジを外したり直進キーを外したり光学系を取り除いたりヘリコイドを再びネジ込んだりなどいろいろやりながらここまで到達しています・・当方の技術スキルはそんなレベルなのです!(笑)

↑いよいよオーバーホール工程もクライマックスに差し掛かります。マウント部です。レリーズ機構部をチェックし経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びを排除したかったのですが、残念ながら 専用工具が必要でレリーズレバー機構部の一部は解体できません。

しかしラッキ〜なことに経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びが僅かに残るものの致命的には至らず確実で軽い操作性を確保できています。

レリーズレバーを操作すると (ブルーの矢印) その移動量に見合う領域を行ったり来たりする ように「操作ラック」部分が水平方向に移動します (ブルーの矢印)。

実はこの扇状に広がる「操作ラック」の歯部分とそれが噛み合う先「ピニオン (歯車)」の構造と動き方を観察した時、歯車側は何処までも/いつまでもクルクル回せる一方、ラック側は歯の領域が限られるのでそれを超過すると歯車から外れてしまいます。

このように互いの動き (ラック&ピニオン) を観察した時、歯車が脱落する懸念は100%皆無なのに対し一方のラックだけが外れてしまう動き方を「許容しているのは何故なのか?」逆に言うなら普通ラック側も脱落しないよう移動領域を限定する設計を採るのではないかと容易に考えられます。

するとここにヒントが隠されていて「もしかしたらラックが外れる動きをする事で自動/手動の切替を行っている?」になるワケで、このような考察の努力をしていない時点で過去メンテナンス時の整備者は「単にバラして組み戻しているに過ぎないレベルだった」と容易に察しが 着きます(笑)

要はこのような仮説が浮かび上がった時点で次は鏡筒裏側に突出している「開閉ピニオン環」のラック領域とマウント部内部の歯車を噛み合わせた時「開閉ピニオン環の回転量/長さ」が「操作ラックの歯の長さに一致しているか否か (実際は歯車側で移動量が増幅されるので噛み合わせる先は歯車である事もこの時点で明確になる)」を観察すれば自ずと黙っていても「絞り羽根の最小絞り値の時の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量)」が導き出され、その仮説は実際に組み上がった時の簡易検査具を使うチェックでちゃんと「最小絞り値f22」に一致するワケで自分自身も十分納得に至るのではないでしょうか?

このような仮説と考察を繰り返したからこそ、このモデルのレリーズレバー操作に伴う「操作ラックが噛む/離れる」を司る役目の存在が確実になり、まさにそれが「A/M切替スイッチの引き上げ/押し込み」なのが必然に成り、合わせて操作ラックが離れた時の居所は「筐体の外に出てくるハズがないからより内側に深く入り込むとすれば絞り羽根制御の概念がまさに確定してしまう」ワケで、設計図面やサービスマニュアルなど手元に無くても辿り着く先はたったの一つしかあり得ないのが自明の理なのです(笑)

決してテキト〜に当方の自慢話の如く語っているのではなく(笑)、このような仮説や考察があるからこそオールドレンズに於ける工程管理、もっと平たく言えば組み立て手順とその時の微調整範囲/強さなどを確定できるのです。だから完全解体していった時とは全く別の組み立て 手順が求められる場合があるのも自然に見えてくるのです。

↑最低限取り外せる機構部のパーツを外して「磨き研磨」を施しセットしていきますが、過去 メンテナンス時にやはり「潤滑油」をプシュッとやっていたのか一部に相応なサビが出ていました。

↑取り外していた各構成パーツも全て組み込んだところです。するとレリーズレバーを操作すると (ブルーの矢印①) 前述の「操作ラック」が必要な分だけ移動し (ブルーの矢印②) 接触先の 噛み合っているピニオン (歯車) が回って (ブルーの矢印③) その回転量から鏡筒の後から飛び出ている「開閉ピニオン環」が必要量回転するので絞り羽根が設定絞り値まで閉じる原理です。

つまり「歯車の回転量が適切でないと絞り羽根は正しい開閉幅/開口部の大きさ/カタチ/入射光量で閉じない」からこそ、当初解体する前の様々な諸問題を引き起こしていたのです。もちろん距離環を回すトルクムラ→重くしていた理由にも大きく貢献していました。

要はこのマウント部の「ピニオン (歯車)」の微調整をミスッたのが根本的な過去メンテナンス時の整備者のミスですが、その本質は既に初めの工程で解説した「ベアリングの平滑性担保が適っていなかった」点でどんだけこの歯車の動きをスムーズにしても結果は改善しません。

