◎ Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) Quinon 55mm/f1.9 silver《半自動》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Steinheil München製標準レンズ・・・・、
 『Quinon 55mm/f1.9 silver《半自動》(M42)』です。


今回初めての扱いになりますが、戦後に発売されたこの当時のSteinheil München製オールドレンズはその多くのモデルで「懸垂式ヘリコイド駆動」の設計を採っており、且つ絞り羽根の駆動に関して特異な制御方式の設計概念から、現在市場に流れている個体の中でまともに絞り羽根が開閉する個体が非常に少なくなっています。

今回扱った個体も残念ながら当初バラす前のチェック時点で既に「完全開放しない」或いは「f8までしか閉じない」と言う不具合の発生と共に「絞り羽根の動きがとても緩慢」と言う 状況でした。

逆に言えば今まで数多くの「exaktaマウント」規格の個体を扱いましたが、整備する前の時点でまともに絞り羽根が開閉する個体が皆無であり、且つオーバーホール後でも完璧に100% 正常な絞り羽根開閉まで改善できた個体もゼロという状況ですから、残念ながら今回出品個体も同様「絞り羽根の開閉に問題を残したまま」と言う状態での出品です (これ以上改善でき ないのでこのまま出品する)。

また鏡筒自体が内部で宙吊りになったままと言う「懸垂式ヘリコイド駆動方式」の設計を好んで採用し続けた事から、ハッキリ言って「超高難度モデル」の一つであり、特に距離環の トルク感に関してトルクムラが無く軽い操作性で仕上げられた個体と言うのも相当少ないのが現実です。

今回のオーバーホールでも当方の技術スキルが低いが故に2日掛かりの作業に至り、且つ各 部位の微調整の際に組み直した回数は何と「31回」と言う前代未聞の組み直し回数であり、正直もう二度とこのモデルは扱いたくない気持ちでいっぱいです(笑)

結局、チャージ環のスプリングの強さや絞り羽根の開閉、或いはトルクの微調整など凡そ何かのパーツの微調整を再び行う場合は「完全解体しか無い」という事が判明し、さらにその都度再び組み上げる時もこの複雑怪奇な組み立て手順を100%繰り返さなければどうにも組み上がらないと言うどうしようもない事実が判明したので、今回が最初で最後です! もう二度とこのモデルは触りません! もちろん修理なども一切やりません! 絞り羽根の開閉微調整をするだけで複合の絞り連動ピンまでバラしてチャージ環を外してヘリコイドまで抜かないとダメだと言う、狂気の設計です!(怒) 絶対にこのモデルの設計者は頭悪いです!(怒) こんなに凄い設計のオールドレンズは初めてです!(怒)

今回のオーバーホールでそこまで組み直し回数が多くなってしまった理由の一つに、各部位の微調整が非常に神経質と言う問題もありますが、最大の難関は「組み立て手順の複雑さ」でした。つまり工程を進めていく中で途中で数回工程を遡らなければ正しく組み付けできない状況に20回以上陥ったからとも言えます。普通のオールドレンズなら完全解体した時点である 程度の組み立て手順を把握できるのですが、このモデルは各部位との関係性が非常に複雑で とても事前に把握できるレベルではなかったのです。

その意味で、このモデルを完全解体からオーバーホール実施してちゃんと最後まで組み上げ られる整備者と言うのは、相当少ないのではないかと考えますね(泣)

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1956年に発売されたシルバー鏡胴モデル「Auto-Quinon 55mm/
f1.9 silver
」が初代の「Quinon (キノン)」銘オールドレンズになりますが、典型的な4群6枚のダブルガウス型構成の光学系です (左は発売当時のカタログより抜粋)。当時対応したマウント規格は「exakta/
PRAKTINA/M42/L39」と多彩ですが、それぞれの規格で最短撮影 距離が異なるので、おそらく複数の光学設計が存在すると推測して います。

《モデルバリエーション》

↑左端から1956年に発売された初期の「Auto-Quinon 55mm/f1.9」でexaktaマウントです。3つ目のモデルは1957年に用意されましたがM42マウント規格ながらもこれだけが半自動絞り方式で他は自動絞り方式を採っています。

また右端のゼブラ柄モデルは「Auto-D-Quinon 55mm/f1.9」ですが、実はこの「Auto-D」の「D」について某有名処サイトの解説では「Diaphragm (絞り)」でありマルチコーティングの事ではないと案内されていますが、当方の見解は全く違います。