そして過去メンテナンス時の整備で適切に組み戻せなかった最大の理由は「このモデルの絞り羽根開閉制御の仕組み/原理が全く理解できていなかった」点であり、前述のラックが歯車とどのように噛み合うべきなのかが見出せず、且つ設定絞り値の実現 (絞り羽根が正しく瞬時に 閉じる仕組み) と共に自動絞り方式の時にどうやって完全開放させているのか、これらの事柄が整備者の頭の中に仕組みとしてちゃんと思い描かれていなかったからです。

詰まるところバラした時の逆手順で組み戻せば仕上がると認識している限り正しい工程を踏んでいく事は適いませんし、実際当方の今回のオーバーホールでも工程の進め方 (つまり手順) を見出す/理解するには何回も組み直しをしていく中で先に締め付け固定しておくべき締付環の 順番などがようやく見えてくるワケで、完全解体した後すぐに工程手順が理解できている一般的なオールドレンズとは真逆の性格であって、それこそがこのモデルの難しさを最大に押し上げています。

要は数多く存在するオールドレンズの中には完全解体してもそこから今一度組み立て手順を 見出して組み上げていかない限り適切な操作性に仕上がらないモデルが顕在する事を示す、 まさに証拠のようなモデルとも指摘できます。

・・数多く出回るオールドレンズの中にあってこれほど難しいモデルはそう多くありません。

そしてオーバーホール工程の中でさんざん解説してきたとおり、ネジ種の違いや材の相違を基にどのくらいの締め付け強度が適切なのか、或いは下穴存在の有無や固定方法の相違など凡そ金属材の違いに伴う影響を熟知している整備者でない限り「本来あるべき姿に仕上げる」事が難しいモデルの代表格とも言えそうです。

その意味で逆手順でしか組み上げられない、何でもかんでも固着剤を塗布する、或いはグリースに頼る整備をし続けているなど、そのような整備者が仕上げられるレベルのオールドレンズでは全くありませんね(笑) それはご落札者様お一人様だけが現物を手にしてご納得頂ける話の内容でもあります・・「本来あるべき姿に仕上げる」とはそういう事を意味します。

この後は完成している鏡胴「前部」を組み込んでこの「ピニオン (歯車)」と鏡筒下部の「開閉ピニオン環」を噛ませ合い適切な絞り羽根開閉動作とその開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) にセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した主商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。一つ前の工程でいとも簡単に解説しましたが、実はマウント部をセットしてから再び距離環を回すトルクが重く変わったり絞り羽根の開閉動作が緩慢になったりと相変わらず問題を起こすので「結果的に最後29回目の組み直しを行った」ワケで・・まさに1年前から何一つ技術スキルが向上していません!(笑)

・・もぉ〜ガックシです!(笑)

どんだけ技術スキルが低いのかをまたもや思い知ったワケで、何だか最近オールドレンズを イジるたびに技術スキルの低さを思い知らされているようで滅入るばかりです(笑)

どうかこのブログをご覧頂いていらっしゃる皆様方も当方の技術スキルの低さを一緒に笑って下さいませ。プロの整備会社にオーバーホール/修理などご依頼頂くのが間違いありません。

↑光学系内の透明度が非常に良い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

当初帯びていた全面に渡る薄いクモリはバルサム切れかと思いきや実は締付環を過去メンテナンス時に厚塗りで着色した「反射防止黒色塗料」のインク成分だったのでキレイに除去できています・・スカッとクリアです!

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

何しろこのモデルでここまで光学系前群の状態が良い個体を今までオーバーホール/修理含め扱った記憶がありません。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無スカッとクリアです。とても薄い微かな円形状のヘアラインキズが複数視認できますが言われなければ気がつかないレベルです。その一方点キズは少し多めに残っていますがその多くが点状カビ除去痕です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:13点、目立つ点キズ:9点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大20mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
(一部貼り合わせレンズにバルサム剤はみ出しあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑7枚の絞り羽根もキレイになりA/M切替スイッチや絞り環、或いはレリーズレバーなど全て完璧に正常駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正七角形を維持」したまま閉じていきます。

上の写真は最小絞り値「f22」まで絞り羽根を閉じた状態を撮っていますが、実は今現在一部のヤフオク! 出品個体で閉じた時の絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) が上の写真よりも大きい個体が出品され続けています。もしもそれが最小絞り値「f22」の閉じ具合なのだとすればオーバーホール工程の中でさんざん解説してきた「ラック&ピニオンの噛み合わせ位置」が適切でなく正しい最小絞り値「f22」まで閉じきっていないと指摘できます。