何故なら「Diaphragm (絞り)」が自動化されたのは、1956年に登場したシルバー鏡胴時代で既に完結しています。シャッターボタンも兼ねるリリースボタンを装備し同時に「A/M切替 ツマミ」も合わせて装備していたワケですから、自動化を今さらながらに「赤色文字で強調 までさせて」発売する意図がありません。まして旧西ドイツの製造メーカーとなれば、モデル銘を選定する際は、ラテン語/英語表記ではなくまずはドイツ語で相応しいモデル銘を選んで いたはずなので、ラテン語/英語表記の「Diaphragm (絞り)」をシリーズ銘に据える事は考えられません (ドイツ語の頭文字を採ってくるハズ)。

この当時の旧東西ドイツの光学メーカーの慣わしとして「コーティングについて赤色表記させる事が多かった」と言えます。例えば旧東ドイツはCarl Zeiss Jenaの「zeissのT」はモノコーティングであり、その後に登場したコンタックスブランドでのマルチコーティングが「T*」ですね。他にも「V」刻印を採用していたMeyer-Optik Görlitz (旧東ドイツ) やSchneider-Kreuznach (旧西ドイツ) では「」だったりします。

いずれも当時の最先端技術の一つとしてコーティング層の蒸着を「赤色表記」していたワケですが、前述の広告を見る限り「光強度」つまりは「透過率」を向上させたとドイツ語で説明しています。これを読み解くと「Das einfallende Licht Durchlässigkeit」と言う「入射光透過率」の頭文字を採った「Auto-D」シリーズとの当方考察に至ります。

要はマルチコーティングではなくてモノコーティングを指しますが、光の三原色に対してより反射率を低減させる事によって透過率が上がり「解像度の向上に寄与した」事を指す「D」と言うのが当方にとっては自ら納得できる考えです。

すると例えば同じ頃に存在した「MACRO S」の「S」はいったい何を指すのかと言う疑問が湧きます(笑)

実はこの「S」シリーズには「S」を附随しないモデルがあったりするので (内部構造同一) まさに米国向けにアメリカに於ける独占販売権を有する「Seymour (シーモア)」製モデルたる意味づけの「S」でありこちらこそまさしくコーティングなどの意味ではありません(笑)

ちなみにこの「Macro-Quinon 55mm/f1.9 zebra」は相当優れた描写性と発売当初から絶賛され続けている銘玉中の銘玉です。
(原型モデルはモデル銘にを含まない)




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して滲みながら円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。諸収差の影響を受けるので真円のシャボン玉ボケ表出が苦手なようです。

二段目
左側2枚はピント面の周囲に纏わり付く収差ボケを表している実写で、右側2枚は特にシアン寄りにカラー成分が偏っている状況を発色性として捉えています。

三段目
人物撮影はおそらくレフ板無しのままでここまで相当にリアルな写真を残せるのでポートレートレンズ顔負けです(笑) 被写界深度も開放では相当狭いのですがダイナミックレンジはそれほど広くも無く特に暗部が急にストンと堕ちて潰れてしまいます。

光学系は4群6枚のダブルガウス型構成ですが、右の構成図は前述の カタログにも掲載されていた「Auto-Quinon 55mm/f1.9」の実測 トレース図なので、最短撮影距離が「40cm」と短縮化された「exaktaマウント」です。

一方こちらの右図が今回扱った個体で同じ4群6枚のダブルガウス型 構成ですが、最短撮影距離が「50cm」と異なるので必然的に各群の 曲率や厚みなどがビミョ〜に異なります。

今回のオーバーホールで光学系の各群を清掃する際、当方の手でデジ タルノギスを使って逐一計測したトレース図になります。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造が相当 複雑で、且つ各構成パーツには必ず「イモネジ」が附随するので全てが「微調整必須」と言う「超高難度モデル」の一つです。

鏡筒が内部で宙吊り状態のまま何処にも保持されずに各部位との連係を行う関係で、どうしても絞り羽根の開閉異常が発生しやすい設計とも言えます。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑7枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを最深部にセットします。

↑この状態で完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上方向が前玉側にあたります。鏡筒からは単に板状の「開閉アーム」が飛び出ているだけで他には何もありません。「開閉アーム」が操作されてブルーの矢印の範囲を動く事でダイレクトに絞り羽根が開閉する仕組みです。

↑距離環やチャージ機構部を組み付ける為の基台ですが、予めマウント部が切削されています。この基台の深さが相当あるワケですが、距離環用のネジ山はこの基台の上部にあり、ここにヘリコイド (メス側) がネジ込まれます。

↑さらにこの基台の最深部には (マウント部に最も近い位置に)「チャージ環用受け部」が切削されて用意されています。実はこの赤色矢印で指し示した「チャージ環用受け部」は当初バラした際に過去メンテナンス時に「白色系グリース」を塗られてしまい既に酸化/腐食/錆びが進行して劣化していました。

しかしこの部位は「鏡面仕上げ」なのでチャージ環が瞬時に回転する場所だからとグリースを塗ってしまうと経年劣化の進行と共に「チャージ環の動きが鈍くなる」現象に至り、同時に酸化/腐食/錆びが発生してしまいます。

今回の個体も相当本格的に酸化/腐食/錆びが進行していましたが上の写真のとおり「鏡面仕上げ」で表層面の平滑性を担保しました。

このようにオールドレンズは内部で使われている構成パーツが「どのように仕上げられているのか」に気を配る必要があります。何故ならそこに設計者の意図が現れているワケで、例えば微細な凹凸がある「艶消し梨地仕上げ」でメッキ加工されているなら「グリースを塗ってはイケナイ場所」だからこそ揮発油成分が流動しないよう仕上げているワケです。

同様に「鏡面仕上げ」されているなら設計者の意図は「平滑性の確保」なのであって、そこにグリースを塗ってしまったら経年劣化で酸化/腐食/錆びが進行してしまうのが容易に推測できます。

すると「鏡面仕上げ部分に接触するパーツの仕上げ方」もそこに設計者の意図が現れるハズであり、逐一そのような事柄に注意して組み上げていく次第です。

↑今回のモデルで言えば「鏡面仕上げのチャージ環受け部」には「アルミ合金材アルマイト仕上げのチャージ環」がセットされる設計を採っているので「自ずとグリースを塗るのか否か」が確定します。鏡面仕上げと鏡面仕上げが互いに接触するのか、或いは鏡面仕上げに微細な凹凸面を有する梨地仕上げが接触するのか、そしてそれぞれの「金属材の性質の相違」を基に考察していく必要があります。

このモデルは絞り羽根の駆動方式が「半自動絞り方式」なので一度必ずチャージ環を操作して絞り羽根を完全開放状態にセットしなければ「必ず閉じていく」方式です。

従ってチャージ環を操作する事でシャッターボタンが押し込まれた際に「勢い良く瞬時に絞り羽根を設定絞り値まで閉じる」チカラを保持させる為に「チャージ用スプリング」が備わっているワケです。

つまりこのスプリングが弱ってしまったら「絞り羽根の開閉異常」に陥るのは当然であり、もっと言えば「鏡面仕上げの平滑性」も損なわれていれば同じように「絞り羽根の開閉異常」に繋がります。

ちなみに上の写真を撮ったのは実は既に2日目に入ってからの話であり(笑)、チャージ環の固定方法やスプリングのチカラのバランス、或いは絞り環との連係に係る「チカラの伝達」など、それら全てをキッチリ適切な状態に仕上げるのに「既に20回以上組み直している」状況です(笑)

この後にさらに10回以上また組み直し作業が発生しているワケで、飛んでもないモデルです!(怒)

直進キー」が両サイドに突出しているので、ここにヘリコイド (オス側) が刺さって鏡筒の繰り出し/収納を行います (グリーンの矢印)。

↑絞り環をひっくり返して裏側を撮影していますがベアリング用の穴が空いており、且つ「ハガネ」が存在し適度な抵抗/負荷/摩擦を与えるよう設計されています。

↑絞り環をセットしたところです。既にこの段階で絞り環とチャージ環とが連係し合うワケですが、ここでも組み立て手順をミスったのでさらに数回バラして組み直しを行っています(笑)

↑ようやくマウント部から絞り環を経て指標値環までセットアップできました。

↑この状態で内部を覗いた写真です。チャージ用スプリングがちゃんとグルグルッと巻かれて「チャージレバーを操作した時にチカラを蓄えるよう」設計されていますね。

↑ここでようやくヘリコイド (オスメス) とさらに鏡筒をセットできます。ところがブルーの矢印の順番で組み込まれるワケですが、例えばヘリコイド (メス側) には「距離環用の固定用ネジ穴」が3箇所均等配置で用意されていて距離環がセットされます。またヘリコイド (オス側) の内部には鏡筒が入って同時にレンズ銘板やフィルター枠などが組み込まれる「」がやはり用意されています。

しかし鏡筒はどうやって保持されるのでしょうか???