逆に言うならもしも最小絞り値「f22」が上の開口部の面積よりも広ければ「開放f値以降のf2.8〜f22全ての開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) が狂っている/開きすぎ」状態とも指摘でき古いから仕方ないと諦めるべき問題ではありません。

当方では簡易検査具ですが一応オーバーホール工程途中、或いは完了時に検査しているので 適切な開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) に微調整済です。

オールドレンズの動きをチェックする際、このように最小絞り値「f22 (モデルの仕様により 異なる)」までちゃんと確認するべきであり、それは最小絞り値側「f11f22」までの撮影をほとんど行わないから気にしない・・のではなく、開放以外の「f2.8f22」までの全ての 絞り値で「広がり過ぎな設定」とすれば気にしないワケにはいかないと当方自身は考えてい ます。

その辺りの確認事項は「神経質に気にする人」に入る部類ではなく、或いは「個人の主観」には当たらないので本来製品として正しく機能するか否かの判定の一つでありキッチリチェックして告知するのが適切な出品者側の立場だと当方は強く思っています。

従って当方のオーバーホール済ヤフオク! 出品個体は全ての出品について「出品ページの掲載との相違」を以て返品受け付けが可能と言う前提で出品を行っていますから、クレーム対象にならない要素については事細かく事前に出品ページで告知しており、それ以外の要素が生じた 場合は返品キャンセル・全額返金 (送料/振込手数料含む) が適います。

逆に指摘するなら「オールドレンズをどうやって撮影するのか」すら知らない完璧なド素人 レベルが出品しているならせめて最大で掲載できる10枚分の商品写真をちゃんと載せて可能な限り伝えようとする意志を示す事こそが「出品者側の落札者に対する配慮の一つ」ではないかと考えます。

・・とは言え当方も『転売屋/転売ヤー』の一人なのでその信用/信頼度が低いレベルなのは たかが知れています(笑)

まさにSNSで批判されるがままに信用/信頼が皆無で他人の批判ばかりして自らは逃げまくっているゴロゴロ転がっている『転売屋/転売ヤー』の部類です(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

そもそも筐体外装のほぼ多くの部位が「アルミ合金材のアルマイト仕上げ」なので (フィルター枠外廻りだけ光沢仕上げ) 一度「磨きいれ」を施した後に再び酸化処理しています。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑こんな感じで筐体外装の凹みやキズ擦れの状態は経年相応ですがアルマイト仕上げの補強を 施したのでそれほど目立たなくなっています。

【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感軽め)。
・A/M切替スイッチはドイツ語表記なのでAutom.が自動を意味しN.Auto.が手動です。また自動/手動切替字に例えば手動から自動にした時、一番最初一度レリーズレバー操作して内部のギアを噛ませる行為が必須です。詳細は当方ブログで解説しているので気になる方はご確認下さいませ。判ってしまえばどうと言う話ではありません。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

いわゆるオールドレンズの距離環を回すトルクが古いグリースの経年劣化進行に伴いツルツルした印象のトルクに至っている個体はいくらでも出回っていますが、シッカリした抵抗/負荷/摩擦環を感じつつも肝心なピント合わせの操作時には「違和感に至らないトルク感の感覚/印象」こそが最も適切なトルク感ではないかとのこだわりで仕上げています。

当方がオーバーホール済でヤフオク! 出品する個体を何本もご落札頂く方が意外にも多いですが (いわゆるリピーターの方々/ありがとう御座います)、その方々に言わせるとシットリとヌメヌメッとした操作感でこの完食がクセになるとお喜び頂き本当にオーバーホールした甲斐が あったと言うものです!

・・本当にありがたい(涙)

なお上の写真 (4枚) に写る黒い棒状はミニスタジオでの撮影道具なので附属しません。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体『Auto-Quinon 55mm/f1.9 (two-tone) (exakta)』
汎用樹脂製バヨネット式exakta後キャップ (新品/3D印刷品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑上の写真 (2枚) は、レリーズレバー機構部に備わる「A/M切替スイッチ部」の解説です。

1枚目が「A/M切替スイッチのツマミが押し込まれている状態」で黒色梨地仕上げ外カバー部に刻印されている「Autom.」をツマミに刻印されている矢印が指しており、ドイツ語表記なので「自動絞り」を意味し、絞り環操作でどの設定絞り値まで回そうとも「光学系内は常に完全開放のままを維持」し続けています。

この状態でピント合わせすれば適確に明るい光量の中で厳格なピント合わせが適い、もちろんこのモデルのピントのピーク/山は少しずつピークが増していく合焦の仕方なので距離環を回すトルクを軽めに仕上げました。

このとき、レリーズレバーを操作すると (ブルーの矢印方向に押し込むと) 瞬時に設定絞り値まで「シャコン!」と絞り羽根が閉じますから。このような操作で今どのデジカメ一眼/ミラー レス一眼にもマウントアダプタ経由装着撮影しても構いません。

すると自動位置でピント合わせした後にレバー操作してボケ具合を確認でき、最後は「A/M 切替スイッチ」のツマミを引っ張り上げて「手動絞り」にセットすればやはり瞬時に絞り羽根が「シャコン!」飛び出てきて撮影が完了します。

そのような二度手間の操作が面倒でしたら最初から「A/M切替スイッチ」のツマミを引っ張り上げて「手動絞り」で絞り環を回せば必ず設定絞り値まで絞り羽根が閉じてきてボケ具合を確認しながら撮影に臨めますが、絞り値を上げると暗くなるのでピント面の確認が難しいシ〜ンもあったりします。そういうときにこの「自動絞り/手動絞りがちゃんと機能するありがたさがマウントアダプタ経由の撮影でも顕在している事実」を知ると、イザッと言う時は役に立つ かも知れませんね(笑)

ちなみにこの「A/M切替スイッチの操作」で一つだけ一般的なオールドレンズと異なる概念が顕在し、一度でも「手動絞り (つまりツマミを引き上げた時)」に設定すると次に「自動絞り」にセットした時 (ツマミを押し込んだ時) 一度だけレリーズレバー操作しないと「内部のラック&ピニオンが噛み合わない」のでそれだけ忘れないようにして下さいませ。

要はこのモデルの「自動絞り/手動絞り切り替え概念」が歯車に噛ませるか噛ませないかの、
(ラックが噛んでいる状態か歯車から離れてしまった状態か) の違いなので、もう一度歯車に ラックを噛ませる必要がどうしても起きてしまうのです。従って「自動絞り」にセットした時は最初だけレリーズレバーをとにかく操作してしまえば良いのです(笑)

これはなかなかコトバだけで解説しても伝わりにくいかも知れませんが、手動から自動に切り替わる際との前提に注目するよりも手動で撮影した後に自動で撮影しようとすれば、既に絞り羽根が閉じている状況で (撮影した後に) 内部ではラックが歯車から離れているので完全開放しません。しかし撮影でレリーズレバーを操作した後にツマミを押し込んで自動にした時、離れていたラックが歯車に噛み合うのでレリーズレバーが元に位置に戻る際に咬みあって絞り羽根は完全開放状態に戻っていると言うのが現実的な動き方の流れです。但しこれはあくまでも フィルムカメラ装着時の話なので、装着先がフィルムカメラではないマウントアダプタ経由の使用方法となればシャッターボタンが押されてしまい撮影される事には至りませんから単に 一度レリーズレバーを操作すれば良いという表現になります(笑)

最後になりましたが、冒頭で一覧に列記した「」までの全ての問題点や懸念事項、或いは違和感などは改善/解消が終わっており、現状で出品個体には何一つ問題視すべき要素がありません! どうしてもひいて言うなら「筐体外装がキズだらけ」くらいで、それだけは経年 並みの様相を呈しています。

もちろん将来的に冒頭の問題点「」のいずれも再発しないのが分かっている仕上がりなので、もっと言うなら何一つごまかしをしていないので(笑)、将来に渡り不具合が起きないと明言できてしまうのです。それは金属材の性質を理解しネジ種の違いにちゃんと従い、且つ設計者の意図を汲み取ろうと努めるなら自ずとその仕上がりはまさに製産時点に近しい状態まで戻り、且つその使用感/操作性の良さは再び経年で劣化が起きる数十年後の話になるのが当然なのではないでしょうか?

・・それを以てして「本来あるべき姿に仕上がった」と語るべきですね(笑)
・・是非ご検討下さいませ。先ず以てこのような仕上がりの個体は出回りません!

↑当レンズによる最短撮影距離40cmでの開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」にセットして撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」に到達しました。

↑f値「f11」です。

↑f値は「f16」に変わりました。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきているのでそろそろピント面と背景の中心部に「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。「f22」でもこれだけ解像感を保っているなんて当方からすれば相当頷いてしまうレベルの写り具合です。素晴らしい・・(涙)