残念ながらこのモデルは「鏡筒は一切何処にも保持されずに宙吊り方式」なのだと言えます。結局ヘリコイド (オス側) の内側に格納した鏡筒は単にブラ下がったままの状態で「開閉アーム」がダイレクトに操作されて絞り羽根が開閉するので「チカラの伝達経路」が問題になるワケです。

なお「直進キー」と言う板状パーツが刺さる為のガイド (溝) がやはりヘリコイド (オス側) の両サイドに用意されています。

↑ヘリコイド (オスメス) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込んで鏡筒をセットするワケですが、ここまで到達するのに (上の写真を撮るのに) 既に30回の組み直しを実施しています(笑)

この後は光学系前後群を組み付けてから鏡筒を差し込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりましたが、もう二度とこのモデルを触りたくないので(笑)、おそらく今回が最初で最後の扱いになると思います。そもそも31回も組み直して仕上げるなどと言うのが飛んでもない話であり尋常ではありません!(泣)

各部位の微調整をどのように行えば良いのかはそれぞれの工程でちゃんと理解できていたのですが、その次の工程で組み付けるパーツが実は2つ前の工程で先にセットしている必要があったなど、凡そ「組み立て手順」に係るミスでそれだけの回数分で組み直しを行った次第です(笑)

適切な手順まで再びバラして戻ってから次のパーツをセットしてまた組み上げていくのですが、その都度各部位の微調整を毎回毎回やったワケで、面倒くさいったらありゃしません!(怒) その微調整も一つのパーツだけで終わらず幾つものパーツを互いに微調整していくので面倒なワケです(笑)

海外オークションebayでもこの「M42マウント」が出回るのは相当希ですし、且つ光学系の状態がそこそこ良くて絞り羽根の開閉異常ながらもちゃんと使える個体と言うのはそれだけで珍しく、同時に非常に高価です

↑光学系内の透明度が高い状態を維持した個体でLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無ですが、残念ながらカビ除去痕に附随する薄いクモリが僅かに点在しており、且つそれに附随して拭きキズなんかも幾つか残っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無ですが、やはりカビ除去痕に非常に薄いクモリが附随している場合が数点残っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い16ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑7枚の絞り羽根もキレイになり絞り環やチャージレバー共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正七角形を維持」したまま閉じていきます。

冒頭解説のとおり残念ながら「絞り羽根の開閉異常」が完全に解消できていません。絞り環操作やチャージ環操作で設定絞り値まで絞り羽根を閉じていった後に「再び完全開放に戻した時に完全開放しない」問題が起きます。

また完全開放せずに絞り羽根が顔出ししている状態が「距離環操作で元に戻り完全開放になったりする」事もあり、要は「絞り羽根の動きが不安定」と言う状況です。

取り敢えず使っていて気になるとすれば「完全開放しない/都度距離環を少し前後に動かして完全開放させる」必要があります。この原因は内部で使っている「スプリングの経年劣化に伴う弱まり」であり、同時にスプリングを使ったチカラの伝達にこだわった設計を採っている為に残ってしまう不具合なので、残念ながらこれ以上改善できません。

事前告知済なのでクレーム対象としませんご留意下さいませ

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り羽根の開閉が多少不安定で距離環の位置により絞り羽根の顔出しが起きますが距離環を操作すると完全開放になったりします。内部のスプリングが経年劣化で弱っている為これ以上改善できません。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑距離環を回すトルク感は全域に渡って均一で「軽め」の操作性で仕上げられたので、このモデルで (この当時のSteinheil製オールドレンズで) これだけ軽い操作性でスムーズな仕上がりはそれだけでも希少価値が高いです(笑)

プラスして多少カビ除去痕に附随する非常に薄いクモリが残っているものの (点キズなどが多いものの) 光学系内の透明度が高い状態を維持しているのも嬉しい限りです。

となればまさに「絞り羽根が完全開放しない/開放時に顔出ししている」のが悔やまれて仕方ありませんね。

↑上の写真 (2枚) は、1枚目が一度絞り羽根を閉じた後に再び開放状態まで絞り環操作した時の「完全開放していない顔出しした状態」を撮っており、2枚目がその時点でもう一度距離環を前後に回す操作をして「強制的に絞り羽根を完全開放に戻した状態」を撮っています。

従って「絞り羽根が顔出しした状態=f2.0くらい」の閉じ具合なのでご留意下さいませ。前述のとおりこれ以上改善できないので「クレーム対象としません

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。絞り羽根を閉じたり開いたりする操作は「絞り羽根の開閉が正しく追従する」ので問題ありませんが、しかし「完全開放だけしない/不安定」点をご留意下さいませ。

↑さらに回してf値「f4」で撮影しています。

↑f値は「f5.6」に変わりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっているような状況なのですが、それでも「回折現象」の影響を見出せずにこれだけコントラストをちゃんと維持できているところが凄いですね(笑)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。